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JP5730123B2 - 水性エマルション - Google Patents

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JP5730123B2 JP2011107008A JP2011107008A JP5730123B2 JP 5730123 B2 JP5730123 B2 JP 5730123B2 JP 2011107008 A JP2011107008 A JP 2011107008A JP 2011107008 A JP2011107008 A JP 2011107008A JP 5730123 B2 JP5730123 B2 JP 5730123B2
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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を分散剤とし、アクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を含む重合体を分散質とする水性エマルションに関し、さらに詳しくは、金属などに対する濡れ性に優れた水性エマルションに関する。
水性媒体中での乳化重合は、通常、分散剤の存在下で行わ、かかる分散剤としては、界面活性剤や水溶性高分子が用いられており、特に、得られた水性エマルションを乾燥皮膜とした際の耐溶剤性が求められる場合には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)が好適に用いられる。
さらに、種々の官能基を側鎖に有する変性PVAを用いることで分散質に対する保護コロイド力を高め、乳化重合時の安定性、および得られた水性エマルションの各種安定性を向上させる検討が広く行われている。
中でも、乳化重合時の安定性に優れ、機械安定性、凍結安定性、高温での長期放置安定性、および耐水接着性に優れた水性エマルションを得る方法として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するPVA系樹脂を分散剤として乳化重合する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
特開2006−124682号公報
しかしながら、PVA系樹脂を分散剤として得られた水性エマルションは、一般に金属に対する濡れ性が不十分であり、特許文献1に記載された方法で得られた水性エマルションも、これを金属表面に塗布した場合、はじきによる塗工不良が発生するという問題点があった。
すなわち、本発明の目的は、PVA系樹脂を分散剤とする水性エマルションであって、金属表面への濡れ性に優れた水性エマルションを提供することにある。
なお、水性の塗工液に対し、疎水性表面に対する濡れ性改善のためアルコールを配合する方法は公知であるが、水性エマルションにアルコールを配合すると、エマルションの安定性が低下し、凝集物が発生しやすくなる傾向がある。特にPVA系樹脂を分散剤とする水性エマルションでは、PVA系樹脂自体がアルコールに対する溶解性が小さいため、アルコールの配合によってPVA系樹脂が析出し、保護コロイド力が低下することは容易に予測できる。
よって、水性エマルション、特にPVA系樹脂を分散剤とする水性エマルションに対してアルコールを配合することは、エマルションの安定性の観点から、通常は行われない。
本発明は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造を側鎖に有するポリビニルアルコール系樹脂を含む分散剤と、アクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体を分散質として含有し、炭素数1〜4のアルコールを水性エマルション中の不揮発分に対して10〜40重量%含有する水性エマルションによって、本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
Figure 0005730123
[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
本発明の水性エマルションは、金属表面に対する濡れ性に優れることから、金属類に対する塗料、コーティング剤、保護皮膜形成剤、接着剤などの材料として好適に用いることができる。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の水性エマルションは、特定の1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を含む分散剤と、アクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体を分散質として含有し、炭素数1〜4のアルコールを水性エマルション中の不揮発分に対して10〜40重量%含有することを特徴とする水性エマルションである。
以下、各順に説明する。
〔PVA系樹脂〕
まず、本発明の水性エマルションにおいて、分散剤として用いられるPVA系樹脂について説明する。
本発明の樹脂組成物に用いられるPVA系樹脂は、下記一般式(1)で示される構造単位を有するもので、一般式(1)におけるR、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子または有機基を示すものである。
Figure 0005730123
特に、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のR〜R、及びR〜Rがすべて水素原子であり、Xが単結合であるものが最も好ましく、下記一般式(1’)で表わされる構造単位を有するPVA系樹脂が好適に用いられる。
Figure 0005730123
かかる一般式(1)で表わされる構造単位中のR〜R、及びR〜Rは、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよく、その有機基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、かかる有機基は、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の官能基を有していてもよい。
また、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位中のXは熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合であるものが最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよく、かかる結合鎖としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)が挙げられる。中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CHOCH−が好ましい。
本発明で用いられるPVA系樹脂の製造法としては、特に限定されないが、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法や、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱炭酸する方法や、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される化合物との共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法が好ましく用いられる。
Figure 0005730123
Figure 0005730123
Figure 0005730123
上記一般式(2)、(3)、(4)中のR、R、R、X、R、R、Rは、いずれも一般式(1)の場合と同様である。また、R及びRはそれぞれ独立して水素原子またはR−CO−(式中、Rはアルキル基である)である。R10及びR11はそれぞれ独立して水素原子または有機基である。
(i)、(ii)、及び(iii)の方法については、例えば、特開2006−95825に説明されている方法を用いることができる。
なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱い性に優れるという点から、(i)の方法において、一般式(2)で表わされる化合物として3,4−ジアシロキシ−1−ブテンを用いることが好ましく、特に3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは(ii)の方法で用いられる一般式(3)で表される化合物であるビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、これはビニルエチレンカーボネートのCx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、(iii)の方法で用いられる一般式(4)で表される化合物である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランのCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合度が上がりにくくなったり、重合速度低下の原因となることがないことを示すものである。
また、かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体をケン化する際に発生する副生物が、ビニルエステル系モノマーとして多用される酢酸ビニルに由来する構造単位からケン化時に副生する化合物と同一であり、その後処理や溶剤回収系に敢えて特別な装置や工程を設ける必要がなく、従来からの設備を利用出来るという点も、工業的に大きな利点である。
なお、上記の3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、例えば、WO00/24702、USP5,623,086、USP6,072,079などに記載されたエポキシブテン誘導体を経由する合成方法や、1,4−ブタンジオール製造工程の中間生成物である1,4−ジアセトキシ−1−ブテンを塩化パラジウムなどの金属触媒を用いて異性化する反応によって製造することができる。
また、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。
なお、(ii)や(iii)の方法によって得られたPVA系樹脂は、脱炭酸あるいは脱アセタール化が不充分であると、側鎖にカーボネート環あるいはアセタール環が残存し、PVA系樹脂製造時の加熱乾燥工程にてPVA系樹脂が架橋し、水等に溶解した際に不溶物が発生する場合がある。
よって、かかる点からも、(i)の方法によって得られたPVA系樹脂が本発明においては好適に用いられる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また上述のモノマー(ビニルエステル系モノマー、一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物)の他に、水溶性や樹脂物性に大幅な影響を及ぼさない範囲、具体的には10モル%以下であれば、共重合成分として、エチレンやプロピレン等のαーオレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、などが共重合されていてもよい。
PVA系樹脂に含まれる1,2−ジオール構造単位の含有量は、通常、1〜15モル%であり、特に2〜12モル%、さらに5〜10モル%のものが好ましく用いられる。かかる含有量が低すぎると、水性エマルションの安定性が不足したり、アルコールとの混和性が不十分となる場合があり、高すぎると、金属表面に対する濡れ性が不足する傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、PVA系樹脂を完全にケン化したもののH−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
本発明で用いられるPVA系樹脂のケン化度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、80〜100モル%であり、特に90〜99.9モル%、殊に98〜99.8モル%のものが好ましく用いられる。かかるケン化度が低すぎると、水溶性が不足したり、乳化重合時の分散剤として用いた場合に、重合安定性が不十分となる場合がある。
また、PVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常、50〜3000であり、特に100〜1500、殊に200〜500のものが好ましく用いられる。
かかる平均重合度が小さすぎると、充分な保護コロイド力が得られず、乳化重合時、および水性エマルションとして各種安定性が不足する場合があり、逆に大きすぎると、得られた水性エマルションの粘度が高くなりすぎ、これを使用する際の作業性が悪くなる傾向がある。
また、本発明で用いられるPVA系樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよく、その場合は、上述のPVA系樹脂以外の未変性PVA、あるいは各種変性PVA系樹脂との混合物でもよいが、混合物を用いる場合には、重合度、ケン化度、1,2−ジオール構造単位の含有量の平均値が上述の範囲内であることが好ましい。
〔重合体〕
次に、本発明の水性エマルションにおける分散質、すなわちアクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体について説明する。
かかる重合体は、本発明の効果が最大限に得られる点で、アクリル系単量体を主体として重合して得られた重合体である。なお、かかる主体とは、通常、用いる単量体の50モル%以上を意味し、特に70モル%以上のものが好ましく用いられる。
かかるアクリル系単量体は、置換されていてもよいアクリル酸、メタアクリル酸、およびそれらの誘導体を含み、その具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、などのアクリル酸、およびそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、などのメタクリル酸およびそのエステル類が挙げられる。
また、上記のアクリル系単量体は、それぞれ単独で重合に用いることも可能であるが、得られる重合体のガラス転移点やその他の特性をコントロールする目的で2種類以上混合して用いたり、さらにスチレン系単量体等の他の単量体を併用することも好ましい実施態様である。
〔アルコール〕
次に、本発明の水性エマルションに含有されるアルコールについて説明する。
本発明に用いられるアルコールは、炭素数が1〜4のものであり、特に炭素数が2〜3のアルコールが好適に用いられる。
その具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができ、特にエタノール、イソプロパノールが最も効果的である。
本発明におけるアルコールの含有量は、水性エマルション中の不揮発分に対して10〜40重量%であり、特に15〜35重量%、殊に20〜30重量%の範囲が好ましく用いられる。
かかる含有量が少なすぎると、金属に対する充分な濡れ性が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、水性エマルションの安定性が損なわれる傾向がある。
かかるアルコールを水性エマルションに配合する時期については、特に限定されるものではなく、乳化重合前、重合時、重合後のいずれも可能であるが、アルコールの種類によっては乳化重合時に存在すると連鎖移動剤として働き、所望の重合度の重合体が得られない場合があるため、乳化重合の終了以降に配合することが望ましい。
〔水性エマルション〕
次に、本発明の水性エマルションについて説明する。
本発明の水性エマルションは、上述の、一般式(1)で表される構造単位を有するPVA系樹脂を分散剤とし、上述の重合体を分散質として含有し、さらに炭素数1〜4のアルコールを水性エマルション中の不揮発分に対して10〜40重量%含有するものである。
水性エマルションを得るにあたっては、乳化重合、後乳化方法等の方法があり、いずれの方法を用いることも可能であるが、小粒径で均一なエマルションを容易に得ることができる乳化重合法が好ましく用いられる。また、かかる乳化重合を実施するに当たっては、
イ)水、PVA系樹脂及び重合触媒の存在下にアクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する通常の乳化重合法、ロ)水、PVA系樹脂及び重合触媒の存在下に、アクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体をPVA系樹脂の水溶液に混合分散した分散液(プレエマルション)を一時又は連続的に添加して、加熱、撹拌する乳化重合法が実施し得る。
かかる乳化重合法において、分散剤として用いられる上述のPVA系樹脂の使用量としては、単量体の種類や濃度等によって最適範囲が異なるため、適宜調整する必要はあるが、通常、分散質に対して0.1〜100重量%であり、特に1〜20重量%、殊に3〜10重量%の範囲が好適に用いられる。
かかる使用量が少なすぎると、乳化重合時や、水性エマルションとした後に安定な乳化状態で維持することが困難となり、逆に多すぎると水性エマルションの粘度が高くなり、塗工等の作業性が低下する傾向がある。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アセチルパーオキサイド、ブチルパーオキサイドなどの過酸化物、およびこれらの過酸化物と酒石酸、鉄塩、L−アスコルビン酸などの還元剤とを組合わせたレドックス系重合開始剤が用いられる
重合開始剤の添加方法としては、特に制限はなく、初期に一括添加する方法や重合の経過に伴って連続的に添加する方法等を採用することができる。
かかる乳化重合においては、分散安定剤として上述のPVA系樹脂を用いるが、これとともに、他の水溶性高分子や界面活性剤を併用することもできる。
水溶性高分子としては、未変性PVAや、上述のPVA系樹脂以外の各種変性PVA系樹脂;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン等の天然物;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどが挙げられる。
また、界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−アルキルエーテル型、ポリオキシエチレン−アルキルフェノール型、ポリオキシエチレン−多価アルコールエステル型、多価アルコールと脂肪酸とのエステル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤;高級アルコール硫酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
このようにして得られた水性エマルションには、上述の通り、さらにアルコールを配合して本発明の水性エマルションが得られるわけであるが、その他にも、用途や使用目的等に応じて顔料、分散剤、消泡剤、油剤、粘性改質剤、粘着付与剤、増粘剤、保水剤、繊維柔軟剤、平滑剤、帯電防止剤等、各種用途に応じた添加剤を適宜混合することができる。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
〔PVA系樹脂の製造〕
まず、酢酸ビニル1400部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン224部(8モル%対仕込み酢酸ビニル)、メタノール426部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.255モル%(対仕込み酢酸ビニル)を準備した。
次いで、還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応缶に、メタノールとAIBNの全量、および酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの10%を投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの残部(90%)を9時間かけて滴下し、酢酸ビニルの重合率が90%となった時点でm−ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、上記メタノール溶液を濃度50%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。粘度上昇を確認後に水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して4ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの5当量添加し、濾別、メタノールで充分洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ99モル%であり、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ300であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は1H−NMR(内部標準物質;テトラメチルシラン)で測定して算出したところ8モル%であった。
〔水性エマルションの製造〕
攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサイズのステンレス製反応缶に、得られたPVA系樹脂の6.5%水溶液108部を仕込み、反応缶を80℃に加熱して、ここに、予め混合しておいたメタクリル酸メチル4.5部、アクリル酸n−ブチル5.5部を添加して、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液1.3部を用いて、初期重合反応を1時間行った。次いで、予め混合しておいたメタクリル酸メチル 40.5部、アクリル酸n−ブチル49.5部を反応缶に4時間に渡って滴下して、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム2.5部をさらに加えながら滴下重合を進行させた。滴下終了後に重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム0.4部をさらに加え同温度で1時間熟成させた。その後50℃へ冷却し10%tert−ブチルヒドロペルオキシド水溶液0.9部および10%アスコルビン酸水溶液1.3部を加え1時間熟成させた後室温まで冷却し、不揮発分50%の水性エマルションを得た。この時の水性エマルションはpH2.5であった。
得られた水性エマルションに対し、全量の10重量%、すなわち不揮発分に対して20重量%のイソプロパノール(IPA)を配合し、5分間撹拌混合して、本発明の水性エマルションを得た。
〔アルコール混和安定性〕
得られた水性エマルションを、ナイロンメッシュ(125メッシュ)でろ過し、ろ物を流水で洗浄した後、105℃で3時間乾燥し重量を測定した。ろ過に用いた水性エマルション中の不揮発分重量に対するナイロンメッシュろ物の重量から、凝集物量(重量%)を算出した。結果を表1に示す。
[金属表面濡れ性]
得られた水性エマルションを30μmのアプリケーターを用いアルミ板(日本テストパネル株式会社製、A105OP)に塗布し、塗布状態を目視観察し、以下の基準により判定した。結果を表1に示す。
○:均一に塗布されている
×:はじきによる塗布不良部分が認められた
実施例2、比較例1
実施例1において、イソプロパノール(IPA)の配合量を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様に水性エマルションを製造し、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例3〜4、比較例2
実施例1において、アルコールとしてエタノール(EtOH)を用い、その配合量を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様に水性エマルションを製造し、同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例3
〔界面活性剤を用いた水性エマルションの製造〕
攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサイズのステンレス製反応缶に、エーテルサルフェート型反応性界面活性剤(花王株式会社製「ラテムルPD−104」)の1%水溶液61部を仕込み、反応缶を80℃に加熱して、ここに、予め混合しておいたメタクリル酸メチル4.5部、アクリル酸n−ブチル5.5部、同界面活性剤の5.3%水溶液4.5部、過硫酸アンモニウム0.02部を添加して、初期重合反応を1時間行った。次いで、予め混合しておいたメタクリル酸メチル40.5部、アクリル酸n−ブチル49.5部、同界面活性剤の5.3%水溶液40.7部、過硫酸アンモニウム0.18を反応缶に4時間に渡って滴下して、滴下重合を進行させた。滴下終了後に同温度で1時間熟成させ、その後冷却し、不揮発分50%の水性エマルションを得た。この時の水性エマルションはpH2.4であった。
得られた水性エマルションに対し、全量の5重量%、すなわち不揮発分に対して10重量%のイソプロパノール(IPA)を配合し、5分間撹拌混合して、アルコール含有水性エマルションを得た。
かかる水性エマルションを用い、実施例1と同様にアルコール混和安定性を評価した。結果を表1に示す。
比較例4
未変性のPVAを分散剤とするエチレン−酢酸ビニル樹脂系エマルション(日本合成化学工業社製「LDM−1871」)に対し、その不揮発分に対して10重量%のイソプロパノール(IPA)を配合し、5分間撹拌混合して、アルコール含有水性エマルションを得た。
かかる水性エマルションを用い、実施例1と同様にアルコール混和安定性を評価した。結果を表1に示す。
[表1]
Figure 0005730123
上記結果から、本発明の水性エマルションは、分散剤としてPVA系樹脂を使用しているにもかかわらず、アルコールを配合しても凝集物が生じることはなく、また、金属表面に対する濡れ性は非常に優れたものであった。
一方、アルコールの配合量が少ない比較例1、および2では、充分ない金属表面に対する濡れ性が得られず、また、分散剤として界面活性剤、および未変性PVAを用いた水性エマルションである比較例3、および4は、アルコールを配合することによって凝集物の発生が認められた。
本発明の水性エマルションは、PVA系樹脂を分散剤とするため、その乾燥皮膜は耐溶剤性に優れ、乳化重合時の安定性、機械安定性などの各種安定性に優れることに加え、金属表面に対する濡れ性に優れることから、金属類に対する塗料、コーティング剤、保護皮膜形成剤、接着剤などの材料として好適であり、産業上、極めて有用である。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む分散剤と、アクリル系単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体を分散質として含有し、炭素数1〜4のアルコールを水性エマルション中の不揮発分に対して10〜40重量%含有する水性エマルション。
    Figure 0005730123
    [式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
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