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JP5738125B2 - 導電性ロール - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム弾性部を有する導電性ロールに関する。
従来、様々な分野においてゴム弾性部を有する導電性ロールが用いられている。この種の導電性ロールを利用する技術の一つとして、対象物を帯電させる技術が知られている。具体的には、例えば、電子写真方式を採用する複写機、プリンター等の画像形成装置では、像担持体としての感光体の表面に導電性ロールによって電荷を付与し、帯電させることが行われている。
導電性ロールの構造としては、特許文献1、2等に知られるように、導電性を示すゴム弾性部の表面に、トナー固着を防止し、かつ、トナーにストレスを与えないように比較的硬度の低い非架橋の樹脂材料からなる樹脂層を被覆した構造が広く知られている。
特開2011−095546号公報 特開2007−121724号公報
しかしながら、上述した従来構造の導電性ロールは以下の点で問題がある。すなわち、従来構造の導電性ロールは、ゴム弾性部の表面に非架橋の樹脂材料からなる樹脂層を有している。非架橋の樹脂材料は、ゴム弾性部に用いられるゴム材料に比べ、弾性回復率に劣る。そのため、樹脂層表面に一定期間他の部材が接する状態が続くと、樹脂層にヘタリが生じる。樹脂層にヘタリが生じると、これに起因して導電性ロールの使用時に不具合が発生しやすくなる。例えば、電子写真方式を採用する画像形成装置の帯電ロールとして従来構造の導電性ロールを用いた場合、樹脂層のヘタリに起因して感光体の帯電にムラが生じ、スジ画像が生じやすくなる。このように、ゴム弾性部の表面に樹脂層を有する場合には、高い弾性回復率を有するゴム弾性部の本来の特徴を十分に活かすことができず、ロール全体として耐ヘタリ性が悪くなる。
耐ヘタリ性を向上させるため、耐ヘタリ性を悪化させている原因である樹脂層をなくす構成を採用することも考えられる。しかし、このような構成を採用すると、タック性の強いゴム弾性部の表面が露出する。そのため、導電性ロールの使用時に、ゴム弾性部の表面に意図しない物質が固着しやすくなり、耐固着性が低下する。例えば、電子写真方式を採用する画像形成装置の帯電ロールとして樹脂層のない導電性ロールを用いた場合には、ゴム弾性部の表面にトナーや外添剤等が固着しやすくなり、固着した汚れにより画像不具合が発生しやすくなる。
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、耐ヘタリ性、耐固着性に優れた導電性ロールを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、炭素−炭素二重結合を有するゴム成分を含有するゴム材料から構成されているとともに導電性を示すゴム弾性部を有し、該ゴム弾性部の表面がロール表面に露出している導電性ロールであって、上記ゴム弾性部の表面に、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されていることを特徴とする導電性ロールにある(請求項1)。
上記導電性ロールは、炭素−炭素二重結合を含有するゴム材料から構成されているとともに導電性を示すゴム弾性部を有し、該ゴム弾性部の表面がロール表面に露出している。つまり、ゴム弾性部の表面に耐ヘタリ性を悪化させる樹脂層が被覆されていない。そのため、高い弾性回復率を有するゴム弾性部の本来の特徴を十分に活かすことが可能となり、ロール全体として優れた耐ヘタリ性を発揮することができる。
また、ゴム弾性部の表面には、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されている。そのため、ゴム弾性部表面に存在するシリコーン基およびフッ素含有基の作用により、ゴム弾性部表面のタック性が低下する。それ故、汚れ等の意図しない物質がゴム弾性部表面に固着し難くなり、耐固着性に優れる。また、上記結合により、導電性ロールを繰り返し使用した場合であっても、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上の官能基をゴム弾性部の表面に存在させたままとしやすい。そのため、長期にわたって耐固着性を発揮することができ、耐久性に優れる。
以上、本発明によれば、耐ヘタリ性、耐固着性に優れた導電性ロールを提供することができる。
実施例に係る導電性ロールを模式的に示す説明図である。 図1のA−A断面を模式的に示す説明図である。 図2のB位置におけるゴム弾性部表面の一例を模式的に示す説明図である。
上記導電性ロールは、導電性を示すゴム弾性部を有している。ゴム弾性部は、例えば、導電性の軸体の外周に沿って略円筒状に形成することができる。上記導電性ロールは、略円柱状に形成したゴム弾性部の両端部の各端面から短軸体を突出させて設けることもできる。軸体としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属(合金含む)からなる中実体(芯金)や中空体、導電性プラスチックからなる中実体や中空体、導電性または非導電性のプラスチックからなる中実体や中空体に金属めっきを施したものなどを例示することができる。
ゴム弾性部は、その表面がロール表面に露出しており、ゴム弾性部の表面には樹脂層が形成されていない。つまり、ゴム弾性部の表面とロール表面とは一致している。上記導電性ロールは、このような構成を採用することができれば、ゴム弾性部の構成は特に限定されるものではない。ゴム弾性部は1層のゴム弾性層から構成することができる。また、ゴム弾性層の下層に1または2以上の他のゴム弾性層を有する構成を採用することもできる。
ゴム弾性部は、炭素−炭素二重結合(C=C)を含有するゴム材料から構成されている。炭素−炭素二重結合を含有している必要があるのは、イソシアヌル酸骨格中のN原子との結合を得るためである。ゴム材料中に含まれるゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)などの炭素−炭素二重結合を含有するゴムなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。炭素−炭素二重結合を含有するゴムとしては、耐ヘタリ性、汎用性、低コスト化等の観点から、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)を好適に用いることができる。また、ゴム材料中に含まれるゴム成分としては、炭素−炭素二重結合を含有しないゴムと炭素−炭素二重結合を含有するモノマーやオリゴマー等の成分との重合体を適用することもできる。炭素−炭素二重結合を含有しないゴムとしては、例えば、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ヒドリンゴム(CO、ECO)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)などを例示することができる。炭素−炭素二重結合を含有する成分としては、例えば、ブタジエンジオールなどを例示することができる。
ゴム弾性部を構成するゴム材料は、必要に応じて、カーボンブラック等の電子導電剤、第四級アンモニウム塩等のイオン性導電剤、イオン液体などの導電剤を1または2以上含有することができる。他にも、無機フィラー、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、オイル、助剤、界面活性剤、増量剤、補強材などの各種添加剤を1または2以上含有することができる。
ゴム弾性部の厚みは、1〜10mmの範囲内とすることができる。上記導電性ロールを画像形成装置へ組み込んで用いる場合には、省スペース化等の観点から、ゴム弾性部の厚みは、1〜5mmの範囲内とすることができる。
ここで、上記導電性ロールは、ゴム弾性部の表面に、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されている。イソシアヌル酸骨格は、ゴム弾性部表面に対してN原子で結合している。具体的には、イソシアヌル酸骨格中には3つのN原子が存在している。そのため、これら3つのN原子のうちの一つのN原子が、ゴム弾性部中に含まれる炭素−炭素二重結合が変化してなる炭素−炭素単結合を構成するC原子に結合していてもよいし、2つのN原子が、ゴム弾性部中に含まれる炭素−炭素二重結合が変化してなる炭素−炭素単結合を構成するC原子に結合していてもよい。
なお、上記炭素−炭素単結合を構成するC原子のうち、N原子と結合していないC原子には、Cl原子などが結合可能である。ゴム弾性部表面にイソシアヌル酸骨格が結合されており、ゴム弾性部表面にCl原子が存在する場合には、上記イソシアヌル酸骨格は、塩素化イソシアヌル酸(トリクロロイソシアヌル酸やその誘導体等)に由来するものであるということができる。
ゴム弾性部表面に対し、イソシアヌル酸骨格が1つのN原子で結合している場合、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基は、残りの2つのN原子のうち、少なくとも一方に結合された構成を採用することができる。また、ゴム弾性部表面に対し、イソシアヌル酸骨格が2つのN原子で結合している場合、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基は、残りの1つのN原子に結合された構成を採用することができる。なお、イソシアヌル酸骨格1つに対して2つの有機基が結合されている場合、2つの有機基は、同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
有機基は、シリコーン基またはフッ素含有基、あるいは、シリコーン基およびフッ素含有基を含むことができる。シリコーン基、フッ素含有基は、有機基中に1または2以上含まれていてもよい。シリコーン基としては、例えば、ジメチルシリコーン基、ジエチルシリコーン基、ジフェニルシリコーン基などを例示することができる。フッ素含有基としては、例えば、パーフルオロアルキル基(好ましくは、炭素数1〜200)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド基等のパーフルオロアルキルアルキレンオキシド基、パーフルオロアルケニル基、フッ素基(−F)などを例示することができる。
有機基は、具体的には、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含み、かつ、炭素−炭素二重結合を有する有機化合物に由来する基とすることができる(請求項2)。なお、上記有機化合物に由来する基は、上記有機化合物中に含まれていた炭素−炭素二重結合が変化してなる炭素−炭素単結合を構成する一方のC原子において、イソシアヌル酸骨格中のN原子に結合されている基である。
この場合には、イソシアヌル酸骨格中に含まれる3つのN原子のうち、ゴム弾性部表面との結合に関与していない少なくとも1つ以上のN原子に、上記有機化合物に由来する基が結合された化学構造が含まれる。そのため、上記有機化合物に由来する基に含まれるシリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上の官能基の作用により、耐固着性を発揮することができる。
上記有機化合物に由来する基にいう有機化合物としては、化1に記載のものを好適なものとして例示することができる。
Figure 0005738125
但し、化1において、Rは−X−Xまたは−X、Xは、シリコーン基またはフッ素含有基、Xは、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)、アリル基(−CO−)、ウレタン基(−NH−CO−O−)およびアミド基(−NH−CO−)から選択される1種であり、好ましくはエステル基である。R〜Rはいずれも、水素基、アルキル基およびRから選択される1種であり、好ましくは水素基、アルキル基であり、より好ましくは水素基である。これら化1に記載の有機化合物のうち、特に好ましくは、安定性、反応性、耐固着性等の観点から、化2に記載の有機化合物(化2中、nは好ましくは1〜200の整数)、化3に記載の有機化合物である。
Figure 0005738125
Figure 0005738125
他にも、上記有機化合物に由来する基にいう有機化合物としては、化4〜化6に記載のものを好適なものとして例示することもできる。
Figure 0005738125
Figure 0005738125
Figure 0005738125
さらに、上記有機化合物に由来する基にいう有機化合物としては、化7〜化9に記載のものを例示することもできる。
Figure 0005738125
但し、化7において、Rは−X−Xまたは−X、Xは、シリコーン基またはフッ素含有基、Xは、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)、アリル基(−CO−)、ウレタン基(−NH−CO−O−)およびアミド基(−NH−CO−)から選択される1種である。R〜Rは、いずれも、水素基、アルキル基およびRから選択される1種であり、好ましくは水素基、アルキル基であり、より好ましくは水素基である。Y、Yは、シリコーン基またはフッ素含有基である。
Figure 0005738125
但し、化8において、Rは−X−Xまたは−X、Xは、シリコーン基またはフッ素含有基、Xは、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)、アリル基(−CO−)、ウレタン基(−NH−CO−O−)およびアミド基(−NH−CO−)から選択される1種である。R〜Rは、いずれも、水素基、アルキル基およびRから選択される1種であり、好ましくは水素基、アルキル基であり、より好ましくは水素基である。Yは、シリコーン基またはフッ素含有基である。
Figure 0005738125
但し、化9において、R’−X−X−X−または−X−、Xは、シリコーン基またはフッ素含有基、Xは、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)、アリル基(−CO−)、ウレタン基(−NH−CO−O−)およびアミド基(−NH−CO−)から選択される1種である。R〜R13は、いずれも、水素基、アルキル基およびRから選択される1種である。Rは−X−Xまたは−X、Xは、シリコーン基またはフッ素含有基、Xは、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)、アリル基(−CO−)、ウレタン基(−NH−CO−O−)およびアミド基(−NH−CO−)から選択される1種である。R〜R13は、好ましくは水素基、アルキル基であり、より好ましくは水素基である。Y〜Yは、シリコーン基またはフッ素含有基である。
これら化7〜化9に記載の有機化合物のうち、好ましくは、安定性、反応性、耐固着性等の観点から、化10〜化13に記載の有機化合物であるとよい。但し、化12中、R”は、シリコーン基であり、化13中、Y’は、シリコーン基である。
Figure 0005738125
Figure 0005738125
Figure 0005738125
Figure 0005738125
なお、上記導電性ロールにおけるゴム弾性部の表面構成は、XPS、NMRなどにより検出することができる。
上記導電性ロールにおいて、上記ゴム弾性部の表面粗さRzは、7〜28μmの範囲内とすることができる(請求項3)。
この場合には、上記表面粗さによる表面凹凸によりゴム弾性部の表面積が増加する。そのため、感光体等の対象物を帯電させる際にゴム弾性部表面を対象物に接地させた場合であっても、接地面に微小空隙が確保されやすい。それ故、接地時における放電領域が増大し、対象物を帯電させやすくなる。ゴム弾性部の表面粗さRzの下限値は、好ましくは、8μm、より好ましくは、9μm、さらに好ましくは、10μmである。ゴム弾性部の表面粗さRzの上限値は、好ましくは、27μm、より好ましくは、26μm、さらに好ましくは、25μmである。
なお、上記表面粗さRzは、JIS B 0601:1994に準拠して測定される十点平均粗さのことである。また、上記表面粗さRzは、導電性ロールの軸方向における中央部、両端部の3箇所につき、周方向に等間隔で3箇所、つまり、合計9箇所について測定した値の平均値である。
上記導電性ロールにおいて、上記ゴム弾性部は無機フィラーを含有しており、該無機フィラーにより上記ゴム弾性部の表面に粗さが付与された構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、無機フィラーによる表面凹凸は、ゴム成分による表面凹凸に比べ、圧縮変形し難い。そのため、上記接地時に、接地荷重によって無機フィラーによる表面凹凸が変形し難い。それ故、接地時における放電領域が維持されやすく、対象物をいっそう帯電させやすくなる。上記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。また、これら無機フィラーは、脂肪酸、脂肪酸エステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂等により表面処理されていても構わない。
上記導電性ロールは、例えば、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、POD(Print On Demand)装置等の画像形成装置の帯電ロールとして用いることができる(請求項5)。
この場合には、感光体にゴム弾性部が長期間接地された状態とされていても、ゴム弾性部が耐ヘタリ性に優れるため、スジ等の不具合のない良好な画像を得やすくなる。また、ゴム弾性部表面のタック性が低いため、トナーや外添剤がゴム弾性部表面に固着し難く、ゴム弾性部表面の汚れを抑制しやすい。それ故、ゴム弾性部表面の汚れに起因するスジ等の不具合のない良好な画像を得やすくなる。
また、上記導電性ロールは、例えば、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、POD(Print On Demand)装置等の画像形成装置の現像ロールとして用いることもできる。
この場合には、トナー層形成ブレードにゴム弾性部が長期間接地された状態とされていても、ゴム弾性部が耐ヘタリ性に優れるため、スジ等の不具合のない良好な画像を得やすくなる。また、ゴム弾性部表面のタック性が低いため、トナーや外添剤がゴム弾性部表面に固着し難く、ゴム弾性部表面の汚れを抑制しやすい。それ故、ゴム弾性部表面の汚れに起因するスジ等の不具合のない良好な画像を得やすくなる。
上記導電性ロールは、他にも例えば、帯電性を利用し、電子部品・材料等に付着した微細なダストを除去するためのクリーニングロール等としても有用である。微細なダストがタック力によってロール表面に固着したままとなり難いからである。
上記導電性ロールは、例えば次にようにして製造することができる。先ず、ゴム弾性部を形成するためのゴム組成物を準備する。次に、軸体の外周表面にゴム組成物を押出成形する。押出成形法による場合には、ゴム弾性部表面に表面凹凸を付与しやすい利点がある。特に、ゴム組成物として無機フィラーを添加したものを用いた場合には、押出成形法と無機フィラー添加効果とが相まって、ゴム弾性部表面に表面凹凸をいっそう付与しやすくなる。上記押出成形法は、具体的には、例えば、ダイスの円形口部に対して軸体を通過させながらダイスと芯金との隙間にゴム組成物を供給して押出成形を行う方法などを例示することができる。この際、軸体の通過速度を変化させたり、ゴム組成物の供給量を変化させることにより、ゴム弾性部のロール形状をクラウン形状とすることができる。
次に、(A)トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌル酸と、(B)上述の化1〜化13から選択される少なくとも1種以上の有機化合物と、(C)これら(A)、(B)成分を溶解または分散可能な溶媒とを少なくとも混合し、表面処理液を調製する。表面処理液における(A)成分の配合量[mol]/(B)成分の配合量[mol]は、1/2〜1/0.01の範囲内とすることができる。
また、(C)成分は、具体的には例えば、エーテル系溶剤(THF、ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン系溶剤(アセトン、MEK等)、アミド系溶剤(DMF、DAC、NMP等)、第三級アルコール(tert−ブチルアルコール等)、水などを例示することができる。(C)成分は、(A)成分を溶解または分散可能な溶媒と、(B)成分を溶解または分散可能な溶媒との混合溶媒とすることもできる。なお、反応性の向上、表面処理のムラを抑制する等の観点から、表面処理液は、溶媒100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜5質量部の範囲内とすることができる。
次に、ゴム弾性部の表面に表面処理液を接触させる。ゴム弾性部の表面に表面処理液を接触させる方法は、特に限定されるものではなく、ディッピング法、ロールコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
上記表面処理時における処理温度は、反応性の向上、表面処理のムラを抑制する等の観点から、好ましくは20〜100℃の範囲内、より好ましくは25〜70℃の範囲内とすることができる。また、上記表面処理時における接触時間は、十分な表面処理効果を得る、生産性等の観点から、好ましくは10秒〜1時間の範囲内、より好ましくは、30秒〜5分の範囲内とすることができる。
次に、表面処理後のゴム弾性部を必要に応じて洗浄し、乾燥させる。洗浄を行う場合、洗浄時間は、未反応の表面処理液を十分に洗い流し、良好な洗浄効果を得る、生産性等の観点から、好ましくは10秒〜10分の範囲内とすることができる。
以上のように、炭素−炭素二重結合を含有するゴム材料から構成されるとともに導電性を示すゴム弾性部の表面に、(A)塩素化イソシアヌル酸と、(B)上述の有機化合物と、(C)(A)、(B)成分を溶解または分散可能な溶媒とを少なくとも混合して調製された表面処理液を接触させる工程を経ることにより、ゴム弾性部の表面にイソシアヌル酸骨格と、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上とを有する上記導電性ロールを得ることができる。
実施例に係る導電性ロールについて、図面を用いて具体的に説明する。
実施例に係る導電性ロールの概略構成を図1、図2を用いて説明する。図1、図2に示すように、導電性ロール1は、炭素−炭素二重結合を含有するゴム材料から構成されるとともに導電性を示すゴム弾性部2を有している。なお、本例では、ゴム弾性部2は、芯金3の外周に沿って層状に形成されている。ゴム弾性部2の表面は、ロール表面に露出しており、樹脂層は形成されていない。ゴム弾性部2の表面には、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されている。
図3に実施例に係る導電性ロールのゴム弾性部表面の一例を模式的に示す。図3(a)は、ゴム弾性部2の表面にイソシアヌル酸骨格が2つのN原子で結合し、1つのイソシアヌル酸骨格に対して1つの有機基が結合している構成を示している。図3(b)は、ゴム弾性部2の表面にイソシアヌル酸骨格が1つのN原子で結合し、1つのイソシアヌル酸骨格に対して1つの有機基が結合している構成を示している。図3(c)は、ゴム弾性部2の表面にイソシアヌル酸骨格が1つのN原子で結合し、1つのイソシアヌル酸骨格に対して2つの有機基が結合している構成を示している。なお、ゴム弾性部2の表面には、塩素原子も結合されている。
次に、各種条件の異なる導電性ロールの試料を作製し、評価を行った。以下にその実験例について説明する。なお、作製した試料の導電性ロールは、電子写真方式を採用する画像形成装置としてのプリンタに組み込まれる帯電ロールである。
(実験例)
<ゴム弾性部形成材料の調製>
ゴム弾性部の材料として、以下の材料を準備した。
・ゴム成分
イソプレンゴム(IR)[日本ゼオン(株)製、「Nipol IR2200」]
ブタジエンゴム(BR)[日本ゼオン(株)製、「Nipol BR1220」]
・導電剤
カーボンブラック(電子導電剤)[キャボットジャパン(株)製、「ショウブラックN762」]
・酸化亜鉛[堺化学工業(株)製、「酸化亜鉛2種」]
・ステアリン酸[日本油脂(株)製、「ステアリン酸さくら」]
・硫黄[鶴見化学工業(株)製、「粉末硫黄」]
・加硫促進剤
チアゾール系加硫促進剤[大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM」]
チラウム系加硫促進剤[大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーTRA」]
・無機フィラー粒子
合成炭酸カルシウム[白石カルシウム(株)製、「白艶華CCR」、平均粒径0.1μm]
重質炭酸カルシウム[白石カルシウム(株)製、「ホワイトンB」、平均粒径3.6μm]
シリカ[東ソー・シリカ(株)製、「NipsilLP」、平均粒径9μm]
準備した各材料を、表1に示す配合割合(質量部)となるように秤量した。秤量した各材料を50℃に温度調節した密閉型ミキサーを用いて10分間混練し、ゴム弾性部形成材料(1)〜(7)を調製した。
Figure 0005738125
<表面処理液の調製>
表面処理液の材料として、以下の材料を準備した。
・トリクロロイソシアヌル酸[東京化成工業(株)製]
・C=C結合含有シリコーンオイル[信越化学工業(株)製、「X−22−174DX」](上述した化2に記載の有機化合物であって、重量平均分子量が約4000に相当するもの)
・パーフルオロヘキシルエチレン(C=C結合含有)
・tert−ブチルアルコール(溶媒)
・酢酸エチル(溶媒)
準備した各材料を、表2に示す配合割合(質量部)となるように秤量した。秤量した各材料をミキサーを用いて混合することにより、表面処理液(1)〜(3)を調製した。なお、準備したC=C結合含有シリコーンオイル単体を表面処理液(4)とした。
Figure 0005738125
<樹脂層形成材料の調製>
フッ素変性アクリレート樹脂[DIC(株)製、「ディフェンサTR230K」]100質量部と、カーボンブラック[ケッチェンブラック・インターナショナル(株)製、「ケッチェンブラックEC300J」]8質量部と、メチルエチルケトン100質量部とを混合することにより、樹脂層形成材料(1)を調製した。また、樹脂層形成材料(1)の調製において、さらに、粗さ形成粒子としてアクリル樹脂粒子[ガンツ化成(株)製、「GM1001」、平均粒径10μm]を添加した以外は同様にして、樹脂層形成材料(2)を調製した。
<帯電ロール試料の作製>
直径6mm、快削鋼(SUM)製の芯金の外周に、押出成形装置を用いて、調製したゴム弾性部形成材料をクラウン形状に押出成形した。具体的には、押出成形装置のダイスの円形口部に対して上記芯金を通過させながら、ダイスと芯金との隙間に表3に示す所定のゴム弾性部形成材料を供給することにより、芯金の外周にゴム弾性部前駆体を押出成形した。この押出成形の際、芯金の通過速度を変化させ、芯金の長手方向に対するゴム弾性部形成材料の付着量を制御することにより、ゴム弾性部前駆体の形状をクラウン形状とした。次いで、これを180℃で30分間加熱処理した。これにより芯金の外周に所定のゴム弾性部(厚み2mm)が形成されたロールを作製した。
次に、得られたロールを、25℃に温度調節した所定の表面処理液中に30秒間浸漬させた。次いで、表面処理液から分離したロールを、25℃に温度調節した酢酸エチルにより30秒間洗浄した。次いで、洗浄後のロールを100℃で10分間乾燥させた。以上により、試料1〜試料10の帯電ロールを作製した。
また、試料1〜試料10の帯電ロールの作製において、ゴム弾性部の表面に表面処理液による表面処理を施すことなく樹脂層形成材料(1)、(2)をロールコート法により塗工した後、130℃で30分間乾燥することにより、ゴム弾性部の表面に樹脂層(厚み15μm)を形成した試料11、試料12の帯電ロールを作製した。
また、試料1〜試料10の帯電ロールの作製において、表面処理液による表面処理を施す前のゴム弾性部を有するロールを、試料13の帯電ロールとした。
<ロール表面の表面粗さ測定>
JIS B 0601:1994に準拠し、試料1〜試料10および試料13の帯電ロールについては、ロール表面であるゴム弾性部表面の表面粗さRzを測定した。試料11、12の帯電ロールについては、ロール表面である樹脂層表面の表面粗さRzを測定した。なお、上記表面粗さRzは、帯電ロールの軸方向における中央部、両端部の3箇所につき、周方向に等間隔で3箇所、つまり、合計9箇所について測定した値の平均値とした。
<ロール表面の初期摩擦係数>
摩擦計[協和界面化学(株)製、「Triboster TS501」]を用い、接触子の形状:直径3mmの鋼球、荷重:100g、移動速度:1cm/秒、回数:3回という条件で、作製した帯電ロール試料のロール表面(試料1〜試料10および試料13はゴム弾性部表面、試料11、12は樹脂層表面)の初期摩擦係数を測定した。また、評価用プリンタ[日本ヒューレット・パッカード(株)製、「LaserJet3800」]のカートリッジ内に帯電ロール試料をセットし、32.5℃×85%RH環境下で灰色25%画像を1万枚出力した。その後、帯電ロール試料を取り出し、上記と同様にして、ロール表面(試料1〜試料10および試料13はゴム弾性部表面、試料11、12は樹脂層表面)の耐久後摩擦係数を測定した。
<耐ヘタリ性>
評価用プリンタ[日本ヒューレット・パッカード(株)製、「LaserJet3800」]のカートリッジ内に帯電ロール試料をセットし、その状態にて40℃×95%RH環境下に10日間放置し、その後、15℃×10%RH環境下で灰色25%画像を出力した。得られた画像中に、帯電ロールの周回のピッチで、帯電ロールに生じた軸方向のスジ状のヘタリ(セット跡)に起因する画像スジが認められなかった場合を耐ヘタリ性に優れるとして「○」とした。得られた画像中に、上記画像スジが認められた場合を耐ヘタリ性に劣るとして「×」とした。
<耐トナー固着性>
評価用プリンタ[日本ヒューレット・パッカード(株)製、「LaserJet3800」]のカートリッジ内に帯電ロール試料をセットし、32.5℃×85%RH環境下で灰色25%画像を出力した。その後、さらに灰色25%画像を1万枚出力した。
上記帯電ロール試料をセットした直後に得られた初期画像中に、周方向の画像スジが認められなかった場合を、帯電ロール表面にトナー固着による汚れがなく、初期の耐トナー固着性に優れるとして「○」とした。上記初期画像中に、周方向の画像スジが認められた場合を、帯電ロール表面にトナー固着による汚れがあり、初期の耐トナー固着性に劣るとして「×」とした。また、上記1万枚の画像を出力した直後に得られた耐久後の画像中に、周方向の画像スジが認められなかった場合を、帯電ロール表面にトナー固着による汚れがなく、耐久後の耐トナー固着性に優れるとして「○」とした。上記耐久後の画像中に、周方向の画像スジが認められた場合を、帯電ロール表面にトナー固着による汚れがあり、耐久後の耐トナー固着性に劣るとして「×」とした。なお、ここでいう画像スジは、帯電ロールと感光ドラムとが連れ回りすることによってロール周方向にスジ状の汚れムラが生じ、これが印刷画像に現れたものをいう。
<帯電性>
プリンタ[日本ヒューレット・パッカード(株)製、「LaserJet3800」]のカートリッジ内に帯電ロール試料をセットし、15℃×10%RH環境下で灰色25%画像を出力した。そして、帯電不良に起因してロール軸方向に発生するスジ(横スジ)の程度を出力した画像から調査した。
具体的には、得られた画像中に、帯電ロールのロール軸方向に画像スジが認められなかった場合を、帯電性に優れるとして「A」とした。得られた画像中に、帯電ロールのロール軸方向に画像スジが認められるものの許容範囲内であった場合を、許容可能な帯電性を有するとして「B」とした。得られた画像中に、帯電ロールのロール軸方向に画像スジが顕著に認められた場合を、帯電性に劣るとして「C」とした。
<画像濃度ムラ>
プリンタ[日本ヒューレット・パッカード(株)製、「LaserJet3800」]のカートリッジ内に帯電ロール試料をセットし、15℃×10%RH環境下で灰色25%画像を出力した。
得られた画像中に、画像濃度ムラが認められなかった場合を「A」とした。得られた画像中に、画像濃度ムラが認められるものの許容範囲内であった場合を「B」とした。得られた画像中に、画像濃度ムラが顕著に認められた場合を「C」とした。なお、画像形成装置に組み込まれる帯電ロールでは、ロール表面の表面粗さが過度に大きいと、感光ドラムとの接地性が不均一になり、その結果、帯電性が不均一になって、画像濃度ムラが発生しやすくなる。そのため、ここでは、参考データとして画像濃度ムラの調査を行ったものである。
表3に作製した帯電ロール試料の詳細な構成、評価結果をまとめて示す。
Figure 0005738125
表3によれば、以下のことが分かる。すなわち、試料11、試料12の帯電ロールは、ゴム弾性部の表面に非架橋の樹脂材料からなる樹脂層が積層されている。そのため、樹脂層がヘタリやすく、ロール全体としての耐ヘタリ性に劣る。
試料13の帯電ロールは、ゴム弾性部表面に樹脂層を有していないため、耐ヘタリ性には問題がない。しかしながら、ゴム弾性部表面が特定の表面処理液によって表面処理されていない。そのため、ゴム弾性部表面にシリコーン基やフッ素含有基、イソシアヌル酸骨格を有することがない。それ故、優れた耐トナー固着性を発揮することができない。
試料9の帯電ロールは、シリコーン基やフッ素含有基を含む有機化合物を含有せず、トリクロロイソシアヌル酸だけを含有する表面処理剤(3)によりゴム弾性部表面が表面処理されたものである。そのため、ゴム弾性部表面にシリコーン基やフッ素含有基を有することがない。それ故、優れた耐トナー固着性を発揮することができない。
試料10の帯電ロールは、トリクロロイソシアヌル酸を含有せず、シリコーン基を含む有機化合物だけを含有する表面処理剤(4)によりゴム弾性部表面が表面処理されたものである。そのため、ゴム弾性部表面にイソシアヌル酸を有することがない。それ故、優れた耐トナー固着性を発揮することができない。
ここで、試料1〜試料8の帯電ロールにおけるゴム弾性部表面について、XPSによる分析を行ったところ、ゴム弾性部の表面に、ケイ素(Si)またはフッ素(F)、塩素(Cl)、窒素(N)が存在することが確認された。また、NMRによる分析を行ったところ、ゴム弾性部の表面にシリコーン基またはパーフルオロヘキシル基、イソシアヌル酸骨格が存在することが確認された。さらに、ゴム弾性部表面に上記表面処理液による表面処理を施している点や、上記耐久試験によっても耐トナー固着性が発揮されている点等を考慮すると、ゴム弾性部の表面には、シリコーン基またはパーフルオロヘキシル基を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されているといえる。
このような試料1〜試料8の帯電ロールは、耐ヘタリ性に優れるとともに、ゴム弾性部表面にトナーが固着し難く、耐固着性に優れることが確認できた。また、試料1〜試料8の帯電ロールは、画像形成装置に用いる帯電ロールとして必要な帯電性を有し、画像濃度ムラなどの不具合も生じ難いといえる。
さらに、試料1〜試料8の帯電ロールを比較すると次のことが分かる。試料1〜試料4、試料8の帯電ロールは、いずれもゴム弾性部中に無機フィラーを含んでおり、表面凹凸が導入されている。そして、ゴム弾性部の表面粗さRzは、7〜28μmの範囲内とされている。そのため、帯電性に上記表面粗さによる表面凹凸によりゴム弾性部の表面積が増加し、感光体を帯電させる際にゴム弾性部表面を感光体に接地させた場合であっても、接地面に微小空隙が確保されやすい。それ故、接地時における放電領域が増大し、感光体を均一に帯電させやすいことがわかる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
1 導電性ロール
2 ゴム弾性部
3 軸体

Claims (5)

  1. 炭素−炭素二重結合を含有するゴム材料から構成されているとともに導電性を示すゴム弾性部を有し、該ゴム弾性部の表面がロール表面に露出している導電性ロールであって、
    上記ゴム弾性部の表面に、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含む有機基がイソシアヌル酸骨格を介して結合されていることを特徴とする導電性ロール。
  2. 請求項1に記載の導電性ロールにおいて、
    上記有機基は、シリコーン基およびフッ素含有基から選択される1種または2種以上を含み、かつ、炭素−炭素二重結合を有する有機化合物に由来する基であることを特徴とする導電性ロール。
  3. 請求項1または2に記載の導電性ロールにおいて、
    上記ゴム弾性部の表面粗さRzが、7〜28μmの範囲内にあることを特徴とする導電性ロール。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ロールにおいて、
    上記ゴム弾性部は無機フィラーを含有しており、該無機フィラーにより上記ゴム弾性部の表面に粗さが付与されていることを特徴とする導電性ロール。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ロールは、電子写真方式を採用する画像形成装置の帯電ロールとして用いられることを特徴とする導電性ロール。
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