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JP5875997B2 - ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法 - Google Patents

ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法に関する。更に詳しくは、キャニング時及び使用時において端部に応力が集中することを防止してクラックが発生し難いハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法に関する。
従来、ディーゼルエンジンなどから排出される粒子状物質(PM)を除去するための捕集フィルタとして、ハニカム構造体が用いられている。粒子状物質捕集フィルタとして用いるハニカム構造体としては、両端面の所定の位置に目封止部を備えた目封止ハニカム構造体が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
ここで、目封止ハニカム構造体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、所定のセルの流体の入口側の端部及び残余のセルの流体の出口側の端部に配設された目封止部とを備えている。この目封止部は、一般に、所定のセルと残余のセルとが交互に、いわゆる市松模様をなすように配置されている。このような目封止ハニカム構造体によれば、排ガスの入口側の端面からセル内に排ガスが流入すると、セル内に流入した排ガスが隔壁を通過する。そして、排ガスが隔壁を通過するときに、排ガス中に含有されるPMが隔壁により捕集される。そのため、隔壁を通過した排ガスが浄化ガスとして排出される。
特開2009−195805号公報
しかしながら、特許文献1に記載の目封止ハニカム構造体は、キャニング時や使用時において端部に応力が集中してしまうことがある。そのため、端部にクラックが発生しやすいという問題があった。そして、端部にクラックが発生すると、目封止部の一部が、その目封止部に接している隔壁とともに割れ落ちてしまうことがあった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。その課題とするところは、キャニング時及び使用時において端部に応力が集中することを防止して端部にクラックが発生し難いハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体及びハニカム構造体の製造方法が提供される。
[1] 一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に配設される多孔質の目封止部と、を備え、前記目封止部は、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に平行な断面において、前記ハニカム構造部の端面側の端面である外側端面とは反対側の端面である内側端面から、前記外側端面と前記内側端面との間の距離の30%の距離に位置し、かつ前記セルの延びる方向に垂直な直線である内側境界線と、前記内側端面から、前記外側端面と前記内側端面との間の距離の70%の距離に位置し、かつ前記セルの延びる方向に垂直な直線である外側境界線とを描いたとき、前記外側端面と前記外側境界線との間の領域である外側領域と、前記内側端面と前記内側境界線との間の領域であり気孔率が前記外側領域の気孔率よりも大きい内側領域と、を有し、前記目封止部が単一の層であり、前記目封止部の気孔率が、前記外側端面から前記内側端面に向かうに従って連続して大きくなるハニカム構造体。
[2]前記目封止部の、前記外側領域と前記内側領域との間の領域である中央領域の気孔率が、前記外側領域の気孔率よりも大きく、かつ前記内側領域の気孔率が、前記中央領域の気孔率よりも大きい前記[1]に記載のハニカム構造体。
] 前記目封止部の前記内側領域と前記外側領域との気孔率の差が、2〜55%である前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
] 前記目封止部の前記外側領域の気孔率が、29〜80%であり、前記目封止部の前記内側領域の気孔率が、38〜87%である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
] 前記目封止部の前記内側領域と前記ハニカム構造部の前記隔壁の気孔率の差が、2〜50%である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
] 前記ハニカム構造部の前記隔壁の気孔率が、30〜80%である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
] 前記ハニカム構造部の前記一方の端面及び前記他方の端面における前記セルの開口率が、それぞれ、30〜90%である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
] セラミック原料を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、作製した前記ハニカム成形体の前記セルの開口部に、セラミック原料を含有する成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含む目封止材を連続して摺り込むことにより充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程と、作製した前記目封止ハニカム成形体を焼成して、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製するハニカム構造体作製工程と、を有し、作製された前記ハニカム構造体は、前記目封止部が単一の層であり、前記目封止部の気孔率が、前記ハニカム構造体の端面側の端面である外側端面から前記外側端面とは反対側の端面である内側端面に向かうに従って連続して大きくなるハニカム構造体の製造方法。
] 前記目封止材の粘度が、30〜2000dPa・sである前記[]に記載のハニカム構造体の製造方法。
本発明のハニカム構造体は、目封止部が「外側端面と外側境界線との間の領域である外側領域と、気孔率が外側領域の気孔率よりも大きい内側領域と」を有する。即ち、目封止部内で気孔率に差を生じさせている。そのため、目封止部とハニカム構造部の隔壁との境界に適度に強い応力が発生し易くなる。更に、目封止部内でも適度に強い応力が発生する状態となる。その結果、気孔率が一定の場合に比べて、目封止部とハニカム構造部の隔壁との境界に応力が集中してしまうことを防止することができる。そのため、本発明のハニカム構造体は、キャニング時及び使用時において端部にクラックが発生し難いものである。「適度に強い応力が発生」するとは、目封止部や隔壁に応力が発生しているものの、発生している応力は、目封止部などを損傷させてしまう(クラックを発生させてしまう)程に強いものではないことを意味する。即ち、従来のハニカム構造体では、目封止部とハニカム構造部の隔壁との境界に応力が集中していた。しかし、本発明のハニカム構造体では、応力の発生が分散される。そのため、目封止部とハニカム構造部の隔壁との境界に応力が発生したとしても、その応力は、目封止部などを損傷させてしまう程に強いものにはならない。
本発明のハニカム構造体の製造方法は、目封止ハニカム成形体作製工程を有する。目封止ハニカム成形体作製工程は、「ハニカム成形体の前記セルの開口部に、セラミック原料を含有する成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含む目封止材を連続して摺り込むことにより充填して目封止ハニカム成形体を作製する」工程である。目封止ハニカム成形体作製工程を有するため、製造されるハニカム構造体は、目封止部が「上記外側端面と上記外側境界線との間の領域である上記外側領域と、気孔率が上記外側領域の気孔率よりも大きい上記内側領域と」を有するものになる。そのため、本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、キャニング時及び使用時において端部にクラックが発生し難いハニカム構造体を良好に製造することができる。
本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1に示すハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。 図2の一部である一部領域Pを拡大して模式的に示す断面図である。 本発明のハニカム構造体の他の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、図1〜図3に示すハニカム構造体100のように、多孔質の隔壁5を有するハニカム構造部6と多孔質の目封止部8とを備えている。隔壁5は、一方の端面2から他方の端面3まで貫通し流体の流路となる複数のセル4を区画形成している。目封止部8は、ハニカム構造部6の所定のセル4(4a)の一方の端部及び残余のセル4(4b)の他方の端部に配設されている。ここで、目封止部8において、内側端面13から、外側端面11と内側端面13との間の距離Dの30%の距離に位置し、かつセル4の延びる方向に垂直な直線を内側境界線K1とする。また、内側端面13から、外側端面11と内側端面13との間の距離の70%の距離に位置し、かつセル4の延びる方向に垂直な直線を外側境界線K2とする。外側端面11は、目封止部8における「ハニカム構造部6の端面(近い方の端面)側の端面」である。内側端面13は、目封止部8における「外側端面11とは反対側の端面」である。そして、ハニカム構造体100は、ハニカム構造部6のセル4の延びる方向に平行な断面において内側境界線K1と外側境界線K2とを描いたとき、目封止部8が、外側端面11と外側境界線K2との間の領域である外側領域15を有する。更に、ハニカム構造体100は、目封止部8が、内側端面13と内側境界線K1との間の領域であり気孔率が外側領域15の気孔率よりも大きい内側領域17を有する。目封止部8は、所定のセル4(4a)と残余のセル4(4b)とが交互に、いわゆる市松模様をなすように配置されている。ハニカム構造部6は、外周に配設された外周壁7を更に有している。なお、本発明のハニカム構造体は、必ずしも外周壁7を有する必要はない。
このようなハニカム構造体100は、目封止部8が「外側端面11と外側境界線K2との間の領域である外側領域15と、気孔率が外側領域15の気孔率よりも大きい内側領域17と」を有する。即ち、目封止部8内で気孔率に差を生じさせている。そのため、目封止部8とハニカム構造部6の隔壁5との境界に適度に強い応力が発生し易い。更に、目封止部8内でも適度に強い応力が発生した状態となる。その結果、気孔率が一定の場合に比べて、目封止部8とハニカム構造部6の隔壁5との境界に応力が集中してしまうことを防止することができる。その結果、ハニカム構造体100は、キャニング時及び使用時において端部にクラックが発生し難いものになる。
図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図3は、図2の一部である一部領域Pを拡大して模式的に示す断面図である。
[1−1]ハニカム構造部:
隔壁5の気孔率は、30〜80%であることが好ましく、35〜75%であることが更に好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。隔壁5の気孔率が上記範囲であると、圧力損失を低減した上で構造体としての機械強度を保持できる。
隔壁5の気孔率は、画像解析により測定した値である。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に平行な断面におけるハニカム構造体の隔壁を任意に複数視野撮影する。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、隔壁の気孔率を算出する。
隔壁5の厚さは、0.05〜1.25mmであることが好ましく、0.075〜1.00mmであることが更に好ましく、0.10〜0.75mmであることが特に好ましい。隔壁5の厚さが0.05mm未満であると、構造体としての機械強度が不足してしまうおそれがある。1.25mm超であると、圧力損失が上昇する傾向にある。隔壁5の厚さは、中心軸に平行な断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
隔壁5の平均細孔径は、3〜50μmであることが好ましく、5〜40μmであることが更に好ましく、7〜30μmであることが特に好ましい。隔壁5の平均細孔径が3μm未満であると、圧力損失が上昇する傾向にある。50μm超であると、捕集効率が低下する傾向にある。隔壁5の平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
ハニカム構造部6のセル密度は、7.75〜93.00個/cmであることが好ましく、15.50〜77.50個/cmであることが更に好ましく、23.25〜62.00個/cmであることが特に好ましい。ハニカム構造部6のセル密度が7.75個/cm未満であると、排ガスとハニカム構造部6との接触面積が十分に得られない傾向にある。93.00個/cm超であると、圧力損失が上昇する傾向にある。セル密度は、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことである。
セル4の形状は、セルの延びる方向に直交する断面において四角形である。セル4の形状は、特に制限はなく、四角形以外に、例えば、三角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。
セルの開口率は、30〜90%であることが好ましく、40〜90%であることが更に好ましく、50〜90%であることが特に好ましい。セルの開口率が30%未満であると、圧力損失が上昇する傾向にある。90%超であると、ハニカム構造部6の強度が十分に得られない傾向にある。セルの開口率は、ハニカム構造部の一方の端面及び他方の端面のそれぞれにおけるセルの開口率のことである。なお、一方の端面におけるセルの開口率と他方の端面におけるセルの開口率とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
外周壁7の厚さは、特に限定されない。外周壁7の厚さは、0.025〜0.500mmであることが好ましく、0.050〜0.475mmであることが更に好ましく、0.075〜0.450mmであることが特に好ましい。外周壁7の厚さが0.025mm以上であることにより、外周壁7の機械的強度が保持できる。なお、0.500mm超であると、圧力損失が大きくなる傾向にある。
ハニカム構造部6の形状は、特に限定されない。ハニカム構造部6の形状は、円筒形状、底面が楕円形の筒形状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の筒形状等が好ましく、円筒形状であることが更に好ましい。また、ハニカム構造部6(ハニカム構造体100)の大きさ(長さなど)は、特に限定されない。ハニカム構造部6は、セルの延びる方向における長さが50〜500mmであることが好ましい。例えば、ハニカム構造部6(ハニカム構造体100)の外形が円筒形の場合、その底面の直径は、50〜800mmであることが好ましい。
隔壁5及び外周壁7は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁5及び外周壁7の材質としては、例えば、以下の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。即ち、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライトが好ましい。コージェライトであると、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができるためである。隔壁5と外周壁7の材質は、同じであることが好ましい。なお、隔壁5と外周壁7の材質は異なっていてもよい。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することをいう。
[1−2]目封止部:
目封止部8は、多孔質であるため目封止部8には複数の細孔が形成されている。本発明のハニカム構造体においては、目封止部8の、ハニカム構造体100の中央側の端部(内側の端部)が、目封止部8の、ハニカム構造体100の端面(当該目封止部8に近い側の端面)側の端部(外側の端部)よりも高気孔率である。このように目封止部における上記内側の端部と上記外側の端部の気孔率を調節することにより、目封止部8とハニカム構造部6の隔壁5との境界に応力が集中することを防止することができる。
上記「外側端面11と内側端面13との間の距離D」とは、外側端面11と内側端面13との、セル4の延びる方向に平行な方向の距離のことである。なお、セル4の延びる方向に平行な断面において「外側端面11と内側端面13との間の距離D」が判断できない場合、距離Dは、外側端面11の端点T1と内側端面13の端点T2との間の距離(2本の線分の長さ)のうち短い方の距離である(図4参照)。図4においては、セル4の延びる方向に平行な断面において内側端面13が曲線状であるため距離Dが判断できない場合を示している。なお、外側端面11の端点T1と内側端面13の端点T2との間の距離(2本の線分の長さ)が同じときは、その距離のことである。外側端面11の端点T1とは、図4に示すように外側端面11と隔壁5の表面との交点のことをいう。また、内側端面13の端点T2とは、図4に示すように内側端面13と隔壁5の表面との交点のことをいう。図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態におけるセルの延びる方向に平行な断面の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
目封止部8の各領域(外側領域15、中央領域19、内側領域17)の気孔率は、画像解析により測定した値である。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に平行な断面における目封止部を複数視野撮影する。なお、撮影する視野は、各領域の、セルの延びる方向の両端部分及び中央部分からそれぞれ選択するものとする。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、目封止部の各領域の気孔率を算出する。
目封止部8の外側領域15の気孔率は、29〜80%であることが好ましく、34〜77%であることが更に好ましく、39〜75%であることが特に好ましい。外側領域15の気孔率が上記範囲であることにより、内側領域17より低くなるため、目封止部8にかかる応力を良好に分散することが可能になる。外側領域15の気孔率が29%未満であると、目封止部8にかかる応力を分散し難くなる。80%超であると、目封止部8の強度が低くなりすぎる傾向にある。そのため、使用時にハニカム構造体から目封止部が抜け落ちるおそれがある。
目封止部8の中央領域19の気孔率は、29〜87%であることが好ましく、34〜85%であることが更に好ましく、39〜83%であることが特に好ましい。中央領域19の気孔率が29%未満であると、目封止部8にかかる応力を分散し難くなる。87%超であると、目封止部8の強度が低くなりすぎる傾向にある。そのため、使用時にハニカム構造体から目封止部が抜ける落ちるおそれがある。
目封止部8の内側領域17の気孔率は、38〜87%であることが好ましく、43〜85%であることが更に好ましく、48〜83%であることが特に好ましい。内側領域17の気孔率が上記範囲であることにより、目封止部8に集中する応力を良好に緩和できる。内側領域17の気孔率が38%未満であると、最も応力の集中する隔壁と目封止部の応力を十分に緩和できないおそれがある。87%超であると、目封止部8の強度が低くなりすぎる傾向にある。そのため、使用時にハニカム構造体から目封止部が抜ける落ちるおそれがある。
目封止部8の内側領域17と外側領域15との気孔率の差は、2〜55%であることが好ましく、3〜50%であることが更に好ましく、4〜45%であることが特に好ましい。上記気孔率の差が上記範囲であることにより、目封止部8に集中する応力を良好に緩和できる。上記気孔率の差が2%未満であると、目封止部8にかかる応力を分散することが十分にできなくなるおそれがある。また、55%超であると、目封止部8内に適度に強い応力が発生し難くなる。そのため、十分に応力が分散されず隔壁5と目封止部8の境界に応力が集中するおそれがある。
ハニカム構造部6の隔壁5と目封止部8の内側領域17の気孔率の差は、2〜50%であることが好ましく、3〜45%であることが更に好ましく、4〜40%であることが特に好ましい。上記気孔率の差が上記範囲であることにより、目封止部8と隔壁5の境界に集中する応力を十分に緩和することができる。上記気孔率の差が2%未満であると、目封止部8にかかる応力を分散することが十分にできなくなるおそれがある。また、50%超であると、隔壁5と目封止部8との熱伝導の差が大きくなり過ぎることにより、熱による体積膨張の差が大きくなり過ぎる。そのため、耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
目封止部8の、外側領域15と内側領域17との間の領域である中央領域19(図3参照)の気孔率は、外側領域15の気孔率よりも大きく、かつ内側領域17の気孔率は、中央領域19の気孔率よりも大きいことが好ましい。即ち、目封止部8においては、「外側領域15の気孔率」<「中央領域19の気孔率」<「内側領域17の気孔率」の関係を満たしていることが好ましい。このような関係を満たすことにより、目封止部8内でも適度に強い応力が良好に発生することになる。そのため、目封止部8にかかる応力がより分散される。そのため、目封止部8に集中する応力を更に緩和することができる。
目封止部8の気孔率は、外側端面11から内側端面13に向かうに従って連続して大きくなることが好ましい。このように目封止部8の気孔率が外側端面11から内側端面13に向かうに従って連続して大きくなることにより、キャニング時及び使用時においてクラックが更に発生し難くなる。即ち、キャニング時及び使用時におけるクラックの発生をより良好に防止することができる。「外側端面11から内側端面13に向かうに従って連続して大きくなる」とは、以下のようにして算出される「各分割領域の気孔率」が外側端面11から内側端面13まで順次大きくなることを意味する。
上記「各分割領域の気孔率」は以下のように算出した値である。まず、セルの延びる方向に平行な断面において目封止部を、外側端面から内側端面までセルの延びる方向に分割して複数の領域(分割領域)に分ける。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって分割領域のそれぞれを少なくとも1視野撮影する。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各分割領域の画像において空洞部分が占める割合を算出する。各分割領域において複数視野撮影した場合には平均値を算出する。このようにして、各分割領域の気孔率を算出する。
目封止部8の平均細孔径は、4〜70μmであることが好ましく、7〜60μmであることが更に好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。上記平均細孔径が上記範囲であると、圧力損失の上昇を抑え、捕集効率を維持できる。目封止部8の平均細孔径が4μm未満であると、圧力損失が増大する傾向にある。70μm超であると、捕集効率が低下する傾向にある。目封止部8の平均細孔径は、以下のように測定した値である。まず、目封止材をハニカム構造部に摺り込むことなく、直径60mmで長さ15mmのステンレス製の型に流し込む。その後、この型に入れた状態で、乾燥、焼成してバルク体を得る。得られたバルク体をポロシメータで測定する。目封止材は、セラミック原料を含有する成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含むものである。
目封止部8の深さは、1〜25mmであることが好ましく、2〜20mmであることが更に好ましい。ここで、目封止部8の深さとは、目封止部8の、セル4の延びる方向の長さを意味する。目封止部8の材質は、隔壁5の材質と同じであることが好ましい。
[2]本発明のハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態は、セラミック原料を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程を有する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、ハニカム成形体のセルの開口部に、成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含む目封止材を「連続して摺り込む」ことにより充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程を有する。成形原料は、セラミック原料を含有するものである。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、作製した目封止ハニカム成形体を焼成して、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製するハニカム構造体作製工程を有する。「セルの開口部に目封止材を連続して摺り込む」とは、新たな目封止材を追加することなく、予め必要量(所望の目封止部を得るために必要な量)を用意した1種類の目封止材(粒子径が所定の造孔材を含むもの)をセルの開口部に摺り込むことをいう。従って、予め用意した1種類の目封止材を複数の塊に区分けして、各塊を順次セルの開口部に摺り込んでも良いし、予め用意した目封止材を一度にセルの開口部に摺り込んでも良い。
このようなハニカム構造体の製造方法は、「ハニカム成形体の前記セルの開口部に、上記目封止材を連続して摺り込むことにより充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程」を有する。そのため、製造されるハニカム構造体は、目封止部が「上記外側端面と上記外側境界線との間の領域である上記外側領域と、気孔率が上記外側領域の気孔率よりも大きい上記内側領域と」を有するものになる。そのため、本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、キャニング時及び使用時においてクラックが発生し難いハニカム構造体を良好に製造することができる。
ここで、「上記外側端面と上記外側境界線との間の領域である上記外側領域と、気孔率が上記外側領域の気孔率よりも大きい上記内側領域と」を有する目封止部は、例えば、以下のように形成することもできる。まず、造孔材の粒子径がそれぞれ異なる目封止材を複数用意する。次に、上記目封止部が形成されるように、目封止材を順次変えてセル内に目封止材を充填する。具体的には、内側領域に相当する部分には、粒子径が大きな造孔材を含む目封止材Bを充填し、外側領域に相当する部分には、上記目封止材Bの造孔材の粒子径よりも小さい粒子径の造孔材を含む目封止材Aを充填する。その後、充填された目封止材を焼成する。このようにして目封止部を形成することができる。しかし、このような方法は、複数の目封止材を用意する手間が掛かる。所定の領域ごとに、充填する目封止材を変える必要があり手間が掛かる。更に、各目封止材によって形成された層(領域)ごとに気孔率の境界があるため、この境界に応力が集中しやすい。そのため、各層の境界にクラックが生じるおそれがある。一方、本発明のハニカム構造体の製造方法は、1.5〜35質量%の発泡樹脂を含む目封止材を用い、この目封止材を連続して摺り込む。このように目封止材を連続して摺り込むため、この発泡樹脂は、目封止材がセルに充填されるに従って、隔壁から受ける抵抗力によって潰されて体積が小さくなる。そのため、セル内に充填された目封止材は、ハニカム成形体の端面側(近い方の端面側)の領域ほど潰れた発泡樹脂(体積の小さい発泡樹脂)が多く存在することになる。その結果、得られる目封止部は、ハニカム構造体の中央から端面に向かって次第に気孔率が低くなるものになる。このように、本発明の製造方法によれば、1種類の目封止材(粒子径が所定の造孔材を含む目封止材)により上記目封止部を作製することができる。そのため、複数種類の目封止材(造孔材の粒子径が異なる目封止材)を用意する手間が掛からない。複数種類の目封止材とは、粒子径が複数種類の造孔材を含む目封止材のことである。また、所定の領域ごとに、充填する目封止材を変える手間が掛からない。更に、単一の層である(即ち、各目封止材によって形成された複数の層が存在しない)ため、各目封止材によって形成された層の境界にクラックが生じるという問題が生じ難い。
[2−1]ハニカム成形体作製工程:
本工程では、成形原料を混練して得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。得られたハニカム成形体の一方の端面における所定のセルの開口部を目封止した後、焼成する。このようにしてハニカム構造部を作製することができる。
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.2〜8質量部であることが好ましい。
造孔材は、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではない。造孔材としては、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜25質量部であることが好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよい。また、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましい。
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましい。
使用するセラミック原料(骨材粒子)の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質の隔壁を有するハニカム構造部を得ることができる。
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はない。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度とすることができる口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
[2−2]目封止ハニカム成形体作製工程:
本工程で用いる目封止材は、セラミック原料を含有する成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含むものである。目封止材をセルに充填する際、目封止材は隔壁から抵抗力を受ける。この抵抗力は、目封止材をセルに充填するに従って大きくなる。そのため、目封止材に含まれる発泡樹脂は、目封止材がセルに充填されるに従って上記抵抗力によって潰されて体積が小さくなる(即ち、弾けて破壊されることにより体積が小さくなる)。そのため、セル内に充填された目封止材は、ハニカム成形体の端面側(近い方の端面側)の領域ほど潰れた発泡樹脂(体積の小さい発泡樹脂)が多く存在することになる。その結果、得られる目封止部は、ハニカム構造体の中央から端面に向かって次第に気孔率が低くなるものになる。
発泡樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリルニトリルなどの共重合物を挙げることができる。
目封止材中の発泡樹脂の含有割合は、固形分含量で、上述したように1.5〜35質量%であることが好ましく、2.0〜30質量%であることが更に好ましく、2.5〜25質量%であることが特に好ましい。発泡樹脂の含有割合が、1.5質量%未満であると、目封止部の内側と外側で応力を分散させるのに十分な気孔率差が生じ難くなる傾向にある。また、35質量%超であると、目封止部の気孔率が高くなりすぎたり、気孔径が大きくなりすぎたりするおそれがある。これらの場合、捕集効率が低下するおそれがある。また、発泡樹脂の含有割合が上記範囲内であると、発泡樹脂が水分を保持するため、目封止材をハニカム構造部に摺り込む際に「ヒケ」が発生することを防止できる。
発泡樹脂の平均粒子径は、2〜200μmであることが好ましく、3〜180μmであることが更に好ましく、4〜160μmであることが特に好ましい。発泡樹脂の平均粒子径が上記範囲であることによって、目封止部内を貫通する気孔(連通孔)が適度に形成される。そのため、圧力損失の増加を抑えつつ捕集効率を維持できる。発泡樹脂の平均粒子径が2μm未満であると、連通孔の数が減少するおそれがある。その結果、圧力損失が上昇するおそれがある。200μm超であると、連通孔の数が増加するおそれがある。その結果、捕集効率が低下するおそれがある。
発泡樹脂の殻壁厚さは、0.01〜1.00μmであることが好ましく、0.10〜0.50μmであることが更に好ましく、0.15〜0.45μmであることが特に好ましい。発泡樹脂の殻壁厚さが0.01μm未満であると、目封止材をハニカム構造部に摺り込む際に発泡樹脂が潰れ易くなるおそれがある。そのため、気孔形成の効果が低下してしまう。1.00μm超であると、発泡樹脂の重量が大きくなるため、焼成の際にクラックが発生し易くなるおそれがある。
目封止材に含まれるセラミック原料を含有する成形原料としては、ハニカム成形体を成形するための坏土の原料であるセラミック原料を含有する成形原料と同じものを用いることができる。
目封止材は、上記セラミック原料を含有する成形原料及び発泡樹脂以外に、水、結合剤、分散剤、界面活性剤等の添加剤などを含んでいてもよい。
セルの開口部に目封止材を連続して摺り込むことにより充填する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。例えば、まず、ハニカム成形体の一方の端面にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、所定のセルを塞いでいる部分に孔を開ける。次に、ハニカム成形体を、マスクを貼り付けた側の端面(一方の端面)が上方を向くように配置する。次に、上方を向いた端面に、セラミック原料を含有する成形原料及び上記発泡樹脂を含有する目封止材を連続して摺り込む。具体的には、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した目封止材をセルの開口部に摺り込む。このようにして、マスクに孔が形成されている所定のセルの一方の端部に上記目封止材を充填する。次に、ハニカム成形体の他方の端面にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、残余のセルを塞いでいる部分に孔を開ける。次に、ハニカム成形体を、マスクを貼り付けた側の端面(他方の端面)が上方を向くように配置する。次に、上方を向いた端面に、上記目封止材を連続して摺り込む。具体的には、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した目封止材をセルの開口部に摺り込む。このようにして、マスクに孔が形成されている残余のセルの他方の端部に上記目封止材を充填する。なお、コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合したものである。上記コージェライト化原料は、具体的には、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等が配合されたものである。目封止材をハニカム成形体のセル内に摺り込む方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができる。
目封止材の粘度は、30〜2000dPa・sであることが好ましく、40〜1500dPa・sであることが更に好ましく、50〜1000dPa・sであることが特に好ましい。目封止材の粘度が上記下限値未満であると、目封止材をハニカム成形体に摺り込んだ際に目封止材が垂れるおそれがある。上記上限値であると、目封止材をハニカム成形体に摺り込むことが困難になるおそれがある。その結果、目封止部の深さを必要な深さとすることができなくなるおそれがある。
[2−3]ハニカム構造体作製工程:
焼成温度は、ハニカム成形体の材質によって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
なお、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得た後、ハニカム焼成体の所定のセルの一方の端面側の端部に目封止材を充填してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。このコージェライト化原料100質量部に、造孔材を10質量部、分散媒を20質量部、有機バインダを1質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒として水を使用し、造孔材としては平均粒子径15μmのコークスを使用した。有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形して、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製した。ハニカム成形体は、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形で、全体形状が円柱形であった。次に、作製したハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させて乾燥したハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を得た。その後、ハニカム乾燥体の両端部を切断して所定の寸法に整えた。次に、ハニカム乾燥体の一方の端面にマスクを貼り付けた。このとき、セルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、所定のセルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端部(一方の端部)を上に向け、自動印刷機のゴムベラを用いて所定のセルの開口部に目封止材を連続して摺り込んだ。具体的には、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した目封止材をセルの開口部に摺り込んだ。このようにして、所定のセルの一方の端部に上記目封止材を充填した。目封止材は、上記坏土と同じコージェライト化原料と1.5質量%の発泡樹脂(平均粒子径50μm、殻壁厚さ0.2μmのアクリルニトリルの共重合物)と30質量%の水とからなるものであった。目封止材の粘度(25℃)は、280dPa・sであった。なお、目封止材の粘度は、回転粘度計により測定した。
次に、ハニカム乾燥体の他方の端面にマスクを貼り付けた。このとき、セルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、残余のセルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端部(他方の端部)を上に向け、上記一方の端部と同様にして自動印刷機のゴムベラを用いて残余のセルの開口部に上記目封止材を連続して摺り込んだ。具体的には、上記一方の端部側のセルに目封止材を充填する場合と同様に、新たな目封止材を追加することなく複数回に分けて、予め用意した1種類の目封止材をセルの開口部に摺り込んだ。このようにして、残余のセルの他方の端部に上記目封止材を充填した。
なお、表1中、「セルの開口部に目封止材を摺り込んだ」場合を「摺り込み」と記す。また、「目封止材を連続して摺り込んだ」場合を「連続」と記す。「予め用意した1種類の目封止材に新たな目封止材を追加した後、この目封止材をセルの開口部に摺り込んだ」場合を「不連続」と記す。また、「摺り込み」ではない方法を採用した場合、「圧入」と記す。「圧入」とは、以下のようにして目封止材を充填した場合をいう。即ち、まず、目封止材を平板上に均一に塗り広げて表面が平らな目封止材層を形成する。その後、この目封止材層の表面に、ハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端面が接するように目封止材層にハニカム乾燥体を載せる。その後、ハニカム乾燥体を目封止材層に押し付ける。このようにして、目封止材をセルの開口部に充填したことをいう。また、表1中、「追加目封止材」は、予め用意した1種類の目封止材に、新たなに追加した目封止材のことを示す。「追加目封止材の発泡樹脂」は、上記「追加目封止材」に含まれる「発泡樹脂」の含有割合(質量%)を示す。「無」は、新たな目封止材を追加していないことを示す。
次に、上記目封止材を充填したハニカム乾燥体を熱風乾燥機で乾燥した。その後、1410〜1440℃で5時間焼成した。このようにしてハニカム構造体を作製した。
得られたハニカム構造体は、直径が144mmであり、中心軸方向の長さが152mmであった。ハニカム構造体の直径Dに対する中心軸方向の長さLの比の値(L/D)が1.06であった。ハニカム構造体のセル密度は27.90個/cmであった。隔壁の厚さは0.10mmであった。ハニカム構造体の両端面におけるセルの開口率はそれぞれ89.6%であった。隔壁の気孔率は36%であった。隔壁の平均細孔径は10μmであった。
更に、目封止部の外側領域の気孔率は29%であった。目封止部の中央領域の気孔率は34%であった。目封止部の内側領域の気孔率は38%であった。目封止部の内側領域と外側領域との気孔率の差は9%であった。目封止部の内側領域と隔壁との気孔率の差は2%であった。目封止部の平均細孔径は4μmであった。目封止部における気孔率は「連続」していた(表2中、「気孔率の連続性」と記す)。結果を表2に示す。目封止部の深さ(セルの延びる方向の長さ)は8mmであった。
[気孔率]:
隔壁の気孔率は以下の方法で算出した。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に平行な断面におけるハニカム構造体の隔壁を任意に複数視野撮影する。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、隔壁の気孔率を算出する。
目封止部の各領域の気孔率は以下の方法で算出した。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に平行な断面における目封止部を複数視野撮影する。なお、撮影する視野は、各領域の、セルの延びる方向の両端部分及び中央部分からそれぞれ選択するものとする。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、目封止部の各領域(外側領域、中央領域、及び内側領域)の気孔率を算出する。
[気孔率の連続性]:
まず、セルの延びる方向に平行な断面において目封止部を、外側端面から内側端面までセルの延びる方向に10個の領域(分割領域)に分割する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)によって分割領域のそれぞれを2視野撮影する。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各分割領域中の各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、各分割領域の気孔率を算出する。そして、各分割領域の気孔率が、外側端面から内側端面まで順次大きくなっている場合、気孔率は「連続」とする。各分割領域の気孔率が、外側端面から内側端面まで順次大きくなっていない場合、気孔率は「不連続」とする。
Figure 0005875997
Figure 0005875997
作製したハニカム構造体について、[端面圧縮強度]、[4点曲げ]、[キャニング時のクラック発生数]、[耐熱衝撃性]及び[総合評価]の各評価を行った。各評価の評価方法を以下に示す。
[端面圧縮強度]
作製したハニカム構造体に静水圧荷重を負荷し、ハニカム構造体が破壊されたときの荷重(圧縮破壊強度)を測定する。測定された値を以下の基準で評価する。ハニカム構造体が破壊された時の圧力値が1.0MPa以上である場合を「合格」とする。ハニカム構造体が破壊された時の圧力値が1.0MPa未満である場合を「不合格」とする。
[4点曲げ]
作製したハニカム構造体を、目封止部を含んだ状態で切り出す。切り出す試験片は、1辺10mmで長さ30mmの四角柱状である。この試験片の4点曲げ強度(MPa)を測定する。その後、この測定値を以下の基準にて評価を行う。4点曲げ強度が1.0MPa以上である場合を「合格」とする。4点曲げ強度が1.0MPa未満である場合を「不合格」とする。
[キャニング時のクラック発生数]
5個のハニカム構造体をそれぞれ缶体にキャニングする。その後直ちに各ハニカム構造体を缶体から取り外す。その後、これらのハニカム構造体を観察し、クラックが発生しているハニカム構造体の数を数える。その後、以下の基準で評価を行う。5個のハニカム構造体のうちいずれのハニカム構造体にもクラックが発生していなかった場合を「合格」とする。5個のハニカム構造体のうちクラックが一つでも確認された場合を「不合格」とする。なお、5個のハニカム構造体は、全て同じ大きさである。缶体は、内径が152mm、長さが160mmのものを用いる。
[耐熱衝撃性]
5個のハニカム構造体をそれぞれ電気炉に入れて750℃に昇温して1時間保持する。その後、直ぐに電気炉からハニカム構造体を取り出し、大気中で自然冷却させる。その後、クラックが発生したハニカム構造体の数を数える。その後、以下の基準で評価を行う。5個のハニカム構造体のうちいずれのハニカム構造体にもクラックが発生していなかった場合を「合格」とする。5個のハニカム構造体のうちクラックが一つでも確認された場合を「不合格」とする。結果を、表3中の「耐熱衝撃試験時のクラック発生数」の欄に示す。
[総合評価]
上記[キャニング時のクラック発生数]及び[耐熱衝撃性]の評価のいずれにおいても、クラックが発生しなかった場合(即ち、いずれの評価も「合格」であった場合)を「OK」とする。クラックが発生したハニカム構造体が確認された場合(即ち、いずれかの評価で「不合格」となった場合)を「NG」とする。
本実施例における各評価の結果を表3に示す。
Figure 0005875997
(実施例2〜22、比較例1〜10)
表1に示す量の発泡樹脂を使用し、表1,2に示す各条件を満たすハニカム構造体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜22、比較例1〜10の各ハニカム構造体を作製した。その後、作製した各ハニカム構造体について、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1〜22のハニカム構造体は、比較例1〜10のハニカム構造体に比べて、キャニング時及び使用時においてクラックが発生し難いことが確認できた。
本発明のハニカム構造体は、排ガスの浄化に好適に用いることができる。本発明のハニカム構造体の製造方法は、排ガスの浄化に好適に用いることができるハニカム構造体を製造することができる。
2:一方の端面、3:他方の端面、4:セル、4a:所定のセル、4b:残余のセル、5:隔壁、6:ハニカム構造部、7:外周壁、8:目封止部、11:外側端面、13:内側端面、15:外側領域、17:内側領域、19:中央領域、100:ハニカム構造体、D:外側端面と内側端面との間の距離、K1:内側境界線、K2:外側境界線、T1,T2:端点、P:一部領域。

Claims (9)

  1. 一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部と、
    前記ハニカム構造部の所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に配設される多孔質の目封止部と、を備え、
    前記目封止部は、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に平行な断面において、前記ハニカム構造部の端面側の端面である外側端面とは反対側の端面である内側端面から、前記外側端面と前記内側端面との間の距離の30%の距離に位置し、かつ前記セルの延びる方向に垂直な直線である内側境界線と、前記内側端面から、前記外側端面と前記内側端面との間の距離の70%の距離に位置し、かつ前記セルの延びる方向に垂直な直線である外側境界線とを描いたとき、
    前記外側端面と前記外側境界線との間の領域である外側領域と、前記内側端面と前記内側境界線との間の領域であり気孔率が前記外側領域の気孔率よりも大きい内側領域と、を有し、
    前記目封止部が単一の層であり、前記目封止部の気孔率が、前記外側端面から前記内側端面に向かうに従って連続して大きくなるハニカム構造体。
  2. 前記目封止部の、前記外側領域と前記内側領域との間の領域である中央領域の気孔率が、前記外側領域の気孔率よりも大きく、かつ前記内側領域の気孔率が、前記中央領域の気孔率よりも大きい請求項1に記載のハニカム構造体。
  3. 前記目封止部の前記内側領域と前記外側領域との気孔率の差が、2〜55%である請求項1または2に記載のハニカム構造体。
  4. 前記目封止部の前記外側領域の気孔率が、29〜80%であり、前記目封止部の前記内側領域の気孔率が、38〜87%である請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  5. 前記ハニカム構造部の前記隔壁と前記目封止部の前記内側領域の気孔率の差が、2〜50%である請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  6. 前記ハニカム構造部の前記隔壁の気孔率が、30〜80%である請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  7. 前記ハニカム構造部の前記一方の端面及び前記他方の端面における前記セルの開口率が、それぞれ、30〜90%である請求項1〜のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
  8. セラミック原料を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形して、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を作製するハニカム成形体作製工程と、
    作製した前記ハニカム成形体の前記セルの開口部に、セラミック原料を含有する成形原料及び1.5〜35質量%の発泡樹脂を含む目封止材を連続して摺り込むことにより充填して目封止ハニカム成形体を作製する目封止ハニカム成形体作製工程と、
    作製した前記目封止ハニカム成形体を焼成して、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に多孔質の目封止部が配設されたハニカム構造体を作製するハニカム構造体作製工程と、を有し、
    作製された前記ハニカム構造体は、前記目封止部が単一の層であり、前記目封止部の気孔率が、前記ハニカム構造体の端面側の端面である外側端面から前記外側端面とは反対側の端面である内側端面に向かうに従って連続して大きくなるハニカム構造体の製造方法。
  9. 前記目封止材の粘度が、30〜2000dPa・sである請求項に記載のハニカム構造体の製造方法。
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