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JP5755721B2 - 塗工紙の製造方法及びその製造設備 - Google Patents

塗工紙の製造方法及びその製造設備 Download PDF

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JP5755721B2 JP2013272192A JP2013272192A JP5755721B2 JP 5755721 B2 JP5755721 B2 JP 5755721B2 JP 2013272192 A JP2013272192 A JP 2013272192A JP 2013272192 A JP2013272192 A JP 2013272192A JP 5755721 B2 JP5755721 B2 JP 5755721B2
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Description

本発明は、塗工紙の製造方法及びその製造設備に関する。
特に、本発明は、原紙表面に塗工層を設ける手段として、塗工方法の異なる塗工設備、例えばロールコータとブレードコータの組み合わせからなる塗工設備にて、原紙表層に少なくとも2層の塗工層を設けることに係り、好適には1300m/分以上、特には1550m/分以上の高速で、オンマシンにより抄紙から最終仕上げまで一貫した生産を効率的に、高品質に行うことができる塗工紙の製造方法と塗工紙に関する。
近年のビジュアル化の推進、マルチメディア化の流れに対応して、出版・広告・宣伝等の媒体として幅広く利用されてきた印刷物についても、ビジュアル化やカラー化など高品位化のニーズが急速に増加している。このようなユーザーの要求の変化に伴って、従来の非塗工の印刷用紙から印刷用塗工紙への切り替えが増加し、印刷用塗工紙の需要が急速に増加している。
加えて、印刷工程からは作業性改善や効率化につながる印刷用紙のハンドリング性や印刷機上での走行安定性についての品質要請もますます厳しくなってきている。
この品質要請の中で、製紙業界では省力化・製造コスト削減を目的として抄紙機の広幅化・高速化が進んでいる。
塗工紙への品質要請と省力化・製造コスト削減の中で、時流は原紙の低米坪化と微塗工化にあり、製造現場においては、高速運転可能な特性を活かしたままで、より優れた印刷特性を備えた印刷用塗工紙の製造技術への改革が強く求められている。
これらの品質要請に対して、原紙に、顔料と接着剤を有する下塗り塗被層と上塗り塗被層を有するオフセット印刷用塗被紙において、原紙に内添填料として針状または柱状の軽質炭酸カルシウムを原紙の重量を基準として3〜20重量%含有し、下塗り塗被層にゲル含有量が75〜90重量%で、平均粒子径が40〜70nmであるスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックスを含有し、上塗り塗被層にゲル含量が40〜70重量%で、平均粒子径が40〜80nmであるスチレン・ブタジエン系共重合体ラテックスを含有させること(特許文献1)、あるいは、原紙に顔料と接着剤を有する塗被液を塗被する塗被紙の製造方法において、原紙抄紙機のプレスパートにシュープレスを用いて湿紙を搾水、乾燥した原紙及び/または該原紙に塗被液を塗被した下塗り塗被紙を、金属ロールと弾性ロールで構成されるソフトカレンダーの、金属ロール表面温度が40〜90℃、線圧が30〜150kg/cmの条件で処理した後、顔料と接着剤を有する塗被液を塗被すること(特許文献2)等の技術が開示されている。
しかしながら、塗工層処方の見直しや、プレスパートでの改善等は、従来技術の延長線であり、印刷見栄えの改善が図れるとしても、製造現場における操業性及び生産性の改善にはつながらず、抜本的な解決策にはならない。
特開平11−279992号 特開平11−001891号
したがって、本発明の主たる課題は、近年の用紙コスト削減に起因する製品坪量が64g/m2未満の軽量化、及び微塗工化に対応しながら、生産性を高め、なおかつ塗工紙に必要な品質を備える塗工紙を製造することにある。
他の課題は、光沢度が55%以上、より望ましくは60%以上の光沢度を有し印刷見栄えの良い塗工紙を得ることにある。別の課題は、環境問題に対応して古紙が10%以上の高配合であっても、高い生産性をもって製造できるようにすることにある。さらなる課題は以下の説明から明らかになろう。
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1項記載の発明>
製品米坪が64g/m 2 以下の塗工紙を製造する方法であって、
オンマシン内で次記の工程が順に組み込まれ、かつ抄紙速度1300m/分以上であることを特徴とする塗工紙の製造方法。
それぞれループをなす2つのワイヤー間に上向きヘッドボックスから紙料を噴出し、脱水手段で脱水して紙層を形成するツインワイヤーフォーマで抄紙する抄紙工程;
このワイヤーパートからプレスパートに移行した紙層をシュープレスによりニップして脱水を行うプレスパート脱水工程;
プレスパート脱水工程からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーのみにより乾燥するプレドライヤー乾燥工程;
プレドライヤー乾燥工程により乾燥した乾燥紙匹であってプレカレンダーにより平滑化する前の紙匹に対してその両面に下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布するサイズプレス工程;
サイズプレス工程からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーにより乾燥するアフタードライヤー乾燥工程;
下塗り塗工液を塗布した表面を、紙匹の他方の面に加熱ロールが接するプレカレンダーにより平滑化するプレカレンダーによる平坦化工程;
塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液を塗工する塗工工程。
<請求項2項記載の発明>
前記シュープレスは、ダブルフェルトの第1プレスと、ボトム側がベルトである第2プレスとを順に有する請求項1記載の塗工紙の製造方法。
<請求項項記載の発明>
前記プレカレンダーの上側が金属ロールで下側が弾性ロールである請求項1又は請求項2記載の塗工紙の製造方法。
<請求項項記載の発明>
製品米坪が64g/m 2 以下の塗工紙を製造する設備であって、
オンマシン内で次記の手段が順に組み込まれ、かつ抄紙速度1300m/分以上で抄紙されるように構成されたことを特徴とする塗工紙の製造設備。
それぞれループをなす2つのワイヤー間に上向きヘッドボックスから紙料を噴出し、脱水手段で脱水して紙層を形成するツインワイヤーフォーマで抄紙する抄紙手段;
このワイヤーパートからプレスパートに移行した紙層をシュープレスによりニップして脱水を行うプレスパート脱水手段;
プレスパート脱水手段からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーのみにより乾燥するプレドライヤー乾燥手段;
プレドライヤー乾燥手段により乾燥した乾燥紙匹であってプレカレンダーにより平滑化する前の紙匹に対してその両面に下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布するサイズプレス手段;
サイズプレス手段からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーにより乾燥するアフタードライヤー乾燥手段;
下塗り塗工液を塗布した表面を、紙匹の他方の面に加熱ロールが接するプレカレンダーにより平滑化するプレカレンダーによる平坦化手段;
塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液を塗工する塗工手段。
塗工設備は、サイズプレス、カレンダーサイズ、ワイヤーバー、エアナイフコータ、ロールコータ(ゲートロールコータ等、ロールを用いて塗液を転写する塗工方式)、ブレードコータ(ビルブレードコータ等、ブレードにより塗液を掻き落として塗工層を形成する方法)、スプレー等があり、欧州では生産効率優先でロールコータを使用する設備が多く稼動し、国内では品質優先でブレードコータが多く稼動している。
しかし、本発明が提案する、異なる塗工設備の組み合わせからなる塗工紙の製造方法及び塗工紙は他に例がなく、さらに最終的に塗工層表面を金属ロールと弾性ロールからなる平坦化設備にて平坦化処理した事例はない。
同種のロールコータやブレードコータを使用した塗工紙の製造は盛んに行われてきているが、異なる塗工設備の組み合わせ、例えばロールコータとブレードコータからなる組み合わせは、設備構造が複雑になり、保全面でも多用な知識を必要とするため採用されなかったものである。
同種のブレードコータの組み合わせからなる塗工紙の製造設備では、設備フローが長大になり広い設置スペースが必要になるとともに、品質要請である低米坪、古紙の高配合品の製造においては、紙力の低下の問題で高速抄紙時、例えば1300m/分を超える速度では、ブレードタッチ圧の影響で断紙が多発する問題が生じる。抄紙速度やブレードタッチ圧を抑える方策があるものの、生産効率の悪化、塗工量調整が困難になる。
同種のロールコータの組み合わせは、設置スペースは少ないものの、ロールからの転写による塗工のため、塗工面の平滑性がブレードコータより劣るため、高光沢度の要求や高印刷適性を満足することができない。
ロール塗工とブレード塗工との概要比較を行うと、片面当たりの塗工量との相関で優劣が明確になる。すなわち、8g/m2以上では、ブレード塗工によると被覆性及び平滑性に優れるのに対し、ロール塗工では原紙の凹凸に応じて表面が凹凸になりがちであり平滑性に劣る。これに対し6g/m2以下では、ブレード塗工によると原紙の凹部内に塗液が乗るだけで原紙の凸部が露出がちのものとなり被覆性が劣るのに対し、ロール塗工の場合には被覆性に優れるものである。さらに、塗工量とは基本的に無関係で、ブレード塗工の場合には断紙の割合が高い(高速になるに従い、あるいは古紙配合量が多くなるに従いその傾向が顕著になる)のに対し、ロール塗工では断紙の割合は低い。6g/m2以下の低塗工量であっても、顔料として高い被覆性やグロスが得られる高アスペクト比のクレー、例えばデラミネーテッドクレー(薄板状結晶構造クレー)を使用すると、高速で塗工する際に粘度が高くなるために、ロール塗工の方が適している。ロール塗工では、塗工量が8g/m2以上となると、幅方向のプロファイルを制御することが難しく、また、いわゆるオレンジピールパターンが発生し、面感やインクの着肉性が劣るようになるのに対して、ブレード塗工ではかかる問題は通常は発生しない。ブレード塗工ではたとえば塗料濃度65%以上の高濃度塗工が可能であり、ロール塗工では塗料濃度が56%またはそれ以下とする必要があり、紙1kg当たりの乾燥エネルギーコストがブレード塗工の方が少なくなる。
このように、ロールコータ塗工とブレードコータ塗工とは異なる傾向を示す。
外国及びわが国も含め、塗工紙を製造する場合、抄紙機と塗工機とを別々にしたオフマシンコータと、抄紙機に塗工機を組み込んでオンマシンコータとが知られている。オフマシンコータの場合には、抄紙段階でサイズプレスを通すことが一般的である。プレカレンダーを通すことは本発明者が知る限り行われていない。オンマシンコータの場合には、サイズプレスを通すことはごく少数である。その換わりに、プレカレンダーを通すことが行われている(両者を備える設備は知らない。)。
特に、オフマシンによる塗工設備では、低坪量の塗工原紙は、オートスプライサーによるスプライサー時に断紙が大きな問題となる。
オートスプライサーは、生産効率向上を目的に、コータを停止させないまま、紙継ぎを行う設備であり、紙継ぎ部分は、原紙と原紙間に設けられる接着テープ等接着手段からなる構成による凸部を形成するため、1000m/分未満の塗工速度では断紙は生じにくいものの、1000m/分を超える速度、特に1300m/分を超える速度では、巻取りの回転同調速度の微妙なズレ、紙繋ぎ部とドクター刃先との接触により断紙が容易に発生してしまう。
断紙を改善するため、原紙自体の引張り強度を向上させる方策が採られるが、発明者の知見では、少なくとも引張り強度(MD)が3.0kN/m以上が必要であり、引張り強度が低い古紙を高配合した低米坪の原紙では、多量の紙力増強剤を内添させる等の方策が必要であり、大幅なコストアップを避けられない。
オンマシンによる塗工においては、オートスプライサーは不要であり、原紙自体の強度も低く設定できる。しかし、現状において、運転速度(設計速度ではない。)としては高速のものでも1200m/分程度である。
より高速の1300m/分を超える抄紙速度(運転速度)を得ようとすると、2.6kN/m以上の引張り強度(MD)が求められ、オンマシンによる塗工においては、特に古紙を高配合した場合においては、オフマシンと同様に、紙力増強剤を内添させる等の方策が必要でありコストアップを避けられない。
近年の、古紙パルプを高配合した原紙は、バージンパルプを主原料とした原紙と異なり、引張り強度の低下や異物(夾雑物)混入が顕著であり、原紙坪量が30〜45g/m2程度で1000m/分を超える速度、特に1300m/分を超える速度での塗工を行おうとする場合においては、断紙の問題は常につきまとっている。
ブレードコータにおいての断紙は、ブレードの押し付け圧により生じやすく、特にオンマシンでの断紙は、抄紙機から塗工設備の一連の設備を止めるため、生産ロス、生産効率の低下が甚大であるため、現状では低米坪の塗工紙の製造はオフマシンによる塗工が一般的に行われている。
本発明者らは、第一に原紙表面に塗工層を設ける手段として、異なる塗工設備の組み合わせ、好ましくは、ロールコータとブレードコータの組み合わせからなる塗工設備にて、原紙表層に、少なくとも2層の塗工層を設けること。第二に、塗工層表面を、金属ロールと弾性ロールからなる組み合わせの平坦化設備にて平坦化処理を行うことで、本発明の課題である、生産効率の良い高速抄紙機を用い、低米坪・古紙高配合で印刷見栄えの良い塗工紙を提供できる技術を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、抄紙し、乾燥させた紙匹に対してでんぷんなどの下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布する工程、プレカレンダーにより平坦化処理する工程を経て、塗工工程を連続で行うことができる。
この塗工工程は、次記の(1)又は(2)の単独工程、あるいは(1)の工程後に(2)の工程を行う塗工工程を選択する塗工工程である。
(1)塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液をロール塗工し、これを乾燥することを、一方の面及び他方の面に対して行うロールコータ塗工工程。
(2)塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液をブレード塗工し、これを乾燥することを、一方の面及び他方の面に対して行うブレードコータ塗工工程。
その後に、少なくとも2ニップを有する複数段に構成された金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる熱ソフトカレンダーにて平坦化処理するものである。
前記の塗工工程での選択は、一つのラインにおいて、原紙米坪、古紙配合の有無及び配合量、塗工量、ライン速度、製品米坪、要求される光沢度、平滑性などの品質などによって行うことができる。これによって、一つのラインにおいて、軽量微塗工紙、微塗工紙、A3塗工紙、必要によりA2塗工紙を共通的に製造できる。これらの区分は、当業界において明確ではないが、たとえば64.0g/m2または60.2g/m2以上のA3塗工紙についてはブレードコータを、58.0g/m2または54.2g/m2の微塗工紙についてはブレードコータまたはロールコータを、51.2g/m2以下の軽量微塗工紙についてはロールコータを使用することができる。
本発明の第1の特徴は、でんぷんなどの下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布する工程、並びにプレカレンダーにより平坦化処理する工程をオンマシンコータに組み込んでいることである。
サイズプレスにより澱粉のアンダー塗工を行うと、そのでんぷんにより紙の剛度、紙力を高めることができ、原紙の低米坪化や古紙の高配合によっても(特にブレード塗工の場合における)断紙を防止でき、夾雑物の突出を抑え、また、後の塗工液に対する平滑化にも寄与する。
続いて、プレカレンダーにより平坦化処理を行うのが望ましい。プレカレンダーは平滑化にも寄与するほか、特には、続く塗工後の幅方向のプロファイルを均一化するために寄与する。すなわち、でんぷんなどの下塗り塗工液を塗布した紙の表面を、均一化する機能がある。特に目的とする紙幅が7000mm以上の場合には、塗工後の幅方向のプロファイルの崩れが大きくなるのに対し、プレカレンダーにより平坦化処理を行うことで均一化を図ることができる。特に、続いて、ロールコータにて8g/m2以上の塗工を行おうとする場合に、ロールコータでの幅方向のプロファイル制御は難しいのに対し、プレカレンダーを採用することで、幅方向のプロファイルの均一化を図ることができる。また、表面が幅方向に均一化されるために、ブレード塗工する場合において、ブレードのタッチを均一化し断紙を防止することにも寄与する。
第2の特徴は、前述の選択的な塗工工程又は設備を備えていることである。この点についての利点は、先に述べたので再説はしない。
第3の特徴は、少なくとも2ニップを有する複数段に構成された金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる熱ソフトカレンダーにて平坦化処理する工程又は設備を有することである。特に6段、より望ましくは8段(7ニップ)、10段のマルチニップカレンダーが最適である。
低塗工量化に伴って平滑性及び光沢度の確保が困難になる。これに対し、本発明の平坦化処理する工程を備えると、塗工量が7g/m2以下、特に6g/m2以下であり、製品米坪54.2g/m2未満、原紙米坪が45.0g/m2以下である場合などにおいても目的の光沢度55%以上、特に60%以上の塗工紙を得ることができる。
(熱ソフトカレンダー)マルチニップカレンダー自体を設けることは公知であるものの、採用例はさほど多くはなく、ましてサイズプレスにより塗布する下塗り塗工及びプレカレンダーとの組合せは、オフマシンコータ及びオンマシンコータのいずれにも対して嚆矢とするものである。本発明によるこれらの組合せは、高い平滑性及び高い光沢度をもたらす観点から、51.2g/m2以下の軽量微塗工紙の製造をも可能とするのである。
ロールコータによる塗工を行った後、ブレードコータによる塗工を行うことが可能である。先に述べたように、ロールコータによる場合には、低塗工量でも塗料の被覆性が良好である。そこで、まずロールコータによる塗工を行った後、ブレードコータによる塗工を行うと、良好な被覆性を示す第1塗工層上に、平滑性に優れるブレードコータにより第2塗工層を塗被するので、総塗工量として6g/m2以下の低塗工量(微塗工)であっても、あるいは片面当たり7〜9g/m2程度の塗工量において被覆性、平滑性及び光沢度において優れた塗工紙を得ることができる。
また、第1塗工層は被覆性が確保できればよいから、高品質の塗工液を使用する必要はなく、低コストで塗工液の塗工を行い、ブレードコータにおいて、高品質の塗工層を設けることも可能である利点がある。
また、サイズプレスを設けることで、澱粉などのアンダー塗工を可能にするほか、必要ならば、顔料と接着剤を使用して塗工することも可能である。
本発明は1300m/分以上またはこれを超える高速抄紙で、特には運転速度が1550m/分以上、1600m/分〜1800m/分で低米坪の微塗工紙の製造を可能にする。運転速度が1300m/分以上となると、1300m/分以下、現状において高速であるとされている1200m/分の運転速度の場合と、要求される品質に対する技術的課題の様相が一変する。まして、オンマシンコータの場合には、解決に困難な課題が山積する。
本発明の原紙は、それぞれループをなす2つのワイヤー間にヘッドボックスから紙料を噴出して紙層を形成する、たとえばギャップタイプのツインワイヤーフォーマで抄紙する工程、ワイヤーパートにおいてサクション(フォーミング)ロール及び/またはブレードによる脱水手段にて湿紙を形成する工程を経たのち、サイズプレスに供される。ギャップタイプのツインワイヤーフォーマで抄紙された原紙は、低米坪においても十分な紙力を有するので好ましい。
サイズプレスにて澱粉を塗布することで紙力の更なる向上を図ることができる。
更に、プレカレンダーにて原紙表面の(特に幅方向の)平坦性を向上させることで、塗工設備においてブレードのタッチ圧が高くとも断紙に至らない、十分な紙力と平坦性を持たせることが可能である。塗工後において、弾性ロールと金属ロールからなる複数段のマルチニップカレンダーにて高速、高温で平坦化処理することで、塗工層表面の平坦性と高光沢を得ることを可能にしている。
本発明者は、技術要請にある低米坪化と環境に優しい古紙の高配合への対応と、高品質な見栄えの良い印刷適性・光沢性を得るには、ロールコータの前工程にサイズプレスを設け、更にはプレカレンダーをも設けることで、古紙由来の夾雑物による印刷見栄え不良や傷入りの解消と、低米坪におけるロールコータ特有の問題である塗工プロファイルムラによる印刷ムラ、光沢ムラの改善に極めて有効な手段であることを見出したものである。
また、サイズプレスでの塗液中には、必要に応じて通常使用される表面サイズ剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤等が適宜併用される。
また、印刷適性で求められる剛度、いわゆる紙の腰を保持したまま、塗工紙表面の平坦性、光沢を得るには、高温で紙を潰すことなく平坦化処理する必要があり、従来一般に採用されている、複数のスタックでの平坦化処理は、設置スペースを必要とするだけでなく、設備を高温化することが困難であり、原紙への平坦化効率が極めて悪いため、実質的に断紙を避けながら、剛度を維持し平坦性、光沢を得るには抄紙速度を上げることが不可能であり、1200m/分以下の抄造速度で製造せざるを得ない状況である。
本発明におけるより好ましい態様においては、本発明における金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなる平坦化設備、例えばマルチニップカレンダーとの組み合わせが挙げられる。マルチニップカレンダーの更に好ましい態様としては、マルチニップカレンダーの金属ロールに対して、ジャケットロールが適用される。マルチニップカレンダーは、複数段の金属ロールと弾性ロールの組み合わせからなり、ロール毎の各ニップ圧が個々に450kN/m程度まで高められるものであり、ロール数を6〜12段とすることで、従来のスーパーカレンダーでは対応できなかった、抄速1300m/分以上、延いては1600m/分以上の高速塗工に対しても十分に平坦化処理が可能である。
場合によっては、各ロール間を1〜2ニップ残して開放し、マット調の塗工紙を製造することも可能であるが、ロール数を6〜12段で平坦化処理することで、1300m/分以上の高速抄紙においても、白紙光沢度が55%以上、特には60%以上の塗工紙を得ることができる。
本発明によれば、低米坪で古紙高配合の原紙であっても、高速抄紙機により高精彩で高品質な塗工紙を高い生産効率で生産を可能にできる。本発明の効果は、長期間にわたって鋭意検討した、後に示す実施例及び比較例によって明らかとなる。
本発明による塗工紙の製造方法により、抄紙速度が1300m/分を超える高速抄紙を行う場合において、きわめて良好な操業性を確保できるとともに、光沢度、平滑性、印刷適性などに優れた高品質の塗工紙を製紙原料から製品に至る一貫した抄紙装置(オンラインマシン)にて製造することができる。
本発明は、たとえば原紙に原料パルプとして古紙パルプが10%以上配合され、原紙米坪が28〜80g/m2(特には35〜48g/m2)、製品米坪が30〜103g/m2(特には38〜64g/m2)、片面塗工量が2〜23g/m2(特には4〜9g/m2)の塗工紙、あるいは微塗工紙を、抄紙速度1300m/分以上、たとえば平均抄紙速度で1600m/分〜1800m/分の高速で抄紙から巻き取りまで連続的かつ一貫で製造することを意図している。なお、ロール塗工では、片面2〜10g/m2(特には5〜7g/m2)、ブレード塗工では、片面6〜15g/m2(特には7〜9g/m2)の塗工量とするのが望ましい。通常は両面塗工を行うのが望ましく、したがって前記の片面塗工量の2倍となる。
本発明においては、操業員の省人化もなし得る。巻き戻しを行うリリーラー設備、運転停止および紙つなぎが必要なオフカレンダーにおいては、一般的に4組(4名)3交代、計16名の操業員が必要であるが、本発明によりこの16名の省人化が可能になる。
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を説明しながら、さらに本発明を詳説する。
図1が参照されるように、それぞれループをなす2つのワイヤー(第1ワイヤー1と第2ワイヤー2との)間にヘッドボックス3から紙料Jを噴出して紙層を形成するギャップタイプのツインワイヤーフォーマ10で抄紙する抄紙機が設置されている。紙料Jは、ワイヤーパートにおいて、サクション(フォーミング)ロール4Aと対向するロール4Bとの間にワイヤー間に吐出されて紙層が形成され、その紙層はサクション(フォーミング)ロール4A、ブレード5、サクションクーチロール6、サクションボックス7などを通りながら、たとえば原料濃度20%程度まで脱水される。
ここで、脱水機構として、図示例ではロール手段及びブレード脱水手段の併用形態を示したが、好ましくは両方であるが、一方のみでも可能である。
ヘッドボックス3は、鉛直または下流側に傾斜した状態で上向き設置され、図6に拡大で示すように、紙料吐出方向線が水平線となすと吐出角度θが、50度〜90度であるのが望ましい。本発明が意図する高速抄紙の下では、地合、Z軸強度、表裏差、繊維配向角などの点から、繊維重量の影響が小さくなる上向きヘッドボックスであることが望ましい。ギャップタイプのツインワイヤーフォーマにおいて、ヘッドボックスが水平などであると、高速抄紙の下で、求める特性が得難い。
ワイヤーパートでの紙層は、プレスパートに移行され、さらに脱水が行われる。実施の形態でのプレスパートは、第1プレス21及び第2プレス22のそれぞれがシュープレス21a、22aを有し、オープンドローを無くし断紙を防止するために、紙層をストレートでニップする形態としてある。また、ダブルフェルトの第1プレス21に対し、第2プレス22ではボトム側にベルトを採用し、再湿防止を脱水の向上を図る構成となっている。坪量が60g/m2以上と高くなり、脱水量が多くなる場合には、ダブルフェルトが望ましい。
プレスパートを通った水分50%程度の湿紙は、図2も参照されるように、シングルデッキ方式のプレドライヤーパートに移行し、乾燥が図られる。図示のプレドライヤーパートは、ノーオープンドロー形式のシングルデッキドライヤーで、上側が加熱ロール31、下側が真空ロール32の適宜本数のロール構成である。シングルデッキ方式のドライヤーは、本発明が対象とする1300m/分以上の高速抄紙において、断紙が少なく、嵩を落とすことなく高効率に乾燥を行え、品質・操業面において優れている。ダブルデッキ方式にて乾燥する方式も考えられるが、高速抄紙におけるキャンバスマーク、高速乾燥における断紙、シワ、紙継ぎ等の操業性の面で問題がある。
ドライヤー初期ではドロー調整のために群分けを細かくし、また、通紙性及びシート走行性向上のためにサクションボックス33を設置するのが望ましい。
プレドライヤーパートにて乾燥された紙匹は、図3に示すように、アフタードライヤーパートとの間のフィルムトランスファー(方式)によるサイズプレス40において、澱粉などのサイズ剤や、必要によりピグメント塗工液などの下塗り塗工液が塗布される。サイズプレス40としては、図示のロッドメタリングサイズプレスコータのほか、ゲートロールコータ40Aなどでもよい。
下塗り塗工液としては、前述のように澱粉のほか、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、エーテル化デンプンなどのデンプン誘導体、大豆蛋白、酵母蛋白、セルロース誘導体等の天然接着剤などを使用することができ、他方、必要により、ピグメントを添加してもよく、そのピグメントとしては、カオリン、クレー、硫酸バリウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、二酸化チタン、亜硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、プラスチックピグメント等通常の塗工紙用顔料がそれぞれの顔料性質に応じて配合される。さらに接着剤として、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル共重合体ラテックスといったアルカリ非感応性或いはアルカリ感応性の合成樹脂エマルジョンなどの合成樹脂接着剤等通常の塗工紙用接着剤を使用できる。必要により、分散剤、流動変性剤、消泡剤、染料、滑剤、耐水化剤、保水剤等の各種助剤を配合することができる。下塗り剤の塗布量としては、0.01〜4g/m2、特には0.2〜3g/m2が好ましい。
前記フィルムトランスファー方式の塗布手段としては、ゲートロールコータ、シムサイザ、ブレードメタリングサイズプレスあるいはロッドメタリングサイズプレスなどが使用できる。特の望ましいのはロッドメタリングサイズプレスであり、このロッドメタリングサイズプレスコータを使用する場合には、操業上ストリーク発生を避ける上で、表面が平滑なロッドを用いることが望ましい。そのロッドの径を15〜50mmにすることにより、より好ましい操業性と品質を得ることができる。直径が15mmより小さいロッドでは、フィルムの形成能が低下し面状が劣る傾向にあり、50mmより大きいロッドでは効果が変わらないため、特に大きくする必要がない。ロッドとして、溝付きロッド、ワイヤー線巻き付けロッドなども使用できる。
下塗り塗工液の塗布後、アフタードライヤーにおいて表面汚れが生じないように、予めエアーターンバー41及び赤外線を使用した補助乾燥装置42を設置するのが望ましい。
図示のシングルデッキのアフタードライヤーパートでは、サイズ剤やピグメント塗工液の乾燥が行われる。
その後に、コータパートにて接着剤及び顔料(クレーなど)を主成分とする水性塗工液を塗工する。この場合、1300m/分以上の抄紙速度が条件の下で、しかも断紙を生じさせない様に、且つ第2ブレード塗工設備での断紙をも生じさせない様に平坦な塗工層が求められるから、水性塗工液をロール塗工とするのが得られる塗工紙の品質の観点から採用される。
しかるに、水性塗工液のロール塗工に先立って、より高い平滑性を確保するために、サイズ剤を塗布した表面を、プレカレンダー50により平滑化するのが望ましい。実施の形態のプレカレンダー50は、上側が金属ロール51で下側が弾性ロール52である。
プレカレンダー50での操業条件は、金属ロールを熱ロールとするのが望ましく、たとえば100〜300℃、特に150〜250℃とし、線圧を50KN/mとするのが望ましい。両ロールを金属ロールとすることもでき、さらに幅方向のプロファイル制御のためにキャリパーコントロールロールを使用することもできる。
プレカレンダー50に続く、本発明のコータパートにおいては、塗被紙の両面に対する第1のロール塗工工程と、塗被紙の両面に対する第2のブレード塗工工程とを有し、選択的な塗工を行う。
すなわち、第1のロール塗工工程を経る場合、ロールコータ60により塗被紙の両面に塗工を行い、エアーターンバー61を通した後、幅方向に温度制御可能な赤外線を使用した補助乾燥装置62(他のものにおいても同様の機能を有する)、第1ガス式エアードライヤー63A、赤外線補助乾燥装置67A、第1カンバスドライヤー64にて乾燥を行う。その後、バイパス路Yを通して、第2カンバスドライヤー68にて乾燥を行い、カレンダー70に導く。
第2のブレード塗工工程を経る場合、プレカレンダー50を通した後、バイパス路Xを通し、ロールコータ60を経ることなく、直接的に第1ブレードコータ65Aに導き、ここで片面の塗工を行う。塗工後に、赤外線補助乾燥装置66A、第1ガス式エアードライヤー63A、赤外線補助乾燥装置67A、第1カンバスドライヤー64にて乾燥を行う。
その後に、バイパス路Yを通すことなく、第2ブレードコータ65Bに導き、ここで他の片面の塗工を行う。塗工後に、赤外線補助乾燥装置66B、第2ガス式エアードライヤー63B、赤外線補助乾燥装置67B、第2カンバスドライヤー68にて乾燥を行い、カレンダー70に導く。
ここで、バイパス路Zを使用し、ロールコータ60により塗被紙の両面に下層塗工を行い、第1ブレードコータ65A及び第2ブレードコータ65Bを使用して、上層塗工も行うことができる。
上記の赤外線補助乾燥装置は、それぞれ主に水分率調整のため、幅方向に温度制御のために使用でき、その採用の可否は適宜選択できる。
第1ブレードコータ65A及び第2ブレードコータ65Bでは、高速抄紙の場合、片面7g/m2以上の塗工量が必要な場合には、アプリケータとして高速供液を可能とするジェットファウンテン方式が望ましく、掻き落しはブレードによるものである。片面7g/m2未満の塗工量が必要な場合は、高速用に改良された、ショートドゥエルブレードコータでもよい。
ブレード塗工において、ロール塗工の場合における流れ方向及び幅方向の塗工ムラを解消するために、図10に示すように、ジェットファウンテン方式の塗工を採用する場合におけるアプリケータ90のファウンテン角αは、30〜90度、より望ましくは40〜60度である。ファウンテン角αが前記範囲外であると、肌荒れや塗布ムラを生じる。ブレード刃先部分は、30〜50度のベベル角θを有するものが望ましい。ブレードの厚みは0.45〜0.60mmが望ましい。高い硬度を持たせるために、ブレード刃先部分はタングステンまたは酸化アルミナを主成分とする溶射素材で構成する、たとえばブレードの刃先部分を構成する母材にタングステンを溶射した構成とし、1000〜1700Hvのビッカース硬度を有しているものが、塗布性に優れる条件である。
この場合、ブレード交換後において、新たなブレードタッチ時における、高抄速でのブレード焼け防止のために、水シャワー冷却などの冷却手段を設けるのが望ましい。
最後に熱ソフトカレンダーからなるオンマシンカレンダー70が設置されており、カレンダー処理が行われる。図示のカレンダー70は、オプチロードタイプの垂直配置9ニップの1スタック型のマルチニップカレンダーであり、7ニップの1スタック型をも使用でき、また併示した、ロール自重の影響を少なくしたヤヌスタイプの傾斜配置とすることもできる。
カレンダー70は最終的な平滑性及び光沢性を左右する。従って、この観点及び高速抄紙の観点から種々の配慮が必要である。
カレンダー70の段数は、少なくとも2ニップを有する限り限定はされないが、複数段に構成された金属ロールMと弾性ロールDの組み合わせからなる熱ソフトカレンダーにて平坦化処理するのが望ましい。特にはマルチニップカレンダー、より望ましくは6段、8段、10段のマルチニップカレンダーが最適である。
他方、熱ソフトカレンダーは、オイルなどの熱媒体を流通させて加熱するものでもよいが、これでは表面温度180℃程度が限界である。高速での抄紙を図るためには、図7〜図9に示すように、前記金属ロールMは、その幅方向に分割温度制御可能な電磁誘導作用による内部加熱装置が装備され、金属ロールMの表面温度が230℃以上、特に230〜500℃にて処理するものが望ましい。具体例では、シェル74内の鉄心72の周囲に誘導コイル71が巻回され、ジャケット室73を通る熱媒体を加熱するものである。
金属ロールMの温度を250℃〜380℃で、特には300℃を超え380℃以下の温度での表面処理をし、できる限り低いニップ圧で紙が全層に渡って潰れないようにすることにより、嵩の低下を防ぎ、不透明度の低下を抑えることが可能となる操業も行うことができる。要すれば、いわば極高温のアイロンを短時間で当てる形態である。
金属ロールの表面温度のコントロールとしては、前述のように、金属ロール内部に温水や油を循環させる方法のほか、非回転部としての内側に設けた鉄芯の周囲に誘導コイルを設け、その誘導コイルに交流電流を流すことで、コイルに磁束を発生させ回転部としての外側シェル(外筒)の内側に誘導電流を誘起させ、その抵抗熱によって外側のシェル(外筒)自身を自己発熱(誘導発熱)させる、「電磁誘導作用による内部加熱装置」によるものが、本発明の高温処理のために特に優れる。また、この電磁誘導作用による内部加熱装置によれば、誘導コイルをロールの幅方向(ロール自体の長手方向)に分割(たとえば3〜6分割)し、シェルに設けた温度センサによる温度信号に基づき、対応する誘導コイルに流す交流電流量を制御することで、ロール幅方向の特に表面の温度制御が高精度で可能である利点がある。
この場合、特にシェル内部に長手方向に延びるジャケット路を、周方向に間隔をおいて多数10本〜90本程度設け、これらを相互に連通させ、内部に熱媒体を封入しておく構造のものが、シェルの自己発熱による熱を吸収し、熱をロール表面全体において均一化できる点がより優れる。
本発明に従って、高温で表面処理すると、紙の表層部だけでなく、内層部の温度も高くなり、その結果、紙が表層部だけでなく、全層に渡って潰れやすくなるため、嵩が低下する。しかるに、はるかに高い高温処理で、短時間の通紙を図る場合には、内層部への熱移動は極力防止でき、もって嵩の低下を防止できるものである。
他方、金属ロールの表面温度の高温化に伴って、金属ロールのシェルに厚み方向の応力が発生し、ロールプロフィールが崩れがちとなり、もって紙厚プロフィールの制御性が低下する。また、電磁誘導作用による内部加熱装置に依存する場合には、金属ロール表面温度の時間当たりの温度応答性が良好とは言えない、さらにこれを原因として幅方向の温度応答性が悪いので、温度制御性が悪いことによる歩留り低下の原因となる。そこで、金属ロールMの近傍には、ロール幅方向に分割温度制御可能な電磁誘導作用による外部加熱装置及びロール幅方向に冷却温度制御可能なクーリング設備の少なくとも一方が装備されているのが望ましい。
この例を主に図8に沿って説明すると、金属ロールMは、シェル74、誘導コイル71、鉄芯72、温度センサ75、交流電源76、及びジャケット路73を有する。この金属ロールMに対して、幅方向に分割制御可能な外部電磁誘導作用による外部加熱装置77を金属ロールM近傍に設けて各段において、基紙の高温ニップ域を構成する。
外部加熱装置77は、電磁誘導加熱に原理を応用したもので、図示のように、ワークコイル77Aに交流電源(インバータ)77Bからの交流電流(たとえば3〜20kHzの高周波)を流し、磁界を発生させて、シェル74表面部に渦電流を生成させ、自己発熱させるものである。ワークコイル77Aとシェル74表面との離間距離は、2〜20mm、特に2〜5mm程度が望ましい。また、単位ワークコイルは、金属ロールMの軸心に対して交差する斜め配置とするのが、加熱用プロフィールの均一化のために望ましい。ロール幅方向のゾーン制御ピッチは、75〜150mm程度であり、ゾーン当たりの定格電力は4〜20kWとすることができる。
ロール幅方向に冷却温度制御可能なクーリング設備78の例としては、図9に示すように、ファン78aからのエアをヘッダ78bに送り、連通孔が形成された調整板78cを通して温度調節室78d内に送入し、この温度調節室78d内に設けたコイル78eを温度調節手段78fにより冷却することにより小孔を有する分散板78gを通る送風温度を制御するものである。
カレンダー70でのニップ圧としては、200KN/m〜450KN/m、特に300KN/m〜450KN/mが望ましい。カレンダー70にて平滑処理された紙は最終的にリール80にて巻き取りが行われ、小分け用の巻取りを仕上げるワインダー(図示せず)がマシンの最終部分に設置される。
図4に示すマルチニップカレンダーに代えて、図5に示すように、たとえば1ニップで4スタックからなる金属ロールMと弾性ロールDからなるソフトカレンダー70Aでもよい。
実施例及び比較例により本発明の効果を明らかにする。
本発明のワイヤーパート形式、ヘッドボックスの配置角度、サクションの形態、塗工形態、熱ソフトカレンダー及び抄紙速度などの要因を変えて、紙の品質評価を行った。また、各実施例は各要因のすべてについて個々のラインを新設したものではなく、テストプラントによるテスト例が主たるものであることを断っておく。
紙の品質評価は次記のとおりである。
1.夾雑物:夾雑物面積は、光学顕微鏡にCCDカメラを接続し画像解析装置(LUZEX AP)を介して1画素8μmの倍率でA4版1枚のシートを測定し、10cm2当たりに平均して求めた。尚、0.005mm2以下の夾雑物は、目視で視認できないレベルであり問題とならないため除外した。
2.地合評価:実施例で規定する地合評価は、東洋精機社製、シートフォーメーションテスターを用い透過光量の変動を時系列信号としてとらえ評価した。この測定機では、ムラの波長約0.16〜80mmの範囲で28点の測定が可能であるが、実施例では、4.0〜80mmの範囲の14点について、官能検査での透かし地合で、大きな濃淡として表れる地合と密接な関係があることから、この範囲での変動率の和を測定した。ムラ指数が6%未満の場合には、地合は非常に均一であり、地合ムラに起因する塗工紙表面の光沢ムラも起こりにくく、塗工層の形成も均一となり、印刷時の印刷ムラ、印刷光沢ムラ等がなくなり、印刷適性は向上する。
3.断紙:実機に匹敵するテストプラントを用い、抄速1500m/分、乾燥温度一定で3時間テスト操業を行い、乾燥方法の違いによる断紙回数を評価したものである。○:断紙0回、△:1回、×:1回以上である。
4.シワ:テストプラントを用い、抄速1300m/分、乾燥温度一定で3時間テスト操業を行い、乾燥方法の違いによるシワの発生を評価したものである。○:シワ入り0回、△:シワ入り1回、×:シワ入り1回以上である。
5.比容積:JIS P 8118(1976)に準拠して測定。
6.光沢:JIS P 8142に従い、角度75度で測定した。
7.光沢ムラ:A4サイズの試験紙を調整し、女性5人、男性5人にて目視で5段階評価した。評価3以上が許容レベルとした。
8.印刷ムラ:四六版サイズの試験紙を調整し、ローランドオフセット印刷機にて印刷し、恒室にて24時間放置後、サンプルのブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色重ね刷りベタ印刷部について、女性5人、男性5人にて目視で5段階評価した。評価3以上が許容レベルとした。
9.剛度:JIS P 8115に準拠し測定した。
10.黄変化(カレンダー処理による):製品を四六版サイズに調整し、表面女性5人、男性5人にて目視で製品の黄色の程度を5段階評価した。評価3以上が許容レベルとした。
11.生産性:テストマシンにおける各実施例でのウエットエンドの安定性、プレスパートでの脱水性、ドレネージ、ストリークの発生状況などを操業者5人で観察し、それぞれの評価結果を集約し5段階評価した。評価3以上が許容レベルとした。
12.総合評価:品質項目全てを4段階で総合評価した。◎:生産効率・品質面良好、○:生産効率・品質面問題なし、△:一部問題がある、×:問題がある、である。
なお、ロールコータのロール硬度は、JIS K 6301 A硬度値であり、ブレードの硬度は、Hv(ハードビッカース)硬度である。ロール表面粗度は、JIS P 0601に準拠した中心線平均粗さを示す。
原紙条件は次記のとおりである。
<紙基材の作成>
下記のパルプ、内添薬品配合で60g/m2の坪量(絶乾)の原紙を抄造し、紙基材を作成した。
<パルプの配合>
実施例表に沿って調整した。本発明においては、高速抄紙における夾雑物の影響で断紙が多発するため、製品における夾雑物の量を、夾雑物測定手段における測定量において、A4サイズ1枚当たりにおいて0.010mm2/10cm2以下になるように調整した原料パルプを使用している。
紙基材は上記のパルプ配合と下記の内添薬品配合で調成された。
<内添薬品の配合>
・軽質炭酸カルシウム :10重量部(平均粒径;3.4μ、カルサイト系)
・市販アルキルケテンダイマー系内添サイズ剤(AKD) :0.03重量部
・市販カチオン化澱粉 :0.2重量部
・市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤 :0.03重量部
<サイズプレス>
澱粉塗液を、0.5g/m2上記の紙基材上に塗布し乾燥した。
<塗工紙の作成>
ロールコータとブレードコータで下記の配合の塗液を上記のサイズプレス後の紙基材上に、実施例に沿って塗布して、乾燥した。
<上塗り塗液配合>
下記のとおりである。
(顔料)
・紡錘形軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業製TP121、3.4μm):30重量部
・市販微粒カオリン(アマゾン88、平均粒子径:0.8μm):70重量部
(バインダー及び添加剤)
・市販燐酸エステル化澱粉(日本食品化工製MS4400) :1重量部
・スチレンブタジエンラテックス(日本合成ゴム製0617) :12重量部
・市販ポリアクリル酸系分散剤 :0.1重量部
・市販ステアリン酸カルシウム :0.3重量部
・水酸化ナトリウム :0.15重量部
以上の条件の下、及び表に示す条件で、各種の要因を探索したところ、表1〜表36に示す結果が得られた。実施例1〜42は、ロール塗工とブレード塗工の併用の例を、実施例43〜実施例56はロール塗工のみの例を、実施例57〜69はブレード塗工のみの例を示す。
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「考察」
本発明に従って実施例は、比較例に比較して、高速抄紙でありながら、高い品質の紙が得ることができることが判る。
抄紙機の設備構成例の第1のゾーンを示す概要説明図である。 抄紙機の設備構成例の第2のゾーンを示す概要説明図である。 抄紙機の設備構成例の第3のゾーンを示す概要説明図である。 抄紙機の設備構成例の第4のゾーンを示す概要説明図である。 抄紙機の設備構成例の第4のゾーンにおけるカレンダーパートの変形例を示す概要説明図である。 ヘッドボックスの紙料の噴出を示す概要説明図である。 加熱金属ロールを示す概要説明図である。 電磁誘導作用による内部加熱装置例を示す概要説明図である。 クーリング設備例を示す概要説明図である。 ブレード塗工機の例を示す概要説明図である。
1…第1ワイヤー、2…第2ワイヤー、3…ヘッドボックス、5…ブレード、10…ツインワイヤーフォーマ、21…第1プレス、22…第2プレス22、40…サイズプレス、41…エアーターンバー、50…プレカレンダー、51…金属ロール、52…弾性ロール、60…ロールコータ、65A…第1ブレードコータ、65B…第2ブレードコータ、70…オンマシンカレンダー、M…金属ロール、D…弾性ロール、80…リール、90…アプリケータ、91…ブレード。

Claims (4)

  1. 製品米坪が64g/m 2 以下の塗工紙を製造する方法であって、
    オンマシン内で次記の工程が順に組み込まれ、かつ抄紙速度1300m/分以上であることを特徴とする塗工紙の製造方法。
    それぞれループをなす2つのワイヤー間に上向きヘッドボックスから紙料を噴出し、脱水手段で脱水して紙層を形成するツインワイヤーフォーマで抄紙する抄紙工程;
    このワイヤーパートからプレスパートに移行した紙層をシュープレスによりニップして脱水を行うプレスパート脱水工程;
    プレスパート脱水工程からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーのみにより乾燥するプレドライヤー乾燥工程;
    プレドライヤー乾燥工程により乾燥した乾燥紙匹であってプレカレンダーにより平滑化する前の紙匹に対してその両面に下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布するサイズプレス工程;
    サイズプレス工程からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーにより乾燥するアフタードライヤー乾燥工程;
    下塗り塗工液を塗布した表面を、紙匹の他方の面に加熱ロールが接するプレカレンダーにより平滑化するプレカレンダーによる平坦化工程;
    塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液を塗工する塗工工程。
  2. 前記シュープレスは、ダブルフェルトの第1プレスと、ボトム側がベルトである第2プレスとを順に有する請求項1記載の塗工紙の製造方法。
  3. 前記プレカレンダーの上側が金属ロールで下側が弾性ロールである請求項1又は請求項2記載の塗工紙の製造方法。
  4. 製品米坪が64g/m 2 以下の塗工紙を製造する設備であって、
    オンマシン内で次記の手段が順に組み込まれ、かつ抄紙速度1300m/分以上で抄紙されるように構成されたことを特徴とする塗工紙の製造設備。
    それぞれループをなす2つのワイヤー間に上向きヘッドボックスから紙料を噴出し、脱水手段で脱水して紙層を形成するツインワイヤーフォーマで抄紙する抄紙手段;
    このワイヤーパートからプレスパートに移行した紙層をシュープレスによりニップして脱水を行うプレスパート脱水手段;
    プレスパート脱水手段からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーのみにより乾燥するプレドライヤー乾燥手段;
    プレドライヤー乾燥手段により乾燥した乾燥紙匹であってプレカレンダーにより平滑化する前の紙匹に対してその両面に下塗り塗工液をサイズプレスにより塗布するサイズプレス手段;
    サイズプレス手段からの紙匹の一方の面に加熱ロールが接するシングルデッキドライヤーにより乾燥するアフタードライヤー乾燥手段;
    下塗り塗工液を塗布した表面を、紙匹の他方の面に加熱ロールが接するプレカレンダーにより平滑化するプレカレンダーによる平坦化手段;
    塗被紙に接着剤及び顔料を主成分とする水性塗工液を塗工する塗工手段。
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