図1は、この発明の第1実施例に係る車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
図1において、符号10はエンジン(内燃機関(原動機))を示す。エンジン10は車両(駆動輪12などで部分的に示す)14に搭載される。
エンジン10の吸気系に配置されたスロットルバルブ(図示せず)は車両運転席に配置されるアクセルペダル(図示せず)との機械的な接続が絶たれ、電動モータなどのアクチュエータからなるDBW(Drive By Wire)機構16が接続されて駆動される。
スロットルバルブで調量された吸気はインテークマニホルド(図示せず)を通って流れ、各気筒の吸気ポート付近でインジェクタ20から噴射された燃料と混合して混合気を形成し、吸気バルブ(図示せず)が開弁されたとき、当該気筒の燃焼室(図示せず)に流入する。燃焼室において混合気は点火されて燃焼し、ピストンを駆動してクランクシャフト22を回転させた後、排気となってエンジン10の外部に放出される。
エンジン10のクランクシャフト22の回転は、トルクコンバータ24を介して無段変速機(Continuous Variable Transmission。以下「CVT」という)26に入力される。即ち、クランクシャフト22はトルクコンバータ24のポンプ・インペラ24aに接続される一方、それに対向配置されて流体(作動油)を収受するタービン・ランナ24bはメインシャフト(入力軸)MSに接続される。
CVT26はメインシャフトMSに配置されたドライブプーリ(摩擦係合要素)26aと、メインシャフトMSに平行なカウンタシャフト(出力軸)CSに配置されたドリブンプーリ(摩擦係合要素)26bと、その間に掛け回される金属製のベルト26cからなる。
ドライブプーリ26aは、メインシャフトMSに相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26a1と、メインシャフトMSに相対回転不能で固定プーリ半体26a1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26a2からなる。
ドリブンプーリ26bは、カウンタシャフトCSに同様に相対回転不能で軸方向移動不能に配置された固定プーリ半体26b1と、カウンタシャフトCSに相対回転不能で固定プーリ半体26b1に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体26b2からなる。
CVT26は前後進切換装置30を備える。前後進切換装置30は、前進クラッチ(摩擦係合要素)30aと、後進ブレーキクラッチ(摩擦係合要素)30bと、その間に配置されるプラネタリギヤ機構30cからなる。CVT26はエンジン10に前進クラッチ30aを介して接続される。
プラネタリギヤ機構30cにおいて、サンギヤ30c1はメインシャフトMSに固定されると共に、リングギヤ30c2は前進クラッチ30aを介してドライブプーリ26aの固定プーリ半体26a1に固定される。
サンギヤ30c1とリングギヤ30c2の間には、ピニオン30c3が配置される。ピニオン30c3は、キャリア30c4でサンギヤ30c1に連結される。キャリア30c4は、後進ブレーキクラッチ30bが作動させられると、それによって固定(ロック)される。
カウンタシャフトCSの回転は減速ギヤ34,36を介してセカンダリシャフト(中間軸)SSに伝えられると共に、セカンダリシャフトSSの回転はギヤ40とディファレンシャルDを介して左右の駆動輪(右側のみ示す)12に伝えられる。駆動輪12(および従動輪(図示せず))の付近にはディスクブレーキ42が配置される。
前進クラッチ30aと後進ブレーキクラッチ30bの切換は、車両運転席に設けられた、例えばP,R,N,D,S,Lのポジションを備えるシフトレバー44を運転者が操作することによって行われる。運転者によってシフトレバー44のいずれかのポジションが選択されたとき、その選択動作はCVT26などの油圧供給機構46のマニュアルバルブに伝えられる。
例えばD,S,Lポジションが選択されると、それに応じてマニュアルバルブのスプールが移動し、後進ブレーキクラッチ30bのピストン室から作動油(油圧)が排出される一方、前進クラッチ30aのピストン室に油圧が供給されて前進クラッチ30aが締結される。
前進クラッチ30aが締結されると、全ギヤがメインシャフトMSと一体に回転し、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSと同方向(前進方向)に駆動される。
他方、Rポジションが選択されると、前進クラッチ30aのピストン室から作動油が排出される一方、後進ブレーキクラッチ30bのピストン室に油圧が供給されて後進ブレーキクラッチ30bが作動する。それによってキャリア30c4が固定されてリングギヤ30c2はサンギヤ30c1とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ26aはメインシャフトMSとは逆方向(後進方向)に駆動される。
また、PあるいはNポジションが選択されると、両方のピストン室から作動油が排出されて前進クラッチ30aと後進ブレーキクラッチ30bが共に開放され、前後進切換装置30を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とCVT26のドライブプーリ26aとの間の動力伝達が遮断される。
図2は油圧供給機構46の油圧回路図である。
図示の如く、油圧供給機構46には油圧ポンプ46aが設けられる。油圧ポンプ46aはギヤポンプからなり、エンジン10によって駆動され、リザーバ46bに貯留された作動油を汲み上げてPH制御バルブ(PH REG VLV)46cに圧送する。
PH制御バルブ46cの出力(PH圧(ライン圧))は、一方では油路46dから第1、第2のレギュレータバルブ(DR REG VLV, DN REG VLV)46e,46fを介してCVT26のドライブプーリ26aの可動プーリ半体26a2のピストン室(DR)26a21とドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室(DN)26b21に接続されると共に、他方では油路46gを介してCRバルブ(CR VLV)46hに接続される。
CRバルブ46hはPH圧を減圧してCR圧(制御圧)を生成し、油路46iから第1、第2、第3の(電磁)リニアソレノイドバルブ46j,46k,46l(LS-DR, LS-DN, LS-CPC)に供給する。第1、第2のリニアソレノイドバルブ46j,46kはそのソレノイドの励磁に応じて決定される出力圧を第1、第2のレギュレータバルブ46e,46fに作用させ、よって油路46dから送られるPH圧の作動油を可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21に供給し、それに応じてプーリ側圧を発生させる。
従って、図1に示す構成においては、可動プーリ半体26a2,26b2を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生させられてドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bのプーリ幅が変化し、ベルト26cの巻掛け半径が変化する。このように、プーリの側圧を調整することで、エンジン10の出力を駆動輪12に伝達する変速比を無段階に変化させることができる。
尚、先に述べた如く、可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室26a21,26b21を形成する可動ピストン壁の円周面には側面視C字状のリングを噛合わせて環状にしたシールリング(図示せず)が嵌められ、ピストン室の円周面との間を液密に封止して油圧(作動油)のリークを防止する。シールリングは例えば特開2007−78041号公報に記載されているので、詳細な説明を省略する。
図2の説明に戻ると、CRバルブ46hの出力(CR圧)は第3のリニアソレノイドバルブ(LS−CPC)46lのソレノイドの励磁に応じて調圧され、油路46mを介して前記したマニュアルバルブ(MAN VLV。符号46oで示す)を介して前後進切換装置30の前進クラッチ30aのピストン室(FWD)30a1と後進ブレーキクラッチ30bのピストン室(RVS)30b1に接続される。
マニュアルバルブ46oは、図1を参照して前記した如く、運転者によって操作(選択)されたレンジセレクタ44の位置に応じて第3のリニアソレノイドバルブ46lで調圧された出力を前進クラッチ30aと後進ブレーキクラッチ30bのピストン室30a1,30b1のいずれかに接続する。
また、PH制御バルブ46cの出力は、油路46pを介してTCレギュレータバルブ(TC REG VLV)46qに送られ、TCレギュレータバルブ46qの出力はLCコントロールバルブ(LC CTL VLV)46rを介してLCシフトバルブ(LC SFT VLV)46sに接続される。
LCシフトバルブ46sの出力は一方ではトルクコンバータ24のロックアップクラッチ(摩擦係合要素)24cのピストン室24c1に接続されると共に、他方ではその背面側の室24c2に接続される。
LCシフトバルブ46sを介して作動油がピストン室24c1に供給される一方、背面側の室24c2から排出されると、ロックアップクラッチ24cが係合(オン)され、背面側の室24c2に供給される一方、ピストン室24c1から排出されると、解放(オフ)される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、ピストン室24c1と背面側の室24c2に供給される作動油の量によって決定される。
CRバルブ46hの出力は油路46tを介してLCコントロールバルブ46rとLCシフトバルブ46sに接続されると共に、油路46tには第4のリニアソレノイドバルブ(LS−LC)46uが介挿される。ロックアップクラッチ24cのスリップ量は、第4のリニアソレノイドバルブ46uのソレノイドの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
図1の説明に戻ると、エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ50が設けられ、ピストンの所定クランク角度位置ごとにエンジン回転数NEを示す信号を出力する。吸気系においてスロットルバルブの下流の適宜位置には絶対圧センサ52が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
DBW機構16のアクチュエータにはスロットル開度センサ54が設けられ、アクチュエータの回転量を通じてスロットルバルブの開度THに比例した信号を出力する。
またアクセルペダル56の付近にはアクセル開度センサ56aが設けられて運転者のアクセルペダル操作量に相当するアクセル開度APに比例する信号を出力すると共に、ブレーキペダル58の付近にはブレーキスイッチ58aが設けられて運転者のブレーキペダル58の操作に応じてオン信号を出力する。
さらに、エンジン10の冷却水通路(図示せず)の付近には水温センサ60が設けられ、エンジン冷却水温TW、換言すればエンジン10の温度に応じた出力を生じる。
上記したクランク角センサ50などの出力は、エンジンコントローラ66に送られる。エンジンコントローラ66はマイクロコンピュータを備え、それらセンサ出力に基づいて目標スロットル開度を決定してDBW機構16の動作を制御すると共に、燃料噴射量を決定してインジェクタ20を駆動する。
メインシャフトMSにはNTセンサ(回転数センサ)70が設けられ、タービン・ランナ24bの回転数、具体的にはメインシャフトMSの回転数、より具体的には前進クラッチ30aの入力軸回転数を示すパルス信号を出力する。
CVT26のドライブプーリ26aの付近の適宜位置にはNDRセンサ(回転数センサ)72が設けられてドライブプーリ26aの回転数、換言すれば前進クラッチ30aの出力軸回転数に応じたパルス信号を出力すると共に、ドリブンプーリ26bの付近の適宜位置にはNDNセンサ(回転数センサ)74が設けられ、ドリブンプーリ26bの回転数を示すパルス信号を出力する。
セカンダリシャフトSSのギヤ36の付近にはVELセンサ(回転数センサ)76が設けられ、ギヤ36の回転数を通じてCVT26の出力軸の回転数あるいは車速VELを示すパルス信号を出力する。前記したシフトレバー44の付近にはシフトレバーポジションセンサ80が設けられ、運転者によって選択されたR,N,Dなどのポジションに応じたPOS信号を出力する。
また、駆動輪12と従動輪からなる4個の車輪(タイヤ)のそれぞれの適宜位置には車輪速センサ82が設けられ、車輪の回転速度を示す車輪速に比例する信号を出力する。
また、図2に示す如く、油圧供給機構46においてCVT26のドリブンプーリ26bに通じる油路には油圧(P)センサ84が配置されてドリブンプーリ26bの可動プーリ半体26b2のピストン室26b21に供給される油圧Pdnpullyに応じた信号を出力すると共に、リザーバ46bには油温センサ86が配置されて油温(作動油ATFの温度TATF)に応じた信号を出力する。
上記したNTセンサ70などの出力は、図示しないその他のセンサの出力も含め、シフトコントローラ90に送られる。シフトコントローラ90もマイクロコンピュータを備えると共に、エンジンコントローラ66と通信自在に構成される。
シフトコントローラ90は、それら検出値に基づき、油圧供給機構46の第1から第4のリニアソレノイドバルブ46j,46k,46l,46uなどの電磁ソレノイドを励磁・非励磁して前後進切換装置30とCVT26とトルクコンバータ24の動作を制御する。
また、エンジンコントローラ66はDBW機構16と燃料噴射制御に加え、車両14のアイドルストップ制御を実行する。
図3はそのエンジンコントローラ66のアイドルストップ制御、より具体的には図3(a)はそのアイドルストップ継続時間の算出、図3(b)はアイドルストップ後の再始動要求処理を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S10において車両14がアイドルストップされているか否か判断する。
即ち、エンジンコントローラ66は、車両14が信号待ちなどするとき、所定の条件、例えば車速が零で、運転者によって車両14のブレーキペダル58が操作される(踏み込まれる)一方、アクセルペダル56が操作されていず、CVT26のレシオがローであるなどの条件が成立するか否か判断し、肯定されるとき、エンジン10をアイドルストップさせるが、S10ではそのようなアイドルストップ状態にあるか否か判断する。
S10で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されてエンジン10がアイドルストップされていると判断されるときはS12に進み、IS(アイドルストップ)継続タイマ(後述)がセットされているか否か判断する。
S12で肯定されているときは以降の処理をスキップする一方、否定されるときはS14に進み、油圧の変化を検出してIS継続時間を検索する。
具体的には、油圧センサ84の出力に基づき、適宜なタイマカウンタを使用してエンジン10がアイドルストップされてから(油圧センサ84で検出される)摩擦係合要素に供給される油圧、即ち、CVT26のドリブンプーリ26bのピストン室26b21に供給される油圧Pdnpullyが所定油圧Prefに低下するまでの経過時間(sec)txを測定することで油圧の変化を検出し、それに基づいてアイドルストップを継続すべきIS継続時間を算出する。
図4はエンジン10が停止されてからの油圧Pdnpully(と前進クラッチ30aのピストン室30a1に供給される油圧PFWDCL)の変化を示す実験データである。
図示の如く、エンジン回転数NEの急降下(エンジン10の停止)に伴って油圧は共に急減し、エンジン10が停止された時刻tsからの油圧、例えば油圧Pdnpullyはさらに低下して所定油圧Pref(零付近の微小な値、例えば0.05MPaに設定される油圧)以下に低下する。
図示のデータにおいて、時間t1は前記したドライブプーリ26aとドリブンプーリ26bの可動プーリ半体のピストン室26a21あるいは26b21を形成する可動ピストン壁の円周面に嵌められたシールリングの噛合わせ部が重力方向において下方に位置した場合を、時間t2は逆に上方に位置した場合を示す。噛合わせ部が下方に位置すると、上方に位置する場合に比し、作動油の自重によって漏れ易い(抜け易い)。
特に、アイドルストップされるとき、CVT26はドリブンプーリ26bのベルト巻き掛け径を大きくして変速比がロー側になるようにドリブンプーリ26bの可動プーリ半体のピストン室26b21が拡張されて供給される油圧も増加され、ドライブプーリ26a側のそれに比して作動油の量も多くなっていることから、シールリングの噛合わせ部の位置の影響が顕著となる。また、それ以外にも油圧供給機構46のPH制御バルブ46cなどから油圧が漏れる恐れもある。
図示のデータは同一製品で同一CVT26についての実験データであり、同一条件下で行われた1回目と2回目のテストデータである。可動プーリ半体26b2(あるいは26a2)はカウンタシャフトCS(あるいはメインシャフトMS)に応じて回転することから、シールリングの噛合わせ部の位置も走行に応じて移動する。
図5は油圧抜け時間txに対するIS継続時間の特性を示す説明グラフである。油圧抜け時間txが長いほど前進クラッチ30a(あるいはCVT26のドリブンプーリ26b)から油圧が抜け難い(漏れ難い)ことを意味することから、図示の如く、IS継続時間は、油圧抜け時間txの増加につれて増加するように予め実験で求められて設定される。
S14の処理においては、同時に、測定された油圧抜け時間txで図5に示す、予め設定された特性を検索してIS継続時間を算出する。
図3(a)フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS16に進み、IS継続タイマをセットする。即ち、算出されたIS継続時間をタイマ(ダウンカウンタ)にセットし、時間計測を開始する。
図3(b)は図3(a)と平行して行われる処理を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S100においてBrkOFF、即ち、ブレーキスイッチ58aの出力からブレーキペダル58が運転者によって離されたか否か判断し、肯定されるときはS102に進み、エンジン10を再始動する。
一方、S100で否定されるときはS104に進み、APON、即ち、アクセル開度センサ56aの出力からアクセルペダル56が運転者によって踏まれたか否か判断し、肯定されるときはS102に進む。
一方、S104で否定されるときはS106に進み、上記したIS継続タイマの値が零に達したか否か、換言すれば算出されたIS継続時間が徒過したか否か判断し、肯定されるときはS102に進む。
即ち、算出されたIS継続時間が経過したと判断されるとき、エンジン10を再始動する一方、S106で否定されるときはS108に進み、IS継続、即ち、アイドルストップを継続する。
この実施例に係る車両の制御装置にあっては、エンジン10がアイドルストップされたとき、エンジン10で駆動される油圧ポンプ46aから供給される油圧の変化を検出し、検出された油圧の変化に基づいてアイドルストップ(IS)を継続すべきIS継続時間を算出すると共に、算出されたIS継続時間が経過したとき、エンジン10を再始動するように構成、換言すれば油温によらず、油圧の変化、より具体的にはエンジン10がアイドルストップされてから油圧が所定油圧に低下するまでの経過時間を測定することで油圧抜け時間を推定してIS継続時間を算出する如く構成した。
即ち、CVT26の物バラツキの影響が大きい油温を用いることがないと共に、アイドルストップのときに油圧の変化を実際に検出することで可動プーリ半体26a2,26b2のピストン室を形成する可動ピストン壁に嵌められたシールリングの位置の影響を受けることがないので、IS継続時間を的確に算出することができ、アイドルストップ終了後の車両14の発進の遅れを確実に回避することができる。
図6はこの発明の第2実施例に係る車両の制御装置の動作を示す、図3(a)と同様のアイドルストップ継続時間の算出処理を示すフロー・チャートである。図示のプログラムも所定時間、例えば10msecごとに実行される。
以下説明すると、S10,S12において第1実施例と同様に判断し、S12で否定されるときはS14aに進み、油圧の変化を検出してIS継続時間を検索する。
具体的にはエンジン10がアイドルストップされたとき、油圧センサ84の出力に基づき、タイマカウンタを使用して油圧センサ油圧が既定油圧Psから前記した所定油圧Prefに低下するまでの経過時間(sec)tyを測定することで油圧の変化を検出する。
より具体的には、エンジン10がアイドルストップされたとき、(油圧センサ84で検出される)摩擦係合要素に供給される油圧、即ち、CVT26のドリブンプーリ26bのピストン室26b21に供給される油圧Pdnpullyが既定油圧Psから所定油圧Prefに低下するまでの経過時間tyを測定することで油圧の変化を検出し、それに基づいてIS継続時間を算出する。
図7はエンジン10が停止されてからの油圧Pdnpullyなどの変化を示す実験データである。
油圧はエンジン回転数NEの急降下に伴って急減することから、例えば油圧Pdnpullyが既定油圧Psから所定油圧Prefに低下する。時間t3はプーリ半体のピストン室26a21あるいは26b21の可動ピストン壁の円周面に嵌められたシールリングの噛合わせ部が重力方向において下方に位置した場合を、時間t4は上方に位置した場合を示す。
尚、エンジン10がアイドルストップされたとき、油圧はエンジン回転数NEの急降下に伴って急減した後、一旦低い値に安定し、次いで徐々に減少するが、既定油圧Psはこの徐々に減少する前の安定した低い値を意味する。
図8は油圧抜け時間tyに対するIS継続時間の特性を示す説明グラフである。
油圧抜け時間tyが長いほど前進クラッチ30a(あるいはCVT26のドリブンプーリ26b)から油圧が抜け難い(漏れ難い)ことを意味することから、図示の如く、IS継続時間は、油圧抜け時間tyの増加につれて増加するように予め実験で求められて設定される。
図6フロー・チャートのS14の処理においては、同時に測定された油圧抜け時間tyで図8に示す、予め設定された特性を検索してIS継続時間を算出する。
次いで第1実施例と同様、S16に進み、IS継続タイマをセットしてプログラムを終了する。それに基づいて図3(b)に示す処理が行われることは第1実施例と相違しない。
第2実施例に係る車両の制御装置にあっても、エンジン10がアイドルストップされたとき、エンジン10で駆動される油圧ポンプ46aから供給される油圧の変化を検出し、検出された油圧の変化に基づいてIS継続時間を算出すると共に、算出されたIS継続時間が経過したとき、エンジン10を再始動するように構成、換言すれば油温によらず、油圧の変化、より具体的にはエンジン10がアイドルストップされたとき、油圧が既定油圧Psから所定油圧Prefに低下するまでの経過時間tyを測定することで油圧抜け時間を推定してIS継続時間を算出する如く構成したので、第1実施例と同様、CVT26の物バラツキの影響が大きい油温を用いることがないと共に、シールリングの位置の影響を受けることがないので、IS継続時間を的確に算出でき、アイドルストップ終了後の車両14の発進の遅れを確実に回避することができる。
上記した如く、第1、第2実施例にあっては、エンジン10と、前記エンジンで駆動される油圧ポンプ46aと、前記油圧ポンプから供給される油圧で動作して前記エンジンの出力を変速して駆動輪12に伝達する自動変速機(CVT)26と、所定の条件が成立したときに前記エンジン10をアイドルストップさせるアイドルストップ手段(エンジンコントローラ66)とを備えた車両14において、前記エンジン10がアイドルストップされたとき、前記油圧ポンプ46aから供給される油圧の変化を検出する油圧変化検出手段(S10,S12,S14,S14a)と、前記検出された油圧の変化に基づいて前記アイドルストップ(IS)を継続すべきアイドルストップ継続時間を算出するアイドルストップ継続時間算出手段(S14,S14a)と、前記算出されたアイドルストップ継続時間が経過したとき、前記エンジン10を再始動するエンジン再始動手段(S100からS108)とを備える如く構成、換言すれば油温によらずに油圧の変化から油圧抜け時間を測定し、推定値から例えば予め設定された特性を検索するなどしてアイドルストップ継続時間を算出する如く構成したので、CVT(自動変速機)26の物バラツキの影響が大きい油温を用いることがないためにアイドルストップ継続時間を的確に算出することができ、ないためにアイドルストップ継続時間を的確に算出できる。
また、可動プーリ半体のピストン室26a21あるいは26b21を形成する可動ピストン壁に嵌められたシールリングがアイドルストップのときに重力方向において下方に位置した場合と上方に位置した場合とで自重によって油圧の漏れが相違するが、上記した如く、アイドルストップのときに油圧の変化を実際に検出することでシールリングの位置の影響を受けることがないため、それによってもアイドルストップ継続時間を的確に算出することができ、よってアイドルストップ終了後の車両14の発進の遅れを確実に回避することができる。
また、前記油圧変化検出手段は、前記エンジン10がアイドルストップされてから前記油圧が所定油圧Prefに低下するまでの経過時間txを測定することで前記油圧の変化を検出する(S14)如く構成したので、上記した効果に加え、油圧抜け時間を精度良く検出することができる。
また、前記油圧変化検出手段は、前記油圧ポンプ46aから前記自動変速機(CVT)26の摩擦係合要素(ドリブンプーリ)26に供給される油圧Pdnpullyの変化を検出する如く構成したので、上記した効果に加え、車両14の発進の遅れを左右する摩擦係合要素への供給油圧の変化を検出することで同様に油圧抜け時間あるいは油圧抜け変化量を精度良く検出することができる。
また、前記所定油圧Prefが油圧零付近の微小な値(例えば0.05MPa)に設定される如く構成したので、上記した効果に加え、所定油圧Prefを零とすると、検出箇所の油圧に空気がある場合もない場合も検出値は同一となるが、微小圧に設定することで、検出箇所の油圧に空気がある場合を排除でき、よって油圧抜け時間を一層精度良く検出することができる。
尚、上記において油圧抜け時間を測定し、推定値からアイドルストップ継続時間を算出するように構成したが、それに加えて油温を考慮しても良い。
また、摩擦係合要素に供給される油圧として前後進切換装置30のCVT26のドリブンプーリ26bのピストン室26b21に供給される油圧Pdnpullyを検出するようにしたが、図2に想像線で示す如く、前進クラッチ30aのピストン室30a1とマニュアルバルブ46oの間の油路あるいはトルクコンバータ24のロックアップクラッチ24cに通じる油路に油圧センサ84を配置してそれらの部位の油圧を検出するようにしても良い。
また、自動変速機としてCVT26を図示したが、それに限られるものではなく、有段変速機であっても良い。