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JP5869691B2 - ボールエンドミル - Google Patents

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Description

本発明はボールエンドミルに関する。
ボールエンドミルは、主として金型などの切削加工に用いられている。このボールエンドミルの先端側の切刃は、側面視で円弧状である。かかる先端側のボール刃は、先端視でも円弧状であり、曲率半径が内周部から外周部にかけて一定となる形状が一般的であった。また、特許文献1では、ボール刃の内周側の第1刃部と、中間の第2刃部と、外周側の第3刃部とを備えて、第2刃部の曲率半径を第1刃部の曲率半径よりも大きくするとともに、第3刃部の曲率半径を第2刃部の曲率半径よりも小さくしたボールエンドミルが開示され、エンドミル本体の防振性が高まることが開示されている。
特許第4407975号明細書
しかしながら、特許文献1に開示されたボールエンドミルでは、精密加工で使用するような回転速度が速い加工条件となると、ボール刃の中心軸側において加工面のむしれが発生して、加工面粗度が低下する場合があった。また、ボール刃の内周側における切削抵抗が大きくなることによって、ボール刃にかかる負荷が大きくなり、エンドミル本体の防振性は、むしろ悪くなる場合があった。
本発明は、この問題点を解決するものであり、回転速度が速い加工条件であっても、耐摩耗性が高くかつ防振性能を向上したボールエンドミルを提供することにある。
本発明のボールエンドミルは、中心軸周りに回転する工具本体と、該工具本体の先端側の前記中心軸側から後方に向かって設けられた側面視で円弧状のボール刃と、を具備し、前記ボール刃は、前記中心軸側から外周側に向かって曲率半径が漸次小さくなっているものである。
本発明のボールエンドミルによれば、ボール刃が、中心軸から外周に向かって曲率半径が漸次小さくなっていることによって、回転速度が速い加工条件であっても、ボール刃の内周側における切削抵抗の増大を抑制できて加工面のむしれが発生することなく、加工面粗度の低下を抑制でき、かつボール刃の耐摩耗性が向上する。また、ボール刃にかかる負荷も小さいので、エンドミル本体の防振性が向上する。
図1Aは本発明のボールエンドミルの概略側面図である。 図1Aを90°回転した概略側面図である。 図1のボールエンドミルを先端X側から見た先端視図である。 図2のボールエンドミルについて、ボール刃の点Pについての断面図(I−I断面図)である。 図2のボールエンドミルについて、ボール刃の点Hについての断面図(II−II断面図)である。 図2のボールエンドミルについて、ボール刃の点Qについての断面図(III−III断面図)である。
本発明のボールエンドミルについて、図1−3を用いて説明する。
図1−3のボールエンドミル(以下、単にエンドミルと略す。)10は、ソリッドタイプのボールエンドミルであり、中心軸O周りに回転する工具本体1と、工具本体1の先端(X)側から後方に向かって(後端(Y)側に向かって)設けられた側面視で円弧状のボール刃2を具備している。ボール刃2は、先端(X)側から後方に向かう(後端(Y)側に向かう)につれて、先端視では、中心軸O側から外周側に位置している。ボール刃2の回転軌跡は略半球状となる。なお、図2では、ボール刃2が2枚(2a、2b)設けられており、中心軸Oに対して点対称に配置されている。また、中心軸Oの近傍にはギャッシュが形成され、これによって、中心軸O上を含むボール刃2a、2b間には、チゼルエッジ4が設けられている。
工具本体1は後方が略円柱形状であり、工具本体1の後端(Y)側は、ホルダ(図示せず)に装着されて、切削加工機に取り付けられる。そして、中心軸Oを中心に回転方向Tに回転させられ、例えば、金型等の加工に用いられる。
エンドミル10には、ボール刃2以外に、ボール刃2の後方に設けられる外周刃3と、ボール刃2および外周刃3の回転方向に設けられるすくい面5と、ボール刃2および外周刃3の逆回転方向に設けられる逃げ面6と、すくい面5の後方に続く切屑排出溝7とを具備している。切屑排出溝7は後方に向かって回転方向Tとは逆の方向にねじれている。
そして、本実施態様によれば、ボール刃2の形状は、図2の先端視図における中心軸O側のボール刃2とチゼルエッジ4との境界である点P(ボール刃2の中心軸側の端部の位置)から外周に位置する点Qに向かって曲率半径が漸次小さくなっている。なお、本発明におけるボール刃2の各位置における曲率半径rは、ボール刃2の各位置と、この点を中心として0.2mmの距離に位置するボール刃2の2点との3点を通る円弧の曲率半径を指す。また、本発明において、ボール刃2の各位置における曲率半径を測定するには、0.4mmの距離の間隔で測定する。
すなわち、ボール刃2の各点を中心として描ける円弧の曲率半径rが同じ場合でも、図2の先端視図に投影されるボール刃2の軌跡は、中心軸O側の点Pから外周に位置する点Qに向かって曲率半径rが小さく見えることもあるが、本実施態様においては、先端視図に投影されるボール刃2の軌跡ではなく、3次元の立体形状で測定して、ボール刃2の各点を中心として描ける円弧の曲率半径rが中心軸O側の点Pから外周に位置する点Qに向かって小さくなっている。
これによって、回転速度が速い加工条件で切削しても、ボール刃2の中心軸O側が必要以上に被削材に接触することを抑制できるので、ボール刃2の中心軸O側の点P付近における切削抵抗の増大を抑制できる。その結果、加工面のむしれが発生することなく、加工面粗度の低下を抑制でき、かつボール刃2の耐摩耗性が向上する。また、ボール刃2にかかる負荷も小さいので、切削加工時の衝撃によって発生するエンドミル本体1の振動も小さくできる。
なお、ボール刃2の端部である点Pおよび点Qにおける曲率半径rは、点Pおよび点Qを終端として、終端からボール刃2の0.2mmおよび0.4mmの距離に位置する2点を合わせた3点を通る円弧の曲率半径rとして求められる。図面には曲率半径の記載を省略している。
また、本実施態様によれば、ボール刃2の中心軸O側の端部の位置である点Pから、ボール刃2の中心軸Oを中心とする半径R/2の円(図2における円C)との交点Hまでの間におけるボール刃2の曲率半径rP−Hは、エンドミル10の刃径に相当する工具本体1の直径D(=2R)に対して0.8〜2の比率であるとともに、工具本体1の半径Rの半分の位置Hから外周の点Qまでの間におけるボール刃2の曲率半径rH−Qは、工具本体1の直径Dに対して0.2〜1.2の比率となっている。これによって、ボール刃2の耐摩耗性とエンドミル本体1の防振性をともに満足させることができる。
さらに、本実施態様によれば、中心軸O側の端部の位置である点Pにおけるボール刃2の曲率半径rは、工具本体1の直径Dに対して1.5〜2の比率であり、工具本体1の半径Rの半分の位置である点Hにおけるボール刃2の曲率半径rは、工具本体1の直径Dに対して0.8〜1.2の比率であり、かつ外周の点Qにおけるボール刃2の曲率半径rは、工具本体1の直径Dに対して0.2〜0.6の比率となっている。これによって、ボール刃2の耐摩耗性とエンドミル本体1の防振性をともに満足させることができる。
ここで、ボール刃2の形状が点Pから点Qに向かって曲率半径rが漸次小さくなっているとは、曲率半径rが段階的に小さくなっているものであってもよく、一定の割合で連続的に小さくなっているものであってもよい。本実施態様では、中心軸O側の点Pから外周の点Qに向かって、ボール刃2の曲率半径rが一定の割合で連続的に小さくなっている。これによって、ボール刃2には曲率半径rが変わる特異点ができないので、切削抵抗が局所的に増大することがなく、ボール刃2全体としての耐摩耗性が向上する。
また、図2の先端視図によれば、エンドミル10のボール刃2は2つ(2枚)存在しているが、ボール刃2は2枚に限定されるものではなく、3枚またはそれ以上であってもよい。ボール刃2が2枚の形態では、刃径の小さいボールエンドミルを用いて加工時に発生する切屑の排出性が良好であるという効果がある。また、図示はしないが、他の実施態様では、少なくとも1つのボール刃の先端視形状が他のボール刃の先端視形状と異なっている構成も適用可能である。これによって、少なくとも1つのボール刃は非対称な形状となり、切削時にエンドミル10が共振してびびりが発生することを抑制することができる。少なくとも1つのボール刃を非対称な形状とする一例としては、1つのボール刃の形状を先端視におけるボール刃の曲率半径rを段階的に小さくする構成とし、他のボール刃では先端視におけるボール刃の曲率半径rを連続的に小さくする構成等が挙げられる。なお、この1つのボール刃の先端視形状が他と異なる構成は、刃数が3つ以上の場合に好適に採用できる。
ここで、本実施態様においては、ボール刃2のすくい角θが0°〜−20°である。すなわち、ボール刃2のすくい角θはゼロ度であるか、またはいわゆるネガのすくい角がついている。さらに、本実施態様によれば、図3A〜図3Cのボール刃2の点P,H,Qについての断面図に示すように、中心軸O側から外周側に向かってすくい角の負の値が大きくなっている。すなわち、点Pにおけるすくい角θ、点Hにおけるすくい角θ、点Qにおけるすくい角θの順に、ボール刃2から遠ざかるにつれてすくい面5が隆起するように、すくい角θの負の値が大きくなっている。
これによって、ボール刃2の強度を確保し、ボール刃2の欠損を抑制することができる。すなわち、外周側ではボール刃2の曲率半径が小さいため、ボール刃2が突き出た形になり強度的に弱くなりやすい。また、この外周側では切削速度も速いため、摩耗の進行も速い。一方、中心軸O側では、切削速度がゼロに近くなるため切削抵抗が大きくなる傾向にある。そのため、中心軸O側から外周側に向かってすくい角θの負の値が大きくなることによって、外周側におけるボール刃2のチッピングや欠損を抑制することができるとともに、中心軸O側の切削抵抗を小さくして、加工面が荒れることを抑制する。
本実施態様によれば、中心軸O側の点Pにおけるすくい角θは、0°〜−1°であり、中間の点Hにおけるボール刃2のすくい角θは、−1°〜−5°であり、かつ外周の点Qにおけるボール刃2のすくい角θは、−10°〜−20°である。
また、本実施態様によれば、図3A〜図3Cに示すように、ボール刃2の逃げ角αが中心軸O側から外周側に向かって大きくなっている。すなわち、点Pにおける逃げ角α、点Hにおける逃げ角α、点Qにおける逃げ角αの順に大きくなっている。
なお、上述の実施形態においては、図1A、図1B、図2に示すように工具本体1自体の所定部位に切刃が形成された所謂ソリッドタイプの構成を例にとって説明したが、これに代えて、所謂スローアウェイチップをホルダに装着した所謂スローアウェイタイプの構成であっても良い。
図1A、図1B、図2の概略形状のボールエンドミル形状で、ボール刃の曲線形状および工具本体の直径に対する点P(中心軸側)、点Q(外周)、点H(半径の半分)の各位置での曲率半径r、r、r、曲率半径の直径(D)に対する比率r/D、r/D、r/D、すくい角θ、θ、θ、逃げ角α、α、αが表1の寸法を有する試料No.1〜10のボールエンドミルを作製し、下記条件で切削加工評価を行った。結果は表2に示した。なお、エンドミルのボール刃は2枚、工具本体の直径(刃径D=2R)は6mmのものを用いた。
(切削条件)
被削材 :HPM38鋼
加工径 :φ6mm
加工速度:220m/分
回転数 :11,700回/分
送り :0.058mm/刃
切込深さ:0.6mm×0.3mm
切削形態:肩加工
切削環境:乾式切削
評価項目:切削長100m加工時点で、ボール刃を先端視した状態での最大摩耗量と加工面粗度(最大高さ)
Figure 0005869691
Figure 0005869691
表1、2の結果から明らかなとおり、ボール刃の曲率半径が中心軸側から外周側にわたって同じ試料No.1は、工具本体の振動が大きくて加工面粗度が悪くなった。また、ボール刃の曲率半径が中心軸側と外周側との中間位置で大きい試料No.6では、加工面にむしれが発生して加工面粗度が悪く、かつ摩耗量も大きくなった。
これに対して、本発明に従い、ボール刃の曲率半径が中心軸側から外周側に向かって漸次小さくなっている試料No.2〜5、7−10では、工具本体の振動が小さく、かつ加工面粗度も小さいものであった。
刃数が3つ、工具本体の直径(刃径D)は6mmで、3つの刃とも実施例1の試料No.4の形状からなるボールエンドミルを作製した(試料No.11)。同様に、刃数が3つ、工具本体の直径(刃径D=2R)は6mmで、2つの刃は実施例1の試料No.4の形状で1つの刃が実施例1の試料No.2からなるボールエンドミルを作製した(試料No.12)。試料No.11、12に対して、実施例1の条件で切削加工評価を行った。切削長100m加工時点で、ボール刃を先端視した状態での最大摩耗量は、試料No.11が0.050mm、試料No.12が0.047mmであり、加工面粗度(最大高さ)は試料No.11が2.02μm、試料No.12が1.34μmであった。
1:工具本体
2:ボール刃
3:外周刃
4:チゼルエッジ
5:すくい面
6:逃げ面
7:切屑排出溝
10:エンドミル
X:先端
Y:後端
O:中心軸
P:ボール刃の中心軸側端部
Q:ボール刃の外周側端部
H:ボール刃の中間位置
T:回転方向

Claims (5)

  1. 中心軸周りに回転する工具本体と、該工具本体の先端側から後方に向かって設けられた側面視で円弧状のボール刃と、を具備し、前記ボール刃は、前記中心軸側から外周側に向かって曲率半径が漸次小さくなっているとともに、中心軸から前記外周側に向かって前記工具本体の半径の半分の位置までの間における前記ボール刃の曲率半径は、前記工具本体の直径に対して0.8〜2の比率であるとともに、前記工具本体の半径の半分の位置から外周の位置までの間における前記ボール刃の曲率半径は、前記工具本体の直径に対して0.2〜1.2の比率であるボールエンドミル。
  2. 中心軸周りに回転する工具本体と、該工具本体の先端側から後方に向かって設けられた側面視で円弧状のボール刃と、を具備し、前記ボール刃は、前記中心軸側から外周側に向かって曲率半径が漸次小さくなっているとともに、前記ボール刃の中心軸側の端部の位置における曲率半径は、前記工具本体の直径に対して1.5〜2の比率であり、前記中心軸から前記工具本体の半径の半分の位置における前記ボール刃の曲率半径は、前記工具本体の直径に対して0.8〜1.2の比率であり、かつ前記ボール刃の前記外周の位置における曲率半径は、前記工具本体の直径に対して0.2〜0.6の比率であるボールエンドミル。
  3. 中心軸周りに回転する工具本体と、該工具本体の先端側から後方に向かって設けられた側面視で円弧状のボール刃と、を具備し、前記ボール刃は、前記中心軸側から外周側に向かって曲率半径が漸次小さくなっているとともに、前記中心軸から前記外周側に向かって、前記ボール刃の曲率半径が一定の割合で連続的に小さくなっているボールエンドミル。
  4. 先端視で、前記ボール刃が2つ以上存在するとともに、少なくとも1つのボール刃の先端視形状が他のボール刃の先端視形状と異なっている請求項1乃至のいずれか記載のボールエンドミル。
  5. 前記ボール刃は、すくい角が0°〜−20°であり、前記中心軸側から前記外周側に向かってすくい角の負の値が大きくなっている請求項1乃至のいずれか記載のボールエンドミル。

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