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JP5787360B2 - 1,3−ブタンジオール生産機能を付与された遺伝子組換え微生物及びその利用 - Google Patents

1,3−ブタンジオール生産機能を付与された遺伝子組換え微生物及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、1,3−ブタンジオール生産機能を付与された遺伝子組換え微生物、及び、それを用いた1,3−ブタンジオールの製法方法に関する。
1,3−ブタンジオールは保湿剤、樹脂原料、界面活性剤、吸湿剤、溶剤など様々な用途をもった化学品、及び、それらの原料として利用価値がある。更にその光学活性体である(R)−1,3−ブタンジオール、及び、(S)−1,3−ブタンジオールは医薬、農薬等の合成原料として利用価値のある化合物である。
従来、1,3−ブタンジオールは、化石資源である石油を元に化学的に製造されたアセトアルデヒドを原料としてアセトアルドールとした後、水素化することによって化学的に製造されている。一方、光学活性な1,3−ブタンジオールの製造方法としては、特許文献1に代表されるように化石資源から化学的に合成された1,3−ブタンジオールのラセミ体にキャンディダ パラプシロシス(Candida palapsilosis)、又は、クルイベロマイセス ラクティス(Kluyveromyces lactis)等の、(S)体、もしくは(R)体を優先的に不斉資化する微生物を作用させ、残存したもう一方のエナンチオマーを回収することによって、R体、又は、S体の1,3−ブタンジオールを製造する方法がある。
また、特許文献2に代表されるように、化石資源から化学的に合成された4−ヒドロキシ−2−ブタノンにクルイベロマイセス ラクティス(Kluyveromyces lactis)、又は、キャンディダ パラプシロシス(Candida palapsilosis)等の微生物を作用させ、微生物の不斉還元活性を利用することによって、R体、又は、S体の1,3−ブタンジオールを製造する方法がある。
更に、Geotricum sp.由来のS体特異的な2級アルコール脱水素酵素を用いたラセミ体からの(R)−1,3−ブタンジオールの生産(非特許文献1)、キャンディダ パラプシロシス(Candida palapsilosis)由来のS体特異的な2級アルコール脱水素酵素を発現する遺伝子組換え大腸菌を用いたラセミ体からの(R)−1,3−ブタンジオールの生産(特許文献3)、クルイベロマイセス ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のR体特異的な2,3−ブタンジオール脱水素酵素を発現する遺伝子組換え大腸菌を用いた4−ヒドロキシ−2−ブタノンからの(R)−1,3−ブタンジオール、又は、ラセミ体からの(S)−1,3−ブタンジオールの生産(特許文献4)などのように、立体選択的な酸化還元酵素、又は、その酸化還元酵素を大量発現する遺伝子組換え菌を触媒として1もしくは2ステップで光学活性な1,3−ブタンジオールを製造する方法があるが、これらは何れも非天然の化合物を基質とするものであり、基質を化学的に合成する必要がある。
また、非特許文献2ではキャッサバ廃液を含む培地でGeotrichum fragransを培養した培養液中に1,3−ブタンジオールが検出されているが、揮発性物質の一つとして見出されたものであり、1,3−ブタンジオールの生産を目的としたものではない。
近年、化石資源の枯渇問題や地球温暖化問題の観点から、再生可能資源としてバイオマス(植物資源)由来の原料からの化学品生産体系の確立に対して社会的に需要が高まってきている。
例えば、バイオマス由来の原料の一つでもあるグルコースからのCoA誘導体を経由したソルベントの生産は、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)に代表されるようにアセトン−ブタノール発酵経路が知られている。当該菌株のtype strainであるクロストリジウム アセトブチリカム(C. acetobutylicum) ATCC824はゲノムDNAの全塩基配列が解読され、アセトン−ブタノール発酵菌に特徴的なソルベント生成遺伝子としてadhE(EC1.2.1.10、及び、EC1.1.1.1の2機能を有するアルデヒド−アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子)が明らかにされている(非特許文献3)。C. acetobutylicum由来のadhE遺伝子産物(EC1.2.1.10、及び、EC1.1.1.1の2機能を有するアルデヒド−アルコールデヒドロゲナーゼ)に関する酵素学的な報告としては、これまでほとんどなく、非特許文献4において、C. acetobutylicum DSM1732の無細胞抽出液を用いて、ブタノール又はブチルアルデヒドを基質としたブタノールデヒドロゲナーゼ活性の評価及びブチルアルデヒド又はブチリル−CoAを基質としたブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性の評価を行っているのみであり、非特許文献5に代表されるように、1−ブタノール生産に利用される以外には用いられてこなかった。
これまでにバイオマス由来の原料から1,3−ブタンジオールを製造した報告はなく、バイオマスなどの再生可能資源からの1,3−ブタンジオールの効率的な製造方法が望まれていた。
特開平2−195897 特開平2−31684 特開2000−197485 特開2002−345479
Biosci. Biotech. Biochem., 1996, 60(7), 1191−1192 Proc. Biochem., 2003, 39, 411−414 J. Bacteriol., 2001, 183(16), 4823−4838 Appl. Microbiol. Biotechnol., 1987, 26, 268−272 Metabol. Engineer., 2008, 10, 305−311
本発明は、バイオマス(植物資源)の再生可能資源を原料とし、1,3−ブタンジオールを生産することができる微生物の提供を課題とする。また本発明は、目的の機能を有する微生物を用いて1,3−ブタンジオールを製造できる方法を提供することを課題とする。
再生可能資源であるバイオマスを原料として1,3−ブタンジオールを製造するための方法を開発することを目的として、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、Clostridium acetobutylicum 由来の AdhE (CaAdhE) が、NADH依存的にアセチル−CoAやブチリル−CoAを還元してアセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを生成するだけではなく、意外にも3位にヒドロキシル基を有する3−ヒドロキシブチリル−CoAに対しても還元活性を有し、3−ヒドロキシブチルアルデヒドを生成することを見出した。更に、CaAdhEは、NADH依存的に3−ヒドロキシブチルアルデヒドに対して還元活性を有し、1,3−ブタンジオールを生成する反応を触媒することを見出した。上記 CaAhdhE に加えて、2分子のアセチル−CoAからアセトアセチル−CoAを生成する反応を触媒するβ−ケトチオラーゼアセトアセチル−CoAの3位のカルボニル基をNAD(P)H依存的に還元し、3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成する反応を触媒する3−ヒドロキシブチリル−CoA デヒドロゲナーゼを同時に発現しうる遺伝子組換え大腸菌を、グルコースを炭素源として培養することにより、1,3−ブタンジオールを効率的に生産させることに成功した。
本発明者らは以上の知見により、微生物が有する代謝産物であるアセチル−CoAを利用して、上記酵素を含む微生物において下記式8で表される反応を起こさせることにより、1,3−ブタンジオールを生成することに成功し、これにより本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、1,3−ブタンジオール生産微生物を提供する。あるいは本発明は、当該微生物を用いた1,3−ブタンジオールの効率的な生産方法を提供する。
〔式8〕
Figure 0005787360
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔24〕を提供するものである。
〔1〕下記(1)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え微生物。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔2〕〔1〕に記載の式1及び式2におけるRが共にメチルである、発酵性基質から1,3-ブタンジオールを生成する〔1〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔3〕〔2〕に記載の、発酵性基質から生成する1,3-ブタンジオールが(R) 又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔4〕〔1〕(1)に記載の式1で表される反応を触媒する酵素が、国際酵素分類 においてEC 1.2.1.10に分類される酵素であることを特徴とする〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
〔5〕〔1〕(1)に記載の式1で表される反応を触媒する酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(a)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するタンパク質。
〔6〕〔1〕に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(2)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアルキルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-アルキルジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔式3〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔7〕〔6〕に記載の式1〜3におけるRが共にメチルであり、発酵性基質から1,3-ブタンジオールを生成するという特徴を有する、〔6〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔8〕〔7〕に記載の発酵性基質から生成する1,3-ブタンジオールが(R)又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、〔6〕又は〔7〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔9〕〔6〕に記載の式3で表される反応を触媒する酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(a)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
〔10〕〔1〕に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(3)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存して3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔式4〕
Figure 0005787360
(式中、R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を、CoAは補酵素Aを表す。)
〔11〕〔10〕に記載の式1及び式2におけるRが共にメチルであり、発酵性基質から式5で表される(R)-1,3-ブタンジオールを生成する〔10〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔式5〕
Figure 0005787360
〔12〕〔10〕に記載の式4で表される反応を触媒する酵素であってR体特異的な還元酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、〔10〕又は〔11〕に記載の遺伝子組換え微生物。
(a)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
〔13〕〔10〕に記載の式1及び式2におけるRが共にメチルであり、発酵性基質から式6で表される(S)-1,3-ブタンジオールを生成する〔10〕に記載の遺伝子組換え微生物。
〔式6〕
Figure 0005787360
〔14〕〔10〕に記載の式4で表される反応を触媒する酵素であってS体特異的な還元酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、〔10〕又は〔13〕に記載の遺伝子組換え微生物。
(a)配列番号:19に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:19に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:20に記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:20に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:19に記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
〔15〕〔1〕に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(4)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される(R) 又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールを生成する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素としてβ-ヒドロキシブチリル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(4)式7で表される2分子のアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAの生成を触媒するβ−ケトチオラーゼ活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式7〕
Figure 0005787360
(式中、CoAは補酵素Aを表す。)
〔16〕〔15〕に記載の式7で表される反応を触媒する酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、〔15〕に記載の遺伝子組換え微生物。
(a)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:22、24、又は26のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:22、24、又は26のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
〔17〕〔1〕に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(2)から(4)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される(R)又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールを生成する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素としてβ-ヒドロキシブチリル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、
(2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシブチルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-ブタンジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)、
(3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存してアセトアセチル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチリル-CoAを生成する酵素活性、及び
(4)式7で表される2分子のアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAの生成を触媒するβ−ケトチオラーゼ活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式3〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式4〕
Figure 0005787360
(式中、R基はメチルを、CoAは補酵素Aを表す。)
〔式7〕
Figure 0005787360
(式中、CoAは補酵素Aを表す。)
〔18〕宿主細胞が大腸菌であることを特徴とする、〔1〕から〔17〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物。
〔19〕〔1〕から〔18〕のいずれかに記載の遺伝子組換え微生物の培養物、菌体、およびその処理物からなる群から選択される少なくとも一つの活性物質と、発酵性基質を接触させる工程、及び、式2で表される1,3-アルキルジオールを回収する工程を含む、式2で表されるジオール化合物の製造方法。
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔20〕前記生成ジオール化合物が式5で表される(R)-1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、〔19〕に記載のジオール化合物の製造方法。
〔式5〕
Figure 0005787360
〔21〕前記生成ジオール化合物が式6で表される(S)-1,3-ブタンジオールであることを特徴とする〔19〕に記載のジオール化合物の製造方法。
〔22〕前記発酵性基質が、糖類、グリセロールからなる群から選択される〔19〕から〔21〕のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
〔23〕前記発酵性基質が、グルコース、ラクトース、キシロース、スクロース、グリセロールからなる群から選択される〔22〕に記載のジオール化合物の製造方法。
〔24〕遺伝子組換え微生物を培養する工程と、ジオール化合物を生産させる工程を分けて行うことを特徴とする、〔19〕から〔23〕のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
ReTHL遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ZrTHL遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 EcTHL遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びReAR1遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びZrAR1遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びSvKR1遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びBstKR1遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びCaHBD遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びPfODH遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 CaAdhE遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 TpAdhE遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 PfALD遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びReAR1遺伝子及びCaAdhE遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 CaBDHB遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。 ReTHL遺伝子及びReAR1遺伝子及びCaAdhE遺伝子及びCaBDHB遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を示す図である。
本発明は、下記(1)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表されるジオール化合物(1,3-アルキルジオール)を生成する遺伝子組換え微生物に関する。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性
〔式1〕
Figure 0005787360
〔式2〕
Figure 0005787360
本発明において、ジオール化合物は式1で表される還元反応を経て、式2で表されるジオール化合物として生成されることが好ましい。本発明において、式1中、R基は炭素数1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、あるいはイソプロピル基)もしくは水素であることが好ましい。式1中、CoAは補酵素Aを表す。
本発明において製造される好ましいジオール化合物としては、前記式2において、たとえばR基が炭素数1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、あるいはイソプロピル基)もしくは水素である化合物を挙げることができる。より具体的には、本発明において生成されるジオール化合物として、1,3-ブタンジオール(式1及び式2においてRが共にメチルの場合)を好ましい例として挙げることができる。本発明において生成される、1,3-ブタンジオールの光学活性は特に制限されるものではなく、(R) 又は (S)(R体又はS体)の光学活性1,3-ブタンジオールが、本発明において生成される1,3-ブタンジオールに包含される。
本発明において、式1に表される通りNADH及び/又はNADPHを補酵素として、3-ヒドロキシブチリル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチルアルデヒドを生成する酵素としては、IUBMB(INTERNATIONAL UNION OF BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY)により、アルデヒド+CoA+NAD = アシル−CoA+NADH+Hの反応を触媒するacetaldehyde:NAD oxidoreductase(CoA-acetylating)の系統名が付けられているEC1.2.1.10に分類される酵素を挙げることができる(http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/)。EC番号とは、酵素を反応形式に従って系統的に分類するための4組の数字より成る番号で、国際生化学分子生物学連合の酵素委員会によって定義づけられている酵素の番号である。具体的には、ブタノール発酵経路を有する微生物において、ブタノールの生合成経路中のブチリル-CoAをNADHもしくは又はNADPH依存的に還元しブチルアルデヒドの生成を触媒する酵素(例えばブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ)を挙げることができる。本酵素もしくは類似の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子は一般に adhEと命名されている。
より具体的には、Clostridium属細菌が挙げられ、例えば、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Clostridium saccharoacetobutylicum、Clostridium saccharoperbutylacetonicumなど由来のadhE遺伝子産物が挙げられる。
EC1.2.1.10の機能を有する好ましい酵素とは、UniProtによると、aldehyde−alcohol dehydrogenaseの推奨名である酵素であり(http://www.uniprot.org/)、アシル−CoAからアルデヒドを生成する反応、及び、アルデヒドからアルコールを生成する反応を触媒するbifunctionalな酵素、又は、アシル−CoAからアルデヒドを生成する反応のみを触媒する酵素を挙げることができる。具体的にはClostridium acetobutylicum由来のadhE1遺伝子産物、あるいはadhE遺伝子産物を本目的に利用することができる。また、大腸菌や乳酸菌などが有するadhE遺伝子、又は、mhpF遺伝子も利用することができる。具体的にはEscherichia coli由来のadhE遺伝子、mhpF遺伝子、Leuconostoc mesenteroides由来のadhE遺伝子産物を利用することができる。更に、上記した以外にも、ゲノムDNAが解読されている微生物から本目的に好適に使うことができる遺伝子を選択することもできる。具体的には、Thermoanaerobacter pseudethanolicus、Propionibacterium freudenreichii subsp. freudenreichiiの遺伝子を好適に利用することができる。
本発明においてブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素としては、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素を挙げることができる。
(a)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数(2以上、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜5)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するタンパク質。
本発明において、「ある特定の配列番号に記載されたアミノ酸配列からなる酵素」のホモログは、「ある特定の配列番号に記載されたアミノ酸配列において、1若しくは複数(2以上、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜5)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素」と表すことができる。当該ホモログは、特定の配列番号に記載されたアミノ酸配列からなる酵素と機能的に同等なタンパク質を意味する。本発明において「機能的に同等」とは、本明細書に記載する、各酵素の酵素活性(触媒反応、化学反応等)と同じ機能を有することを意味する。
ある特定の配列番号に記載のアミノ酸配列において、たとえば100以下、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、あるいは5以下のアミノ酸残基の変異は許容される。一般にタンパク質の機能の維持のためには、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。このようなアミノ酸残基の置換は、保存的置換と呼ばれている。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループ内のアミノ酸置換は許容される。
当業者であれば、本明細書において開示された塩基配列からなる各酵素のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982), Methods in Enzymol.100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより各酵素のホモログをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。各酵素のホモログをコードするポリヌクレオチドを宿主に導入して発現させることにより、各酵素のホモログを得ることが可能である。
さらに、本発明の各酵素のホモログとは、各酵素に対応した配列番号に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の同一性を有するタンパク質をいう。タンパク質の同一性検索は、例えばSWISS-PROT, PIR, DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベースやDDBJ、EMBL、あるいはGene-BankなどのDNA配列に関するデータベース、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。
本発明に記載の各酵素は、当該酵素と機能的に同等な活性を有する限り、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。たとえば、ヒスチジンタグやHAタグのような、タグ配列を付加することができる。あるいは、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また本発明の各酵素あるいはそのホモログは、各酵素と機能的に同等な活性を有する限り、断片であってもよい。
本発明に記載された各酵素をコードするポリヌクレオチドは、以下のような方法によって単離することができる。例えば、各酵素に対応した配列番号に示される塩基配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより本発明のDNAを得ることができる。さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、各酵素のポリヌクレオチドを得ることができる。
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより各酵素のポリヌクレオチドを得ることも可能である。
なお本発明において、各酵素のポリヌクレオチドとしては、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得られたDNAが含まれる。
ハイブリダイゼーションにおいては、各酵素に対応した配列番号に示される塩基配列の相補配列またはその部分配列からなる核酸(DNAまたはRNA)をプローブとして、対象とする核酸に対してハイブリダイゼーションを行い、ストリンジェントな条件下で洗浄後にプローブが対象とする核酸に有意にハイブリダイズしているかを確認する。プローブの長さは例えば連続した20塩基以上、好ましくは25塩基以上、さらに好ましくは30塩基以上、さらに好ましくは40塩基以上、さらに好ましくは80塩基以上、さらに好ましくは100塩基以上(例えば各酵素に対応した配列番号に示される塩基配列の全長)を用いる。プローブに各酵素に対応した配列番号に示される塩基配列またはその相補配列以外の無関係な配列(ベクター由来の配列など)が含まれる場合には、ネガティブコントロールとしてその配列だけをプローブにして同様にハイブリダイゼーションを行い、同様の条件下で洗浄後にそのプローブが対象とする配列に有意にハイブリダイズしないことを確認してもよい。ハイブリダイゼーションは、ニトロセルロース膜またはナイロン膜などを用いて慣用の方法にて実施することができる(Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratories; Ausubel, F.M. et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishe Associates/ John Wiley and Sons, New York. NY)。
ハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件を具体的に例示すれば、例えば6×SSC、0.5%(W/V) SDS、100μg/ml 変性サケ精子DNA、5×デンハルト溶液(1×デンハルト溶液は0.2%ポリビニールピロリドン、0.2%牛血清アルブミン、および0.2%フィコールを含む)を含む溶液中、45℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーション後の洗浄を、ハイブリダイゼーションと同じ温度にて、4×SSC、0.5% SDS、20分を3回行う条件である。より好ましくはハイブリダイゼーション後の洗浄を、ハイブリダイゼーションと同じ温度にて 4×SSC、0.5% SDS、20分を2回、2×SSC、0.5% SDS、20分を1回行う条件である。より好ましくはハイブリダイゼーション後の洗浄を、ハイブリダイゼーションと同じ温度にて 4×SSC、0.5% SDS、20分を2回、続いて 1×SSC、0.5% SDS、20分を1回行う条件である。より好ましくはハイブリダイゼーション後の洗浄を、ハイブリダイゼーションと同じ温度にて 2×SSC、0.5% SDS、20分を1回、続いて 1×SSC、0.5% SDS、20分を1回、続いて 0.5×SSC、0.5% SDS、20分を1回行う条件である。より好ましくはハイブリダイゼーション後の洗浄を、ハイブリダイゼーションと同じ温度にて 2×SSC、0.5% SDS、20分を1回、続いて 1×SSC、0.5% SDS、20分を1回、続いて 0.5×SSC、0.5% SDS、20分を1回、続いて 0.1×SSC、0.5% SDS、20分を1回行う条件である。
本目的に利用できるEC1.2.1.10の機能を有する酵素の活性は、例えば次のように確認することができる。
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(CoA-アセチル化)(BCDH)活性測定法(式1で表される酵素活性)
100mM Tris-HCl緩衝液(pH 6.5)、70mM セミカルバジド(pH 6.5)、0.2mM NADH、0.2mM 3−ヒドロキシブチリル-CoA、又は、ブチリル−CoA、必要に応じて1mM DTTからなる組成液を、30℃、3分間平衡化した後、BCDHを含む無細胞抽出液を添加し、アシル-CoAの還元におけるNADHの減少に伴う340nmの吸光度の減少を測定する。目的とする酵素が酸素存在下では失活するような場合は、嫌気雰囲気下(窒素雰囲気下)で反応液の調製、及び、反応を行う。この条件下、1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量を1Uとする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
本発明は、上記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(2)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え微生物に関する。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアルキルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-アルキルジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔式3〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
本発明において製造される好ましいジオール化合物としては、前記式2において、たとえばR基が炭素数1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、あるいはイソプロピル基)もしくは水素である化合物を挙げることができる。より具体的には、本発明において生成されるジオール化合物として、1,3-ブタンジオール(式1〜式3においてRが共にメチルの場合)を好ましい例として挙げることができる。本発明において生成される、1,3-ブタンジオールの光学活性は特に制限されるものではなく、(R) 又は (S)(R体又はS体)の光学活性1,3-ブタンジオールが、本発明において生成される1,3-ブタンジオールに包含される。
本発明において、式3に表される通りNADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアルキルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-アルキルジオールの生成を触媒する酵素としては、IUBMB(INTERNATIONAL UNION OF BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY)により、アルコール+NAD = アルデヒド又はケトン+NADH+Hの反応を触媒するalcohol:NAD oxidoreductaseの系統名が付けられているEC1.1.1.1に分類される酵素を挙げることができる(http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/)。具体的にはクロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のブタノール脱水素酵素(ブタノールデヒドロゲナーゼ)などが挙げられる。
本発明においてブタノールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素としては、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素を挙げることができる。
(a)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
本目的に利用できるEC1.1.1.1の機能を有する酵素の活性は、例えば次のように確認することができる。
ブタノールデヒドロゲナーゼ(BDH)活性測定法(式2で表される酵素活性)
50mM MES緩衝液(pH 6.0)、0.2mM NADH、20mM 3−ヒドロキシブチルアルデヒド、又は、ブチルアルデヒド、必要に応じて1mM DTTからなる組成液を、30℃、3分間平衡化した後、BDHを含む無細胞抽出液を添加し、アルキルアルデヒドの還元におけるNADHの減少に伴う340nmの吸光度の減少を測定する。目的とする酵素が酸素存在下では失活するような場合は、嫌気雰囲気下(窒素雰囲気下)で反応液の調製、及び、反応を行う。1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量を1Uとする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
本発明は、下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(3)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え微生物に関する。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存して3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
〔式4〕
Figure 0005787360
(式中、R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を、CoAは補酵素Aを表す。)
本発明において製造される好ましいジオール化合物としては、前記式2において、たとえばR基が炭素数1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、あるいはイソプロピル基)もしくは水素である化合物を挙げることができる。より具体的には、本発明において生成されるジオール化合物として、1,3-ブタンジオール(式1、式2、式4においてRが共にメチルの場合)を好ましい例として挙げることができる。本発明において生成される、1,3-ブタンジオールの光学活性は特に制限されるものではなく、(R) 又は (S)(R体又はS体)の光学活性1,3-ブタンジオールが、本発明において生成される1,3-ブタンジオールに包含される。
本発明において式(4)に示される、3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する反応(例えば、Rがメチルの場合:アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成する反応)は、アセトアセチル−CoAの3位のカルボニル基を還元して3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成する反応を触媒する能力を有する酵素であれば、任意の酵素を用いることができる。好ましくは、通常、ポリ(3-ヒドロキシブタン酸)(PHB)生成経路を有する微生物、ブタノール発酵経路を有する微生物が保有する。PHB生成経路を有する微生物としては、Ralstonia eutropha、Zoogloea ramigeraなどが挙げられ、それらの微生物が有するアセトアセチル-CoA還元酵素(遺伝子名は一般にphaB、phbBとして表される)を好適な酵素として挙げることができる。ブタノール発酵経路を有する微生物としては、上記したようなアセトン−ブタノール発酵菌などとして知られるClostridium属細菌が挙げられ、これらの微生物が有する3−ヒドロキシブチリル−CoA脱水素酵素(遺伝子名は一般にhbdとして表される)を挙げることができる。更に、酵素の基質特異性の観点から、類似の反応を触媒する酵素も利用することができる。例えば、脂肪酸合成経路のβ-ケトアシル-ACP還元酵素、具体的にはBacillus stearothermophilus由来のβ-ケトアシル-ACP還元酵素(BstKR1)を利用することができる。また、Streptomyces violaceoruber由来のポリケタイドアクチノロージン合成経路の酵素であるβ-ケトアシル還元酵素(SvKR1)も利用することができる。他の例としては、β−ケトカルボン酸、又は、そのエステルの3位のカルボニル基を還元するカルボニル還元酵素も利用することができ、より具体的にはPichia finlandica由来(R)−2−オクタノール脱水素酵素(PfODH)なども利用することができる。これらの還元酵素が高い立体選択性を有している場合は、光学活性な1,3−ブタンジオールを得ることに適しており、(R)−1,3−ブタンジオールを得るためには、R体に高い立体選択性を有するRalstonia eutropha由来のアセトアセチル-CoA還元酵素(ReAR1)、Zoogloea ramigera由来のアセトアセチル-CoA還元酵素(ZrAR1)、BstKR1、SvKR1、PfODH、より好ましくはReAR1が好適な(R)−1,3−ブタンジオール生産用酵素として利用することができる。また、(S)−1,3−ブタンジオールを得るためには、S体に高い立体選択性を有するClostridium属由来のHBD、より好ましくはClostridium acetobutylicum由来の3−ヒドロキシブチリル−CoA脱水素酵素(CaHBD)が好適な(S)−1,3−ブタンジオール生産用酵素として利用することができる。当該化合物は、本発明によって製造することができる好ましい光学活性アルコールである。
本発明において3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素(例えば、Rがメチルの場合:アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成する反応)として、最終生成物として(R)-1,3-ブタンジオールを生成する際に好適な酵素としては、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素を挙げることができる。
(a)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、又は
(e)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
本発明において3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素(例えば、Rがメチルの場合:アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成する反応)として、最終生成物として(S)-1,3-ブタンジオールを生成する際に好適な酵素としては、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素を挙げることができる。
(a)配列番号:19に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:19に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:20に記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:20に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、又は
(e)配列番号:19に記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
本目的に利用できる3−ヒドロキシブチリル−CoAの3位のカルボニル基の還元酵素の活性は、例えば次のように確認することができる。
3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドロゲナーゼ(3HBD)活性測定法
100mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、0.2mM NAD(P)H、0.2mM アセトアセチル-CoA、必要に応じて1mM DTTからなる組成液を、30℃、3分間平衡化した後、3HBDを含む無細胞抽出液を添加し、アセトアセチル-CoAの還元におけるNAD(P)Hの減少に伴う340nmの吸光度の減少を測定する。1分間に1μmolのNAD(P)Hの減少を触媒する酵素量を1Uとする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
本発明は、(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(4)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される(R) 又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールを生成する遺伝子組換え微生物に関する。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素としてβ-ヒドロキシブチリル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
(4)式7で表される2分子のアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAの生成を触媒するβ−ケトチオラーゼ活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式7〕
Figure 0005787360
(式中、CoAは補酵素Aを表す。)
本発明において製造される好ましいジオール化合物としては、1,3-ブタンジオール(式1、式2、式7においてRが共にメチルの場合)を好ましい例として挙げることができる。本発明において生成される、1,3-ブタンジオールの光学活性は特に制限されるものではなく、(R) 又は (S)(R体又はS体)の光学活性1,3-ブタンジオールが、本発明において生成される1,3-ブタンジオールに包含される。
〔式9〕
Figure 0005787360
式9で示される反応のうち、アセチル−CoAからアセトアセチル-CoAの反応(式7で示される反応)は、2分子のアセチル−CoAを縮合することによりアセトアセチル−CoAを生成する能力を有する酵素であれば、任意の酵素を用いることができる。好ましくは、IUBMBにより、2 acetyl-CoA = CoA + acetoacetyl-CoAの反応を触媒するacetyl-CoA:acetyl-CoA C-acetyltransferaseの系統名が付けられているEC2.3.1.9に分類される酵素、又は、acyl-CoA + acetyl-CoA = CoA + 3-oxoacyl-CoAの反応を触媒するacyl-CoA:acetyl-CoA C-acyltransferaseの系統名が付けられているEC2.3.1.16に分類される酵素を挙げることができる(http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/)。
具体的には、当該酵素は通常、微生物などが有するポリ(3-ヒドロキシブタン酸)(PHB)生成経路の酵素、ブタノール発酵経路などの酵素が利用できる。より具体的には、PHB生成経路を有する微生物としては、Ralstonia eutropha、Zoogloea ramigeraなどが挙げられ、それらの微生物が有するアセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ又はβ−ケトチオラーゼ(遺伝子名は一般にphaA、phbAとして表される)を好適な酵素として挙げることができる。また、ブタノール発酵経路を有する微生物としては、上記したようなアセトン−ブタノール発酵菌などとして知られるClostridium属細菌が挙げられ、これらの微生物が有するアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ又はβ−ケトチオラーゼ(遺伝子名は一般にthl、thiとして表される)を挙げることができる。また、他の例として一般に遺伝子名はatoBとして表されるEscherichia coliなどが産生するatoB遺伝子産物が挙げられる。更に、一般的に微生物が有する脂肪酸生合成系のβ−ケトアシル−ACP合成酵素も利用することができる。
本発明においてアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素としては、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素を挙げることができる。
(a)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
(c)配列番号:22、24、又は26のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(d)配列番号:22、24、又は26のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
(e)配列番号:21、23、又は25のいずれかに記載のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有する酵素。
本目的に利用できるアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(又は、β−ケトチオラーゼ)の活性は、例えば次のように確認することができる。
β-ケトチオラーゼ(THL)活性測定法-1
100mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)、10mM 塩化マグネシウム、0.2mM CoA、0.05mM アセトアセチル-CoA、必要に応じて1mM DTTからなる組成液からなる組成液を、30℃、3分間平衡化した後、β-ケトチオラーゼを含む無細胞抽出液を添加し、Mg2+- アセトアセチル-CoA複合体の分解を303nmの吸光度の減少で測定する。1分間に1μmolのアセトアセチル-CoAが減少を触媒する酵素量を1Uとする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
β-ケトチオラーゼ(THL)活性測定法-2
100mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)、2.0mM NADH、0.2mM アセチル-CoA、2.0U Clostridium acetobutylicum由来の3−ヒドロキシブチリル-CoA デヒドロゲナーゼからなる組成液を、30℃、3分間平衡化した後、β-ケトチオラーゼを含む無細胞抽出液を添加し、アセチル-CoAの縮合に続くアセトアセチル-CoAの還元におけるNADHの減少に伴う340nmの吸光度の減少を測定する。1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量を1Uとする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
本発明は、下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(2)から(4)の酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、発酵性基質から式2で表される(R) 又は (S) の光学活性1,3-ブタンジオールを生成する遺伝子組換え微生物に関する。
(1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素としてβ-ヒドロキシブチリル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、
(2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシブチルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-ブタンジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)、
(3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存してアセトアセチル-CoAを還元し、3-ヒドロキシブチリル-CoAを生成する酵素活性、及び
(4)式7で表される2分子のアセチル-CoAからアセトアセチル-CoAの生成を触媒するβ−ケトチオラーゼ活性
〔式1〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す。CoAは補酵素Aを表す。)
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式3〕
Figure 0005787360
(式中R基はメチルを表す)
〔式4〕
Figure 0005787360
(式中、R基はメチルを、CoAは補酵素Aを表す。)
〔式7〕
Figure 0005787360
(式中、CoAは補酵素Aを表す。)
上記の各酵素反応において、好適な酵素は上述に記載の各段階において好適な酵素を用いることができる。
本発明の遺伝子組換え微生物において、宿主細胞は特に制限されるものではないが、より好ましくは、大腸菌を宿主細胞として用いることができる。
本発明において「活性が増強された」とは、当該遺伝子を保有しない、もしくは、極めて発現量が低い宿主に対して同種、もしくは、異種由来の目的遺伝子を導入することによって、例えば、宿主に対して2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上の活性を有するように組み換えた遺伝子組換え微生物のことを言う。
本発明における「光学活性なアルコール」とは、ある光学異性体が別の光学異性体より多く含まれるアルコールを言う。本発明において、好ましい光学活性なアルコールは、たとえば60%、通常70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の光学純度(enantiomeric excess; ee)を有する。本発明の「光学異性体」は、一般的に「鏡像異性体」(enantiomer)と呼ばれる場合もある。
本発明の各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)をコードするポリヌクレオチドは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。
公知の各酵素に対応する塩基配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより本発明のDNAを得ることができる。
さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のポリヌクレオチドを得ることも可能である。
なお本発明のポリヌクレオチドには、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得られたDNAが含まれる。
このようにして単離された、本発明の各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)をコードするポリヌクレオチドを公知の発現ベクターに挿入することにより、当該酵素発現ベクターが提供される。また、好ましくは、当該酵素をコードするポリヌクレオチドと、上記と同様の方法で得られたアセチル−CoA-アセチルトランスフェラーゼ(又は、β−ケトチオラーゼ)、又は/及び、立体選択的な3−ヒドロキシブチリル−CoA脱水素酵素、又は/及び、ブタノール脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドを同時に公知の発現ベクターに挿入する。
本発明において少なくとも各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)を発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターにより形質転換され、各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、例えば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属等宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属等宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属等宿主ベクター系の開発されているカビ
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。
微生物菌体内などにおいて、本発明の各酵素(例えばEC1.2.1.10の機能を有する酵素)遺伝子を発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターまたはファージベクターへ本発明のDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーター等に関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992)、等に詳細に記載されている。
エシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、例えばpBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PR等に由来するプロモーター等が利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーター等を用いることができる。
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミド等が利用可能であり、染色体にインテグレートさせることも可能である。また、プロモーターまたはターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、 npr(中性プロテアーゼ)、またはamy(α−アミラーゼ)等が利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)等の宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010等に由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240等が利用可能である。プロモーターまたはターミネーターとしては、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子等が利用できる。
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))等のプラスミドベクターが利用可能である。プロモーターまたはターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984)等のプラスミドベクターが利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))等がプラスミドベクターとして利用可能である。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614 (1979))等が利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクター等が利用可能である (J. Gen. Microbiol. 138,1003 (1992))。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995) )等が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997) )。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミド等が利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)等のプロモーターおよびターミネーターが利用可能である。
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNA等との相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGK等に由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)、およびサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクター等が利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクター等が利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5 プロモーター、およびチゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))等が利用可能である。
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・アンガスタ(Pichia angusta、旧名:ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導されるAOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーター等が利用可能である。また、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、PARS2)等を利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能なAOXなど強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859 (1987))。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス (Candida utilis) 等において宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターの強力なプロモーターが開発されている(特開平08-173170)。
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) 等がカビの中で最もよく研究されており、プラスミド、および染色体へのインテグレーションの利用が可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーター等が利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))、菜種、トウモロコシ、またはジャガイモ等の植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており好適に利用できる。
本発明は、上述した各酵素活性が増強された遺伝子組換え微生物であって、式2で示されるアルコール化合物を生成する遺伝子組換え微生物を利用した1,3−ブタンジオールの製造方法に関する。より具体的には、当該酵素活性を機能的に発現する遺伝子組換え微生物の培養物、菌体、およびその処理物からなる群から選択される少なくとも一つの活性物質と、発酵性基質を接触させる工程、及び、式2で表される1,3-アルキルジオールを回収する工程を含む、式2で表されるジオール化合物の製造方法に関する。
〔式2〕
Figure 0005787360
(式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
本発明において製造される好ましいジオール化合物としては、前記式2において、たとえばR基が炭素数1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、あるいはイソプロピル基)もしくは水素である化合物を挙げることができる。より具体的には、本発明において生成されるジオール化合物として、1,3-ブタンジオール(式1、式2、式4においてRが共にメチルの場合)を好ましい例として挙げることができる。本発明において生成される、1,3-ブタンジオールの光学活性は特に制限されるものではなく、(R) 又は (S)(R体又はS体)の光学活性1,3-ブタンジオールが、本発明において生成される1,3-ブタンジオールに包含される。
当該酵素を機能的に発現する遺伝子組換え微生物等を発酵性基質と接触させることにより、発酵性基質を遺伝子組換え微生物によって資化せしめ、目的とする酵素反応を行わせることによって、1,3−ブタンジオールの製造を行うことができる。なお、遺伝子組換え微生物と発酵性基質の接触形態はこれらの具体例に限定されるものではない。発酵性基質は、遺伝子組換え微生物が発酵性基質を資化し、且つ、目的とする酵素活性の発現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したものである。
また、上記方法に好適に使用される微生物としては、上述した各段階における好適な酵素を機能的に発現する形質転換体を上げることができる。
本発明における式1で示される還元反応を触媒する酵素活性が増強された形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。
本発明による1,3−ブタンジオールの製造方法において原料となる発酵性基質としては、グルコース、ラクトース、キシロース、スクロース、などの糖類の他、用いる宿主微生物によってはグリセロールやCOなど微生物が異化代謝することができ、その代謝産物としてアセチル−CoA、又は/及び、アセトアセチル-CoA、又は/及び、3−ヒドロキシブチリル−CoAを生成しうるものであれば好適に用いることができる。
本発明によるEC1.1.1.1のみの機能を有する酵素の活性測定の基質として用いられる3−ヒドロキシブチルアルデヒドは、例えば、2当量のアセトアルデヒドをエーテル溶媒中で反応させることによって合成することができる。
更に、式1で示される還元反応を触媒する酵素活性が増強された形質転換体に、アセチル−CoA アセチルトランスフェラーゼ(又は、β−ケトチオラーゼ)酵素遺伝子、又は/及び、3−ヒドロキシブチリル−CoA脱水素酵素遺伝子を同時に導入することによって、より効率的な1,3−ブタンジオールの生産を行うことも可能である。更に、ブチリルアルデヒド脱水素酵素、ブタノール脱水素酵素遺伝子を同時に導入してもよい。これらの2つもしくはそれ以上の遺伝子の宿主への導入には、不和合性を避けるために複製起源のことなる複数のベクターに別々に遺伝子を導入した組み換えベクターにより宿主を形質転換する方法や、単一のベクターに各遺伝子を導入する方法、一つ、もしくは、それ以上の遺伝子を染色体中に導入する方法などを利用することができる。
単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター、ターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
本発明の式1で示される還元反応を触媒する酵素活性が増強された形質転換体、又はその処理物と発酵性基質を接触せしめて1,3−ブタンジオールを製造する際には、式1で示される還元反応を触媒する酵素活性及び安定性、式1で示される還元反応を触媒する酵素活性が増強された形質転換体の発酵性基質の資化活性にとって好ましい条件を選択することができる。
1,3−ブタンジオールを生産するための原料である発酵性基質の濃度に特に制限はないが、通常0.1〜30%程度、好ましくは0.5〜15%、より好ましくは1〜10%の濃度が用いられる。
なお、本発明における「%」は、いずれも「重量/容量(w/v)」を意味するものとし、「%e.e.」は、(R)−1,3−ブタンジオールの場合、(([(R)−1,3−ブタンジオールの濃度]-[ (S)−1,3−ブタンジオールの濃度])/([ (R)−1,3−ブタンジオールの濃度]+[ (S)−1,3−ブタンジオールの濃度]))×100で表される数値を意味する。同様に、(S)−1,3−ブタンジオールの場合、(([(S)−1,3−ブタンジオールの濃度]-[ (R)−1,3−ブタンジオールの濃度])/([ (S)−1,3−ブタンジオールの濃度]+[ (R)−1,3−ブタンジオールの濃度]))×100で表される数値を意味する。
また、原料は発酵開始時に一括して添加することも可能であるが、発酵液中に連続的、もしくは間欠的に添加することも可能である。
また、本発明の遺伝子組換え微生物は、好ましくは、式1で示される還元反応を触媒する酵素遺伝子を単離した後、大腸菌などを宿主として活性を増強させた遺伝子組換え大腸菌を用いることができる。本目的のために用いられる遺伝子組換え大腸菌は、一般的に大腸菌の培養に用いられる培地で培養することができ、公知の方法によって発現誘導することによって高発現させることができる。例えば、当該酵素活性が増強された大腸菌を2×YT培地(2.0%バクト−トリプトン、1.0%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)中で培養し、イソプロピル−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)によって発現誘導させ、十分に増殖させた後に、培養液をそのまま、もしくは、菌体を回収して1,3−ブタンジオール生産に用いることができる。
1,3−ブタンジオール生産に使用する本発明の遺伝子組換え微生物は、下記の発酵性基質を含む1,3−ブタンジオール生産用発酵液で生育させながら1,3−ブタンジオールを生産させても良く、予め培養して増殖させた培養液、もしくは、回収した菌体を用いても良い。予め培養して増殖させた培養液、もしくは、回収した菌体の量は、通常は、発酵性基質を含む1,3−ブタンジオール生産用発酵液量に対して0.1〜100%、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは1〜20%程度用いることができる(ここで言う「%」は、1,3−ブタンジオール生産用発酵液に対する植菌率を示しており、「[予め増殖させた培養液]/[1,3−ブタンジオール生産用発酵液](v/v)」を意味する)。
1,3−ブタンジオール生産用発酵液は、1,3−ブタンジオールを生産するための発酵性基質以外にも、必要に応じて1,3−ブタンジオールの生産を促進するものが含まれていることが好ましく、本目的のために用いられる遺伝子組換え大腸菌の栄養源となる培地成分を含んでいてもよい。具体的には、大腸菌の培養に用いられる培地であるLB(1.0%バクト−トリプトン、0.5%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)、2×YT(2.0%バクト−トリプトン、1.0%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)、M9培地(6.8g/L Na2HPO4、3.0g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、1.0g/L NH4Cl、0.493g/L MgSO4・7H2O、14.7mg/L CaCl2・2H2O、pH7.5)などを挙げることができる。予め培養して十分量の菌体を1,3−ブタンジオール生産用発酵液に供する場合は、より高濃度の発酵性基質の存在下で1,3−ブタンジオールの生産を行うことができ、上記培地を除くこともできる。また、必要に応じて発酵中のpHを1,3−ブタンジオール生産に適したpHに維持させるための成分、例えば緩衝剤を10mM〜800mM、好ましくは、50〜500mM、より好ましくは100〜250mM含んでいてもよく、具体的には、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、MES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝液などを挙げることができる。発酵温度は本発明の遺伝子組換え微生物が発酵性基質の資化能力を発現でき、且つ、式1で示される還元反応を触媒する酵素活性を発現でき、1,3−ブタンジオールを生成できる温度であれば良く、通常5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃で行うことができる。またpHも、式1で示される還元反応を触媒する酵素活性を発現でき、1,3−ブタンジオールを生成できるpHであれば良く、通常はpH4〜12、好ましくは、pH5〜11、より好ましくはpH6〜9で行うことができる。また、発酵は攪拌下、あるいは静置下で行うことができる。また、発酵性基質をより効率的に1,3−ブタンジオールに変換させるために、十分量の酸素を供給した好気的条件下、酸素供給量を制限した微好気的条件下、もしくは、酸素を供給しない嫌気的条件下の反応培地で行うことができる。
本発明の1,3−ブタンジオールの製造は、水中もしくは水に溶解しにくい有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n−ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの有機溶媒中、もしくは、水性媒体との2相系、もしくは水に溶解する有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシドなどとの混合系により行うことができる。本発明の反応は、バッチ式、流加式、連続式のいずれの生産方式で行うことも可能であり、固定化菌体、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
反応により生成した1,3−ブタンジオールの精製は、遠心分離や濾過などによる分離、有機溶媒による抽出、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、吸着剤による吸着、凝集剤、脱水剤による脱水もしくは凝集、晶析、蒸留、などを適宜組み合わせることにより行うことができる。
たとえば、微生物菌体を含む発酵液を遠心分離や膜濾過等によって微生物菌体を除去、タンパク質を除去した後、水溶液中から、濃縮、蒸留などの公知の方法により1,3−ブタンジオールを精製することができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]Ralstonia eutropha由来のβ-ケトチオラーゼ遺伝子のクローニング
ペプトン 5g/L、Meat extract 3g/LからなるpH 7.0に調製した50mLの液体培地に、Ralstonia eutropha DSM 531を接種し、30℃、21時間、振とう培養した。
得られた培養液から遠心分離によって集菌し、その菌体からゲノムDNAを採取した。ゲノムDNAは、Genomic Tip-100/G(QIAGEN製)Kitにより調製した。
Ralstonia eutropha DSM 531より得られたゲノムDNAに含まれるphbA遺伝子(以下、ReTHL遺伝子と称す、DDBJ ID=J04987、アミノ酸配列 配列番号:21、塩基配列 配列番号:22)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれReTHL-A3、ReTHL-T3)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
ReTHL-A3(配列番号:27)
gacggtacctatatATGACTGATGTTGTCATCGTATCC
ReTHL-T3(配列番号:28)
cacaagcttaTTATTTACGTTCAACTGCCAGCGC
Ralstonia eutropha DSM 531のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマーを用いてReTHL遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマーとゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分10秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約1.2kbのDNA断片が増幅された。
ReTHL遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を図1に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をKpnI、HindIIIで二重消化し、KpnI-HindIII処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、ReTHL遺伝子の発現プラスミドpSQ-RET1を作製した。
[実施例2]ReTHL遺伝子の大腸菌における発現
実施例1で作製したプラスミドpSQ-RET1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株E.coli JM109 (pSQ-RET1) を得た。この形質転換株を以下の方法により培養を行った。
Tryptone 10g/L、Yeast extract 5g/L、NaCl 10g/LからなるpH7.2に調製したLB培地7mLを含む21mmφ試験管に形質転換株を接種し、30.0℃、18時間、攪拌速度250rpm、好気条件下にて培養した。その後、最終濃度0.1mMとなるようにIPTGを添加し、30.0℃、4時間、攪拌速度250rpm、好気条件下にて誘導発現を行った。
得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性を、THL活性測定法−1によって測定したところ、47.1U/mgであった。
[実施例3]Zoogloea ramigera 由来のβ-ケトチオラーゼ遺伝子のクローニング
実施例1と同様に、Zoogloea ramigera DSM 287からゲノムDNAを採取した。
得られたゲノムDNAに含まれるphbA 遺伝子(以下、ZrTHL遺伝子と称す、DDBJ ID=J02631、アミノ酸配列 配列番号:23、塩基配列 配列番号:24)のクローニングを行うために、6種のPCRプライマー(それぞれZrTHL-A2、ZrTHL-T2、ZrTHL-Nco-F1、ZrTHL-Nco-F2、ZrTHL-Nco-R1、ZrTHL-Nco-R2)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
ZrTHL-A2(配列番号:29)
gacggtacctatatATGAGTACTCCATCAATCGTC
ZrTHL-T2(配列番号:30)
cacaagcttaTTAAAGACTTTCGATGCACATCGC
ZrTHL-Nco-F1(配列番号:31)
GGAATCCATGTCAATGGCCCCG
ZrTHL-Nco-F2(配列番号:32)
GCTCGATTCAATGGCGAAGC
ZrTHL-Nco-R1(配列番号:33)
CAATGCGGGGCCATTGACATGG
ZrTHL-Nco-R2(配列番号:34)
CGGAGCTTCGCCATTGAATCGAG
Zoogloea ramigera DSM 287のゲノムDNAを鋳型として、DNA 断片の増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(ZrTHL-A2、ZrTHL-Nco-R1)とゲノムDNA と0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、30秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約400bpのDNA断片1が増幅された。さらに、2種のPCRプライマー(ZrTHL-Nco-F1、ZrTHL-Nco-R2)を使用して同様にPCRを行い、約300bpのDNA断片2が増幅された。さらに、2種のPCRプライマー(ZrTHL-Nco-F2、ZrTHL-T2)を使用してPCRを行い、約500bpのDNA断片3が増幅された。
これら3種のDNA断片を鋳型として、ZrTHL遺伝子の全ORFの構築を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、3種のDNA断片と2 種の PCR プライマー(ZrTHL-A2、ZrTHL-T2)と0.2mM dNTPと3.0UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分20秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約1.2kbのDNA断片が増幅された。
ZrTHL遺伝子を含むプラスミドの作製を図2に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をKpnI、HindIIIで二重消化し、KpnI-HindIII処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、ZrTHL遺伝子の発現プラスミドpSQ-ZRT1を作製した。
[実施例4]ZrTHL遺伝子の大腸菌における発現
実施例3で作製したプラスミドpSQ-ZRT1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQ-ZRT1) を得た。この形質転換株を実施例2に記載の方法により培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のZrTHL活性を、THL活性測定法−1によって測定したところ、31.8U/mgであった。
[実施例5]Escherichia coli 由来のβ-ケトチオラーゼ遺伝子のクローニング
実施例1に記載の方法により、Escherichia coliからゲノムDNAを採取した。
得られたゲノムDNAに含まれるatoB遺伝子(以下、EcTHL遺伝子と称す、DDBJ ID=AP009048、アミノ酸配列 配列番号:25、塩基配列 配列番号:26)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれEcTHL-A1、EcTHL-T1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
EcTHL-A1(配列番号:35)
gacggtacctatatATGAAAAATTGTGTCATCGTCAG
EcTHL-T1(配列番号:36)
cacaagcttaTTAATTCAAGCGTTCAATCACCATC
E.coli JM109のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマー用いてEcTHL遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(EcTHL-A1、EcTHL-T1)とゲノムDNA と0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、1分20秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約1.2kbのDNA断片が増幅された。
EcTHL遺伝子を含むプラスミドの作製を図3に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をKpnI、HindIIIで二重消化し、KpnI-HindIII処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、EcTHL遺伝子の発現プラスミドpSQECTH1を作製した。
[実施例6]EcTHL遺伝子の大腸菌における発現
実施例5で作製したプラスミドpSQECTH1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109(pSQECTH1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のEcTHL活性を、THL活性測定法−2によって測定したところ、5.61U/mgであった。
[実施例7]Ralstonia eutropha 由来のphbB遺伝子のクローニング
実施例1にて調製したRalstonia eutropha DSM 531のゲノムDNA含まれるphbB遺伝子(以下、ReAR1遺伝子と称す、DDBJ ID=J04987、アミノ酸配列 配列番号:9、塩基配列 配列番号:10)のクローニングを行うために、4種のPCRプライマー(それぞれReAR1-A3、ReAR-T3、ReAR-Nco-F1、ReAR-Nco-R1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
ReAR-A3(配列番号:37)
gaggaattcatatATGACTCAACGTATTGCGTATGTG
ReAR-T3(配列番号:38)
cagactagtaTTAGCCCATGTGCAGGCCG
ReAR-Nco-F1(配列番号:39)
CATGGCTTCACTATGGCACTGGC
ReAR-Nco-R1(配列番号:40)
GCCAGTGCCATAGTGAAGCCATG
Ralstonia eutropha DSM 531のゲノムDNAを鋳型として、DNA断片の増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(ReAR-A3、ReAR-Nco-R1)とゲノムDNA と0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、40秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約500bpのDNA断片1が増幅された。さらに2種のプライマー(ReAR-Nco-F1、ReAR-T3)を使用してPCRを行い、約300bpのDNA断片2を増幅させた。
これら2種のDNA断片を用いてReAR1遺伝子の全ORFの構築を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のDNA断片と2 種の PCR プライマー(ReAR-A3、ReAR-T3)と0.2mM dNTPと3.0UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約800bpのDNA断片が増幅された。
ReAR1遺伝子を含むプラスミドの作製を図4に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびReAR1遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTHRA1を作製した。
[実施例8]ReTHL遺伝子およびReAR1遺伝子の大腸菌における発現
実施例7で作製したプラスミドpSQTHRA1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTHRA1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ReAR1活性を3HBD活性測定法によって測定したところ、それぞれ41.3U/mg、6.12U/mgであった。
[実施例9]Zoogloea ramigera 由来のphbB遺伝子のクローニング
実施例3にて調製したZoogloea ramigera DSM 287のゲノムDNA含まれるphbB遺伝子(以下、ZrAR1と称す、WO 9100917、アミノ酸配列 配列番号:11、塩基配列 配列番号:12)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれZrAR-A2、ZrAR-T2)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
ZrAR-A2(配列番号:41)
gaggaattcatatATGAGTCGTGTAGCATTGGTAAC
ZrAR-T2(配列番号:42)
cagactagtaTTAGACGAAGAACTGGCCG
Zoogloea ramigera のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマーを用いてZrAR1遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(ZrAR-A2、ZrAR-T2)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;53℃、30秒;72℃、40秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約700bpのDNA断片が増幅された。
ZrAR1遺伝子を含むプラスミドの作製を図5に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびZrAR1遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTHZA1を作製した。
[実施例10]ReTHL遺伝子およびZrAR1遺伝子の大腸菌における発現
実施例9で作製したプラスミドpSQTHZA1をHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109(pSQTHZA1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ZrAR1活性を3HBD活性測定法にて測定したところ、それぞれ72.9U/mg、0.582U/mgであった。
[実施例11]Streptomyces violaceoruber 由来のactIII遺伝子のクローニング
グルコース 4g/L、Yeast extract 4g/L、Malt extract 10g/L、からなるpH 7.2に調製した50mLの液体培地(YM培地)に、Streptomyces violaceoruber IFO 15146 を接種し、28℃、24時間、振とう培養した。
得られた培養液から遠心分離によって集菌し、その菌体からゲノムDNAを採取した。ゲノムDNAは、Genomic Tip-100/G(QIAGEN製)Kitにより調製した。
得られたゲノムDNAに含まれるactIII遺伝子(以下、SvKR1遺伝子と称す、DDBJ ID=M19536、アミノ酸配列 配列番号:15、塩基配列 配列番号:16)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれSvKR-A4、SvKR-T4)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
SvKR-A4(配列番号:43)
gaggaattcatatATGGCCACGCAGGACTCC
SvKR-T4(配列番号:44)
cagactagtaTTAGTAGTTCCCCAGCCCG
Streptomyces violaceoruber のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマーを用いてSvKR1遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(SvKR-A4、SvKR-T4)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約800bpのDNA断片が増幅された。
SvKR1遺伝子を含むプラスミドの作製を図6に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびSvKR1遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTHSK1を作製した。
[実施例12]ReTHL遺伝子およびSvKR1遺伝子の大腸菌における発現
実施例11で作製したプラスミドpSQTHSK1をHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTHSK1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、SvKR1活性を3HBD活性測定法にて測定したところ、それぞれ7.71U/mg、0.0547U/mgであった。
[実施例13]Geobacillus stearothermophilus由来のβ-ケトアシル-ACP還元酵素遺伝子のクローニング
ポリペプトン 10g/L、Yeast extract 2g/L、MgSO・H2O 1g/LからなるpH 7.0に調製した50mLの液体培地に、Geobacillus stearothermophilus NBRC 12550を接種し、50℃、21時間、振とう培養した。
得られた培養液から遠心分離によって集菌し、その菌体からゲノムDNAを採取した。ゲノムDNAは、Genomic Tip-100/G(QIAGEN製)Kitにより調製した。
得られたゲノムDNAに含まれるβ-ケトアシル-ACP還元酵素遺伝子(以下、BstKR1遺伝子と称す、特開 2002-209592、アミノ酸配列 配列番号:13、塩基配列 配列番号:14)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれBstKR-A3、BstKR-T3)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
BstKR-A3(配列番号:45)
gaggaattcatatATGTCTCAACGTTTTGCAGGTC
BstKR-T3(配列番号:46)
cagactagtaTTAACATTTTGGACCACCTGC
Geobacillus stearothermophilus のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマーを用いてBstKR1遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(BstKR-A3、BstKR-T3)とゲノムDNA 溶液と0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約800bpのDNA断片が増幅された。
BstKR1遺伝子を含むプラスミドの作製を図7に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびBstKR1遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTHBSKを作製した。
[実施例14]ReTHL遺伝子およびBstKR1遺伝子の大腸菌における発現
実施例13で作製したプラスミドpSQTHBSKをHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTHBSK) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、BstKR1活性を3HBD活性測定法にて測定したところ、それぞれ99.0U/mg、1.494U/mgであった。
[実施例15]Clostridium acetobutylicum 由来の3−ヒドロキシブチリル−CoA デヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
ATCC より購入したゲノムDNAに含まれる3−ヒドロキシブチリル−CoA デヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、CaHBD遺伝子と称す、DDBJ ID=AE001437、アミノ酸配列 配列番号:19、塩基配列 配列番号:20)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれCaHBD-A1、CaHBD-T1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
CaHBD-A1(配列番号:47)
gaggaattcatatATGAAAAAGGTATGTGTTATAGGTGC
CaHBD-T1(配列番号:48)
cagactagtaTTATTTTGAATAATCGTAGAAACCTTTTCC
Clostridium acetobutylicum のゲノムDNAを鋳型として、2 種のPCRプライマーを用いてCaHBD遺伝子のクローニングを行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(CaHBD-A1、CaHBD-T1)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製しこれを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約900bpのDNA断片が増幅された。
CaHBD遺伝子を含むプラスミドの作製を図8に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびCaHBD遺伝子を有する共発現プラスミドpSQRTCH1を作製した。
[実施例16]ReTHL遺伝子およびCaHBD遺伝子の大腸菌における発現
実施例15で作製したプラスミドpSQRTCH1をHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQRTCH1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ReAR1活性を3HBD活性測定法にて測定したところ、それぞれ13.8U/mg、63.2U/mgであった。
[実施例17]Pichia finlandica 由来の(R)-2-オクタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
グルコース10g/L、ペプトン(大豆由来) 5g/L、Yeast extract 3g/L、Malt extract 3g/L、からなるpH 7.0に調製した50mLの液体培地に、Pichia finlandica DSM 70280を接種し、25℃、24時間、振とう培養した。
得られた培養液から遠心分離によって集菌し、その菌体からゲノムDNAを採取した。ゲノムDNAは、Genomic Tip-100/G(QIAGEN製)Kitにより調製した。
得られたゲノムDNAに含まれる(R)-2-オクタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、PfODH遺伝子と称す、DDBJ ID=AB259114、アミノ酸配列 配列番号:17、塩基配列 配列番号:18)のクローニングを行うために、6種のPCRプライマー(それぞれPfODH-A3、PfODH-T3、PfODH-Xba-F1、PfODH-Xba-R1、PfODH-Hind-F1、PfOHD-Hind-R1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
PfODH-A3(配列番号:49)
gaggAATTCTAAAATGTCTTATAATTTCCATAACAAGGTTGC
PfODH-T3(配列番号:50)
tcgACTAGTATTATTGTGCTGTGTACCCACCGTCAACC
PfODH-Xba-F1(配列番号:51)
GGCTCTGGAGTACGCATCTCATGGTATTCGTGTAAATTC
PfODH-Xba-R1(配列番号:52)
GAATTTACACGAATACCATGAGATGCGTACTCCAGAGCC
PfODH-Hind-F1(配列番号:53)
GTAAGCCTGCACCCTATTGGGCGTCTGGGTCGTC
PfODH-Hind-R1(配列番号:54)
GACGACCCAGACGCCCAATAGGGTGCAGGCTTAC
Pichia finlandica DSM 70280のゲノムDNAを鋳型として、DNA断片の増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(PfODH-A3、PfODH-Xba-R1)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、30秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約500bpのDNA断片1が増幅された。さらに2種のPCRプライマー(PfODH-Xba-F1、PfODH-Hind-R1)を使用してPCRを行い、DNA断片2が増幅された。さらに2種のPCRプライマー(PfODH-Hind-F1、PfODH-T3)を使用してPCRを行い、約200bpのDNA断片3が増幅された。
これら3種のDNA断片を用いてPfODH遺伝子の全ORFの構築を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、3種のDNA断片と2 種の PCR プライマー(PfODH-A3、PfODH-T3)と0.2mM dNTPと3.0UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;55℃、30秒;72℃、1分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約800bpのDNA断片が増幅された。
PfODH遺伝子を含むプラスミドの作製を図9に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をEcoRI、SpeIで二重消化し、EcoRI-SpeI処理した実施例1で作製したベクターpSQ-RET1と連結し、ReTHL遺伝子およびPfODH遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTHPO2を作製した。
[実施例18]ReTHL遺伝子およびPfODH遺伝子の大腸菌における発現
実施例17で作製したプラスミドpSQTHPO2をHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTHPO2) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。その菌体に1mM DTTを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、PfODH活性を3HBD活性測定法にて測定したところ、それぞれ74.9U/mg、0.0120U/mgであった。
[実施例19]ReTHL-CaHBDを用いた酵素反応における3−ヒドロキシブチリル−CoAの生成
100mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、2.5mM NADH、2.5mM アセチル-CoAを含む組成液中に、実施例14にしたがって調製したReTHLおよびCaHBDを含む無細胞抽出液 6.2μLを加え、30℃、1時間で反応させた。その反応液に、5μL-60%(v/v)過塩素酸、5μL-5N 水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応終了させた。その反応処理液に510μL-200mM リン酸カリウム緩衝液を加え、遠心分離によって上清を得た。その上清をHPLCにより分析した結果、0.27mM 3−ヒドロキシブチリル−CoAが生成していることが確認された。
HPLCの条件は、以下のとおりである。
−HPLCカラム:和光純薬株式会社製 WakosilII 5C18HG(4.6mm x 150mm)
−溶離液: 50mM リン酸緩衝液(pH 5.0):アセトニトリル = 95:5
−カラム温度:30℃
−流速: 1.0mL/min
−検出: 254nmにおけるUV吸収
上記条件下で、3−ヒドロキシブチリル−CoAは、15.3分に溶出された。3−ヒドロキシブチリル−CoA(Sigma 製)を用いて得られた検量線に基づいて蓄積濃度を決定した。
[実施例20]Clostridium acetobutylicum 由来のアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
実施例15にて得られたメガプラスミドpSOL1に含まれるアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、CaAdhE遺伝子と称す、DDBJ ID=AE001438、アミノ酸配列 配列番号:1、塩基配列 配列番号:2)のクローニングを行うために、4種のPCRプライマー(それぞれCaAdhE2-A1、CaAdhE2-T1、CaAdhE2-Nde-F1、CaAdhE2-Nde-R1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
CaAdhE2-A1(配列番号:55)
gaccatATGAAAGTTACAAATCAAAAAGAACTAAAAC
CaAdhE2-T1(配列番号:56)
ctgttaaTTAAAATGATTTTATATAGATATCCTTAAGTTC
CaAdhE2-Nde-F1(配列番号:57)
CTATAGAAGCATACGTTTCGG
CaAdhE2-Nde-R1(配列番号:58)
CCGAAACGTATGCTTCTATAG
Clostridium acetobutylicum ATCC 824のメガプラスミドDNAを鋳型として、DNA断片の増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(CaAdhE2-A1、CaAdhE2-Nde-R1)とメガプラスミドDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、2分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約2kbのDNA断片1が増幅された。さらに2種のプライマー(CaAdhE2-Nde-F1、CaAdhE2-T1)を使用してPCRを行い、約600bpのDNA断片2を増幅させた。
これら2種のDNA断片を用いてCaAdhE遺伝子全ORFの構築を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のDNA断片と2 種の PCR プライマー(CaAdhE2-A1、CaAdhE2-T1)と0.2mM dNTPと3.0UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、2分30秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約2.6kbのDNA断片が増幅された。
CaAdhE遺伝子を含むプラスミドの作製を図10に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をNdeI、PacIで二重消化し、NdeI-PacI処理したベクターpSE420U(WO 2006-132145)と連結し、CaAdhE遺伝子を有する発現プラスミドpSUCAAH1を作製した。
[実施例21]CaAdhE遺伝子の大腸菌における発現
実施例20で作製したプラスミドpSUCAAH1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSUCAAH1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のCaAdhEのBCDH活性を、ブチリル-CoAを基質としたBCDH活性測定法にてブチリル-CoAを基質として測定したところ、0.129U/mgであった。
CaAdhE遺伝子は、アセチル-CoA、ブチリル-CoAに作用することは知られているが、3-ヒドロキシブチリル-CoAに作用することは今までに報告されておらず、不明である。そこで、基質を3-ヒドロキシブチリル-CoAとしてBCDH活性を測定したところ、0.0237U/mgであり、ブチリル-CoAにして18%の相対活性を有していることを見出した。
[実施例22]CaAdhEを用いた酵素反応における1,3-BGの生成
50mM MES緩衝液(pH 6.0)、36mM NADH、15mM 3−ヒドロキシブチリル−CoAを含む組成液中に、実施例21にしたがって調製したCaAdhE酵素を含む無細胞抽出液 0.0938Uを加え、37℃、24時間で反応させた。その反応液を遠心分離し、沈殿物を除いた上清をHPLCにより分析した結果、3.66mM 1,3-BGが生成していることが確認された。
HPLCの条件は、以下のとおりである。
−HPLCカラム:信和化工製 ULTRON PS-80H(8.0mm x 300mm)
−溶離液: 10mM 硫酸水溶液
−カラム温度:40℃
−流速: 0.7mL/min
−検出: RI(視差屈折計)
上記条件下で、1,3-BGは、20.1分に溶出された。1,3-BG(和光製)を用いて得られた検量線に基づいて蓄積濃度を決定した。
[実施例23]Thermoanaerobacter pseudethanolicus 由来のアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
DSMより購入したゲノムDNAに含まれるアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、TpAdhE遺伝子と称す、アミノ酸配列 配列番号:65、塩基配列 配列番号:66)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれTpadhE-A1、TpAdhE-T1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
TpAdhE-A1(配列番号:69)
gaccatATGCCTAACTTATTACAAGAACGCCGCGAAGTAAAAGA
TpAdhE-T1(配列番号:70)
gctgttaattaaTTATTCTCCATAGGCTTTGCGATATATTTCTGC
Thermoanaerobacter pseudethanolicusのゲノムDNAを鋳型として、TpAdhE遺伝子のPCR増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(TpadhE-A1、TpAdhE-T1)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、2分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約2.6 kbのDNA断片が増幅された。
TpAdhE遺伝子を含むプラスミドの作製を図11に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をNdeI、PacIで二重消化し、NdeI-PacI処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、TpAdhE遺伝子を有する発現プラスミドpSQTPAH1を作製した。
[実施例24]TpAdhE遺伝子の大腸菌における発現
実施例23で作製したプラスミドpSQTPAH1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTPAH1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法により培養を行った。
上記方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のTpAdhEの3-ヒドロキシブチリル-CoA に対するBCDH/BDH活性を測定した結果、 0.00538 U/mgであり、調製した3-ヒドロキシブチルアルデヒドに対するBDH活性は、0.0619 U/mgであった。
[実施例25]Propionibacterium freudenreichii subsp. freudenreichii由来のアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
DSMより購入したゲノムDNAに含まれるアルデヒド/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、PfALD遺伝子と称す、アミノ酸配列 配列番号:67、塩基配列 配列番号:68)のクローニングを行うために、2種のPCRプライマー(それぞれPfadhE-A1、PfAdhE-T1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
PfAdhE-A1(配列番号:71)
gaccatATGGATTTCTCATTGACCGAAGACCAGCAG
PfAdhE-T1(配列番号:72)
gctgttaaTTAACTACGGTAGTCGCGCAGTGCACC
Propionibacterium freudenreichii subsp. freudenreichiiのゲノムDNAを鋳型として、PfALD遺伝子のPCR増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(PfadhE-A1、PfAdhE-T1)とゲノムDNAと0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、2分を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約1.1 kbのDNA断片が増幅された。
PfALD遺伝子を含むプラスミドの作製を図12に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をNdeI、PacIで二重消化し、NdeI-PacI処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、PfALD遺伝子を有する発現プラスミドpSQPFAH1を作製した。
[実施例26]PfALD遺伝子の大腸菌における発現
実施例25で作製したプラスミドpSQPFAH1をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQPFAH1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法により培養を行った。
上記方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のPfALDの3-ヒドロキシブチリル-CoA に対するBCDH活性を測定した結果、 0.0826 U/mgであった。
[実施例27]1,3-BG発酵生産のためのプラスミド構築
1,3-BG発酵生産プラスミドを構築するために、実施例20で作製したpSUCAAH1プラスミドのCaAdhE遺伝子のpSQTHRA1へのサブクローニングを図13に示す方法にて行った。すなわち、pSUCAAH1をNdeI、PacIで二重消化し、NdeI-PacI処理したベクターpSQTHRA1と連結し、ReTHL遺伝子、ReAR1遺伝子、CaAdhE遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTRCA1を作製した。
[実施例28]ReTHL遺伝子、ReAR1遺伝子及びCaAdhE遺伝子の大腸菌における発現
実施例27で作製したプラスミドpSQTHRA1をHanahan法により、E. coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQTHRA1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ReAR1活性を3HBD活性測定法、CaAdhEのBCDH活性を、基質をブチリル-CoAとしたBCDH活性測定法にて測定したところ、それぞれ6.46U/mg、0.952U/mg、0.118U/mgであった。
[実施例29]Clostridium acetobutylicum 由来のブタノールデヒドロゲナーゼII遺伝子のクローニング
C. acetobutylicum より、bdhB遺伝子(以下、CaBDHB遺伝子と称す、DDBJ ID=AE001437、アミノ酸配列 配列番号:3、塩基配列 配列番号:4)のクローニングを行うために、6種のPCRプライマー(それぞれCaBDHB-A2、CaBDHB-T2、CaBDHB-Nco-F1、CaBDHB-Nco-R1、CaBDHB-Xba-F1、CaBDHB-Xba-R1)を設計した。以下に設計したセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
CaBDHB-A2(配列番号:59)
ggaccATGGTTGATTTCGAATATTCAATACCAACTAGAA
CaBDHB-T2(配列番号:60)
cgatctagaaTTACACAGATTTTTTGAATATTTGTAGGACTTCGGAG
CaBDHB-Nco-F1(配列番号:61)
GATGGAAATCCGTGGGATATTGTG
CaBDHB-Nco-R1(配列番号:62)
CACAATATCCCACGGATTTCCATC
CaBDHB-Xba-F1(配列番号:63)
GTTTACCATCTCGTCTGCGTGATGTTG
CaBDHB-Xba-R1(配列番号:64)
CAACATCACGCAGACGAGATGGTAAAC
Clostridium acetobutylicumのゲノムDNAを鋳型として、DNA断片の増幅を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、2種のPCRプライマー(CaBDHB-A2、CaBDHB-Nco-R1)とゲノムDNA と0.2mM dNTPと2.5UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、30秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約350bpのDNA断片1が増幅された。さらに2種のプライマー(CaBDHB-Nco-F1、CaBDHB-Xba-R1)を使用してPCRを行い、DNA断片2を増幅させた。さらに2種のプライマー(CaBDHB-Xba-F1、CaBDHB-T2)を使用してPCRを行い、約100bpのDNA断片3を増幅させた。
これら3種のDNA断片を用いてCaBDHB遺伝子の全ORFの構築を行った。すなわち、PfuUltra用buffer中に、3種のDNA断片と2 種の PCR プライマー(CaBDHB-A2、CaBDHB-T2)と0.2mM dNTPと3.0UのPfuUltraを組成とする50μLの溶液を調製し、これを95℃、30秒;50℃、30秒;72℃、1分30秒を1サイクルとして30サイクル繰り返した。その結果、約1.2kbのDNA断片が増幅された。
CaBDHB遺伝子の全体を含むプラスミドの作製を図14に示す方法にて行った。すなわち、PCRより得られたDNA断片をNcoI、XbaIで二重消化し、NcoI-XbaI処理したベクターpSE420Q(WO 2006-132145)と連結し、CaBDHB遺伝子を有する発現プラスミドpSQCABB2を作製した。
[実施例30]CaBDHB遺伝子の大腸菌における発現
実施例29で作製したプラスミドpSQCABB2をHanahan法により、E.coli JM109に導入し、形質転換株 E.coli JM109 (pSQCABB2) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のCaBDHB活性を、ブチルアルデヒドを基質としたBDH活性測定法にて測定したところ、0.0971U/mgであった。
CaBDHBは、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドに作用することは知られているが、3-ヒドロキシブチルアルデヒドに作用することは今までに報告されておらず、不明である。そこで、調製した3-ヒドロキシブチルアルデヒド(3-ヒドロキシブチルアルデヒド:アセトアルデヒド=3:1)を基質としてCaBDHB活性を測定したところ、0.0462U/mgであり、ブチルアルデヒドに対する活性を100%とすると、48%の相対活性を有していることを見出した。
[実施例31]1,3-BG発酵生産のためのプラスミド構築-2
1,3-BG発酵生産プラスミド2を構築するために、実施例29で作製したpSQCABBプラスミドのCaBDHB遺伝子のpSQTRCA1へのサブクローニングを図15に示す方法にて行った。すなわち、pSQCABB2をNcoI、XbaIで二重消化し、NcoI-XbaI処理したベクターpSQTRCA1と連結し、ReTHL遺伝子、ReAR1遺伝子、CaAdhE遺伝子、CaBDHB遺伝子を有する共発現プラスミドpSQTRCB1を作製した。
[実施例32]ReTHL遺伝子、ReAR1遺伝子、CaAdhE遺伝子及びCaBDHB遺伝子の大腸菌における発現
実施例31で作製したプラスミドpSQTRCB1をエレクトロポレーション法により、E. coli W3110に導入し、形質転換株 E.coli W3110 (pSQTRCB1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ReAR1活性を3HBD活性測定法、CaAdhEのBCDH活性をBCDH活性測定法(基質:ブチリル-CoA)、CaBDHB活性をBDH活性測定法(基質:ブチルアルデヒド)にて測定したところ、それぞれ10.0U/mg、2.08U/mg、0.0298U/mg、0.124U/mgであった。
[実施例33]ReTHL遺伝子、ReAR1遺伝子及びCAadhE遺伝子の大腸菌における発現-2
実施例27で作製したプラスミドpSQTHRA1をエレクトロポレーション法により、E. coli HB101に導入し、形質転換株 E.coli HB101 (pSQTHRA1) を得た。この形質転換株を実施例2の方法を利用して培養を行った。
上に述べられる方法にて得られた培養液を2mLのEppendorf Tubeに分注し、遠心分離によって集菌した。嫌気条件下で、その菌体に1mM DTTを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、超音波破砕を行い、遠心分離によって、未破砕菌体および菌体の残渣を除いた無細胞抽出液を得た。
得られた無細胞抽出液のReTHL活性をTHL活性測定法−1、ReAR1活性を3HBD活性測定法、CaAdhEのBCDH活性をBCDH活性測定法(基質:ブチリル-CoA)およびBDH活性測定法(ブチルアルデヒド)にて測定したところ、それぞれ7.36U/mg、1.18U/mg、0.0434U/mg、0.151U/mgであった。
[実施例34]発酵による1,3-BG生産
本実施例の目的は、E.coli JM109 (pSQTRCA1)を利用した発酵において、グルコースから1,3-BGを生産することである。
10g/L Tryptone、5g/L Yeast extract、10g/L NaCl、50mg/L アンピシリンからなるpH7.2に調製したLB培地7mLを含む21mmφ試験管に形質転換株E.coli JM109 (pSQTRCA1)を接種し、30℃、18時間、攪拌速度250rpm、好気条件下にて前培養した。
20g/L Trypton、10g/L Yeast extract、10g/L NaCl、50mg/L アンピシリンからなるpH7.0に調製した液体培地50mLを含む500mL-ヒダ付きフラスコに前培養した培養液を接種し、30.0℃、18時間、攪拌速度140rpmにて本培養した。誘導発現には、0.02mM IPTGを採用した。
発酵液1:20g/L Trypton、10g/L Yeast extract、10g/L NaClからなるpH 7.0に調製した液体培地、56g/L グルコースを含む組成液10mLを有する100mL-ヒダ付きフラスコに、上にしたがって本培養したE.coli JM109(pSQTRCA1)の本培養液から得られた洗浄菌体を植菌率100%となるように加え、30℃、72時間、攪拌速度100rpmとし、シリコン栓で栓をし、通気しない条件で発酵を行った。
発酵液2:MES緩衝液(pH6.0)、56g/L グルコースを含む組成液10mLを有する100mL-ヒダ付きフラスコに、上にしたがって本培養したE.coli JM109(pSQTRCA1)の10倍濃縮した洗浄菌体を植菌率100%となるように加え、30℃、72時間、攪拌速度100rpmとし、シリコン栓で栓をし、通気しない条件で発酵を行った。
発酵を開始してから72時間後の発酵液を2mLサンプリングし、遠心分離により菌体および不溶物を除いた上清をMillex-LH(MILLIPORE製)により濾過した濾液を実施例22と同様の条件でHPLCにより分析した。1,3-BGの生産濃度を表1に示す。プラスミドを有しないE.coli JM109を使用して、同様の発酵条件で発酵を行ったが、検出可能な1,3-BGを生成しないことが確認された。
Figure 0005787360
1)HPLCにより算出している
2) モル収率[%]=100*((生成した1,3-BG[mM])÷(初濃度グルコース[mM]))
[実施例35]発酵による1,3-BG生産-2
実施例34に述べられる方法にてE.coli HB101 (pSQTRCA1)、E.coli HB101 (pSQTRCB1)の前培養および本培養を行った。
発酵液3:6.8g/L Na2HPO4、3.0g/L KH2PO4、0.5g/L NaCl、1.0g/L NH4Cl、493mg/L MgSO4・7H2O、14.7mg/L CaCl2・2H2OからなるpH 7.5に調製したM9培地、100mM HEPES緩衝液(pH 7.5)、0.02mM IPTG、30g/L グルコースを含む組成液100mLを有する500mL-ヒダ付きフラスコに、本培養したE.coli HB101(pSQTRCA1)の10倍濃縮した洗浄菌体を植菌率20%となるように加え、30℃、48時間、攪拌速度140rpmとし、シリコ栓で栓をし、発酵を行った。
発酵液4:発酵温度を37℃にしたこと以外は発酵液3と同一の様式で発酵を行った。
発酵液5:植菌する形質転換株をE.coli HB101 (pSQTRCB1)に変更したこと以外は発酵液4と同一の様式で発酵を行った。
発酵を開始してから48時間後の発酵液を2mLサンプリングし、遠心分離により菌体および不溶物を除いた上清をMillex-LH(MILLIPORE製)により濾過した濾液を実施例22と同様の条件でHPLCにより分析した。1,3-BGの生産濃度を表2に示す。
Figure 0005787360
1)HPLCにより算出している
2)モル収率[%]=100*((生成した1,3-BG[mM])÷(初濃度グルコース[mM]))
[実施例36]生成した1,3-BGの光学純度の決定
発酵液4の発酵48時間後のサンプル1mLから酢酸エチルを使用して有機層を抽出し、塩化ナトリウムを使用して塩析した。得られた抽出液を濃縮後、0.1mL 塩化アセチルを加え、25℃、10分間反応させた。得られた反応液に飽和炭酸水素ナトリウムを用いて中和した後、1mL ヘキサンを使用して有機層を抽出した。その抽出液をHPLCにより分析した結果、(R)-1,3-BGの光学純度は86.6% であった。
HPLCの条件は、以下のとおりである。
−HPLCカラム:ダイセル化学工業株式会社製 CHIRALCEL(4.6mm x 250mm)
−溶離液: ヘキサン:イソプロパノール=19:1
−カラム温度:40℃
−流速: 1.0mL/min
−検出: 220nmにおけるUV吸収
上記条件下で、(S)-1,3-BGは6.8分に、(R)-1,3-BGは8.5分に溶出された。各溶出フラクションの220nmにおけるUV吸収に基づいて光学純度を決定した。
本発明によって、再生可能資源由来の原料であるグルコースなどの炭水化物原料から効率よく1,3−ブタンジオールを生産することができる遺伝子組換え微生物が提供された。また、当該微生物を用いた1,3−ブタンジオールを製造する方法が提供された。本発明の方法は、より安価な原料を利用して1,3−ブタンジオールを製造することができるという点で工業的に有利である。本発明によって、再生可能資源を原料とした1,3−ブタンジオールの生産が可能となった。

Claims (19)

  1. 下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素をコードするポリヌクレオチドが導入されることによって、下記(1)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え大腸菌:
    (a)配列番号:65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素
    (b)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素
    (c)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (d)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (e)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性
    〔式1〕
    Figure 0005787360
    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360
    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
  2. 請求項1に記載の式1及び式2におけるRが共にメチルである、発酵性基質から1,3-ブタンジオールを生成する請求項1に記載の遺伝子組換え大腸菌
  3. 請求項2に記載の、発酵性基質から生成する1,3-ブタンジオールが(R)‐1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遺伝子組換え大腸菌
  4. 下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素をコードするポリヌクレオチドが導入されることによって、下記(1)の酵素活性が増強され、かつ下記(f)から(j)のいずれかに記載の酵素をコードするポリヌクレオチドが導入されることによって、下記(2)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え大腸菌:
    (a)配列番号:65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素
    (b)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素
    (c)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (d)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (e)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素
    (f)配列番号:5又は7のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素
    (g)配列番号:5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素
    (h)配列番号:6又は8のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (i)配列番号:6又は8のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (j)配列番号:5又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
    (2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアルキルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-アルキルジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)
    〔式1〕
    Figure 0005787360
    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360
    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
    〔式3〕
    Figure 0005787360
    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
  5. 請求項に記載の式1〜3におけるRが共にメチルであり、発酵性基質から1,3-ブタンジオールを生成するという特徴を有する、請求項に記載の遺伝子組換え大腸菌
  6. 請求項に記載の発酵性基質から生成する1,3-ブタンジオールが(R) -1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、請求項に記載の遺伝子組換え大腸菌
  7. 下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素をコードするポリヌクレオチドが導入されることによって、下記(1)の酵素活性が増強され、かつ下記(f)から(j)のいずれかに記載の酵素をコードするポリヌクレオチドが導入されることによって、下記(3)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌であって、発酵性基質から式2で表される1,3-アルキルジオールを生成する遺伝子組換え大腸菌:
    (a)配列番号:65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素
    (b)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素
    (c)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (d)配列番号:66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (e)配列番号:65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素
    (f)配列番号:11、13、15、又は17のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素
    (g)配列番号:11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素
    (h)配列番号:12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (i)配列番号:12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素
    (j)配列番号:11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
    (3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存して3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素活性
    〔式1〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
    〔式4〕
    Figure 0005787360

    (式中、R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を、CoAは補酵素Aを表す)
  8. 請求項に記載の式1及び式2におけるRが共にメチルであり、発酵性基質から式5
    〔式5〕
    Figure 0005787360

    で表される(R)-1,3-ブタンジオールを生成する請求項に記載の遺伝子組換え大腸菌
  9. 下記(1)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌の培養物、菌体、およびその処理物からなる群から選択される少なくとも一つの活性物質と、発酵性基質を接触させる工程、及び、式2で表される1,3-アルキルジオールを回収する工程を含む、式2で表されるジオール化合物の製造方法であって、該処理物が、有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた大腸菌、乾燥菌体、または固定化大腸菌である、方法:
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性
    〔式1〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
  10. 前記生成ジオール化合物が式5
    〔式5〕
    Figure 0005787360

    で表される(R)-1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、請求項に記載のジオール化合物の製造方法。
  11. 請求項9(1)に記載の式1で表される反応を触媒する酵素が、国際酵素分類 においてEC 1.2.1.10に分類される酵素であることを特徴とする請求項9又は10に記載のジオール化合物の製造方法。
  12. 請求項9(1)に記載の式1で表される反応を触媒する酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素である、請求項9〜11のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法:
    (a)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (b)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (c)配列番号:2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (d)配列番号:2、66又は68のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (e)配列番号:1、65又は67のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素。
  13. 請求項9に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(2)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌の培養物、菌体、およびその処理物からなる群から選択される少なくとも一つの活性物質と、発酵性基質を接触させる工程、及び、式2で表される1,3-アルキルジオールを回収する工程を含む、式2で表されるジオール化合物の製造方法であって、該処理物が、有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた大腸菌、乾燥菌体、または固定化大腸菌である、方法:
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
    (2)式3で表される、NADH及び/もしくはNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアルキルアルデヒドを還元し、式2で表される1,3-アルキルジオールの生成を触媒する酵素活性(式3は2つの反応を表すのではなく、アルデヒドからアルコール生成のみを表す)
    〔式1〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
    〔式3〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)。
  14. 前記生成ジオール化合物が式5
    〔式5〕
    Figure 0005787360

    で表される(R)-1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、請求項13に記載のジオール化合物の製造方法。
  15. 請求項13に記載の式3で表される反応を触媒する酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、請求項13又は14に記載のジオール化合物の製造方法:
    (a)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (b)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (c)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (d)配列番号:4、6、又は8のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (e)配列番号:3、5、又は7のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素。
  16. 請求項9に記載された下記(1)の酵素活性に加えて、さらに下記(3)の酵素活性が増強された遺伝子組換え大腸菌の培養物、菌体、およびその処理物からなる群から選択される少なくとも一つの活性物質と、発酵性基質を接触させる工程、及び、式2で表される1,3-アルキルジオールを回収する工程を含む、式2で表されるジオール化合物の製造方法であって、該処理物が、有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた大腸菌、乾燥菌体、または固定化大腸菌である、方法:
    (1)式1で表される、NADH及び/又はNADPHを補酵素として3-ヒドロキシアシル-CoAを還元し、3-ヒドロキシアルキルアルデヒドの生成を触媒する酵素活性、及び
    (3)式4で表されるNADH及び/又はNADPHに依存して3-オキソアシル−CoAを還元し、3-ヒドロキシアシル−CoAを生成する酵素活性
    〔式1〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す。CoAは補酵素Aを表す)
    〔式2〕
    Figure 0005787360

    (式中R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を表す)
    〔式4〕
    Figure 0005787360

    (式中、R基は炭素数1〜3個のアルキル基もしくは水素を、CoAは補酵素Aを表す)。
  17. 前記生成ジオール化合物が式5
    〔式5〕
    Figure 0005787360

    で表される(R)-1,3-ブタンジオールであることを特徴とする、請求項16に記載のジオール化合物の製造方法。
  18. 請求項16に記載の式4で表される反応を触媒する酵素であってR体特異的な還元酵素が、下記(a)から(e)のいずれかに記載の酵素であることを特徴とする、請求項16又は17に記載のジオール化合物の製造方法:
    (a)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (b)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する酵素、
    (c)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (d)配列番号:10、12、14、16、又は18のいずれかに記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列を有する酵素、
    (e)配列番号:9、11、13、15、又は17のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素。
  19. 遺伝子組換え大腸菌を培養する工程と、ジオール化合物を生産させる工程を分けて行うことを特徴とする、請求項9〜18のいずれかに記載のジオール化合物の製造方法。
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