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JP5848028B2 - 2’−デオキシヌクレオシドの製造方法 - Google Patents

2’−デオキシヌクレオシドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に関する。
近年、抗生物質、抗ウイルス薬、アンチセンス医薬の原料等として、2'−デオキシヌクレオシド類が利用されている。2'−デオキシヌクレオシド類の一つであるチミジンは、2−デヒドロ―3−デオキシグルコン酸を基質として2−デオキシリボースを合成し、2−デオキシリボースのリン酸化反応により合成した2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルからのリン酸転移反応及びグリコシル化反応により得られることが知られている。
2−デオキシリボースの酵素反応による製造方法は知られている。例えば、特許文献1には、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウム又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カリウムを出発物質として、酵素的脱カルボキシル化反応により2−デオキシ−D−リボースが得られることが記載されている。
2−デオキシリボースの酵素反応に用いられる酵素の一つとして、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.7)が挙げられる。特許文献1には、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸又はその塩を出発原料として、Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた脱カルボキシル化反応により2−デオキシリボースが得られることが記載されている。
また、従来、Pseudomonas putida由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを変異させる技術も知られている。非特許文献1には、Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの460番目のアラニン、又は/及び、464番目のフェニルアラニンを置換したい変異体を用いて、分岐状の側鎖を持つケト酸などを反応させた結果が記載されている。
非特許文献2には、Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの476番目のロイシン、又は、365番目のメチオニンをロイシンに置換した変異体をベンゾホルメートやベンズアルデヒド誘導体とアセトアルデヒドとのカルボライゲーション反応に用いることが記載されている。
非特許文献3には、Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの24番目のプロリン、460番目のアラニン、又は、461番目のロイシンを置換した変異体を、それぞれ、ベンズアルデヒド誘導体と脂肪族アルデヒドとのカルボライゲーション反応に用いることが記載されている。
非特許文献4には、Pseudomonas putida由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼでは、281番目のヒスチジンをアラニンに置換すると(R)−マンデル酸に対するkcat値が減少したことが記載されている。
非特許文献5には、Pseudomonas putida由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの281番目のヒスチジンをフェニルアラニンに置換した場合、ベンゾイルホルメートに対するkcat値が1/5に低下したこと、及び、チロシンに置換した場合、1/46にまで低下したことがそれぞれ記載されている。
また、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの酵素反応による製造方法も知られている。この酵素反応に用いられる酵素の一つとして、酸性ホスファタ−ゼ(EC3.1.3.2)が挙げられる。特許文献2には、ペント−スを出発原料として、Shigella flexneri由来の酸性ホスファタ−ゼを用いたリン酸化反応によりペント−ス−5−リン酸エステルが得られることが記載されている。
また、従来、酸性ホスファタ−ゼを変異させる技術も知られている。特許文献3には、各種微生物由来の酸性ホスファタ−ゼの72番目のグリシンをアスパラギン酸へ、又は/及び、151番目のイソロイシンをスレオニンへ置換した変異体を用いて、ヌクレオシド類をリン酸化反応させた結果が記載されている。
特許文献4には、Escherichia blattae由来の酸性ホスファタ−ゼ、又は/及び、Enterobacter aerogenes由来の酸性ホスファタ−ゼの様々なアミノ酸を置換した変異体をヌクレオシド類のリン酸化反応に用いることが記載されている。
特許文献5には、各種微生物由来の酸性ホスファタ−ゼの様々なアミノ酸を置換した変異体をヌクレオシド類のリン酸化反応に用いることが記載されている。
特許文献6には、ヌクレオシドホスホリラーゼ存在下に、ペントース−1−リン酸からヌクレオシドを製造する方法が記載されている。特許文献6では、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを反応液に存在させることで、反応の副生成物であるリン酸イオンが難水溶性の塩として沈殿し反応系外に除外し、反応の平衡をヌクレオシド化合物合成方向へ移動させて、反応転化率を向上させることが記載されている。
特許文献7には、デオキシリボース1−リン酸と核酸塩基とを反応させて、デオキシリボヌクレオシドと無機リン酸とを生成するデオキシリボヌクレオシドの酵素的合成法において、生成する無機リン酸を酢酸バリウムによって沈澱させながら、大腸菌由来ホスホペントムタ−ゼおよびプリンヌクレオシドホスホリラ−ゼを用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸とアデニンから2'−デオキシアデノシンを合成したことが記載されている。
特許文献8には、バチルス属細菌由来ホスホペントムタ−ゼおよびヌクレオシドホスホリラ−ゼを用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸とヒポキサンチンから2'−デオキシイノシンを合成したことが記載されている。
特表2007−527855号公報 国際公開第2005/045052号パンフレット 特開2001−245676号公報 特開2001−136984号公報 特開平10−201481号公報 特開2002−345497号公報 特表2003−507071号公報 特開2002−95494号公報
Protein Engineering,Design&Selection,vol.18,no.7,pp.345−357,2005 ChemBioChem,2003,4,721−726 ChemBioChem,2008,9,406−412 Biochemistry,2003,42,1820−1830 PNAS,2008,vol.105,no.15,5733−5738
しかしながら、上記文献記載の技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
上記特許文献1記載の反応では、副生する二酸化炭素の影響で反応液のpHが変動する。この変動を抑制するため、pH調整が必要であり、その方法として酸を添加する方法や緩衝液を反応溶媒として用いる方法がある。これらの反応方法は、低収率であり、また反応基質である2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸濃度が低く工業的製造に適しているとは言い難い。
また、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸塩由来のナトリウムカチオン又はカリウムカチオンと、副生する二酸化炭素との反応により生成する炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、及び、pH調整として用いる酸との反応により生成するナトリウム塩又はカリウム塩は、水に対する溶解度が高い。このため、これらの塩の除去には、イオン交換樹脂の使用などが必要であり、工業的に効率よく2−デオキシリボースを精製することは困難である。
また、特許文献1の技術では、生成した2−デオキシリボースは定量されておらず、推測されている生成物濃度では工業的に用いるには十分といえる反応収率ではない。
非特許文献1〜5には、2−デオキシリボースのように側鎖に水酸基を有する化合物に対する基質特異性の改変による活性向上を示した例は記載されておらず、複数の水酸基を有する化合物に対して活性中心のどのアミノ酸が活性向上に有効であるかは明らかにされていない。
以上のように、効率の良い2−デオキシリボースの工業的製造方法は確立されていない。
また、特許文献2の技術では、2−デオキシリボ−スからの2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの生成収率が低く、工業的に用いるには十分ではない。
特許文献3〜5には、2−デオキシリボ−スに対する基質特異性の改変による活性向上を示した例は記載されておらず、2−デオキシリボ−スに対してどのアミノ酸が活性向上に有効であるかは明らかにされていない。
またこれらの技術においては、大量にリン酸が排出されるため、その処理に膨大なコストがかかる。特許文献2には、リン酸共与体がペント−スに対して多く存在しすぎると、リン酸の産業廃棄物が多く発生してしまいプロセス上好ましくないことから、リン酸共与体がペント−スに対して3倍モル以上7倍モル以下存在する条件下で行われることが記載されている。しかしながら、工業的には、さらにリン酸共与体の使用量を低減して、リン酸の産業廃棄物をより低減できる技術が求められる。
特許文献6〜8の技術においても、2'−デオキシヌクレオシドの工業生産の効率化という観点から、さらなる改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高収率で生産性がよく工業化に適した2'−デオキシヌクレオシドの製造方法を提供することである。
本発明によれば、
少なくとも下記(i)を実行することにより、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する2'−デオキシヌクレオシドの製造方法であって、
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩に対する脱カルボキシル化能を有する脱カルボキシル化酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボースを合成する、
前記脱カルボキシル化酵素は、ケト酸デカルボキシラーゼ活性を有するベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼであり、
前記二価金属塩は、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の二価金属の塩であり、
前記脱カルボキシル化酵素が、Pseudomonas属由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼまたはChromohalobacter属由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼである、2'−デオキシヌクレオシドの製造方法が提供される。
本発明によれば、少なくとも上記(i)を実行するため、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを効率よく合成することができ、工業生産に適した2'−デオキシヌクレオシドの製造方法が実現可能となる。
ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を比較した結果を示す図である。 ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの活性部位を示す図である。 酸性ホスファタ−ゼのアミノ酸配列を比較した結果を示す図である。網掛けの箇所は共通配列の箇所を示す。 実験例を示す図である。 実施例を示す図である。 (a)及び(b)は、実施例を示す図である。 (a)及び(b)は、実施例を示す図である。 (a)及び(b)は、実施例を示す図である。 (a)及び(b)は、実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。 実施例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、説明する。本発明は、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する方法である。本発明の方法では、少なくとも下記(i)、(ii)及び(iii)のいずれかを実行する。
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボ−スを合成する;
(ii)基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する;
(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用して2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
<第1の実施形態>
本実施形態は、上記(i)を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造するものである。具体的には、本実施形態は、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いた酵素による脱カルボキシル化反応を行い、得られた2−デオキシリボ−スを中間体として、2'−デオキシヌクレオシドを製造する方法である。
(2―デヒドロ―3―デオキシグルコン酸から2―デオキシリボースの合成)
本実施形態では、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、2−デオキシリボースを合成する。
二価金属には、遷移金属と周期表第2族に属する金属とがあり、遷移金属にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛があり、周期表第2族に属する金属には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムがある。2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩に好適な二価金属は、周期表第2族に属する金属であり、より好ましくはカルシウム、ストロンチウム、バリウムである。二価金属は、一種又は二種以上併用してもよい。
本実施形態で実行する脱カルボキシル化反応は、酵素反応により脱カルボキシル化反応を実行する。本実施の形態の脱カルボキシル化反応において用いられる酵素は、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩に対する脱カルボキシル化能を有する脱カルボキシル化酵素であれば特に制限はなく使用することができ、例えば、ケト酸デカルボキシラーゼ活性を有するものを使用することができる。具体的には、種々の微生物由来のケト酸デカルボキシラーゼを使用することができる。中でも、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(EC4・1・1・7)を用いることが好ましく、例えば、Acetobacter pasteurianus(Genbank受け入れ番号 YP_003186914)、Acidithiobacillus ferrooxidans(Genbank受け入れ番号 YP_002427147)、Acidobacterium capsulatum(Genbank受け入れ番号 YP_002754411)、Agrobacterium radiobacter(Genbank受け入れ番号 YP_002546713)、Bradyrhizobium japonicum(Genbank受け入れ番号 NP_774243)、Brevibacterium linens(Genbank受け入れ番号 ZP_05915352)、Burkholdria multivorans(Genbank受け入れ番号 YP_001578906)、Burkholderia xenovorans(Genbank受け入れ番号 YP_555151)、Chromobacterium violaceum(Genbank受け入れ番号 NP_902771)、Chromohalobacter salexigens(Genbank受け入れ番号 YP_572370)、Delftia acidovorans(Genbank受け入れ番号 YP_001562574)、Hyphomonas neptunium(Genbank受け入れ番号 ABI75675)、Methylocella silvestris(Genbank受け入れ番号 YP_002363219)、Micromonospora aurantiaca(Genbank受け入れ番号 EFA34348)、Mycobacterium smegmatis(Genbank受け入れ番号 YP_885985)、Novosphingobium aromaticivorans(Genbank受け入れ番号 YP_496953)、Polaromonas naphthalenivorans(Genbank受け入れ番号 YP_981261)、Providencia alcalifaciens(Genbank受け入れ番号 ZP_03319479)、Providencia stuartii(Genbank受け入れ番号 ZP_02961313)、Pseudomonas aeruginosa(Genbank受け入れ番号 NP_253588)、Pseudomonas fluorescens(Genbank受け入れ番号 YP_260581)、Pseudomonas stutzeri(Genbank受け入れ番号 ABN80423)、Pseudomonas putida(Genbank受け入れ番号 AAC15502)、Ralstonia eutropha(Genbank受け入れ番号 YP_725622)、Rhodococcus jostii(Genbank受け入れ番号 YP_702946)、Rhodopseudomonas palustris(Genbank受け入れ番号 NP_946955)、Saccharopolyspora erythraea(Genbank受け入れ番号 YP_001105345)、Streptomyces coelicolor(Genbank受け入れ番号 NP_631486)、Streptomyces lividans(Genbank受け入れ番号 ZP_05521701)、Streptomyces violaceoruber(Genbank受け入れ番号 CAQ52617)、Sulfolobus solfataricus(Genbank受け入れ番号 NP_343070)、Thermoplasma acidophilum(Genbank受け入れ番号 NP_393976)、Thermoplasma volcanium(Genbank受け入れ番号 NP_111716)に由来するベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いることができる。また、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子において、1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入または転移を含んでいたとしても、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩に対する脱カルボキシル化能を有していれば使用することができる。
酵素的脱カルボキシル化反応において使用されるケト酸デカルボキシラーゼは、ケト酸デカルボキシラーゼ活性を有する菌体の培養液そのものや、該培養液より遠心分離によって分離、回収して得られる形質転換細胞、該形質転換細胞の菌体処理物の形で利用することもできる。ここでいう菌体処理物とは、該形質転換細胞の抽出物や破砕物、該抽出物や破砕物のケト酸デカルボキシラーゼ活性画分を分離・精製して得られる分離物、該形質転換細胞や該形質転換細胞の抽出物、破砕物、分離物を適当な担体を用いて固定化した固定化物が含まれる。
酵素的脱カルボキシル化反応のpH値は、脱カルボキシル化酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、pH5以上8以下の範囲で行うことが好ましく、pH6以上7.5以下の範囲で行うことがより好ましい。
酵素的脱カルボキシル化反応の反応温度は、脱カルボキシル化酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、30℃以上60℃以下の範囲で行うことが好ましく、40℃以上50℃以下の範囲で行うことがより好ましい。
酵素的脱カルボキシル化反応の反応基質である2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の濃度は、脱カルボキシル化酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限はないが、反応液全量に対して9重量%以上25重量%以下の範囲で行うことができる。本実施形態における酵素的脱カルボキシル化反応は、基本的に水を溶媒とするが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩は、例えば、市販されたグルコン酸の二価金属塩を、脱水酵素による酵素的脱水反応に付することにより得ることができる。
前述のとおり、二価金属には、遷移金属と周期表第2族に属する金属とがあり、遷移金属にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛があり、周期表第2族に属する金属には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムがある。グルコン酸の二価金属塩に好適な二価金属は、周期表第2族に属する金属であり、より好ましくはカルシウム、ストロンチウム、バリウムである。二価金属は、一種又は二種以上併用してもよい。
グルコン酸の二価金属塩から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を合成する反応に用いられる脱水酵素は、具体的には、グルコン酸デヒドラターゼ活性を有する酵素を用いることができる。中でも好適な酵素は、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である(特開2005−40130号公報)。
グルコン酸の二価金属塩からの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の合成反応のpH値は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、pH5以上9以下の範囲で行うことが好ましく、pH7以上9以下の範囲で行うことがより好ましい。
グルコン酸の二価金属塩からの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の合成反応の反応温度は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、30℃以上60℃以下の範囲で行うことが好ましく、30℃以上50℃以下の範囲で行うことがより好ましい。
グルコン酸の二価金属塩から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を合成する反応を行うときのグルコン酸の二価金属塩の濃度は、脱水酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限はないが、反応液全量に対して10重量%以上27重量%以下の範囲が好ましい。
また、酵素的脱水反応によりグルコン酸の二価金属塩から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を合成する反応と、酵素的脱カルボキシル化反応により2−デヒドロ−3−デオキシ−グルコン酸の二価金属塩から2−デオキシリボースの合成する反応とは、ワンポット反応により行ってもよい。ワンポット反応とは、一つの反応容器を用いて多段階反応を行うことを意味し、一つの反応容器で多段反応を一度に行うこと、一つの反応中に次の反応を行うこと及び一つの反応が終わった後にこれを原料として同じ反応容器内で次の反応を行うことを含む。
ワンポット反応における脱水酵素は、グルコン酸を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を合成することができれば特に制限はなく、例えばグルコン酸デヒドラターゼであり、好ましくはAchromobacter xylosoxidans由来グルコン酸デヒドラターゼである。
ワンポット反応における変異型2−デオキシリボース合成酵素は、前記の脱カルボキシル化酵素を用いることができる。
グルコン酸の二価金属塩の脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の脱カルボキシル化反応とのワンポット反応は、脱水酵素と脱カルボキシル化酵素との共存下に実行することができる。両酵素の反応液への添加方法は、反応初期に両酵素を全量添加する方法、反応中に両酵素を分割して添加する方法、又は反応初期に脱水酵素を全量添加し、反応中に脱カルボキシル化酵素を分割して添加する方法等のいずれの方法を用いることができる。また、脱水酵素及び脱カルボキシル化酵素をそれぞれ発現する複数の微生物を用いてもよいし、両酵素を発現する単一の微生物を用いてもよい。
グルコン酸二価金属塩の酵素的脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の酵素的脱カルボキシル化反応とをワンポット反応で行う場合、pH値は、脱水酵素及び脱カルボキシル化酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、pH5以上8以下の範囲で行うことが好ましく、pH6.5以上7.5以下の範囲で行うことがより好ましい。
グルコン酸の二価金属塩の酵素的脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の酵素的脱カルボキシル化反応とをワンポット反応で行う場合、反応温度は、脱水酵素及び脱カルボキシル化酵素がその活性を維持できればよく、特に制限はないが、30℃以上60℃以下の範囲が好ましく、40℃以上50℃以下の範囲がより好ましい。
グルコン酸の二価金属塩の酵素的脱水反応と2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩の酵素的脱カルボキシル化反応とをワンポットで行う場合、反応基質であるグルコン酸の濃度は、脱水酵素及び脱カルボキシル化酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限はないが、反応液全量に対して10重量%以上27重量%以下の範囲が好ましい。なお、このワンポット反応は、基本的に水を溶媒とするが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
なお、本実施形態で用いるグルコン酸の二価金属塩は、市販されているグルコン酸と水酸化カルシウム等の二価金属塩とを混合することによって得ることもできるし、市販されているものを使用することもできる。
本実施形態では、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いた脱カルボキシル化反応により2−デオキシリボースを合成するため、その副生成物は、水に難溶性の二価金属炭酸塩となる。したがって、反応液中からの2−デオキシリボースの分離・回収には、2−デオキシリボースと二価金属炭酸塩との水への溶解度差を利用した精製が可能である。また、必要に応じ、通常行われるろ過などの手段を採用してもよい。
(2−デオキシリボースから2'−デオキシヌクレオシドの合成)
続いて、上記得られた2−デオキシリボースから2'−デオキシヌクレオシドを合成する方法について説明する。本実施形態においては、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いた脱カルボキシル化反応により得られた2−デオキシリボースを用いた任意の一又は複数の反応を経て、2'−デオキシヌクレオシドを合成するものであれば特に限定されない。以下、一例として、2−デオキシリボースにリン酸供与体を作用させて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステルから2−デオキシリボースを合成する合成経路を挙げて、具体的に説明する。
まず、2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する方法について説明する。
リン酸供与体は、2−デオキシリボースにリン酸基を与えて2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成するものであれば制限はなく、アデノシントリリン酸(ATP)、ポリリン酸又はこれらの塩が挙げられる。ポリリン酸又はその塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、及び、これらのナトリウム塩若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、ピロリン酸又はその塩が好ましく、酸性ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。これらのリン酸供与体は単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。
本実施形態において、2−デオキシリボースとリン酸供与体とを反応させて2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する反応は、化学的に行うものであってもよいし、酵素的に行うものであってもよいが、工業的に効率よく2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成できるという観点から、酵素反応により実行することが好ましい。使用する酵素としては、ホスファターゼが挙げられ、ホスファターゼは、酸性ホスファターゼ及びアルカリホスファターゼに分類されるが、酸性ホスファターゼがより好ましい。
酸性ホスファターゼとしては、2−デオキシリボースの5位の炭素原子にリン酸基を導入する反応を触媒するものであれば特に制限はなく、種々の微生物由来の酸性ホスファターゼが使用できる。例えば、Bacteroides vulgatus(Genbank受け入れ番号 ABR38243)、Bradyrhizobium japonicum(Genbank受け入れ番号 BAC50005)、Capnocytophaga ochracea(Genbank受け入れ番号 ACU92248)、Caulobacter arescentus(Genbank受け入れ番号 YP_002515738)、Caulobacter segnis(Genbank受け入れ番号 EEZ38419)、Desulfotalea psychrophila(Genbank受け入れ番号 YP_066101)、Desulfovibrio magneticus(Genbank受け入れ番号 YP_002953066)、Enterobacter aerogenes(Genbank受け入れ番号 ABW37174)、Escherichia blattae(Genbank受け入れ番号 BAA84942)、Escherichia coli(Genbank受け入れ番号 CAA60534)、Fibrobacter succinogenes(Genbank受け入れ番号 YP_003250152)、Flavobacterium johnsoniae(Genbank受け入れ番号 YP_001193982)、Francisella philomiragia(Genbank受け入れ番号 ABZ87670)、Francisella tularensis(Genbank受け入れ番号 YP_169222)、Granulibacter bethesdensis(Genbank受け入れ番号 YP_745642)、Helocobacter pylori(Genbank受け入れ番号 CAD21745)、Klebsiella pneumoniae(Genbank受け入れ番号 BAH62928)、Mesorhizobium loti(Genbank受け入れ番号 NP_103983)、Methylobacterium chloromethanicum(Genbank受け入れ番号 ACK82712)、Methylobacterium extorquens(Genbank受け入れ番号 YP_001639040)、Methylobacterium populi(Genbank受け入れ番号 ACB79832)、Methylobacterium radiotolerans(Genbank受け入れ番号 ACB26070)、Methylococcus capsulatus(Genbank受け入れ番号 YP_114641)、Morganella morganii(Genbank受け入れ番号 BAA96744)、Phenylococcus capsulatus(Genbank受け入れ番号 YP_002129169)、Prevotella intermedia(Genbank受け入れ番号 BAA33148)、Prochlorococcus marinus(Genbank受け入れ番号 YP_001016363)、Providencia stuartii(Genbank受け入れ番号 CAA46032)、Ralstonia eutropha(Genbank受け入れ番号 YP_840758)、Raoultella planticola(Genbank受け入れ番号 BAB18918)、Salmonella typhi(Genbank受け入れ番号 AAK50861)、Salmonella typhimurium(Genbank受け入れ番号 AAM81208)、Shigella boydii(Genbank受け入れ番号 ABB68879)、Shigella flexneri(Genbank受け入れ番号 BAA11655)、Shigella dysenteriae(Genbank受け入れ番号 ABB64580)、Shigella sonnei(Genbank受け入れ番号 AAZ91025)、Sebaldella termitidis(Genbank受け入れ番号 ACZ10023)、Serratia proteamaculans(Genbank受け入れ番号 ABV43590)、Stenotrophomonas maltophilia(Genbank受け入れ番号 YP_002026426)、Xanthomonas campestris(Genbank受け入れ番号 AAM43356)、Zymomonas mobilis(Genbank受け入れ番号 AAA27700)由来の酸性ホスファタ−ゼである。
近年の分子生物学および遺伝子工学の進歩により、目的遺伝子を公知の遺伝子工学的手法により製造および取得することが容易になった。そのため、前記の微生物が産生する酸性ホスファターゼの分子生物学的な性質やアミノ酸配列等を解析することにより、該酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を該微生物株より取得し、該遺伝子および発現に必要な制御領域が挿入された遺伝子組換えプラスミドを構築し、これを任意の宿主に導入し、酸性ホスファターゼを産生する遺伝子組換え体を作出することができる。
ここでいう発現に必要な制御領域とは、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む)・リボソーム結合配列(SD配列)・転写終結配列等を示している。バクテリアを宿主とした場合、プロモーター配列の具体例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpオペレーター、ラクトースオペロンのlacオペレーター、ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーター、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター、アルカリプロテアーゼプロモーター、中性プロテアーゼプロモーター、α−アミラーゼプロモーター等が挙げられる。また、tacプロモーターのように独自に改変・設計された配列も利用できる。リボソーム結合配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16SリボソームRNAの3'末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成してこれを利用してもよい。また、酸性ホスファターゼの上流に位置しているSD配列が利用できるのであれば、そのSD配列を利用するのが好ましい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミテーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。これら制御領域の組換えプラスミド上での配列順序は、5'末端側上流からプロモーター配列、リボソーム結合配列、酸性ホスファターゼをコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。ここでいうプラスミドの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等をベクターとして利用することができる。また、2種類以上の宿主内で自律複製が可能なプラスミドの例として、pHV14、TRp7、YEp7およびpBS7等をベクターとして利用することができる。
ここでいう任意の宿主には、後述の実施例に記載したような大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、大腸菌に限定されるものではなく、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。
本実施形態では、酸性ホスファターゼ産生能を有する微生物および高等生物由来の細胞、酸性ホスファターゼをコードする遺伝子で形質転換された細胞そのもの及びこれら細胞の破砕物を使用することもできるが、該細胞、該細胞の破砕物および該細胞の破砕物を硫安沈殿やカラムクロマトグラフィー等の処理を行って精製した酸性ホスファターゼ活性を含む画分を担体に担持させた固定化物を使用することもできる。
酸性ホスファターゼをコードする遺伝子において、1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入又は転移を含んでいたとしても、2−デオキシリボースをリン酸化して2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成することができれば使用することができる。また、LacZとの融合蛋白質として発現させたり、ヒスチジンタグを付加して発現させたりする場合のように、酸性ホスファターゼのN末端やC末端に数残基のアミノ酸が結合していたとしても、2−デオキシリボースをリン酸化して2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成することができれば使用することができる。
2−デオキシリボースとリン酸供与体とのモル比は特に制限されないが、どちらか一方が他方に対して1倍モル以上存在する条件下で反応を行うことが好ましく、リン酸供与体が2−デオキシリボースに対して1倍モル以上20倍モル以下存在する条件下で行うことがより好ましく、リン酸供与体が2−デオキシリボースに対して1.1倍モル以上2.9倍モル以下存在する条件下で行うことがより好ましい。
反応液中の2−デオキシリボースの濃度は特に制限されないが、0.05mol/L以上2mol/L以下の範囲で行うことが好ましく、0.1mol/L以上1.0mol/L以下の範囲で行うことがより好ましい。このリン酸エステル化反応は基本的に水を溶媒とするが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
反応液中のリン酸供与体の濃度は、酸性ホスファターゼの酵素活性が阻害されない範囲であれば特に制限されないが、0.05mol/L以上2mol/L以下の範囲が好ましく、0.1mol/L以上1.0mol/L以下の範囲がより好ましい。
反応液中の酸性ホスファターゼの活性値は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生成する量が存在すれば特に制限されないが、1U/mL以上1000U/mL以下の範囲で行うことが好ましい。
反応温度は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生成する温度範囲であれば特に制限されないが、0℃以上40℃以下の範囲で行うことが好ましく、0℃以上20℃以下の範囲で行うことがより好ましく、5℃以上15℃以下で行うことが最も好ましい。
反応液のpHは、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生成する範囲であれば特に制限されないが、pHは2.5以上6.0以下の範囲で行うことが好ましく、3.0以上4.5以下の範囲で行うことがより好ましい。
酸性ホスファターゼの中にはマグネシウムイオン等の二価の金属イオンでホスファターゼ活性の向上が見られるものもあるため、必要に応じて二価の金属イオンのような多価金属化合物等を反応液中に存在させることができる。
これにより、反応に使用する2−デオキシリボースに対応する2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが得られる。本実施形態では、上記(i)を実行して得られた2−デオキシリボースを用いるため、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが得られる。
本実施形態において、2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する一実施態様としては、例えば、所望のpHに調整したバッファー中に2−デオキシリボースとリン酸供与体を存在させ、そこに酸性ホスファターゼを加えて反応させる方法が挙げられる。得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは、反応液から金属塩として沈殿させる方法やカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法を用いて分離することができる。2−デオキシシリボース−5−リン酸エステルの塩としては、例えば、リン酸供与体の塩由来の塩を形成しているものがあり、具体的には、ナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
2−デオキシリボ−スに対して過剰量のピロリン酸又はその塩存在下に2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成した場合、ピロリン酸に由来するリン酸が副生する。副生したリン酸を除去しておくと、次に実行する2−デオキシリボース−5−リン酸エステルから2'−デオキシリボヌクレオシドを得る反応を効率よく実行することができるため好ましい。
リン酸を除去する方法としては、例えば金属水酸化物を添加して沈澱除去する方法や陰イオン交換樹脂などによって除去する方法などがある。金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化マンガン、水酸化コバルト、水酸化亜鉛、水酸化ニッケルなどが挙げられる。好ましくは水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化鉄であり、より好ましくは水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムである。リン酸を難水溶性塩にして沈澱させ、濾過により除去する際に、ナトリウムイオンを含まないと濾過速度が速くなる効果もある。
つづいて、得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する方法について説明する。この方法では、リン酸化転移反応によりこれを2−デオキシリボース−1−リン酸エステルとし、核酸塩基を作用させてグルコシル化反応を行い、2'−デオキシヌクレオシドを合成するものであれば、特に制限されない。
リン酸転移反応及びグリコシル化反応は、化学的に実行してもよいし、酵素反応により行ってもよいが、工業的に効率よく合成できるという観点から、いずれも酵素反応により行うことが好ましい。酵素的リン酸転移反応とグリコシル化反応とは、順に行ってよいし、ワンポット反応で行うこともできるが、ワンポット反応で行うことが好ましい。
酵素的リン酸転移反応は、例えば、ホスホペントムタ−ゼやホスホグルコノムタ−ゼ、ホスホマンノムターゼ、ホスホデオキシリボムタ−ゼ、ホスホリボムタ−ゼ等のリン酸転移酵素を使用して実行することができる。中でもホスホペントムタ−ゼを用いることが好ましく、ホスホペントムターゼの例としては、Acetohalobium arabaticum(Genbank受け入れ番号 YP_00382828)、Acetivibrio cellulolyticus(Genbank受け入れ番号 ZP_07328072)、Alkaliphilus metalliredigens(Genbank受け入れ番号 YP_001320336)、Alkaliphilus oremlandii(Genbank受け入れ番号 YP_001513131)、Ammonifex degensii(Genbank受け入れ番号 YP_003239276)、Anaerococcus prevotii(Genbank受け入れ番号 EGC81949)、Bacillus megaterium(Genbank受け入れ番号 YP_003599562)、Bacillus pumilus(Genbank受け入れ番号 YP_001487311)、Bacillus subtilis(Genbank受け入れ番号 AAA74433)、Blautia hansenii(Genbank受け入れ番号 ZP_05853053)、Brevibacillus brevis(Genbank受け入れ番号 YP_002771863)、Caldicellulosiruptor hydrothermalis(Genbank受け入れ番号 YP_003992071)、Caldicellulosiruptor kristjanssonii(Genbank受け入れ番号 YP_004026035)、Caldicellulosiruptor kronotskyensis(Genbank受け入れ番号 YP_004023631)、Carboxydibrachium pacificum(Genbank受け入れ番号 ZP_05092562)、Carboxydothermus hydroqenoformans(Genbank受け入れ番号 YP_360782)、Clostridium cellulolyticum(Genbank受け入れ番号 YP_002507475)、Clostridium kluyveri(Genbank受け入れ番号 YP_001394632)、Clostridium lentocellum(Genbank受け入れ番号 YP_004309184)、Clostridium thermocellum(Genbank受け入れ番号 YP_001037105)、Deiococcus deserti(Genbank受け入れ番号 YP_002784952)、Deinococcus geothermalis(Genbank受け入れ番号 YP_604057)、Deinococcus maricopernsis(Genbank受け入れ番号 YP_004170790)、Deinococcus proteolyticus(Genbank受け入れ番号 YP_004256524)、Deinococcus radiodurans(Genbank受け入れ番号 NP_295858)、Dictyoglomus thermophilum(Genbank受け入れ番号 YP_002251181)、Dusulfitobacterium hafniense(Genbank受け入れ番号 YP_518545)、Desulfotomaculum nigrificans(Genbank受け入れ番号 ZP_08114198)、Desulfotomaculum reducens(Genbank受け入れ番号 YP_001112460)、Escherichia coli(Genbank受け入れ番号 NP_418800)、Eubacterium eligens(Genbank受け入れ番号 YP_002930560)、Geobacillus stearothermophilus(Genbank受け入れ番号 BAA22917)、Halanaerobium praevalens(Genbank受け入れ番号 ADO77933)、Heliobacterium modesticaldum(Genbank受け入れ番号 YP_001678945)、Ktedonobacter racemifer(Genbank受け入れ番号 ZP_06967938)、Lachnospiraceae bacterium(Genbank受け入れ番号 ZP_08149273)、Leadbetterella byssophila(Genbank受け入れ番号 YP_003996367)、Mahella auustraliensis(Genbank受け入れ番号 YP_004463466)、Marinithermus hydrothermalis(Genbank受け入れ番号 YP_004368703)、Meiothermus ruuber(Genbank受け入れ番号 YP_003508613)、Meiothermus silvanus(Genbank受け入れ番号 YP_003683603)、Moorella thermoacetica(Genbank受け入れ番号 YP_430352)、Natranaerobius thermophilus(Genbank受け入れ番号 YP_001917829)、Oceanithermus profundus(Genbank受け入れ番号 YP_004058801)、Oceanobacillus iheyensis(Genbank受け入れ番号 NP_692767)、Pelotomaculum thermopropionicum(Genbank受け入れ番号 YP_001211761)、Planococcus donqhaensis(Genbank受け入れ番号 ZP_08094876)、Pseudoalteromonas haloplanktis(Genbank受け入れ番号 YP_341577)、Roseburia intestinalis(Genbank受け入れ番号 CBL11853)、Solibacillus silvestris(Genbank受け入れ番号 BAK17211)、Symbiobacterium thermophilum(Genbank受け入れ番号 YP_075649)、Syntrophothermus lipocalidus(Genbank受け入れ番号 YP_003701843)、Thermoanaerobacter ethanolicus(Genbank受け入れ番号 ZP_08211134)、Thermoanaerobacter pseudethanolicus(Genbank受け入れ番号 YP_001665799)、Thermoanaerobacter wiegelii(Genbank受け入れ番号 ZP_07547075)、Thermosediminibacter oceani(Genbank受け入れ番号 YP_003824990)、Thermotoga maritima(Genbank受け入れ番号 NP_227982)、Thermotoga petrophila(Genbank受け入れ番号 YP_001244353)、Thermus aquaticus(Genbank受け入れ番号 ZP_03496642)、Thermus scotoductus(Genbank受け入れ番号 YP_004203582)、Truepera radiovictrix(Genbank受け入れ番号 YP_003704739)、Thermus thermophilus(Genbank受け入れ番号 YP_005628)などが挙げられる。
リン酸転移酵素を用いて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から得られた2−デオキシリボース−1−リン酸エステル又はその塩は、リン酸転移反応したものをそのまま使用するか、あるいは、カラムクロマトグラフィー、再結晶などにより精製した後、核酸塩基と作用させて、グルコシル化反応を行う。
2−デオキシリボース−1−リン酸エステルに作用させる塩基は、ピリミジン、プリン、アザプリンおよびデアザプリンからなる群から選択された天然または非天然型の塩基を示し、それらはハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、水酸基、ヒドロキシアミノ基、アミノキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基またはシアノ基によって置換されていてもよい。
置換基としてのハロゲン原子としては、塩素、フッ素、ヨウ素、臭素が例示される。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1〜7の低級アルキル基が例示される。ハロアルキル基としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ブロモエチルなどの炭素数1〜7のアルキルを有するハロアルキル基が例示される。アルケニル基としては、ビニル、アリールなどの炭素数2〜7のアルケニル基が例示される。ハロアルケニル基としては、ブロモビニル、クロロビニルなどの炭素数2〜7のアルケニルを有するハロアルケニル基が例示される。アルキニル基としては、エチニル、プロピニルなどの炭素数2〜7のアルキニル基が例示される。アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノなどの炭素数1〜7のアルキルを有するアルキルアミノ基が例示される。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシなどの炭素数1〜7のアルコキシ基が例示される。アルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト、エチルメルカプトなどの炭素数1〜7のアルキルを有するアルキルメルカプト基が例示される。アリール基としては、フェニル基;メチルフェニル、エチルフェニルなどの炭素数1〜5のアルキルを有するアルキルフェニル基;メトキシフェニル、エトキシフェニルなどの炭素数1〜5のアルコキシを有するアルコキシフェニル基;ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルなどの炭素数1〜5のアルキルアミノを有するアルキルアミノフェニル基;クロロフェニル、ブロモフェニルなどのハロゲノフェニル基などが例示される。
ピリミジン塩基を具体的に例示すれば、シトシン、ウラシル、5−フルオロシトシン、5−フルオロウラシル、5−クロロシトシン、5−クロロウラシル、5−ブロモシトシン、5−ブロモウラシル、5−ヨ−ドシトシン、5−ヨ−ドウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル(チミン)、5−エチルシトシン、5−エチルウラシル、5−フルオロメチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロシトシン、5−トリフルオロウラシル、5−ビニルウラシル、5−ブロモビニルウラシル、5−クロロビニルウラシル、5−エチニルシトシン、5−エチニルウラシル、5−プロピニルウラシル、ピリミジン−2−オン、4−ヒドロキシアミノピリミジン−2−オン、4−アミノオキシピリミジン−2−オン、4−メトキシピリミジン−2−オン、4−アセトキシピリミジン−2−オン、4−フルオロピリミジン−2−オン、5−フルオロピリミジン−2−オンなどが挙げられる。
プリン塩基を具体的に例示すれば、プリン、6−アミノプリン(アデニン)、6−ヒドロキシプリン、6−フルオロプリン、6−クロロプリン、6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、6−トリフルオロメチルアミノプリン、6−ベンゾイルアミノプリン、6−アセチルアミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−アミノオキシプリン、6−メトキシプリン、6−アセトキシプリン、6−ベンゾイルオキシプリン、6−メチルプリン、6−エチルプリン、6−トリフルオロメチルプリン、6−フェニルプリン、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、6−アミノプリン−1−オキシド、6−ヒドロキシプリン−1−オキシド、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン(グアニン)、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2−アミノ−6−ヨ−ドプリン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−メルカプトプリン、2−アミノ−6−メチルメルカプトプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシアミノプリン、2−アミノ−6−メトキシプリン、2−アミノ−6−ベンゾイルオキシプリン、2−アミノ−6−アセトキシプリン、2−アミノ−6−メチルプリン、2−アミノ−6−サイクロプロピルアミノメチルプリン、2−アミノ−6−フェニルプリン、2−アミノ−8−ブロモプリン、6−シアノプリン、6−アミノ−2−クロロプリン(2−クロロアデニン)、6−アミノ−2−フルオロプリン(2−フルオロアデニン)などが挙げられる。
アザプリン塩基およびデアザプリン塩基を具体的に例示すれば、6−アミノ−3−デアザプリン、6−アミノ−8−アザプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−アザプリン、6−アミノ−7−デアザプリン、6−アミノ−1−デアザプリン、6−アミノ−2−アザプリンなどが挙げられる。
酵素的グリコシル化反応は、ヌクレオシド合成酵素存在下に実行することができる。ヌクレオシド合成酵素には、例えば、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する酵素が挙げられる。ヌクレオシドホスホリラーゼとは、リン酸存在下でヌクレオシドのN−グリコシド結合を分解する酵素の総称であり、本実施形態においては逆反応を利用することができる。反応に使用するヌクレオシドホスホリラーゼは、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルと塩基とから目的とする2'−デオキシヌクレオシドを生成しうる活性を有していればいかなる種類及び起源のものでもかまわない。該酵素はプリン型とピリミジン型に大別され、例えば、プリン型としてプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)、グアノシンホスホリラーゼ(EC2.4.2.15)、ピリミジン型としてピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.2)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、デオキシウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.23)などが挙げられる。
本発明におけるヌクレオシドホスホリラーゼを発現している微生物とは、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)、グアノシンホスホリラーゼ(EC2.4.2.15)、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.2)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、デオキシウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.23)からなる群から選択される一種類以上のヌクレオシドホスホリラーゼを発現している微生物であれば特に限定はされない。
このような微生物の具体例としては、ノカルディア(Nocardia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、フラボバクテリウム(Flabobacterium)属、クルイヘラ(Kluyvere)属、ミコバクテリウム(Micobacterium)属、ヘモフィラス(Haemophilus)属、ミコプラナ(Micoplana)属、プロタミノバクター(Protaminobacter)属、キャンディダ(Candida)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ハフニア(Hafnia)属、プロテウス(Proteus)属、ビブリオ(Vibrio)属、スタフィロコッカス(Staphyrococcus)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、ザルチナ(Sartina)属、プラノコッカス(Planococcus)属、エシェリシア(Escherichia)属、クルチア(Kurthia)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、サルモネラ(Salmonella)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アースロバクター属(Arthrobacter)属またはシュードノカルディア(Pseudonocardia)属に含まれる微生物株を好適な例として挙げることができる。
近年の分子生物学および遺伝子工学の進歩により、上述の微生物株のヌクレオシドホスホリラーゼの分子生物学的な性質やアミノ酸配列等を解析することにより、該蛋白質の遺伝子を該微生物株より取得し、該遺伝子および発現に必要な制御領域が挿入された組換えプラスミドを構築し、これを任意の宿主に導入し、該蛋白質を発現させた遺伝子組換え菌を作出することが可能となり、かつ、比較的容易にもなった。かかる技術水準に鑑み、このようなヌクレオシドホスホリラーゼの遺伝子を任意の宿主に導入した遺伝子組換え菌も本実施形態で使用し得るヌクレオシドホスホリラーゼを発現している微生物に包含されるものとする。
ここでいう発現に必要な制御領域とは、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む)・リボゾーム結合配列(SD配列)・転写終結配列等を示している。プロモーター配列の具体例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター・ラクトースオペロンのlacプロモーター・ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)・アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)・中性プロテアーゼプロモーター(npr)・α−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。また、tacプロモーターのように独自に改変・設計された配列も利用できる。リボゾーム結合配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。たとえば、16SリボゾームRNAの3'末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成してこれを利用してもよい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター・trpオペロンターミネーター等が利用できる。これら制御領域の組換えプラスミド上での配列順序は、5'末端側上流からプロモーター配列、リボゾーム結合配列、ヌクレオシドホスホリラーゼをコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。
ここでいうプラスミドの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等をベクターとして利用することができる。また、2種類以上の宿主内での自律複製が可能なプラスミドの例として、pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7をベクターとして利用することができる。
ここでいう任意の宿主には、大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、とくに大腸菌に限定されるものではなく枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。
また、ここでいうヌクレオシドホスホリラーゼ活性とは、上述の該酵素活性を有する微生物菌体のみならず、該酵素活性を有する微生物菌体の菌体処理物またはそれらの固定化物なども使用できる。菌体処理物とは、例えばアセトン乾燥菌体や機械的破壊、超音波破砕、凍結融解処理、加圧減圧処理、浸透圧処理、自己消化、細胞壁分解処理、界面活性剤処理などにより調製した菌体破砕物などであり、また、必要に応じて硫安沈殿やアセトン沈殿、カラムクロマトグラフィーにより精製を重ねたものを用いても良い。
本実施形態のグリコシル化反応では、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルと核酸塩基との反応から、2'−デオキシヌクレオシドとリン酸イオンが生成する。そこで、2'−デオキシヌクレオシドを含む反応終了物を含む水溶液中にリン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを加えてもよい。リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンとは、反応において副生したリン酸イオンと難水溶性の塩を形成し、水溶液中に沈殿しうるものであれば限定されない。そのようなものとして、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、モリブデン、鉛、亜鉛、リチウムなどの金属カチオンが挙げられる。それらのうち工業的に汎用性や安全性が高く、反応に影響を与えない金属塩が特に好ましく、そのようなものの例としてカルシウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン及びマグネシウムイオンが挙げられる。
本発明におけるリン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンとは、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを、塩素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオンまたは水酸イオンの中から選ばれる1種類以上のアニオンとの金属塩として水溶液中に添加すればよい。具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酢酸バリウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが例示される。
また、該金属カチオンは、2−デオキシリボース−1−リン酸の塩として反応液中に存在させてもよい。一例を挙げると、2−デオキシリボース−1−リン酸・カルシウム塩、2−デオキシリボース−1−リン酸・バリウム塩、2−デオキシリボース−1−リン酸・アルミニウム塩、などが挙げられる。
リン酸転移反応及びグリコシル化反応による2'−デオキシヌクレオシドの合成反応は、目的とする2'−デオキシヌクレオシド、基質である2−デオキシリボース−5−リン酸エステルと核酸塩基、反応触媒であるリン酸転移酵素及びヌクレオシドホスホリラーゼ、又は該酵素活性を有する微生物、そしてリン酸を反応系より除外させるために添加する金属塩の種類とその特性により、適切なpHや温度などの反応条件並びに管理幅を選べばよいが、pH5以上10以下が好ましく、温度10℃以上60℃以下の範囲で行うことができる。反応に使用する2−デオキシリボース−5−リン酸エステル及び核酸塩基の濃度は0.1mM以上1000mM以下程度が適当であり、両者のモル比は添加する核酸塩基の比率を2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩に対して0.1倍モル量以上10倍モル量以下で行える。反応転化率を考えれば0.95倍モル量以下が好ましい。
また、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属塩を添加する場合、反応に使用する2−デオキシリボース−1−リン酸に対して0.1倍モル量以上10倍モル量以下、より好ましくは0.5倍モル以上5倍モル量以下添加するのが良い。その添加方法について制限は無く、一括添加や反応中に逐次添加しても良い。また、本反応は基本的に水を溶媒としているが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。なお、高濃度の反応においては、基質の核酸塩基や生成物の2'−デオキシヌクレオシド化合物が溶解しきれずに反応液中に存在する場合もあるが、このような場合にも本発明を適用することができる。
このようにして製造した2'−デオキシヌクレオシド化合物は、濃縮、晶析、溶解、電気透析処理、イオン交換樹脂や活性炭による吸脱着処理などの常法を適用することにより単離することができる。
本実施形態で合成できる2'−デオキシヌクレオシドは、天然に存在する2'−デオキシヌクレオシドでも天然に存在しない2'−デオキシヌクレオシドでも、核酸塩基が供与できるのであれば特に制限されない。具体的な例としては、核酸塩基としてアデニンを用いた場合に合成できる2'−デオキシヌクレオシドは2'−デオキシアデノシン、核酸塩基としてグアニンを用いた場合に合成できる2'−デオキシヌクレオシドは2'−デオキシグアノシン、核酸塩基としてチミンを用いた場合に合成できる2'−デオキシヌクレオシドはチミジン、核酸塩基としてシトシンを用いた場合に合成できる2'−デオキシヌクレオシドは2'−デオキシシチジン、核酸塩基としてヒポキサンチンを用いた場合に合成できる2'−デオキシヌクレオシドは2'−デオキシイノシンを合成することができる。
つづいて本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を出発原料として利用する酵素的脱カルボキシル化反応を行うことで、効率的に2−デオキシリボースを高収率で得ることができる。
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ナトリウム、及び、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カリウムを用いた脱カルボキシル化反応では、pH調整として酸の添加もしくは緩衝液中での反応が必要と報告されている。一方、本実施形態によれば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いた脱カルボキシル化反応を行うことで、pH調整を行わずに高収率で2−デオキシリボースを得ることができる。
また、本実施形態によれば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いた酵素的脱カルボキシル化反応を行うことで、2−デヒドロ −3−デオキシグルコン酸濃度が反応液全量に対して25重量%の高濃度条件においても高収率で2−デオキシリボースを得ることができる。
また、本実施形態によれば、脱水反応によりグルコン酸の二価金属塩から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を生成する工程と、生成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボースを生成する工程とを実行することにより、pH調整を必要とせず、効率的にグルコン酸の二価金属塩から2−デオキシリボースを高収率で製造することができる。
また、グルコン酸の二価金属塩の脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸二価金属塩の脱カルボキシル化反応とをワンポット反応で行うことにより、よりいっそう効率的にグルコン酸二価金属塩から2−デオキシリボースを製造することができる。
本実施形態において、脱カルボキシル化反応及びワンポット反応の副生成物は、二価金属炭酸塩であり、水に対して難溶性である。したがって、ろ過処理のみで副生成物を除去することができ、2−デオキシリボース水溶液を簡便に得ることができる。
このように、本実施形態によれば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩若しくはグルコン酸の二価金属塩を出発物質として用いることにより、従来の製造方法では低収率であった2−デオキシリボースを高収率で得ることができるため、これを用いて2'−デオキシヌクレオシドの工業的製造を生産性よく実行することが可能となる。
<第2の実施形態>
本実施形態は、上記(ii)を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造するものである。具体的には、本実施形態は、2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボースを合成し、得られた2−デオキシリボ−スを中間体として、2'−デオキシヌクレオシドを製造する方法である。
(2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸から2−デオキシリボースの合成)
本実施形態は、まず、2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素(以下、「変異型2−デオキシリボース合成酵素」ともいう。)を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボースを合成する。
本実施形態において変異型2−デオキシリボース合成酵素は、基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異したものである。
ここでいう、基質ポケットとは、基質である2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を認識し、脱カルボキシル化反応を触媒する部位のことをいう。
また、本発明において、2−デオキシリボース合成能とは、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩を2−デオキシリボースに変換する反応を触媒する能力をいう。本明細書では、2−デオキシリボース合成能を有する酵素を「2−デオキシリボース合成酵素」ともいう。
本実施形態で使用される変異型2−デオキシリボース合成酵素は、具体的には、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を基質とした2−デオキシリボースの合成反応において、2−デオキシリボース合成酵素の基質ポケットを構成する少なくとも一つのアミノ酸と2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸との結合距離が、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.7)の281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸と2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸との結合距離よりも大きくなるように構成されている。本実施形態において、例えば、281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸とは、他のタンパク質において、本実施形態で用いる変異型2−デオキシリボース合成酵素と他のタンパク質間での一次配列の相同性から類推される場合や、タンパク質の立体構造から三次元でアミノ酸が事実上重なると想定される場合も含む。これは、立体構造で同様の配置に来るアミノ酸は、仮に一次配列での相同性が低い場合でも、触媒作用や、基質認識においては、同様の作用を持つことが予想されるからである。
本実施形態で使用される変異型2−デオキシリボース合成酵素は、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼのベンゾイルホルメートに対する活性部位(基質ポケット)の少なくとも1つのアミノ酸を変異させたものとすることが好ましい。また、本実施形態で使用される変異型2−デオキシリボース合成酵素は、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの26番目のセリン、70番目のヒスチジン、及び281番目のヒスチジンにそれぞれ相当するアミノ酸から選択される少なくとも一以上のアミノ酸が置換されたものとするとより好ましく、281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸を置換したものがより好ましい。具体的には、ヒスチジンよりも疎水性の高いアミノ酸に置換することが好ましく、中でも281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換させたものが特に好ましい。芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン又はチロシンを例示することができる。
ここで、2−デオキシリボース合成酵素とは、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を脱カルボキシル化して2−デオキシリボースを合成することができれば特に制限はなく、例えば、種々の微生物由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いることができる。具体的には、第1の実施形態の脱カルボキシル化反応で用いられる、種々の微生物由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼが挙げられる。
その他の2−デオキシリボース合成酵素としては、例えば、種々の微生物由来のピルビン酸デカルボキシラーゼを用いることができる。具体的には、Acetobacter pasteurianus(Genbank受け入れ番号 YP_003188841)、Clostridium acetobutylicum(Genbank受け入れ番号 NP_149189)、Gluconoacetobacter diazotrophicus(Genbank受け入れ番号 YP_001600462)、Mycobacterium bovis(Genbank受け入れ番号 CAD93738)、Mycobacterium leprae(Genbank受け入れ番号 CAC31122)、Mycobacterium tuberculosis(Genbank受け入れ番号 NP_215368)、Mycoplasma penetrans(Genbank受け入れ番号 NP_758077)、Sarcina ventriculi(Genbank受け入れ番号 AAL18557)、Zymobacter palmae(Genbank受け入れ番号 AAM49566),Zymomonas mobilis(Genbank受け入れ番号 AAA27685)が挙げられる。
2−デオキシリボース合成酵素は公知の遺伝子工学的手法により製造及び取得することができる。そのため、前記の微生物が産生する2−デオキシリボース合成酵素の分子生物学的な性質やアミノ酸配列等を解析することにより、該酵素をコードする遺伝子を該微生物株より取得し、該遺伝子および発現に必要な制御領域が挿入された遺伝子組換えプラスミドを構築し、これを任意の宿主に導入し、2−デオキシリボース合成酵素を産生する遺伝子組換え体を作出することができる。
ここでいう発現に必要な制御領域とは、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む)、リボソーム結合配列(SD配列)、及び転写終結配列等を示している。バクテリアを宿主とした場合、プロモーター配列の具体例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpオペレーター、ラクトースオペロンのlacオペレーター、ラムダファージ由来のPLプロモーターおよびPRプロモーター、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター、アルカリプロテアーゼプロモーター、中性プロテアーゼプロモーター、α−アミラーゼプロモーター等が挙げられる。また、tacプロモーターのように独自に改変・設計された配列も利用できる。リボソーム結合配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16SリボソームRNAの3'末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成してこれを利用してもよい。また、2−デオキシリボース合成酵素の上流に位置しているSD配列が利用できるのであれば、そのSD配列を利用するのが好ましい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター、trpオペロンターミネーター等が利用できる。これら制御領域の組換えプラスミド上での配列順序は、5'末端側上流からプロモーター配列、リボソーム結合配列、2−デオキシリボース合成酵素をコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。ここでいうプラスミドの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等をベクターとして利用することができる。また、2種類以上の宿主内で自律複製が可能なプラスミドの例として、pHV14、TRp7、YEp7およびpBS7等をベクターとして利用することができる。
ここでいう任意の宿主には、後述の実施例に記載したような大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、大腸菌に限定されるものではなく、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。
本実施形態で用いられる変異型2−デオキシリボース合成酵素としては、2−デオキシリボース合成酵素そのものだけでなく、2−デオキシリボース合成酵素産生能を有する微生物及び高等生物由来の細胞、2−デオキシリボース合成酵素をコードする遺伝子で形質転換された細胞そのもの及びこれら細胞の破砕物を使用することもできるが、該細胞、該細胞の破砕物および該細胞の破砕物を硫安沈殿やカラムクロマトグラフィー等の処理を行って精製した2−デオキシリボース合成酵素活性を含む画分を担体に担持させた固定化物を使用することもできる。
2−デオキシリボース合成酵素をコードする遺伝子において、1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入又は転移を含んでいたとしても、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を脱カルボキシル化して2−デオキシリボースを合成することができれば使用することができる。また、LacZとの融合蛋白質として発現させたり、ヒスチジンタグを付加して発現させたりする場合のように、2−デオキシリボース合成酵素のN末端やC末端に数残基のアミノ酸が結合していたとしても、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を脱炭酸して2−デオキシリボースを合成することができれば使用することができる。
2−デオキシリボース合成酵素をコードする遺伝子の目的とする部位に変異を入れる方法としては、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いる方法やファージを用いる方法などがある。
2−デオキシリボースの合成活性が向上した2−デオキシリボース合成酵素の例としては、配列表の配列番号2、3又は4で示す配列と実質的に相同であるアミノ酸残基を含み、かつ、野生型のベンゾイルデカルボキシラーゼに対して2−デオキシリボースの合成活性を向上させることができる変異を有する2−デオキシリボース合成酵素が挙げられる。例えば、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Chromohalobacter salexigens由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼにおいて、281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものが挙げられる。好ましくは281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸がヒスチジンよりも疎水性のアミノ酸に置換されたものであり、より好ましくは281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸が芳香族アミノ酸に置換されたものである。
ここで、ヒスチジンよりも疎水性のアミノ酸とは、ヒスチジンのlogP値よりも低いアミノ酸であればよく、具体的には、セリン、トレオニン、グリシン、リシン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
また、芳香族アミノ酸とは、チロシン、フェニルアラニンが挙げられる。
上記(ii)で使用する変異型2−デオキシリボース合成酵素を得るためには、このように、ベンゾイルデカルボキシラーゼの特定部位においてアミノ酸残基の置換を行えばよい。あるベンゾイルデカルボキシラーゼの特定部位が別のベンゾイルデカルボキシラーゼにおいてどのアミノ酸残基に相当するのかは配列を比較して判断することができる。いくつかのベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼのアミノ酸配列を比較した結果を図1に示した。図1中、IがPseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼであり、IIがPseudomonas fluorescens由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼであり、IIIがChromohalobacter salexigens由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼである。
本実施形態で使用し得る2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸塩は、フリー体の2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸に金属水酸化物を添加することで調製してもよく、また、市販の2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸塩を用いてもよい。例えば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ナトリウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カリウムなどの一価金属塩、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムなどの二価金属塩が挙げられ、好ましくは2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩であり、より好ましくは周期表第2族に属する二価金属からなる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いることができる。
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸は公知の製造方法によって得ることができる(特開2005−40130号公報)。また、製造工程を通して得られた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸水溶液を単離・生成することなく、反応に用いることも可能である。
2−デオキシリボース合成反応の反応pH値は、2−デオキシリボース合成酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、pH5以上8以下の範囲で行うことが好ましく、pH6以上7.5以下の範囲で行うことがより好ましい。
2−デオキシリボース合成反応の反応温度は、2−デオキシリボース合成酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、30℃以上60℃以下の範囲が好ましく、40℃以上50℃以下の範囲がより好ましい。
2−デオキシリボース合成反応に添加する2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸濃度は、2−デオキシリボース合成酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限されないが、反応液全量に対して9重量%以上25重量%以下の範囲とすることができる。また、本反応は基本的に水を溶媒とするが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
本実施形態で使用し得る2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩は、グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して得ることができ、例えば、脱水酵素により脱水して得ることができる。ここでいう脱水酵素とは、グルコン酸を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を合成することができれば特に制限はなく、例えばグルコン酸デヒドラターゼ活性を有する酵素であり、好ましくはAchromobacter xylosoxidans由来グルコン酸デヒドラターゼである。
水溶液中でグルコン酸は塩の状態で存在するが、フリー体のグルコン酸に金属水酸化物を添加することで調製してもよく、また、市販のグルコン酸塩を用いてもよい。例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムなどの一価金属塩、グルコン酸カルシウム、グルコン酸バリウム、グルコン酸マグネシウムなどの二価金属塩が挙げられ、好ましくはグルコン酸二価金属塩であり、より好ましくは周期表第2族に属する二価金属からなるグルコン酸二価金属塩を用いることができる。
脱水反応の反応pH値は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、pH5以上9以下の範囲で行うことが好ましく、pH7以上9以下の範囲で行うことがより好ましい。反応中にpHが変動する場合は、適宜調整すれば良い。
脱水反応の反応温度は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、30℃以上60℃以下の範囲が好ましく、30℃以上50℃以下の範囲がより好ましい。
脱水反応に添加するグルコン酸濃度は、脱水酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限されないが、反応液全量に対して9重量%以上27重量%以下の範囲が好ましい。また、本反応は基本的に水を溶媒としているが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
本実施形態では、グルコン酸を出発物質とし、グルコン酸から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を生成する酵素的脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸から2−デオキシリボースを生成する酵素的脱カルボキシル化反応とをワンポット反応で行ってもよい。
ワンポット反応とは、1つの反応容器を用いて多段階反応を行うことを意味し、1つの反応容器で多段階反応を一度に行うことおよび1つの反応が終わった後にこれを原料として同じ反応容器内で次の反応を行うことを含む。
ワンポット反応における脱水酵素は、グルコン酸を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を合成することができれば特に制限はなく、例えばグルコン酸デヒドラターゼであり、好ましくはAchromobacter xylosoxidans由来グルコン酸デヒドラターゼである。
ワンポット反応における変異型2−デオキシリボース合成酵素には、前記の変異型2−デオキシリボース合成酵素を用いることができる。
ワンポット反応には脱水酵素と変異型2−デオキシリボース合成酵素を用いるが、両酵素の反応液への添加方法は、反応初期に両酵素を全量添加する方法、反応中に両酵素を分割して添加する方法、又は反応初期に脱水酵素を全量添加し、反応中に脱カルボキシル化酵素を分割して添加する方法等のいずれの方法を用いることができる。また、脱水酵素及び変異型2−デオキシリボース合成酵素をそれぞれ発現する複数の微生物を用いてもよいし、両酵素を発現する単一の微生物を用いてもよい。
本実施形態においてワンポット反応に用いられるグルコン酸もまた、D−グルコン酸である。
ワンポット反応の反応pH値は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、pH5以上8以下の範囲が好ましく、pH6.5以上7.5以下の範囲がより好ましい。反応中にpHが変動する場合は、適宜調整すれば良い。
ワンポット反応の反応温度は、脱水酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、30℃以上60℃以下の範囲が好ましく、40℃以上50℃以下の範囲で行うことがより好ましい。
ワンポット反応に添加するグルコン酸濃度は、脱水酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限されないが、反応液全量に対して10重量%以上27重量%以下の範囲で行われる。また、このワンポット反応は基本的に水を溶媒とするが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
なお、本実施形態で用いるグルコン酸の二価金属塩は、市販されているグルコン酸と水酸化カルシウム等の二価金属塩とを混合することによって得ることもできるし、市販されているものを使用することもできる。
こうして得られた2−デオキシリボースは、そのまま次の反応に用いてもよいし、カラムクロマトグラフィーや再結晶などを行い精製してもよい。
(2−デオキシリボースから2'−デオキシヌクレオシドの合成)
本実施形態においては、2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から得られた2−デオキシリボースを用いた任意の一又は複数の反応を経て、2'−デオキシヌクレオシドを製造するものであれば特に限定されない。例えば、第1の実施形態で例示した方法により、2−デオキシリボースから2'−デオキシヌクレオシドを製造することができる。
つづいて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している変異型酵素を使用して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩から2−デオキシリボースを製造する。したがって、より工業生産に適した、酵素反応による2−デオキシリボースの製造方法が実現可能になる。
図2は、野生型のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの活性部位における2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸とベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸(図中、H281)との結合を計算化学により予測した結果を示している。2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸は、3つのヒドロキシ基を有する一方、ヒスチジンは、親水性の高いアミノ酸である。そのため、2―デヒドロ―3―デオキシグルコン酸は、ベンゾイルホルメートのような疎水性の高い基質と比べて、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼに接近しすぎてしまい、補酵素(この図では、チアミン二リン酸 (TPP))との間の距離が離れてしまう。したがって、脱炭酸反応が起こりにくくなってしまうものと推察される。
一方、本実施形態では、例えば、281番目のヒスチジンに相当するアミノ酸をより疎水性の高いアミノ酸に置換することで、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸をベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼの活性部位に接近しすぎるのを防いで、補酵素との距離を小さくすることができる。したがって、脱炭酸反応を効率よく進行させることができ、より効率よく2−デオキシリボースを製造することができる。
このように、本実施形態によれば、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩若しくはグルコン酸又はその塩を出発物質として用いることにより、従来の製造方法では低収率であった2−デオキシリボースを高収率で得ることができるため、これを用いて2'−デオキシヌクレオシドの工業的製造を生産性よく実行することが可能となる。
<第3の実施形態>
本実施形態は、上記(iii)を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造するものである。具体的には、本実施形態は、2−デオキシリボースから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を用いて2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを用いて2'−デオキシヌクレオシドを製造する方法である。
(2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩の合成)
本実施形態では、まず、2−デオキシリボースにリン酸供与体を酵素反応により作用させて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成する。この方法では、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1の配列で示す57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を用いて酵素反応を実行し2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する。
ここでいう2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能とは、2−デオキシリボ−スを2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩に変換する反応を触媒する能力をいう。
本実施形態で用いる変異型酵素(以下「変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素」ともいう。)は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有する野生型酵素を変異させたものである。アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しており、アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。変異型酵素における変異は、野生型酵素を構成するアミノ酸配列(a)の「GSI」のセリン(S)及び「YEX」のグルタミン酸(E)、アミノ酸配列(b)の「L(A/S)X」のアラニン(A)またはセリン(S)、アミノ酸配列(c)の「IED」のグルタミン酸(E)、「GDL」のアスパラギン酸(D)、「TR(S/G)」のアルギニン(R)、R(S/G)Aのセリン(S)またはグリシン(G)、及び「XYM」のチロシン(Y)、アミノ酸配列(d)の「XIG」のイソロイシン(I)及び「ZLG」のロイシン(L)の少なくとも1つが他のアミノ酸に置換したものである。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]。
具体的には、本実施形態で用いる変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素とは、配列表の配列番号1に示す配列の57番目のセリン、68番目のグルタミン酸、89番目のアラニンまたはセリン、122番目のグルタミン酸、126番目のアスパラギン酸、130番目のアルギニン、131番目のセリンまたはグリシン、136番目のチロシン、171番目のイソロイシン及び197番目のロイシンにそれぞれ相当するアミノ酸から選択される少なくとも1つ以上のアミノ酸が置換されたものである。本実施形態において、例えば、配列表の配列番号1の57番目のセリンに相当するアミノ酸とは、他のタンパク質において、本実施形態の変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素と他のタンパク質間での一次配列の相同性から類推される場合や、タンパク質の立体構造から三次元でアミノ酸が事実上重なると想定される場合も含む。これは、立体構造で同様の位置に配置されるアミノ酸は、仮に一次配列での相同性が低い場合でも、触媒作用や、基質認識においては、同様の作用を持つことが予想されるからである。
上記アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有する野生型酵素としては、酸性ホスファタ−ゼ(EC 3.1.3.2)が好ましく、本実施形態の変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素は、酸性ホスファタ−ゼ(EC 3.1.3.2)の少なくとも1つ以上のアミノ酸を変異させたものとすることが好ましい。
より具体的には、変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素は、配列表の配列番号1に示す配列の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、配列表の配列番号1に示す配列の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、配列表の配列番号1に示す配列の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1に示す配列の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものであることが好ましい。
本実施形態において、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素とは、2−デオキシリボ−スをリン酸化して2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成する反応を触媒することができ、かつ、天然に存在する酵素であれば特に制限はなく、例えば、種々の微生物由来の酸性ホスファタ−ゼを用いることができる。具体的には、第1の実施形態で例示した微生物由来の酸性ホスファタ−ゼを用いることができる。
変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素は、上記の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素から公知の遺伝子工学的手法により製造及び取得することができる。例えば、前記の微生物が産生する酸性ホスファタ−ゼの分子生物学的な性質やアミノ酸配列等を解析することにより、該酵素をコ−ドする遺伝子を該微生物株より取得し、該遺伝子及び発現に必要な制御領域が挿入された遺伝子組換えプラスミドを構築し、これを任意の宿主に導入し、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素を産生する遺伝子組換え体を作出することができる。
ここでいう発現に必要な制御領域とは、プロモ−タ−配列(転写を制御するオペレ−タ−配列を含む)、リボソ−ム結合配列(SD配列)、及び転写終結配列等を示している。バクテリアを宿主とした場合、プロモ−タ−配列の具体例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpオペレ−タ−、ラクト−スオペロンのlacオペレ−タ−、ラムダファ−ジ由来のPLプロモ−タ−及びPRプロモ−タ−、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモ−タ−、アルカリプロテア−ゼプロモ−タ−、中性プロテア−ゼプロモ−タ−、α−アミラ−ゼプロモ−タ−等が挙げられる。また、tacプロモ−タ−のように独
自に改変・設計された配列も利用できる。リボソ−ム結合配列としては、大腸菌由来又は枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。例えば、16Sリボソ−ムRNAの3'末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成してこれを利用してもよい。また、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素の上流に位置しているSD配列が利用できるのであれば、そのSD配列を利用するのが好ましい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインタ−
ミネ−タ−、trpオペロンタ−ミネ−タ−等が利用できる。これら制御領域の組換えプラスミド上での配列順序は、5'末端側上流からプロモ−タ−配列、リボソ−ム結合配列、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素をコ−ドする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。ここでいうプラスミドの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等をベクタ
−として利用することができる。また、2種類以上の宿主内で自律複製が可能なプラスミドの例として、pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7等をベクタ−として利用することができる。
ここでいう任意の宿主には、後述の実施例に記載したような大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、大腸菌に限定されるものではなく、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。
本実施形態では、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素そのものだけでなく、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素産生能を有する微生物及び高等生物由来の細胞、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素をコ−ドする遺伝子で形質転換された細胞そのもの及びこれら細胞の破砕物を使用することもできるが、該細胞、該細胞の破砕物及び該細胞の破砕物を硫安沈殿やカラムクロマトグラフィー等の処理を行って精製した2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素活性を含む画分、さらにその画分を担体に担持させた固定化物などを使用することもできる。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素をコ−ドする遺伝子において、1つもしくは複数の塩基の置換、欠失、挿入又は転移を含んでいたとしても、2−デオキシリボ−スをリン酸化して2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成することができれば使用することができる。また、LacZとの融合蛋白質として発現させたり、ヒスチジンタグを付加して発現させたりする場合のように、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素のN末端やC末端に数残基のアミノ酸が結合していたとしても、2−デオキシリボ−スをリン酸化して2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル
又はその塩を合成することができれば使用することができる。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素をコ−ドする遺伝子の目的とする部位に変異を入れる方法としては、PCR(ポリメラ−ゼ連鎖反応)を用いる方法やファ−ジを用いる方法などがある。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩の合成活性が向上した2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素の例としては、配列表の配列番号1に示す配列と実質的に相同であるアミノ酸残基を含み、かつ、野生型の酸性ホスファタ−ゼに対して2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩の合成活性を向上させることができる変異を有する2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素が挙げられる。例えば、Shigella flexneri由来の酸性ホスファタ−ゼにおいて、図3に示す共通配列の中の少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものが挙げられる。好ましくは、配列表の配列番号1に示す配列の57番目のセリン、68番目のグルタミン酸、89番目のアラニンまたはセリン、122番目のグルタミン酸、126番目のアスパラギン酸、130番目のアルギニン、131番目のセリンまたはグリシン、136番目のチロシン、171番目のイソロイシン及び197番目のロイシンにそれぞれ相当するアミノ酸の中の少なくとも1つが置換されたものである。より好ましくは、57番目のセリンがトレオニンに、68番目のグルタミン酸がアスパラギン酸に、89番目のアラニンまたはセリンがグリシンに、122番目のグルタミン酸がグリシンに、126番目のアスパラギン酸が脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に、130番目のアルギニンがヒスチジンに、131番目のセリンまたはグリシンがアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに、136番目のチロシンがフェニルアラニンに、171番目のイソロイシンが酸性アミノ酸に、197番目のロイシンが芳香族アミノ酸に置換されたものである。
ここで、脂肪族アミノ酸としてはグリシン又はアラニンが挙げられる。また、分岐鎖アミノ酸としてはバリン、ロイシン又はイソロイシンが挙げられる。芳香族アミノ酸としてはフェニルアラニン又はチロシンが挙げられる。酸性アミノ酸としてはアスパラギン酸又はグルタミン酸が挙げられる。
変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素を得るためには、このようにして、酸性ホスファタ−ゼの特定部位においてアミノ酸残基の置換を行えばよい。ある酸性ホスファタ−ゼの特定部位が別の酸性ホスファタ−ゼにおいてどのアミノ酸残基に相当するのかは配列を比較して判断することができる。いくつかの酸性ホスファタ−ゼのアミノ酸配列を比較した結果を図3に示した。図3中、Enterobacter aerogenes由来の酸性ホスファタ−ゼとしてEnterobacter aerogenes IFO12010が示されており、Escherichia blattae由来の酸性ホスファタ−ゼとしてEscherichia blattae JCM1650が示されており、Klebsiella planticola由来の酸性ホスファタ−ゼとしてKlebsiella planticola IFO14939が示されており、Morganella morganii由来の酸性ホスファタ−ゼとしてMorganella morganii NCIMB10466が示されており、Providencia stuartii由来の酸性ホスファタ−ゼとしてProvidencia stuartiiが示されており、Shigella flexneri由来の酸性ホスファタ−ゼとしてShigella flexneri 2aが示されている。
本実施形態において用いる2−デオキシリボースは、市販されたものを用いてもよいし、第1の実施形態又は第2の実施形態で合成した2−デオキシリボースを用いてもよい。
その他、公知の製造方法によって2−デオキシリボ−スを得てもよい(国際公開第2004/113358号パンフレット)。また、製造工程を通して得られた2−デオキシリボ−ス水溶液を単離・精製することなく、次の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの合成反応に用いることも可能である。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成反応の反応pH値は、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、pH2.5以上6.0以下の範囲が好ましく、pH3.0以上4.5以下の範囲がより好ましい。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成反応の反応温度は、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素がその活性を維持できればよく、特に制限されないが、0℃以上40℃以下の範囲が好ましく、0℃以上20℃以下の範囲がより好ましく、5℃以上15℃以下が最も好ましい。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成反応に添加する2−デオキシリボ−ス濃度は、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限されないが、反応液全量に対して5重量%以上20重量%以下の範囲で行うことが好ましい。また、本反応は基本的に水を溶媒としているが、必要に応じ反応系にアルコールやジメチルスルホキシドなど通常の酵素反応に用いられる有機溶媒を適量添加しても良い。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルに作用させるリン酸供与体は、2−デオキシリボースにリン酸基を与えて2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成するものであれば制限はなく、ポリリン酸又はこれらの塩が挙げられる。ポリリン酸又はその塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、及び、これらのナトリウム塩若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、ピロリン酸又その塩が好ましく、酸性ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。これらのリン酸供与体は単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成反応に添加するリン酸供与体の濃度は、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素が阻害を受けない濃度であればよく、特に制限されないが、ピロリン酸又はその塩を用いる場合、添加した2−デオキシリボ−スに対して1.1倍モル以上2.9倍モル以下の範囲で行うことが好ましい。反応に添加したリン酸分子のうち、2−デオキシリボ−スと結合して2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルとなったリン酸分子以外は排出されるリン酸分子となる。すなわち、(排出されるリン酸分子数)={(反応に添加したピロリン酸分子数×2)−(回収した2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル分子数)}と計算される。従って、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル反応収率が高いほど、また反応系に加える基質のピロリン酸が少ないほど、排出されるリン酸量は削減される。
リン酸供与体として、酸性ピロリン酸ナトリウムを用いた場合は、反応生成物からナトリウムイオンを除去する方法としては陽イオン交換樹脂による除去方法がある。例えば、アンバーライトIR120B、アンバーライト200CT、アンバーライト252、アンバーライトFPC3500、アンバーライトIRC76(オルガノ製)、ダイヤイオンSK104、ダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンSK110、ダイヤイオンSK112、ダイヤイオンUBK08、ダイヤイオンUBK10、ダイヤイオンUBK12、ダイヤイオンUBK120、ダイヤイオンUBK510L、ダイヤイオンUBK530、ダイヤイオンUBK550、ダイヤイオンUBK535、ダイヤイオンUBK555、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンPK212、ダイヤイオンPK216、ダイヤイオンPK218、ダイヤイオンPK220、ダイヤイオンPK228、ダイヤイオンWK10、ダイヤイオンWK11、ダイヤイオンWK100、ダイヤイオンWK40L(三菱化学製)、MuromacXSC―1244、MuromacVSC―1614、MuromacXSC―1614MB、MuromacXMC―3614、MuromacC101、MuromacC501、MuromacC502、MuromacC1001、MuromacC602、MuromacWPC―6612、ダウエックスマラソン、ダウエックスマラソンMSC、ダウエックスモノスフィアー650C、ダウエックスHCR―S、ダウエックス88、ダウエックスMAC―3、ダウエックスC601(ムロマチテクノス製)、レバチットMDS1368、レバチットモノプラスSP112、レバチットモノプラスSP100、レバチットモノプラスS108、レバチットモノプラスS108H(LANXESS製)などが挙げられる。好ましくはレバチットMDS1368、である。陽イオン交換樹脂によって分画されたサンプルはpHが非常に低くなり、サンプル溶液中に存在する酵素が失活する。例えば分画したサンプル溶液中に2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを分解するような酵素が含まれていたとしても、陽イオン交換樹脂による処理を行うことによってそれらを失活させることができる。このようにして得られた2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルは長期間保存しても安定であり、これは製造現場において非常に重要なことである。
このようにナトリウムイオンを2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの反応生成物から除去することで、pH調整を不要として2'−デオキシヌクレオシドを合成することができる。
(2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドの合成)
本実施形態においては、変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素を用いて2−デオキシリボースから得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩に核酸塩基を作用させて2'−デオキシヌクレオシドを合成するものであれば制限されない。例えば、第1の実施形態で説明したリン酸転移反応及びグリコシル化反応により2'−デオキシヌクレオシドを合成することができる。
ここで、リン酸供与体として酸性ピロリン酸ナトリウムを用いて2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成した後、上述のナトリウムイオンの除去を行わない場合は、リン酸転移反応及び/又はグリコシル化反応を行う反応液中にナトリウムイオンが混入することで、pHが変化し、目的物や基質の安定性、酵素活性の低下、リン酸との難水溶性塩の未形成などが原因で反応転化率の低下を招くことがある。そこで、反応途中、pH調整剤によってpHを調整しながら合成することで反応転化率の低下を安定して防ぐことができる。
pH調整剤としては、一般的な酸やアルカリが挙げられる。酵素反応が進行するpH範囲となるように酸やアルカリを添加しながら反応することができる。その他のpH調整剤としては、緩衝液のように反応仕込み時に添加しておくものが挙げられる。緩衝液は反応に伴うpHの変化を抑え、酵素反応が進行するpH範囲を維持する働きがある。このような働きをするものとしては二価金属塩も挙げられる。二価金属塩の添加によって反応開始時にあるpHに調整しておけば、反応が進んでも反応終了時までに酵素反応が進行する範囲にpHを維持することができるのである。二価金属塩の具体的な例としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどである。好ましくは、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムであり、より好ましくは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムである。これら二価金属は、一種又は二種以上使用することができる。
また、前述のとおり、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成した後の反応生成物からナトリウムイオンを除去している場合は、こうしたpH調整を行わずに、反応転化率の低下を安定して防ぐことができる。
つづいて、本実施形態の効果について説明する。この発明によれば、酸性ホスファタ−ゼのアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも1つ以上変異している変異型酵素を使用して2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する。したがって、より工業生産に適した、酵素反応による2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルが合成可能になり、2'−デオキシヌクレオシドの工業的製造を生産性よく実行することが可能となる。
なお、図3の共通配列において、1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は転移を含んでいたとしても、アミノ酸配列の相同性を解析した際に共通配列に相当する箇所であれば、本発明でいうところの共通配列に含まれる。
<第4の実施形態>
本実施形態は、下記(i)及び(ii)を実行して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩から2−デオキシリボ−スを合成する第1工程と、下記(iii)を実行して、2−デオキシリボ−スから2−デオキシ−5−リン酸エステル又はその塩を合成する第2工程と、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する第3工程と、を含む、2'−デオキシヌクレオシドを製造する方法である。
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素反応による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボ−スを合成する;
(ii)基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する;
(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用して2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
本実施形態では、第1工程、第2工程及び第3工程を酵素反応で行う。以下、各工程について説明する。
(第1工程)
第1工程は、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素的脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボ−スを合成する。このとき使用する脱カルボキシル化酵素は、基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素(「変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素」)である。
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩は、第1の実施形態で使用し得るものを用いることができる。
変異型2−デオキシリボース合成酵素は、第2の実施形態で使用し得るものを用いることができる。
脱カルボキシル化反応の反応条件は、第2の実施形態で採用し得る条件とすることができる。第2の実施形態で説明した条件により、グルコン酸の二価金属の酵素的脱水反応と、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の酵素的脱カルボキシル化反応とをワンポット反応で実行してもよい。
(第2工程)
第2工程は、変異型2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成酵素を使用して、第1工程で得られた2−デオキシリボースにリン酸供与体としてピロリン酸又はその塩を作用させ2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成するものである。第2工程においては、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用する。野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しているものであり、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
変異型2−デオキシリボース合成酵素は、第3の実施形態で使用し得るものを用いることができる。また、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成条件は、第3の実施形態で説明した条件と同じ条件を用いることができる。
本実施形態において、リン酸供与体として酸性ピロリン酸ナトリウムを用いた場合、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成後、反応生成物に含まれる酸性ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンを除去することが好ましい。ナトリウムイオンを除去する手法は、第3の実施形態で説明したように、陽イオン交換樹脂を用いる方法が挙げられる。ナトリウムイオンを除去しない場合は、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムのような二価金属塩をリン酸転移反応及びグリコシル化反応に添加することによりpHを調整しながら反応させることが出来る。
(第3工程)
第3工程は、第2工程で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩をリン酸転移反応により2−デオキシリボース−1−リン酸エステル又はその塩とし、これに核酸塩基を作用させて、グリコシル化反応により2'−デオキシヌクレオシドを合成するものである。
リン酸化転移反応及びグリコシル化反応は、第1の実施形態で説明した方法を用いることができる。
つづいて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、第1〜第3の実施形態で説明した(i)、(ii)及び(iii)の全てを実行する。したがって、よりいっそう高収率で生産性がよく工業化に適した2'−デオキシヌクレオシドの製造方法が実現可能となる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下に実施例により本発明を詳細に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<分析条件>
(1)生成した2−D−デオキシリボース及び2−デオキシリボースは高速液体クロマトグラフィーにより定量した。分析条件は以下による。
カラム;Shodex SUGAR SC1011 300×8.0mmI.D.(昭和電工株式会社製)
カラム温度;80℃
ポンプ流速;1.0ml/min
検出;RI(示差屈折率計)
溶離液;純水
(2)生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により定量した。分析条件は以下による。
カラム: Shodex Asahipak NH2P−50 4E(昭和電工株式会社)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0ml/min
検出: RI(示差屈折率計)
キャリア: 150mmol/L リン酸二水素ナトリウム(pH3.0)
(3)生成した2'−デオキシヌクレオシドはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により定量した。分析条件は以下による。
カラム: Develosil ODS−MG−5(野村化学株式会社)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0ml/min
検出: UV280nm
キャリア: 10mmol/Lリン酸/10wt%メタノール
なお、実施例では、2−デオキシ−D−リボースを「dR」とし、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを「dR5P」と表記することもある。
(参考例A1)
Pseudomonas putidaに由来するベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
Nutrient broth(Difco製)にPseudomonas putida ATCC 12633を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)をもとに、配列表の配列番号5と配列番号6に示す2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を以下の条件で行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワード及びリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、50ng/μlのゲノムDNAからなる反応溶液を作成した。94℃で2分間保持した後、94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で90秒間のサーマルサイクルを30サイクル行った後、最後に68℃で10分間保持した。その結果、約1.5kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ活性の発現株を作製した。作成した発現株よりプラスミドを抽出して、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems製)を用いてサンプルを調製し、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems/HITACHI製)により塩基配列を解析した結果、Pseudomonas putida ATCC 12633由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(参考例A2)
Achromobacter xylosoxidansに由来するグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に特開2005−40130号公報に準拠し作成したグルコン酸脱水活性発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。
(実施例A1)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムの合成
D−グルコン酸カルシウム一水和物(和光純薬製)8.5gを水25gに加え、参考例A2で調製した菌体を0.44g添加した。40℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で6.4gの2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムが生成し、反応収率98モル%であった。また、反応初期のpHは8.4、反応終了時のpHは7.1であった。
(実施例A2)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を4.4g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で3.9gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率46モル%であり、反応時間24時間で7.6gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率88モル%であった。また、反応初期のpHは6.2、反応終了時のpHは6.9であった。
(実施例A3)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ストロンチウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1と同様の方法で合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ストロンチウム5.8gを含む水溶液63gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.7g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で2.3gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率49モル%であり、反応時間25時間で4.4gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率94モル%であった。また、反応初期のpHは5.7、反応終了時のpHは7.2であった。
(実施例A4)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸バリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1と同様の方法で合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸バリウム6.4gを含む水溶液63gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.7g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で2.7gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率58モル%であり、反応時間25時間で4.3gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率94モル%であった。また、反応初期のpHは6.3、反応終了時のpHは6.8であった。
(実施例A5)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成[反応温度]
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムを2.9g含有する水溶液13gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.04g添加した。混合液を30℃から60℃で23時間撹拌を行い、2−デオキシ−D−リボースの生成量を定量した。結果を表1に示した。表1中、dRは、2−デオキシ−D−リボースである。
(実施例A6)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成[基質濃度]
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムを1.6gから4.9g含有する水溶液15gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例1で調製した菌体を0.64gから1.88g添加した。混合液を45℃で22時間撹拌を行い、2−デオキシ−D−リボースの生成量を定量した。結果を表2に示した。
(実施例A7)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
D−グルコン酸カルシウム・一水和物(和光純薬製)18gを含有する水溶液73gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を21.3g及び参考例A2で調製した菌体を3.58g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で10gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率93モル%であった。また、反応初期のpHは6.0、反応終了時のpHは7.2であった。
(実施例A8)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
D−グルコン酸カルシウム・一水和物(和光純薬製)18gを含有する水溶液73gに、参考例A2で調製した菌体を3.58g添加し、45℃で撹拌を行った。12時間後チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を21.3g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間36時間で10gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率93モル%であった。また、反応初期のpHは8.4、12時間後にチアミンピロリン酸等を添加した後のpHは6.1、反応終了時のpHは7.2であった。
(実施例A9)
2−デオキシ−D−リボース水溶液の精製
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム120gを含む水溶液500gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を43.6g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間27時間で73.1gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率89モル%であった。また、反応初期のpHは6.2、反応終了時のpHは6.8であった。この2−デオキシ−D−リボース溶液にラヂオライト(登録商標)を27.5g添加し、撹拌した後、5Aのろ紙を用いて吸引ろ過により炭酸カルシウムを除去し、2−デオキシ−D−リボース68.7gを含む水溶液503gを得た。
(比較例A1)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成反応
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を5.2g添加した。45℃で撹拌を行い、反応時間6時間で2.9gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率29モル%であり、反応時間24時間で3.8gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率38モル%であった。また、反応初期のpHは6.4、反応終了時のpHは8.9であった。
(比較例A2)
D−グルコン酸ナトリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成反応
D−グルコン酸ナトリウム18gを含む水溶液74gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を22.0g及び参考例A2で調製したグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する菌体を3.68g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で6.4gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率58モル%であった。また、反応初期のpHは6.0、反応終了時のpHは8.7であった。
(参考例A3)
Pseudomonas putidaに由来する変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
配列表の配列番号7と配列番号8に示した2種のプライマーを作製し、参考例A1で調整したプラスミドを鋳型として以下の条件でPCRを行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、10ng/μlのpPPBFDからなる反応溶液を作成した。97℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で5分間のサーマルサイクルを11サイクル行った。その結果、約4.5kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号9に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtttに置換して、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。同様にして、配列表の配列番号11及び配列番号12に示したプライマーを用いて、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtatに置換して、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がチロシン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。これら作成したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(実施例A10)
変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A3で調製した菌体を1.3g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で、281番目のヒスチジン残基をフェニルアラニン残基に置換した変異体では7.4g、281番目のヒスチジン残基をチロシン残基に置換した変異体では7.1gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率はそれぞれ98モル%、95モル%であった。また、反応初期のpHは、281番目のヒスチジン残基をフェニルアラニン残基に置換した変異体では6.3、281番目のヒスチジン残基をチロシン残基に置換した変異体では6.2、反応終了時のpHはそれぞれ7.5、7.3であった。
D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の二価金属塩を用いた実施例A1〜A10では、反応中にpHが大きく変化せず、高い反応収率を得ることができた。一方、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の一価金属塩を用いた比較例A1、2では、反応中にpHが大きく変化し、低い反応収率となっている。このような場合は酸でpH調整すれば、高い反応収率を得ることができる。また、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の二価金属塩を用いた実施例A1〜A10では、副生する炭酸イオンと二価金属塩が不溶性の塩を形成し、沈澱するため、濾過により簡単に精製して、金属イオンをほとんど含まない純度の高い2−デオキシ−D−リボース水溶液を得ることができる。
一方、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の一価金属塩を用いた場合は、不溶性の塩を形成しないため、大量の金属イオンを含んだ純度の低い2−デオキシ−D−リボース水溶液となる。
実施例A1〜A10で得られる純度の高い2−デオキシ−D−リボースを用いて次の2−デオキシ−D−リボースをリン酸化して2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを合成する反応を行った場合、高い反応収率で2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを得ることができる。
比較例A1、2で得られる純度の低い2−デオキシ−D−リボース水溶液では、水溶液中に含まれる大量の金属イオンは次工程の反応に持ち込むこととなる。例えば、D−グルコン酸ナトリウムや2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウムを用いて2−デオキシ−D−リボースを合成した場合、2−デオキシ−D−リボース水溶液中に多くのナトリウムイオンが含まれるため、次の2−デオキシ−D−リボースをリン酸化して2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを合成する反応において反応阻害を起こし、得られる2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸エステルの反応収率は低くなる。
このようにして得られる2−D−デオキシリボース水溶液を用いて公知の反応を経てチミジン、2'−デオキシアデノシン、2'−デオキシグアノシン等の 2'−デオキシヌクレオシドを合成することができる。例えば、特許文献2又はArchives of biochemistry and biophysiscs, 164, 567-570 (1974)に記載された方法により2−D−デオキシリボースを2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸エステルとし、特許文献8の方法により、2'−デオキシヌクレオシドとする方法が挙げられる。
(参考例B1)
Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子の単離
Nutrient broth(Difco製)にPseudomonas putida ATCC 12633を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)をもとに、配列表の配列番号19及び配列番号20に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型として以下の条件でPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、50ng/μlのゲノムDNAからなる反応溶液を作製した。94℃で2分間保持した後、94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で90秒間のサーマルサイクルを30サイクル行った後、最後に68℃で10分間保持した。その結果、約1.5kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDと命名した。pPPBFDを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPPBFDを作製した。作製した発現株よりプラスミドを抽出して、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems製)を用いてサンプルを調製し、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems/HITACHI製)により塩基配列を解析した結果、Pseudomonas putida ATCC 12633由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(実施例B1)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号21及び配列番号22に示した2種のプライマーを作製し、参考例B1で調製したpPPBFDを鋳型として以下の条件でPCRを行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、10ng/μlのpPPBFDからなる反応溶液を作製した。97℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で5分間のサーマルサイクルを11サイクル行った。その結果、約4.5kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号23に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtttに置換して、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDm1と命名した。同様にして、配列表の配列番号24及び配列番号25に示したプライマーを用いて、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtatに置換して、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がチロシン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDm2と命名した。これら作成したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPPBFDm1、大腸菌DH5α/pPPBFDm2をそれぞれ作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(参考例B2)
Achromobacter xylosoxidans由来グルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に特開2005−40130号公報の実施例7に準拠して、同公報の図1で示されるプラスミドで形質転換した大腸菌K12W3110を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。
(参考例B3)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムの合成
グルコン酸カルシウム・一水和物(キシダ化学製)8.5gを水25gに加え、参考例B2で調製した菌体0.44gを添加した。40℃で24時間反応した結果、7.4gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムが生成した。
(実施例B2)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
参考例B3に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウム1.9gを含む水溶液9gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体0.3gをそれぞれ添加して、45℃で反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表3に示した。
(参考例B4)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子の単離
参考例B1を参考にして、配列表の配列番号26及び配列番号27に示したプライマーを用いてPseudomonas fluorescens Pf−5よりベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を含むプラスミドを作製してpPFBFDと命名した。また、Nutrient broth(Difco製)に10重量%の塩化ナトリウムを添加して培養した以外は同様にして、配列表の配列番号28及び配列番号29に示したプライマーを用いてChromohalobacter salexigenes DSM3043よりベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を含むプラスミドを作製してpCSBFDと命名した。作製したpPFBFDおよびpCSBFDの塩基配列を解析した結果、Pseudomonas fluorescens Pf−5およびChromohalobacter salexigenes DSM3043由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 YP_260581およびYP_572370)と同一であることを確認した。
(実施例B3)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実施例B1を参考にして、参考例B4で作成したpPFBFDを鋳型として、配列表の配列番号30及び配列番号31に示したプライマーを用いてPCRを行い、配列表の配列番号32に示す塩基配列において、配列表の配列番号32に示す281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをttcに置換して、配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドをpPFBFDm1と命名した。また、同様に、実施例B1を参考にして、参考例B4で作成したpCSBFDを鋳型として、配列表の配列番号33及び配列番号34に示したプライマーを用いてPCRを行い、配列表の配列番号35に示す塩基配列において、配列表の配列番号4に示す281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをttcに置換して、配列表の配列番号4に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドをpCSBFDm1と命名した。これら作製したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPFBFDm1および大腸菌DH5α/pCSBFDm1をそれぞれ作製した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、目的の塩基が置換されていることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(実施例B4)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
実施例B2と同様にして、参考例B2及び実施例B3で得られた菌体をそれぞれ用いて45℃で24時間反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表4に示した。
(参考例B5)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウムの合成
グルコン酸マグネシウム・x水和物(キシダ化学製)80gを水300gに加え、参考例B2で調製した菌体4.2gを添加した。40℃で18時間反応した結果、58gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウムが生成した。
(参考例B6)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムの合成
45〜50重量%グルコン酸水溶液(キシダ化学製)100gに水150gを添加し、pH7.4となるように水酸化ストロンチウム(和光純薬製)を添加したのち、参考例B2で調製した菌体3.5gを添加した。40℃で24時間反応した結果、62gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムが生成した。
(参考例B7)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムの合成
参考例B5と同様にして、水酸化バリウム(キシダ化学製)を用いて40℃で24時間反応した結果、74gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムが生成した。
(実施例B5)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムおよび2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムからの2−デオキシリボースの合成
参考例B5に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウム5.22g、参考例B6に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウム7.00gおよび参考例B7に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウム8.13gを含む各水溶液29gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体0.7gをそれぞれ添加して、45℃で反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表5に示した。
(実施例B6)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いたグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
グルコン酸カルシウム・一水和物(キシダ化学製)18gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B2で得られた菌体3.6g、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体2.3gを添加して、45℃で24時間反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表6に示した。
実施例B2、B4、B5、B6で得られた2−デオキシリボース水溶液を公知の反応を経てチミジン、2'−デオキシアデノシン、2'−デオキシグアノシンをそれぞれ合成できる。例えば、特許文献2又はArchives of biochemistry and biophysiscs, 164, 567-570 (1974)に記載された方法により2−デオキシリボースを2−デオキシリボース−5−リン酸エステルとし、特許文献8の方法により、2'−デオキシヌクレオシドとする方法が挙げられる。
(実験例C1)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
国際公開第2005/045052号パンフレットの参考例1に準拠してShigella flexneri由来酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製し、このプラスミドをpSFAPと命名した。pSFAPを用いて大腸菌DH5α株を形質転換してShigella flexneri由来酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPを鋳型としてPCRを行った。その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号36に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。
このように、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列の様々なアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された変異型酸性ホスファターゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表7に示した。
これら作製したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した大腸菌を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(実験例C2)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C1で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表8及び図4に示した。
(実験例C3)
Escherichia blattae由来野生型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
Nutrient broth(Difco製)にEscherichia blattae JCM1650を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 BAA84942)をもとに配列表の配列番号47と配列表の配列番号48に示した2種のプライマーを用いて、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、約0.8kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/BamHI処理してpUC19に連結し、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpEBAPと命名した。pEBAPを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製した発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 BAA84942)と同一であることを確認した。
作製した発現株を実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C4)
Escherichia blattae由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pEBAPを鋳型としてPCRを行った。その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号49に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号50に示すアミノ酸配列の様々なアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された変異型酸性ホスファターゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表9に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C5)
Escherichia blattae由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C3及び実験例C4で調製した菌体0.25gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表10及び図5に示した。
(実験例C6)
二重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、実験例C1で作製したプラスミドを鋳型としてPCRを行い、二重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、その作製の際に用いたプライマー、及び、鋳型として用いたプラスミドを表11に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C7)
二重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C1で調製した菌体のうちpSFAPを用いて調製した菌体、及び、実験例C6で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表12及び図6(a)、図6(b)に示した。
(実験例C8)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号63及び配列番号64に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm1を鋳型としてPCRを行い、171番目のイソロイシンをトレオニンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm15、及び作製したpSFAPm15で形質転換した大腸菌を作製した。さらにこのpSFAPm15を鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、三重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現
する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表13に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、得られた菌体を20mmol/Lトリスバッファー(pH7.5)に懸濁して10重量%となるように調製したものを反応に供した。
(実験例C9)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.5mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液5.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15及びpSFAPm28を用いて調製した菌体1.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表14及び図7(b)に示した。
(実験例C10)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15及びpSFAPm31を用いて調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表15及び図8(a)に示した。
(実験例C11)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実験例C8で作製したpSFAPm15を鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、三重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表16に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、得られた菌体を20mmol/Lトリスバッファー(pH7.5)に懸濁して10重量%となるように調製したものを反応に供した。
(実験例C12)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.5mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液5.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15を用いて調製した菌体、並びに、実験例C11で調製した菌体のうちpSFAPm16、pSFAPm17、pSFAPm18、pSFAPm19、pSFAPm20、pSFAPm21、pSFAPm22、pSFAPm23、pSFAPm24、pSFAPm25、pSFAPm26、pSFAPm27及びpSFAPm29を用いて調製した菌体1.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表17及び図7(a)、図7(b)に示した。
(実験例C13)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15を用いて調製した菌体、並びに、実験例C11で調製した菌体のうちpSFAPm30、pSFAPm32、pSFAPm33、pSFAPm34、pSFAPm35、pSFAPm36、pSFAPm37、pSFAPm38及びpSFAPm39を用いて調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表18及び図8(a)、図8(b)に示した。
(実験例C14)
四重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、四重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表19に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C15)
四重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例C14で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表20、図9(a)、図9(b)及び図10に示した。
(実験例C16)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号46と配列番号47に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm8を鋳型としてPCRを行い、197番目のロイシンをチロシンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm60、及び、作製したpSFAPm60で形質転換した大腸菌を作製した。さらにこのpSFAPm60を鋳型として、126番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、126番目が様々なアミノ酸に置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表21に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C17)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表22及び図11に示した。
(実験例C18)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号143と配列番号144に示した2種のプライマーを用いて実験例C16で作製したpSFAPm60を鋳型としてPCRを行い、126番目のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm64を作製した。作製したプラスミドpSFAPm64を用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C19)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm60を用いて調製した菌体、及び、実験例C18で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表23及び図11に示した。
(実験例C20)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号145と配列番号146に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、171番目のトレオニンをアスパラギン酸に置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm68を作製した。pSFAPm68を用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C21)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例20で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表24及び図12に示した。
(実験例C22)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
171番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、171番目が様々なアミノ酸置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表25に示した。これら作成したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C23)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例C22で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表26及び図12に示した。
(実験例C24)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号65と配列番号66に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、197番目のロイシンをフェニルアラニンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm74を作製した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C25)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース1.0g(東京化成製)を含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C24で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表27及び図13に示した。
(実験例C26)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
197番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、197番目が様々なアミノ酸置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表28に示した。これら作成したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C27)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C26で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表29及び図13に示した。
(実験例C28)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、五重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表30に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C29)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C28で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表31及び図14に示した。
(実験例C30)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、五重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表32に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C31)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成酸性
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C30で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表33及び図14に示した。
(実験例C32)
グルコン酸より合成した2−デオキシリボースを用いた2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
実施例A2に従い合成し、ろ紙を用いて吸引濾過した2−デオキシリボース2.6gを含む水溶液に酸性ピロリン酸6.5gを添加後、水で30gに調製し、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C28で調製した菌体0.6gを添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表34及び図18に示した。
(実験例C33)
六重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号175と配列番号176に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm78を鋳型としてPCRを行い、89番目のセリンをグリシンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm81、及び、作製したpSFAPm81で形質転換した大腸菌を作製した。作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C34)
六重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム1.25g、2−デオキシリボース0.75gを含む水溶液5gに、実験例C30で調製した菌体のうちpSFAPm78を用いて調製した菌体、及び、実験例C33で調製した菌体0.2gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表35及び図15に示した。
(実験例C35)
131番目に変異を導入した七重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
131番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm81を鋳型としてPCRを行い、七重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表36に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C36)
七重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム1.25g、2−デオキシリボース0.75g(東京化成製)を含む水溶液5gに、実験例C33で調製した菌体、及び、実験例C35で調製した菌体0.2gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表37及び図16に示した。
(実験例C37)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実験例C1で作製したpSFAPを鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表38に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
(実験例C38)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース1.0g(東京化成製)を含む水溶液10gに、実験例C37で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表39及び図17に示した。
(実験例C39)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C32に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液100gに、冷却した状態で攪拌しながら水酸化マグネシウムを少しずつ添加してpHを9.0にした。ろ過後、水溶液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、7.8gの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが含まれていた。
(実験例C40)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの精製
陽イオン交換樹脂MDS1368(LANXESS製)3Lを充填したカラムに、実験例C32に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液2470gを通液させて分画した。pH1以下の分画サンプルを集めたところ、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは260g含まれていた。溶液中のナトリウムイオン濃度は、陽イオン交換樹脂通液前が3.78wt%、通液後が0.06wt%だった。
(実験例C41)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C40に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液1500gを冷却しながら攪拌し、そこへ水酸化マグネシウム110gを少しずつ添加した。添加後、25℃に上げて4時間攪拌した。その液を濾過した後、水溶液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、100gの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが含まれていた。溶液中のリン酸濃度は、水酸化マグネシウム処理前が5.9wt%、処理後が0.2wt%だった。
(実験例C42)
dR5P水溶液の安定性
実験例C41に従い調製した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液を20〜60℃に保持し、48時間後に水溶液中に存在する2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量して求めた残存率を表40に示した。
(参考例C1)
ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
LB broth(Difco製)に大腸菌MG1655を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。大腸菌MG1655由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U00096)をもとに、配列表の配列番号13及び配列番号14に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/BamHI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、大腸菌MG1655由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U00096)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(参考例C2)
Salmonella typhimurium由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
LB培地(Difco製)にSalmonella typhimurium LT2を植菌して30℃で20時間培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Salmonella typhimurium LT2由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AE008915)をもとに配列表の配列番号189及び配列番号190に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/XbaI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Salmonella typhimurium LT2由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AE008915)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。回収した菌体に硫酸マンガンを添加し、室温で30分攪拌したものを反応に供した。
(参考例C3)
Thermus thermophilus由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
Castenholz TYE培地(Difco製)にThermus thermophilus ATCC BAA−163を植菌して70℃で20時間培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Thermus thermophilus ATCC BAA−163由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号NC_005835)をもとに配列表の配列番号191及び配列番号192に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Thermus thermophilus ATCC BAA−163由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 NC_005835)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(参考例C4)
Bacillus subtilis由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
VY培地にBacillus subtilis ATCC 33677を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Bacillus subtilis ATCC 33677由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U32685)をもとに配列番号193及び配列番号194に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/XbaI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Bacillus subtilis ATCC 33677由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U32685)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
(参考例C5)
チミジンホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
配列表の配列番号15及び配列番号16に示した2種のプライマーを用いてPCRを行った以外は参考例C1と同様に操作を行い、チミジンホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。塩基配列を解析した結果、大腸菌MG1655由来チミジンホスホリラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 NP_418799)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって回収した菌体を反応に供した。
(参考例C6)
プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
配列番号17及び配列番号18に示した2種のプライマーを用いてPCRを行い、EcoRI/HindIIIで処理を行った以外は参考例C1と同様に操作を行い、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって回収した菌体を反応に供した。
(実験例C43)
チミジン合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.3gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム0.50g、塩化マグネシウム・6水和物1.7gを添加して40gに調製し、参考例C1、参考例C2、参考例C3又は参考例C4で調製した菌体0.40g及び、参考例C5で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果を表41に示した。
(実験例C44)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.3gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム1.0gを添加して40gに調製し、参考例C1、参考例C2、参考例C3又は参考例C4で調製した菌体0.40g及び参考例5で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、0.23gのチミジンが生成した。
(実験例C45)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからの2'−デオキシヌクレオシド合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.9gを含む水溶液に硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム0.63g、塩化マグネシウム・6水和物2.2gを添加後、アデニンもしくはグアニン1.5gを添加して40gに調製し、参考例C1で調製した菌体0.77g及び参考例C6で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して50℃で22時間反応させた。生成した2'−デオキシヌクレオシドをHPLCで分析した結果を表42に示した。
(実験例C46)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C41に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.34gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム1.2gを添加して42gに調製し、参考例C1で調製した菌体0.4g及び参考例C5で調製した菌体0.3gをそれぞれ添加して、40℃で8時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、1.9gのチミジンが生成した。
(実験例C47)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C41に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル12.5gを含む水溶液にチミン6.4g、硫酸マンガン・一水和物0.14gを添加して150gに調製し、参考例C2で調製した菌体4.2g及び参考例C5で調製した菌体1.2gをそれぞれ添加した。反応液のpHが7.5〜9.0の範囲になるように水酸化カルシウム適宜添加しながら27℃で6時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、12.7gのチミジンが生成した。
(実験例C48)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成反応
実験例C39に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル14.1gを含む水溶液にチミン6.6g、硫酸マンガン・一水和物0.12g、水酸化マグネシウム2.88g、硫酸マグネシウム・一水和物7.52gを添加して150gに調製し、参考例C1で調製した菌体2.4g及び参考例C5で調製した菌体1.2gをそれぞれ添加した。それぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、11.5gのチミジンが生成した。
(実験例C49)
2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C40に従い合成した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液400gを冷却しながら攪拌し、そこへ水酸化マグネシウム25gおよび水酸化カルシウム2gを少しずつ添加した。添加後、15℃で4時間攪拌した。その液を濾過した後、水溶液中の2―デオキシリボース―5―リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、23.9gの2―デオキシリボース―5―リン酸エステルが含まれていた。溶液中のリン酸濃度は、水酸化カルシウム/水酸化マグネシウム処理前が3.4wt%、処理後が0.2wt%だった。
実験例C39、C41およびC49で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液をろ紙を引いて吸引濾過したところ、実験例41およびC49で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液は、実験例C39で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液よりも濾過速度が速く、処理時間を短縮できた。
(実験例C50)
チミジン合成
実験例C35で作製したpSFAPm82、pSFAPm83、pSFAPm84を用いて形質転換した大腸菌をそれぞれ用いて、実験例C32、実験例C40、実験例C41、実験例C42、実験例C46、実験例C47、実験例C49と同様の操作を実施したところ、それぞれほぼ同等の結果が得られた。
本発明の他の態様を以下に例示する。
第1の例
[1]2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を脱カルボキシル化反応に付する工程を含む、2−デオキシリボ−スの製造方法。
[2]二価金属が周期表第2族に属する金属から選択された少なくとも1種である、[1]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[3]周期表第2族に属する金属がカルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択された少なくとも1種である、[2]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[4]脱カルボキシル化反応に付する前記工程において、酵素反応により2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の脱カルボキシル化反応を行う、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[5]脱カルボキシル化反応に付する前記工程における酵素反応が、ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、[4]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[6]ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する前記酵素が、ベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼである、[5]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[7]グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、脱カルボキシル化反応に付する前記工程を実行する、[1]乃至[6]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[8]脱水反応に付する前記工程と、脱カルボキシル化反応に付する前記工程とをワンポットで行う、[7]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[9]脱水反応に付する前記工程において、酵素反応によりグルコン酸の二価金属塩の脱水反応を行う、[7]又は[8]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[10]脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、[9]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[11]グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、[10]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[12]グルコン酸の二価金属塩が、D−グルコン酸の二価金属塩である、[7]〜[11]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[13]2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩が、2−デヒドロ−3−D−デオキシグルコン酸の二価金属塩である、[1]〜[12]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
第2の例
[14]酵素反応により、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩から2−デオキシリボ−スを製造する2−デオキシリボ−スの製造方法であって、
基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用することを特徴とする2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩からの2−デオキシリボ−スの製造方法。
[15]前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、[14]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[16]前記変異型酵素が配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、[14]又は[15]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[17]前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、[16]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[18]前記変異型酵素を用いて2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩から2−デオキシリボ−スに変換する、[14]〜[17]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[19]二価金属が周期表第2族に属する二価金属から選択された少なくとも1つである、[18]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[20]グルコン酸デヒドラタ−ゼによりグルコン酸またはその塩を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩を生成し、
得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩から、前記酵素反応により、2−デオキシリボ−スを製造する、[14]〜[19]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[21]グルコン酸デヒドラタ−ゼがAchromobacter xylosoxidansに由来する酵素である[20]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[22]グルコン酸を出発物質とし、グルコン酸から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を生成する脱水反応、および2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸から2−デオキシリボ−スを生成する脱カルボキシル化反応をワンポット反応で行う[20]又は[21]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[23][14]〜[22]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法に用いる変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
[24]2−デオキシリボ−ス合成能を有し、配列番号1〜3いずれかに記載のアミノ酸配列において、少なくとも1以上のアミノ酸から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を持つことを特徴とする[23]記載の変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
第3の例
[25]酵素反応により、2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法であって、
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を用いて前記酵素反応を実行し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を有し、
前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しているものであることを特徴とする2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
[26]前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファタ−ゼ(EC3.1.3.2)である、[25]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[27]前記変異型酵素が、配列表の配列番号1の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、[25]又は[26]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[28]前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、[27]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[29]前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、[27]又は[28]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[30]前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、[27]〜[29]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[31]前記変異型酵素を用いて2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルに変換する、[25]〜[30]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[32]グルコン酸デヒドラタ−ゼによりグルコン酸又はその塩を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を生成し、
2−デオキシリボ−ス合成酵素によって得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を脱炭酸して2−デオキシリボ−スを生成し、
得られる2−デオキシリボ−スに対して、前記酵素反応を実行して、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する、[25]〜[31]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[33]グルコン酸デヒドラタ−ゼがAchromobacter xylosoxidansに由来する酵素である[32]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[34]2−デオキシリボ−ス合成酵素がPseudomonas putidaに由来する酵素である[32]又は[33]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[35][25]〜[34]いずれか1項に記載の製造方法に用いる変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
[36]2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1の配列で示す57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を有し、
前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しており、
前記変異は、前記アミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を構成するアミノ酸の少なくとも1つが他のアミノ酸に置換されたものである変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
なお、実施例A1〜A10では、グルコン酸としてD−グルコン酸、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸として2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸、2−デオキシリボ−スとして2−デオキシ−D−リボースを用いる例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の方法は、グルコン酸としてL−グルコン酸、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸として2−デヒドロ−3−デオキシ−L−グルコン酸、2−デオキシリボースとして2−デオキシ−L−リボースを使用する場合や、D体とL体とが混合したグルコン酸、D体とL体とが混合した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、D体とL体とが混合した2−デオキシリボースにも用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.少なくとも下記(i)、(ii)及び(iii)のいずれか1つを実行することにより、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボースを合成する;
(ii)基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボース合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボースを合成する;
(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用して2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
2.2−デオキシリボースを出発物質又は中間体とし、複数の酵素反応を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造する、1.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
3.前記2'−デオキシヌクレオシドがチミジンである、1.又は2.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
4.少なくとも前記(i)を実行する、1.乃至3.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
5.前記(i)を実行するとき使用する2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩が、周期表第2族に属する金属から選択された少なくとも1種の二価金属の塩である、4.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
6.前記周期表第2族に属する金属が、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、5.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
7.前記(i)で示す脱カルボキシル化反応が、ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、1.乃至6.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
8.ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する前記酵素が、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼである、7.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
9.グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、脱カルボキシル化反応に付する前記(i)を実行する、1.乃至8.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
10.少なくとも前記(ii)を実行する、1.乃至9.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
11.前記(ii)で使用する前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、1.乃至10.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
12.前記(ii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、1.乃至11.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
13.前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、12.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
14.少なくとも前記(iii)を実行する、1.乃至13.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
15.前記(iii)で示す前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファターゼ(EC 3.1.3.2)である、1.乃至14.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
16.前記(iii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号1で示す配列の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、1.乃至15.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
17.前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、16.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
18.前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、16.又は17.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
19.前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、16.乃至18.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
20.Pseudomonas属に由来する2−デオキシリボース合成酵素を用いて、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボースを合成する、1.乃至19.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
21.グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る工程をさらに含み、得られた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボースを合成する、1.乃至20.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
22.グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る前記工程において、前記脱水反応を酵素反応により実行する、21.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
23.脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラターゼ活性を有する酵素により触媒される、22.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
24.グルコン酸デヒドラターゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、23.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
25.前記脱水反応と、前記脱水反応により得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボースを合成する反応とをワンポットで行う、22.乃至24.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
26.2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、リン酸転移酵素及びヌクレオシド合成酵素を用いて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、1.乃至25.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
27.前記ヌクレオシド合成酵素がヌクレオシドホスホリラーゼである、26.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
28.前記ヌクレオシド合成酵素が、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)及びプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)からなる群から選択される少なくとも1種である、26.又は27.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
29.前記リン酸転移酵素がホスホペントムターゼである、26.乃至28.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
30.2−デオキシリボースと、ピロリン酸又はその塩とを反応させることにより、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、1.乃至29.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
31.2−デオキシリボ−スに酸性ピロリン酸ナトリウムを作用させて、2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムを合成し、得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを含む反応終了物から、前記酸性ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンが除去されていないとき、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムとナトリウムイオンとを含む粗精製物を用いてpH調整剤によってpHを調整しながら2'−デオキシヌクレオシドを製造する、30.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
32.前記pH調整剤が二価金属塩である、31.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
33.前記二価金属塩が硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム又はこれらの混合物である、32.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
34.2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムを合成する反応の反応生成物から、前記ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンを除去されたとき、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸ナトリウムを用いた2'−デオキシヌクレオシドを合成する反応において、前記pH調整剤によるpHの調整を実行しない、31.乃至33.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
35.2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムから2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記反応を行う前に、陽イオン交換樹脂を用いて前記反応生成物からナトリウムイオンを除去する、34.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
36.2−デオキシリボースに対して過剰のピロリン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成したとき、二価金属の水酸化物を用いて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを含む水溶液から、前記ピロリン酸又はその塩に由来するリン酸を沈殿により除去し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を用いて2'−デオキシヌクレオシドを合成する、30.乃至35.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
37.前記二価金属の水酸化物が水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムである、36.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
38.1.乃至37.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボース合成酵素。
39.2−デオキシリボース合成能を有し、配列表の配列番号2乃至4いずれかに示す配列において、少なくとも1以上のアミノ酸から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を持つことを特徴とする38.記載の変異型2−デオキシリボース合成酵素。
40.1.乃至37.いずれか1つに記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成酵素。
41.2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している変異型2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成酵素。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]

Claims (32)

  1. 少なくとも下記(i)を実行することにより、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する2'−デオキシヌクレオシドの製造方法であって、
    (i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩に対する脱カルボキシル化能を有する脱カルボキシル化酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボースを合成する、
    前記脱カルボキシル化酵素は、ケト酸デカルボキシラーゼ活性を有するベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼであり、
    前記二価金属塩は、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の二価金属の塩であり、
    前記脱カルボキシル化酵素が、Pseudomonas属由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼまたはChromohalobacter属由来のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼである、2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  2. 2−デオキシリボースを出発物質又は中間体とし、複数の酵素反応を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造する、請求項1に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  3. 前記2'−デオキシヌクレオシドがチミジンである、請求項1又は2に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  4. グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
    脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から前記2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を合成する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  5. 脱水反応に付する前記工程において、前記脱水反応を酵素反応により実行する、請求項4に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  6. 脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラターゼ活性を有する酵素により触媒される、請求項5に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  7. グルコン酸デヒドラターゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、請求項6に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  8. 前記脱水反応と、前記脱水反応により得られる前記2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて前記2−デオキシリボースを合成する反応とをワンポットで行う、請求項4乃至7いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  9. 前記脱カルボキシル化酵素が、基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボース合成能を有する変異型酵素である、請求項1乃至8いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  10. 前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、請求項9に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  11. 前記変異型酵素が、配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、請求項9又は10に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  12. 前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、請求項11に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  13. 前記2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する工程をさらに含み、
    前記2'−デオキシヌクレオシドを合成する工程において、前記2−デオキシリボースから前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成する際に、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボース−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用し、かつ
    前記野生型酵素が、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している、請求項1乃至12いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
    (a)GSIXFLNDQAMYEXGR
    (b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
    (c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
    (d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
    [アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
  14. 前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファターゼ(EC 3.1.3.2)である、請求項13に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  15. 前記変異型酵素が、配列表の配列番号1で示す配列の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、請求項13又は14に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  16. 前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、前記分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、請求項15に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  17. 前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、請求項15又は16に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  18. 前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、請求項15乃至17いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  19. 前記2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する工程をさらに含み、
    前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から前記2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記工程において、リン酸転移酵素及びヌクレオシド合成酵素を用いて、前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項1乃至18いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  20. 前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から、前記リン酸転移酵素により、2−デオキシリボース−1−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られた前記2−デオキシリボース−1−リン酸エステル又はその塩に対して、前記ヌクレオシド合成酵素を用いて、ピリミジン、プリン、アザプリンおよびデアザプリンからなる群から選択された天然または非天然型の塩基を作用させる工程をさらに含み、
    前記塩基は、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、水酸基、ヒドロキシアミノ基、アミノキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基またはシアノ基によって置換されていてもよい、請求項19に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  21. 前記ヌクレオシド合成酵素がヌクレオシドホスホリラーゼである、請求項19又は20に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  22. 前記ヌクレオシド合成酵素が、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)及びプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項19乃至21いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  23. 前記リン酸転移酵素がホスホペントムターゼである、請求項19乃至22いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  24. 前記2−デオキシリボースから前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩から前記2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記工程において、
    前記2−デオキシリボ−スと、ピロリン酸又はその塩とを反応させることにより、前記2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる前記2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から前記2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項13乃至23いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  25. 前記2−デオキシリボースに酸性ピロリン酸ナトリウムを作用させて、2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムを合成し、得られた2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを含む反応終了物から、前記酸性ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンが除去されていないとき、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムとナトリウムイオンとを含む粗精製物を用いてpH調整剤によってpHを調整しながら2'−デオキシヌクレオシドを製造する、請求項24に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  26. 前記pH調整剤が二価金属塩である、請求項25に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  27. 前記二価金属塩が硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム又はこれらの混合物である、請求項26に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  28. 2−デオキシリボースから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムを合成する反応の反応生成物から、前記ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンを除去されたとき、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸ナトリウムを用いた2'−デオキシヌクレオシドを合成する反応において、前記pH調整剤によるpHの調整を実行しない、請求項24に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  29. 2−デオキシリボース−5−リン酸エステルナトリウムから2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記反応を行う前に、陽イオン交換樹脂を用いて前記反応生成物からナトリウムイオンを除去する、請求項28に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  30. 2−デオキシリボースに対して過剰のピロリン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を合成したとき、二価金属の水酸化物を用いて、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを含む水溶液から、前記ピロリン酸又はその塩に由来するリン酸を沈殿により除去し、得られる2−デオキシリボース−5−リン酸エステル又はその塩を用いて2'−デオキシヌクレオシドを合成する、請求項24乃至29いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  31. 前記二価金属の水酸化物が水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムである、請求項30に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
  32. 前記脱カルボキシル化反応は、前記ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを発現する大腸菌または前記大腸菌の菌体処理物を用いて実行する、請求項1乃至31いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
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