JP5729000B2 - リチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式 - Google Patents
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Description
一方、リチウムイオン電池では、その電池内部抵抗が、電池温度,周囲温度の影響,使用期間に係わるカレンダー寿命,充放電回数に係わるサイクル寿命等の変化によって変化するが、電解液を有しないことから電池内部抵抗の時系列的変化が、鉛電池などの場合に比べて比較的把握し易いことが知られている。
つまり、リチウムイオン電池の内部抵抗は電池温度によって増減するとともに、使用期間に係わるカレンダー寿命,充放電回数に係わるサイクル寿命により増加して、充放電動作特性すなわちI−V特性が時間変化するが、電解液を有しないことから鉛電池などの場合に比べて電池内部抵抗の時系列的変化の把握が比較的容易であるにも関わらず、このように時々刻々変化する動作状態の監視をするものが見当たらないのが現状である。
この請求項1の発明においては、充放電動作時の警報レベル,警告レベルをそれぞれ設定しておき、充放電動作時に実電圧が前記警報レベルに達したときは充放電電流を低下させるように操作者に警報を発するとともに、放電動作時に実電圧が前記警告レベルに達したときは放電を停止させるように操作者に警告を発することができる(請求項2の発明)。
また、請求項1〜3の発明においては、充放電動作時には、所定の時間間隔で計測した充放電電流,電池電圧を連続表示するとともに、充電電流と充電時間との積で示される充電電流時間積と、放電電流と放電時間との積で示される放電電流時間積と、充電電流時間積から放電電流時間積を減じた残存電流時間積とを表示可能にすることができる(請求項4の発明)。
また、放電動作の場合に、電池内部抵抗の増加により電池電圧VBiが低下して警報(制限)レベルL1に達したときには警報を発して放電電流の抑制を促し、警告(保護)レベルL2に達したときには警報を発して放電動作の停止を促す。
一方、充電動作の場合には、電池電圧VBiが電圧制限(警報)レベルL3を超えないように充電電流IBiを抑制して過充電を防止する。なお、充電電流=0として電圧VBi=起電圧eBを監視することで、充電状態を把握できるようにする。
1)温度変化と内部抵抗RB変化
図2(イ)に電池の内部回路図、同(ロ)に電池の内部抵抗変化例を示す。
いま、電池動作の基準温度をT5として、T5より低い温度T4→T3→T2→T1→T0へと変化すると内部抵抗RBは増加し、T5より高い温度T6→T7→T8→T9→T10へと変化すると内部抵抗RBは増加する。このように、電池内部抵抗RBは温度によって図示のように変化する。
内部抵抗RBは使用時間に関するカレンダー寿命,充電回数に関するサイクル寿命によって増加する。つまり、図2(ロ)のように使用初期A⇒使用中期B⇒使用終期Cへと内部抵抗は増加する。内部抵抗が増加すると、充放電電流によるI−V特性の傾斜が増加するとともに、電池内部損失が増加することによって電池内部温度は上昇する。これは、図2(イ)のように、電池電流をIB、電池内部抵抗をRBとすると電池内部損失PBWが、PBW=IB2×RBで表わされることによる。
また、電池の充放電動作が警報(制限)レベルに達すれば警報を発して充放電電流の抑制を促し、さらに警告(保護)レベルに達すれば警告を発して充放電電流の停止を促して、電池寿命の延命,電池破損の防止を図るようにする。
電池から負荷回路を切り離した状態で、高インピーダンス電圧計を用いて電池端子電圧を計測すると、満充電状態,放電終止状態(空)のいずれであっても電池起電圧eBに変わりはなく、この電圧をオープン電圧という。しかし、電池に僅かな放電負荷(5〜10%)を接続すると電池電圧は急激に低下し、あたかも起電圧が低下したように観測される。これは、放電深度による内部抵抗の増加によって、電池内部電圧降下が増加したために発生する現象で、起電圧が低下したためではない。
I−V特性例を図3A,3Bに示す。
すなわち、僅かな放電負荷(5−10%)に流れる放電電流IBiにより、電池電圧eBf=VB=100%から、I−V特性の直線沿線上の放電電流0の起電圧eBe1,eBe2(図3A参照)と近似しても、実用上の問題はないと考えられる。
以上のことを前提として、以下、放電動作時における図1の動作について、図3A,3B等を参照しながら説明する。
内部抵抗設定部1には、電池内部抵抗の設計値,計画値または使用初期の実測値を基準値として設定する。電池内部抵抗値としては、電池抵抗と接続導体,端子などの電池抵抗以外の抵抗を加算したものを、使用初期,使用中期,使用終期に分けて設定する。従って、
使用初期:RX+RBA…(1)、
使用中期:RX+RBB…(2)、
使用終期:RX+RBC…(3)となる。
使用初期:ΔVBAi=IBi×(RX+RBA)…(4)
使用中期:ΔVBBi=IBi×(RX+RBB)…(5)
使用終期:ΔVBCi=IBi×(RX+RBC)…(6)
初期起電圧eB=VBi+ΔVBAi…(7)
中期起電圧eB=VBi+ΔVBBi…(8)
終期起電圧eB=VBi+ΔVBCi…(9)
内部抵抗変化演算部5は、内部抵抗演算部4で求めた実動作時の電池内部抵抗RBiと、内部抵抗設定部1で設定したRX+RBA,RX+RBBおよびRX+RBCから使用初期,使用中期,使用終期の各内部抵抗変化ΔRBiA=RBi−(RX+RBA)…(15),ΔRBiB=RBi−(RX+RBB)…(16)およびΔRBiC=RBi−(RX+RBC)…(17)を求める。このように、内部抵抗変化値を監視することによって、電池温度変化,カレンダー寿命,サイクル寿命等電池動作状態変化の概略を知ることが可能となる。
次に、充電動作について説明する。図3Cに、充電動作時のI−V特性を示す。
図1の起電圧演算部3は、次の(10)式〜(12)式に基づき充電動作時の起電圧eBを演算する。
eB=VBi−ΔVBAi…(10)
eB=VBi−ΔVBBi…(11)
eB=VBi−ΔVBCi…(12)
電池端子電圧VBiは、起電圧eBよりΔVBA〜ΔVBCだけ高い電圧であるから、充電動作時の起電圧eB,端子電圧VBiおよび電圧降下ΔVBiの関係が放電動作とは異なる形式になる。
リチウムイオン電池の満充電電圧は4.1V程度とされ、電池端子電圧VBi=4.1Vに達したことで満充電と判定する。すなわち、充電電流IBcで充電中の端子電圧VBi=4.1Vであれば、起電圧eB=VBi(4.1V)−ΔVBA〜ΔVBCより、起電圧eBは電池端子電圧VBiより低い電圧になるから、起電圧eBの監視により満充電状態を把握すれば、電池内部電圧降下の影響を除去できることになる。
以上、充放電動作について説明したが、ここで電池動作状態監視装置52の動作,機能について説明する。
1)電池内部抵抗監視
電池動作状態表示装置52は、基準内部抵抗設定部1の出力信号20、内部抵抗演算部4の出力信号23(実内部抵抗)、内部抵抗変化演算部5の出力信号24を受信して以下の監視・表示を行なう。
イ)内部抵抗変化演算部5の出力信号24を電池動作状態表示装置53で表示し、両値の内部抵抗差が目視確認できるようにする。
電池の動作状態管理の従来方法は、電池端子電圧VBiによる評価が一般的であるが、リチウムイオン電池のように内部抵抗RBが刻々変化する電池に適用するに当っては問題が多い。
これは、VBi=eB±IBi×RBのように、電池端子電圧VBiが内部抵抗RBの影響を受けるからである。
ア)起電圧eBを監視,表示することで、電池動作状態を把握することができる。
イ)併せて、実電圧VBiおよび電池内部電圧降下ΔVBiの監視,表示を行なうことで、電池の全体動作が目視確認、把握できるようにする。
放電動作における電池充電状態は電池温度、カレンダー寿命、サイクル寿命に伴う内部抵抗変化と、放電電流によって電池端子電圧が大きく変化することは上述の通りであり、代表例を図3A,3BにI−V特性で示す。
放電・基準I−V特性パターン部9は、放電の基準I−V特性パターンを図3A,3Bに示す起電圧eBf=VB=100(%V)を基点とし、放電初期,中期,終期の基準内部抵抗設定部1の出力20と、規定の放電電流IBN点電流(100%)との積で演算した電圧降下ΔVBA〜ΔVBC等から作成し、出力30を電池動作状態監視装置52に与える。
なお、基準内部抵抗を示す信号20、実内部抵抗を示す信号23、実内部抵抗変化を示す信号24および起電圧信号22を常時記録するとともに、電池動作状態表示装置52に与えて表示させ、目視確認,監視できるようにする。
電池動作状態監視装置52は、起電圧演算部3から(10)〜(12)式で示す出力信号22を受信して起電圧eBを常時監視,表示するとともに、電池端子電圧VBiも常時監視,表示する。
一般的な充電パターンとして、図4(a)に定電流充電⇒低電圧充電⇒多段定電流充電、図4(b)に多段定電流充電、図4(c)に多段定電力充電の各充電方式を示す。なお、どの充電方式とするかは、充電モード切替部11にて行なう。
電池動作状態監視装置52は、所定の時間間隔で実電池電圧VBi、実電池電流IBiおよび起電圧eBを記録(記憶)するとともに、図4(a)〜4(c)に示すような実動作パターンを電池動作状態表示装置53に表示させる。
なお、上記の充電動作パターンでの実電池電圧VBi、実電池電流IBi、起電圧eB、およびAHを監視しながら、充電モード切替部11によるモード切替えを行なうとともに、充電設定部12によって充電電圧,充電電流および充電電力の設定値を変更し、最適な充電が行なえるようにする。また、放電モードにするか、充電モードにするかの切替えは充放電切替部10により行なわれる。
応用例として、電気推進システムに適用した例を図5に示す。
図5に示す電池Bを主電源とする電気推進システムでは、発電機Gは電池Bを充電するとともに、電池以外の負荷(補機LAX)へも電力を供給する。
1)放電動作
発電機Gが停止状態で、電池Bから推進装置(電力変換装置)INV、電動機Mおよび補機LAXへ電力を供給する。ここで、放電電流(−IB)を規定値100%とし、推進装置電流を約90%、補機電流を約10%程度と仮定すれば、推進装置INVを停止すると放電電流は補機分の−10%になるから、放電電流の大小は推進装置の運転(回転)−停止に支配されることになる。また、運転時間=放電時間の経過とともに、電池容量および電池電圧は低下する。
起電圧eBの判定は上述のように、放電負荷(5〜10%)の電池電圧VBiの直線沿線上の、放電電流0での電圧を起電圧eB1,eB2…として近似しても実用上問題はないから、推進装置を停止させたときの補機電流が約10%の程度の電池電圧VBiより、起電圧eBを判定すれば良い。
この場合は、発電機Gを運転して電池Bを充電するとともに、推進装置INVおよび補機LAXへ電力を供給するが、充電過程における電池電圧VBi,電池電流IBi,起電圧eB,内部抵抗,充電AH,残存AHを電池動作状態監視装置52にて連続監視するとともに、状況に応じて最適充電ができるように充電電圧,充電電流,充電電力の設定変更ができるようにする。なお、起電圧eBの監視によって電池の充電状態,満充電状態を判断することができる。
Claims (5)
- リチウムイオン電池の内部抵抗値の設計値、計画値、または、使用初期の実測した内部抵抗値に基づく基準内部抵抗値を電池の使用初期、使用中期および使用終期に分けて設定しておくとともに、この電池の使用初期、使用中期および使用終期に分けて設定した基準内部抵抗値と所定の充放電電流とに基づき予め作成された基準I−V特性パターンを記憶しておき、別途検出される電池実動作中の電圧,電流で示される動作点または同電圧,電流から作成される実I−V特性パターンを、前記基準I−V特性パターンとともに同じ画面上に表示し、電池の充放電動作状態を監視可能にしたことを特徴とするリチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式。
- 充放電動作時の警報レベル,警告レベルをそれぞれ設定しておき、充放電動作時に実電圧が前記警報レベルに達したときは充放電電流を低下させるように操作者に警報を発するとともに、放電動作時に実電圧が前記警告レベルに達したときは放電を停止させるように操作者に警告を発することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式。
- 充放電動作時には、電池電圧,充放電電流および電池内部抵抗から算出される電池起電圧を表示して電池の充電状態を診断可能にしたことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式。
- 充放電動作時には、所定の時間間隔で計測した充放電電流,電池電圧を連続表示するとともに、充電電流と充電時間との積で示される充電電流時間積と、放電電流と放電時間との積で示される放電電流時間積と、充電電流時間積から放電電流時間積を減じた残存電流時間積とを表示可能にしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式。
- 放電動作時には、前記基準内部抵抗値,実内部抵抗値または実内部抵抗変化値を表示して監視可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池の充放電動作状態監視方式。
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