JP5600425B2 - インクジェット記録用水分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与するために、着色剤として顔料を用いるインクが広く用いられている。
特許文献2には、分散安定性等の改善を目的として、色材及び樹脂を含有する溶媒を水性媒体中で乳化した後、溶媒を除去して、色材及び樹脂を含有する着色微粒子水分散体の製造方法において、溶媒除去前の乳化時の温度を30℃以下とする着色微粒子水分散体の製造方法が開示されている。
特許文献3には、泡立ちの抑制を目的として、カーボンブラック、分散剤、中和剤、有機溶媒及び水を含有する分散体を、該分散体の沸点未満の温度に加熱した後、その温度が該分散体の沸点となるまで減圧して有機溶媒を蒸発除去する水系カーボンブラック分散体の製造方法が開示されている。
しかし、水系顔料インクを用いると、ワイピング操作の際に、顔料粒子中の粗大粒子が撥水膜を傷つけたり、顔料分散剤が撥水膜に付着する等のために、インクの残留が改善されない等の問題があった。また、ノズル孔周辺に付着したインクが乾燥すると再分散することが困難になり、乾燥後に粗大粒子が発生したり、しばらく放置されたプリンターからインクが吐出できないという問題があった。
本発明は、粗大粒子が少なく、撥液性、再分散性、初期吐出性に優れるインクジェット記録用水分散体の製造方法、及びその方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記工程(1)〜(3)を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程(1):炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の有機溶媒(A)、顔料、水不溶性アニオン性ポリマー、中和剤、及び水を含有する混合物(但し、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない)を分散処理して分散体(I)を得る工程
工程(2):分散体(I)に炭素数2〜6のポリオール(B)を添加して、分散体(II)を得る工程
工程(3):分散体(II)から有機溶媒(A)を除去して、インクジェット記録用水分散体を得る工程
〔2〕上記〔1〕の製造方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
工程(1):炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の有機溶媒(A)、顔料、水不溶性アニオン性ポリマー、中和剤、及び水を含有する混合物(但し、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない)を分散処理して分散体(I)を得る工程
工程(2):分散体(I)に炭素数2〜6のポリオール(B)を添加して、分散体(II)を得る工程
工程(3):分散体(II)から有機溶媒(A)を除去して、インクジェット記録用水分散体を得る工程
まず、極性を有し、水不溶性アニオン性ポリマーを溶解する有機溶媒(A)の存在下で顔料を分散することで、顔料表面にアニオン性ポリマーを十分に付着させることができるため、粗大粒子のない分散体を得ることができると考えられる。更に、ポリマーの溶解性が低いポリオール(B)の存在下で有機溶媒(A)を除去することで、顔料表面のアニオン性ポリマーを強固に付着することができ、アニオン性ポリマーの親水性部分が選択的に粒子表面に配向しやすくなり、撥液性、再分散性、初期吐出性にも優れるものと考えられる。また、工程(1)〜(3)によって、結果的に顔料に付着していないポリマーが低減され、疎水性である顔料表面の露出も低減されるため、撥水膜への付着や乾燥による凝集を防ぐことができ、撥液性、再分散性、初期吐出性が向上すると考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、各工程について説明する。
本発明に用いられる顔料としては、特に制限はなく、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
顔料を水分散体に使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、水分散体中で安定な微粒子にすることが好ましい。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に顔料を含有させることが好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水分散体においては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
色相は特に限定されず、赤色、黄色、青色、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。また、キナクリドン固溶体顔料等の固溶体顔料を用いることができる。
キナクリドン固溶体顔料は、β型、γ型等の無置換キナクリドンと、2,9−ジクロルキナクリドン、3,10−ジクロルキナクリドン、4,11−ジクロルキナクリドン等のジクロロキナクリドンからなる。キナクリドン固溶体顔料としては、無置換キナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19)と2,9−ジクロルキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202)との組合せからなる固溶体顔料が好ましい。
親水性官能基の量は特に限定されないが、自己分散型顔料1g当たり100〜3,000μmolが好ましく、親水性官能基がカルボキシ基の場合は、自己分散型顔料1g当たり200〜700μmolが好ましい。
自己分散型顔料の市販品としては、CAB−O−JET 200、同300、同352K、同250C、同260M、同270Y、同450C、同465M、同470Y、同480V(キャボット社製)やBONJET CW−1、同CW−2(オリヱント化学工業株式会社製)、Aqua−Black 162(東海カーボン株式会社製)等が挙げられる。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明に用いられる水不溶性アニオン性ポリマーは、顔料を水系媒体中に分散させ、分散を安定に維持するために用いられる。
ここで、「アニオン性」とは、未中和の物質を、純水に分散又は溶解させた場合、pHが7未満となること、又は物質が純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が負となることをいう。
本発明に用いられるアニオン性ポリマーは、水分散体及びその水分散体を含むインクの分散安定化の観点から、水不溶性ポリマーである。ここで、水不溶性ポリマーとは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
用いることのできるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、水分散体の保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
(a)アニオン性モノマーは、アニオン性ポリマー粒子を水分散体中で安定に分散させ、カチオン性ポリマーとのイオン的相互作用を促進するために、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)疎水性モノマーは、水分散体の分散安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(c)マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、アニオン性ポリマー粒子のインク中での保存安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(c)マクロマーの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロマーとしては、アニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
モノマー混合物には、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていることが好ましい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでもポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、アニオン性ポリマー粒子を水分散体中で安定に分散させ、アニオン性ポリマー粒子とカチオン性ポリマーとのイオン的相互作用を促進する観点から、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは4〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。
(b)成分の含有量は、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜80重量%である。
(c)成分の含有量は、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性の観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、アニオン性ポリマー粒子の水分散体中での分散安定性、及び水分散体及びその水分散体を含むインクの印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
前記アニオン性ポリマーは、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、後述する有機溶媒(A)に挙げられる炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の化合物が好ましく、なかでも炭素数4〜8のケトンが好ましく、その中でもメチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましく、重合連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノールが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、アニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万がより好ましく、2万〜20万が更に好ましい。なお、アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、実施例記載の方法により測定される。
本発明に用いられる中和剤は、アニオン性ポリマーの(a)アニオン性モノマー由来のアニオン性基を中和するために用いられる。中和剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン等の塩基が挙げられる。
中和剤の量は、分散安定性の観点から、アニオン性ポリマーのアニオン性基の中和度で、10〜300%であることが好ましく、20〜200%がより好ましく、30〜150%が更に好ましい。
アニオン性ポリマーを架橋させる場合は、架橋前のポリマーのアニオン性基の中和度は、分散安定性と架橋を行う場合には架橋効率の観点から、10〜90%であることが好ましく、20〜80%がより好ましく、30〜70%が更に好ましい。
ここで中和度は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[アニオン性ポリマーの酸価(KOHmg/g)×アニオン性ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
酸価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。又は、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
本発明に用いられる有機溶媒(A)は、炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の化合物である。これらの化合物は、水不溶性アニオン性ポリマーを溶解しやすく、極性を有することから顔料への濡れ性にも優れるため、分散に適しており、本発明の効果を発揮させるものと考えられる。
炭素数4〜8のケトンとしては、水不溶性アニオン性ポリマーの溶解性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等の炭素数4〜6のケトンが好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましい。
炭素数4〜8のアルコールとしては、イソブタノール、n−ブタノール等が挙げられる。
炭素数4〜8のエーテルとしては、ジブチルエーテル等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。
炭素数4〜8のエステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
これらの有機溶媒(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられるポリオール(B)は、炭素数2〜6のポリオールである。これらの化合物は、有機溶媒(A)を除去する際に、水不溶性アニオン性ポリマーの溶解性を低下させ、顔料へ強固に付着させることにより、本発明の効果を発揮させるものと考えられる。
炭素数2〜6のポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールの他、多価アルコール等が挙げられる。
これらの中では、トリオールが好ましく、中でも、グリセリンが好ましい。
本発明のインクジェット記録用水分散体の製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有する。
工程(1):炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の有機溶媒(A)、顔料、水不溶性アニオン性ポリマー、中和剤、及び水を含有する混合物(但し、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない)を分散処理して分散体(I)を得る工程
工程(2):分散体(I)に炭素数2〜6のポリオール(B)を添加して、分散体(II)を得る工程
工程(3):分散体(II)から有機溶媒(A)を除去して、インクジェット記録用水分散体を得る工程
工程(1)は、炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の有機溶媒(A)、顔料、水不溶性アニオン性ポリマー、中和剤、及び水を含有する混合物(但し、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない)を分散処理して分散体(I)を得る工程である。
工程(1)の分散処理は、水不溶性アニオン性ポリマーを有機溶媒(A)のみからなる有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び中和剤、必要に応じて界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。アニオン性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、中和剤、水、顔料の順に加えることが好ましい。
本工程において、有機溶媒としては、1種の有機溶媒(A)又は2種以上の有機溶媒(A)の混合物のみからなり、前記混合物は実質的に、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない。前記混合物が有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含む場合は、本発明の効果に影響を与えない程度の微量に限られる。有機溶媒(A)は水不溶性アニオン性ポリマーの良溶媒であり、ポリマーを良く溶解するが、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含むとポリマーの溶解性が低下し、顔料表面へのポリマーの付着が阻害されたり、次の工程で貧溶媒であるポリオール(B)を添加しても、ポリマーを顔料表面に強固に付着させることができなくなると考えられる。
前記混合物中、顔料は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、アニオン性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
前記アニオン性ポリマーの量に対する顔料の量の重量比〔顔料/アニオン性ポリマー〕は、分散安定性の観点から、50/50〜90/10が好ましく、70/30〜85/15がより好ましい。
工程(1)における混合物中の、水に対する有機溶媒(A)の重量比〔有機溶媒(A)/水〕は、顔料の分散性、粗大粒子の低減、撥液性、再分散性及び初期吐出性の観点から、1/10〜4/10が好ましく、1/10〜3/10がより好ましく、1.5/10〜2.5/10が好ましい。
中和剤は、最終的に得られる水分散体(I)のpHが7〜11であるように、用いることが好ましい。
工程(1)の分散における温度は、0〜50℃が好ましく、0〜35℃がより好ましく、分散時間は1〜30時間が好ましく、2〜25時間がより好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、なかでも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料粒子を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
工程(2)は、工程(1)で得られた分散体(I)に炭素数2〜6のポリオール(B)を添加して、分散体(II)を得る工程である。
工程(2)においては、ポリオール(B)に更にアセトンを添加することが好ましい。
アセトンは水不溶性アニオン性ポリマーを溶解しにくく、沸点が低いため、アセトンを添加することにより、ポリオール(B)の効果を更に高めながらも、有機溶媒(A)を除去する際の効率も向上させることができると考えられる。このため、ポリオール(B)に加えて、更にアセトンを添加することにより、本発明の効果を更に向上させることができると考えられる。
工程(3)は、工程(2)で得られた分散体(II)から有機溶媒(A)を除去して、インクジェット記録用水分散体を得る工程である。
工程(3)においては、以下の工程(3−1)〜(3−3)を有することが好ましい。
工程(3−1):工程(3)において、有機溶媒(A)を除去する前に、分散体(II)を、温度0〜30℃、圧力5kPa以下の条件下で10〜100分間保持する工程
工程(3−2):分散体(II)の温度を25〜35℃に維持して、有機溶媒(A)の80〜99重量%を除去する工程
工程(3−3):その後、該温度を40〜90℃に維持して有機溶媒(A)の残部を除去する工程
該温度としては、5〜28℃が好ましく、10〜26℃がより好ましい。
該圧力としては、1〜4kPaが好ましく、2〜3kPaがより好ましい。
該保持時間としては、30〜70分間が好ましい。
以上の観点から、工程(3−1)における好適条件としては、温度0〜30℃、圧力5kPa以下で、10〜100分間保持することが好ましく、温度5〜28℃、圧力1〜4kPaで、30〜70分間保持することがより好ましく、温度10〜26℃、圧力2〜3kPaで、30〜70分間保持することが更に好ましい。
該分散体の接する気体部分の圧力を0〜5kPaに維持することによって、凹凸を有する顔料表面の気体を除去することができ、ポリマーの顔料への吸着を促進し、本発明の効果を向上させることができるものと考えられる。特に、大気圧に戻す操作と本前工程の圧力に維持する操作を複数回に分けて行うことが好ましい。
該温度としては、25〜32℃が好ましく、25〜31℃がより好ましい。
有機溶媒(A)の除去量としては、85〜98重量%が好ましい。
工程(3−3)は、工程(3−2)に続いて、分散体の温度を40〜90℃に維持して有機溶媒(A)の残部を除去する工程である。
該温度としては、40〜70℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。
有機溶媒(A)の除去量としては、有機溶媒(A)の分散体(II)に含まれる量の99〜100重量%が好ましく、99.5〜100重量%がより好ましく、実質的に全て除去することが更に好ましい。
得られた顔料粒子を含む水分散体中に有機溶媒は実質的に含まないことが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよく、水不溶性アニオン性ポリマーの架橋工程を後続の工程で行う場合は、必要により架橋後に残存した有機溶媒を再除去すればよい。
ここで、「回分式蒸発装置」とは、温水やスチーム等の熱媒体を通水又は通気することができるジャケット部や伝熱ヒーター等の加熱部等が槽の外壁面に配設され、又は、温水やスチーム等の熱媒体を通水又は通気させることができるコイルが槽内部に配設され、加熱によって溶媒を蒸発除去することができる蒸発装置をいう。
「撹拌槽回分式蒸発装置」とは、回分式蒸発装置に撹拌装置が配設され、槽内を撹拌しながら溶媒を蒸発除去することができる蒸発装置をいう。
「撹拌槽薄膜式蒸発装置」とは、撹拌槽回分式蒸発装置において、加熱内壁面を利用して溶液等の薄膜を形成させ、その薄膜面より溶媒を蒸発除去することができる蒸発装置をいう。この撹拌槽薄膜式蒸発装置の具体例としては、例えば、関西化学機械製作株式会社製、商品名:ウォールウェッター等を挙げることができる。
本発明においては、顔料粒子を含有する分散液、特に顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体に架橋剤を添加して、該アニオン性ポリマーを架橋処理することによって、顔料を含有するアニオン性架橋ポリマー粒子を含む水分散体とすることができる。アニオン性ポリマーの架橋処理は、前記工程(3)の有機溶媒(A)を除去する前又は後に行ってもよい。ポリマーを架橋処理することによって、水分散体の保存安定性を向上させることができる。
ここで、架橋剤としては、アニオン性ポリマーのアニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2〜6有する化合物がより好ましい。
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
架橋剤の使用量は、水分散体及びインクの保存安定性の観点から、〔架橋剤/アニオン性ポリマー〕の重量比で0.3/100〜50/100が好ましく、1/100〜40/100がより好ましく、5/100〜25/100が更に好ましい。
また、架橋剤の使用量は、該アニオン性ポリマー1g当たりのアニオン性基量換算で、該ポリマーのアニオン性基0.1〜20mmolと反応する量であることが好ましく、0.5〜15mmolと反応する量であることがより好ましく、1〜10mmolと反応する量であることが更に好ましい。
架橋処理して得られた架橋ポリマーは、架橋ポリマー1g当たり、塩基で中和されたアニオン性基を0.5mmol以上含有することが好ましい。
架橋ポリマーの架橋率は、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜70モル%、更に好ましくは30〜60モル%である。架橋率は、使用した架橋剤の反応性基のモル数を、ポリマーが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数で除したものである。
本発明により得られた水分散体には、乾燥防止のために、保湿剤、有機溶媒を添加することができ、また、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加して、そのまま水系インクとして用いることもできる。
本発明の水分散体中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の製造方法で得られる水分散体に含まれる顔料の水分散体中での含有量は、印字濃度を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、更に好ましくは4〜15重量%、特に好ましくは4〜10重量である。
水の含有量は、好ましくは20〜90重量%,より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水分散体の好ましい表面張力(20℃)は、30〜70mN/m、より好ましくは35〜65mN/mである。
本発明の水分散体の20重量%(固形分)の粘度(20℃)は、好ましくは1〜12mPa・s、より好ましくは1〜9mPa・s、より好ましくは2〜6mPa・s、更に好ましくは2〜5mPa・sである。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、本発明の製造方法で得られた水分散体を含有するものであるが、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
本発明の水系インク中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の水系インクに含まれる顔料の含有量は、水系インクの印字濃度を高める観点から、水系インク中で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%、更に好ましくは5〜12重量である。
水の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、23〜50mN/m、より好ましくは23〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mである。
本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出信頼性を維持するために、好ましくは2〜20mPa・sであり、より好ましくは2.5〜16mPa・s、更に好ましくは2.5〜12mPa・sである。
本発明の水系インクを適用するインクジェットの方式は制限されないが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターに特に好適である。
なお、ポリマーの重量平均分子量の測定、及び分散体の吸光度とガスクロマトグラフィーの測定は、以下の方法により行った。また、実施例及び比較例で得られた水系インクについて、以下の方法により粗大粒子、撥液性、再分散性、初期吐出性を評価した。
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)吸光度の測定
測定する液体1gを採取し、水9999gを添加し、均一になるまで撹拌して希釈液を得た。次いで得られた希釈液を日立株式会社製、分光光度計:U−3010を用いて吸光度測定を行った。
(3)ガスクロマトグラフィーの測定
溶媒除去工程(工程(3))の分散体をサンプリングし、Agilent Technologies社製のガスクロマトグラフィー装置「Agilent 6890」を用いて、検出器:FID、カラム:HP−FFAP(Crosslinked FFAP)(長さ30m、内径0.53mm、膜厚1μm、キャリアガス:ヘリウム+空気、昇温条件:初期40℃、3min保持、10℃/minで昇温、最高温度240℃で10min保持、注入量:1μL、希釈溶媒:水(サンプルを10重量倍希釈)の測定条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、溶媒の残留量を算出した。なお、予め各溶媒単独の検量線を作成して定量した。
実施例及び比較例で得られた水系インクに純水を加え、固形分濃度を0.25重量%に希釈した後、シリンジに5mL採取し、アキュサイザー780APSシステム(インターナショナルビジネス株式会社製)に注入して粗大粒子数を測定した。
下記計算式により、粒径1マイクロメートル以上20マイクロメートル未満の粒子体積(m3)の和を求めた。粒子体積の値が小さいほど粗大粒子が少なく、良好である。
計算式は、粒子体積=得られた粒子数×Dilution Factor値×4×3.14×粒子半径×粒子半径×粒子半径/3である。ここでDilution Factor値とは、アキュサイザー780APSシステム付属のソフトウェアによって、測定部に接続したコンピュータの画面にDilution Factorとして表示される値である。
インクジェットヘッド(型番:KJ4B、京セラ株式会社製)からノズル表面の撥水プレートを採取した。この撥水プレートを1cm×1cmに切り取り、撥水膜面を純水で十分洗浄した。得られた撥水プレート小片を50mLのスクリュー管に入れ、水系インクを5g添加し、撥水膜面がインクに浸るようにした。この状態でスクリュー管を密封し、60℃で4日間保存した。
次いで、該スクリュー管を20℃の水浴につけ、1時間放置した後、撥水プレート小片を取り出し、撥水膜面が地上面に対して垂直になるように維持した。インクから取り出した瞬間から、インクがはじけて撥水プレート小片の撥水膜面側のうち90%以上が剥き出しになるまでの時間を撥液時間(秒)とした。撥液時間の値が小さい方が撥液性が良好である。
50mLのスクリュー管に、水系インクを0.2g入れ、蓋をせずに40℃、30kPaで8時間放置した。放置後、放置前の水系インクと同一のインクを0.2g追加滴下し、分散した。滴下と放置を5回繰り返し、インク乾燥物を得た。得られたインク乾燥物に対し、固形分濃度が0.25重量%になるように純水を添加し、分散して希釈液を得た。該希釈液をシリンジに5mL採取し、アキュサイザー780APSシステムに注入して粒子数を測定した。粒径1μm以上20μm未満の粒子体積の和を求め、前記(4)の計算式により粒子体積を算出した。粒子体積の値が小さいほど再分散後の粗大粒子が少なく、再分散性は良好である。
(7)初期吐出性の評価
吐出観察装置Dot−View(株式会社トライテック製)に水系インクを充填し、初発測定モードにおいて、連続吐出を5秒間行った後、インク吐出を停止し、60秒間後に再吐出させた際の最初の吐出速度(m/s)を測定した。吐出速度が大きいほど、初期吐出性が良好である。
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
一方、滴下ロート1中に、表1の「滴下モノマー溶液1」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、滴下モノマー溶液1を得た。
また、滴下ロート2中に、表1の「滴下モノマー溶液2」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、滴下モノマー溶液2を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら75℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を75℃で2時間攪拌した。次いで前記の重合開始剤(V−65)3部をメチルエチルケトン135部に溶解した重合開始剤溶液を調製し、該混合溶液に加え、75℃で1時間攪拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成を更に2回行った。次いで反応容器内の反応溶液を85℃に2時間維持し、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧して溶媒を除去し、ポリマーを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は160000であった。なお、表1中の数値は、有効分の重量部を示す。
(1)工程(1)〔顔料分散体1の製造〕
製造例1で得られたポリマー2000部を、メチルエチルケトン(MEK)〔有機溶媒(A)〕3385部に溶かし、ポリマーのMEK溶液を得た。ディスパーに該ポリマーのMEK溶液を投入し、1400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水16574部、5N水酸化ナトリウム水溶液364部、及び25%アンモニア水溶液61.6部を添加し、0℃の水浴で冷却しながら、2000rpmで15分間撹拌した。次いでカーボンブラック モナーク880(キャボット社製)3000部を加え、8000rpmで90分間撹拌した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)を用いて150MPaの圧力で20パス分散処理し、顔料分散体1を得た。固形分濃度は19.6%であった。
前記工程(1)で得られた顔料分散体1 8000部に、アセトン627部、グリセリン940部、及びイオン交換水21792部を加え、攪拌槽薄膜式蒸発装置〔関西化学機械製作株式会社製、商品名:ウォールウェッター(45L容器)〕に投入して撹拌し、顔料分散体2を得た。
前記攪拌槽薄膜式蒸発装置に顔料分散体2を入れたままにしておき、顔料分散体2の温度を25℃に調整し、減圧操作を行って圧力を3kPaとした。10分間200rpmで撹拌し、10分間撹拌をしない操作を3回繰り返し、60分間前記条件に保持した(工程(3−1))。
次に、圧力を6kPaとし、顔料分散体2の温度を30℃に調整し、4時間100rpmで撹拌を行った。留出物の重量を測定し、ガスクロマトグラフィーで組成を測定したところ、MEK〔有機溶媒(A)〕の94.5%が、顔料分散体から除去されていた(工程(3−2))。
次に、圧力を6kPaとし、顔料分散体2の温度を42℃に調整し、8時間100rpmで撹拌を行い、固形分25%の顔料水分散体3を得た。留出物の重量を測定し、ガスクロマトグラフィーで組成を測定したところ、MEK〔有機溶媒(A)〕の99.9%が、顔料分散体から除去されていた(工程(3−3))。
前記(3)で得られた顔料水分散体3 1000部に対し、エポキシ架橋剤(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、商品名:デナコールEX321L、エポキシ当量129、ナガセケムテックス株式会社製)を9.9部、イオン交換水を150部添加し、90℃で2時間撹拌した。25℃に冷却後、孔径3μmのフィルターでろ過し、顔料水分散体4を得た。該顔料水分散体4の固形分濃度は22.3%、架橋率は50モル%であった。
前記(4)で得られた顔料水分散体4 54.06部に対し、グリセリン22部、トリメチロールプロパン4部、2−ピロリドン3部、2−{2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ}エタノール(和光純薬工業株式会社製)1.5部、サーフィノール104PG50(日信化学工業株式会社製)0.2部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(シグマアルドリッチ製)0.05部、ベンゾトリアゾール0.01部、プロキセルBDN(アーチケミカルズジャパン株式会社製)0.06部、及びイオン交換水15.12部を添加、混合し、得られた混合液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インク1を得た。評価結果を表2に示す。
実施例1の工程(2)において、アセトンの替わりにイオン交換水を用いた以外は実施例1と同様にして、水系インク2を得た。評価結果を表2に示す。
実施例3
実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わなかった以外は実施例1と同様にして、水系インク3を得た。評価結果を表2に示す。
実施例4
実施例1の工程(2)において、アセトンの替わりにイオン交換水を用い、実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わなかった以外は実施例1と同様にして、水系インク4を得た。評価結果を表2に示す。
実施例1の工程(2)において、グリセリン及びアセトンの替わりにイオン交換水を用い、実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わなかった以外は実施例1と同様にして、水系インク5を得た。評価結果を表2に示す。
比較例2
実施例1の工程(2)において、グリセリン及びアセトンの替わりにイオン交換水を用い、実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わず、溶媒除去工程(工程(3−3))における分散体の温度を30℃に維持して行った以外は実施例1と同様にして、水系インク6を得た。評価結果を表2に示す。
比較例3
実施例1の工程(2)において、グリセリン及びアセトンの替わりにイオン交換水を用い、実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わず、溶媒除去工程(工程(3−2)及び工程(3−3))における分散体の温度を45℃に維持して行った以外は実施例1と同様にして、水系インク7を得た。評価結果を表2に示す。
比較例4
実施例1の工程(1)において、メチルエチルケトン(MEK)〔有機溶媒(A)〕3385部に替えて、メチルエチルケトン(MEK)〔有機溶媒(A)〕3385部とイソプロピルアルコール(IPA)1354部の混合溶媒を用い、実施例1の工程(2)において、アセトンの替わりにイオン交換水を用い、実施例1の工程(3)において、溶媒除去前工程(工程(3−1))を行わなかった以外は実施例1と同様にして、水系インク8を得た。評価結果を表2に示す。
Claims (6)
- 下記工程(1)〜(3)を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程(1):炭素数4〜8の、ケトン、アルコール、エーテル及びエステルから選ばれる1種以上の有機溶媒(A)、顔料、水不溶性アニオン性ポリマー、中和剤、及び水を含有する混合物(但し、有機溶媒(A)以外の有機溶媒を含まない)を分散処理して分散体(I)を得る工程
工程(2):分散体(I)に炭素数2〜6のポリオール(B)を添加して、分散体(II)を得る工程
工程(3):分散体(II)の温度を25〜35℃に維持して、有機溶媒(A)の80〜99重量%を除去した後、該温度を40〜90℃に維持して有機溶媒(A)の残部を除去して、インクジェット記録用水分散体を得る工程 - 工程(1)における混合物中の、水に対する有機溶媒(A)の重量比〔有機溶媒(A)/水〕が1/10〜4/10である、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 工程(3)において、有機溶媒(A)を除去する前に、分散体(II)を、温度0〜30℃、圧力5kPa以下の条件下で10〜100分間保持する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 工程(3)において、有機溶媒の除去量が、有機溶媒(A)の分散体(II)に含まれる量の99〜100重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 工程(2)において、ポリオール(B)に加えて、更にアセトンを添加する、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
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