次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して密封空間8が形成されている。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス室通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
次に図7により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
次に、図8により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体酸化物型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、改質器20の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
次に、図9乃至図23を参照して、本発明の第1実施形態による固体酸化物型燃料電池1の制御を説明する。
図9は、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1における出力電流と燃料供給量の関係を示すグラフである。図10は、固体酸化物型燃料電池1における出力電流と、供給された燃料により発生する熱量の関係を示すグラフである。
まず、図9の実線に示すように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1は、需要電力に応じて、出力を定格出力電力である700W(出力電流7A)以下で可変できるように構成されている。所要の電力を出力するために必要とされる燃料供給量(L/min)は、図9に実線で示すように設定されている。なお、図9に示す燃料供給量は、後述する、断熱材7に蓄積された熱量の利用を行わない場合のものである。制御手段である制御部110は、需要電力検出手段である電力状態検出センサ126によって検出された需要電力と、推定された蓄熱量に応じて燃料供給量を決定し、これに基づいて燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御するように構成されている。
発電に必要な燃料の量は出力電力(出力電流)に比例するが、図9に実線で示すように、設定されている燃料供給量は、出力電流に比例していない。これは、出力電力に比例して燃料供給量を低下させてしまうと、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルユニット16を発電可能な温度に維持することができなくなるためである。このため、図9に示す例では、出力電流7A付近の大発電電力時には燃料利用率約70%に設定され、出力電流2A程度の小発電電力時には燃料利用率約50%に設定されている。このように、小発電電力領域における燃料利用率を低下させ、発電に利用されずに残った燃料を燃焼させて改質器20等の加熱に使用することにより、燃料電池セルユニット16の温度低下を抑制し、燃料電池モジュール2内を発電可能な温度に維持している。
しかしながら、燃料利用率を低下させることにより、発電に寄与しない燃料を増加させることになるので、小発電電力領域における固体酸化物型燃料電池1のエネルギー効率が低下する。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1においては、制御部110に内蔵された蓄熱量推定手段110a(図6)により蓄熱量を推定し、推定された蓄熱量が大きい場合には、燃料利用率を高くした残存熱量利用制御を実行する。残存熱量利用制御により、図9に実線で示す燃料供給量が変更・補正され、図9の破線に一例を示すように減少される。これにより、小発電電力領域における燃料利用率が上昇され、固体酸化物型燃料電池1のエネルギー効率が向上される。
図10は、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1において、残存熱量の利用を行わずに燃料を供給した場合における出力電流と、供給された燃料の熱量との関係を模式的に示すグラフである。図10に一点鎖線で示すように、燃料電池モジュール2を熱的に自立させ、安定に運転するために必要な熱量は、出力電流の増加と共に単調に増加する。図10に実線で示すグラフは、残存熱量の利用を行わずに燃料が供給された場合における熱量を示している。本実施形態では、中発電電力に相当する出力電流5Aよりも低い領域では、一点鎖線で示す必要な熱量と、実線で示す基本的な燃料供給量の熱量がほぼ一致している。
さらに、出力電流5Aよりも高い領域では、実線で示す基本的な燃料供給量の熱量は、熱自立するために最低限必要な一点鎖線で示す熱量を上回っている。この実線と破線の間の余剰熱量は、燃料電池モジュール2に設けられた蓄熱材である断熱材7に蓄積される。また、固体酸化物型燃料電池1からの出力電流と、この電流を定常的に出力している場合における燃料電池モジュール2内の燃料電池セルユニット16の温度とは相関があり、出力電流を大きくするためには燃料電池セルユニット16の温度を高くする必要があることから、出力電流が大きい状態では燃料電池セルユニット16の温度は高い状態にある。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1では、出力電流5A以上の場合において、より多くの熱量が断熱材7に蓄積される。
本実施形態においては、後述するように、断熱材7に利用可能な熱量が蓄積されている場合には、燃料供給量を減少させるように補正して、燃料利用率を向上させる。一方、燃料供給量を減少させたことにより不足する熱量は、燃料電池モジュール2の断熱材7に蓄積された熱量を利用して補充している。なお、本実施形態においては、断熱材7の熱容量が非常に大きいため、燃料電池モジュール2が大発電電力で所定時間運転された後、発電電力が小さい領域で運転される場合には、断熱材7に蓄積された熱量を2時間以上に亘って利用することができ、この間の燃料供給量を減じる補正を行うことにより燃料利用率が向上される。
次に、図11及び図12を参照して、負荷追従に伴う断熱材7への熱量の蓄積を説明する。
図11は、需要電力の変化と、燃料供給量、及び燃料電池モジュール2から実際に取り出される電流の関係を模式的に示したグラフである。図12は、発電用空気供給量、水供給量、燃料供給量、及び燃料電池モジュール2から実際に取り出される電流の関係の一例を示したグラフである。
図11に示すように、燃料電池モジュール2は、図11の最上段に示す需要電力に応じた電力を生成できるように制御される。制御部110は、需要電力に基づいて、燃料電池モジュール2が生成すべき目標の電流である燃料供給電流値Ifを、図11の2段目のグラフに示すように設定する。燃料供給電流値Ifは、概ね需要電力の変化に追従するように設定されるが、燃料電池モジュール2の応答速度は需要電力の変化に対して極めて緩慢であるため、需要電力の短周期の急激な変化には追従せず、需要電力に緩やかに追従するように設定される。また、需要電力が固体酸化物型燃料電池の最大定格電力を超えた場合には、燃料供給電流値Ifは最大定格電力に対応する電流値まで追従し、それ以上の電流値に設定されることはない。
制御部110は、図11の3段目のグラフに示すように、燃料供給手段である燃料流量調整ユニット38を制御して、燃料供給電流値Ifに対応する電力が生成できる流量の燃料供給量Frを燃料電池モジュール2に供給する。なお、燃料供給量に対する実際に発電に使用される燃料の割合である燃料利用率が一定であるとすれば、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frは比例する。図11のグラフは、燃料供給電流値Ifと燃料供給量Frが比例するものとして描かれているが、後述するように、実際には本実施形態においても燃料利用率は一定ではない。
さらに、図11の最下段のグラフに示すように、制御部110は、燃料電池モジュール2から取り出すことができる電流値である取出可能電流Iinvをインバータ54に対して指示する信号を出力する。インバータ54は、時々刻々急激に変化する需要電力に応じ、取出可能電流Iinvの範囲内で燃料電池モジュール2から電流(電力)を取り出す。需要電力が取出可能電流Iinvを上回る部分については、系統電力から供給される。ここで、図11に示すように、制御部110がインバータ54に指示する取出可能電流Iinvは、電流が増加傾向にある場合、燃料供給量Frの変化に対して所定時間遅れて変化するように設定される。例えば、図11の時刻t10においては、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frが上昇を始めた後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。また、時刻t12においても、燃料供給電流値If及び燃料供給量Frの増加の後、遅れて、取出可能電流Iinvの増加が開始される。このように、燃料供給量Frを増加させた後、実際に燃料電池モジュール2から取り出す電力を増加させるタイミングを遅らせることにより、燃料電池モジュール2に供給された燃料が改質器20等を通って燃料電池セルスタック14に到達するまでの時間遅れや、燃料が電池セルスタック14に到達した後、実際の発電反応が可能になるまでの時間遅れに対処している。これにより、各燃料電池セルユニット16において燃料枯れが発生し、燃料電池セルユニット16が損傷されるのを確実に防止している。
図12は、発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量の変化と、取出可能電流Iinvの関係をより詳細に示したものである。なお、図12に示されている発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量のグラフは、何れも、各供給量に対応する電流値に換算されている。即ち、供給された発電用空気、水、及び燃料が余ることなく全て発電に使用される供給量に設定されているとすれば、各供給量のグラフが取出可能電流Iinvのグラフと重なるように換算されている。従って、各供給量のグラフの、取出可能電流Iinvに対するずれ量は、各供給量の余剰分に対応する。発電に使用されずに残った残余燃料は、燃料電池セルスタック14上方の燃焼部である燃焼室18において燃焼され、燃料電池モジュール2内の加熱に利用される。
図12に示すように、発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量は、常に、取出可能電流Iinvを上回っており、各供給量によって生成可能な電流を上回る電流が燃料電池モジュール2から取り出され、燃料枯れ、空気枯れ等によって燃料電池セルユニット16が損傷されるのを防止している。また、取出可能電流Iinvを上回って供給されている燃料供給量に対し、水供給量は、供給された燃料の全てを水蒸気改質可能な供給量に設定されている。即ち、供給された燃料の全てが水蒸気改質されるように、水供給量は、水蒸気改質に必要な水蒸気の量と、燃料中に含まれる炭素の量との比であるS/Cを考慮して設定されている。これにより、改質器内における炭素析出を防止している。また、需要電力の増加に伴って取出可能電流Iinvも増加傾向にある、図12の領域A、領域Cにおいては、取出可能電流Iinvが横這いである領域Bよりも、燃料供給量等の余裕量が大きく(燃料利用率が低く)設定されている。また、発電電力を増加させる場合には、制御部110に内蔵された電力取出遅延手段(図示せず)により、燃料電池モジュール2に供給する燃料供給量を増加させた後、遅れて、燃料電池モジュール2から出力させる発電電力が増加される。即ち、需要電力の変化に応じて燃料供給量が変化された後、遅れて、燃料電池モジュール2から実際に出力させる電力が変化される。さらに、需要電力の低下に応じて取出可能電流Iinvを急激に低下させた場合(領域C、領域Dの初期)には、各供給量は、取出可能電流Iinvの低下よりも所定時間遅れて低下される。従って、取出可能電流Iinvが急激に低下した後の所定時間の間には、非常に多くの残余燃料が発生する。このような取出可能電流Iinvの急激な低下は、需要電力が急激に低下した場合において、電流の逆潮流を防止するために行われる。このように、発電電力を増加させる際、及び発電電力を低下させる際には、発電電力が一定である場合よりも多くの残余燃料が発生し、この残余燃料が燃料電池モジュール2の加熱に使用されることになる。このため、燃料電池モジュール2を高発電電力で長時間運転した場合ばかりでなく、発電電力を頻繁に増減させた場合にも燃料電池モジュール2は強く加熱され、断熱材7に多くの熱量が蓄積される。
本実施形態の固体酸化物型燃料電池においては、高発電電力で長時間運転した後、発電電力が少なくなった場合に蓄熱を利用するばかりでなく、発電電力の増減等によって蓄積されつつある熱量が、状況に応じて逐次利用される。
次に、図13乃至20を参照して、検出温度Tdに基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定する手順を説明する。
図13は、検出温度Tdに基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定する手順を示すフローチャートである。図14は発電電流に対する適正な燃料電池セルスタック14の温度を示すグラフである。図15は積算値に応じて決定される燃料利用率を示すグラフである。図16は、各発電電流に対して決定され得る燃料利用率の値の範囲を示すグラフである。図17は積算値に応じて決定される空気利用率を示すグラフである。図18は、各発電電流に対して決定され得る空気利用率の値の範囲を示すグラフである。図19は、決定された空気利用率に対して水供給量を決定するためのグラフである。図20は、発電電流に対する適正な燃料電池モジュール2の発電電圧を示すグラフである。
図14に一点鎖線で示すように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2によって生成すべき電流に対して、適正な燃料電池セルスタック14の温度Ts(I)が規定されている。制御部110は、燃料電池セルスタック14の温度が、適正な温度Ts(I)に近づくように、燃料供給量等を制御する。即ち、制御部110は、概略的には、発電電流に対して燃料電池セルスタック14の温度が高い場合(燃料電池セルスタック14の温度が図14の一点鎖線よりも上にある場合)には、燃料利用率を高め、断熱材7等に蓄積されている熱量を積極的に消費して、燃料電池モジュール2内の温度を低下させる。逆に、発電電流に対して燃料電池セルスタック14の温度が低い場合には、燃料利用率を低下させ、燃料電池モジュール2内の温度が低下しないようにする。具体的には、燃料利用率は単純な検出温度Tdのみに基づいて決定されるのではなく、検出温度Td等に基づいて決定される加減算値を積算することにより蓄熱を反映した量を計算し、この量に基づいて燃料利用率等が決定される。この加減算値を積算することによる蓄熱量の推定値は、制御部に内蔵された蓄熱量推定手段110aにより計算される。
図13に示すフローチャートは、温度検出手段である発電室温度センサ142によって検出された検出温度Td等に基づいて発電用空気供給量、水供給量、及び燃料供給量を決定するものであり、所定の時間間隔で実行される。
まず、図13のステップS31においては、検出温度Td及び図14に基づいて、第1加減算値M1が計算される。まず、検出温度Tdが、燃料電池セルスタック14の適正温度Ts(I)に対して、所定の温度範囲内(図14の2本の実線の間)にある場合には、第1加減算値M1は0にされる。
即ち、検出温度Tdが、
Ts(I)−Te≦Td≦Ts(I)+Te
の範囲内にある場合には、第1加減算値M1=0にされる。ここで、Teは第1加減算値閾値温度である。なお、本実施形態においては、第1加減算値閾値温度Teは3℃である。
また、検出温度Tdが、適正温度Ts(I)よりも低く、
Td<Ts(I)−Te (4)
の範囲内(図14における下側の実線よりも下)にある場合には、第1加減算値M1は、
M1=Ki×(Td−(Ts(I)−Te)) (5)
によって計算される。この際、第1加減算値M1は、負の値(減算値)となる。なお、Kiは、所定の比例定数である。
また、検出温度Tdが、適正温度Ts(I)よりも高く、
Td>Ts(I)+Te (6)
の範囲内(図14における上側の実線よりも上)にある場合には、第1加減算値M1は、
M1=Ki×(Td−(Ts(I)+Te)) (7)
によって計算される。この際、第1加減算値M1は、正の値(加算値)となる。このように、第1加減算値M1は、検出温度Tdの他、発電電流に基づいて決定され、これを積算することにより蓄熱量が推定される。即ち、適正温度Ts(I)は、発電電流(電力)に応じて異なるように設定され、この適正温度Ts(I)に基づいて決定される(Ts(I)+Te)の値、及び(Ts(I)−Te)の値に基づいて、第1加減算値M1が正又は負の値に決定される。
なお、検出温度Tdが(Ts(I)+Te)を超えると、第1加減算値M1は正の値となり、後述するように燃料利用率を高くする燃料供給量の変更が行われるので、本明細書においては、各発電電力に対する温度(Ts(I)+Te)を燃料利用率変更温度と称する。また、燃料利用率変更温度(Ts(I)+Te)を超えることにより、燃料利用率を高くした高効率制御に移行した後、高効率制御から蓄積されている熱量の消費を行わない目標温度域制御に復帰するタイミングは、後述するように、第1加減算値M1等の積算値N1idが0まで低下した時点となる。このため、検出温度Tdが燃料利用率変更温度(Ts(I)+Te)よりも低下した後も、暫時、積算値N1idは0よりも大きい値に維持され、高効率制御が行われる。
次に、図13のステップS32においては、最新の検出温度Td、及び1分前に検出された検出温度Tdbに基づいて、第2加減算値M2が計算される。まず、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差の絶対値が所定の第2加減算値閾値温度未満である場合には、第2加減算値M2は0にされる。なお、本実施形態においては、第2加減算値閾値温度は1℃である。
また、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差である変化温度差が所定の第2加減算値閾値温度以上の場合には、第2加減算値M2は、
M2=Kd×(Td−Tdb) (8)
によって計算される。この第2加減算値M2は、検出温度Tdが上昇傾向にある場合には正の値(加算値)となり、検出温度Tdが低下傾向にある場合には負の値(減算値)となる。なお、Kdは、所定の比例定数である。従って、検出温度Tdが上昇している場合において、変化温度差(Td−Tdb)が大きい領域においては、変化温度差が小さい領域よりも、速応推定値である第2加減算値M2が大きく増加される。逆に、検出温度が低下している場合において、変化温度差(Td−Tdb)の絶対値が大きい領域においては、変化温度差の絶対値が小さい領域よりも、第2加減算値M2は大きく減少される。
なお、本実施形態においては、比例定数Kdは一定値であるが、変形例として、変化温度差が正の場合と負の場合で、異なる比例定数Kdを使用することもできる。例えば、変化温度差が負である場合に比例定数Kdを大きく設定することもできる。これにより、検出温度が低下している場合には、検出温度が上昇している場合よりも、変化温度差に対して急激に速応推定値が変化される。或いは、変形例として、変化温度差の絶対値が大きい領域において、小さい領域よりも比例定数Kdを大きく設定することもできる。これにより、変化温度差の絶対値が大きい領域においては、変化温度差の絶対値が小さい領域よりも、変化温度差の変化に対して急激に速応推定値が変化される。また、変化温度差の正負に基づく比例定数Kdの変更と、変化温度差の絶対値の大小に基づく比例定数Kdの変更を組み合わせることもできる。
次いで、図13のステップS33においては、ステップS31で計算された第1加減算値M1、及びステップS32で計算された第2加減算値M2を、第1積算値N1idに積算する。第1積算値N1idには、第1加減算値M1により、断熱材7等に蓄積された利用可能な蓄熱量が反映され、第2加減算値M2により、直近の検出温度Tdの変化が反映される。即ち、第1積算値N1idは、断熱材7等に蓄積された利用可能な蓄熱量の推定値として利用することができる。また、積算は、固体酸化物型燃料電池の運転開始後継続的に、図13のフローチャートが実行される毎に行われ、前回計算された第1積算値N1idに、第1加減算値M1及び第2加減算値M2が加算又は減算され、新たな第1積算値N1idに更新される。第1積算値N1idは、0〜4の間の値をとるように制限されており、第1積算値N1idが4に到達した場合には、値は次に減算が行われるまで4に保持され、第1積算値N1idが0まで減少した場合には、値は次に加算が行われるまで0に保持される。
なお、ステップS33においては、第1積算値N1idに加え、第2積算値N2idの値も計算する。第2積算値N2idは、燃料電池モジュール2に電圧降下が発生していない場合には、第1積算値N1idと全く同様に計算され、第1積算値N1idと同一の値を取る。また、燃料電池モジュール2に電圧降下が発生した場合には、第1積算値N1idの積算が停止され、第1積算値N1idと第2積算値N2idは異なる値を取るようになる。第1、第2積算値については後述する。
なお、上記のように、本実施形態においては、第1加減算値M1と第2加減算値M2の和を第1積算値N1idに積算することにより、積算値を計算している。即ち、
N1id=N1id+M1+M2 (9)
により、第1積算値N1idを計算している。ここで、変形例として、第1加減算値M1と第2加減算値M2の積を積算することにより、積算値を計算しても良い。即ち、この変形例では、第1積算値N1idは、
N1id=N1id+Km×M1×M2 (10)
により計算される。ここで、Kmは、所定の条件に応じて変更される可変の係数である。また、この変形例においては、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差の絶対値が所定の第2加減算値閾値温度未満である場合には、第2加減算値M2は1にされる。
次いで、ステップS34において、燃料利用率を最適に調整し、燃料供給量を減少させるための燃料利用率調整サブルーチン(図21)を実行する。後述するように、図21に示すサブルーチンでは、検出温度Tdが図14に示す適正温度範囲内にある場合において、所定の条件の下に第2積算値N2idの値を操作して、結果的に燃料利用率を向上させて燃料供給量を減少させる。なお、図21のサブルーチンは、図13のフローチャートの実行毎に毎回呼び出されるのではなく、所定回数の実行毎に1回呼び出される。本実施形態においては、約20秒に1回、図21のサブルーチンが実行される。
さらに、図13のステップS35においては、計算された第1積算値N1idに基づいて、図15及び図16のグラフを使用して、燃料利用率が決定される。
図15は、計算された第1積算値N1idに対する燃料利用率Ufの設定値を示すグラフである。図15に示すように、第1積算値N1idが0である場合には、燃料利用率Ufは最小値である最小燃料利用率Ufminに設定される。また、第1積算値N1idの増加と共に燃料利用率Ufも増加し、第1積算値N1id=1において最大値である最大燃料利用率Ufmaxとなる。この間、燃料利用率Ufは、第1積算値N1idが小さい領域では傾きが小さく、第1積算値N1idが1に近づくほど傾きが大きくなる。即ち、推定蓄熱量が大きい領域においては、推定蓄熱量が小さい領域よりも、推定蓄熱量の変化に対して大幅に燃料利用率Ufが変化される。換言すれば、推定された蓄熱量が大きいほど大幅に燃料利用率Ufを高めるように燃料供給量が減少される。さらに、第1積算値N1idが1よりも大きい場合には、燃料利用率Ufは最大燃料利用率Ufmaxに固定される。これらの最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxの具体的な値は、発電電流に基づいて、図16に示すグラフにより決定される。このように、断熱材7等に利用可能な熱量が蓄積されていることが推定された場合には、利用可能な熱量が蓄積されていない場合よりも同一の発電電力に対して燃料利用率が高くなるように、燃料供給量が減少される。
図16は、各発電電流に対し、燃料利用率Ufがとり得る値の範囲を示すグラフであり、各発電電流について燃料利用率Ufの最大値及び最小値が示されている。図16に示すように、各発電電流に対する最小燃料利用率Ufminは、発電電流の増加と共に大きくなるように設定されている。即ち、発電電力が大きいときは燃料利用率が高く、発電電力が小さいときには燃料利用率が低くなるように設定されている。この最小燃料利用率Ufminの直線は、図9における実線に対応するものであり、この直線上の燃料利用率に設定された場合には、断熱材7等に蓄積された熱量を利用することなく、燃料電池モジュール2は熱的に自立することができる。
一方、最大燃料利用率Ufmaxは、各発電電流に対して折れ線状に変化するように設定されている。ここで、各発電電流に対して燃料利用率Ufがとり得る値の範囲(最大燃料利用率Ufmaxと最小燃料利用率Ufminの差)は、最大の発電電流で最も狭く、発電電流が減少するにつれて広くなる。これは、最大の発電電流付近では、熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminが高く、蓄熱を利用しても燃料利用率Ufを高める(燃料供給量を減じる)余地が少ないためである。さらに、発電電流が減少するにつれて熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminは低くなるため、蓄熱を利用することにより燃料供給量を減じる余地が大きくなり、蓄熱量が多い場合には、燃料利用率Ufを大幅に高めることが可能である。このため、発電電力が小さい領域においては、発電電力が大きい領域よりも、広い範囲で燃料利用率が変更される。
また、発電電流が非常に小さい、所定の利用率抑制発電量IU以下の領域においては、発電電力が小さくなるほど燃料利用率Ufがとり得る値の範囲が狭くなるように設定されている。これは、発電電流が小さい領域では、熱的に自立可能な最小燃料利用率Ufminが低く、これを改善する余地は大きい。しかしながら、発電電流が小さい領域では、燃料電池モジュール2内の温度が低いため、この状態で大幅に燃料利用率Ufを改善し、断熱材7等に蓄積されている熱量を急激に消費すると、燃料電池モジュール2内の過剰な温度低下を招くリスクがある。このため、発電電流が非常に小さい利用率抑制発電量IU以下の領域においては、発電電力が小さくなるほど燃料利用率Ufを高める変更量が大幅に抑制される。即ち、燃料供給量を減少させる変更量は燃料電池モジュール2の発電量が少ないほど少なくなる。これにより、急激な温度低下のリスクを回避すると共に、蓄積された熱量を長時間に亘って利用することを可能にしている。
本実施形態においては、制御部110に内蔵された燃料供給量変更手段(図示せず)により、最小燃料利用率Ufminに対して燃料利用率Ufが高くなるように燃料供給量が減少される。この燃料供給量変更手段(図示せず)は、ベースとなる燃料供給量を変更して燃料利用率を高めるように作用する。
図13のステップS35においては、発電電流に基づいて、最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxの具体値を、図16のグラフを使用して決定する。次に、決定された最小燃料利用率Ufmin及び最大燃料利用率Ufmaxを図15のグラフに適用し、ステップS33において計算された第1積算値N1idに基づいて、燃料利用率Ufを決定する。
次に、図13のステップS36においては、第2積算値N2idに基づいて、図17及び図18のグラフを使用して、空気利用率が決定される。
図17は、計算された第2積算値N2idに対する空気利用率Uaの設定値を示すグラフである。図17に示すように、第2積算値N2idが0乃至1である場合には、空気利用率Uaは最大値である最大空気利用率Uamaxに設定される。さらに、第2積算値N2idが1を超えて増加すると共に空気利用率Uaは低下し、第2積算値N2id=4において最小値である最小空気利用率Uaminとなる。このように、空気利用率Uaを低下させることによる増加分の空気は冷却用の流体として作用するので、図17に示す空気利用率Uaの設定は、強制冷却手段として作用する。これらの最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxの具体的な値は、発電電流に基づいて、図18に示すグラフにより決定される。
図18は、各発電電流に対し、空気利用率Uaがとり得る値の範囲を示すグラフであり、各発電電流について燃料利用率Uaの最大値及び最小値が示されている。図18に示すように、各発電電流に対する最大空気利用率Uamaxは、発電電流の増加と共に僅かに大きくなるように設定されている。一方、最小空気利用率Uaminは、発電電流の増加と共に低下する。空気利用率Uaを、最大空気利用率Uamaxよりも低下させる(空気供給量を増大させる)ことは、発電に必要な空気よりも多い空気を燃料電池モジュール2内に導入することになり、これにより、燃料電池モジュール2内の温度は低下される。従って、燃料電池モジュール2内の温度が過剰に上昇し、温度を低下させる必要がある場合には、空気利用率Uaを低下させる。本実施形態においては、発電電流の増加と共に最小空気利用率Uaminを低下(空気供給量を増加)させていくと、所定の発電電流において、最小空気利用率Uaminに対応する空気供給量が発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量を超えてしまう。このため、最小空気利用率Uaminが図18において破線で示されている所定の発電電流以上の領域では、図17のグラフによって設定された空気利用率Uaを実現することができない場合がある。この場合には、実際に供給される空気供給量は、設定された空気利用率Uaに関わらず、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量に固定される。これに伴い、所定の発電電流以上では、実際に実現される最小の空気利用率Uaは増大する。また、最大空気供給量が大きい発電用空気流量調整ユニットを使用した場合には、図18に破線で示された部分の最小空気利用率Uaminを実現することもできる。なお、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量に達することにより規定された空気利用率Uaを、限界最小空気利用率ULaminと記載する。
図13のステップS36においては、発電電流に基づいて、最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxの具体値を、図18のグラフを使用して決定する。次に、決定された最小空気利用率Uamin及び最大空気利用率Uamaxを図17のグラフに適用し、ステップS33において計算された第2積算値N2idに基づいて、空気利用率Uaを決定する。なお、ステップS34において呼び出されるサブルーチンにより第2積算値N2idの値が変更されている場合には、その値が使用される。
次に、図13のステップS37においては、ステップS36において決定された空気利用率Uaに基づき、図19を使用して水蒸気量と炭素量の比であるS/Cを決定する。
図19は、横軸を空気利用率Ua、縦軸を、供給された水蒸気量と、燃料に含まれる炭素量との比S/Cとしたグラフである。
まず、ステップS36において設定された空気利用率Uaが、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量によって規定されていない発電電流の領域(図19におけるUamax〜ULamin間)では、水蒸気量と炭素量の比S/Cの値は、2.5に固定される。なお、水蒸気量と炭素量の比S/C=1とは、供給された燃料に含まれる炭素の全量が、供給された水(水蒸気)により化学的に過不足なく水蒸気改質される状態を意味する。従って、水蒸気量と炭素量の比S/C=2.5とは、燃料を水蒸気改質するために化学的に必要最小限の水蒸気量の2.5倍の水蒸気(水)が供給されている状態を意味する。実際には、S/C=1となる水蒸気量では改質器20内において炭素析出が発生してしまうため、S/C=2.5程度となる水蒸気量が燃料を水蒸気改質するための適量である。
次に、ステップS36において設定される空気利用率Uaが、発電用空気流量調整ユニット45の最大空気供給量によって制限される発電電流の領域では、図19のグラフを使用して水蒸気量と炭素量の比S/Cが決定される。図19において、横軸は空気利用率Uaであり、空気利用率Uaが大きく、最大空気利用率Uamaxに近いほど空気供給量は少なくなる。一方、空気利用率Uaを低下させ、最小空気利用率Uamin(図18における破線)に近づくと、空気供給量が限界に達し、空気利用率Uaは限界最小空気利用率ULaminになる。図19に示すように、空気利用率Uaが限界最小空気利用率ULaminよりも大きい(空気供給量が少ない)場合には、水蒸気量と炭素量の比S/C=2.5に設定される。さらに、ステップS36において決定された空気利用率Uaが、限界最小空気利用率ULaminよりも小さい(空気供給量が多い)場合(図19におけるUamin〜ULamin間)には、空気利用率Uaの減少と共に水蒸気量と炭素量の比S/Cは増大され、最小空気利用率Uaminにおいて、S/C=3.5に設定される。即ち、ステップS36において決定された空気利用率Uaが、限界最小空気利用率ULaminにより実現できない場合(空気利用率Uaが図18の斜線の範囲内に決定された場合)には、水蒸気量と炭素量の比S/Cを増大させ、水供給量を増大させる。これにより、改質器20から流出する改質された燃料ガスの温度を低下させ、燃料電池モジュール2内の温度を低下傾向にする。このように、空気利用率Uaを低下させて空気供給量を増加させた後、水供給量を増大させると、増加分の水(水蒸気)は、冷却用の流体として作用するので、図19に示す水供給量の設定は強制冷却手段として作用する。
ステップS38においては、ステップS35、S36、及びS37において決定された燃料利用率Uf、空気利用率Ua、及び水蒸気量と炭素量の比S/Cと、発電電流に基づいて、具体的な燃料供給量、空気供給量、水供給量を決定する。即ち、全量が発電に使用されるとした場合の燃料供給量を、決定された燃料利用率Ufで除することにより実際の燃料供給量を計算し、全量が発電に使用されるとした場合の空気供給量を決定された空気利用率Uaで除することにより実際の空気供給量を計算する。また、計算された燃料供給量及びステップS37において決定された水蒸気量と炭素量の比S/Cに基づいて、水供給量を計算する。
次いで、ステップS39において、制御部110は、燃料流量調整ユニット38、発電用空気流量調整ユニット45、及び水供給手段である水流量調整ユニット28に信号を送り、ステップS38において計算された量の燃料、空気、及び水を供給し、図13のフローチャートの1回の処理を終了する。
次に、図13のフローチャートを実行する時間間隔を説明する。本実施形態において、図13のフローチャートは、出力電流が大きい場合には、0.5秒毎に実行され、出力電流が低下するにつれて、その2倍の1秒、4倍の2秒、8倍の4秒毎に実行される。これにより、第1及び第2加減算値が一定値である場合には、時間当たりの第1又は第2積算値の変化は、出力電流が少ないほど緩やかになる。即ち、蓄熱量推定手段110aは、出力電流(発電電力)が大きいほど蓄熱量の推定値を時間に対して急激に変化させる。これにより、積算値による蓄熱量の推定が、実際の蓄熱量を良く反映したものとなる。
次に、図20を参照して、燃料電池セルスタック14の出力電圧が低下した場合における、燃料供給量、空気供給量、及び水供給量の決定手順を説明する。図20は、燃料電池モジュール2による発電電流に対する発電電圧を示す図である。一般に、燃料電池セルスタック14には、内部抵抗が存在するため、図20に示すように、燃料電池モジュール2から出力される電流が増大すると、電圧は低下する。図20に示す一点鎖線は、燃料電池モジュール2が適正に運転されている場合における発電電流と発電電圧の関係を示している。また、燃料電池モジュール2の運転状態によっては、一時的に、一点鎖線に示されている発電電流と発電電圧の関係よりも発電電圧が低下する。或いは、燃料電池モジュール2に劣化が生じている場合には、燃料電池セルスタック14の内部抵抗が増大するため、同一の発電電流に対する発電電圧が恒常的に低下する。
本実施形態の固体酸化物型燃料電池においては、初期の発電電圧に対して、発電電圧が10%以上低下し、発電電圧が図20の実線よりも下の領域に入ると、この発電電圧の低下に対応した処理により燃料供給量、空気供給量、及び水供給量を決定している。
即ち、発電電圧が図20の実線よりも下の領域にある場合には、図13のステップS33において、第1積算値N1idの積算を停止させ、第2積算値N2idの積算のみが継続される。これにより、燃料利用率Ufを決定するための図15のグラフを参照する際に使用される第1積算値N1idの値は、一定値に固定される。これにより、燃料利用率Ufは、発電電圧が図20の実線よりも下の領域から脱するまで固定される。このように、燃料電池モジュール2の発電電圧に大きな電圧降下が発生している場合には、燃料利用率Ufを高める変更が少なくされる。一方、空気利用率Uaを決定するための図17のグラフを参照する際に使用される第2積算値N2idの値は、従前の通り増減され、空気利用率Uaの増減は継続される。このように、燃料利用率Ufは、推定蓄熱量に対応した第1、第2積算値、需要電力の他に、燃料電池モジュール2の出力電圧に基づいて変更される。
次に、図21を参照して、燃料利用率調整制御を説明する。
図21は、図13のステップS34において呼び出される、燃料利用率調整制御を行うためのサブルーチンのフローチャートである。
上述したように、図13に示したフローチャートでは、検出温度Tdに基づいて第1加減算値M1、第2加減算値M2を決定し、これらを積算することにより、蓄熱量の推定値である第1、第2積算値N1id、N2idを計算した(図13、ステップS33)。さらに、これらの第1、第2積算値N1id、N2idに基づいて燃料利用率Uf、空気利用率Ua等が計算され、燃料及び発電用空気が供給された。このようにして燃料供給量及び発電用空気供給量を決定することにより、燃料電池モジュール2内の断熱材7に利用可能な熱量が蓄積されている場合にはこれが利用され、燃料利用率を高めながら燃料電池モジュール2内の温度が適正温度の範囲(図14)内に維持される。燃料電池モジュール2が適正温度に安定している状態では、燃料電池セルスタック14の発電熱、及び発電に利用されずに残った残余燃料の燃焼熱による加熱効果と、発電用空気による冷却効果がバランスしている。
この状態では、検出温度Tdが適正温度範囲(Ts(I)−Te≦Td≦Ts(I)+Te)から外れるまで、第1、第2積算値N1id、N2idの値は変化せず(ただし、第2加減算値M2は0とする)、燃料利用率Uf及び空気利用率Uaは従前の値が維持される。ここで、第1積算値N1idと第2積算値N2idの値が同一である場合には、燃料利用率Ufが最大燃料利用率でない場合(N1id=0〜1)には、空気利用率Uaは最大空気利用率(空気供給量最小、N2id=0〜1)となる。
一方、発電電圧の低下(図20)が発生した場合には、第1積算値N1idと第2積算値N2idの値は異なるものとなる。例えば、第1積算値N1id=0.5であり、第2積算値N2id=2.0の場合には、燃料利用率Uf、空気利用率Uaとも、最大値を取らない状態になる。このような状態においては、燃料利用率Ufが低下されることにより残余燃料が増加され、加熱が行われていると同時に、空気利用率Uaが低下されているため、発電用空気も増量されており、燃料電池モジュール2内は冷却されている。即ち、このような状態においては、燃料供給量を増加させることによる加熱と、発電用空気供給量を増加させることによる冷却が同時に行われて、熱的にバランスしていることになる。従って、この状態は、図13に示す適正温度制御の結果、適正温度範囲内で熱的にバランスし、安定した運転状態ではあっても、エネルギー効率の低いものとなる。また、この状態では、燃料電池モジュール2は適正温度の範囲内にあるため、第1、第2積算値N1id、N2idの値は変化せず、発電電力の大幅な変更等により運転状態が大きく変更されるまで、比較的長時間、効率の悪い安定状態が継続してしまう。制御部110に内蔵された燃料利用率調整手段110b(図6)は燃料利用率調整制御を実行し、熱的なバランスを維持しながら、このような効率の悪い安定状態から早期に脱出させるように作用する。この燃料利用率調整制御は、図21に示すフローチャートにより実行される。
まず、図21のステップS41においては、検出温度Tdが、適正温度範囲(Ts(I)−Te≦Td≦Ts(I)+Te)内にあるか否かが判断される。検出温度Tdが適正温度範囲内にある場合にはステップS42に進み、適正温度範囲内にない場合にはステップS46に進む。ステップS46においては、燃料利用率調整制御を実行しないことが決定され、図21のフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、検出温度Tdが、適正温度範囲内にない場合には、燃料電池モジュール2内の温度を適正温度範囲内に収束させる適正温度制御(図13)が優先され、燃料利用率調整制御は実行されない。これにより、熱的にバランスがとれていない燃料電池モジュール2に燃料利用率調整制御を適用し、急激な温度降下や、過昇温が発生するリスクが回避される。
一方、ステップS42においては、最新の検出温度Tdと1分前の検出温度Tdbの差である変化温度差の絶対値が所定の第2加減算値閾値温度未満であるか否かが判断される。変化温度差の絶対値が第2加減算値閾値温度未満である場合にはステップS43に進み、第2加減算値閾値温度以上である場合にはステップS46に進みフローチャートの1回の処理を終了する。このように、検出温度Tdが適正温度範囲内にある場合でも、その変化温度差が大きく、温度の変化率が所定の補正禁止変化率以上である場合には、急激な温度降下や過昇温のリスクがあるため、燃料利用率調整制御は実行されない。また、上述したように、本実施形態においては、第2加減算値閾値温度は1℃である。
次に、ステップS43においては、変化温度差の絶対値が第2加減算値閾値温度未満である状態が、所定の燃料利用率調整制御待機時間以上継続しているか否かが判断される。燃料利用率調整制御待機時間以上継続している場合にはステップS44に進み、継続していない場合にはステップS46に進みフローチャートの1回の処理を終了する。このように、変化温度差の絶対値が第2加減算値閾値温度未満であっても、近時に第2加減算値閾値温度を超えていた場合には、燃料電池モジュール2内の温度は、まだ十分に安定していないと判断して、燃料利用率調整制御の実行は保留される。好ましくは、燃料利用率調整制御待機時間は、例えば0.5分から20分の燃料電池モジュール2の熱応答性能に適した時間を選択する。
一方、ステップS44においては、第1積算値N1idの値が、0以上、1.0未満であるか否かが判断される。第1積算値N1idの値が0以上、1.0未満である場合には、ステップS45に進み、第1積算値N1idの値が1.0以上である場合にはステップS46に進みフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、第1積算値N1idの値が1.0以上である場合には、燃料利用率Ufは既に最大値で運転されている(図15)ため、燃料利用率Ufを改善する(燃料供給量を減少させる)余地はなく、燃料利用率調整制御は実行されない。
次に、ステップS45においては、第2積算値N2idの値が、1.0よりも大きいか否かが判断される。第2積算値N2idの値が1.0よりも大きい場合には、ステップS47に進み、第2積算値N2idの値が1.0以下である場合にはステップS46に進みフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、第2積算値N2idの値が1.0以下である場合には、発電用空気利用率Uaは既に最大値で運転されている(図17)ため、これ以上発電用空気供給量を減じることができず、燃料利用率調整制御は実行されない。
ステップS47においては、検出温度Tdが適正温度範囲内にあり、その温度状態が十分に安定していると判断されると共に、残余燃料による加熱と、発電用空気供給量を増加させることによる冷却が同時に行われている状態であるため、燃料利用率調整制御が実行される。具体的には、燃料利用率調整制御として、第2積算値N2idの値が強制的に0に変更される。第2積算値N2idの値が0に変更されることにより、発電用空気供給量は、最大空気利用率に対応する値に減少される(図17)。即ち、ステップS47における処理は、図13のフローチャートによる適正温度制御により設定された発電用空気供給量を補正する燃料利用率調整手段として機能する。
残余燃料による加熱と、発電用空気供給量増加による冷却により熱的にバランスしている状態から、発電用空気供給量が減少されると、燃料電池モジュール2内の温度は上昇傾向となる。燃料電池モジュール2内の温度が上昇傾向となると、加減算値、特に、第2加減算値M2が正の値になり、第1積算値N1idの値が増加する(第2積算値N2idも増加)。第1積算値N1idの値が増加すると、適正温度制御(図13)が機能し、その結果、燃料利用率Ufの値が高められ、燃料供給量が減少される。燃料供給量の減少により、燃料電池モジュール2内の温度は低下傾向になり、燃料利用率調整制御実行前よりも燃料利用率Uf及び発電用空気利用率Uaが高められた状態で、燃料電池モジュール2内の熱的なバランスが回復する。また、上記のように、燃料利用率調整制御は、燃料電池モジュール2内の温度が極めて安定した状態で実行される。このため、燃料利用率調整制御により、積極的に燃料電池モジュール2内の熱的なバランスを崩した場合でも、検出温度Tdは概ね適正温度範囲内に維持されたまま、燃料電池モジュール2は、新たな熱的バランス状態に復帰される。
次に、図13、図21及び図22を参照して、固体酸化物型燃料電池1における適正温度制御及び燃料利用率調整制御の作用を説明する。図22は、燃料利用率調整制御により、燃料利用率が改善された一例を示すタイムチャートである。
まず、図13のステップS33において計算される第1積算値N1idの値が0である場合には、ステップS34において決定される燃料利用率Ufが、その発電電流における最小燃料利用率Ufmin(燃料供給量最大)に設定される。これにより、第1積算値N1idの値が0であり、断熱材7等に蓄積された熱量が少ない状態においても、燃料電池モジュール2が熱的に自立できる十分な燃料が供給される。また、ステップS33において計算される第2積算値N2idの値が、第1積算値N1idと同様に0である場合には、ステップS35において決定される空気利用率Uaが、その発電電流における最大空気利用率Uafmax(空気供給量最小)に設定される。このため、燃料電池モジュール2に導入される発電用の空気により燃料電池セルスタック14が冷却される作用は最小にされ、燃料電池セルスタック14の温度を上昇傾向にすることができる。
次に、検出温度Tdが適正温度Ts(I)よりも高く、Td>Ts(I)+Teの状態で燃料電池モジュール2が運転されると、第1加減算値M1の値は正値となり、第1積算値N1idの値が0よりも大きくなる。これにより、図15において、最小燃料利用率Ufminよりも高い燃料利用率Ufが設定されて燃料供給量が減少され、発電に使用されずに残る残余燃料の量が減少される。燃料利用率Ufは、燃料供給量変更手段110aにより、推定蓄熱量に対応した第1積算値N1idの値が大きいほど大幅に高くされる。燃料利用率Ufが高められることにより、燃料供給量は熱自立可能な供給量よりも少なくされ、断熱材7等に蓄積された熱量を利用した高効率制御が実行される。残余燃料の量が減少され、断熱材7等に蓄積された熱量が利用されるので、燃料供給量変更手段110aは、発電を継続しながら燃料電池モジュール2内の温度上昇を抑制する。Td>Ts(I)+Teの状態で運転が継続されると、正値の第1加減算値M1の積算が繰り返され、第1積算値N1idの値も増大する。第1積算値N1idが1に達すると、燃料利用率Ufは、最大燃料利用率Uafmax(燃料供給量最小)に設定される。このように、燃料電池モジュール2に供給される燃料は、断熱材7等に蓄積された熱量を反映した、検出温度Tdの過去の履歴に基づいて決定される。
第1積算値N1idが更に増大し、1を超えた場合においても、図15に示すように、燃料利用率Ufは、最大燃料利用率Uafmax(燃料供給量最小)に維持される。一方、第1積算値N1idと同一の値をとる第2積算値N2idの値(燃料電池モジュール2の出力電圧が低下していない場合)も1を超えるので、図17に基づいて、空気利用率Uaが低下(空気供給量増加)される。これにより、燃料電池モジュール2内は、供給される空気の増加により冷却傾向となる。
これに対して、検出温度Tdが適正温度Ts(I)よりも低く、Td<Ts(I)−Teの状態で燃料電池モジュール2が運転されると、第1加減算値M1の値は負値となり、第1積算値N1idの値は減少される。これにより、燃料利用率Ufは、維持(第1積算値N1id>1)又は低下(第1積算値N1id≦1)される。また、空気利用率Uaは、増大(第2積算値N2id>1)又は維持(第2積算値N2id≦1)される。これにより、燃料電池モジュール2内の温度を上昇傾向にすることができる。
以上は、検出温度Tdの履歴に基づいて計算される第1加減算値M1のみに注目した固体酸化物型燃料電池の作用であるが、第1積算値N1id及び第2積算値N2idは、第2加減算値M2によっても影響を受ける。燃料電池モジュール2、特に、燃料電池セルスタック14は、非常に熱容量が大きく、その検出温度Tdの変化は極めて緩慢である。このため、検出温度Tdが一旦上昇傾向に入ると、その温度上昇を短時間で抑制することは困難であり、また、検出温度Tdが低下傾向に入った場合にも、これを上昇傾向に戻すには長い時間を要する。このため、検出温度Tdに上昇又は低下の傾向が現れた場合には、これに迅速に反応して第1、第2積算値を修正する必要がある。
即ち、最新の検出温度Tdが、1分前の検出温度Tdbよりも第2加減算値閾値温度以上高い場合には、第2加減算値M2が正の値となり、第1、第2積算値が増大される。これにより、検出温度Tdが上昇傾向に入ったことを第1、第2積算値に反映させることができる。同様に、最新の検出温度Tdが、1分前の検出温度Tdbよりも第2加減算値閾値温度以上低い場合には、第2加減算値M2が負の値となり、第1、第2積算値が減少される。即ち、発電室温度センサ142により検出された最新の検出温度Tdと、過去の検出温度Tdbとの差である変化温度差に基づいて速応推定値である第2加減算値M2が計算される。従って、検出温度Tdが急激に低下している場合には、緩やかに低下している場合よりも、燃料利用率Ufを高める変更量が大幅に抑制され、また、発電電力が利用率抑制発電量IU以下の領域では最大燃料利用率Ufmaxも低く設定されているため、変更量は、より大幅に抑制される。これにより、検出温度Tdが低下傾向に入ったことを第1、第2積算値に反映させることができる。このように、本実施形態においては、検出温度Tdに基づいて決定された第1加減算値M1の積算値、及び新しく検出された検出温度Tdと過去に検出された検出温度Tdbの差に基づく差分値に基づいて蓄熱量が推定される。即ち、本実施形態においては、検出温度Tdの履歴に基づいて計算される基本推定値である第1加減算値M1の積算値、及び基本推定値を計算する履歴よりも短い期間における検出温度Tdの変化率に基づいて計算される速応推定値である第2加減算値M2に基づいて、蓄熱量推定手段110aにより蓄熱量が推定される。このように、本実施形態においては、基本推定値と速応推定値の和に基づいて蓄熱量が推定される。
なお、燃料電池モジュール2の温度変化は、検出温度TdとTdbを検出する間隔である1分に比して極めて緩慢であるため、第2加減算値M2は0である場合が多い。このため、第1、第2積算値は、主に第1加減算値M1によって支配され、検出温度Tdの上昇又は低下傾向が現れたとき、第2加減算値M2が、第1、第2積算値の値を修正するように作用する。このように、蓄熱量の推定値には、検出温度の履歴の他に、第2加減算値M2によって直近の検出温度Tdの変化が加味される。このため、直近の検出温度Tdの変化が大きい(第2加減算値閾値温度以上の変化)場合には、第2加減算値M2が値を持つので、蓄熱量の推定値が修正され、燃料利用率Ufが大幅に変更される。
このように、図13に示すフローチャートにより実現される残存熱量利用制御は、断熱材7に蓄積された熱量が多い場合には燃料利用率を高めることにより燃料電池モジュール2内の温度を低下させ、蓄積された熱量が少ない場合には燃料利用率を低下させることにより燃料電池モジュール2内の温度を上昇させることにより、燃料電池モジュール2内の温度を適正範囲に維持するので、適正温度制御として機能する。
また、図13のフローチャートから呼び出される図21に示すフローチャートにより、適正温度状態にある燃料電池モジュール2に対して燃料利用率調整制御が実行され、燃料利用率が向上される。
まず、図22の時刻t100においては、検出温度Tdは、適正温度範囲よりも低い温度となっている。このため、適正温度制御により発電用空気利用率が高められ、これにより、発電用空気供給量は減少される(図22、時刻t100〜t101)。検出温度Tdが適正温度範囲内に収束した後も、直ちに燃料利用率調整制御が実行されることはなく、燃料利用率調整制御待機時間(図22、時刻t102〜t103)待機される。この間は、燃料電池モジュール2は熱的にバランスした安定状態であるが、燃料利用率、発電用空気利用率共に最大値ではなく、残余燃料による加熱と、過剰な発電用空気による冷却が共存した発電効率の低い状態である。次いで、燃料利用率調整制御待機時間が経過した後、時刻t103において燃料利用率調整制が実行される。燃料利用率調整制が実行されると、第2積算値N2idの値が強制的に0に変更される。これにより、発電用空気利用率が最大値まで引き上げられ(図17)、これに伴い発電用空気供給量が減少される(図22、時刻t103〜)。この燃料利用率調整制の実行により、時刻t102〜t103における熱的なバランス状態は積極的に解消され、加熱過多の状態となる。
発電用空気利用率が向上された後、燃料電池モジュール2内の温度は遅れて上昇を開始する(図22、時刻t104〜)。燃料電池モジュール2内の温度が上昇すると、適正温度制御が作用して燃料利用率が最大燃料利用率まで高められ、これにより燃料供給量も減少される。このように、燃料利用率調整手段110bによる補正の結果、発電用空気供給量に加え、燃料供給量も変化する。即ち、発電用空気供給量の減少に伴う燃料電池モジュール2内の温度上昇に対応した適正温度制御により、燃料供給量が減少される。この際、燃料利用率の上昇は、発電用空気利用率が高められた(発電用空気による冷却が減少した)ことにより間接的に引き起こされるものであるため、発電用空気利用率(発電用空気供給量)の変化率よりも緩やかな(変化率の小さい)ものとなる。また、燃料利用率の向上に伴い、発電効率も上昇する。ここで、燃料電池モジュール2は熱容量が大きいため、燃料利用率が高められた後も温度上昇を続けるが、時刻t105において検出温度Tdは低下傾向に転じ、その後、適正温度範囲内で安定する。このように、燃料利用率調整制は、検出温度Tdが適正温度範囲内にあり、熱的に極めて安定した状態で実行され、検出温度Tdが概ね適正温度範囲内から外れることなく燃料利用率が向上される。
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、推定された蓄熱量が大きい場合には、同一の発電電力に対して燃料利用率が高くされる(図15、図16)ので、蓄積された熱量を利用して、固体酸化物型燃料電池1のエネルギー効率を向上させることができる。また、本実施形態によれば、蓄熱量が大きい場合には蓄熱が利用されるので、エネルギー効率を低下させることなく、燃料電池モジュール2内の温度を適正温度範囲に維持することができる。しかしながら、適正温度制御により、燃料電池モジュール2が適正温度に維持され、安定した運転が行われていても、その状態におけるエネルギー効率が低い場合もある。例えば、燃料供給量を増加させた加熱と、発電用空気供給量を増加させた冷却が共存する状態で熱的に安定している場合(図22におけるt101〜t103)には、供給された燃料が浪費され、エネルギー効率は低いものとなる。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、温度が適正温度範囲内にある状態において、燃料利用率調整手段110bが、適正温度範囲から概ね外れることなく燃料利用率が高くなるように、適正温度制御により設定された燃料供給量及び/又は発電用空気供給量を補正するので、適正温度とエネルギー効率の向上を両立させることができる。
また、一般に、燃料電池モジュール2は熱容量が大きいため、現時点で燃料電池モジュール2が適正温度範囲にあるとしても、温度がそのまま適正温度範囲内に収束されず、適正温度範囲を通り越してしまう場合がある。このような、熱的に不安定な状態において燃料利用率調整制御を実行すると、燃料電池モジュール2の熱的バランスが大きく崩れ、急激な温度降下や過昇温に至る場合がある。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料電池モジュール2が適正温度範囲にあっても、温度の変化率が大きい場合には補正が実行されない(図21、ステップS42、S43)ため、燃料利用率調整制御により、急激な温度降下や過昇温が生じるのを防止することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料利用率調整手段110bによる補正の結果、燃料供給量及び発電用空気供給量が共に変化する(図22におけるt103〜t105)ので、燃料供給量低下による温度低下と、発電用空気供給量低下による温度上昇が相殺され、燃料供給量を低下(燃料利用率を向上)させながら、熱的なバランスを維持(図22におけるt104〜)することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料利用率調整手段110bにより燃料供給量及び発電用空気供給量が減少された場合でも、発電用空気供給量(空気利用率)の変化率(図22におけるt103〜t104)が、燃料供給量(燃料利用率)の変化率(図22におけるt104〜t105)よりも大きくなるように補正されるので、燃料供給量の急激な補正により、燃料電池モジュール2が適正温度範囲から逸脱するリスクを抑制することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、燃料利用率調整制御においては、発電用空気供給量のみを減じる(図21、ステップS47)ので、燃料供給量は燃料利用率調整制御によって直接補正されるものではない。このため、燃料供給量を直接補正して急激に変化させることにより、熱的なバランスが大きく崩れるのを防止することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、温度の積算値N2idを減少させる(図21、ステップS47)ことにより、これに基づいて決定される発電用空気供給量を減少させるので、供給量を直接補正する場合に比べ、緩やかに燃料利用率を高くすることができ、燃料電池モジュール2内の温度が適正温度範囲から外れるリスクをより少なくすることができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1によれば、発電用空気供給量を決定するために使用される積算値N2idのみを減少させる(図21、ステップS47)ことにより、発電用空気供給量のみを減少させるので、燃料供給量を決定するための積算値N1idを変更する場合に比べ、燃料供給量は緩やかに変化する(図22におけるt104〜t105)ので、より確実に燃料電池モジュール2内の温度を適正温度範囲に維持することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
特に、上述した実施形態においては、燃料利用率調整制御において、積算値N2idを0に減少させていた(図21、ステップS47)が、変形例として、積算値N2idを緩やかに変更することもできる。例えば、燃料利用率調整制御において、積算値N2idを7割程度(0.7を乗じる)に減少させるように、本発明を構成することもできる。この変形例によれば、燃料利用率の調整を、より緩やかに行うことができる。
また、上述した実施形態においては、燃料利用率調整制御において、発電用空気利用率を決定するための積算値N2idのみを減少させていたが、変形例として、積算値N1id及びN2idを変更し、或いは積算値N1idのみを変更するように本発明を構成することもできる。なお、燃料利用率を決定するための積算値N1idを変更する場合には、積算値N1idを増加させることにより、燃料利用率を高くする。
さらに、上述した実施形態においては、燃料利用率、発電用空気利用率を変更するために積算値の値を修正していたが、変形例として、燃料利用率及び/又は発電用空気利用率を直接変更するように本発明を構成することもできる。