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JP5623328B2 - カーテンエアバッグ - Google Patents

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Description

本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに関するものである。
近年、車両には高い安全性が求められている。この傾向は世界各国に共通していて、現在では世界各国でエアバッグが車両の安全装置としてほぼ標準装備されている。そして、車両開発に関係する事業者ではさらなる安全性向上が重要な開発テーマとして掲げられていて、これに伴って日々新たなエアバッグが開発されている。
車両の安全性の評価基準は各国において異なっていて、各事業者は製造品が多国の評価基準に対応し得るよう開発を行っている。例えば世界最大の自動車保有台数をほこる米国では、NHTSA(米国高速道路交通安全局)によってFMVSS(米国連邦自動車安全基準)が制定されている。そして現在、NHTSAが今後定める予定のFMVSSの規則策定の通知(NPRM)には「側突時・ロールオーバ(横転)時において、放出緩和システムによりサイドウィンドウを通した乗員の車外放出の見込みを減少させる」という要件が提案されている(FMVSS226)。この要件は、放出緩和システムを成す車外放出軽減対策装置としてカーテンエアバッグを備えることで達成可能である。
カーテンエアバッグは、衝撃発生時に車両のサイドウィンドウに沿って膨張展開するエアバッグである。カーテンエアバッグは、ドア上方のルーフサイドレールから、車両前後方向の端のフロントピラーまたはリアピラーまでにわたって取り付けられる。例えば特許文献1に記載のカーテンエアバッグは、上縁に取付片部(タブ)を備えている。タブは布で構成された短い帯形状の部材である。タブには取付孔が設けられていて、この取付孔を使用してルーフサイドレール等へのボルト締結が可能となっている。
現在、カーテンエアバッグに対して、乗員の車外放出防止性能のさらなる向上が要請されている。車外放出防止性能を向上させるためには、カーテンエアバッグは乗員との接触時に受ける荷重が効率よく吸収できると有利である。荷重の吸収は車両への固定点であるタブから行われる。通常、カーテンエアバッグに乗員が接触すると、その接触箇所から各タブにかけて放射状に張力線(テンションライン)が形成される。荷重を効率よく吸収するためには、タブをより乗員が接触し得る箇所の近い部位に設け、なるべく高い張力がかかるテンションラインを形成することが望ましい。
特開2010−52704号公報
しかし、特許文献1のように、カーテンエアバッグの車両前後方向の端部はピラーの下方に位置している。例えば、フロントピラーはルーフサイドレールから下方に傾斜していて、これに伴ってカーテンエアバッグの前端の上縁も傾斜している。したがって、前端付近の上縁にタブを設けると、そのタブの位置は他のタブよりも低くなる。通常、カーテンエアバッグは下縁側から上方に向かって巻回または折り畳まれた後、タブを利用して取り付けられる。その際、上記の低い位置のタブが設けられていると巻回等の作業が困難になってしまう。
本発明は、このような課題に鑑み、車外放出防止性能を向上させながら巻回または折り畳み容易なカーテンエアバッグを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグの代表的な構成は、車両室内の側面部上方に収納されて側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、ガスが流入して膨張する膨張領域の車両前後方向の端部に区画されるチャンバと、チャンバ以外の膨張領域の上縁に沿って略同じ高さに設けられる一連のタブと、チャンバの上縁において一連のタブよりも低い位置に設けられる追加タブと、チャンバとチャンバに隣接する膨張領域との間に当該カーテンエアバッグの下縁から上方に向かって設けられるスリットと、を備え、当該カーテンエアバッグは、スリットを車両前後方向に開くことで追加タブが一連のタブと略同じ高さまで移動した状態で下縁側から上方に向かって巻回または折り畳まれて収納されることを特徴とする。
上記の端部のチャンバで乗員を受け止める場合、端部のチャンバへの乗員の接触点と、端部のチャンバの車両への固定点とは、距離が短いほうが荷重の吸収効率がよい。そこで、上記構成では、まず、端部のチャンバの上縁に追加タブを設けている。この追加タブは、フロントピラーでの固定を想定したものであって、他の一連のタブに比べて位置が低い。加えて上記構成ではスリットを設けていて、このスリットによってカーテンエアバッグの巻回または折り畳みが位置の低い追加タブを巻き込むことなく容易にできる構成となっている。
また、筒状に巻回されまたは折り畳まれたカーテンエアバッグは、スリットの位置する部分で曲げやすくなる。そのため、カーテンエアバッグをスリット位置で曲げ、フロントピラーに沿わせて容易に取り付けることが可能である。
これらによって、上記の追加タブは、端部のチャンバに乗員が接触した際における荷重の吸収に対して最も貢献する。したがって、車外放出防止性能を向上させながら巻回または折り畳み容易なカーテンエアバッグが提供できる。
上記の追加タブは、車外放出防止性能評価試験において乗員を模擬したインパクタが衝突する打点のうち、車両前後方向の端の打点と車両のピラーとを最短距離で結ぶ直線上に設けられるとよい。
上記構成によれば、端部のチャンバを打点に最も近い位置でピラー(例えばフロントピラー)に固定し、高い張力のかかるテンションラインを形成して荷重を効率よく吸収できる。したがって、乗員の車外放出防止性能をさらに向上させることができる。
本発明によれば、車外放出防止性能を向上させながら巻回または折り畳み容易なカーテンエアバッグを提供することが可能となる。
本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。 図1(b)のカーテンエアバッグのみを例示する図である。 図1(b)のカーテンエアバッグを用いた車外放出防止性能評価試験を例示する図である。 図3のようにカーテンエアバッグを車両室内の側面部上方に収納する前に当該カーテンエアバッグを巻回する過程を例示する図である。 図3のようにカーテンエアバッグを車両室内の側面部上方に収納する前に当該カーテンエアバッグを巻回する過程を例示する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略す
る。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態にかかるカーテンエアバッグを例示する図である。図1(a)はカーテンエアバッグ(以下、「エアバッグ100」と記載する。)の非展開時、図1(b)はエアバッグ100の展開時をそれぞれ例示する。
エアバッグ100は、図1(a)のように巻回された状態で、または折り畳まれた状態(図示省略)で、車両室内の側面部上方のルーフサイドレール104(図中、仮想線で例示する。)に取り付けられて収納される。ルーフサイドレール104には、ルーフ(屋根)を支える複数のピラーが接続されている。これらは車両102の前方から、フロントピラー106、センタピラー108、リアピラー110と呼ばれる。
エアバッグ100はガス発生装置であるインフレータ112を備えている。車両102に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両102に備えられたセンサ(図示省略)による衝撃の感知に起因して、インフレータ112へ発火信号が発信される。すると、インフレータ112の火薬が燃焼し、発生したガスがエアバッグ100内へ供給される。
図1(b)に例示するように、エアバッグ100は袋状に形成されていて、インフレータ112からのガスによって、車室の側面部(サイドウィンドウ114等)に沿うように下方へ膨張展開し、乗員の保護を行う。エアバッグ100は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりして製造されている。
図2は、図1(b)のカーテンエアバッグのみを例示する図である。膨張領域120は、ガスが流入して膨張する領域である。膨張領域120には、複数の小部屋(チャンバ)が区画されている。各チャンバは、車両102の側面部および座席の構成から想定される乗員との接触箇所に配置されている。例えば、前部座席116(図1(b)参照)の側方にはメインチャンバ122が区画されている。また、本発明の技術的思想を利用するチャンバとして、膨張領域120の車両前後方向の前端にはフロントチャンバ124が区画されている。フロントチャンバ124は、特にロールオーバによって姿勢を大きく崩した前部座席116の乗員を保護する。
フロントチャンバ124はロールオーバに対応するよう、膨張展開が他のチャンバに遅れて完了する、いわゆるディレーチャンバとなっている。フロントチャンバ124は、上方側にガス流入口126を有していて、メインチャンバ122からガス流入口126を通じてガスを受給する構成となっている。フロントチャンバ124へのガスの流路がガス流入口126のみに限定されているため、フロントチャンバ124はガスの単位時間当たりの受給量が制限されている。ロールオーバは側面衝突等の発生に続いて起こるため、センサによる衝突感知からフロントチャンバ124が必要となる時点までには相応の時差が生じる。そこで、フロントチャンバ124は、ガスの単位時間当たりの受給量を制限してロールオーバ時に最も圧力が高まるよう膨張が制御されている。
膨張領域120の上縁132には一連のタブ130a〜130dが設けられている。タブ130a〜130dは、上縁132をルーフサイドレール104(図1(b)参照)に固定する際に用いる帯状の部材である。タブ130a〜130dには、車両102への締結用のボルトを通すボルト孔が設けられている。一連のタブ130a〜130dは、上縁132(エアバッグ100の上縁全体のうちフロントチャンバ124以外の上縁)に沿って、略同じ高さに設けられている。
フロントチャンバ124の上縁134には追加タブ136が設けられている。追加タブ136は、上縁134をフロントピラー106に固定する。
図3は、図1(b)のカーテンエアバッグ100を用いた車外放出防止性能評価試験を例示する図である。図3(a)は、図1(b)の部分拡大図である。図3(b)は、図3(a)のA−A断面に対応している。図3(a)に例示する記号A1は、FMVSS(米国連邦自動車安全基準)に基づく車外放出防止性能評価試験においてインパクタ160(図3(b)参照)の衝突目標として定められる打点である。A1打点は、前部座席空間の側方のサイドウィンドウ114の車両前側下部に設定される。
図3(b)に例示するインパクタ160は、乗員を模擬した試験装置である。FMVSSに基づく側面衝突試験時では、インパクタ160がサイドウィンドウ114の内面に触れている状態におけるインパクタ160の最も車外表面に接している垂直面を基準として、そこからのインパクタ160の車外方向への移動量を測定する。
図3(a)に例示する直線L1は、A1打点と、フロントピラー106の最もA1打点に近い点P1とを通過する直線である。追加タブ136は、車内側から見て直線L1と重なる位置に固定点(ボルト孔137)が位置するよう設計されている。A1打点にインパクタ160が衝突すると、A1打点から各タブにかけて放射状に複数のテンションラインが形成される。図3(a)の場合、A1打点と追加タブ136とを結ぶ直線L1上にもテンションラインが形成される。追加タブ136はA1打点に直近のタブであり、複数のテンションラインのなかでも直線L1上に形成されるテンションラインは張力が最も高くなる。これは、追加タブ136がフロントチャンバ124にかかる荷重の吸収に最も貢献することを意味している。すなわち、追加タブ136を設けることによって、フロントチャンバ124にかかる荷重の効率よい吸収が可能となる。したがって、図3(b)のインパクタ160が衝突した際のフロントチャンバ124の車外側への移動量が抑えられる。これは、実際の衝突発生時において乗員の車外側への移動量が減少することを意味している。
図4および図5は、図3のように車両室内の側面部上方にカーテンエアバッグを収納する前に当該カーテンエアバッグを巻回する過程を例示する図である。なお、本実施形態では、エアバッグ100は巻回して車両102に収納しているが、エアバッグ100は折り畳んで収納することも可能である。
図4(a)は、車両取付前の未膨張のエアバッグ100を例示している。図4(a)に例示するように、追加タブ136は、車両取付後の膨張展開時(図3(a)参照)にA1打点の直近に位置し得るよう、フロントピラー106の形状に合わせた位置であって、一連のタブ130a〜130dよりも低い位置に設けられている。より具体的に述べると、追加タブ136は、エアバッグ100の車両搭載状態での上下方向における一連のタブ130a〜130dの高さh1に対して低い位置に設けられている。しかし、図4(a)の状態で下方から巻回していくと、追加タブ136はこの位置では巻回に巻き込まれてしまう。そこで、エアバッグ100は、スリット140を利用して、追加タブ136を移動させて巻回することが可能となっている。
スリット140は、フロントチャンバ124とメインチャンバ122との間に、エアバッグ100の下縁142から上方に向かって、ガス流入口126の手前まで設けられている。図4(b)に例示するように、エアバッグ100を巻回する際、まずスリット140を車両前方向(図中左方向)に開く。これにより、フロントチャンバ124をガス流入口126付近(図4(a)参照)を中心に回転するように上方へ移動させる。フロントチャンバ124の移動は、追加タブ136が一連のタブ130a〜130dと同じ高さh1に位置するまで行う。そして、ガス流入口126付近に折り目を形成する。
なお、図4(b)では、フロントチャンバ124側が手前になるように折り目を形成しているが、折り目は図4(c)のようにメインチャンバ122側が手前になるように形成してもよい。
図5(a)は、図4(b)の状態から続く巻回過程を例示している。図5(a)に例示するように、エアバッグ100は下縁142側(図4(b)参照)から上方に向かって巻回する。その際、上記説明したように追加タブ136は一連のタブ130a〜130dと同じ高さとなっているため、追加タブ136を巻回に巻き込むおそれはなく、巻回作業は容易に行うことができる。
図5(b)に例示するように、巻回後は各タブの側方でテープ144を利用して巻回を留める。そして、図1(b)に例示するように、エアバッグ100の車両前方側をフロントピラー106に合わせて曲げ、各タブを利用して車両102に取り付ける。その際、タブ130a付近にはスリット140が位置するため、この部分は曲げやすくなっている。この部分で曲げてフロントピラー106に沿わせることで、追加タブ136を乗員の接触箇所に最も近い位置、すなわち図3(a)の直線L1上の位置で車両に固定することが可能となる。これにより、フロントチャンバ124に乗員が接触した際、追加タブ136はフロントチャンバ124に生じる荷重を効率よく吸収可能となる。
以上説明したように、エアバッグ100は、追加タブ136によって車外放出防止性能が向上し、またスリット140を設けたことによって追加タブ136を巻き込むことなく容易に巻回または折り畳み可能となっている。
なお、フロントチャンバ124付近の車外放出防止性能をより向上させるために、さらなる第2の追加タブを設けてもよい。例えば、図3(a)のA1打点の鉛直上方に第2の追加タブを設けることで、フロントチャンバ124にかかる荷重をさらに効率よく吸収可能となる。
また、上記では本発明の技術的思想をフロントチャンバ124に利用した例を説明した。しかしこれは一例であり、本発明の技術的思想は車両前後方向の後端のリアチャンバに利用することも可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、上記実施形態においては本発明にかかるカーテンエアバッグを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
本発明は、車両の側面衝突時やロールオーバ(横転)時に、乗員保護を目的として車両室内の側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグに利用することができる。
A1 …打点、L1 …直線、P1 …点、h1 …高さ、100 …エアバッグ、102 …車両、104 …ルーフサイドレール、106 …フロントピラー、108 …センタピラー、110 …リアピラー、112 …インフレータ、114 …サイドウィンドウ、116 …前部座席、120 …膨張領域、122 …メインチャンバ、124 …フロントチャンバ、126 …ガス流入口、130a〜130d …タブ、132、134 …上縁、136 …追加タブ、137 …ボルト孔、140 …スリット、144 …テープ、160 …インパクタ

Claims (2)

  1. 車両室内の側面部上方に収納されて該側面部に沿って膨張展開するカーテンエアバッグであって、
    ガスが流入して膨張する膨張領域の車両前後方向の端部に区画されるディレーチャンバと、
    前記ディレーチャンバと該ディレーチャンバに隣接する膨張領域との間の上側に設けられ、該ディレーチャンバのガスの単位時間当たりの受給量を制限して該ディレーチャンバの圧力がロールオーバ時に最も高まるよう膨張を制御するガス流入口と、
    前記ディレーチャンバ以外の膨張領域の上縁に沿って略同じ高さに設けられる一連のタブと、
    前記ディレーチャンバの上縁において前記一連のタブよりも低い位置に設けられる追加タブと、
    前記ディレーチャンバと該ディレーチャンバに隣接する膨張領域との間に当該カーテンエアバッグの下縁から上方に向かって前記ガス流入口の手前まで設けられるスリットと、
    を備え、
    当該カーテンエアバッグは、前記スリットを車両前後方向に開いて前記ディレーチャンバを移動させることで前記ガス流入口付近に折り目を形成し、前記追加タブが前記一連のタブと略同じ高さまで移動した状態で下縁側から上方に向かって巻回または折り畳まれて収納されることを特徴とするカーテンエアバッグ。
  2. 前記追加タブは、車外放出防止性能評価試験において乗員を模擬したインパクタが衝突する打点のうち、車両前後方向の端の打点と前記車両のピラーとを最短距離で結ぶ直線上に設けられることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ。
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