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JP5840288B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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JP5840288B2 JP2014502197A JP2014502197A JP5840288B2 JP 5840288 B2 JP5840288 B2 JP 5840288B2 JP 2014502197 A JP2014502197 A JP 2014502197A JP 2014502197 A JP2014502197 A JP 2014502197A JP 5840288 B2 JP5840288 B2 JP 5840288B2
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Description

本発明は、サーボモータなどの各種モータの動作を制御するモータ制御装置に関する。
近年の省エネルギー意識の高まりから、各種産業用機械においてサーボモータなどのモータを用いて位置決め制御を行う際、消費電力量をなるべく小さくしたいという要求がある。
このように位置決め制御時の消費電力を低減する方法として、特許文献1〜7の発明が公開されている。
特許文献1は、使用者の用途に応じて消費電力を減少し、また、温度変化や経時的劣化等にかかわらず位置決め制御を効率的に行うことを目的とするヘッド位置決め装置を開示している。速度プロフィール記憶部は、予め高速シークに対応する目標速度プロフィールAと、シーク速度は遅いが消費電力が少ない目標速度プロフィールBとを、使用者により選択可能に記憶している。ヘッドの現在のトラック位置と目標位置とを減算器において比較することで、位置誤差信号が得られる。目標速度設定部は、この位置誤差信号と速度プロフィール記憶部の目標速度プロフィールA又はBとに基づいてヘッドの目標速度を出力する。制御部は、速度誤差信号とサーボ制御定数に基づいてヘッド駆動用モータの駆動電流を算出する。この算出された駆動電流がモータ駆動部に入力される。駆動電流の初期値が駆動電流初期値記憶部に記憶される。比較器は、現在の駆動電流と初期値とを比較する。サーボ制御定数調整部は、比較器の比較結果に基づいて制御部のサーボ制御定数を調整する。目標速度プロフィールA及びBの形状はいずれも三角形であり、特に、目標速度プロフィールBは、シーク速度を下げる代わりにシーク時間を延ばすことで消費電力を削減している。
特許文献2は、ロボットの駆動システムにおける電力損失に対してロボットの動作パフォーマンスを最適化するための方法を得ることを目的とする熱最適化方法を開示している。特許文献2の方法によれば、工業ロボットの駆動システムにおける電力損失に対して該ロボットの現在の動作パスの動作パフォーマンスを最適化するための方法であって、この方法は、システムの少なくとも1部品に対して、動作パスの全部又は一部における電力損失を計算し、計算された電力損失を該部品における最大許容電力損失と比較し、該比較に依存して、現在の動作パスにおける加速度及び速度の推移を調節する過程を有する。
特許文献3は、移動量とタクトが指定されたとき、駆動モータの温度上昇を最小化する指令パターンを生成することを目的とする指令パターン生成方法を開示している。特許文献3の方法によれば、移動量θmax、タクトtact、速度最大値ωmax、加速度最大値αmaxの4パラメータのうち、少なくとも速度最大値ωmaxあるいは加速度最大値αmaxを含む2つのパラメータを決定することで、移動量θmaxとタクトtactを特定し、時刻0及び時刻tactで速度が0となり、面積が移動量θmaxである、速度が放物線形状の指令パターンを生成する。速度の指令パターンを放物線形状にすることにより、銅損を最小化している。
特許文献4は、工作機械全体の消費電力を最適に抑えることを目的とする工作機械の制御装置を開示している。特許文献4の装置は、送り軸駆動用モータの消費電力を算出する第1の消費電力算出手段と、一定電力にて動作する機器の消費電力を算出する第2の消費電力算出手段と、第1の消費電力算出手段により算出された電力と第2の消費電力算出手段により算出された電力との総和に基づき、送り軸駆動用モータの加速時間及び減速時間の少なくとも一方と相対関係を有する時定数を決定し、この時定数に基づき送り軸駆動用モータを制御するモータ制御手段とを備える。時定数は、電力の総和が最小になるように決定される。
特許文献5は、所要エネルギーの低減を図ることができる軌道生成装置を開示している。特許文献5の軌道生成装置は、点列間をクロソイド曲線により補間して軌道生成を行い、軌道生成装置はクロソイド曲線生成手段を有する演算処理装置を備え、前記クロソイド曲線が三連クロソイド曲線とされ、それにより通過点での接線方向の連続性及び曲率の連続性が担保されてなるものである。なお、端点が直線と接続される場合、その接線方向は直線方向に一致させられる。
特許文献6は、動作時間を引き延ばすことなく、PTP(point to point)動作を行う際に消費するエネルギーを低減することを目的とするロボットの制御装置を開示している。特許文献6の装置は、母線共通の多軸モータの制御において、複数軸の減速動作が重ならないように、各軸指令の動作始動の瞬間を決定する。減速動作が重なることで回生エネルギーが大きくなり、回生抵抗で消費されてしまうのを防ぐ。
特許文献7もまた、動作時間を引き延ばすことなく、PTP動作を行う際に消費するエネルギーを低減することを目的とするロボットの制御装置を開示している。特許文献7の装置によれば、多軸モータの制御において、複数軸の動作時間を計算し、最も長い動作時間にあわせて、短い時間の動作時間の指令時間を伸ばして、消費電力量を削減する。
特開平5−325446号公報 特表2004−522602号公報 特開2007−241604号公報 特開2010−250697号公報 特開2011−145797号公報 特開2012−192484号公報 特開2012−192485号公報
特許文献1は、速度プロフィールの形状が三角形である場合のみを開示し、従って、動作条件に応じて速度プロフィールを変化させて十分な省エネルギー化を実現することができないという問題点がある。
特許文献2は、位置決め制御時の熱や損失を最小化することを開示しているが、仕事を含めた全体のエネルギーを最小化することについては開示していない。
また、一般に、モータや機械的負荷を駆動する際、動作時に許容される上限加速度がある。特許文献3の発明を実施するとき、負荷の移動距離や移動時間によっては、この上限加速度を超えて動作させてしまうという問題がある。
特許文献4の発明では、モータの加速時間及び減速時間の少なくとも一方と相対関係を有する時定数のみが最適化されるが、モータ及び機械的負荷に上限加速度が存在する場合に対処することができない。
特許文献5の発明もまた、モータ及び機械的負荷に上限加速度が存在する場合に対処することができない。
特許文献6は、単軸モータの位置決め制御時の消費電力量を低減することを開示していない。
特許文献7もまた、単軸モータの位置決め制御時の消費電力量を低減することを開示していない。
本発明の目的は、以上の問題点を解決し、位置決め制御時の消費電力量を低減するようにモータの動作を制御するモータ制御装置を提供することにある。
本発明の態様に係るモータ制御装置によれば、
モータに接続された機械的負荷を第1の位置から第2の位置に移動させるように上記モータを制御するモータ制御装置において、上記モータ制御装置は、
各瞬間における上記機械的負荷の位置を表し、上記機械的負荷の動作の参照信号となる位置指令値を生成する指令値生成回路と、
上記位置指令値に従って上記機械的負荷を移動させるように上記モータを制御するモータ駆動回路と、
回生電力を消費する回生抵抗とを備え、
上記指令値生成回路は、上記第1の位置から上記第2の位置までの移動距離Dと、上記位置指令値の2回微分係数に対応する上記機械的負荷の加速度の絶対値の上限を表す上限加速度Amaxと、上記移動距離D及び上記上限加速度Amaxに基づいて計算された最短移動時間Tよりも長い所定の移動時間Tとが与えられたとき、上記機械的負荷の加速を開始してから所定の等加速度時間Tにわたって上記上限加速度Amaxを維持し、その後に上記上限加速度Amaxから漸減するように、上記機械的負荷の時間的な加速度変化を表す加速度プロファイルA(t)を決定し、上記加速度プロファイルA(t)を2回積分して上記位置指令値を生成し、
上記指令値生成回路は、上記機械的負荷を上記第1の位置から上記第2の位置に上記移動時間Tで移動させるように、上記等加速度時間Tを決定し、
上記最短移動時間T は、T =2×√(D/A max )であり、
上記指令値生成回路は、
上記等加速度時間T を、
Figure 0005840288
により決定し、
上記加速度プロファイルA(t)を、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して、
Figure 0005840288
により決定することを特徴とする。
本発明のモータ制御装置によれば、位置決め制御時の消費電力量を低減することができる。
本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置を含む位置決めシステムの構成を示すブロック図である。 図1の指令値生成回路7によって実行される位置指令値生成処理を示すフローチャートである。 最短移動時間Tを説明するための加速度プロファイル及び速度プロファイルを示す概略図である。 図1の指令値生成回路7によって生成される加速度プロファイル及び速度プロファイルを示す概略図である。 加速度aに対する損失の変化を示す概略図である。 本発明の実施の形態2に係る位置指令値生成処理を示すフローチャートである。 図6のステップS13で決定される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。 図6のステップS15で決定される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。 図6の位置指令値生成処理の効果を説明するための図であって、最短移動時間Tに対する移動時間Tの比を表すパラメータrに対する関数f(r)及びf(r)の値の変化を示す概略図である。 図6の位置指令値生成処理の効果を説明するための図であって、最短移動時間Tに対する移動時間Tの比を表すパラメータrに対する関数g(r)及びg(r)の値の変化を示す概略図である。 本発明の実施の形態3に係る位置指令値生成処理を示すフローチャートである。 図11のステップS22で決定される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。 本発明の実施の形態3の変形例に係る位置指令値生成処理で使用される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。 本発明の実施の形態3に係る効果を説明するための第1の加速度プロファイル及び速度プロファイルを示す概略図である。 本発明の実施の形態3に係る効果を説明するための第2の加速度プロファイル及び速度プロファイルを示す概略図である。 本発明の実施の形態4に係る位置指令値生成処理で使用される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ制御装置を含む位置決めシステムの構成を示すブロック図である。図1の位置決めシステムにおいて、モータ制御装置は、指令値生成回路7、モータ駆動回路4、及び回生抵抗6を含み、モータ1に接続された機械的負荷3を初期位置(第1の位置)から目標位置(第2の位置)に移動させるようにモータ1を制御する。図1の位置決めシステムはさらに、電源5及びエンコーダ2を備える。
モータ1は、モータ駆動回路4から供給される電流22により動作し、トルク又は推力などの駆動力21を機械的負荷3に与える。機械的負荷3として、例えばボールネジ機構が想定されるが、これに限定されるものではない。エンコーダ2は、モータ1の回転軸の回転位置(角度)及び回転速度などのモータ情報23を検出してモータ駆動回路4に送る。モータ情報23に含まれるモータ1の回転軸の回転位置及び回転速度は、機械的負荷3の位置及び速度に対応する。
指令値生成回路7は、各瞬間における機械的負荷3の所望位置を表す位置指令値24を生成する。指令値生成回路7には、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller: PLC)や操作パネルなどの上位装置(図示せず)から、移動距離D、移動時間T、上限加速度Amaxを含む指令値生成情報が入力される。ここで、移動距離Dは、機械的負荷3の初期位置から目標位置までの移動量を表す。移動時間Tは、機械的負荷3が初期位置から目標位置まで移動するのに要する時間を表す。指令値生成情報として指令値生成回路7に入力される移動時間Tは、その任意の所望値である。上限加速度Amaxは、モータ1によって機械的負荷3に与えることが可能な加速度(例えば、機械的負荷3の構造的制約によって決まる加速度、又は、モータ制御装置のユーザによって指定される加速度、など)の上限値を表す。指令値生成回路7は、この入力された指令値生成情報に基づいて、図2を参照して後述する位置指令値生成処理を実行することで、位置指令値24を生成する。なお、前述のように機械的負荷3の位置及び速度に対応する情報としてモータ1の回転軸の回転位置及び回転速度が検出されるので、実際には、位置指令値24は各瞬間におけるモータ1の回転軸の所望回転位置を表す。
モータ駆動回路4は、位置指令値24に従って機械的負荷3を移動させるようにモータ1を制御する。モータ1としてサーボモータが採用されている場合、モータ駆動回路4はサーボアンプである。モータ駆動回路4は、PWMインバータなどの電力変換器を備え、電源5から供給される電力25により、モータ1に供給する電流22を生成する。モータ駆動回路4は、エンコーダ2によって検出されたモータ1の回転軸の回転位置(実際の位置)を、指令値生成回路7から送られた位置指令値24(所望位置)に追従させるためのフィードバック制御系を備え、これにより、モータ1の回転軸の回転位置が位置指令値24に追従するようにモータ1を駆動する電流22を計算して生成し、生成した電流22をモータ1に供給する。
電源5は、例えば3相交流電源又は単相交流電源である。
回生抵抗6は、モータ1が回生状態になったときに回生電力26を消費する。
指令値生成回路7によって生成される位置指令値24についてさらに説明する。指令値生成回路7は、まず、機械的負荷3の時間的な加速度変化を表す加速度プロファイルA(t)を決定し、加速度プロファイルA(t)に従って、機械的負荷3の時間的な速度変化を表す速度プロファイルを決定し、速度プロファイルに従って位置指令値24を生成する。ここで、加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を初期位置において停止した状態からピーク速度Vまで加速し、ピーク速度Vから減速して目標位置において停止させるように、かつ、機械的負荷3の加速及び減速を行う際の加速度の絶対値が上限加速度Amax以下であるように、かつ、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間にわたって所定の上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように決定される。
詳しくは、指令値生成回路7は、移動距離D及び上限加速度Amaxに基づく、最短移動時間T=2×√(D/Amax)よりも長い所定の移動時間Tが与えられたとき、機械的負荷3を初期位置から目標位置に移動時間Tで移動させるように加速度プロファイルA(t)を決定する。最短移動時間Tは、詳しくは、機械的負荷3を初期位置において停止した状態から所定のピーク速度まで上限加速度Amaxで加速し、ピーク速度に達した瞬間に機械的負荷3を上限加速度Amaxで減速して目標位置において停止させるまでの時間である。指令値生成回路7は、移動距離D及び上限加速度Amaxに基づいて、機械的負荷3を初期位置から目標位置に移動させるのに要する最短移動時間T=2×√(D/Amax)を計算し、最短移動時間Tよりも長い所定の移動時間Tを決定してもよい。指令値生成情報として指令値生成回路7に入力された移動時間Tが最短移動時間Tよりも長いならば、その移動時間Tをそのまま使用する。そうでなければ、入力された移動時間Tに代えて、最短移動時間Tよりも長い所定の移動時間Tを決定して使用する。
速度プロファイルを移動時間Tにわたって積分した面積が移動距離Dになる。
本発明の各実施の形態では、さまざまな形状を有する加速度プロファイルA(t)(従って、さまざまな形状を有する速度プロファイル)を提案する。本発明の各実施の形態では、これらの加速度プロファイルA(t)を用いることで、位置決め動作時の消費電力量を低減することができる。ここで、電力量とは、単位時間あたりの電力を指すものではなく、位置決め動作中の合計の電力量(単位時間あたりの電力を、位置決め動作時間中、積分もしくは積算して得られる積算電力量)を指す。
図2は、図1の指令値生成回路7によって実行される位置指令値生成処理を示すフローチャートである。本実施の形態において、加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を初期位置において停止した状態からピーク速度Vまで第1の加速度で加速する加速時間と、機械的負荷3をピーク速度Vで移動させる等速時間と、機械的負荷3をピーク速度Vから第2の加速度で減速して目標位置において停止させる減速時間とからなる。第1及び第2の加速度の絶対値は上限加速度Amaxである。従って、本実施の形態では、台形形状を有する速度プロファイルを生成することを特徴とする。
ステップS1において、移動距離D、移動時間T、及び上限加速度Amaxが指令値生成回路7に入力される。ステップS2において、最短移動時間Tを計算する。ステップS3において、移動時間Tが最短移動時間Tよりも長いか否かを決定し、YESのときはステップS5に進み、NOのときはステップS4で移動時間Tを増大させ、ステップS3に戻る。ステップS4では、例えば移動時間Tを1割ずつ増大させてもよいが、これに限定されるものではない。
ステップS5において、加速時間及び減速時間Tと、等速時間Tと、ピーク速度Vとを計算する。加速時間及び減速時間の長さTと、等速時間の長さTとは、次式によって与えられる。
Figure 0005840288
(1)
Figure 0005840288
(2)
また、ピーク速度Vは、V=Amax・Tによって与えられる。
ステップS5ではさらに、計算された加速時間及び減速時間Tと、等速時間Tと、ピーク速度Vとにより、加速度プロファイルA(t)を決定する。ステップS6において、加速度プロファイルA(t)を積分することで、速度プロファイルを決定する。ステップS7において、速度プロファイルを積分することで、位置指令値24を生成し、処理を終了する。
次に、本実施の形態に係るモータ制御装置の効果について説明する。
まず、上限加速度を設けて位置決め制御を行う理由について説明する。モータ1には、モータ1の種類に依存して通常出力することが可能なトルクの最大値が存在する。機械的負荷3のイナーシャは位置決め制御時に一定であるので、運動方程式(イナーシャ×加速度=トルク)の関係から、加速度とトルクに比例関係が成立する。このことから、トルクの最大値が存在すると、位置決め制御時にモータ1によって機械的負荷3に与えることが可能な加速度に上限(上限加速度)が生じる。また、機械的負荷3自体が許容できる加速度の上限が存在する場合があり、これもまた、位置決め制御時に加速度の上限を生じさせる要因となる。仮に、この上限加速度を超えて機械的負荷3に加速度を与えると、モータ1に過大な電流が流れたり、機械的負荷3に大きな衝撃が加わり、最悪の場合、モータ1、モータ駆動回路4、及び/又は、機械的負荷3が破損する可能性がある。このため、位置指令値24を生成する際に、上限加速度を考慮する必要がある。
上限加速度を考慮して、機械的負荷3が初期位置から目標位置まで移動するのに要する移動時間Tを最短にするためには、いわゆる最短時間制御(Bang-Bang制御)と呼ばれる制御を行うことが知られている。図3は、最短移動時間Tを説明するための加速度プロファイル及び速度プロファイルを示す概略図である。図3において、最短時間制御を行ったときの加速度プロファイル及び速度プロファイルを太点線で示す。最短時間制御を行ったときの移動時間、すなわち最短移動時間Tは、移動距離D及び上限加速度Amaxを用いて、T=2×√(D/Amax)で表される。このときの加速度プロファイルは、時間0から最短移動時間の半分の時間T/2まで上限加速度Amaxで加速し、時間T/2から最短移動時間Tまで上限加速度Amaxで減速するように決定される。従って、機械的負荷3は、初期位置において停止した状態から所定のピーク速度まで上限加速度Amaxで加速され、ピーク速度に達した瞬間に上限加速度Amaxで減速されて目標位置において停止する。最短時間制御を行ったときの速度プロファイルは三角形形状になる。上限加速度Amaxが存在する場合、最短移動時間Tよりも短い移動時間で機械的負荷3を移動させることは不可能である。図3の太点線で示す加速度プロファイル及び速度プロファイルから生成した位置指令値24に従って機械的負荷3を移動させるときのみ、上限加速度Amaxを超えることなく、移動距離D及び移動時間Tの最短時間制御を実現することができる。
仮に最短移動時間T以下の移動時間Tが入力された場合、移動時間Tを最短移動時間Tよりも増大させ、この増大された移動時間Tに基づいて加速度プロファイルA(t)及び速度プロファイルを決定する。図2の位置指令値生成処理において、移動時間Tが最短移動時間T以下であるとき(ステップS3がNO)に移動時間Tを増大させる(ステップS4)のは、位置決め制御時の消費電力量を低減することを目的としている。ただし、本実施の形態では、図3の太実線で示すように移動時間Tを最短移動時間Tより増大させた分に応じて単に加速度の絶対値を減少させる(すなわち、最短時間制御と同様に三角形形状の速度プロファイルを用いる)のではなく、図4に示すような台形形状の速度プロファイルを用いる。図4は、図1の指令値生成回路7によって生成される加速度プロファイルA(t)及び速度プロファイルを示す概略図である。加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を初期位置において停止した状態からピーク速度Vまで加速度aで加速する加速時間と、機械的負荷3をピーク速度Vで移動させる等速時間と、機械的負荷3をピーク速度Vから加速度aで減速して目標位置において停止させる減速時間とからなる。加速時間の長さと減速時間の長さとは互いに等しい。台形形状の速度プロファイルは、移動距離D及び移動時間Tが与えられたとき、加速時間及び減速時間における加速度の絶対値を表す加速度aをパラメータとして、一意的に決定される。以下、図4を参照して、加速度aの好ましい値について説明する。
加速度aをパラメータとして、加速時間及び減速時間Tと、等速時間Tとは、次式で与えられる。
Figure 0005840288
(3)
Figure 0005840288
(4)
加速度aの絶対値の上限は上限加速度Amaxであるが、下限は、等速時間Tが0になるとき、すなわち、速度プロファイルが三角形形状になるときの加速度である。この加速度aの絶対値の下限Aminは、速度プロファイルを移動時間Tにわたって積分した面積が移動距離Dになるという関係から、Amin=4D/Tで表される。この加速度aの絶対値の下限Aminを用いて、加速時間及び減速時間Tを次式で表すことができる。
Figure 0005840288
(5)
また、加速度aの絶対値の下限Aminを用いて、速度プロファイルにおけるピーク速度Vは、次式で表すことができる。
Figure 0005840288
(6)
一方、最短時間制御を行ったときの最短移動時間Tと、移動距離Dと、上限加速度Amaxとの間には、Amax=4D/T の関係があるので、上限加速度Amaxは、Amax=Amin・T/T で表される。よって、加速度aがとれる範囲は次式で表される。
Figure 0005840288
(7)
次に、モータ1を動作させる際の消費電力量について考察する。モータ1の動作時に電力を消費する主要因は、モータ出力(モータ1が行う仕事)と、モータ1の巻線抵抗で消費される損失との2つに分類でき、その合計で消費電力量が決定される。すなわち、「位置決め制御に要する電力量」=モータ出力に関する電力量+損失に関する電力量、とみなせる。
単位時間あたりのモータ出力電力Wは、モータ速度vとモータトルクτを用いて、W=v×τで表される。また、図4の台形形状の速度プロファイルに従って位置決め制御を行っている際のモータ1の動作状態は、速度が増加していく「加速動作状態」、速度が一定値を保ち続ける「等速動作状態」、及び速度が減少していく「減速動作状態」に分類できる。ただし、この分類は、図4のような台形形状の速度プロファイルだけではなく、より一般の加減速パターンを有する速度プロファイルであっても同様にあてはめることができる。以下、図4の台形形状の速度プロファイルに従って動作するときに、動作状態毎にモータ出力に関する電力量の大きさを計算する。
まず、モータ1が加速動作状態にあるとき、すなわち、図4で時間tが0≦t≦Tのとき、正方向の加速度を発生させるために、モータ1には正方向のトルクが発生する。速度も正なので、単位時間あたりのモータ出力電力Wの符号も正になる。モータ1が加速を開始した直後(時間t=0)から、モータ1が加速完了(時刻t=T)するまでのモータ出力に関する電力量は、以下のように算出される。
Figure 0005840288
(8)
ここで、2番目の等号では、機械的負荷3及びモータ1のイナーシャの合計値をJと表して、モータ1の運動方程式である、J×dv/dt=τの関係、すなわち、トルクτと加速度dv/dtとが比例関係にあることを用いている。3番目の等号では、積の関数の微分公式を用いている。5番目の等号では、加速時間の最初(t=0)では速度vが0になること(v(0)=0)、及び、加速時間の最後(t=T)では速度vがVになること(v(T)=V)を用いている。最終的に、加速動作状態のときのモータ出力に関する電力量は、1/2・J・V で表される。これは、機械的負荷3及びモータ1がピーク速度Vで動作するときの運動エネルギーに等しい。
また、モータ1が等速動作状態にあるとき、すなわち、図4で時間tがT<t≦T+Tのときには、加速度aが0になるので、発生するトルクτもほぼ0とみなせる。よって、W=v×τの関係から、モータ出力電力Wもほぼ0になる。
さらに、モータ1が減速動作状態にあるとき、すなわち、図4で時間tがT−T<t≦Tのときには、速度vを減少させるために負の加速度を発生させるが、これには負のトルクを発生させる必要がある。しかし、速度vは正方向なので、速度vとトルクτが異符号になり、単位時間あたりのモータ出力電力Wは負の値になる。モータ出力電力Wが負の値になるということは、回生状態になっている(回生電力が発生している)ことを意味し、モータ1は電力を消費しないことになる。この回生電力は、図1の回生抵抗6で消費される。これは、別の見方をすれば、加速動作状態の間に得られた運動エネルギーが、減速動作状態の間に回生抵抗6によって消費され、熱エネルギーとして捨てられることを意味している。
以上の考察から、位置決め制御時のモータ出力に関する電力量においては、加速動作状態のときのモータ出力に関する電力量が支配的であり、この電力量は、機械的負荷3及びモータ1がピーク速度Vで動作するときの運動エネルギーに等しい。よって、この電力量を低減させるためには、運動エネルギーを小さくする、すなわち、ピーク速度Vを小さくする必要がある。
位置決め制御中のピーク速度Vと加速度aとの関係を表す式(6)を加速度aに関して微分すると、次式が得られる。
Figure 0005840288
(9)
ここで、a>0及びa−Amin≧0であることと、相加平均>相乗平均の関係とを用いると、式(9)の分子について、次式が成り立つ。
Figure 0005840288
(10)
従って、式(9)のdV/daは負である。よって、加速度aが大きいほど、ピーク速度Vは小さくなる。特に、ピーク速度Vが最小になるのは、加速度aが上限加速度Amaxに等しいときである。運動エネルギーは速度の二乗に比例するので、モータ出力に関する電力量が最小になるのも、加速度aが上限加速度Amaxに等しいときである。
次に、図4の台形形状の速度プロファイルに従って位置決め制御を行うとき、位置決め制御時に要する電力量のうち、モータ1の巻線抵抗で消費される損失の大きさを計算する。モータ1の巻線抵抗をRとし、モータ1に流れる電流Iとすると、単位時間あたりの損失電力Lは、次式で表される。
L=R・I (11)
モータ1のトルクτは、モータ1の電流Iに比例して発生する。すなわち、その比例定数(トルク定数)をKとすると、τ=K・Iの関係がある。この関係を運動方程式に代入すると、次式の関係が成立する。
J・a=K・I (12)
従って、電流Iは、加速度aを用いて以下のように表される。
I=J・a/K (13)
よって、モータ1に流れる電流Iは、加速度aに比例するといえる。
モータ出力に関する電力量を「加速動作状態」、「等速動作状態」、及び「減速動作状態」のそれぞれについて計算したが、モータ1に発生する損失についても同様に、これらの動作状態毎に計算する。モータ1が加速動作状態にあるときは加速度aが0ではないので、式(13)より電流Iも0ではない。よって、式(11)に従い損失電力Lが発生し、この損失電力L分の電力量を消費する。モータ1が等速動作状態にあるときは加速度aが0であるので、電流Iもほとんど0とみなせる。従って、このとき、損失電力Lもほぼ0とみなせる。また、モータ1が減速動作状態にあるときには、負のトルクが発生するのに伴って電流Iが発生する。しかし、前述したように、モータ1が減速動作状態にあるときには回生電力が発生するので、回生電力が減速動作状態のときの損失電力Lを補償する。さらに、余った回生電力は、回生抵抗6で消費されることになる。従って、減速動作状態では、損失を補償するための電力量はほとんど必要ない。以上から、位置決め制御時の損失に関する電力量においても、加速動作状態のときの損失に関する電力量が支配的である。よって、位置決め動作に要する電力量は、加速動作状態時の電力量が支配的であるといえる。加速度aを用いて、加速動作状態のときの損失に関する電力量E(a)、すなわち、損失電力Lを加速時間(0≦t≦T)にわたって積分した電力量は、式(11)及び(13)から、次式で表される。
Figure 0005840288
(14)
加速度aの変化に応じて、式(14)の損失に関する電力量E(a)がどのように変化するかを調べる。ここで、巻線抵抗R、イナーシャJ、及びトルク定数Kの値は、モータ1及び機械的負荷3が決まれば一定であることに注意する。
図5は、加速度aに対する損失の変化を示す概略図である。図5の縦軸は、式(14)の損失に関する電力量E(a)を、R・(J/K・T/2・Amin で除算した値を示す。図5において、Amin≦a<(9/8)・Aminでは、損失は加速度aが増加するにつれて単調減少する。損失は、a=(9/8)・Aminにおいて最小値になり、a=Aminのときの損失を1とすると、a=(9/8)・Aminにおいて損失は27/32になる。a>(9/8)・Aminでは、損失は加速度aが増加するにつれて単調増加する。さらに、a=(√5+1)/2・Aminでは、a=Aminのときの損失と同じ値になる。
以上をふまえて、図4の台形形状の速度プロファイルに従って位置決め制御を行うとき、位置決め制御に要する電力量が、加速度a及び移動時間Tに応じて、どのようなときに最小になるかを考察する。
前述したように、位置決め制御に要する電力量は、モータ出力に関する電力量と損失に関する電力量との和になることに注意する。まず、Amax≦(9/8)・Aminの場合、すなわち、Amax=Amin・T/T の関係を考慮して、T<T≦3√2/4・Tの場合、加速度aを上限加速度Amaxに設定すると、位置決め制御に要する電力量が最小になる。なぜならば、前述のように、加速度aが上限加速度Amaxであるときにピーク速度Vが最小になり、運動エネルギーも最小になり、従ってモータ出力に関する電力量が最小になる。また、図5より、a≦(9/8)Aminにおいては、損失は加速度aの増加に伴い単調減少するので、損失に関する電力量も最小になる。よって、モータ出力に関する電力量と損失に関する電力量との和である位置決め制御に要する電力量は最小になる。
次に、(9/8)Amin<Amax≦(√5+1)/2・Amin、すなわち、3√2/4・T<T≦√((√5+1)/2)・Tのときもまた、上述の場合と同様に、加速度aを上限加速度Amaxに設定すると、モータ出力に関する電力量が最小になる。加速度aを上限加速度Amaxに設定したとき、損失に関する電力量は最小にはならないが、少なくとも、加速度aをその下限Aminに設定したとき、すなわち、三角形形状の速度プロファイルに従って位置決め制御を行うときの損失に関する電力量よりは小さくなる。よって、加速度aを上限加速度Amaxに設定したとき、少なくとも、位置決め制御で一般的である三角形形状の速度プロファイルを用いた場合よりは、位置決め制御に要する電力量を小さくできるという効果がある。
図2のステップS5で計算される加速時間及び減速時間T、等速時間T、ピーク速度Vは、式(3)、式(4)、式(6)において、a=Amaxを代入したときの値である。また、式(3)、式(4)、式(6)は、計算するのに繰り返し計算等を含まず、代数演算しか含んでいないので、位置指令値24を小さな計算負荷で生成できるという効果がある。
以上説明したように、本実施の形態のモータ制御装置によれば、位置決め制御時の消費電力量を低減することができる。
実施の形態2
実施の形態1では、消費電力量を低減するために、台形形状の速度プロファイルに従って位置決め制御を行ったが、本実施の形態では、これとは異なる速度プロファイルを用いる。実施の形態2に係るモータ制御装置を含む位置決めシステムの構成は、実施の形態1(図1)と同じであるが、指令値生成回路7によって実行される位置指令値生成処理が、実施の形態1とは異なる。
図6は、本発明の実施の形態2に係る位置指令値生成処理を示すフローチャートである。図6のフローチャートにおいて、ステップS1〜S4は、実施の形態1(図2)と同じなので説明を省略する。ステップS3がYESのとき、ステップS11に進む。ステップS11において、移動時間Tが最短移動時間Tの√(3/2)倍より小さいか否かを決定し、YESのときはステップS12に進み、NOのときはステップS14に進む。本実施の形態では、ステップS11のYES又はNOに応じて、異なる形状の加速度プロファイルA(t)及び速度プロファイルを生成する。
ステップS11がYESのとき、すなわち、移動時間Tが、T<T<√(3/2)×Tを満たすとき、加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を正の第1の加速度で加速する第1の等加速度時間と、機械的負荷3に与える加速度を第1の加速度から負の第2の加速度まで時間の一次関数として連続的に低下させる加速度低減時間と、機械的負荷3を第2の加速度で減速する第2の等加速度時間とからなる。第1及び第2の加速度の絶対値は上限加速度Amaxである。ステップS12〜S13では、図7に示す加速度プロファイルA(t)を生成する。
ステップS12において、第1及び第2の等加速度時間Tを次式により計算する。
Figure 0005840288
(15)
ステップS13において、等加速度時間Tに基づいて、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して加速度プロファイルA(t)を次式のように決定する。
Figure 0005840288
(16)
一方、ステップS11がNOのとき、すなわち、移動時間Tが、T≧√(3/2)×Tを満たすとき、指令値生成回路7は、上限加速度Amaxより小さい所定のピーク加速度Aを決定し、次いで、このピーク加速度Aを用いて加速度プロファイルA(t)を決定する。加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を第1の位置において停止した状態からピーク加速度Aで加速し始め、機械的負荷3に与える加速度をAから−Aまで時間の一次関数として連続的に低下させ、最終的にピーク加速度Aで減速して第2の位置において停止させるように決定される。ステップS14〜S15では、図8に示す加速度プロファイルA(t)を生成する。
ステップS14において、ピーク加速度Aを次式により計算する。
=6D/T (17)
ステップS15において、ピーク加速度Aに基づいて、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して加速度プロファイルA(t)を次式により決定する。
Figure 0005840288
(18)
図6のフローチャートにおいて、ステップS6〜S7は、実施の形態1(図2)と実質的に同じである。ステップS6において、ステップS13又はS15で決定された加速度プロファイルA(t)を積分することで、速度プロファイルを決定する。ステップS7において、速度プロファイルを積分することで、位置指令値24を生成し、処理を終了する。
次に、本実施の形態に係るモータ制御装置の効果について説明する。
はじめに、式(16)又は式(18)で決定された加速度プロファイルA(t)について、次式が成り立つことを確認することができる。
Figure 0005840288
(19)
すなわち、式(16)又は式(18)で決定された加速度プロファイルA(t)を用いると、移動距離Dを移動時間Tで移動することができる。式(16)における等加速度時間T、又は、式(18)におけるピーク加速度Aは、移動距離Dを移動時間Tで移動するように決定されている。
次に、式(16)又は式(18)で決定された加速度プロファイルA(t)が上限加速度Amaxを超えないことを説明する。図7は、図6のステップS13で決定される加速度プロファイルA(t)(式(16))及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。図7に示すように、加速度の絶対値は、第1及び第2の等加速度時間においてのみ上限加速度Amaxになり、加速度低減時間では常に上限加速度Amax未満である。従って、明らかに、図7の加速度プロファイルA(t)は上限加速度Amaxを超えることはない。図8は、図6のステップS15で決定される加速度プロファイルA(t)(式(18))及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。図8に示すように、加速度の絶対値は、時間t=0及びTのときのみピーク加速度Aになる。ピーク加速度Aは次式を満たす。
Figure 0005840288
(20)
ここで、式(20)の不等号は、移動時間Tが、T≧√(3/2)×Tを満たすことを利用している。よって、ピーク加速度Aは上限加速度Amaxを超えることはない。ここで、不等号が成立することは、図6のステップS11がNOであること、すなわち、T>√(3/2)×Tであることを用いている。よって、図6の位置指令値生成処理を行うとき、ステップS11の条件分岐によってステップS12〜S13あるいはステップS14〜S15のどちらを行っても、上限加速度Amaxを超えない加速度プロファイルA(t)を生成することができる。
次に、式(16)又は式(18)で決定された加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行うことによって消費電力量を低減できることについて説明する。実施の形態1で説明したように、位置決め制御に要する電力量は、モータ出力に関する電力量と、損失に関する電力量とでからなる。前述のように、モータ出力に関する電力量は、ピーク速度から決まる運動エネルギーにほぼ等しい。また、損失に関する電力量は、加速時の損失が支配的であり、加速時に流れる電流から損失電力を計算することができる。
まず、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いたときのピーク速度V=Vp1を算出する。ピーク速度Vp1は、次式のように、式(16)を、正の加速度を加える時間(時間0から移動時間の半分T/2まで)にわたって積分することにより得られる。
Figure 0005840288
(21)
また、損失に関する電力量は、式(11)の損失電力Lを、加速度が正の時間(0≦t≦T/2)にわたって積分することにより求められる。このとき、加速度と電流が概ね比例関係にあることを利用すると、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御するときの損失に関する電力量EL1は、次式により表される。
Figure 0005840288
(22)
次に、比較のために、位置決め制御において一般的に使用される三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときの消費電力量を計算する。図3の実線で表す速度プロファイルを用いて位置決め制御を行い、移動距離Dを移動時間Tで移動するときのモータ出力に関する電力量と、損失に関する電力量とを以下のように計算する。
実施の形態1において図4の加速度a=Aminであるとき、速度プロファイルが三角形形状になる。このときのピーク速度Vp2と損失に関する電力量EL2は、次式により計算される。
Figure 0005840288
(23)
Figure 0005840288
(24)
ここで、r=T/Tとおくと、式(21)〜式(24)を次式のように表すことができる。
Figure 0005840288
(25)
Figure 0005840288
(26)
Figure 0005840288
(27)
Figure 0005840288
(28)
ピーク速度Vp1及びVp2の大小と、損失に関する電力量EL1及びEL2の大小とを比較するために、パラメータr=T/Tに関する以下の関数を導入する。
Figure 0005840288
(29)
Figure 0005840288
(30)
Figure 0005840288
(31)
Figure 0005840288
(32)
式(29)〜式(32)を用いると、式(25)〜式(28)は次式のように表される。
Figure 0005840288
(33)
Figure 0005840288
(34)
Figure 0005840288
(35)
Figure 0005840288
(36)
式(16)の加速度プロファイルA(t)は、図6のステップS11がYESであるときに使用されるので、パラメータr=T/Tは、1<r<√(3/2)の範囲内で変化する。図9は、パラメータrに対する関数f(r)及びf(r)の値の変化を示す概略図である。図9において実線が関数f(r)を表し、点線が関数f(r)を表す。図9によれば、1<r<√(3/2)ではパラメータrの値に関わらず、f(r)<f(r)であることがわかる。これは、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときのピーク速度Vp1は、三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときのピーク速度Vp2より小さくなり、このため、モータ出力に関する電力量も、三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときよりも、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときのほうが小さくなるということを意味している。
図10は、パラメータrに対する関数g(r)及びg(r)の値の変化を示す概略図である。図10において、実線が関数g(r)を表し、点線が関数g(r)を表す。図10によれば、1<r<√(3/2)ではパラメータrの値に関わらず、g(r)<g(r)であることがわかる。これは、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときの損失に関する電力量EL1は、三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときの損失に関する電力量EL2より小さくなることを表している。
以上説明したように、三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときよりも、式(16)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときのほうが、モータ出力に関する電力量と、損失に関する電力量とがともに小さくなるので、トータルの電力量も小さくなることがいえる。
さらに、式(18)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときピーク速度Vp3と、そのときに発生する損失に関する電力量EL3を算出する。まず、ピーク速度Vp3は、次式のように、式(18)を、正の加速度を加える時間(時間0から移動時間の半分T/2まで)にわたって積分することにより得られる。
Figure 0005840288
(37)
また、式(18)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御するときの損失に関する電力量EL3は、次式により表される。
Figure 0005840288
(38)
明らかに、Vp3<Vp2、かつ、EL3<EL2が成立する。これは、三角形形状の速度プロファイルを用いて位置決め制御を行ったときよりも、式(18)の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときのほうが、モータ出力に関する電力量も、損失に関する電力量も小さくなることを表している。
以上説明したように、図6の位置指令値生成処理に従って位置指令値を生成することにより、ピーク加速度を上限加速度Amax以下にしつつ、なおかつ、位置決めに要する電力量を削減するという効果がある。また、式(15)〜式(18)は、計算するのに繰り返し計算等を含まず、代数演算しか含んでいないので、位置指令値24を小さな計算負荷で演算することができるという効果がある。
以上説明したように、本実施の形態のモータ制御装置によれば、位置決め制御時の消費電力量を低減することができる。
実施の形態3
実施の形態1、2では、位置決め制御を行うときの消費電力量を定量的に計算し、これが低減されることを示すことにより、その効果を説明した。本実施の形態では、これとは別の方法で効果を説明する。実施の形態3に係るモータ制御装置を含む位置決めシステムの構成は、実施の形態1(図1)と同じであるが、指令値生成回路7によって実行される位置指令値生成処理が、実施の形態1とは異なる。
図11は、本発明の実施の形態3に係る位置指令値生成処理を示すフローチャートである。図11のフローチャートにおいて、ステップS1〜S4は、実施の形態1(図2)と同じなので説明を省略する。ステップS3がYESのとき、ステップS21に進み、ステップS21〜S22において加速度プロファイルA(t)を決定する。加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を正の第1の加速度で加速する第1の等加速度時間と、機械的負荷3に与える加速度を第1の加速度から負の第2の加速度まで連続的に低下させる加速度低減時間と、機械的負荷3を第2の加速度で減速する第2の等加速度時間とからなる。第1及び第2の加速度の絶対値は上限加速度Amaxである。加速度プロファイルA(t)は、例えば、図12のように生成される。
ステップS21において、第1及び第2の等加速度時間Tを次式により計算する。
Figure 0005840288
(39)
ステップS22において、等加速度時間Tに基づいて、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して加速度プロファイルA(t)を次式のように決定する。
Figure 0005840288
(40)
図12は、図11のステップS22で決定される加速度プロファイルA(t)及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。
加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3の加速を開始してから等加速度時間Tにわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように決定される。式(40)の加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を初期位置から目標位置に移動時間Tで移動させるように(すなわち、式(19)が成立するように)決定され、このとき、式(39)の等加速度時間Tが得られる。
ここでは、式(40)の加速度プロファイルA(t)を例としてあげたが、これに限られるものではなく、機械的負荷3の加速を開始してから等加速度時間Tにわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように決定される加速度プロファイルであれば、どのようなものであってもよい。他の例としては、実施の形態2で説明した図7の加速度プロファイルA(t)(式(16))などが挙げられる。
図13は、本発明の実施の形態3の変形例に係る位置指令値生成処理で使用される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間にわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するような形状であれば、以上に説明したものとは異なる他の形状であってもよい。例えば、加速度低減時間における加速度は、図12のように連続的に低下することに限定されず、図13のように段階的に低下してもよい。図13の加速度プロファイルA(t)は次式で表される。
Figure 0005840288
(41)
式(41)の加速度プロファイルA(t)は、機械的負荷3を初期位置から目標位置に移動時間Tで移動させるように、すなわち次式を満たすように決定される。
Figure 0005840288
(42)
このとき、等加速度時間Tが次式により得られる。
Figure 0005840288
(43)
式(41)の加速度プロファイルA(t)を用いたときも、位置決め動作時の消費電力量を低減することができる。
次に、本実施の形態に係るモータ制御装置の効果について説明する。
図14及び図15を参照して、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間にわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減する加速度プロファイルA(t)を用いることにより、位置決め制御に要する電力量を低減させることができることを説明する。図14は、本発明の実施の形態3に係る効果を説明するための第1の加速度プロファイルA(t)及び速度プロファイルを示す概略図である。図15は、本発明の実施の形態3に係る効果を説明するための第2の加速度プロファイルA(t)及び速度プロファイルを示す概略図である。図14及び図15のいずれの場合においても、同一のモータ1を用いて同一の機械的負荷3を移動時間Tにわたって移動するものとする。A>A≧0として、図14の加速度プロファイルA(t)は次式で表されるものとする。
Figure 0005840288
(44)
図14の加速度プロファイルA(t)では、速度が小さいときに大きな加速度を発生し、速度が大きいときに小さな加速度を発生する。従って、加速度が正の時間(0≦t≦T/2)のうち前半(0≦t<T/4)に大きい加速度Aを発生し、その後半(T/4<t<T/2)に小さい加速度Aを発生する。加速度が負の時間(T/2<t≦T)では、その前半(T/2<t≦(3/4)T)に小さい加速度Aを発生し、その後半((3/4)T<t≦T)に大きい加速度Aを発生する。
また、図15の加速度プロファイルA(t)は次式で表されるものとする。
Figure 0005840288
(45)
図15の加速度プロファイルA(t)では、速度が小さいときに小さな加速度を発生し、速度が大きいときに大きな加速度を発生する。従って、加速度が正の時間(0≦t≦T/2)のうち前半(0≦t<T/4)に小さい加速度Aを発生し、その後半(T/4<t<T/2)に大きい加速度Aを発生する。加速度が負の時間(T/2<t≦T)では、その前半(T/2<t≦(3/4)T)に大きい加速度Aを発生し、その後半((3/4)T<t≦T)に小さい加速度Aを発生する。
実施の形態1で説明したように、損失に関する電力量において、加速動作時の損失が支配的である。前述のように電流と加速度は比例関係にあるので、図14及び図15の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときに発生する損失に関する電力量はいずれも、機械的負荷3及びモータ1のイナーシャの合計値Jと、モータ1のトルク定数Kとを用いて次式で表される。
Figure 0005840288
(46)
すなわち、図14及び図15の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときに、それぞれ同じ電力量の損失が発生する。
次に、図14及び図15の加速度プロファイルA(t)を用いて位置決め制御を行ったときに移動することのできる距離を考える。図14及び図15の加速度プロファイルA(t)のいずれを用いたときでも、加速度が正の時間の最後(t=T/2)において、ピーク速度Vは、V=(A+A)・T/4になる。また、それぞれの加速度プロファイルA(t)に従って移動する移動距離は、速度プロファイルのプロットと時間軸とによって囲まれる面積に相当するので、図14及び図15によれば、図14の加速度プロファイルA(t)を用いたときのほうがより大きな距離を移動することがわかる。これは、速度が小さいときに大きな加速度を発生することに起因する。よって、損失に関する電力量が同一であるときに、より大きな移動距離を移動するためには、図14のように速度が小さいときに大きな加速度を発生し、速度が大きいときに小さな加速度を発生する加速度プロファイルA(t)を用いるほうが有利であることを示している。このことは、同一の移動距離を移動するという観点で見れば、図14の加速度プロファイルA(t)のほうが、損失に関する電力量を減少させる上で有利であることを示している。
また、同一の移動距離を移動するのに、速度が小さいときに大きな加速度を発生し、速度が大きいときに小さな加速度を発生する場合、ピーク速度を小さくする効果がある。前述のように、図14及び図15の例において、加速度A及びAの値が同じであり、かつ、移動時間Tが同じである場合、図14の加速度プロファイルA(t)を用いたときのほうが、移動距離が大きくなる。図14及び図15の加速度プロファイルA(t)をそれぞれ用いたとき、同じ移動距離Dを同じ移動時間Tで移動するためには、図14の加速度プロファイルA(t)における加速度(図14の加速度A及びA)を図15の加速度プロファイルA(t)における加速度(図15の加速度A及びA)よりも小さくする必要がある。図14の加速度プロファイルA(t)における加速度を小さくすることにより、図14のピーク速度は、図15のピーク速度よりも小さくなる。これにより、位置決め制御時の運動エネルギーを小さくすることができる。実施の形態1で説明したように、運動エネルギーはモータ出力に関する電力量とみなすことができるで、モータ出力に関する電力量を低減させることができるという効果がある。
図14及び図15の例では、移動時間Tを4つの区間に分割して、それぞれの区間内で加速度が一定値である速度プロファイルを用いて説明したが、より多くの区間に分割しても同様の議論が成立する。すなわち、加速度が次第に増大する加速度プロファイルよりも、加速を開始した直後に大きな加速度をとり、その後に加速度を漸減する加速度プロファイルのほうが、加速度が正の時間が開始した直後からなるべく大きな速度をとることができるので、位置決め制御を行うときの損失を減少させ、速度プロファイルのピーク速度を低下させる。
加速度に上限加速度の制約がある場合は、加速を開始した直後からしばらくの間にわたって上限加速度を発生し、その後に上限加速度から漸減する加速度を発生する加速度プロファイルを用いて位置決め制御を行うことにより、加速度を上限加速度以下にしながら位置決め制御時に発生する損失を減少させ、かつ、ピーク速度を低下させることができる。すなわち、加速度を上限加速度以下にしながら、位置決め制御に要する電力量を低減する加速度プロファイルを生成することができる。また、例えば、式(39)及び式(40)、又は式(41)及び式(43)で表される、第1の等加速度時間、加速度低減時間、及び第2の等加速度時間からなる加速度プロファイルA(t)は、計算するのに繰り返し計算等を含まず、代数演算しか含んでいないので、位置指令値24を小さな計算負荷で演算することができるという効果がある。
以上説明したように、本実施の形態のモータ制御装置によれば、位置決め制御時の消費電力量を低減することができる。
実施の形態4
実施の形態1〜3では、加速度プロファイルの形状が加速時と減速時とで対称である場合(従って、速度プロファイルの形状も加速時と減速時とで対称である場合)について述べたが、本発明の実施の形態はこれに限られるものではなく、加速度プロファイルの形状が加速時と減速時とで非対称であってもよい。本実施の形態4では、このような加速度プロファイルを用いる場合について説明する。
図16は、本発明の実施の形態4に係る位置指令値生成処理で使用される加速度プロファイル及び対応する速度プロファイルを示す概略図である。図16の加速度プロファイルA(t)は次式で表される。
Figure 0005840288
(47)
式(47)の加速度プロファイルA(t)もまた、機械的負荷3を初期位置から目標位置に移動時間Tで移動させるように、かつ、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間Tにわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように決定される。特に、式(47)の加速度プロファイルA(t)は、加速時と減速時とで異なる形状を有する。
式(47)の時間Tは、式(15)により算出されるものとする。
また、式(47)の加速度A及び時間Tは以下のように決定される。
位置決め制御時に衝撃や振動を引き起こさないためには、速度が連続的に変化する必要がある。このためには、加速度プロファイルを加速度が正である加速時間にわたって積分した値が、加速度プロファイルを加速度が負である減速時間にわたって積分した値の絶対値に等しい必要がある。式(47)の例では、加速時間及び減速時間が互いに等しい場合を想定し、従って、加速時間は0≦t≦T/2であり、減速時間はT/2<t≦Tであるとする。すなわち、式(47)について次式が成立することが必要である。
Figure 0005840288
(48)
加速度プロファイルを加速時間にわたって積分した値が、ピーク速度Vになる。式(47)の加速度プロファイルの加速時間に対応する部分は、実施の形態2の式(16)と同じなので、式(48)の左辺を計算すると、式(21)と同様に、次式で表すことができる。
Figure 0005840288
(49)
また、式(48)の右辺を計算すると、次式で表すことができる。
Figure 0005840288
(50)
よって、式(48)が成立するためには、次式を満たすように加速度A及び時間Tを選択する必要がある。
Figure 0005840288
(51)
なお、前述の実施の形態1〜3で説明した加速度プロファイルは、加速時と減速時の形状が対称であるので、速度も自動的に連続となる。
式(47)の加速度プロファイルを用いて、機械的負荷3を移動距離Dにわたって移動時間Tで移動させる。ここで、前述のように、式(47)の加速度プロファイルの加速時間に対応する部分は、実施の形態2で説明したものと同一になるので、加速時間中に移動する距離はD/2となる。よって、式(47)の加速度プロファイルを用いたときに、加速時間及び減速時間に移動する距離の合計が移動距離Dになるためには、減速時間に移動する距離がD/2である必要がある。式(47)の加速度プロファイルを用いたときに、減速時間中に移動する距離は、加速度A及び時間Tを用いて次式で表される。
Figure 0005840288
(52)
従って、式(47)の加速度プロファイルを用いて、機械的負荷3を移動距離Dにわたって移動時間Tで移動させるためには、次式を満たすように加速度A及び時間Tを決定する必要がある。
Figure 0005840288
(53)
及びTを未知数とする式(48)及び式(53)の連立方程式を解くことで加速度A及び時間Tを算出する。この加速度A及び時間Tを用いて式(47)の加速度プロファイルを決定し、次いで、加速度プロファイルA(t)に従って速度プロファイルを決定し、速度プロファイルに従って位置指令値24を生成する。
次に本実施の形態の効果について説明する。
実施の形態3で述べたように、位置決め制御を行うときの消費電力量は、モータ出力に関する電力量と損失に関する電力量との合計で計算され、また、モータ出力に関する電力量と損失に関する電力量とのいずれにおいても、加速動作時に使用する電力量が支配的である。式(47)の加速度プロファイルのように、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間Tにわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように加速度プロファイルを決定することで、加速動作時に要する電力量を小さくすることができる。
また、機械的負荷3を移動距離Dにわたって移動時間Tで移動させるように、かつ、速度プロファイルが移動時間Tにわたって連続になるように、加速度プロファイルに関するパラメータ(加速度A及び時間T)を算出しているので、この加速度プロファイルを用いて位置決め制御を行うことにより、所望の位置決め制御を行いながら、位置決め制御を行うときに衝撃や振動を発生せず、かつ、位置決めに要する電力量を削減できるという効果がある。
なお、本実施の形態では加速時間(加速度が正である時間)と減速時間(加速度が負である時間)が等しい例について説明を行ったが、加速時間と減速時間が異なっていても、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間にわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから漸減するように加速度プロファイルを決定するのであれば、上記の実施の形態と同様の効果、すなわち、所望の位置決め制御を行いながら、動作時の消費電力量を削減できる効果がある。さらに、図16の例では、機械的負荷3の加速を開始してから所定時間にわたって上限加速度Amaxを維持し、その後に上限加速度Amaxから連続的に減少するような加速度プロファイルを用いる場合について説明を行ったが、連続的に減少することに代えて、加速度が段階的に減少するような加速度プロファイルを用いてもよい。
本発明によれば、位置決め制御に使用する位置指令値(又は対応する加速度プロファイル及び速度プロファイル)を生成する技術に関して、上限加速度の制限を考慮して、演算量を少なくして、位置決め制御時の消費電力量を小さくすることのできる位置指令値を生成する。
本発明によれば、消費電力量を、従来のモータ制御装置に比較して、数値最適解に近い14〜25%にわたって削減することができ、かつ、数値最適解では困難なリアルタイムかつオンラインの実装が可能な近似解を与えることができる。
1 モータ、2 エンコーダ、3 機械的負荷、4 モータ駆動回路、5 電源、6 回生抵抗、7 指令値生成回路。

Claims (3)

  1. モータに接続された機械的負荷を第1の位置から第2の位置に移動させるように上記モータを制御するモータ制御装置において、
    各瞬間における上記機械的負荷の位置を表し、上記機械的負荷の動作の参照信号となる位置指令値を生成する指令値生成回路と、
    上記位置指令値に従って上記機械的負荷を移動させるように上記モータを制御するモータ駆動回路と、
    回生電力を消費する回生抵抗とを備え、
    上記指令値生成回路は、上記第1の位置から上記第2の位置までの移動距離Dと、上記位置指令値の2回微分係数に対応する上記機械的負荷の加速度の絶対値の上限を表す上限加速度A max と、上記移動距離D及び上記上限加速度A max に基づいて計算された最短移動時間T よりも長い所定の移動時間Tとが与えられたとき、上記機械的負荷の加速を開始してから所定の等加速度時間T にわたって上記上限加速度A max を維持し、その後に上記上限加速度A max から漸減するように、上記機械的負荷の時間的な加速度変化を表す加速度プロファイルA(t)を決定し、上記加速度プロファイルA(t)を2回積分して上記位置指令値を生成し、
    上記指令値生成回路は、上記機械的負荷を上記第1の位置から上記第2の位置に上記移動時間Tで移動させるように、上記等加速度時間T を決定し、
    上記最短移動時間Tは、T=2×√(D/Amax)であり、
    上記指令値生成回路は、
    上記等加速度時間Tを、
    Figure 0005840288
    により決定し、
    上記加速度プロファイルA(t)を、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して、
    Figure 0005840288
    により決定することを特徴とするモータ制御装置。
  2. モータに接続された機械的負荷を第1の位置から第2の位置に移動させるように上記モータを制御するモータ制御装置において、
    各瞬間における上記機械的負荷の位置を表し、上記機械的負荷の動作の参照信号となる位置指令値を生成する指令値生成回路と、
    上記位置指令値に従って上記機械的負荷を移動させるように上記モータを制御するモータ駆動回路と、
    回生電力を消費する回生抵抗とを備え、
    上記指令値生成回路は、上記第1の位置から上記第2の位置までの移動距離Dと、上記位置指令値の2回微分係数に対応する上記機械的負荷の加速度の絶対値の上限を表す上限加速度A max と、上記移動距離D及び上記上限加速度A max に基づいて計算された最短移動時間T よりも長い所定の移動時間Tとが与えられたとき、上記機械的負荷の加速を開始してから所定の等加速度時間T にわたって上記上限加速度A max を維持し、その後に上記上限加速度A max から漸減するように、上記機械的負荷の時間的な加速度変化を表す加速度プロファイルA(t)を決定し、上記加速度プロファイルA(t)を2回積分して上記位置指令値を生成し、
    上記指令値生成回路は、上記機械的負荷を上記第1の位置から上記第2の位置に上記移動時間Tで移動させるように、上記等加速度時間T を決定し、
    上記最短移動時間Tは、T=2×√(D/Amax)であり、
    上記指令値生成回路は、
    上記等加速度時間Tを、
    Figure 0005840288
    により決定し、
    上記加速度プロファイルA(t)を、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して、
    Figure 0005840288
    により決定することを特徴とするモータ制御装置。
  3. モータに接続された機械的負荷を第1の位置から第2の位置に移動させるように上記モータを制御するモータ制御装置において
    各瞬間における上記機械的負荷の位置を表し、上記機械的負荷の動作の参照信号となる位置指令値を生成する指令値生成回路と、
    上記位置指令値に従って上記機械的負荷を移動させるように上記モータを制御するモータ駆動回路と、
    回生電力を消費する回生抵抗とを備え、
    上記指令値生成回路は、
    上記第1の位置から上記第2の位置までの移動距離Dと、上記位置指令値の2回微分係数に対応する上記機械的負荷の加速度の絶対値の上限を表す上限加速度Amaxと、上記移動距離D及び上記上限加速度Amaxに基づいて計算された最短移動時間T=2×√(D/Amax)よりも長い所定の移動時間Tとが与えられたとき、上記機械的負荷の時間的な加速度変化を表す加速度プロファイルA(t)を決定し、上記加速度プロファイルA(t)を2回積分して上記位置指令値を生成し、
    上記移動時間Tが、T<T<√(3/2)×Tを満たすとき、
    所定の等加速度時間Tを、
    Figure 0005840288
    により決定し、
    上記加速度プロファイルA(t)を、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して、
    Figure 0005840288
    により決定し、
    上記移動時間Tが、T≧√(3/2)×Tを満たすとき、
    上記上限加速度Amaxより小さい所定のピーク加速度Aを、A=6D/Tにより決定し、
    上記加速度プロファイルA(t)を、0≦t≦Tにわたって変化する時間tに関して、
    Figure 0005840288
    により決定することを特徴とするモータ制御装置。
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