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JPH0937785A - ヌクレオシド−5’−燐酸エステルの製造法 - Google Patents

ヌクレオシド−5’−燐酸エステルの製造法

Info

Publication number
JPH0937785A
JPH0937785A JP8094680A JP9468096A JPH0937785A JP H0937785 A JPH0937785 A JP H0937785A JP 8094680 A JP8094680 A JP 8094680A JP 9468096 A JP9468096 A JP 9468096A JP H0937785 A JPH0937785 A JP H0937785A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
acid
nucleoside
acid phosphatase
sequence
phosphatase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8094680A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuhiro Mihara
康博 三原
Takashi Udagawa
隆 宇多川
Hideaki Yamada
秀明 山田
Yasuhisa Asano
泰久 浅野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP8094680A priority Critical patent/JPH0937785A/ja
Priority to HU9900808A priority patent/HUP9900808A3/hu
Priority to US08/750,145 priority patent/US6010851A/en
Priority to DE69636852T priority patent/DE69636852T2/de
Priority to KR1019970708511A priority patent/KR100293047B1/ko
Priority to PCT/JP1996/001402 priority patent/WO1996037603A1/ja
Priority to EP96914437A priority patent/EP0832970B1/en
Priority to CA002221774A priority patent/CA2221774A1/en
Priority to ES96914437T priority patent/ES2281082T3/es
Priority to JP53556896A priority patent/JP3180349B2/ja
Priority to PL96323493A priority patent/PL183293B1/pl
Priority to CN96195770A priority patent/CN1105778C/zh
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Priority to JP2000395323A priority patent/JP3941390B2/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
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    • C12N9/16Hydrolases (3) acting on ester bonds (3.1)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C12P19/26Preparation of nitrogen-containing carbohydrates
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヌクレオシドを生化学的に燐酸化することに
より、安価かつ効率的にヌクレオシド−5′−燐酸エス
テルを製造する方法を提供する。 【解決手段】 酸性フォスファターゼ、特にヌクレオチ
ダーゼ活性が低下した酸性フォスファターゼを、pH
3.0〜5.5 の条件下でヌクレオシド並びにポリ燐酸
(塩)、フェニル燐酸(塩)及びカルバミル燐酸(塩)
から成る群より選択される燐酸供与体に作用させてヌク
レオシド−5′−燐酸エステルを生成せしめ、これを採
取する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヌクレオシド−
5′−燐酸エステルの製造法に関する。また、本発明
は、ヌクレオシド−5′−燐酸エステルの製造において
有用な新規な酸性フォスファターゼ、該酸性フォスファ
ターゼをコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えDN
A、該組換えDNAを保有する微生物に関する。ヌクレ
オシド−5′−燐酸エステルは、調味料、医薬並びにそ
れらの原料等として有用である。
【0002】
【従来の技術】ヌクレオシドを生化学的に燐酸化するこ
とによりヌクレオシド−5′−燐酸エステルを製造する
方法としては、燐酸供与体としてパラニトロフェニル燐
酸を用いる方法(特公昭39-29858号)、無機燐酸を用い
る方法(特公昭42−1186号)、アセチル燐酸を用いる方
法(特開昭56-82098号)、アデノシン三燐酸(ATP)
を用いる方法(特開昭63−230094号)が知られている。
しかしながら、これらの方法にあっては、使用する基質
が高価であったり、反応副生物が生じたりするために、
安価かつ効率的にヌクレオシド−5′−燐酸エステルの
生産を行うには満足のいくものではなかった。
【0003】そこで、本発明者らは、特定の微生物菌体
を酸性条件下でヌクレオシド並びにポリ燐酸(塩)、フ
ェニル燐酸(塩)及びカルバミル燐酸(塩)よりなる群
より選択される燐酸供与体に作用させることにより、
2′−、3′−ヌクレオチド異性体の副生を伴うことな
く、ヌクレオチド−5′−燐酸エステルを効率よく生成
する方法を開発した(特開平07−231793号)。
【0004】しかしながら、この方法においても、使用
する微生物菌体にわずかながら存在するヌクレオシド分
解活性のために反応中に基質が一部分解され、また、反
応を継続すると生成蓄積したヌクレオシド−5′−燐酸
エステルが分解するため、反応液中に副生物が生成する
とともに、十分な収率が得られなかった。さらに、菌体
あたりの活性が低いため、高濃度の基質を添加して反応
を行えない等の欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、安価
かつ効率的なヌクレオシド−5′−燐酸エステルの製造
方法を提供することである。また、本発明の他の目的
は、ヌクレオシド−5′−燐酸エステルの製造方法にお
いて有用な酵素、該酵素をコードする遺伝子、該遺伝子
を含む組換えDNA及び該組換えDNAを保有する微生
物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の方
法よりも効率の良いヌクレオシド−5′−燐酸エステル
の製造方法を開発するために種々の検討を加えた結果、
微生物の無細胞抽出液より精製した酸性フォスファター
ゼをpH 3.0〜5.5 の条件下でヌクレオシド並びにポリ燐
酸(塩)、フェニル燐酸(塩)及びカルバミル燐酸
(塩)から成る群より選択される燐酸供与体に作用させ
ることにより、高収率で効率良くヌクレオシド−5′−
燐酸エステルを生産することができることを発見した。
さらに、モルガネラ属細菌及びエシェリヒア属細菌より
酸性フォスファターゼをコードする野生型遺伝子及びヌ
クレオチダーゼ活性が低下した変異型酸性フォスファタ
ーゼをコードする遺伝子の取得に成功し、遺伝子工学的
手法により該遺伝子を大量発現させることによりヌクレ
オシド−5′−燐酸エステルの生産性が飛躍的に向上す
ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、酸性フォスファター
ゼ、好ましくはヌクレオチダーゼ活性が低下した酸性フ
ォスファターゼをpH 3.0〜5.5 の条件下でヌクレオシド
並びにポリ燐酸(塩)、フェニル燐酸(塩)及びカルバ
ミル燐酸(塩)から成る群より選択される燐酸供与体に
作用させてヌクレオシド−5′−燐酸エステルを生成せ
しめ、これを採取することを特徴とするヌクレオシド−
5′−燐酸エステルの製造法を提供するものである。
【0008】また、本発明は、モルガネラ属細菌に由来
し、ヌクレオチダーゼ活性が低下した変異型酸性フォス
ファターゼ、該酸性フォスファターゼをコードする遺伝
子、該遺伝子を含む組換えDNA、並びに該組換えDN
Aを保有する微生物を提供するものである。
【0009】さらに本発明は、エシェリヒア属細菌に由
来する新規酸性フォスファターゼ、ヌクレオチダーゼ活
性が低下した変異型酸性フォスファターゼ、これら酸性
フォスファターゼのいずれかをコードする遺伝子、該遺
伝子を含む組換えDNA、並びに該組換えDNAを保有
する微生物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
<1>酸性フォスファターゼの取得 本発明において使用される酸性フォスファターゼは、微
生物に由来するものが好ましく、pH 3.0〜5.5 の条件下
でヌクレオシド並びにポリ燐酸(塩)、フェニル燐酸
(塩)及びカルバミル燐酸(塩)よりなる群より選択さ
れる燐酸供与体から燐酸基の転移によりヌクレオシド−
5′−燐酸エステルを生成する反応を触媒するものであ
れば制限はない。特に好適な例として、モルガネラ属又
はエシェリヒア属に属する細菌に由来する酵素があり、
そのような細菌の代表例として以下のような菌株を挙げ
ることができる。
【0011】 モルガネラ・モルガニ (Morganella morganii) NCIMB 10466 モルガネラ・モルガニ (Morganella morganii) IFO 3168 モルガネラ・モルガニ (Morganella morganii) IFO 3848 エシェリヒア・ブラッタエ (Escherichia blattae) JCM 1650 エシェリヒア・ブラッタエ (Escherichia blattae) ATCC 33429 エシェリヒア・ブラッタエ (Escherichia blattae) ATCC 33430
【0012】なお、酸性フォスファターゼ (EC 3.1.3.
2) は、本来、燐酸エステルを酸性で加水分解する反応
を触媒する酵素であり、燐酸転移反応により生成するヌ
クレオシド−5′−燐酸エステルを分解するヌクレオチ
ダーゼ活性を有している。本発明のヌクレオシド−5′
−燐酸エステルの製造法においては、このような酸性フ
ォスファターゼでも使用することができるが、高い収率
でヌクレオシド−5′−燐酸エステルを得るためには、
上記の細菌が産生する野生型の酸性フォスファターゼに
比べてヌクレオチダーゼ活性が低下した変異型酸性フォ
スファターゼを使用することが望ましい。
【0013】上記のような微生物から、酸性フォスファ
ターゼ活性を有する蛋白質を得るには、該活性を有する
菌株を適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、当
該菌体を破砕して無細胞抽出液を調製して、これより必
要に応じ精製すればよい。
【0014】微生物を培養する培地には格別の制限はな
く、通常の炭素源、窒素源、無機イオン及び必要ならば
有機栄養源を含む通常の培地でよい。炭素源としては、
グルコース、シュクロース等の糖類、グリセロール等の
アルコール類、有機酸その他が適宜使用される。窒素源
としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウ
ム塩その他が用いられる。無機イオンとしては、マグネ
シウムイオン、燐酸イオン、カリウムイオン、鉄イオ
ン、マンガンイオンその他が必要に応じ適宜使用され
る。有機栄養源としては、ビタミン、アミノ酸等、又は
これらを含有する酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コ
ーンスティープリカー、カゼイン分解物、大豆加水分解
物等が適宜用いられる。
【0015】培養条件にも格別の制限はなく、例えば、
好気的条件下にてpH5〜8及び温度25〜40℃の範囲内で
pH及び温度を適当に制御しつつ12〜48時間程度培養を行
なえばよい。
【0016】増殖した菌体は、遠心分離等により培養液
から回収することができる。回収した菌体から無細胞抽
出液を調製するには、通常の方法が用いられる。すなわ
ち、菌体を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等
の方法にて破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去する
ことにより無細胞抽出液が得られる。
【0017】無細胞抽出液から酸性フォスファターゼを
精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィ
ー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマト
グラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点沈殿
等、酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わせ
て用いられる。精製は、完全精製である必要は必ずしも
なく、基質のヌクレオシドの分解に関与する酵素等の夾
雑物が除去できればよい。
【0018】<2>酸性フォスファターゼ遺伝子の取得 酸性フォスファターゼ活性を有する蛋白質をコードする
構造遺伝子を含むDNA断片は当該酵素活性を有する微
生物からクローニングすることができる。クローニング
方法としては、例えば酵素活性を指標として染色体遺伝
子発現ライブラリーを探索する方法、該蛋白質に対する
抗体を作成して染色体遺伝子発現ライブラリーを探索す
る方法、精製された蛋白質のN末端等のアミノ酸配列を
解析し、これを基にプローブを作成し遺伝子ライブラリ
ーを探索する方法等がある。
【0019】具体的には、上記のモルガネラ・モルガニ
又はエシェリヒア・ブラッタエの酸性フォスファターゼ
をコードする遺伝子は、それぞれの微生物の染色体遺伝
子発現ライブラリーを作成し、フォスファターゼ活性を
指標として該ライブラリーを探索することによりクロー
ニングできる。
【0020】すなわち、まず、モルガネラ・モルガニ又
はエシェリヒア・ブラッタエより染色体DNAを調製
し、これを適当な制限酵素で部分分解した後、エシェリ
ヒア・コリで自律複製できるベクターに連結し、得られ
た組換えDNAを用いてエシェリヒア・コリを形質転換
することにより染色体遺伝子発現ライブラリーが作成で
きる。染色体DNAを切断するために、切断反応時間等
を調節して切断の程度を調製すれば、幅広い種類の制限
酵素が使用できる。また、遺伝子のクローニングに使用
するベクターとしては、エシェリヒア・コリで自律複製
できるベクターであればいかなるものでも構わない。例
えば、pUC19, pUC118, pHSG298, pBR322,pBluescriptII
等が用いられる。ベクターと、酸性フォスファターゼ
をコードする遺伝子を含むDNA断片を連結して組換え
体DNAを調製するには、染色体DNAを切断するとき
に用いる制限酵素と同じもの、又は染色体DNA断片の
切断面に相補する切断面を生じる制限酵素を用いてあら
かじめベクターを切断し、T4DNAリガーゼ等のリガ
ーゼを用いてDNA断片との連結を行えばよい。作成し
た組換えDNAの受容菌としては、ベクターの複製に好
適なものであればいずれの菌株でもよく、例えば、HB10
1, JM109, DH5 等のエシェリヒア・コリ菌株が用いられ
る。
【0021】かくして得られる形質転換体を寒天培地上
に生育させコロニーを形成させたのち、培地表面にp−
ニトロフェニル燐酸を含む反応液を注ぎ反応を行うと、
フォスファターゼ活性を発現した株はp−ニトロフェノ
ールを遊離して黄色を示す。これを指標として、形質転
換体を選択することにより目的の酸性フォスファターゼ
をコードする遺伝子を含むDNA断片を保有する形質転
換体を選択することができる。
【0022】次いで選択された形質転換体より組換えD
NAを回収し、ベクターに連結されている酸性フォスフ
ァターゼをコードする遺伝子を含むDNA断片の構造を
解析する。酸性フォスファターゼをコードする遺伝子の
塩基配列は、モルガネラ・モルガニ NCIMB 10466由来の
遺伝子の場合、配列表配列番号2に、エシェリヒア・ブ
ラッタエ JCM 1650 由来の遺伝子の場合、配列表配列番
号9にそれぞれ示される。
【0023】<3>変異型酸性フォスファターゼをコー
ドする遺伝子の取得 上記で得られる酸性フォスファターゼはヌクレオチダー
ゼ活性を有するため、ヌクレオシド−5′−燐酸エステ
ルの製造においては、反応時間の経過とともに生産物の
分解を伴い、反応収率を低下させる要因となることがあ
る。このような場合、ヌクレオチダーゼ活性が低下する
ように酸性フォスファターゼをコードする遺伝子に人為
的に変異を起こさせればよい。
【0024】DNAの目的部位に目的の変異を起こす部
位特異的変異法としてはPCRを用いる方法 (Higuchi,
R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., St
ockton press, 1989); Carter. P., Meth. in Enzymo
l., 154, 382, 1987) あるいはファージを用いる方法
(Kramer, W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 1
54, 350, 1987); Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enz
ymol., 154, 367, 1987)などがある。
【0025】ヌクレオチダーゼ活性が低下した酸性フォ
スファターゼの例としては、モルガネラ・モルガニ NCI
MB 10466由来遺伝子の場合、配列表配列番号4に示され
るアミノ酸配列において72番目のグリシン残基及び/
又は151番目のイソロイシン残基が他のアミノ酸残基
に置換したものが挙げられる。後述の実施例では、72
番目のグリシン残基をアスパラギン酸残基に、151番
目のイソロイシン残基をスレオニン残基に置換した変異
型酸性フォスファターゼの取得例を示した。
【0026】また、エシェリヒア・ブラッタエ JCM 165
0 由来の遺伝子の場合、配列表配列番号11に示される
アミノ酸配列において74番目のグリシン残基及び/又
は153番目のイソロイシン残基が他のアミノ酸残基に
置換したものが挙げられる。後述の実施例では、74番
目のグリシン残基をアスパラギン酸残基に、153番目
のイソロイシン残基とをスレオニン残基に置換した変異
型酸性フォスファターゼ取得の例を示した。
【0027】従って、これらの変異型酸性フォスファタ
ーゼをコードするように、上記の部位特異的変異法によ
り、野生型遺伝子の特定の部位において塩基の置換を行
えばよい。なお、ヌクレオチダーゼ活性を低下させる変
異は、ヌクレオシド−5′−燐酸の生成活性が実質的に
低下しない変異であることが望ましく、ヌクレオチダー
ゼ活性の低下の程度としては、野生型酵素の10ないし40
%程度まで活性が低下すればよい。
【0028】<4>酸性フォスファターゼ遺伝子の宿主
への導入 上記のようにして得られる酸性フォスファターゼ活性を
有する蛋白質をコードする遺伝子を含むDNA断片は、
適当なベクターに再度組換えて宿主細胞に導入させるこ
とにより、酸性フォスファターゼ活性を高レベルに発現
した組換え菌を得ることができる。宿主としては、上記
したHB101, JM109, DH5 等のエシェリヒア・コリ菌株が
挙げられるが、これ以外にも、構築した組換えDNAの
複製起点と酸性フォスファターゼ遺伝子が機能し、組換
えDNAが複製可能でかつ酸性フォスファターゼ遺伝子
の発現が可能な細菌ならば、全て宿主として利用でき
る。最も好ましい宿主の1つはエシェリヒア・コリ JM1
09である。
【0029】酸性フォスファターゼをコードする遺伝子
を組み込むベクターとしては、宿主において複製可能な
ものであれば特に制限はない。例えば宿主としてエシェ
リヒア・コリを用いる場合には、当該細菌で自立複製で
きるプラスミドを挙げることができる。
【0030】例えば ColE1系プラスミド、p15A系プラス
ミド、R因子系プラスミド、ファージ系プラスミド等を
用いることができる。具体的に例示すれば、pBR322 (Ge
ne,2, 95, 1977), pUC19 (Gene, 33, 103, 1985), pUC1
19 (Methods in Enzymology, 153, 3, 1987), pACYC184
(J. Bacteriol, 134, 1141, 1978), pSC101 (Proc.Nat
l. Acad. Sci. U.S.A., 70, 3240, 1973)等が挙げられ
る。
【0031】酸性フォスファターゼをコードする遺伝子
を含むDNA断片とベクターとを連結させてなる組換え
DNAを宿主に導入する方法としては特に制限はなく、
通常の方法により行うことができる。宿主としてエシェ
リヒア・コリを用いる場合には、塩化カルシウム法 (J.
Mol. Biol., 53, 159, 1970), Hanahan法 (J. Mol.Bio
l., 166, 557, 1983), SEM法 (Gene, 96, 23, 1990,
Chung らの方法 (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 8
6, 2172, 1989), 電気穿孔法 (Nucleic AcidsRes., 16,
6127, 1988)などの方法を用いることができる。
【0032】また、上記のように、酸性フォスファター
ゼ遺伝子を自律複製可能なベクターDNAに挿入したも
のを宿主に導入し、染色体外DNAとして宿主に保持さ
せてもよいが、酸性フォスファターゼ遺伝子を、トラン
スダクション、トランスポゾン (Biotechnol., 1, 417,
1983), Muファージ(特開平2-109985号)または相同
組換え (Experiments in Molecular Genetics, Cold Sp
ring Harbor Lab., 1972) を用いた方法で宿主微生物の
染色体に組み込んでもよい。
【0033】<5>組換菌による酸性フォスファターゼ
遺伝子の発現とヌクレオシド−5′−燐酸の製造 上記のようにして得られる酸性フォスファターゼをコー
ドする遺伝子を含む組換えDNAを導入した形質転換体
は、炭素源、窒素源、無機イオン更に必要ならば有機栄
養源を含む適当な培地で培養することにより酸性フォス
ファターゼ活性を高レベルで菌体内に発現することがで
きる。炭素源としては、グルコース等の炭水化物、グリ
セロール等のアルコール類、有機酸その他が適宜使用さ
れる。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア
水、アンモニウム塩、その他が用いられる。無機イオン
としては、マグネシウムイオン、燐酸イオン、カリウム
イオン、鉄イオン、マンガンイオン、その他が必要に応
じ適宜使用される。有機栄養源としては、ビタミン、ア
ミノ酸等,及びこれらを含有する酵母エキス、ペプト
ン、肉エキス、コーンスティープリカー、カゼイン分解
物、大豆加水分解物、その他が適宜用いられる。また、
培地にIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクト
ピラノシド)等の発現誘導剤を添加することにより、酸
性フォスファターゼ活性の発現量が上昇する場合があ
る。
【0034】培養条件にも格別の制限はなく、例えば、
好気的条件下にてpH5〜8及び温度25〜40℃の範囲内で
pH及び温度を適当に制御しつつ12〜48時間程度培養を行
なえばよい。
【0035】次いで培養物から菌体を回収し、破砕によ
り無細胞抽出液を取得し、これから酸性フォスファター
ゼを精製することができる。精製には上記<1>に述べ
たような酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合
わせて用いられる。精製は必ずしも完全精製である必要
はなく、基質のヌクレオシドの分解に関与する酵素等の
夾雑物が除去できればよい。上記<1>で取得した酸性
フォスファターゼ又はかくして遺伝子工学的手法により
遺伝子を大量発現させて得られる酸性フォスファターゼ
を、ヌクレオシド並びにポリ燐酸(塩)、フェニル燐酸
(塩)及びカルバミル燐酸(塩)よりなる群より選択さ
れた燐酸供与体に接触反応させることにより、反応液中
にヌクレオシド−5′−燐酸エステルを生成可能であ
る。
【0036】この際、高い生産性を得るには、反応液の
pHを3.0 〜5.5 の範囲の弱酸性に調製することが重要で
ある。また、遺伝子工学的手法により酸性フォスファタ
ーゼをコードする遺伝子を大量発現させた場合、特にヌ
クレオチダーゼ活性が低下した変異型酸性フォスファタ
ーゼをコードする遺伝子を大量発現させた場合には、精
製した酸性フォスファターゼに替えて、形質転換体の菌
体を含む培養物、該培養物から分離・回収した菌体、該
菌体を固定化処理、アセトン処理、凍結乾燥処理等した
菌体処理物を使用することによっても安価かつ効率的に
ヌクレオシド−5′−燐酸エステルを生成することがで
きる。
【0037】使用するヌクレオシドとしては、プリンヌ
クレオシド類として、イノシン、グアノシン、アデノシ
ン、キサントシン、プリンリボシド、6−メトキシプリ
ンリボシド、2,6−ジアミノプリンリボシド、6−フ
ルオロプリンリボシド、6−チオプリンリボシド、2−
アミノ−6−チオプリンリボシド、メルカプトグアノシ
ン等、ピリミジンヌクレオシド類として、ウリジン、シ
トシン、5−アミノウリジン、5−ヒドロキシウリジ
ン、5−ブロモウリジン、6−アザウリジン等が挙げら
れる。反応によりこれらの天然型ヌクレオシド及び非天
然型ヌクレオシドの5′位が特異的に燐酸化され、それ
ぞれ対応するヌクレオシド−5′−燐酸エステルが生成
する。
【0038】反応液に添加するヌクレオシドの濃度は1
〜20g/dLが望ましい。水に難溶性のヌクレオシドを使用
する場合には、硼酸あるいはジメチルスルホキシドのよ
うな界面活性剤を添加すると反応収率が向上する場合が
ある。
【0039】燐酸供与体として用いられるポリ燐酸
(塩)としては、ピロ燐酸、トリポリ燐酸、トリメタ燐
酸、テトラメタ燐酸、ヘキサメタ燐酸、又はそれらの混
合物、もしくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、ま
たはそれらの塩混合物などが、フェニル燐酸(塩)とし
ては、フェニル燐酸ジナトリウム、フェニル燐酸ジカリ
ウム、O,O−ジフェニル酸無水物、又はそれらの混合
物などが、カルバミル燐酸(塩)としては、カルバミル
燐酸ジナトリウム、カルバミル燐酸ジカリウム、カルバ
ミル燐酸ジアンモニウム、カルバミル燐酸ジリチウム、
又はそれらの混合物などが使用可能である。燐酸供与体
の使用濃度は、燐酸受容体であるヌクレオシドの濃度に
よって決定される。通常、ヌクレオシドの1〜5倍量が
望ましい。反応は、通常、温度20〜60℃、好ましくは30
〜40℃で、pH 3.5〜6.5 、好ましくはpH 4.0〜5.0 の弱
酸性側が好結果を与える。反応には静置又は撹拌のいず
れの方法も採用し得る。反応時間は、使用する酵素の活
性、基質濃度などの条件によって異なるが、1〜100 時
間である。
【0040】このようにして生成したヌクレオシド−
5′−燐酸エステルを反応終了混合物より採取分離する
には、合成吸着樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方
法、その他通常の採取分離方法が採用できる。
【0041】
【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの例に限定されるものではない。な
お、本実施例において、原料のヌクレオシド及び生成し
たヌクレオシド−5′−燐酸エステルは、高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)により、下記の条件にて分
析した。
【0042】カラム:Cosmosil 5C18-AR (4.6×150mm)
〔ナカライテスク社製品〕 移動層:5mM 燐酸バッファー(pH2.8)/メタノール=95
/5 流速:1.0 mL/min 温度:室温 検出:UV 245 nm
【0043】また、燐酸転移活性の測定は次の条件で行
った。イノシン40μmol/mL、ピロ燐酸ナトリウム 100μ
mol/mL、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 100μmol/mL及
び酵素を含む反応液(1 mL)でpH 5.0、30℃で10分反応
を行った。2 N塩酸 200μLを添加して反応を停止した
後、遠心分離により沈澱を除き、燐酸転移反応により生
成した5′−イノシン酸を上記の条件で定量した。この
標準反応条件にて1 分間に1μmol のイノシン酸を生成
する酵素量を1unitと定めた。
【0044】また、酸性フォスファターゼ活性の測定は
次の条件で行った。5′−イノシン酸10μmol/mL、メス
/NaOH緩衝液(pH6.0) 100μmol/mLおよび酵素を含む反
応液(1 mL)で30℃で10分反応を行った。2N塩酸 200μ
L を添加して反応を停止した後、 遠心分離により沈澱を
除き、加水分解反応により生成したイノシンを上記の条
件で定量した。この標準反応条件にて1分間に1μmol
のイノシンを生成する酵素量を1unitと定めた。
【0045】実施例1(モルガネラ・モルガニ由来の酸
性フォスファターゼの精製と性質) ペプトン1g/dL、酵母エキス0.5 g/dL及び食塩1g/dLを
含有する栄養培地(pH7.0) 50 mLを500 mL坂口フラスコ
に入れ、120 ℃にて20分間加熱殺菌した。これに斜面培
養したモルガネラ・モルガニ NCIMB 10466を一白金耳接
種し、30℃で16時間振盪培養した。培養液から遠心分離
で回収した菌体約3,000gを1L の100mM燐酸バッファー
(pH7.0)に懸濁し、4℃で20分間超音波処理を行って菌
体を破砕した。処理液を遠心分離して不溶性画分を除
き、無細胞抽出液を調製した。
【0046】この無細胞抽出液に30%飽和となるように
硫酸アンモニウムを添加した。遠心分離により生成した
沈澱を除去した後、上清液に60%飽和となるように硫酸
アンモニウムを追加添加した。生成した沈澱を遠心分離
で集め、100mM 燐酸バッファーに溶解した。
【0047】この粗酵素液を100mM 燐酸バッファー(pH
7.0) 5 Lに対し4回透析した後、20mM燐酸バッファー
(pH 7.0) で平衡化した DEAE-トヨパール 650M カラム
(口径φ4.1 ×長さ22cm)にチャージし、800mL の20mM
燐酸バッファー(pH7.0)で洗浄した。酵素活性は、素通
り画分にあったので、当該画分を回収した。
【0048】この活性画分に、35%飽和となるように硫
酸アンモニウムを添加し、35%硫安飽和の20mM燐酸バッ
ファー(pH7.0)で平衡化したブチルトヨパールカラム
(口径φ3 .1×長さ26cm) に吸着させた。35%飽和から
20%飽和燐酸バッファー(pH7.0)の直線的な濃度勾配で
溶出した。
【0049】活性画分を集め、50mM燐酸バッファー(pH
7.0)1L に対し透析した後、50mM燐酸バッファー(pH7.
0)で平衡化したヒドロキシアパタイトカラム(口径φ5
×長さ6.5cm)に吸着させた。50mMから300mM 燐酸バッフ
ァー(pH7.0)の直線的な濃度勾配で溶出した。
【0050】活性画分を集め、限外ろ過により濃縮し
た。この酵素液をHiLoadTM 16/60 Superdex 200 カラ
ム(ファルマシア社製品)に注入し、100mM 食塩を含む
50mM燐酸バッファー(pH7.0) により流速1.0mL/分にて溶
出した。
【0051】以上の操作によって、燐酸転移活性を示す
酵素を無細胞抽出液より最終的に約10%の回収率で約55
0 倍に精製した。この精製過程における比活性及び回収
率を表1に示す。この酵素標品は、SDS−ポリアクリ
ルアミド電気泳動において均一であった。
【0052】
【表1】
【0053】精製された酵素は次の性質を有していた。 (1)作用:ポリ燐酸等の燐酸供与体よりヌクレオシド
に燐酸を転移し、ヌクレオシド−5′−燐酸エステルを
生成する。逆に燐酸エステルを加水分解する作用も示
す。 (2)基質特異性:燐酸転移反応においては、ピロ燐
酸、トリポリ燐酸、トリメタ燐酸、テトラメタ燐酸、ヘ
キサメタ燐酸、フェニル燐酸ジナトリウム、フェニル燐
酸ジカリウム、O,O−ジフェニル酸無水物、カルバミ
ル燐酸ジナトリウム、カルバミル燐酸ジカリウム、カル
バミル燐酸ジアンモニウム、カルバミル燐酸ジリチウム
などが燐酸供与体となる。また、燐酸受容体としてはプ
リンリボシド、イノシン、グアノシン、アデノシン、キ
サントシン、ウリジン、シトシン等が燐酸受容体とな
る。一方、燐酸エステル加水分解反応においては、ピロ
燐酸、トリポリ燐酸、トリメタ燐酸、テトラメタ燐酸、
ヘキサメタ燐酸等の無機燐酸、また、ジナトリウムフェ
ニル燐酸ジカリウム、O,O−ジフェニル酸無水物、カ
ルバミル燐酸ジナトリウム、カルバミル燐酸ジカリウ
ム、カルバミル燐酸ジアンモニウム、カルバミル燐酸ジ
リチウム等の燐酸エステル、さらに、5′−プリンリボ
チド、5′−イノシン酸、5′−グアニル酸、5′−ア
デニル酸、5′−キサンチル酸、5′−ウリジル酸、
5′−シチジル酸等の5′−ヌクレオチドが作用を受け
る。 (3)至適pH:5.2 (燐酸転移反応)、6.5 (燐酸エス
テル加水分解反応) (4)pH安定性:pH 3.0〜12.0(30℃、60分処理) (5)至適温度:35℃付近 (6)温度安定性:30℃まで安定(pH 7.0、30分処理) (7)金属イオン及び阻害剤の影響:本酵素活性は金属
イオン添加による活性化現象は見られず、Ag2+、Pb2+
Hg2+及びCu2+によって阻害される。また、ヨード酢酸に
よって阻害される。 (8)分子量:高速液体クロマトグラフィー(TSKgel G
-3000SW 、東ソー社製品) により約190,000 と算出され
る。 (9)サブユニット分子量:SDS −ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動により約25, 000 と算出される。
【0054】本酵素はヌクレオシドへの燐酸転移活性だ
けでなく、逆に燐酸エステルを加水分解する活性も示
し、しかも燐酸エステル分解活性のほうが燐酸転移活性
に比べて20倍以上高い活性を示した。また、その他の性
質もモルガネラ属の菌が産生する既知の酸性フォスファ
ターゼとよく一致することから(Microbiology, 140, 1
341-1350 (1994) )、本酵素は酸性フォスファターゼで
あることが明らかとなった。
【0055】ピロ燐酸ナトリウム10g/dL及びイノシン2
g/dLをpH 5.5, 5.0, 4.5, 4.0, 3.5の各pHの酢酸バッフ
ァーに溶解し、これに上記の酵素標品を50units/dLとな
るように添加した。各pHを維持しながら30℃で6時間反
応を行い、経時的に生成した5′−イノシン酸の量を測
定した。なお、生成したイノシン酸は、5′−イノシン
酸のみで、2′−イノシン酸及び3′−イノシン酸の副
生は全く認められなかった。結果を図1に示す。図1
中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(mg/dL) を、縦軸は
反応時間(hr) を、また白抜き正方形はpH 5.5、黒埋め
三角形はpH 5.0、白抜き三角形はpH 4.5、黒埋め円形は
pH 4.0、白抜き円形はpH3.5 における反応の推移を示
す。 5′−イノシン酸の生成速度はpH5.0 の時に最大
となったが、5′−イノシン酸の最大蓄積量はpHがより
低い方が高くなった。5′−イノシン酸の生産にはpH4.
0 の反応条件が最も効率がよく、3時間の反応で2.60g/
dlの5′−イノシン酸が生成蓄積した。
【0056】実施例2(モルガネラ・モルガニ由来の酸
性フォスファターゼ標品によるヌクレオシドの燐酸化反
応) ピロ燐酸ナトリウム10g/dl及び燐酸受容体としてイノシ
ン、グアニン、ウリジン又はシチジン2g/dLを酢酸バッ
ファー (pH4.0)に溶解し、これに実施例1の酵素標品を
50units/dLとなるように添加し、pHを4.0 に維持しなが
ら、30℃で3時間反応させた。反応により生成したヌク
レオシド−5′−エステルの量を表2に示す。なお、生
成したヌクレオチドはヌクレオシド−5′−エステルの
みでヌクレオシド−2′−エステル及びヌクレオシド−
3′−エステルの副生は全く認められなかった。
【0057】
【表2】
【0058】実施例3(モルガネラ・モルガニ由来の酸
性フォスファターゼ標品による5′−イノシン酸の生
産) イノシン2g/dlおよび燐酸供与体としてトリポリ燐酸ナ
トリウム、ポリ燐酸ナトリウム(商品名:ポリゴンP、
千代田化学(株)製品)、フェニル酢酸ジナトリウム又
はカルバミル燐酸ジナトリウム10g/dLを酢酸バッファー
(pH4.0)に溶解し、これに実施例1で調製した酵素標品
を50units/dLとなるように添加し、pHを4.0 に維持しな
がら30℃で3時間反応させた。反応により生成した5′
−イノシン酸の量を表3に示す。いずれの燐酸供与体を
用いた場合にも効率よく5′−イノシン酸が生成蓄積し
たが、ポリ燐酸ナトリウムを燐酸供与体として用いた場
合に最も5′−イノシン酸の蓄積量が高かった。
【0059】
【表3】
【0060】実施例4(エシェリヒア・ブラッタエ由来
の酸性フォスファターゼの精製と性質) ペプトン1g/dL、酵母エキス0.5g/dL 及び食塩1g/dLを
含有する栄養培地(pH7.0) 50mL を500 mLの坂口フラス
コに入れ、120 ℃にて20分間加熱殺菌した。これに、斜
面培養したエシェリヒア・ブラッタエ JCM 1650 を一白
金耳接種し、30℃で16時間振盪培養した。培養液から遠
心分離により菌体を回収した。この菌体約3,300gを1L
の100mM 燐酸バッファー (pH7.0)に懸濁し、4℃で20分
間超音波処理を行い菌体を破砕した。処理液を遠心分離
して不溶性画分を除き、無細胞抽出液を調製した。
【0061】この無細胞抽出液に30%飽和となるように
硫酸アンモニウムを添加した。遠心分離により生成した
沈澱を除去した後、上清液に60%飽和となるように硫酸
アンモニウムを追加添加した。生成した沈澱を遠心分離
により回収し、100mM 燐酸バッファーに溶解した。
【0062】この粗酵素液を100mM 燐酸バッファー (pH
7.0)5L に対し4回透析したのち、20mM燐酸バッファー
(pH7.0)で平衡化したDEAE−トヨパール650Mカラム(口
径φ6.2 ×長さ 35cm)にチャージし、20mM燐酸バッファ
ー (pH7.0)で洗浄した。酵素活性は素通り画分にあった
ので、当該画分を回収した。
【0063】この活性画分に35%飽和となるように硫酸
アンモニウムを添加し、これを35%飽和硫酸アンモニウ
ムを含む20mM燐酸バッファー (pH7.0)で平衡化したブチ
ルトヨパールカラム(口径φ5.0 ×長さ22.5cm)に吸着
させた。これを35%飽和から20%飽和燐酸バッファー
(pH7.0)の直線的な濃度勾配で溶出した。
【0064】活性画分を集め、100mM 燐酸バッファー
(pH7.0)1L に対して透析したのち、100mM 燐酸バッフ
ァー (pH7.0)で平衡化したヒドロキシアパタイトカラム
(口径φ3.0 ×長さ7.0cm )に吸着させた。これを50mM
から100mM 燐酸バッファー(pH7.0)の直線的な濃度勾配
で溶出し、活性画分を集めた。
【0065】この酵素液を10mM燐酸バッファー (pH6.0)
1L に対し透析した後、10mM燐酸バッファー (pH6.0)で
平衡化したCM-Toyoperalカラム(口径φ2.0 ×長さ14.0
cm)に吸着させた。これを0mM から300mM 塩化カリウム
を含む燐酸バッファー(pH6.0)の直線的な濃度勾配で溶
出した。この活性画分を集めた。
【0066】以上の操作によって、燐酸転移活性を示す
酵素を無細胞抽出液より最終的に約16%の回収率で約60
0 倍に精製した。この精製過程における比活性及び回収
率を表4に示す。この酵素標品は、SDS−ポリアクリ
ルアミド電気泳動において均一であった。
【0067】
【表4】
【0068】精製された酵素は次の性質を有していた。 (1)作用:ポリ燐酸等の燐酸供与体よりヌクレオシド
に燐酸を転移し、ヌクレオシド−5′−燐酸エステルを
生成する。逆に燐酸エステルを加水分解する作用も示
す。 (2)基質特異性:燐酸転移反応においては、ピロ燐
酸、トリポリ燐酸、トリメタ燐酸、テトラメタ燐酸、ヘ
キサメタ燐酸、フェニル燐酸ジナトリウム、フェニル燐
酸ジカリウム、O,O−ジフェニル酸無水物、カルバミ
ル燐酸ジナトリウム、カルバミル燐酸ジカリウム、カル
バミル燐酸ジアンモニウム、カルバミル燐酸ジリチウム
などが燐酸供与体となる。また、燐酸受容体としてはプ
リンリボシド、イノシン、グアノシン、アデノシン、キ
サントシンウリジン、シトシン等が燐酸受容体となる。
一方、燐酸エステル加水分解反応においては、ピロ燐
酸、トリポリ燐酸、トリメタ燐酸、テトラメタ燐酸、ヘ
キサメタ燐酸等の無機燐酸、また、ジナトリウムフェニ
ル燐酸ジカリウム、O,O−ジフェニル酸無水物、カル
バミル燐酸ジナトリウム、カルバミル燐酸ジカリウム、
カルバミル燐酸ジアンモニウム、カルバミル燐酸ジリチ
ウム等の燐酸エステル、そして5′−プリンリボチド、
5′−イノシン酸、5′−グアニル酸、5′−アデニル
酸、5′−キサンチル酸、5′−ウリジル酸、5′−シ
チジル酸等の5′−ヌクレオチドが作用を受ける。 (3)至適pH:5.2 (燐酸転移反応)、6.5 (燐酸エス
テル加水分解反応) (4)pH安定性:pH 3.5〜12.0(30℃、60分処理) (5)至適温度:35℃付近 (6)温度安定性:40℃まで安定(pH 7.0、30分処理) (7)金属イオン及び阻害剤の影響:本酵素活性は金属
イオン添加による活性化現象は見られず、Fe2+、Ag2+
Pb2+、Hg2+およびCu2+によって阻害される。また、ヨー
ド酢酸によって阻害される。 (8)分子量:高速液体クロマトグラフィー(TSKgel G
-3000SW 、東ソー社製品) により約188,000 と算出され
る。 (9)サブユニット分子量:SDS −ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動により約24,500と算出される。
【0069】本酵素もモルガネラ・モルガニ NCIMB 104
66の無細胞抽出液より精製した酵素と同様にヌクレオシ
ドへの燐酸転移活性だけでなく、逆に燐酸エステルを加
水分解する活性も示した。しかも燐酸エステル分解活性
のほうが燐酸転移活性に比べて30倍以上高い活性を示す
ことから、酸性フォスファターゼであることが明らかと
なった。
【0070】ピロ燐酸ナトリウム15g/dLおよびイノシン
3g/dLを pH 5.5, 5.0, 4.5, 4.0,3.5 の各pHの酢酸バ
ッファーに溶解し、これに上記の酵素標品を50units/dL
となるように添加した。各pHを維持しながら30℃で6時
間反応を行い、経時的に生成した5′−イノシン酸の量
を測定した。なお、生成したイノシン酸は5′−イノシ
ン酸のみで、2′−イノシン酸及び3′−イノシン酸の
副生は全く認められなかった。結果を図2に示す。
【0071】図2中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(m
g/dL) を、縦軸は反応時間(hr)を、また白抜き正方形は
pH 5.5、黒埋め三角形はpH 5.0、白抜き三角形はpH 4.
5、黒埋め円形はpH 4.0、白抜き円形はpH 3.5における
反応の推移を示す。5′−イノシン酸の生成速度はpH
5.0の時に最大となったが、5′−イノシン酸の最大蓄
積量はpHがより低い範囲の方が高く、5′−イノシン酸
の生産はpH 4.0の反応条件が最も効率的であった。30
℃、pH 4.0の反応では3時間で1.56g/dLの5′−イノシ
ン酸が生成蓄積した。
【0072】実施例5(エシェリヒア・ブラッタエ由来
の酸性フォスファターゼ標品によるヌクレオシドの燐酸
化反応) ピロ燐酸ナトリウム15g/dL及びイノシン、グアニン、ウ
リジン又はシチジンを3g/dLを酢酸バッファー(pH4.0)
に溶解し、これに実施例4の酵素標品を50units/dLとな
るように添加し、pHを4.0 に維持しながら、35℃で3時
間反応させた。生成したヌクレオシド−5′−エステル
の量を表5に示す。なお、生成したヌクレオチドはヌク
レオシド−5′−エステルのみでヌクレオシド−2′−
エステル及びヌクレオシド−3′−エステルの副生は全
く認められなかった。
【0073】
【表5】
【0074】実施例6(エシェリヒア・ブラッタエ由来
の酸性フォスファターゼ標品による5′−イノシン酸の
生産) イノシン2g/dL及び燐酸供与体としてトリポリ燐酸ナト
リウム、ポリ燐酸ナトリウム(商品名:ポリゴンP、千
代田化学(株)製品)、フェニル酢酸ジナトリウムまた
はカルバミル燐酸ジナトリウム10g/dLを酢酸バッファー
(pH4.0)に溶解し、これに実施例4で調製した酵素標品
を上記の酵素標品を50units/dLとなるように添加し、pH
を4.0 に維持しながら、35℃で3時間反応させた。生成
した5′−イノシン酸の量を表6に示す。いずれの燐酸
供与体を用いた場合にも効率よく5′−イノシン酸が生
成蓄積したが、ポリ燐酸ナトリウムを燐酸供与体として
用いた場合に最も5′−イノシン酸の蓄積量が高かっ
た。
【0075】
【表6】
【0076】実施例7(モルガネラ・モルガニ染色体か
らの酸性フォスファターゼをコードする遺伝子の単離)
【0077】(1)N末端アミノ酸配列の決定 モルガネラ・モルガニ NCIMB 10466の無細胞抽出液から
実施例1記載の方法に従い精製した酸性フォスファター
ゼをDITCメンブレン(Milligen/Biosearch社製)に
吸着させ、Prosequencer 6625 (Milligen/Biosearch社
製)を用いてN末端のアミノ酸配列を決定した。配列表
配列番号1に示した20残基のN末端アミノ酸配列が決定
された。
【0078】(2)酸性フォスファターゼをコードする
遺伝子を含むDNA断片の単離 モルガネラ・モルガニ NCIMB 10466の培養菌体からMurr
ay and Thomsonの方法(Nucl. Acid Res., 4321, 8, 19
80)に従い、染色体DNAを調製した。これを制限酵素
Sau3AIで部分分解した後、ショ糖密度勾配遠心分
離により3〜6kbp のDNA断片を分画した。プラスミ
ドベクターpUC118(宝酒造社製)を制限酵素BamHI
で切断し、部分分解した染色体DNA断片と連結させ
た。DNAの連結はDNAライゲーションキット(宝酒
造社製)を用い、指定された方法にて行った。次いで、
得られたDNA混合物を用いて常法によりエシェリヒア
・コリ JM109(宝酒造社製)を形質転換した。形質転換
体をアンピシリン100 μg/mLを含むL寒天培地上にプレ
ーティングして生育させ、遺伝子ライブラリーを作成し
た形質転換体の生育した寒天培地の表面に4mM p−ニ
トロフェニル燐酸及び100mM メス/NaOHバッファー (pH
6.5)を含む反応液を注ぎ、30℃で15分間保温した。フォ
スファターゼ活性を発現した菌は、p−ニトロフェノー
ルを遊離して黄色を示すため、これを指標として形質転
換体を選択した。約20,000株の形質転換体の遺伝子発現
ライブラリーを探索した結果、フォスファターゼ活性を
発現した形質転換体30株が得られた。
【0079】フォスファターゼ活性を発現した30株の形
質転換体を単コロニー分離し、アンピシリン100 μg/mL
を含むL培地2.5ml に接種し、37℃で16時間培養した。
培養液より集菌した菌体にイノシン2g/dL及びピロ燐酸
ナトリウム10g/dLを含む100mM 酢酸ナトリウムバッファ
ー (pH5.0)50μL を添加し、30℃で16時間反応を行っ
た。
【0080】HPLC分析によりて5′−イノシン酸の
生成を検出し、燐酸転移活性を持つ菌株を選択した。そ
の結果、燐酸転移活性を示し、目的の酸性フォスファタ
ーゼ遺伝子を含むDNA断片を保有すると予想される形
質転換体5株を得ることができた。
【0081】実施例8(モルガネラ・モルガニ NCIMB 1
0466由来の酸性フォスファターゼ遺伝子の塩基配列の決
定) 実施例7で得られたモルガネラ・モルガニ NCIMB10466
由来酸性フォスファターゼ遺伝子を含むDNA断片を保
有すると予想される形質転換体の1株よりアルカリ溶菌
法(Molecular Cloning 2nd edition, J. Sambrook, E.
F. Fritsch &T. Maniatis, Cold Spring Harbour Labo
ratoty Press, p1.25, 1989)によりプラスミドを調製
し、挿入されたDNA断片の解析を行った。なお、この
プラスミドはpMPI501 と命名された。決定した挿入DN
A断片の制限酵素地図を図3に示す。
【0082】さらにサブクローニングにより、酸性フォ
スファターゼ遺伝子領域を限定した結果、制限酵素Hi
dIII と制限酵素EcoRIで切り出される1.2Kbpの
大きさの断片中に本酸性フォスファターゼ遺伝子が含ま
れることが示唆された。そこで塩基配列の決定のため
に、この1.2kbpの断片をHindIII 及びEcoRIで
切断したpUC118に結合したプラスミドDNAを構築し
た。pMPI505 と命名されたこのプラスミドDNAを用い
て常法によりエシェリヒア・コリ JM109(宝酒造株式会
社製)を形質転換し、これを100 μg/mLのアンピシリン
を含むL寒天培地上にプレーテイングし、形質転換体を
得た。
【0083】pMPI505 を保有するエシェリヒア・コリ J
M109(宝酒造製)の形質転換体よりアルカリ溶菌法によ
りプラスミドを調製し、塩基配列の決定を行った。塩基
配列の決定は、Taq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequen
cing Kit(アプライドバイオケミカル社製)を用い、サ
ンガーらの方法(J. Mol. Biol., 143, 161, 1980)に従
って行った。決定したオープン・リーデイング・フレー
ムの塩基配列を配列表配列番号2に示した。また、この
塩基配列より推定される蛋白質のアミノ酸配列を配列表
配列番号3に示した。このアミノ酸配列中に精製酵素の
N末端アミノ酸配列と完全に一致する配列が存在した。
精製酵素のN末端は配列番号3に示される配列の21番目
のアラニン残基から開始していたため、1番目のメチオ
ニン残基から20番目のアラニン残基までのペプチドは、
翻訳後に除去されるものと考えられた。これより推定さ
れる成熟蛋白質のアミノ酸配列を配列表配列番号4に示
した。
【0084】アミノ酸配列から予想される成熟蛋白質の
分子量は24.9キロダルトンと算出され、精製酵素のSD
S−PAGEの結果とよく一致した。以上の結果及び本
断片を含むプラスミドを有する形質転換体が燐酸転移活
性を示すことから本オープン・リーデイング・フレーム
は目的の酸性フォスファターゼをコードする領域である
と同定した。
【0085】塩基配列、アミノ酸配列各々について既知
の配列との相同性比較を行った。用いたデーターベース
はEMBL及びSWISS−PROTである。その結
果、配列表配列番号2に示される塩基配列は、既知のモ
ルガネラ・モルガニ由来の酸性フォスファターゼ遺伝子
(Thaller, M. C. et. al. Microbiology, 140, 1341,1
994)では、54番目のGがA、72番目のGがA、276 番
目のTがG、378 番目のTがC、420 番目のGがT、52
5 番目のCがG、529 番目のCがT、531 番目のGがA
である以外は配列が一致し、また、配列表配列番号4に
示されるアミノ酸配列は、モルガネラ・モルガニ由来の
酸性フォスファターゼと同一であることが判明した。す
なわち、配列表配列番号4に示されるアミノ酸配列から
なる蛋白質をコードする遺伝子が、モルガネラ・モルガ
ニ NCIMB 10466の酸性フォスファターゼ遺伝子である。
【0086】なお、前駆体蛋白質は249 個のアミノ酸か
ら成り、その配列から予想される蛋白質の分子量は27.0
キロダルトンであった。
【0087】また、pMPI505 をエシェリヒア・コリ JM
109 に保持させた株はAJ13143 と命名され、この株は、
ブタペスト条約に基づく国際寄託機関である日本国茨城
県に所在の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究
所に1996年2月23日付で既に寄託されており、その受託
番号FERM BP-5422が付与されている。
【0088】実施例9(モルガネラ・モルガニ NCIMB 1
0466由来の酸性フォスファターゼ遺伝子の発現による活
性の増幅) 実施例8にて構築したエシェリヒア・コリ JM109/pMPI
505 をアンピシリン100 μg/mL及びIPTG1mMを含む
L培地50mLに接種し、37℃で16時間培養した。該培養液
から遠心分離により菌体を集め、生理食塩水で1回洗浄
した。菌体を5mLの100mM 燐酸バッファー (pH7.0)に懸
濁し、4℃で20分間超音波処理を行い破砕した。処理液
を遠心分離して不溶性画分を除き、無細胞抽出液を調製
した。
【0089】得られた無細胞抽出液の燐酸転移活性を、
プラスミドpUC118で同様に形質転換したエシェリヒア・
コリ JM109及びモルガネラ・モルガニ野生株より調製し
た無細胞抽出液の活性を対照として測定した結果を表7
に示す。エシェリヒア・コリJM109/pUC118では燐酸転移
活性は検出されず、モルガネラ・モルガニ野生株でも燐
酸転移活性は低かった。一方、エシェリヒア・コリ JM1
09/pMPI505はモルガネラ・モルガニ野生株に比べて比活
性で150 倍と高い燐酸転移活性を示しており、この結果
から導入したDNA断片がエシェリヒア・コリにおいて
酸性フォスファターゼを高発現していることが示され
た。
【0090】
【表7】
【0091】実施例10(モルガネラ・モルガニ NCIMB
10466由来の酸性フォスファタ−ゼ遺伝子保持株を用い
たイノシンから5′−イノシン酸の生産) ピロ燐酸ナトリウム12g/dl及びイノシン6g/dLを100mM
酢酸バッファー (pH4.0)に溶解し、これに上記のエシェ
リヒア・コリ JM109/pMPI505 の菌体を乾燥菌体重量で
100 mg/dL となるように添加し、pHを4.0 に維持しなが
ら、30℃で6時間反応を行い、経時的に生成した5′−
イノシン酸の量を測定した。なお、生成したイノシン酸
は5′−イノシン酸のみで2′−イノシン酸及び3′−
イノシン酸の副生は全く認められなかった。結果を図4
に示す。図4中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(mg/d
L) を、縦軸は反応時間(hr)を、また黒埋め円形は反応
の推移を示す。酸性フォスファターゼ遺伝子保持株は著
量の酸性フォスファターゼを発現し、本菌を用いたピロ
燐酸とイノシンからの5′−イノシン酸生産反応におい
ては非常に効率よく短時間で5′−イノシン酸が生成蓄
積した。しかし反応時間をのばすと生成蓄積した5′−
イノシン酸の分解による減少が認められた。
【0092】実施例11(ヌクレオチダーゼ活性低下型
の酸性フォスファターゼ遺伝子の作成) 実施例9及び10に示したように酸性フォスファターゼ
遺伝子保持株は著量の酸性フォスファターゼを発現し、
本菌を用いたピロ燐酸とイノシンからの5′−イノシン
酸生産反応においては、非常に効率よく短時間で5′−
イノシン酸が生成蓄積する。しかし、生成した5′−イ
ノシン酸が酸性フォスファターゼ自体が有するヌクレオ
チダーゼ活性によって分解を受けるために5′−イノシ
ン酸の蓄積量がある程度以上は上がらないことが判明し
た。そこで実施例7にてクローニングしたモルガネラ・
モルガニ NCIMB 10466由来酸性フォスファターゼ遺伝子
にPCRを用いる部位特異的変異法により変異を導入
し、酵素の改質を行った。
【0093】DNA合成装置(アプライドバイオシステ
ム社製モデル 394)を用いてホスホアミダイト法にて配
列表配列番号5、6及び7に示す配列を有するオリゴヌ
クレオチドMUT500、MUT510及びMUT520をそれぞれ合成し
た。
【0094】鋳型として実施例8で調製したプラスミド
pMPI505 を1ng、プライマーとしてM13プライマーRV
(宝酒造社製)とMUT510オリゴヌクレオチド各2.5 μmo
L 及びタックDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)2.5 ユ
ニットをdATP、dCTP、dGTP、dTTP各 200μM 、塩化カリ
ウム 50mM 及び塩化マグネシウム 1.5mMを含む100mMト
リスー塩酸緩衝液(pH8.3) 100μL に添加し、94℃を30
秒、55℃を2分、72℃を3分のサイクルを25回繰り返す
PCR反応を行った。PCR反応はサーマルサイクラー
PJ2000型(宝酒造社製)を用いて行った。また別に、鋳
型としてプラスミドDNA pMPI505を1ng、プライマー
としてM13プライマーM4(宝酒造社製)とMUT500オリゴ
ヌクレオチド各2.5 μmol を用いて同様にPCR反応を
行った。それぞれの反応液をマイクロスピンカラムS-40
0 (ファルマシア社製)を用いてゲル濾過により精製
し、プライマーを除去した。
【0095】それぞれのPCR反応液1μL をdATP、dC
TP、dGTP、dTTP各200 μM 、塩化カリウム 50mM 及び塩
化マグネシウム 1.5mMを含む100mM トリスー塩酸緩衝液
(pH8.3)95μL に添加し、94℃で10分加熱後、60分間か
けて37℃まで冷却した後、37℃で15分保温しヘテロ二本
鎖を形成させた。これに、タックDNAポリメラーゼ2.
5 ユニットを添加して72℃で3分反応を行い、ヘテロ二
本鎖を完成させた。次に、この反応液にM13プライマー
RV及びM13プライマーM4 各2.5 μmol を添加して、
94℃を30秒、55℃を2分、72℃を3分のサイクルを10回
繰り返すPCR反応を行った。
【0096】2回目のPCR反応の生成物をHindII
I とEcoRIで切断後、フェノール/クロロホルム抽
出し、エタノール沈殿した。このDNA断片をHin
III及びEcoRIで切断したpUC118に結合し、得られ
たプラスミドDNAを用いて常法によりエシェリヒア・
コリ JM109(宝酒造製)を形質転換した。これを100μg
/mLのアンピシリンを含むL寒天培地上にプレーテイン
グし、形質転換体を得た。
【0097】形質転換体よりアルカリ溶菌法によってプ
ラスミドを調製し、塩基配列の決定を行い、目的の塩基
が置換されていることを確認した。塩基配列の決定は、
TaqDye Deoxy Terminator Cycle Sequencing Kit (ア
プライドバイオケミカル社製)を使用し、サンガーらの
方法(J. Mol. Biol., 143, 161, 1980)に従って行っ
た。このようにして成熟蛋白質の72番目のグリシン残基
(GGT )がアスパラギン酸残基(G*AT)に置換した変異
型フォスファターゼをコードする変異型遺伝子を作成し
た。この変異型遺伝子を含むプラスミドをpMPI510 と命
名した。
【0098】また、鋳型としてpMPI505 、プライマーと
してMUT500とMUT520オリゴヌクレオチドを用いて同様の
操作により、成熟蛋白質の151 番目のイソロイシン残基
(ATC)がスレオニン残基(A*CC)に置換した変異型フォ
スファターゼをコードする変異型遺伝子を作成した。こ
の変異型遺伝子を含むプラスミドをpMPI520 と命名し
た。
【0099】さらに鋳型としてpMPI510 、プライマーと
してMUT500とMUT520オリゴヌクレオチドを用いて同様の
操作により、成熟蛋白質の72番目のグリシン残基(GGT)
がアスパラギン酸残基(G*AT)に、151 番目のイソロイ
シン残基(ATC )がスレオニン残基(A*CC)に置換した
変異型フォスファターゼをコードする変異型遺伝子を作
成した。この変異型遺伝子を含むプラスミドをpMPI530
と命名した。
【0100】それぞれの変異型酸性フォスファターゼ遺
伝子を含むプラスミドを導入したエシェリヒア・コリ J
M109/pMPI510 、エシェリヒア・コリ JM109/pMPI520
、エシェリヒア・コリ JM109/pMPI530 及び野生型酸
性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを導入した
エシェリヒア・コリ JM109/pMPI505 を、アンピシリン
100 μg/mlおよびIPTG1mMを含むL培地50mLに接種
し、37℃で16時間培養した。該培養液から遠心分離によ
り菌体を集め、生理食塩水で1回洗浄した。菌体を5mL
の100mM 燐酸バッファー (pH7.0)に懸濁し、4℃で20分
間超音波処理を行い菌体を破砕した。処理液を遠心分離
して不溶性画分を除き、無細胞抽出液を調製した。得ら
れた無細胞抽出液のヌクレオチダーゼ活性を測定し、野
生株のものと比較した。
【0101】部位特異的変異法により作製した変異型酸
性フォスファターゼの各々の変異点のアミノ酸変異と塩
基置換及びヌクレオチダーゼ活性を野生型酵素の活性に
対する相対活性で表した結果を表8に示す。作製した変
異型酸性フォスファターゼはいずれも野生型酸性フォス
ファターゼに比べてヌクレオチダーゼ活性が低下してい
た。
【0102】
【表8】
【0103】実施例12(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いたイノシンか
ら5′−イノシン酸の生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pMPI510 、エシェ
リヒア・コリ JM109/pMPI520 、エシェリヒア・コリ J
M109/pMPI530 及び野生型酸性フォスファターゼ遺伝子
を含むプラスミドを導入したエシェリヒア・コリ JM109
/pMPI505 をアンピシリン100 μg/mL及びIPTG1mM
を含むL培地50mLに接種し、37℃で16時間培養した。
【0104】ピロ燐酸ナトリウム12g/dL及びイノシン6g
/dL を100mM 酢酸バッファー (pH4.0)に溶解し、これに
上記の培養で得たエシェリヒア・コリ各菌株の菌体を乾
燥菌体重量で100 mg/dL となるように添加し、pHを4.0
に維持しながら、30℃で22時間反応を行い、経時的に生
成した5′−イノシン酸の量を測定した。結果を図5に
示す。
【0105】図5中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(m
g/dL) を、縦軸は反応時間(hr)を、また黒埋め円形はエ
シェリヒア・コリ(Esherichia coli) JM109/pMPI505、
黒埋め三角形はエシェリヒア・コリ(Esherichia coli)
JM109/pMPI510、白抜き円形はエシェリヒア・コリ(Es
herichia coli) JM109/pMPI520、白抜き四角形はエシェ
リヒア・コリ(Esherichia coli) JM109/pMPI530の各菌
体を使用した場合における反応の推移を示す。
【0106】ヌクレオチダーゼ活性低下型酸性フォスフ
ァターゼ遺伝子保持株を用いたイノシンから5′−イノ
シン酸の生産反応においては生成した5′−イノシン酸
の分解速度が低下しており、その結果として 5′−イ
ノシン酸の収率及び蓄積量が向上した。72番目のグリシ
ン残基及び151 番目のイソロイシン残基がそれぞれアス
パラギン酸残基及びスレオニン残基へと置換された変異
型酸性フォスファターゼ遺伝子保持株エシェリヒア・コ
リ JM109/pMPI530 が最も高い5′−イノシン酸の蓄積
を示した。
【0107】実施例13(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いた各種ヌクレ
オシド−5′−燐酸エステルの生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pMPI530 をアンピ
シリン100 μg/mL及びIPTG1mM を含むL培地50mLに
接種し、37℃で16時間培養した。
【0108】ピロ燐酸ナトリウム12g/dL及び燐酸受容体
としてイノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン6
g/dLを100mM 酢酸バッファー (pH4.5)に溶解し、これに
上記の菌体を乾燥菌体重量で100 mg/dL となるように添
加し、pHを4.0 に維持しながら、30℃で22時間反応させ
た。生成したヌクレオシド−5′−燐酸エステルの量を
表9に示した。なお、生成したヌクレオチドはヌクレオ
シド−5′−燐酸エステルのみでヌクレオシド−2′−
燐酸エステル及びヌクレオシド−3′−燐酸エステルの
副生は全く認められなかった。
【0109】
【表9】
【0110】実施例14(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いた各種燐酸化
合物を燐酸供与体とする5′−イノシン酸の生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pMPI530 をアンピ
シリン100 μg/mL及びIPTG1mMを含むL培地50mLに
接種し、37℃で16時間培養した。
【0111】イノシン6g/dL及び燐酸供与体としてトリ
ポリ燐酸、ポリ燐酸ナトリウム(商品名:ポリゴンP、
千代田化学株式会社製品)、フェニル酢酸ジナトリウム
又はカルバミル燐酸ジナトリウム10g/dLを酢酸バッファ
ー (pH4.5)に溶解し、これに上記の菌体を乾燥菌体重量
で100 mg/dLとなるように添加し、pHを4.0 に維持しな
がら30℃で22時間反応させた。生成した5′−イノシン
酸の量を表10に示した。いずれの燐酸供与体を用いた
場合にも効率よく5′−イノシン酸が生成蓄積したが、
ポリ燐酸を燐酸供与体として用いた場合に最も5′−イ
ノシン酸の蓄積量が高かった。
【0112】
【表10】
【0113】実施例15(エシェリヒア・ブラッタエ染
色体からの酸性フォスファターゼをコードする遺伝子の
単離) (1)N末端アミノ酸配列の決定 エシェリヒア・ブラッタエ JCM 1650 の無細胞抽出液か
ら精製された酸性フォスファターゼをDITCメンブレン
(ミリジェン/バイオサーチ社製)に吸着させ、Proseq
uencer 6625 (ミリジェン/バイオサーチ社製)を用い
てN末端のアミノ酸配列を決定した。配列表配列番号8
に示す15残基のN末端アミノ酸配列が決定された。
【0114】(2)酸性フォスファターゼをコードする
遺伝子断片の単離 エシェリヒア・ブラッタエ JCM 1650 の培養菌体からMu
rray and Thomsonの方法(Nucl. Acid Res., 4321, 8,
1980)に従い、染色体DNAを調製した。これをSau
3AIで部分分解した後、ショ糖密度勾配遠心分離によ
り3〜6Kbp のDNA断片を分画した。プラスミドベク
ターpUC118(宝酒造社製)をBamHIで切断し、部分
分解した染色体DNA断片と連結させた。DNAの連結
はDNAライゲーションキット(宝酒造社製)を用い、
指定された方法にて行った。次いで、得られたDNA混
合物を用いて常法によりエシェリヒア・コリ JM109(宝
酒造社製)を形質転換した。形質転換体をアンピシリン
100 μg/mLを含むL寒天培地上にプレーティングして生
育させ、遺伝子ライブラリーを作成した。
【0115】形質転換体の生育した寒天培地の表面に4
mMのp−ニトロフェニル燐酸及び100 mMのメス/NaOHバ
ッファー (pH6.5)を含む反応液を注ぎ、30℃で15分間保
温した。フォスファターゼ活性を発現した菌は、p−ニ
トロフェノールを遊離して黄色を示すため、これを指標
として、形質転換体を選択した。約8,000 株の形質転換
体の染色体遺伝子発現ライブラリーを探索した結果、フ
ォスファターゼ活性を発現した形質転換体14株が得られ
た。
【0116】フォスファターゼ活性を発現した14株の形
質転換体を単コロニー分離し、アンピシリン100 μg/mL
を含むL培地2.5mL に接種し、37℃で16時間培養した。
培養液から集菌した菌体にイノシン2g/dl及びピロ燐酸
ナトリウム10g/dLを含む100mM 酢酸ナトリウムバッファ
ー (pH5.0)50μL を添加し、30℃ 16 時間反応を行っ
た。HPLC分析にて5′−イノシン酸の生成を検出
し、燐酸転移活性を持つ菌株を選択した。その結果、燐
酸転移活性を示し、目的の酸性フォスファターゼ遺伝子
断片を保有すると予想される形質転換体3株を得ること
ができた。
【0117】実施例16(エシェリヒア・ブラッタエ J
CM 1650 由来酸性フォスファターゼ遺伝子の塩基配列の
決定) 実施例15で得られたエシェリヒア・ブラッタエ JCM
1650由来酸性フォスファターゼ遺伝子を含むDNA断片
を保有すると予想される形質転換体の1株よりアルカリ
溶菌法によりプラスミドを調製し、挿入されたDNA断
片の解析を行った。このプラスミドをpEPI301 と命名し
た。決定した挿入されたDNA断片の制限酵素地図を図
6に示す。
【0118】さらにサブクローニングにより酸性フォス
ファターゼ遺伝子領域を限定した結果、制限酵素Cla
IとBamHIで切り出される2.4kbpの大きさの断片中
に本酸性フォスファターゼ遺伝子が含まれることが示唆
された。そこで塩基配列の決定のために該断片をCla
I及びBamHIで切断したpBluescript KS(+) (スト
ラテジーン社製)に結合したプラスミドDNAを構築し
た。pEPI305 と命名されたこのプラスミドDNAを用い
て常法によりエシェリヒア・コリ JM109(宝酒造製)を
形質転換し、これをアンピシリン100 μg/mLを含むL寒
天培地上にプレーテイングし、形質転換体を得た。
【0119】pEPI305 を保有するエシェリヒア・コリ J
M109(宝酒造製)の形質転換体よりアルカリ溶菌法によ
りプラスミドを調製し、塩基配列の決定を行った。決定
したオープン・リーデイング・フレームの塩基配列を配
列表配列番号9に示した。この塩基配列より推定される
蛋白質のアミノ酸配列を配列表配列番号10に示す。こ
のアミノ酸配列中に精製酵素のN末端アミノ酸配列と完
全に一致する配列が存在した。精製酵素のN末端は配列
表配列番号10の配列の19番目のロイシン残基から開始
していたため、1番目のメチオニン残基から18番目のア
ラニン残基までのペプチドは翻訳後に除去されるものと
考えられた。これより推定される成熟蛋白質のアミノ酸
配列を配列表配列番号11に示した。これより予想され
る成熟蛋白質の分子量は25.1キロダルトンと算出され、
精製酵素SDS−PAGEの結果とよく一致した。以上
の結果及び本断片を含むプラスミドを有する形質転換体
が燐酸転移活性を示すことから本オープン・リーデイン
グ・フレームは目的の酸性フォスファターゼをコードす
る領域であると同定した。
【0120】すなわち、配列表番号11に示されるアミ
ノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子が、エシェ
リヒア・ブラッタエ JCM 1650 の酸性フォスファターゼ
遺伝子である。
【0121】塩基配列、アミノ酸配列各々について既知
の配列との相同性比較を行った。用いたデーターベース
はEMBL及びSWISS−PROTである。その結
果、配列表番号8に示される蛋白質及びそれをコードす
るDNAは新規であることが判明した。本遺伝子のコー
ドする前駆体蛋白質は249 個のアミノ酸から成り、その
配列から予想される蛋白質の分子量は27.0キロダルトン
であった。
【0122】アミノ酸配列各々について既知の配列との
相同性比較を行った結果、本蛋白質はプロビデンシア・
スチュアテイ(Providencia stuartii)の酸性フォスフ
ァターゼと77.4%、実施例8のモルガネラ・モルガニ
(Morganella morganii )の酸性フォスファターゼと7
7.1%、サルモネラ・チヒムリウム(Salmonella typhim
urium)の酸性フォスファターゼと44.3%の相同性を示
した。
【0123】なお、pEPI305 をエシェリヒア・コリ JM
109 に保持させた株は、AJ13144 と命名され、ブタペス
ト条約に基づく国際寄託機関である日本国茨城県に所在
の通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に19
96年2月23日付で既に寄託され、その受託番号FERM B
P-5423が付与されている。
【0124】実施例17(エシェリヒア・ブラッタエ J
CM 1650 由来の酸性フォスファターゼ遺伝子の発現によ
る活性の増幅) 実施例16で作成したエシェリヒア・コリ JM109/pEPI
305 を、アンピシリン100 μg/mLおよびIPTG1mMを
含むL培地50mLに接種し、37℃で16時間培養した。該培
養液から遠心分離により菌体を集め、生理食塩水で1回
洗浄した。菌体を5mLの100mM 燐酸バッファー (pH7.0)
に懸濁し、4℃で20分間超音波処理を行い菌体を破砕し
た。処理液を遠心分離して不溶性画分を除き、無細胞抽
出液を調製した。
【0125】得られた無細胞抽出液の燐酸転移活性を、
プラスミドpBluescript KS(+)で同様に形質転換した
エシェリヒア・コリ JM109及びエシェリヒア・ブラッタ
エ野生株より調製した無細胞抽出液を対照として測定し
た結果を表11に示す。エシェリヒア・コリ JM109/pB
luescript KS(+)では燐酸転移活性は検出されず、エ
シェリヒア・ブラッタエ野生株でも燐酸転移活性は低か
った。一方、エシェリヒア・コリ JM109/pEPI305 はエ
シェリヒア・ブラッタエ野生株に比べて比活性で120 倍
と高い燐酸転移活性を示しており、この結果から導入し
たDNA断片がエシェリヒア・コリにおいて酸性フォス
ファターゼを高発現していることが示された。
【0126】
【表11】
【0127】実施例18(エシェリヒア・ブラッタエ J
CM 1650 由来の酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用
いたイノシンから5′−イノシン酸の生産) ピロ燐酸ナトリウム12g/dL及びイノシン6g/dL を100m
M 酢酸バッファー(pH4.0)に溶解し、これに上記のエシ
ェリヒア・コリ JM109/pEPI305 の菌体を乾燥菌体重量
で200mg/dLとなるように添加し、pHを4.0 に維持しなが
ら、35℃で10時間反応を行い、経時的に生成した5′−
イノシン酸の量を測定した。なお、生成したイノシン酸
は5′−イノシン酸のみで2′−イノシン酸及び3′−
イノシン酸の副生は全く認められなかった。結果を図7
に示す。 図7中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(mg/
dL) を、縦軸は反応時間(hr)を、また黒埋め円形は反応
の推移を示す。本菌を用いたピロ燐酸とイノシンからの
5′−イノシン酸生産反応においては、非常に効率よく
短時間で5′−イノシン酸が生成蓄積した。
【0128】実施例19(ヌクレオチダーゼ活性低下型
の酸性フォスファターゼ遺伝子の作成) 実施例17および18に示したように、エシェリヒア・
ブラッタエ由来酸性フォスファターゼ遺伝子保持株は著
量の酸性フォスファターゼを発現し、本菌を用いたピロ
燐酸とイノシンからの5′−イノシン酸生産反応におい
ては、非常に効率よく短時間で5′−イノシン酸が生成
蓄積する。しかし、生成した5′−イノシン酸が、酸性
フォスファターゼ自体が有するヌクレオチダーゼ活性に
よって分解を受けるため、5′−イノシン酸の蓄積量が
ある程度以上は上昇しないことが判明した。そこで実施
例15にてクローニングしたエシェリヒア・ブラッタエ
由来酸性フォスファターゼ遺伝子にPCRを用いる部位
特異的変異法により変異を導入し酵素の性質の改良を行
うこととした。
【0129】DNA合成装置(アプライドバイオシステ
ム社製モデル394 )を用いてホスホアミダイト法にて配
列表配列番号12、13及び14に示すオリゴヌクレオ
チドMUT300、MUT310及びMUT320をそれぞれ合成した。
【0130】鋳型として実施例16で調製したプラスミ
ドpEPI305 1ng、プライマーとしてM13プライマーRV
(宝酒造社製)及びMUT310オリゴヌクレオチド各2.5 μ
mol及びタックDNAポリメラーゼ(宝酒造社製)2.5
ユニットを、dATP、dCTP、dGTP、dTTP各200 μM 、塩化
カリウム 50mM及び塩化マグネシウム 1.5mMを含む100m
M トリス−塩酸緩衝液(pH8.3) 100μL に添加し、94℃
を30秒、55℃を2分、72℃を3分のサイクルを25回繰り
返すPCR反応を行った。PCR反応はサーマルサイク
ラーPJ2000型(宝酒造社製)を用いて行った。また別
に、鋳型としてプラスミドpEPI305 1ng、プライマーと
してM13プライマーM3 (宝酒造社製)及びMUT300オリ
ゴヌクレオチド各2.5 μmol を用いて同様にPCR反応
を行った。それぞれの反応液をマイクロスピンカラム S
-400(ファルマシア社製)を用いてゲル濾過により精製
し、プライマーを除去した。
【0131】それぞれのPCR反応液1μL を、dATP、
dCTP、dGTP、dTTP各200 μM 、塩化カリウム 50mM およ
び塩化マグネシウム 1.5mMを含む100mM トリス−塩酸緩
衝液(pH8.3) 95μL に添加し、94℃で10分加熱後、60分
間かけて37℃まで冷却したのち、37℃で15分保温し、ヘ
テロ二本鎖を形成させた。これにタックDNAポリメラ
ーゼ2.5 ユニットを添加して72℃で3分間反応を行い、
ヘテロ二本鎖を完成させた。次に、この反応液にM13プ
ライマーRV及びM13プライマーM3 各2.5 μmol を添
加して、94℃を30秒、55℃を2分、72℃を3分のサイク
ルを10回繰り返すPCR反応を行った。
【0132】2回目のPCR反応の生成物をClaIと
BamHIで切断後フェノール/クロロホルム抽出し、
エタノール沈殿した。このDNA断片をClaIとBa
HIで切断したpBluescript KS(+)に結合し、得ら
れたプラスミドDNAを用いて常法によりエシェリヒア
・コリ JM109(宝酒造製)を形質転換した。これを100
μg/mLのアンピシリンを含むL寒天培地上にプレーテイ
ングし、形質転換体を得た。
【0133】形質転換体よりアルカリ溶菌法によりプラ
スミドを調製し、塩基配列の決定を行い、目的の塩基が
置換されていることを確認した。このようにして成熟蛋
白質の74番目のグリシン残基(GGG )がアスパラギン酸
残基(G*A*T )に置換した変異型フォスファターゼをコ
ードする変異型遺伝子を作成した。この変異型遺伝子を
含むプラスミドをpEPI310 と命名した。
【0134】鋳型としてpEPI305 、プライマーとしてMU
T300とMUT320オリゴヌクレオチドを用い、同様の操作に
より成熟蛋白質の153 番目のイソロイシン残基(ATC )
がスレオニン残基(A*CC)に置換した変異型フォスファ
ターゼをコードする変異型遺伝子を作成した。この変異
型遺伝子を含むプラスミドをpEPI320 と命名した。
【0135】さらに鋳型としてpEPI310 、プライマーと
してMUT300とMUT320オリゴヌクレオチドを用いて同様の
操作により、成熟蛋白質の74番目のグリシン残基(GGG
)がアスパラギン酸残基(G*A*T )に、153 番目のイ
ソロイシン残基(ATC )がスレオニン残基(A*CC)に置
換した変異型フォスファターゼをコードする変異型遺伝
子を作成した。この変異型遺伝子を含むプラスミドをpE
PI330 と命名した。
【0136】それぞれの変異型酸性フォスファターゼ遺
伝子を含むプラスミドを導入したエシェリヒア・コリ J
M109/pEPI310 、エシェリヒア・コリ JM109/pEPI320
、エシェリヒア・コリ JM109/pEPI330 及び野生型酸
性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを導入した
エシェリヒア・コリ JM109/pEPI305 をアンピシリン10
0 μg/mL及びIPTG1mMを含むL培地50mLに接種し、
37℃で16時間培養した。該培養液から遠心分離により菌
体を集め、生理食塩水で1回洗浄した。菌体を5mLの10
0mM 燐酸バッファー (pH7.0)に懸濁し、4℃で20分間超
音波処理を行い破砕した。
【0137】処理液を遠心分離して不溶性画分を除き、
無細胞抽出液を調製した。得られた無細胞抽出液のヌク
レオチダーゼ活性を測定し、野生株のものと比較した。
【0138】部位特異的変異法により作製した変異型酸
性フォスファターゼの各々の変異点のアミノ酸変異と塩
基置換及びヌクレオチダーゼ活性を野生型酵素の活性に
対する相対活性で表した結果を表12に示す。作製した
変異型酸性フォスファターゼはいずれも野生型酸性フォ
スファターゼに比べてヌクレオチダーゼ活性が低下して
いた。
【0139】
【表12】
【0140】実施例20(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いたイノシンか
ら5′−イノシン酸の生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pEPI310、エシェリ
ヒア・コリ JM109/pEPI320、エシェリヒア・コリ JM109
/pEPI330及び野生型酸性フォスファターゼ遺伝子を含む
プラスミドを導入したエシェリヒア・コリ JM109/pEPI3
05を、アンピシリン100 μg/mL及びIPTG1mMを含む
L培地50mLに接種し、37℃で16時間培養した。
【0141】ピロ燐酸ナトリウム12g/dl及びイノシン6
g/dLを酢酸バッファー (pH4.0)に溶解し、これに上記培
養で得たエシェリヒア・コリ各菌株の菌体を乾燥菌体重
量で200mg/dLとなるように添加し、pHを4.0 に維持しな
がら、35℃で32時間反応を行い、経時的に生成した5′
−イノシン酸の量を測定した。結果を図8に示す。
【0142】図8中、縦軸は5′−イノシン酸の濃度(m
g/dL) を、縦軸は反応時間(hr)を、また黒埋め円形はエ
シェリヒア・コリ(Esherichia coli) JM109/pEPI305、
黒埋め三角形はエシェリヒア・コリ(Esherichia coli)
JM109/pEPI310、白抜き円形はエシェリヒア・コリ(Es
herichia coli) JM109/pEPI320、白抜き四角形はエシェ
リヒア・コリ(Esherichia coli) JM109/pEPI330の各菌
体を使用した場合における反応の推移を示す。
【0143】ヌクレオチダーゼ活性低下型酸性フォスフ
ァターゼ遺伝子保持株を用いたイノシンから5′−イノ
シン酸の生産反応においては生成した5′−イノシン酸
の分解速度が低下しており、その結果として 5′−イ
ノシン酸の収率及び蓄積量が向上した。74番目のグリ
シン残基及び153番目のイソロイシン残基がそれぞれ
アスパラギン酸残基及びスレオニン残基へと置換された
変異型酸性フォスファターゼ遺伝子保持株エシェリヒア
・コリ JM109/pEPI330 が最も高い5′−イノシン酸の
蓄積を示した。
【0144】実施例21(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いた各種ヌクレ
オシド−5′−燐酸エステルの生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pEPI330 をアンピ
シリン100 μg/mL及びIPTG1mMを含むL培地50mLに
接種し、37℃で16時間培養した。
【0145】ピロ燐酸ナトリウム12g/dL及び燐酸受容体
としてイノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン6
g/dLを100mM 酢酸バッファー (pH4.5)に溶解し、これに
上記の菌体を乾燥菌体重量で200 mg/dL となるように添
加し、pHを4.0 に維持しながら、35℃で32時間反応させ
た。生成したヌクレオシド−5′−燐酸エステルの量を
表13に示す。なお、生成したヌクレオチドはヌクレオ
シド−5′−燐酸エステルのみでヌクレオシド−2′−
燐酸エステル及びヌクレオシド−3′−燐酸エステルの
副生は全く認められなかった。
【0146】
【表13】
【0147】実施例22(ヌクレオチダーゼ活性低下型
酸性フォスファターゼ遺伝子保持株を用いる各種燐酸化
合物を燐酸供与体とする5′−イノシン酸の生産) 変異型酸性フォスファターゼ遺伝子を含むプラスミドを
導入したエシェリヒア・コリ JM109/pEPI330 を、アン
ピシリン100 μg/mL及びIPTG1mMを含むL培地50mL
に接種し、37℃で16時間培養した。
【0148】イノシン6g/dLと、燐酸供与体としてトリ
ポリ燐酸、ポリ燐酸ナトリウム(商品名:ポリゴンP、
千代田化学株式会社製品)、フェニル酢酸ジナトリウム
またはカルバミル燐酸ジナトリウム12g/dLとを100mM 酢
酸バッファー (pH4.0)に溶解し、これに上記の菌体を乾
燥菌体重量で200mg/dLとなるように添加し、pHを4.0に
維持しながら、35℃で32時間反応させた。生成した5′
−イノシン酸の量を表14に示す。いずれの燐酸供与体
を用いた場合にも効率よく5′−イノシン酸が生成蓄積
したが、ポリ燐酸を燐酸供与体として用いた場合に最も
5′−イノシン酸の蓄積量が高かった。
【0149】
【表14】
【0150】
【発明の効果】本発明は、酸性フォスファターゼをpH
3.0〜5.5の条件下でヌクレオシド並びにポリ燐酸
(塩)、フェニル燐酸(塩)及びカルバミル燐酸(塩)
からなる群より選択される燐酸供与体に作用させること
により、安価かつ効率よくヌクレオシド−5′−燐酸エ
ステルを製造することができると云う効果を有する。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:20 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 フラグメント型:N末端フラグメント 起源 生物名:モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii
) 株名:NCIMB 10466 配列 Ala Ile Pro Ala Gly Asn Asp Ala Thr Thr Lys Pro Asp Leu Tyr Tyr 1 5 10 15 Leu Lys Asn Glu 20 配列番号:2 配列の長さ:747 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源: 生物名:モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii
) 株名:NCIMB 10466 配列の特徴 特徴を表す記号:CDS 存在位置:1..747 特徴を決定した方法:E 配列 ATGAAGAAGA ATATTATCGC CGGTTGTCTG TTCTCACTGT TTTCCCTTTC CGCGCTGGCC 60 GCGATCCCGG CGGGCAACGA TGCCACCACC AAGCCGGATT TATATTATCT GAAAAATGAA 120 CAGGCTATCG ACAGCCTGAA ACTGTTACCG CCACCGCCGG AAGTCGGCAG TATTCAGTTT 180 TTAAATGATC AGGCAATGTA TGAGAAAGGC CGTATGCTGC GCAATACCGA GCGCGGAAAA 240 CAGGCACAGG CAGATGCTGA CCTGGCCGCA GGGGGTGTGG CAACCGCATT TTCAGGGGCA 300 TTCGGCTATC CGATAACCGA AAAAGACTCT CCGGAGCTGT ATAAACTGCT GACCAATATG 360 ATTGAGGATG CCGGTGATCT TGCCACCCGC TCCGCCAAAG AACATTACAT GCGCATCCGG 420 CCGTTTGCGT TTTACGGCAC AGAAACCTGT AATACCAAAG ATCAGAAAAA ACTCTCCACC 480 AACGGATCTT ACCCGTCAGG TCATACGTCT ATCGGCTGGG CAACCGCACT GGTGCTGGCG 540 GAAGTGAACC CGGCAAATCA GGATGCGATT CTGGAACGGG GTTATCAGCT CGGACAGAGC 600 CGGGTGATTT GCGGCTATCA CTGGCAGAGT GATGTGGATG CCGCGCGGAT TGTCGGTTCA 660 GCCGCTGTCG CGACATTACA TTCCGATCCG GCATTTCAGG CGCAGTTAGC GAAAGCCAAA 720 CAGGAATTTG CACAAAAATC ACAGAAA 747 配列番号:3 配列の長さ:249 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 起源 生物名:モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii
) 株名:NCIMB 10466 配列 Met Lys Lys Asn Ile Ile Ala Gly Cys Leu Phe Ser Leu Phe Ser Leu -20 -15 -10 -5 Ser Ala Leu Ala Ala Ile Pro Ala Gly Asn Asp Ala Thr Thr Lys Pro 1 5 10 Asp Leu Tyr Tyr Leu Lys Asn Glu Gln Ala Ile Asp Ser Leu Lys Leu 15 20 25 Leu Pro Pro Pro Pro Glu Val Gly Ser Ile Gln Phe Leu Asn Asp Gln 30 35 40 Ala Met Tyr Glu Lys Gly Arg Met Leu Arg Asn Thr Glu Arg Gly Lys 45 50 55 60 Gln Ala Gln Ala Asp Ala Asp Leu Ala Ala Gly Gly Val Ala Thr Ala 65 70 75 Phe Ser Gly Ala Phe Gly Tyr Pro Ile Thr Glu Lys Asp Ser Pro Glu 80 85 90 Leu Tyr Lys Leu Leu Thr Asn Met Ile Glu Asp Ala Gly Asp Leu Ala 95 100 105 Thr Arg Ser Ala Lys Glu His Tyr Met Arg Ile Arg Pro Phe Ala Phe 110 115 120 Tyr Gly Thr Glu Thr Cys Asn Thr Lys Asp Gln Lys Lys Leu Ser Thr 125 130 135 140 Asn Gly Ser Tyr Pro Ser Gly His Thr Ser Ile Gly Trp Ala Thr Ala 145 150 155 Leu Val Leu Ala Glu Val Asn Pro Ala Asn Gln Asp Ala Ile Leu Glu 160 165 170 Arg Gly Tyr Gln Leu Gly Gln Ser Arg Val Ile Cys Gly Tyr His Trp 175 180 185 Gln Ser Asp Val Asp Ala Ala Arg Ile Val Gly Ser Ala Ala Val Ala 190 195 200 Thr Leu His Ser Asp Pro Ala Phe Gln Ala Gln Leu Ala Lys Ala Lys 205 210 215 220 Gln Glu Phe Ala Gln Lys Ser Gln Lys 225 229 配列番号:4 配列の長さ:229 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 起源 生物名:モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii
) 株名:NCIMB 10466 配列 Ala Ile Pro Ala Gly Asn Asp Ala Thr Thr Lys Pro Asp Leu Tyr Tyr 1 5 10 15 Leu Lys Asn Glu Gln Ala Ile Asp Ser Leu Lys Leu Leu Pro Pro Pro 20 25 30 Pro Glu Val Gly Ser Ile Gln Phe Leu Asn Asp Gln Ala Met Tyr Glu 35 40 45 Lys Gly Arg Met Leu Arg Asn Thr Glu Arg Gly Lys Gln Ala Gln Ala 50 55 60 Asp Ala Asp Leu Ala Ala Gly Gly Val Ala Thr Ala Phe Ser Gly Ala 65 70 75 80 Phe Gly Tyr Pro Ile Thr Glu Lys Asp Ser Pro Glu Leu Tyr Lys Leu 85 90 95 Leu Thr Asn Met Ile Glu Asp Ala Gly Asp Leu Ala Thr Arg Ser Ala 100 105 110 Lys Glu His Tyr Met Arg Ile Arg Pro Phe Ala Phe Tyr Gly Thr Glu 115 120 125 Thr Cys Asn Thr Lys Asp Gln Lys Lys Leu Ser Thr Asn Gly Ser Tyr 130 135 140 Pro Ser Gly His Thr Ser Ile Gly Trp Ala Thr Ala Leu Val Leu Ala 145 150 155 160 Glu Val Asn Pro Ala Asn Gln Asp Ala Ile Leu Glu Arg Gly Tyr Gln 165 170 175 Leu Gly Gln Ser Arg Val Ile Cys Gly Tyr His Trp Gln Ser Asp Val 180 185 190 Asp Ala Ala Arg Ile Val Gly Ser Ala Ala Val Ala Thr Leu His Ser 195 200 205 Asp Pro Ala Phe Gln Ala Gln Leu Ala Lys Ala Lys Gln Glu Phe Ala 210 215 220 Gln Lys Ser Gln Lys 225 229 配列番号:5 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 ATTACCATGA TTACGAATTC 20 配列番号:6 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GCGGTTGCCA CATCCCCTGC G 21 配列番号:7 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 TTGCCCAGCC GGTAGACGTA T 21 配列番号:8 配列の長さ:15 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 フラグメント型:N末端フラグメント 起源 生物名:エシェリヒア・ブラッタエ(Escherichia blat
tae ) 株名:JCM 1650 配列 Leu Ala Leu Val Ala Thr Gly Asn Asp Thr Thr Thr Lys Pro Asp Leu 1 5 10 15 配列番号:9 配列の長さ:747 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源 生物名:エシェリヒア・ブラッタエ(Escherichia blat
tae ) 株名:JCM 1650 配列の特徴 特徴を表す記号:CDS 存在位置:1..747 特徴を決定した方法:E 配列 ATGAAAAAAC GTGTTCTGGC AGTTTGTTTT GCCGCATTGT TCTCTTCTCA GGCCCTGGCG 60 CTGGTCGCTA CCGGCAACGA CACTACCACG AAACCGGATC TCTACTACCT CAAGAACAGT 120 GAAGCCATTA ACAGCCTGGC GCTGTTGCCG CCACCACCGG CGGTGGGCTC CATTGCGTTT 180 CTCAACGATC AGGCCATGTA TGAACAGGGG CGCCTGCTGC GCAACACCGA ACGCGGTAAG 240 CTGGCGGCGG AAGATGCAAA CCTGAGCAGT GGCGGGGTGG CGAATGCTTT CTCCGGCGCG 300 TTTGGTAGCC CGATCACCGA AAAAGACGCC CCGGCGCTGC ATAAATTACT GACCAATATG 360 ATTGAGGACG CCGGGGATCT GGCGACCCGC AGCGCGAAAG ATCACTATAT GCGCATTCGT 420 CCGTTCGCGT TTTATGGGGT CTCTACCTGT AATACCACCG AGCAGGACAA ACTGTCCAAA 480 AATGGCTCTT ATCCGTCCGG GCATACCTCT ATCGGCTGGG CTACTGCGCT GGTGCTGGCA 540 GAGATCAACC CTCAGCGCCA GAACGAGATC CTGAAACGCG GTTATGAGCT GGGCCAGAGC 600 CGGGTGATTT GCGGCTACCA CTGGCAGAGT GATGTGGATG CCGCGCGGGT AGTGGGATCT 660 GCCGTTGTGG CGACCCTGCA TACCAACCCG GCGTTCCAGC AGCAGTTGCA GAAAGCGAAG 720 GCCGAATTCG CCCAGCATCA GAAGAAA 747 配列番号:10 配列の長さ:249 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 起源 生物名:エシェリヒア・ブラッタエ(Escherichia blat
tae ) 株名:JCM 1650 配列 Met Lys Lys Arg Val Leu Ala Val Cys Phe Ala Ala Leu Phe Ser Ser -18 -15 -10 -5 Gln Ala Leu Ala Leu Val Ala Thr Gly Asn Asp Thr Thr Thr Lys Pro 1 5 10 Asp Leu Tyr Tyr Leu Lys Asn Ser Glu Ala Ile Asn Ser Leu Ala Leu 15 20 25 30 Leu Pro Pro Pro Pro Ala Val Gly Ser Ile Ala Phe Leu Asn Asp Gln 35 40 45 Ala Met Tyr Glu Gln Gly Arg Leu Leu Arg Asn Thr Glu Arg Gly Lys 50 55 60 Leu Ala Ala Glu Asp Ala Asn Leu Ser Ser Gly Gly Val Ala Asn Ala 65 70 75 Phe Ser Gly Ala Phe Gly Ser Pro Ile Thr Glu Lys Asp Ala Pro Ala 80 85 90 Leu His Lys Leu Leu Thr Asn Met Ile Glu Asp Ala Gly Asp Leu Ala 95 100 105 110 Thr Arg Ser Ala Lys Asp His Tyr Met Arg Ile Arg Pro Phe Ala Phe 115 120 125 Tyr Gly Val Ser Thr Cys Asn Thr Thr Glu Gln Asp Lys Leu Ser Lys 130 135 140 Asn Gly Ser Tyr Pro Ser Gly His Thr Ser Ile Gly Trp Ala Thr Ala 145 150 155 Leu Val Leu Ala Glu Ile Asn Pro Gln Arg Gln Asn Glu Ile Leu Lys 160 165 170 Arg Gly Tyr Glu Leu Gly Gln Ser Arg Val Ile Cys Gly Tyr His Trp 175 180 185 190 Gln Ser Asp Val Asp Ala Ala Arg Val Val Gly Ser Ala Val Val Ala 195 200 205 Thr Leu His Thr Asn Pro Ala Phe Gln Gln Gln Leu Gln Lys Ala Lys 210 215 220 Ala Glu Phe Ala Gln His Gln Lys Lys 225 230 配列番号:11 配列の長さ:231 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:蛋白質 起源 生物名:エシェリヒア・ブラッタエ(Escherichia blat
tae ) 株名:JCM 1650 配列 Leu Ala Leu Val Ala Thr Gly Asn Asp Thr Thr Thr Lys Pro Asp Leu 1 5 10 15 Tyr Tyr Leu Lys Asn Ser Glu Ala Ile Asn Ser Leu Ala Leu Leu Pro 20 25 30 Pro Pro Pro Ala Val Gly Ser Ile Ala Phe Leu Asn Asp Gln Ala Met 35 40 45 Tyr Glu Gln Gly Arg Leu Leu Arg Asn Thr Glu Arg Gly Lys Leu Ala 50 55 60 Ala Glu Asp Ala Asn Leu Ser Ser Gly Gly Val Ala Asn Ala Phe Ser 65 70 75 80 Gly Ala Phe Gly Ser Pro Ile Thr Glu Lys Asp Ala Pro Ala Leu His 85 90 95 Lys Leu Leu Thr Asn Met Ile Glu Asp Ala Gly Asp Leu Ala Thr Arg 100 105 110 Ser Ala Lys Asp His Tyr Met Arg Ile Arg Pro Phe Ala Phe Tyr Gly 115 120 125 Val Ser Thr Cys Asn Thr Thr Glu Gln Asp Lys Leu Ser Lys Asn Gly 130 135 140 Ser Tyr Pro Ser Gly His Thr Ser Ile Gly Trp Ala Thr Ala Leu Val 145 150 155 160 Leu Ala Glu Ile Asn Pro Gln Arg Gln Asn Glu Ile Leu Lys Arg Gly 165 170 175 Tyr Glu Leu Gly Gln Ser Arg Val Ile Cys Gly Tyr His Trp Gln Ser 180 185 190 Asp Val Asp Ala Ala Arg Val Val Gly Ser Ala Val Val Ala Thr Leu 195 200 205 His Thr Asn Pro Ala Phe Gln Gln Gln Leu Gln Lys Ala Lys Ala Glu 210 215 220 Phe Ala Gln His Gln Lys Lys 225 230 配列番号:12 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CCTCGAGGTC GACGGTATCG 20 配列番号:13 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 ATTCGCCACA TCGCCACTGC T 21 配列番号:14 配列の長さ:22 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 TAGCCCAGCC GGTAGAGGTA TG 22
【図面の簡単な説明】
【図1】モルガネラ・モルガニ由来の酵素を用いた反応
において反応pHと5′−イノシン酸生成量との関係を示
す図である。
【図2】エシェリヒア・ブラッタエ由来の酵素を用いた
反応において反応pHと5′−イノシン酸生成量との関係
を示す図である。
【図3】酸性フォスファターゼをコードする遺伝子を含
むモルガネラ・モルガニの染色体DNA断片の制限酵素
地図を示す図である。
【図4】モルガネラ・モルガニ由来の酸性フォスファタ
ーゼ遺伝子保持株を用いた反応における5′−イノシン
酸の生産量を示す図である。
【図5】モルガネラ・モルガニ由来の野生型酸性フォス
ファターゼ遺伝子保持株及び変異型酸性フォスファター
ゼ遺伝子保持株を用いた反応における5′−イノシン酸
の生産量を示す図である。
【図6】酸性フォスファターゼをコードする遺伝子を含
むエシェリヒア・ブラッタエの染色体DNA断片の制限
酵素地図を示す図である。
【図7】エシェリヒア・ブラッタエ由来の酸性フォスフ
ァターゼ遺伝子保持株を用いた反応における5′−イノ
シン酸の生産量を示す線図である。
【図8】エシェリヒア・ブラッタエ由来の野生型酸性フ
ォスファターゼ遺伝子保持株及び変異型酸性フォスファ
ターゼ遺伝子保持株を用いた反応における5−′イノシ
ン酸の生産量を示す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 9/16 C12R 1:01) (72)発明者 浅野 泰久 富山県射水郡小杉町太閤山9−3−1− 321

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物に由来する酸性フォスファターゼ
    をpH 3.0〜5.5 の条件下でヌクレオシド並びにポリ燐酸
    (塩)、フェニル燐酸(塩)およびカルバミル燐酸
    (塩)から成る群より選択される燐酸供与体に作用させ
    てヌクレオシド−5′−燐酸エステルを生成せしめ、こ
    れを採取することを特徴とするヌクレオシド−5′−燐
    酸エステルの製造法。
  2. 【請求項2】 酸性フォスファターゼがヌクレオチダー
    ゼ活性を低下させる変異を有する請求項1に記載のヌク
    レオシド−5′−燐酸エステルの製造法。
  3. 【請求項3】 酸性フォスファターゼがモルガネラ属細
    菌由来である請求項1に記載のヌクレオシド−5′−燐
    酸エステルの製造法。
  4. 【請求項4】 酸性フォスファターゼが配列表配列番号
    4に示されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のヌク
    レオシド−5′−燐酸エステルの製造法。
  5. 【請求項5】 酸性フォスファターゼが配列表配列番号
    4において72番目のグリシン残基及び/又は151番
    目のイソロイシン残基が他のアミノ酸に置換しているア
    ミノ酸配列を含む請求項2に記載のヌクレオシド−5′
    −燐酸エステルの製造法。
  6. 【請求項6】 酸性フォスファターゼがエシェリヒア属
    細菌由来である請求項1に記載のヌクレオシド−5′−
    燐酸エステルの製造法。
  7. 【請求項7】 酸性フォスファターゼが配列表配列番号
    11に示されるアミノ酸配列を含む請求項1に記載のヌ
    クレオシド−5′−燐酸エステルの製造法。
  8. 【請求項8】 酸性フォスファターゼが配列表配列番号
    11において74番目のグリシン残基及び/又は153
    番目のイソロイシン残基が他のアミノ酸に置換している
    アミノ酸配列を含む請求項2に記載のヌクレオシド−
    5′−燐酸エステルの製造法。
  9. 【請求項9】 配列表配列番号4に示されるアミノ酸配
    列において72番目のグリシン残基及び/又は151番
    目のイソロイシン残基が他のアミノ酸に置換しているア
    ミノ酸配列を含む酸性フォスファターゼ。
  10. 【請求項10】 配列表配列番号11に示されるアミノ
    酸配列を含む酸性フォスファターゼ。
  11. 【請求項11】 配列表配列番号11において74番目
    のグリシン残基及び/又は153番目のイソロイシン残
    基が他のアミノ酸に置換しているアミノ酸配列を含む酸
    性フォスファターゼ。
  12. 【請求項12】 請求項9〜11のいずれかに記載の酸
    性フォスファターゼをコードする遺伝子。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の遺伝子を含む組換
    えDNA。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載の組換えDNAを保
    有する微生物。
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