JP5742383B2 - 黒色膜、黒色膜付き基材及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
また、黒色度が高く、遮光性に優れた黒色材料として、銀錫合金を主成分とする平均粒径が1nm以上300nmの粒子からなり、上記銀錫合金中の銀含有量が好適には47.6質量%以上90質量%以下である黒色微粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらには、高い遮光性を有する黒色組成物に用いられる黒色材料として、銀または錫を主成分とし、全粒子中銀原子の含有量が50質量%以上90質量%以下の黒色微粒子も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
一方、黒色材料が卑金属を主成分とした金属微粒子の場合には、樹脂の分解は起きにくいものの微粒子そのものが酸化しやすく、信頼性が損なわれてしまうことがあった。
〔1〕 銀微粒子及び銀錫合金微粒子を含む金属微粒子からなり、
銀錫合金成分量が50質量%以上90質量%以下であり、かつ、銀成分量が75質量%以上87質量%以下である黒色材料、
〔2〕 前記金属微粒子が、さらに、銀部及び銀錫合金部からなる複合微粒子を含む〔1〕に記載の黒色材料。
〔3〕 前記金属微粒子の平均一次粒子径が、3nm以上100nm以下である〔1〕または〔2〕に記載の黒色材料、
〔4〕 〔1〕乃至〔3〕のいずれか1に記載の黒色材料を分散媒中に分散してなる黒色材料分散液、
〔5〕 〔1〕乃至〔3〕のいずれか1に記載の黒色材料と、樹脂形成成分または樹脂成分とを少なくとも含む黒色樹脂組成物、
〔6〕 〔1〕乃至〔3〕のいずれか1に記載の黒色材料と、樹脂成分とを少なくとも含む黒色膜、
〔7〕 体積抵抗率が1011Ω・cm以上である〔6〕に記載の黒色膜、
〔8〕 〔6〕または〔7〕に記載の黒色膜を基材表面に有する黒色膜付き基材、及び
〔9〕 〔6〕または〔7〕に記載の黒色膜を有する画像表示装置、
を提供するものである。
<黒色材料>
本実施形態の黒色材料は、銀微粒子及び銀錫合金微粒子を含む金属微粒子からなり、銀錫合金成分量が50質量%以上90質量%以下であり、かつ、銀成分量が75量%以上87質量%以下である。
そこで、本発明者らは銀微粒子に比べ光沢性の低い銀錫合金微粒子等を混合することにより、黒色度と低光沢性とを両立させることを試みており、成果を得ているが(上記特許文献3参照)、この場合においても、銀由来の触媒反応性の低減は不十分であった。そこで、更に検討を加えた結果、銀微粒子及び銀錫微粒子を含む黒色材料において、銀錫合金成分量を特定の範囲に限定し、かつ銀と錫の比率を一定の範囲に限定することにより、黒色度を保ちつつ低酸化触媒性を有する金属微粒子が得られることがわかった。
なおここで、「銀微粒子」とは、実質的に錫を含まない銀のみからなる微粒子であり、また、上記「銀錫合金微粒子」とは、後述する銀錫合金部のみからなる微粒子である。
ここで、上記銀部とは、実質的に錫を含まない銀のみからなる部分であり、また上記「銀錫合金部」とは、銀と錫との金属間化合物、すなわち銀と錫を含み、かつ銀あるいは錫の結晶構造とは異なる結晶構造を有する部分を含むが、それだけではなく、銀中に銀の結晶構造を保った状態で錫が固溶した部分(錫固溶銀)も含まれる。ただし、後述の理由から、本実施形態中に含まれる銀錫合金部は、Ag3Snと判断している。
このように、金属微粒子に銀微粒子や銀部を含むことで黒色性を維持しつつ、銀錫合金微粒子や複合微粒子を一定量以上含ませることで触媒活性を低減させることにより、遮光性、黒色度、微粒子の触媒活性の三者をバランスよく得ることができる。
すなわち、銀錫合金を化学式Ag1-XSnXで表した場合のXの範囲として、0<X≦0.115の(Ag)相(以下の式(1)で示される空間群)、0.118≦X≦0.2285のζ相(空間群P63/mmc)及び0.237≦X≦0.25のε相(空間群Pmmn)の3種類である。これらの相の組成と空間群を、X線回折のICDDカード(JCPDSカード)と比較すると、(Ag)相は、銀中に銀の結晶構造を保った状態で錫が固溶したもの、すなわち銀結晶中の銀原子の一部を錫原子が置換したものであるから、Ag(IDCC 86−2265、立方晶系)と同等と考えられ、ζ相のX線回折データがAg4Sn(IDCC 29−1151、六方晶系)、ε相のX線回折データはAg3Sn(IDCC 71−0530、斜方晶系)に相当すると考えられる。これらのうち、(Ag)相は前記のとおり銀の結晶構造を有するものであり、一方Ag3SnとAg4Snは、銀錫金属間化合物の結晶構造を有するものである。
また、前記銀−錫の相図によれば、ε相(Ag3Sn)より錫量が多い場合には特定の相は存在しない。従って、本実施形態の銀錫合金の製造方法で得られるものはAg3Snと錫の混合物であり、後の酸処理において錫を酸に溶解させることによりAg3Snが残ると考えることが妥当である。これも、銀錫合金部がAg3Snよりなると判断する理由でもある。
金属微粒子中の銀錫合金の含有量が50質量%を下回ると、黒色材料中での銀微粒子や銀部、すなわち銀単成分の量が多くなるために、黒色材料として用いられる金属微粒子の触媒活性を低く保つことができない。一方、金属微粒子中の銀錫合金の含有量が90質量%を上回ると、黒色材料において銀微粒子や銀部が少なくなるために黒色度が低下し十分な光遮光性を得ることができない。
黒色材料中の銀錫合金の含有量は、55質量%以上85質量%以下が好ましく、60質量%以上85質量%以下がより好ましい。
金属微粒子中の銀元素の含有量が75質量%を下回ると、黒色材料において黒色度が低下し十分な光遮蔽性を得ることができない。一方、金属微粒子中の銀元素の含有量が87質量%を上回ると、銀元素のために反射率が高くなってしまい十分な黒色度が得られなかったり自然な黒色が得られなかったりしてしまう。
黒色材料中の銀元素の含有量は、77質量%以上85質量%以下が好ましく、77質量%以上83質量%以下がより好ましい
なお、本実施形態の黒色材料の主成分である金属元素が銀と錫だけである場合には、金属微粒子中の銀元素の含有量(%)は、EPMAの測定値から下記式(2)により求めることができ、錫元素の含有量(%)はこの銀元素の含有量の残量である。
銀元素の含有量(%)=〔銀元素の質量/(銀元素の質量+錫元素の質量)〕×100 ・・・ (2)
なお、式(2)中の分母には、例えば金属微粒子の周囲に付着している分散剤等に起因する炭素や金属微粒子の表面の酸化などに起因する酸素など、金属以外の元素は含まない。
なお、本実施形態における円直径相当の平均一次粒子径とは、後述するように種々の形状を持つ金属微粒子をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、確認された微粒子と面積が同じになるような円に相当する直径である。
これらの中でも銀微粒子及び銀錫微粒子や、銀部及び銀錫合金部からなる複合微粒子を形成しやすいこと、合成条件により粒子の組成や形状を制御しやすいことといった点から、液相反応法を用いることが好ましい。従来、金属微粒子の組成やそれに伴う結晶系、粒子径や粒子形状等を制御しながら、酸化還元電位が大きく異なる錫と銀との合金を製造する方法は見出されていなかったが、本実施形態では、後述するように反応温度、pH、攪拌効率といった反応条件を厳密に制御することで、組成やそれに伴う結晶系、粒子径や粒子形状等を制御しながら銀錫合金を生成させることが可能となった。
この製造方法にあっては、反応条件(例えば、還元剤の種類や量、錫と銀イオンとの比率、反応液のpH、反応温度、反応時間など)を適宜調整することにより、金属微粒子中の銀元素の含有量や、銀微粒子と銀錫合金微粒子の比率を任意に制御することができる。
また、この黒色材料を用いて黒色膜を作製する場合、樹脂成分との分散性を考慮して、水分散系から有機溶媒分散系に変更してもよい。有機溶媒分散系に変更する場合、液相状態を保持したままで溶媒置換を行ってもよいが、有機溶媒分散系における含水量を低減させるためには、液相から回収したケーキ状の凝集物を一旦機械的に粉砕して粉末とし、その後、ボールミル、ビーズミル等の湿式混合機を用いて有機溶媒中にて分散処理する方法を用いることが好ましい。
本実施形態の黒色材料分散液は、本実施形態の黒色材料を分散媒中に分散させた分散液である。
この分散液中における黒色材料の含有率は、1質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上50重量%以下、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。ここで、黒色材料の含有率を1質量%以上80質量%以下が好ましいとした理由は、この範囲が黒色材料が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が1質量%未満であると、黒色材料としての効果が低下する場合があり、また、80質量%を超えると、黒色材料の濃度が高くなり過ぎてペースト状態となり、分散液としての特徴が消失する場合があるからである。
前記分散媒は、基本的には、水及び有機溶媒の少なくともいずれかを含有したものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル、γ−ブチロラクトン等の他のエステル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;及びN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
分散液の含水率が5質量%を超えると、黒色材料を分散した黒色材料分散液を塗料等の黒色樹脂組成物とする目的で非水系の樹脂成分ないしは樹脂形成成分と混合した場合に、分散液と樹脂成分ないしは樹脂形成成分とが分離し易くなり、安定した混合物(塗料等)が得難くなる場合がある。すなわち、分散液の含水率を5質量%以下とすることで、種類が多い非水系の樹脂成分ないしは樹脂形成成分の中から所望の特性に合ったものを適宜選択することができ、分散液、樹脂組成物(塗料)や塗膜における制約もなく、これらの設計の自由度を広げることができる。
本実施形態の分散液では、黒色材料の分散性の向上、分散安定性の向上のために、分散剤及び/又は分散助剤や表面処理剤を併用することが好ましい。中でも、特に分散剤として高分子分散剤を用いると経時の分散安定性に優れるので好ましい。なお、ここで、分散剤は黒色材料の分散安定性を確保するための、黒色材料とは全く構造の異なるポリマー等であり、分散助剤とは黒色材料の分散性を高めるための顔料誘導体をいう。
これらの条件を満たす分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、SOLSPERSE(ゼネカ社製)等を挙げることができる。また、これらの分散剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
平均分散粒子径は5nm以上80nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
上記90%累積個数粒子径は0.6μm以下であることがより好ましい。
また、後述の黒色樹脂組成物における平均分散粒子径及び90%累積体積粒子径についても、同様の測定方法により求めた。
例えば上記ビーズミルを用いた場合、バッチ式のビーズミルにおいて分散室内での(ビーズの質量)/(分散液の質量)の比を0.5以上15以下、回転数を1000rpm以上4000rpm以下で、0.1時間以上10時間以内程度分散させることが好ましい。
好ましい分散条件としては、例えば(ビーズの質量)/(分散液の質量)の比を3.5とし、2500rpmで2時間程度分散する条件が挙げられる。
本実施形態の黒色樹脂組成物は、少なくとも本実施形態の黒色材料と樹脂形成成分又は樹脂成分とを含むものであり、塗料等が含まれる。なお樹脂成分とは、後述の黒色膜における樹脂成分と同一であり、樹脂形成成分とは、後述の黒色膜における樹脂成分を形成するための成分である。
ここで、黒色樹脂組成物を構成するための主たる成分は次に示す[A]から[E]の5種類である。なお、[B]と[E]とは異なるものとする。
[A]黒色材料
[B]黒色材料分散媒
[C]樹脂形成成分
[D]樹脂成分
[E]樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒
(1):[A]+[C]
最小限の組み合わせである2成分系であり、液状の樹脂形成成分中に黒色材料を分散したものと捉えることができる。この場合、[C]は液状である必要がある。
(2):[A]+[B]+[C]
3成分系であり、前記「黒色材料分散液」と、樹脂形成成分とを混合したものと捉えることができる。一般的には[C]は液状である必要があるが、[C]が[B]に可溶の場合には、[C]は固体状であってもかまわない。
(3):[A]+[C]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂形成成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。[C]は[E]に溶解させているため、液状でも固体状でもかまわない。
(4):[A]+[D]+[E]
3成分系であり、溶媒中に溶解させた樹脂成分中に黒色材料を分散させたものと捉えることができる。なお[D]は固体であるから、[D]が存在する限り[E]は不可欠である。
(5):[A]+[B]+[D]
[D]が[B]に可溶な場合にのみ可能な組み合わせであって、前記「黒色材料分散液」中に、樹脂成分を溶解したものと捉えることができる。この場合のみ、例外的に[E]は不要である。
(6):[A]+[B]+[C]+[E]
(7):[A]+[B]+[D]+[E]
4成分系であり、前記「黒色材料分散液」に、樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液を混合したものと捉えることができる。この場合、[B]と[E]とは相溶性が高い必要がある。両者の相溶性が低い場合、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合した際に、相分離や粒子成分の凝集等が起こるため好ましくない。なお、[B]と[E]とが同一の場合には、(6)は(2)又は(3)に、(7)は(4)又は(5)に、それぞれ含めるものとする。
樹脂形成成分とは、後述の黒色膜における樹脂成分を形成するための成分であり、通常は樹脂成分のモノマー、オリゴマーやプレポリマーが含まれる。すなわち、樹脂成分として、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能であることから、これら樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくともいずれかもこれらに含まれる。
さらに、樹脂成分として熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、 ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等を選択する場合にも、樹脂形成成分としては、これらの熱可塑性樹脂を形成するための原料化合物や、重合性樹脂のモノマー、オリゴマー、プレポリマーを挙げることができる。
この範囲よりも樹脂形成成分が多すぎると、黒色膜を形成したときに、樹脂成分単位体積中の黒色材料存在量が不足するために十分な遮光性が確保されない場合があり、一方樹脂形成成分が少なすぎると、均一な膜体が形成されない、必要な膜厚が得られない等、黒色膜としての好ましい形状が形成されない場合がある。
樹脂形成成分又は樹脂成分の溶媒(以下、「樹脂溶媒」という場合がある)としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高い液体であって、基本的には、水及び有機溶媒のうちの1種あるいは2種以上から選択されるものである。
樹脂溶媒としては、樹脂形成成分又は樹脂成分の溶解度が高いほかに、黒色材料の分散性が高いこと、黒色材料分散液との相溶性が高いこと、また、黒色材料分散液と混合した際に、黒色材料の分散性や樹脂成分や樹脂形成成分の溶解度が低下しないこと、という条件が必要である。これらの条件が満たされない場合には、「黒色材料分散液」と「樹脂形成成分又は樹脂成分を溶解させた溶液」とがそれぞれ安定に存在しても、両者を混合して黒色塗料を形成した際に、相分離、黒色材料の凝集や沈降、樹脂形成成分又は樹脂成分の析出等が起こり、良好な黒色塗料が得られなくなるため好ましくない。ここで、樹脂溶媒と黒色材料分散液として、同一あるいは同類の溶媒を選択することができれば、このような問題点を回避できるので好ましい。
なお、有機溶媒としては、前述の黒色材料分散液に用いられる有機溶媒を同様に用いることができる。
また、本実施形態の黒色材料分散液として分散剤及び/又は分散助剤や表面処理剤を含む分散液を選択し、この黒色材料分散液を黒色塗料の原料として使用する場合においては、当該分散液中に既に含まれている分散剤、分散助剤や表面処理剤をそのまま使用してもよい。その理由として、分散剤、分散助剤や表面処理剤は、黒色材料の表面を修飾することで黒色材料表面が分散媒や溶媒に対して親和性を有するようにする物質であることから、分散媒や溶媒と特性が変わらないのであれば、あえて別種の分散剤や分散助剤で処理する必要は無いからである。
この場合、予め黒色材料分散液を調製し、これに樹脂形成成分等や光重合開始剤等を加えて溶解させることにより黒色塗料を調製してもよい。また、予め調製した黒色材料分散液と、樹脂形成成分等や光重合開始剤等の成分とを溶解させた溶液とを、混合することにより調製することもできる。
混合分散方法は、黒色材料や樹脂形成成分等を混合した混合液を、超音波分散機、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、アイガーミルなどの公知の分散処理方法より選択すればよいが、分散性の点からビーズミルが好ましい。また、複数の分散方法を組み合わせて使用してもよい。なお、予め調製した黒色材料分散液を用いる場合、黒色樹脂組成物の製造時には上記分散処理方法を行うことなく、黒色材料分散液と樹脂形成成分等を溶解させた溶液とを十分に混合・攪拌すればよい場合もある。
本実施形態の黒色膜は、本実施形態の黒色材料と樹脂成分とを少なくとも含んでなるものである。
本実施形態における樹脂成分としては、黒色材料である黒色を呈する金属微粒子が均一に分散された状態で硬化するものであって、形成された黒色膜に要求される特性に適したものを選択すればよい。この樹脂成分としては、前述の黒色樹脂組成物において説明した電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が各種使用可能である。
また、黒色塗料中の成分が溶媒中に溶解した樹脂成分の場合においては、硬化処理は、塗膜中の樹脂成分中から溶媒を除去する工程となり、大気圧下あるいは減圧下での加熱処理が挙げられる。この場合、溶媒除去により硬化した樹脂成分は、同様の溶媒に曝されることで再度膨潤・溶解する可能性があるため、加熱処理条件を厳しくすることにより、溶媒を完全に除去することが好ましい。ここで、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂を用いる場合には、溶媒除去後に紫外線、電子線、X線などの放射線の照射や、さらには熱処理を施して完全に硬化させればよく、樹脂成分として熱反応性樹脂を用いる場合には、溶媒除去後の熱処理により、硬化反応を完結させればよい。
この場合、黒色塗料中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の割合は、5質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。この範囲よりもアルカリ可溶性樹脂の割合が多過ぎると、ブラックマトリックスや隔壁等のパターン形成時に充分な感度が確保されず、また必要な遮光性も確保できない場合があり、一方少な過ぎると樹脂ブラックマトリックスや隔壁等の好ましい形状が形成されない場合がある。
光重合開始剤としては、特に、感度の点でオキシム誘導体類(オキシム系化合物) が有効であり、遮光性を高くしたり、フェノール性水酸基を含むアルカリ可溶性樹脂を用いる場合などは、感度の点で不利になるため、特にこのような感度に優れたオキシム誘導体類(オキシム系化合物)が有用である。本実施形態では、上記光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂ブラックマトリクスを形成する場合、分散液中の光重合開始剤の割合は、全固形分に対して0.4質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。この範囲よりも光重合開始剤の割合が多すぎると現像速度が遅くなり過ぎる場合があり、一方少なすぎると十分な感度が得られず、好ましい樹脂ブラックマトリクス形状や隔壁形状が形成されない場合がある。
また、前記エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリイソシアネート化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類、及び、(メタ)アクリル酸又はヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とポリエポキシ化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
また、1μm当たりの光学濃度は1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
ここで、本実施形態の黒色材料は黒色度が高く、また樹脂中での分散性にも優れていることから、本実施形態の黒色膜は、黒色材料の量を増加させることにより、黒色材料の増加による悪影響、例えば膜強度の低下や黒色材料の凝集による黒色度の低下等を避けつつ、1μm当たりの光学濃度を2以上とすることも容易であり、3以上とすることもできる。従って、黒色膜の厚さを増すことなく、高い遮光性を得ることができる。なお、1μm当たりの光学濃度は高いほど望ましいが、測定上の限界から上限は10程度である。
さらに、黒色膜の反射率は低い方が黒色膜の黒色度が高まり好ましい。反射率が高いと黒色膜の外観が白っぽくなり膜の品位が低下してしまう。380nmから800nmまでの反射率を平均した可視光の平均反射率は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
試料は透過測定用として透明基板上に膜状に形成する。この膜状試料の光学濃度を透過濃度計で測定するとともに、触針式表面形状測定器等を用いて膜厚を測定し、得られた試料の光学濃度値を膜厚で除すことにより、厚さ1μm当たりの光学濃度を求めることができる。なお、膜状試料の光学濃度は4.0程度かそれ以下にしておくことが、測定精度の低下を防ぐことができるので好ましい。
この黒色膜の体積抵抗率は1012Ω・cm以上であることがより好ましく、1013Ω・cm以上であることがさらに好ましい。黒色膜の体積抵抗率は高いほど好ましく、その上限は特に制限はないが、通常1018Ω・cm以下である。
なお、体積抵抗率の測定は、市販の体積抵抗率計を用い、例えば4探針法等により測定することができる。
ここで、本実施形態の黒色材料は黒色度が高いことから、従来の黒色材料に比べて黒色膜中の含有量を減じることができ、また樹脂中での分散性にも優れていることから、黒色材料粒子同士が連なるように凝集して形成される導電パスが発生しない。そこで、上記のように1μm当たりの光学濃度を高めても、体積抵抗率を高い値に維持することができる。
本実施形態の黒色膜付き基材は、基材上に既述の本実施形態の黒色膜を設けて構成されたものである。具体的には、例えば光透過性基材の上に、前述の黒色樹脂組成物の1つである黒色塗料を用いて既述したように形成した層を、必要に応じてパターニングすることで作製される。
プラスチック基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート等から、用途や使用条件に基づいて適宜選択することができる。
上記露光、現像などのパターニング工程については公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2006−251095号公報の段落番号0096から0106に記載の方法や、特開2006−251237号公報の段落番号0116から0126に記載の遮光画像の形成方法が、本実施形態においても好適に用いることができる。
この工程についても公知の方法を使用できるが、例えば画像表示装置用のブラックマトリックスとして適用する場合には、特開2008−116895号公報の段落番号0029から0031に記載の方法を用いることができる。
本実施形態の画像表示装置は、装置中に既述の本実施形態の黒色膜を設けて構成されたものである。具体的には、プラズマディスプレイ表示装置、有機EL表示装置等の自発光型表示装置、CRT表示装置、液晶表示装置等を挙げることができ、中でも液晶表示装置や有機EL表示装置に用いた場合に本実施形態の黒色膜の効果が顕著に発揮される。ここで、液晶表示装置の種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
なお、これらブラックマトリックス、遮光隔壁やスペーサー等は、通常基板上に形成されるから、本実施形態の画像表示装置は、本実施形態の黒色膜付き基材を有するとも言うことができる。
すなわち、本実施形態の黒色膜付き基材をブラックマトリクス基板としたときの、黒色膜の膜厚は0.2μm以上5.0μm以下が好ましく、特に0.2μm以上4.0μm以下が好ましい。このように、ブラックマトリクス基板における黒色膜として本実施形態の黒色膜を使用しているので、薄膜でも高度の光学濃度を有する。
これにより、COA方式やBOA方式の液晶表示素子や自発光型表示装置のように、ブラックマトリックスと画素駆動用の配線とが接触する場合においても、配線の短絡等による素子の駆動不良を起こすおそれがない。
なお、有機EL素子の場合、素子を構成する材料自体が分解ガスにより劣化するが、材料劣化がない場合でも、分解ガスが材料表面に付着して表面状態が変わること等で特性が変化するような材料を用いた素子に対しても、本実施形態の黒色膜は好適に用いることができる。
<各測定・評価方法>
以下に、実施例または比較例において採用した、材料及びシートの特性等の各測定または評価方法を示す。
後述する黒色微粒子の水分散液から粒子を分離、乾燥して粉末試料とし、以下の評価を行った。
(含まれる微粒子種の同定)
粉末試料について、X線回折装置(XRD)により結晶相を同定するとともに、圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA)で定性及び定量分析することにより、結晶相と組成比(含有比率)を求め、この結果から含まれる金属粒子種を確定した。
[XRD測定による結晶相同定]
粉末試料をガラス製試料ホルダーに詰め、X線回折装置(PANalytical製、X'Pert PRO)により、CuKα線を用いて測定した。得られたXRDプロファイルの回折角2θ=38°付近および44°付近のピークを銀結晶構造(銀単体及び/又は錫固溶銀)、2θ=34.7°付近および39.7°付近のピークを銀錫金属間化合物結晶構造(Ag3Sn及び/又はAg4Sn)、2θ=30.7°付近および32°付近のピークを錫の結晶相ピークとして同定することにより、含まれる金属粒子種の結晶相を確認した。
[EPMA測定による定性・定量分析]
黒色材料粉末の圧粉体を電子線マイクロアナライザー(EPMA、日本電子社製、JXA8800)にて分析し、波長分散型X線分光器を用いた定性ならびに定量分析によって粉末中の銀及び錫の存在、並びに銀及び錫の含有比率(質量比)を測定した。
確認した金属粒子種の結晶相及び銀及び錫の含有比率から、次のようにして銀及び銀錫合金の存在確認を行い、それぞれの含有率を求めた。
銀錫合金成分(銀錫合金微粒子)は、XRDにて銀錫金属間化合物結晶構造の結晶相を確認するとともに単体の錫が存在しないことを確認した後、EPMAにおける定量分析から得られた錫の全量がAg3Snを形成しているとして計算し、その量を求めた。なお、全量がAg3Snであるとした理由は前記のとおりである。
銀成分(銀微粒子)は、XRDにて銀結晶構造の結晶相を確認することで存在を確認した後、EPMAにおける定量分析から得られた銀の全量から、上記Ag3Snを形成するために必要な銀量を差し引いて、その量を算出した。
[複合粒子の確認]
黒色材料粉末より作製した黒色材料分散液を希釈したものを試料とし、この試料を試料台上に取り乾燥させたものを、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM:日本電子製、JEM−2100F)及び付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて測定した。銀及び錫の面分析を行い、1粒子中に、銀及び錫の存在比が異なる部分の存在を確認することで、複合粒子が形成されていることを確認した。
また、XRDプロファイルにおけるピークの半値幅から銀及び銀錫合金の結晶子径を計算し、この結晶子径が後述の実際の平均粒子径の1/2から1/3程度であることを確認することで、複合粒子が形成していることも確認した。
黒色材料粉末より作製した黒色材料分散液を希釈したものを試料とし、この試料を試料台上に取り乾燥させたものを、透過型電子顕微鏡(TEM:日立製作所製、H−800)により観察した。観察視野から任意の粒子50個乃至100個を選び、それぞれの粒子像を円で近似し、当該円の直径を該粒子の粒子径(円直径相当の粒子径)とした。得られた結果より粒子径の累積個数分布を求め、累積値50%に対応する粒子径(メジアン径)を膜中の黒色材料の平均一次粒子径とした。
(光学濃度(膜の遮光性))
黒色膜を形成したガラス基板について、透過率濃度計(TECHKON社製、RT−120)を用いて可視光領域における光学濃度(OD値:Optical Densty)を測定し、同様に測定したガラス基板単体(膜なし)の測定値を参照値とすることにより、黒色膜自体のOD値を得た。
(膜厚)
断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行なうことにより、黒色膜の膜厚を測定した。
(黒色膜の体積抵抗率)
成膜基板としてITO膜をスパッタ法により表面に成膜したガラス基板を選択し、この基板上に成膜した黒色膜について、絶縁抵抗計(エーディーシー社製、超高抵抗/微小電流計R8340A、エーディーシー社製)を用いて体積抵抗率を測定した。なお、体積抵抗率測定はDC5Vにて実施した。
(黒色膜の減少率)
前記膜厚測定後の黒色膜を、大気中、230℃条件にて5時間曝露し、曝露後の膜厚を再び断面のTEM観察を用いて求め、暴露前からの膜厚の減少率を求めた。この膜厚減少量により、黒色材料における触媒活性能を評価した。
(黒色材料分散液の調製)
硝酸銀56gを純水に溶解し1500gの硝酸銀水溶液(A液)を調製した。また、クエン酸3ナトリウム2水和物314g及び1質量%に希釈したポリビニルピロリドン360gを純水に溶解し、2500gのクエン酸3ナトリウム水溶液(B液)を調製した。次いで、B液中にA液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム7gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下して混合してC液を得た。
次いで、錫コロイドA(平均粒子径:20nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)200g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記C液を滴下、混合した。さらに酒石酸180gを純水2000gに溶解した水溶液を錫微粒子分散液とC液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた。その後、遠心分離により洗浄を行い、黒色微粒子の水分散液(D液、固形分:25質量%)を調製した。
次いで、上記E粉29gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)71gとを混合し、これをビーズミルを用いて分散させ、黒色材料分散液(F液、固形分:25質量%)を得た。
黒色材料分散液(F液)、多官能性アクリレートを樹脂形成成分とするレジスト(分散媒:PGMEA)及び溶媒としてのPGMEAを、固形分体積比(黒色微粒子:レジスト)が10:90となるように混合し、超音波処理により分散して黒色塗料とした。なお、上記固形分体積比は仕込比である。
次いで、厚さ0.7mmのガラス基板上に、前記調製した黒色塗料をスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃にて2分間プリベークし、さらに230℃で30分間ポストベークし、黒色膜付きガラス基板を得た。黒色膜の膜厚は1μmであった。
上記で得られた黒色材料について、前記の条件にしたがって、黒色材料中の金属微粒子の同定、組成の定量を行った。また、得られた黒色膜について、光学濃度、膜厚減少率等を測定した。
結果をまとめて第1表に示す。なお、表中の単体銀の有無は、XRDプロファイルにおける銀のピークの有無により判断した。
実施例1の黒色材料分散液の調製において、水素化ホウ素ナトリウムの量を5gとし、クエン酸3ナトリウム2水和物の量を157gとした以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色材料分散液の調製において、錫コロイドAの量を250g、水素化ホウ素ナトリウムの量を4g、クエン酸3ナトリウム2水和物の量を157gとした以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色材料分散液の調製において、錫コロイド投入量を250g、水素化ホウ素ナトリウムの量を2g、クエン酸3ナトリウム2水和物の量を157gとした以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1と同様にして、A液及びB液を調製した。次いで、B液中にA液を滴下して混合してG液を得た。
次いで、錫コロイドA(平均粒子径:20nm、固形分:10質量%、住友大阪セメント社製)400g及び純水を混合した4000gの錫微粒子分散液中に、上記G液を滴下、混合した。さらに酒石酸180gを純水2000gに溶解した水溶液を錫微粒子分散液とG液との混合液中に滴下、攪拌し、過剰の錫コロイドを溶解させた後、遠心分離により洗浄し、分散液(H液)を得た。H液に、銀コロイド(平均粒子径:20nm、固形分:25質量%、住友大阪セメント社製)を85g投入して混合し、黒色微粒子の水分散液(I液、固形分:25質量%)を調製した。
その後、黒色微粒子の水分散液として、D液の代わりにI液を用いた以外は実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、並びに黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1と同様にして、A液及びB液を調製した。次いで、B液中にA液を滴下して混合したのち、これに水素化ホウ素ナトリウム20gを純水に溶解した500gの水溶液を滴下、混合した。その後、遠心分離により洗浄を行い、銀微粒子の水分散液(固形分:25質量%)を調製した。
その後、黒色微粒子の水分散液として、D液の代わりに上記銀微粒子の水分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、並びに黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色材料分散液の調製において、錫コロイドAの量を150g、水素化ホウ素ナトリウムの量を9gとした以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、並びに黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
実施例1の黒色材料分散液の調製において、錫コロイドAの量を400g、水素化ホウ素ナトリウムの量を0.1g、クエン酸3ナトリウム2水和物の量を79gとした以外は、実施例1と同様にして、黒色材料分散液及び黒色塗料の調製、黒色膜の作製を行い、同様の評価を行った。
これらの結果をまとめて第1表に示す。
また、高温条件下での暴露後の膜厚減少率が比較的少ないことから、黒色材料の触媒活性が低減されており、黒色膜自体の劣化や分解ガスの発生が抑えられていることがわかった。従って、例えば黒色膜自体の基材との密着性低下が抑えられ、また有機EL素子の遮光膜にも適用可能と判断された。
一方、比較例1は遮光性が低いだけでなく、高温条件下での暴露後の膜厚減少率が大きかった。また比較例2は、遮光性は十分であったが高温条件下での暴露後の膜厚減少率が大きかった。これら比較例1及び2は銀単成分の量が多いことから黒色材料の触媒活性が高く、このため膜厚減少率が高いものと考えられる。
さらに比較例3は、膜厚減少率は小さいものの遮光性が十分とは言えないものであった。これは、黒色材料中の銀単成分量が少なすぎるため、触媒活性能は低いものの遮光性が不足したものと考えられる。
Claims (5)
- 銀微粒子及び銀錫合金微粒子を含む金属微粒子からなり、該金属微粒子中の銀錫合金成分量が50質量%以上90質量%以下であり、かつ、該金属微粒子中の銀成分量が75質量%以上87質量%以下である黒色材料と、
樹脂成分とを少なくとも含み、
体積抵抗率が10 11 Ω・cm以上である黒色膜。 - 前記金属微粒子が、さらに、銀部及び銀錫合金部からなる複合微粒子を含む請求項1に記載の黒色膜。
- 前記金属微粒子の平均一次粒子径が、3nm以上100nm以下である請求項1または2に記載の黒色膜。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の黒色膜を基材表面に有する黒色膜付き基材。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の黒色膜を有する画像表示装置。
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