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JP5694880B2 - インクジェット記録材料の製造方法 - Google Patents

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JP5694880B2 JP2011178095A JP2011178095A JP5694880B2 JP 5694880 B2 JP5694880 B2 JP 5694880B2 JP 2011178095 A JP2011178095 A JP 2011178095A JP 2011178095 A JP2011178095 A JP 2011178095A JP 5694880 B2 JP5694880 B2 JP 5694880B2
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Description

本発明は、インクジェット記録材料の製造方法に関し、更には耐水性に優れ、製造時のひび割れが起こりにくいインクジェット記録材料の製造方法に関する。
インクジェット記録方式は、インクの小滴をノズルより噴霧し、記録用媒体の表面に定着させて、文字、画像等の記録を行う方法で、カラー印刷が容易、ランニングコストが安い、印刷時の騒音が少ない等多くの利点から、家庭又はオフィス等のプリンターに広く用いられている。さらに最近では、デジタルカメラの普及も相まって、銀塩写真に代わる記録用方式として定着しつつあるほか、CD/DVD/BD等の光ディスクの表面に直接印刷する等、インクジェット記録材料も目的に応じて様々な材料が選ばれ、求められる品質もより高度でかつ多様なものになってきている。
インクジェット記録材料の構成としては、紙、プラスチックシート又はプラスチックディスク等の支持体上にインク受容層を設けている。インク受容層はシリカ、アルミナ等の多孔性無機材料が親水性樹脂バインダーで結着されており、多孔性無機材料がインクを速やかに吸収し、にじみを抑え、真円状の適正なドットを形成することによって、精細な画像を表現できる。ここでバインダー樹脂に求められる性能としては、(1)インクに対する親和性が高いこと、(2)無機微粒子に対するバインダー力が高いこと等が求められ、かかるバインダー樹脂として、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系樹脂等が広く使用されている。
近年、インクジェット記録方式は高い表現力、すなわち画像の高精細化と、印刷速度の向上が求められている。かかる画像の高精細化を達成するため、記録材料の単位面積当たりのインクの吐出量を増やすという方法が取られており、記録材料は従来よりも多量のインクを吸収する能力が必要になってきている。そのためインク受容層は空隙率を高くする必要があり、バインダー樹脂量の低減の方向で開発が進められている。
一方、印刷速度向上という課題に関して、高速で印刷すると、プリンター搬送中の記録材料表面への物理的な負荷が大きくなるとともに、上述のように多量のインクを吸収することによって、湿潤状態で大きな負荷がかかることになる。すなわちバインダー樹脂には、上述の(1)及び(2)以外に、(3)少量の添加でより高いバインダー力を発揮し、塗布液の乾燥中にインク受容層表面のひび割れ等が起こらないこと、(4)無機微粒子の空隙率を確保するため、塗布液の段階で多孔性微粒子に浸透しにくい高粘度の水溶液であること、(5)湿潤時にも高い表面強度を得ることのできる耐水性の高いものであること等の性能が更に求められるようになっている。
かかるインクジェット記録材料のインク受容層のバインダーとして、特許文献1には、重合度4000以上のPVAを用いる技術が開示されている。このような重合度の高いPVAはバインダー強度が高く、水溶液粘度も高いため、少ないバインダー量でも乾燥時のひび割れが起こりにくく、微粒子の空隙性も確保できる。
しかしながら、前記PVAは、湿潤時の表面強度が不足するとともに、バインダー力、水溶液粘度についても十分ではなかった。更に、このような重合度の高いPVAは生産効率が極めて悪いという問題がある。工業的に生産されているPVAの重合度の上限は約4500であり、それ以上の高重合度のPVAは、特殊な設備を用いる方法、又は生産性を犠牲にした(低収率な)方法で生産する必要があり、コストが極めて高く、工業的に不利であるという問題がある。
一方、PVAとホウ素化合物を用いる技術が開示されている(例えば特許文献2、特許文献3)。これは、架橋剤としてホウ酸及び/又はホウ砂を用いることによりPVA水溶液の粘度を高くし、バインダー樹脂が多孔性無機微粒子に浸透することを抑えることで、無機微粒子の空隙率を確保し、少ない使用量でバインダー力の向上、湿潤時の表面強度向上にも寄与しているものと考えられる。
しかしながら、最近、ホウ酸等のホウ素化合物は生殖毒性が指摘され、欧州化学物質規制(REACH)の高懸念物質の候補として挙げられる等、その毒性及び環境への悪影響のために使用が難しくなってきており、PVA/ホウ素化合物に代わる架橋システムを有するPVA系樹脂バインダーが求められている。
これらの課題に対して、本発明者らは、ジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステル共重合体の鹸化物とヒドラジン系化合物を用いたインクジェット記録材料(特許文献4)を提案していた。また、特許文献5では、アセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂と多価ヒドラジド化合物を含有するインクジェット記録用媒体が提案されている。
これらケト基を有するPVA系樹脂にヒドラジン系化合物等の架橋剤を反応せしめて得られるバインダーは耐水性に優れ、湿潤時の表面強度が高いインクジェット記録材料が得られるものの、水溶液粘度が低いため、多孔性無機微粒子に浸透し、多量のインクが吸収されにくく、画像の精細性が十分でなく、改善が望まれていた。さらに、バインダー樹脂自体も微粒子の空隙に浸透するため微粒子間を結着するバインダーとしての量が少なく、乾燥時のひび割れ等が生じるという問題を完全に解決できていなかった。
さらに、このような変性PVA系樹脂と架橋剤をバインダーとして用いる際の問題点として、変性PVAと架橋剤は水溶液中でも架橋反応が進むため、両者を混合した水溶液は経時的に粘度が高くなり、特にアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂と多価ヒドラジド化合物の系では、両者の反応速度が高いため、インク受容層の塗布液を塗工している途中でゲル化してしまうというポットライフの問題があった。
一方、ジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステル共重合体のケン化物とヒドラジン系化合物の系でも同様の問題はあるが、本発明者らが提案したジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA、水溶性ヒドラジン化合物に水溶性有機アミン又はアンモニアを共存させる方法(特許文献6)を利用することによってポットライフの問題は解決することができる。特許文献6の[0022]段落に記載されるように、この方法はジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAとヒドラジン化合物との急速な反応を抑制するため、あらかじめジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAの水溶液に水溶性有機アミン又はアンモニアを共存させた後に水溶性ヒドラジン化合物を添加し、作業可能な時間を長くするというものである。
しかしながら、この方法で得られるジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステル共重合体のケン化物、ヒドラジン系化合物及び水溶性有機アミン又はアンモニアの混合水溶液に多孔性無機微粒子を混合すると、前記混合水溶液の粘度が低いため、バインダー樹脂及び架橋剤が微粒子の空隙に浸透するため、微粒子間を決着するバインダー量が少なくなるとともに、インク吸収性が低下するという問題があった。
これらの問題を解決する方法として、本発明者らは酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合し、一定時間経過させ、混合水溶液が所望の粘度に達した時点で有機アミン等の水溶性の塩基性化合物を添加し、次いで多孔性無機微粒子を混合したインク受容層塗布液を支持体に塗布するインクジェット記録材料の製造方法を提案した(特願2010−261801)。
この方法によると、バインダー樹脂、架橋剤が微粒子の空隙への浸透を抑えることができ、乾燥工程においてインク受容層表面にひび割れが起こらないため生産性が高く、得られたインクジェット記録材料はインク吸収性、強度及び耐水性が高いという効果があるものの、水溶性の塩基性化合物を添加することにより、インク受容層塗布液のpHが高くなり、製造する際に作業者の健康への影響が懸念されるとともに、高いpHになることにより、インク受容層塗布液に添加されるバインダー、架橋剤以外の薬剤に悪影響を与えたり、印刷時のインクの発色性に悪影響を与える場合があり、インク受容層塗布液のpHに影響を与えない方法で、前記課題を解決する方法が望まれている。
特開平7−117334号公報 特開平11−20306号公報 特開平11−192777号公報 特開平11−348417号公報 特開2001−213045号公報 特開平10−87936号公報
本発明の目的は、印刷速度が速い場合にも精細な画像を表現することができるインクジェット記録材料を安定的に製造できる方法を提供することである。より具体的には、少量の添加でも高いバインダー力を示し、かつ耐水性の高いPVA系樹脂組成物をバインダーとして用い、多孔性無機微粒子と混合する時点でバインダー水溶液の粘度が高く、かつ有機アミン等の塩基性化合物を使用しなくても、塗布液の粘度変化が少ないインクジェット記録材料の製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、支持体上に、多孔性無機微粒子、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料の製造方法において、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合し、少なくとも30分以上経過させた後に揮発性ケトン化合物を添加して得られる混合水溶液と多孔性無機微粒子を混合したインク受容層塗布液を支持体に塗布することによって、前記した課題を一挙に解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合する工程、前記混合後少なくとも30分以上経過させた後に揮発性ケトン化合物を添加して混合液を得る工程、及び、得られた混合液に多孔性無機微粒子を混合したインク受容層塗布液を支持体に塗布する工程を有し、前記支持体上の形成されたインク受容層が、多孔性無機微粒子、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤を含有することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
[2]支持体上に、多孔性無機微粒子、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料の製造方法において、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合する工程、得られた混合液が増粘した後に、該混合液に揮発性ケトン化合物を添加・混合し、次いで、多孔性無機微粒子を添加・混合してインク受容層塗布液を調製する工程を有し、架橋剤を混合した直後の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤からなる混合液の粘度(A)に対する、揮発性ケトン化合物を混合した直後の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物、架橋剤及び揮発性ケトン化合物からなる混合液の粘度(B)の比[(B)/(A)]が、1.3〜10.0であることを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
[3]前記架橋剤が、ヒドラジノ基、ヒドラジド基及びセミカルバジド基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する化合物であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のインクジェット記録材料の製造方法。
[4]前記の揮発性ケトン化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソプロピルケトンからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
[5]揮発性ケトン化合物の添加量が、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物100重量部に対して、1重量部以上100重量部以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
[6]前記の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物のJIS K−6726(1994)の方法で測定される4重量%水溶液粘度が、10〜100mPa・sであることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
本発明のインクジェット記録材料の製造方法では、有機アミン等の水溶性の塩基性化合物を添加せずにインク受容層を作製する際の塗布液が優れた粘度安定性を有し、乾燥工程においてインク受容層表面にひび割れが起こらないため生産性が高く、工業的に有利である。また、本発明の製造方法で製造されたインクジェット記録材料は、インク吸収性、強度及び耐水性に優れているため、高速で印刷した場合でも精細な画像を表示することが可能である。さらに、本発明の製造方法では、ホウ素化合物を使用していないため、生殖毒性等が問題にならず、塩基性化合物の使用量を減らす或いは無くすことにより、製造作業者の健康への影響の懸念もなく、安全性が高い。さらに、本発明の製造方法によって得られたインクジェット記録材料では、塩基性化合物の使用量を減らす或いは無くすことにより、印刷時のインクの発色性に与える悪影響は極めて少ない。
下記合成例1の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物(DAVES)8重量%、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.4重量%及びアセトン0.8重量%の混合液の20℃における粘度の経時的な測定結果を示す図である。
以下、本発明のインクジェット記録材料の製造方法を詳細に説明する。
本発明で使用される酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物(以下、DAVESと略記する。)は、酢酸ビニルとジアセトンアクリルアミドとを共重合し、得られる共重合体を鹸化する等の公知の方法によって製造することができる。
前記酢酸ビニルとジアセトンアクリルアミドとの共重合方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができ、中でもメタノールを溶剤とする溶液重合が工業的に好ましい。
酢酸ビニルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得られる重合体の鹸化方法は、従来公知のアルカリケン化及び酸ケン化を適用することができ、中でも重合体のメタノール溶液又はメタノールと水、酢酸メチル、ベンゼン等の混合溶液に水酸化アルカリを添加して加アルコール分解する方法が工業的に好ましい。
上記のDAVESは、本発明の効果を阻害しない範囲で、酢酸ビニル又はジアセトンアクリルアミドと共重合可能な、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン等のオレフィン類、ビニレンカーボネート類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類或いはその塩、或いはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸或いはその塩、アルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、酢酸イソプロペニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及び1,4−ジアセトキシ−2−ブテン等から選ばれる1種以上とともに共重合したものであっても良い。この他、得られたDAVESを本発明の効果を阻害しない範囲で、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、アセトアセチル化、カチオン化等の反応によって後変性したものでも良い。
上記のDAVES中のジアセトンアクリルアミド単位の含有量は、特に制限はないが、0.5〜15モル%の範囲が好ましく、1〜10モル%の範囲がより好ましい。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量が少ない場合には、耐水性又は耐湿性が低下するおそれがあり、ジアセトンアクリルアミドが多い場合には、水への溶解性が低下するため、水性塗布液を作製できないという問題がある。
上記のDAVESの鹸化度は特に制限されないが、JIS K−6726(1994)の方法で測定される鹸化度が80モル%以上のものが好ましく、85モル%以上がさらに好ましい。
また、上記のDAVESの重合度については特に制限されないが、工業的生産性を高める点から、4500以下が好ましく、DAVESの粘度については、JIS K−6726(1994)の方法(回転粘度計法)で測定される4重量%水溶液粘度が10〜100mPa・sであることが好ましく、20〜80mPa・sがより好ましい。
本発明に使用される架橋剤としては、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、DAVESのケトン基と反応性を有する官能基である、下記式(1)
−NH−NH (1)
で示されるヒドラジノ基、下記式(2)
−CO−NH−NH (2)
で示されるヒドラジド基、及び下記式(3)
−NH−CO−NH−NH (3)
で示されるセミカルバジド基からなる群から選ばれる一種以上の官能基を2個以上有する化合物等が好適に挙げられる。
架橋剤の具体例としては、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ブタントリカルボヒドラジド、1,2,3−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、N−アミノポリアクリルアミド等の多官能ヒドラジン及び多官能ヒドラジド化合物、並びにN,N′−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、ビュレットリートリ等のセミカルバジド化合物が例示されるほか、これらの化合物にアセトン、メチルエチルケトン等の低沸点ケトン類を反応させた多官能ヒドラジン誘導体、多官能ヒドラジド誘導体及び多官能セミカルバジド誘導体等も含まれる。
上記の架橋剤の添加量は、特に限定されないが、DAVES100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、2〜15重量部がより好ましく、3〜10重量部がさらに好ましい。架橋剤の添加量が少ないと、耐水性及び耐湿性が低くなるだけでなく、DAVES及び架橋剤を含む混合水溶液と多孔性無機微粒子を混合する際の粘度が低くなり、微粒子の空隙を確保できない。また、架橋剤の添加量が多すぎると、塗布液を一定の粘度に保つことが難しくなり生産性が低下し、反応に寄与しない架橋剤が溶出するため、耐水性が低下するおそれがある。
本発明のDAVESに架橋剤を添加する方法としては、通常はあらかじめ作製したDAVESの水溶液に架橋剤の水溶液を添加する。DAVES水溶液の調製方法としては、あらかじめDAVES樹脂を室温の水に分散し、撹拌しながら80℃以上に昇温し、完全に溶解した後冷却する従来公知のPVA系樹脂の溶解方法で調製することができる。一方、架橋剤はDAVESの水溶液に固体で添加してもかまわないが、より均一に反応させるため、あらかじめ架橋剤の水溶液を作製し、該水溶液をDAVES水溶液に添加する方法が好ましい。
本発明で使用する揮発性ケトン化合物について説明する。前記のDAVESと架橋剤の混合水溶液では、溶液中でDAVESと架橋剤の反応が進行し、溶液の粘度が経時的に上昇する。この点を考慮して、本発明では、DAVESと架橋剤の混合後に添加する多孔性無機微粒子と該混合水溶液とを混合する過程及び基材上に塗工する過程での粘度上昇及び塗布液のゲル化を防ぐために、揮発性ケトン化合物を添加する。架橋剤は、DAVES中のケトン基、揮発性ケトン化合物中のケトン基と反応性を有するが、立体障害が少なく、運動性の大きい揮発性ケトン化合物との反応性の方が高いと考えられる。従って、DAVES及び揮発性ケトン化合物の両者が共存する場合、優先的に揮発性ケトン化合物と反応し、架橋剤中のヒドラジノ基、ヒドラジド基又はセミカルバジド基がブロックされ、DAVESとの架橋反応が抑制され、揮発性ケトン化合物が存在するとインク受容層塗布液の粘度が安定すると考えられる。架橋剤と反応した揮発性ケトン化合物は、その後の反応工程で脱離し、揮発するため、最終的にはDAVESと架橋剤が反応し、インクジェット記録材料の物性及び耐水性に悪影響を及ぼさない。
本発明で使用する揮発性ケトン化合物とは、沸点が150℃以下であり、分子内に少なくとも1個のケトン基を有する化合物であり、例えば、アセトン(2−プロパノン)、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソプロピルケトン(3−メチル−2−ブタノン)、メチルビニルケトン(3−ブテン−2−オン)、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチル−n−プロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(2−メチル−4−ペンタノン)、メチル−n−ブチルケトン(2−ヘキサノン)、ジ−n−プロピルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチル−2−ヒドロキシプロピルケトン等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、揮発ケトン化合物の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンは沸点が低く、水との混和性が良好であることから、本発明に使用するのに好適である。本発明では、揮発性ケトン化合物を1種又は2種以上を組み合せて使用することができる。
本発明で使用する揮発性ケトン化合物の使用量は、DAVES100重量部に対して、1〜100重量部であり、好ましくは2〜70重量部、より好ましくは3〜50重量部である。揮発性ケトン化合物の使用量がDAVES100重量部に対して、1重量部未満ではDAVESと架橋剤との架橋反応が十分に抑制されず、インク受容層塗布液の調製中、保管中或いは塗工中に増粘し、塗工できない恐れがある。また、DAVES100重量部に対して、100重量部を超える場合、DAVESがケトン化合物に溶解しないため、DAVES及び架橋剤を含んだ混合水溶液に揮発性ケトン化合物を添加した際、DAVESが析出し、塗工に問題が生じる恐れがある。
本発明で使用される多孔性無機微粒子としては、特に限定されず、例えば、湿式合成シリカ、コロイダルシリカ、気相法シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化スズゾル、酸化セリウムゾル、酸化ランタンゾル、酸化チタンゾル、酸化ネオジミュームゾル、酸化イットリウムゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイトアルミナ、気相法アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトボン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料又は無機ゾル等を用いることができ、目的に応じて、これらを単独又は2種類以上を組み合せて用いることができる。
本発明で使用される多孔性無機微粒子の粒子径については、本発明の効果を妨げない限り特に制限はなく、使用する無機微粒子の種類に応じて選択される。例えば、湿式合成シリカの場合、平均粒子径が1〜12μmのものが好ましく、コロイダルシリカの場合、平均粒子径は5〜100nmのものが好ましく、気相法アルミナ及び擬ベーマイトアルミナの場合、平均粒子径はそれぞれ30nm以下のものが好ましい。前記平均粒子径は、電子顕微鏡で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り例えば5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し、平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52,1991年参照)。
多孔性無機微粒子とDAVESの使用割合については、多孔性無機微粒子の種類、目的に応じて設定されるが、DAVES/多孔性無機微粒子の重量比が1/100〜100/100が好ましく、3/100〜50/100がより好ましい。
本発明では、DAVES、架橋剤、揮発性ケトン化合物、多孔性無機微粒子及び水を含有するインク受容層塗布液を作製する際、各成分を混合する順序及びタイミングが重要である。本発明者らは、DAVESと架橋剤の混合水溶液、及び異なるタイミングで揮発性ケトン化合物を添加した場合の混合水溶液の粘度の経時変化を調べた。図1に、DAVES8重量%、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.4重量%、アセトン0.8重量%の混合液の20℃での粘度を経時的に測定した結果を示す。
図1中の[1]は、DAVESとADHの混合水溶液に揮発性ケトン化合物を添加しない場合の粘度の経時変化を示したものであるが、図からわかるようにADHを添加した直後から架橋反応がおこり、混合水溶液の粘度は急激に上昇する。また、図1中の[2]はDAVESとアセトンの混合水溶液にADHを添加した場合の粘度の経時変化であり、アセトンが一時的にADHと反応することにより、DAVESとADHとの架橋反応が抑制され、混合水溶液の粘度が低いレベルで安定している。それに対して、図1中の[3]は、DAVESにADHを添加してから5時間後にアセトンを添加した場合の粘度の経時変化であるが、アセトンを添加するまでは図1中の[1]と同様の粘度変化を示すが、アセトンを添加した後は、アセトン添加時点の粘度で安定する。
インクジェット受容層の塗布液を作製する際、図1中の[1]のように、揮発性ケトン化合物を添加しないと、粘度が短時間で上昇するため、適正な粘度で多孔性無機微粒子とバインダー水溶液を混合することが難しく、混合中又は塗布液の塗工中に粘度が大きく変化し、最悪の場合、途中で塗工不能になってしまうことがある。また、図1中の[2]のように、DAVESと揮発性ケトン化合物の混合水溶液を作った後に架橋剤を添加する場合は、バインダー水溶液の粘度が低いため、多孔性無機微粒子と混合すると、バインダー樹脂及び架橋剤が微粒子の空隙に浸透するため、微粒子間を決着するバインダー量が少なくなるとともに、インク吸収性が低下する。
そこで、図1中の[3]のようにDAVES水溶液に架橋剤を添加して、一定時間放置し、混合水溶液が所望の粘度になった時点で揮発性ケトン化合物を添加すると、その粘度が長時間維持され、その後多孔性無機微粒子と混合しても、バインダー樹脂及び架橋剤の微粒子の空隙への浸透を抑えることができ、混合中又は塗工中に増粘するという作業における問題もなくなるというのが、本発明の趣旨である。
すなわち、本発明のインク受容層塗布液に使用する各成分を混合する順序としては、DAVES水溶液と架橋剤、続いて揮発性ケトン化合物、最後に多孔性無機微粒子という順でなければならず、この順序が損なわれると本発明の効果を発揮しない。
また、本発明のインク受容層塗布液を作製する場合、DAVES水溶液を作製してから架橋剤を添加するまでに時間については特に制限はないが、架橋剤を添加した後、揮発性ケトン化合物を添加するタイミングは重要である。すなわちDAVESと架橋剤の混合水溶液の粘度が上昇し、所望の粘度になった時点で揮発性ケトン化合物を添加しなければならない。DAVESと架橋剤の混合水溶液の増粘速度は、水溶液の濃度、架橋剤量、温度等によって変化するため、あらかじめ測定した粘度の経時変化の結果から、所望の粘度になるまでの時間を割り出すか、DAVESと架橋剤の混合水溶液を撹拌する際の撹拌機のトルク及び電流値から所望の粘度になった時点で揮発性ケトン化合物を添加することが望ましい。
DAVES水溶液と架橋剤を混合してから揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間については、前述のように水溶液濃度、架橋剤量、温度等の条件によって異なるが、少なくとも30分以上とする必要がある。この時間が30分未満では、混合水溶液が所望の粘度に達していないか、又は30分未満で所望の粘度に達する場合は、揮発性ケトン化合物を添加しても増粘速度が十分に小さくならず、その後の混合及び塗工工程で問題になるおそれがある。一方、DAVES水溶液と架橋剤を混合してから揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間を長くすることについては、混合水溶液が所望の粘度以上にならないように留意さえすれば良いが、あまり長すぎる場合は生産性が低下するため、通常は48時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内になるよう水溶液濃度、架橋剤量、温度等の条件を設定する方が良い。
本発明の方法は、DAVESの水溶液と架橋剤を混合し、その混合水溶液が増粘した後に、揮発性ケトン化合物及び多孔性無機微粒子を添加・混合してインク受容層塗布液の調製を行うものであるが、架橋剤を混合した直後(揮発性ケトン化合物添加前)のDAVES及び架橋剤からなる混合水溶液の粘度(A)に対する、揮発性ケトン化合物を添加・混合した直後(多孔性無機微粒子添加前)のDAVES、架橋剤及び揮発性ケトン化合物からなる混合水溶液の粘度(B)の比[(B)/(A)]が、1.3〜10.0であることが好ましく、1.5〜8.0であることがより好ましい。前記の粘度比[(B)/(A)]が1.3未満の場合は、多孔性無機微粒子を混合する際のバインダー水溶液の粘度が低いため、インク受容層のインク吸収性が低くなるという点で不利である。前記の粘度比[(B)/(A)]が10.0を超える場合は、バインダー水溶液の粘度が高くなりすぎ、多孔性無機微粒子との混合及び支持体への塗工が難しくなるという点で不利である。
DAVES水溶液と架橋剤を混合してから揮発性ケトン化合物を添加するまでの間、DAVESと架橋剤の混合水溶液は静置していても、撹拌していてもかまわない。また、その時の温度にも特に制限はないが、通常は10℃〜80℃であり、15℃〜60℃が好ましい。
DAVES、架橋剤の混合水溶液に揮発性ケトン化合物を添加、混合してから多孔性無機微粒子を添加するまでの時間には特に制限はない。また、DAVES、架橋剤及び揮発性ケトン化合物を含有する混合水溶液と多孔性無機微粒子との混合方法についても制限はないが、混合水溶液中で多孔性無機微粒子をできる限り均一に分散させるため、高速ホモジナイザー等の公知の混合装置及び方法を使用することによって、インク受容層塗布液を作製することができる。得られたインク受容層塗布液の最適なpHについては、インク受容層塗布液に添加される他の薬剤及びインクジェットプリンターのインクの種類によって異なるが、一般的に5.0〜9.0が好ましく、5.5〜8.5がさらに好ましい。
かかる塗布液には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂、或いは無機充填剤、可塑剤、インク定着剤、界面活性剤等を併用して用いることもできる。併用できる他の水溶性樹脂又は水分散性樹脂としては、例えば、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビアゴム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、PVA、ビニルピロリドン変性PVA、N−置換或いは非置換(メタ)アクリルアミド変性PVA、シラノール変性PVA、スルホン酸変性PVA、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル等のアニオン性水溶性樹脂、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体或いはこれらのアンモニウム塩、カチオン化でんぷん、カチオン化ポリ(メタ)アクリルアミド、カチオン変性PVA、カチオン化ポリアミド樹脂等のカチオン性水溶性樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系樹脂エマルジョン、塩化ビニル系樹脂エマルジョン等の水分散性樹脂が挙げられる。
また、かかる塗布液において、水溶性の塩基性化合物の作業者の健康への影響が小さい場合、又は、バインダー樹脂及び架橋剤以外の添加剤や印刷時のインクの発色性への悪影響が小さい場合、水溶性の塩基性化合物と揮発性ケトン化合物を併用して、かかる塗布液の安定化を図ってもよい。水溶性の塩基性化合物による架橋反応の抑制機構と揮発性ケトン化合物による架橋反応の抑制機構は異なるため、両者を併用することによりDAVESと架橋剤が共存する混合水溶液の安定化効果は高くなり、逆に言えば、揮発性ケトン化合物を反応抑制剤として使用することにより、水溶性の塩基性化合物の添加量を減らすことができる。
本発明で使用される水溶性の塩基性化合物としては、例えば、水溶性有機アミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられ、水溶性有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシエチル)−アミノメタン等の第一級アルカノールアミン;ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ブチルメタノールアミン、N−アセチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の第二級アルカノールアミン;トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アルカノールアミン;メチルアミン、エチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の第一級アルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の第二級アルキルアミン;トリメチルアミン等の第三級アルキルアミン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のインクジェット記録材料の製造方法では、前記の方法によって得られたDAVES、架橋剤、揮発性ケトン化合物、多孔性無機微粒子及び水からなるインク受容層塗布液を支持体上に塗工し、インク受容層を形成するものである。
かかる支持体としては、特に制限されないが、例えば、紙(マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷紙、上級紙・中級紙・下級紙、新聞用紙、剥離紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、グラシン紙等)、樹脂コート紙、合成紙、不織布、布、金属箔、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、エチレン−プロピレン共重合体等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート及び成型物が使用される。
支持体上にインク受容層を設けるための塗布液の塗工方法としては、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スライドリップコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター及びサイズプレス等の装置を用いた公知の方法が用いられる。
かかる塗布液中の固形分量は、特に制限されないが、塗布液全体の5〜60重量%が好ましく、より好ましくは8〜50重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。塗布液中の固形分量が少ない場合は、乾燥負荷が大きくなるだけでなく、塗工層の厚みの均一性が低下する場合があり、逆に固形分量が多い場合には、塗布液が高粘度となり、高速での塗工が困難になる等、作業性が低下することがある。
かかる塗布液を支持体に塗工した後の乾燥方法についても特に制限されないが、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法等加熱乾燥を用いることが生産性の観点から好ましい。その場合の乾燥条件についても特に制限されず、通常90〜120℃で1〜30分程度乾燥すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、実施例中、特にことわりのない限り「%」及び「部」は重量基準を示す。
下記の方法によりDAVESを合成した。鹸化度、4%水溶液粘度はJIS K−6726(1994)に準じて測定を行った。また、ジアセトンアクリルアミド含有量(変性度)については、DAVESをメタノールで十分洗浄したサンプルの窒素分析の結果から求めた。
DAVESの合成例を以下に示す。
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けたフラスコ中に、酢酸ビニル680部、ジアセトンアクリルアミド5部、及びメタノール172部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、内温を60℃まで昇温した。この系に2,2−アゾビスイソブチリロニトリル1部をメタノール50部に溶解した溶液を添加し、重合を開始した。重合開始後、5時間かけて、ジアセトンアクリルアミド50部をメタノール43部に溶解した溶液を一定速度で滴下し、6時間後に重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを添加し、重合を停止した。重合収率は78%であった。得られた反応混合物にメタノール蒸気を加えながら残存する酢酸ビニルを留出し、ジアセトンアクリルアミド共重合成分を含有する酢酸ビニル系重合体の50%メタノール溶液を得た。この混合物500重量部にメタノール50重量部と水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液10重量部とを加えてよく混合し、40℃で鹸化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノールでよく洗浄した後に乾燥して、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物を得た。この樹脂中のジアセトンアクリルアミド単位の含有率は5.0モル%であった。この樹脂の20℃における4%水溶液粘度は26.8mPa・s、鹸化度は98.4モル%であった。
[合成例2〜3]
表1に示すように仕込み組成を変え、鹸化反応の水酸化ナトリウム量を変えた以外は、合成例1と同様にして表1に示すDAVES2〜3を得た。
[実施例1]
合成例1で得られたDAVES1 8部に純水92部を加え、撹拌しながら昇温し、90℃で2時間溶解を行った後、20℃まで冷却し8%水溶液を得た。この水溶液100部に、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液4部を添加し、すばやく混合した後、20℃でゆっくりと撹拌しながら4時間経過後に、揮発性ケトン化合物としてアセトン0.8部を添加・混合した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は288mPa・sであったが、4時間経過後に揮発性ケトンを添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は620mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。
上記の混合水溶液50部に、非晶質シリカ[(株)トクヤマ製、商品名:ファインシールX−45、平均粒子径4.5μm]35部を分散させながら徐々に加え、インク定着剤としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド[日東紡(株)製、商品名:PAS−H−5L,28%水溶液]5部及び純水160部を加え、ホモジナイザーを用いて5000rpmで10分間撹拌し、固形分15%のインク受容層塗布液を作製した。かかる塗布液を、坪量64g/m2の上質紙にエアナイフコーターを用いて、固形分塗布量が13g/mになるように塗工し、105℃で10分間乾燥し、インクジェット記録材料を作製した。
[実施例2]
合成例1で得られたDAVES1の8%水溶液100部に、50℃に加温した後、架橋剤としてヘキサメチレンセミカルバジド[旭化成ケミカルズ(株)製 ハードナーSC]の10%水溶液4部を添加し、すばやく混合した後、50℃でゆっくりと撹拌しながら3時間経過後に、揮発性ケトン化合物としてメチルエチルケトン1.2部を添加・混合した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は212mPa・sであったが、3時間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は544mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[実施例3]
合成例2で得られたDAVES2の8%水溶液100部に、架橋剤としてN−アミノポリアクリルアミド[大塚化学(株)製 APA−L]の10%水溶液5部を添加し、すばやく混合した後、20℃でゆっくりと撹拌しながら2時間後に、揮発性ケトン化合物としてメチルイソプロピルケトン1.6部を添加・混合した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は92mPa・sであったが、2時間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は498mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[実施例4]
合成例3で得られたDAVES3の8%水溶液100部に、架橋剤としてカルボヒドラジドの10%水溶液5部を添加し、すばやく混合した後、20℃でゆっくりと撹拌しながら1時間後に、揮発性ケトン化合物としてアセトン2.4部を添加・混合した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は766mPa・sであったが、1時間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は1090mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[実施例5]
架橋剤を添加してから、揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間を4時間から6時間に換えた以外は実施例1と同様にして混合水溶液を作製した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は284mPa・sであったが、6時間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は1660mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[実施例6]
架橋剤を添加してから、揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間を3時間から40分間に換えた以外は実施例2と同様にして混合水溶液を作製した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は212mPa・sであったが、40分間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は285mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[実施例7]
揮発性ケトン化合物としてアセトンの添加量を0.8部から0.24部に変更した以外は実施例1と同様にして混合水溶液を作製した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は288mPa・sであったが、4時間経過後に揮発性ケトンを添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は635mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[比較例1]
架橋剤を添加してから、揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間を4時間から15分間に換えた以外は実施例1と同様にして混合水溶液を作製した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は285mPa・sであったが、15分間経過後に水溶性の塩基性化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は302mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[比較例2]
合成例1で得られたDAVESに換えた未変性PVA[日本酢ビ・ポバール(株)製 JP−18,鹸化度88.0モル%、4%水溶液粘度24.1mPa・s]を使用した以外は実施例1と同様にして混合水溶液を作製した。架橋剤を添加・混合した直後の水溶液の粘度(A)は272mPa・sであったが、4時間経過後に揮発性ケトン化合物を添加・混合した後の水溶液の粘度(B)は270mPa・sであった。混合液の作製条件を表2に示す。上記の混合水溶液を用い、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
[比較例3]
架橋剤を添加しない以外は実施例1と同様にして混合水溶液を作製し、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。混合液の作製条件を表2に示す。
[比較例4]
合成例1で得られたDAVESの8%水溶液100部に、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液4部を添加し、すばやく混合した後、20℃でゆっくりと撹拌しながら4時間経過後に、揮発性ケトン化合物を添加していない混合水溶液に対して、実施例1と同様にして、インク受容層塗布液を作製し、上質紙に塗工しようとしたが、途中で塗布液がゲル化し、塗工を継続することができず、インクジェット記録材料が得られなかった。混合液の作製条件を表2に示す。
(表中、各略称は、以下の意味を有する。
ADH:アジピン酸ジヒドラジド、SC:ヘキサメチレンセミカルバジド(ハードナーSC)、APA:N-アミノポリアクリルアミド(APA-L)、CDH:カルボヒドラジド、ATN:アセトン、MEK:メチルエチルケトン、MIPK:メチルイソプロピルケトン
また、実施例1〜7及び比較例1〜4のインク受容層塗布液のpHは、いずれも6.0〜6.5であった。)
以上のようにして作製した実施例及び比較例のインクジェット記録材料について、下記の試験を行った。その結果を表3に示す。
<亀裂観察>
作製したインクジェット記録材料のインク受容層表面を倍率100倍の顕微鏡で観察し、インク受容層表面のひび割れの程度を以下の基準で評価した。
○ : 表面亀裂が観察されず問題なし
△ : 表面の亀裂が複数観察され、実用が困難なレベル
× : 非常に多数の亀裂が観察され、実用が不可能なレベル
<表面強度>
作製したインクジェット記録材料のインク受容層表面に、住友スリーエム(株)製のメンディングテープ(幅18mm)を貼り付け、剥離した際のメンディングテープに転写された塗工層の状態を目視観察し、以下の基準によって表面強度の評価とした。
○ : ほとんど塗工層が転写せず、実用上問題のないレベル
△ : 塗工層の一部が転写され、若干、問題のあるレベル
× : 塗工層のかなりの部分が転写され、実用上問題のあるレベル
<インク吸収性>
作製したインクジェット記録材料を、セイコーエプソン(株)製プリンター「PX−V630」にセットし、黒インクでベタ印刷を行い、印刷後一定時間ごとに記録シート上の印字部分を指でこすり、印字部分が変化しなくなるまでの時間を測定した。時間が短いほどインク吸収速度が大である。
<耐水性>
インクジェット記録材料の印字部分に水をつけ、指でこすった時、印字部が溶解したり、にじんだりするかどうかを以下の基準で判定した。
○ : にじみがなく、原形をとどめている。
× : にじみが大きく、原形をとどめていない。
表3から明らかなように、本発明の製造方法によって作製された実施例1〜7のインクジェット記録材料は、インク受容層表面の亀裂もなく、高い表面強度を示していることが確認された。また、本発明のインクジェット記録材料では、インク吸収性も高く、耐水性も高いことから、高速で印刷される際にも精細な画像を表示することか可能になる。このように、本発明の製造方法によって作製されたインクジェット記録材料は、インク吸収性を高めるためインク受容層の空隙率が高く、バインダー樹脂量が少ない場合であっても、高いバインダー力を有し、インク受容層表面にひび割れも起こらないという優れた効果を有する。
比較例1は、本発明の製造方法において、架橋剤を添加してから揮発性ケトン化合物を添加するまでの時間が短く、架橋反応が十分に進んでいない状態で使用しているため、バインダー樹脂が多孔性無機微粒子の空隙に浸透することによって、バインダー量が少なくなってしまったため、強度が低下し、インク吸収性も低下したものと考えられる。
比較例2、3は、それぞれ酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物、架橋剤を使用していないため、架橋反応が起こらずに表面強度、インク吸収性及び耐水性の全ての評価項目で問題が見られたと考えられる。
比較例4は、本発明の構成要素の中の揮発性ケトン化合物を使用していないため、インク受容層塗布液を調製する過程及びそれを塗工する過程で、架橋反応が進みすぎ、インクジェット記録材料の製造ができなくなったと考えられる。
本発明のインクジェット記録材料の製造方法によると、有害性があり、他の添加薬剤に悪影響を与える可能性のある水溶性の塩基性化合物を使用せず、インク受容層を作製する際の塗布液の粘度安定性に優れ、乾燥工程においてインク受容層表面にひび割れが起こらないため、生産性が高い。また、本発明の製造方法で製造されたインクジェット記録材料はインク吸収性、強度及び耐水性に優れているため、高速で印刷した場合でも精細な画像を表示することが可能である。

Claims (6)

  1. 酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合する工程、前記混合後少なくとも30分以上経過させた後に揮発性ケトン化合物を添加して混合液を得る工程、及び、得られた混合液に多孔性無機微粒子を混合したインク受容層塗布液を支持体に塗布する工程を有し、前記支持体上の形成されたインク受容層が、多孔性無機微粒子、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤を含有することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
  2. 支持体上に、多孔性無機微粒子、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤を含有するインク受容層を有するインクジェット記録材料の製造方法において、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物の水溶液と架橋剤を混合する工程、得られた混合液が増粘した後に、該混合液に揮発性ケトン化合物を添加・混合し、次いで、多孔性無機微粒子を添加・混合してインク受容層塗布液を調製する工程を有し、架橋剤を混合した直後の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物及び架橋剤からなる混合液の粘度(A)に対する、揮発性ケトンを混合した直後の酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物、架橋剤及び揮発性ケトン化合物からなる混合液の粘度(B)の比[(B)/(A)]が、1.3〜10.0であることを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
  3. 架橋剤が、ヒドラジノ基、ヒドラジド基及びセミカルバジド基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  4. 揮発性ケトン化合物が、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソプロピルケトンからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  5. 揮発性ケトン化合物の添加量が、酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物100重量部に対して、1重量部以上100重量部以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
  6. 酢酸ビニル−ジアセトンアクリルアミド共重合体の鹸化物のJIS K−6726(1994)の方法で測定される4重量%水溶液粘度が、10〜100mPa・sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録材料の製造方法。
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