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JP5690020B2 - 表面加飾用フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、しっとりとした触感を与えうる表面加飾用フィルムに関するものである。
従来から、自動車内装部品、電化製品筐体、建材などの各種樹脂成形体の表面をフィルムを用いて加飾することが行われており、種々の加飾用フィルムが知られている。しかし、それらの多くは、光沢、色彩、模様などを付与して外観(いわゆる見た目)を改良するものであり、樹脂成形体表面に所望の触感を付与することを目的とする加飾フィルムは殆ど報告されていなかった。
ところが、樹脂成形体に所望の(例えば皮革を模した)外観を付与しても、実際に触れた際に感じられる触感が外観から想像される触感(例えば皮革を模した場合では、しっとりとした触感)とかけ離れていては、消費者の本物志向に合わず、商品価値を十分に高めることはできない。そこで、近年、樹脂成形体表面の触感の改質を目指した加飾技術がいくつか提案されている。
樹脂成形体表面の触感を改質しうる加飾フィルムとして、特許文献1では、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリウレタン粒子およびウレタン(メタ)アクリレートを含む化粧料で形成されたフィルムが提案されており、これによれば、指の引っ掛かりがなく、しっとりとしたソフトタッチ感(スウェード調)を付与できるとされている。また、特許文献2では、水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)および粒子(D)を所定の割合で用いて構成される表面加飾層を基材フィルム面上に備え、該表面加飾層のコート量およびかさ密度を特定の範囲に制御した表面加飾用フィルムが提案されており、これによれば、きめ細かい白木木材の触感を付与できるとされている。
特開2012−219221号公報 特開2012−218284号公報
ところで、樹脂成形体に触感をも付与して商品価値を高める場合、樹脂成形体に求められる触感は、その外観等に応じて様々である。例えば、皮革を模した外観であれば、本物の皮革に似たしっとりした触感(本明細書では「しっとり感」と称することがある)が望まれるし、木目を模した外観であれば、本物の木材に似たさらさらとした触感が望まれる。このように様々な触感のうち、本発明者は「しっとり感」に着目し、上記各特許文献記載の技術でその実現を試みた。しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、ある程度の「しっとり感」は得られるものの、未だ十分に満足しうるだけの「しっとり感」は得られず、また上記特許文献2記載の方法で得られる触感は、さらさらとした感覚が強く「しっとり感」には程遠い感覚であった。
なお、本明細書で言う「しっとり感」とは、具体的には、べたつき感がなく、ぬめり感があり、かつザラツキ感がない(換言すれば滑らかでキメ細かい)ことにより発現される感覚である。
本発明の目的は、しっとりした触感を十分に発現させうる表面加飾用フィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、しっとりした触感を十分に発現させるには、触った時に適度な抵抗から生じるぬめり感を比較的感じさせやすいを有機系微粒子と、比較的べとつき感を感じさせ難い無機系微粒子の両方を硬化性樹脂化合物の硬化物に含有させ、かつKES表面試験機で測定される表面粗さSMDを滑らかさやキメ細かさを再現させうる所定の範囲に制御すればよいことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)基材フィルム上に表面加飾層を備えた表面加飾用フィルムであって、前記表面加飾層が、硬化性樹脂化合物の硬化物と有機系微粒子と無機系微粒子とを含有してなり、かつ前記表面加飾層は、KES表面試験機で測定される表面粗さSMDが0.10μm以上、0.40μm未満であることを特徴とするしっとり感に優れた表面加飾用フィルム。
(2)前記表面加飾層は、KES表面摩擦試験機でシリコンセンサー摩擦子を用いて測定される静摩擦指標が0.5〜3.0である前記(1)に記載の表面加飾用フィルム。
(3)前記有機系微粒子のガラス転移点(Tg)が−10℃以下である前記(1)または(2)に記載の表面加飾用フィルム。
(4)前記有機系微粒子の体積平均粒子径が1〜30μmである前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の表面加飾用フィルム。
(5)前記有機系微粒子が、前記硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して、1〜20質量部含まれている前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の表面加飾用フィルム。
(6)前記無機系微粒子の体積平均粒子径が1〜50μmである前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の表面加飾用フィルム。
(7)前記無機系微粒子が、前記硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して、1〜30質量部含まれている前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の表面加飾用フィルム。
(8)前記表面加飾層における前記硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さが、前記有機系微粒子の粒子径の80%以下である前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の表面加飾用フィルム。
本発明の表面加飾用フィルムによれば、表面加飾層に有機系微粒子と無機系微粒子の両方を含有させて表面粗さSMDを所定の範囲に制御しているので、しっとりした触感を十分に発現させることができる。
本発明の表面加飾用フィルムの表面加飾層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真((a)は100倍、(b)は1000倍)である。 本発明の表面加飾用フィルムの断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真(2000倍)である。
本発明の表面加飾用フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面上に表面加飾層を備えたものであり、しっとりした触感を十分に感じさせうる、しっとり感に優れた加飾用フィルムである。
(表面加飾層)
本発明における表面加飾層は、硬化性樹脂化合物の硬化物と有機系微粒子と無機系微粒子とを含有してなり、例えば、硬化性樹脂化合物、有機系微粒子および無機系微粒子を含有する塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥および硬化処理を施すことにより形成される。
硬化性樹脂化合物とは、外部励起エネルギーにより架橋反応および/または重合反応を経て硬化する樹脂を与える原料化合物もしくはその重合物(オリゴマーを含む)を指し、活性線(紫外線、放射線、電子線等)の照射によって硬化する電離放射線硬化型樹脂化合物と、熱により硬化する熱硬化型樹脂化合物とに大別される。表面加飾層は、薄膜状(層状)に形成された硬化性樹脂化合物に必要な外部励起エネルギーを与えて硬化させた硬化物で構成される。
電離放射線硬化型樹脂化合物としては、例えば、紫外線硬化性ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、またはこれらの原料化合物等の(メタ)アクリレート系電離放射線硬化型樹脂化合物が挙げられる。これらの中では、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂が好ましい。
前記(メタ)アクリレート系電離放射線硬化型樹脂化合物は、2官能の原料化合物もしくは該原料化合物の重合物であることが、表面加飾層のぬめり感を向上させ、ひいてはしっとり感をより高めうる点で好ましい。
2官能の原料化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が2個の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物等が挙げられる。具体的には、
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)多価イソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
熱硬化型樹脂化合物としては、例えば、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ビニルエステル樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性フェノール樹脂等が挙げられ、これらの中でも特に熱硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
前記熱硬化性ウレタン樹脂の具体例としては、例えば、ポリエステル型ポリウレタン、ポリエーテル型ポリウレタン、ポリカーボネート型ポリウレタン、ポリエーテルポリカーボネート型ポリウレタン等のほか、これらポリウレタンをその他骨格の異なるポリマーで変性(例えば、シリコーン変性、フッ素系ポリマー変性、ポリアクリレート系ポリマー変性)したもの等が挙げられる。
硬化性樹脂化合物としては、その硬化物の伸度が100%以上となるものを選択することが好ましい。これにより、しっとりした触感と発現するとともに、加飾対象に適用する際の成形性も具備させることができる。なお、硬化性樹脂化合物の硬化物の伸度は、JIS−K7113で規定されるものであり、具体的には、例えば実施例で後述する方法で測定することができる。
有機系微粒子は、主として表面加飾層にぬめり感を発現させる。有機系微粒子は、特に制限されるものではなく、例えば、架橋ウレタン微粒子、架橋アクリル微粒子、架橋スチレン微粒子、架橋ゴム系微粒子、シリコーン微粒子、ナイロン微粒子等が挙げられる。これらの中でも架橋ウレタン微粒子が好ましい。有機系微粒子は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
前記有機系微粒子のガラス転移点(Tg)は、−10℃以下であることが好ましく、より好ましくは−15℃以下、さらに好ましくは−20℃以下、特に好ましくは−30℃以下である。有機系微粒子のガラス転移点(Tg)が前記範囲であれば、しっとり感がさらに増した表面加飾用フィルムとなる。
前記有機系微粒子の粒子径は、体積平均粒子径で1μm以上、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上、20μm以下、さらに好ましくは5μm以上、10μm以下である。有機系微粒子の粒子径が前記範囲であれば、しっとり感がさらに増した表面加飾用フィルムとなる。なお前記範囲の粒子径を有する有機系微粒子が存在する限りしっとり感の向上効果は得られるので、有機系微粒子全体の15質量%以下程度の少量であれば、前記範囲の粒子径を有する有機系微粒子とともに、体積平均粒子径が1μm未満の有機系超微粒子が含まれていてもよい。有機系微粒子の粒子径は実施例で後述する方法で測定することができる。
有機系微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球形、平板、棒状、不定形、アスペクト比の異なるもの等、あらゆる形状のものを採用することができるが、しっとり感を発現させる上では球形が好ましい。
前記有機系微粒子は、硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下含まれていることが好ましく、より好ましくは3質量部以上、15質量部以下である。有機系微粒子の含有量が少なすぎると、有機系微粒子が奏する作用効果が不十分となる結果、しっとり感が低くなることがあり、多すぎても、やはりしっとり感が低くなることがある。
無機系微粒子は、主として表面加飾層にさらさらとした触感を与え、べとつき難さを発現させる。無機系微粒子は、特に制限されるものではなく、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化珪素(シリカ、コロイダルシリカ)、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化亜鉛、タルク、ベンゾグアナミン粒子等が挙げられる。これらの中でも二酸化珪素、タルクが好ましい。無機系微粒子は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
前記無機系微粒子の粒子径は、体積平均粒子径で1μm以上、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上、30μm以下、さらに好ましくは5μm以上、20μm以下である。無機系微粒子の粒子径が前記範囲であれば、しっとり感がさらに増した表面加飾用フィルムとなる。なお前記範囲の粒子径を有する無機系微粒子が存在する限りしっとり感の向上効果は得られるので、無機系微粒子全体の15質量%以下程度の少量であれば、前記範囲の粒子径を有する無機系微粒子とともに、体積平均粒子径が1μm未満の無機系超微粒子が含まれていてもよい。なお無機系微粒子の粒子径は実施例で後述する方法で測定することができる。
無機系微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球形、平板、棒状、不定形、アスペクト比の異なるもの等、あらゆる形状のものを採用することができるが、しっとり感を発現させる上では球形が好ましい。
前記無機系微粒子は、硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して、1質量部以上、30質量部以下含まれていることが好ましく、より好ましくは5質量部以上、20質量部以下、さらに好ましくは17質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、特に好ましくは13質量部以下である。無機系微粒子の含有量が少なすぎると、無機系微粒子が奏する作用効果が不十分となる結果、しっとり感が低くなることがあり、多すぎても、やはりしっとり感が低くなることがある。
硬化性樹脂化合物として電離放射線硬化型樹脂化合物を用いる場合、表面加飾層を形成する際の塗布液に光重合開始剤を加えることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン等の硫黄化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物;等が挙げられる。光重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の添加量は、特に制限されないが、例えば、電離放射線硬化型樹脂化合物100質量部に対し0.01質量部以上、15質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、10質量部以下である。光重合開始剤が少なすぎると、硬化に時間がかかり生産性が低下する虞があり、多すぎると、光重合開始剤により表面加飾層が黄変する虞がある。
硬化性樹脂化合物として熱硬化型樹脂化合物を用いる場合、表面加飾層を形成する際の塗布液に架橋剤を加えることが好ましい。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネート系架橋剤が好ましく挙げられ、これらの中でも、耐光性に優れる点で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。また、熱硬化型樹脂化合物が有する官能基に応じて、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤等を用いることもできる。架橋剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
架橋剤の添加量は、特に制限されないが、例えば、熱硬化型樹脂化合物100質量部に対し0.1質量部以上、30質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以上、10質量部以下である。架橋剤が少なすぎると、硬化に時間がかかり生産性が低下する虞があり、多すぎると、樹脂が剛直となるため、しっとり感が不十分となる虞がある。
表面加飾層を形成する際の塗布液には、さらに、レベリング剤として従来公知の界面活性剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。これにより、塗布液の表面張力を下げ、表面加飾層の外観、特に微小な泡によるヌケ、異物等の付着よる凹み、乾燥工程でのハジキ等を改善することができる。なお表面加飾層を形成する際の塗布液には、上述した界面活性剤以外にも公知の添加剤を適宜含有させることができる。
表面加飾層は、例えば、上述した硬化性樹脂化合物、有機系微粒子、無機系微粒子および必要に応じて含有させる各種添加剤(光重合開始剤、架橋剤、レベリング剤等)を適当な有機溶剤中に添加して塗布液を調製し、これを基材フィルム上に塗布し、乾燥および硬化処理を施すことにより形成することができる。
表面加飾層を形成する際の塗布液に用いることができる有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤;などが挙げられる。これら有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
表面加飾層を形成する際の塗布液の塗布方法としては、グラビアコート法、キスコート法、ディップ法、スプレイコート法、カーテンコート法、エアナイフコート法、ブレードコート法、リバースロールコート法、バーコート法、リップコート法などの公知の塗布方法を採用することができ、中でも、ロール・トゥ・ロール方式による塗布が可能で、均一に塗布することのできるグラビアコート法が好ましく、特にリバースグラビア法が好ましい。塗布液の塗布量は、所望する表面加飾層の膜厚等に応じて、適宜設定すればよい。
塗布液を塗布した後の乾燥温度は、特に制限されないが、例えば、40℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上、80℃以下である。乾燥温度が低すぎると、塗膜中に溶剤が残留する虞があり、高すぎると、過剰な加熱により、形成される塗膜に異常(出泡、ハジキ等)が発生し、外観不良を招く虞がある。
硬化性樹脂化合物として電離放射線硬化型樹脂化合物を使用する場合、これを硬化させるための活性線の照射量は、積算光量として、好ましくは50mJ/cm2以上、1000mJ/cm2以下、より好ましくは150mJ/cm2以上、700mJ/cm2以下である。積算光量が少なすぎると、電離放射線硬化型樹脂化合物の重合反応が促進されず、表面硬度が著しく低下する傾向があり、多すぎると、生じた熱の影響により基材フィルムが変形する場合がある。
硬化性樹脂化合物として熱硬化型樹脂化合物を使用する場合、これを硬化させるための加熱温度は、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは50℃以上100℃以下である。硬化時の加熱温度が低すぎると、熱硬化型樹脂化合物の重合反応が促進されず、表面硬度が著しく低下する傾向があり、高すぎると、基材フィルムが変形する場合がある。なお硬化時の加熱は、上述した塗布液を塗布した後の乾燥を兼ねていてもよい。
表面加飾層を形成するに際しては、有機系微粒子の粒子径よりも硬化性樹脂化合物の硬化物の層の膜厚を小さくして、粒子が硬化物の層を適度な大きさの凸状に盛り上げたような表面状態となるようにすることが好ましい。このような表面加飾層の表面状態を図1に示す。表面加飾層がこのような表面状態であると、後述する表面粗さSMDおよび静摩擦指標を制御し易くなり、しっとり感を発現させ易くなる。
有機系微粒子の粒子径よりも硬化性樹脂化合物の硬化物の層の膜厚を小さくする場合、具体的には、表面加飾層を1個の有機系微粒子の中心を含むラインで切断して観察したときに、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値が有機系微粒子の粒子径の80%以下となるようにすることが好ましい。これを表面加飾層の断面を示す図2において詳述すると、以下の通りである。すなわち、基材フィルム1の上に設けられた表面加飾層(硬化性樹脂化合物の硬化物2)の厚さは、通常、有機系微粒子3が存在する部分では厚く、有機系微粒子3が存在しない部分では薄くなっている。この有機系微粒子3が存在しない部分の中で最も小さい硬化性樹脂化合物の硬化物2の厚み(図2中、B)が、有機系微粒子3の粒子径(図2中、A)の80%以下であることが好ましいのである。より好ましくは、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の75%以下がよく、さらに好ましくは70%以下、さらに好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。なお、有機系微粒子の粒子径(図2中、A)と硬化性樹脂化合物硬化物の厚さの最小値(図2中、B)とが上述した関係になるか否かは、表面加飾用フィルムを切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより判断することができる。
表面加飾層の最小膜厚、すなわち表面加飾層を構成する硬化性樹脂化合物硬化物の厚さの最小値は、上述した有機系微粒子の粒子径との関係を満たすことが好ましく、具体的には、下限は0.6μmが好ましく、1.0μmがさらに好ましい。また、表面加飾層の最小膜厚の上限は100μmが好ましく、80μmがより好ましく、60μmがさらに好ましく、20μmが特に好ましい。表面加飾層の最小膜厚が薄すぎると、有機系微粒子、無機系微粒子の脱落を招き、使用時に触感が変わる虞があり、厚すぎると、有機系微粒子が塗膜内に埋もれてしまいやすく、表面の凹凸が小さくなり目的とする触感を得にくくなる。また硬化性樹脂化合物の硬化不良や硬化収縮によるカールを招く虞もある。
なお本発明において、表面加飾層の最小膜厚は、表面加飾用フィルムの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真をランダムに10箇所で撮影し、各写真ごとに、硬化性樹脂化合物の硬化物の厚みを最も薄い部分で計測し、10点を平均することで求めるものとする。
本発明における表面加飾層は、KES表面試験機で測定される表面粗さSMDが0.10μm以上、0.40μm未満であることが重要である。ここでKES(Kawabata Evaluation SYSTEM)とは、日本繊維機械学会内に設けられた「風合い計量と規格化研究委員会」で確立された衣服用布地の風合いの客観評価法である。表面粗さSMDは、表面風合い(ザラツキ、粗さ、凹凸感等)を示す指標であり、値が小さいほど、ザラツキが小さく、粗さ、凹凸感が無く、滑らかでキメが細かいことを意味する。よって、表面加飾層の表面粗さSMDが前記範囲内であれば、ザラツキ感をなくし、しっとりとした触感を十分に与えることができる。表面加飾層の表面粗さSMDは、好ましくは0.12μm以上、0.38μm以下であり、より好ましくは0.14μm以上、0.36μm以下である。なお、KES表面試験機としては、カトーテック株式会社製の自動化表面試験機(KES−FB4)を用いることができ、表面粗さSMDの測定は、例えば実施例で後述する方法で行うことができる。
また表面加飾層は、KES表面摩擦試験機でシリコンセンサー摩擦子を用いて測定される静摩擦指標が0.5〜3.0であることが好ましい。静摩擦指標は、抵抗感を示す指標であり、値が大きいほど抵抗感が大きくなる。そして抵抗感は、その程度が適度であると、ぬめり感を誘起し、ひいてはしっとり感を高める。よって、表面加飾層の静摩擦指標が前記範囲内であれば、ぬめり感を向上させ、より一層しっとりとした触感を与えることができる。表面加飾層の静摩擦指標は、好ましくは0.9以上、2.8以下であり、より好ましくは1.0以上、2.5以下である。なお、KES表面摩擦試験機としては、カトーテック株式会社製の摩擦感テスター(KES−SE)を用いることができ、静摩擦指標の測定は、例えば実施例で後述する方法で行うことができる。
表面加飾層が上述した範囲の表面粗さSMDおよび静摩擦指標を有するようにするには、例えば、上述した硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さ(表面加飾層の厚さ)、有機系微粒子の配合量、無機系微粒子の配合量、有機系微粒子の粒子径、無機系微粒子の粒子径、硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さと有機系微粒子の粒子径との関係、有機系微粒子の配合量、無機系微粒子の配合量等のうちの一部、特に好ましくは全部を制御すればよい。
(基材フィルム)
基材フィルムは、特に限定されるものではないが、好ましくはプラスティックフィルムがよい。基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂等が挙げられ、これらの中でも特にポリエステルが好ましい。
基材フィルムの構成樹脂として好ましく用いられるポリエステルは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造することができる。芳香族ジカルボン酸とグリコールとの重縮合には、直接反応させる方法、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後に重縮合させる方法、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる方法等、通常の手法を適宜採用すればよい。かかるポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。これらポリエステルは、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。コポリマーの場合、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位、エチレン−2,6−ナフタレート単位等のポリエステル単位が、70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、表面加飾用フィルムの機械的強度の観点からは、延伸フィルムであるのが好ましい。延伸は一軸延伸であってもよいし、二軸延伸であってもよいが、耐熱性や耐溶剤性の観点からは二軸延伸フィルムが好ましい。
基材フィルムの厚みは、特に制限されないが、好ましくは35〜350μm、より好ましくは50〜260μm、さらに好ましくは75〜200μmである。基材フィルムが厚すぎると、加飾対象に適用する際の成形性が低下する場合があり、使用用途が限定されるほか、コスト面でも不利になり、薄すぎると、得られる表面加飾用フィルムのハンドリング性が悪くなる傾向がある。
なお、後述のように表面加飾層とは反対側の基材フィルム表面に、模様や色を付与する印刷層を設ける場合には、基材フィルムは全光線透過率が80%以上であることが好ましい。基材フィルムの全光線透過率が低すぎると、表面加飾層側から見た印刷層の視認性が不十分となる虞がある。
(印刷層・粘着層等)
本発明の表面加飾用フィルムは、表面加飾層とは反対側の基材フィルム表面に、模様や色を付与する印刷層を備えていてもよい。これにより、優れたしっとり感を与えると同時に、所望の外観を加飾することができる。
印刷方法としては、特に制限はなく、感熱転写、熱転写、昇華転写、凹版印刷、孔版印刷、凸版印刷、平版印刷、磁気、静電、及びインクジェット法など各種印刷方法が適用可能である。
また本発明の表面加飾用フィルムは、表面加飾層とは反対側の基材フィルム表面に、粘着層を備えていてもよい。この場合、本発明の表面加飾用フィルムは該粘着層の粘着力によって加飾対象とする樹脂成形体に貼り付けることができる。
粘着層の形成に用いることのできる粘着剤は、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム、合成ゴム、クロロプレンゴム、NBR、ブチルゴム、ウレタンゴム、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等の溶剤型接着剤;天然ゴムラテックス、クロロプレンラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等のエマルジョン型接着剤;ポリビニルアルコール、でんぷん、ニカワ等の水溶性接着剤;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素及びメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、アスファルト、樹脂ワックス混合剤等の熱溶融型接着剤;ポリエチレン等のポリオレフィン、不飽和ポリエステル;等が挙げられる。粘着剤は1種でもよいし2種以上でもよい。
本発明の表面加飾用フィルムが前記粘着層を有する場合、該粘着層の上に離型層を設けることが好ましい。これにより、本発明の表面加飾用フィルムを加飾対象とする樹脂成形体に貼り付けるまでの間は、粘着層の粘着力を離型層で保護することができ、貼り付け時には離型層を容易に剥離できる。なお離型層は、例えば公知の離型剤を塗布するなどして形成すればよい。
本願は、2013年1月29日に出願された日本国特許出願第2013−014816号に基づく優先権の利益を主張するものである。2013年1月29日に出願された日本国特許出願第2013−014816号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお以下において、含有率および使用量を表す「%」及び「部」は、特記しない限り質量基準である。
実施例、比較例における物性値の測定方法は下記のとおりである。
(表面粗さSMD)
カトーテック(株)製の自動化表面試験機(KES−FB4)を用いて、試料表面(フィルムの表面加飾層)の上下厚み変動を測定した。測定条件は5mm幅の0.5mm径ピアノ線に0.098Nの荷重をかけ、摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/secとした。なお測定は20℃65%RH環境下で行い、5回測定の平均値を採用した。
(静摩擦指標)
カトーテック(株)製の摩擦感テスター(KES−SE)を用いて、表面摩擦係数を測定した。測定条件は、標準摩擦子のバーを使用し、摩擦子にカトーテック(株)製のシリコンセンサー(10mm×10mm×3mm)を用い、摩擦時の荷重0.245N/cm2(25gf/cm2)、測定感度H(感度20g/V)とした。摩擦距離、摩擦速度等その他の条件は装置仕様通りである(摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/sec)。そして、摩擦感テスターにデータロガー(キーエンス社製マルチ入力データ収集システム)を繋ぎ、測定時に得られる荷重の電圧値を取得し、摩擦子が動き出した時点の電圧値を静摩擦指標とした。なお測定は20℃65%RH環境下で行い、5回測定の平均値を採用した。またシリコンセンサーは、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社製「ソフトシャイン(登録商標)」:厚み125μm)を試料として静摩擦指標を測定したときに3以上の値が得られる事を予め確認してから、測定に使用した。
(粒子径)
島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−200V)を使用して水を分散媒として測定を行い、体積基準で表した粒子径分布から、体積平均粒子径を求めた。
(硬化性樹脂化合物の硬化物の伸度)
得られた表面加飾用フィルムから幅1cm、長さ15cmの短冊状試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所(株)製「AG−IS」)を用い20mm/minの引張速度で、基材フィルムであるポリエステルフィルムが破断するまで引張った。いずれの実施例においても基材フィルムが破断した時点で表面加飾層にクラックは生じておらず、且ついずれの実施例においても基材フィルムは伸度120%まで破断しなかった。このことから、各実施例で得られた表面加飾用フィルムにおける硬化性樹脂化合物の硬化物の伸度は、いずれも100%以上であると言える。
実施例、比較例において用いた有機系微粒子または無機系微粒子は下記のとおりである。
(有機系微粒子)
粒子No.1:架橋ウレタン微粒子(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T);Tg−34℃、体積平均粒子径6μm)
粒子No.2:架橋ウレタン微粒子(根上工業社製「アートパール(登録商標)C−800」;Tg−13℃、体積平均粒子径6μm)
粒子No.3:架橋ウレタン微粒子(根上工業社製「アートパール(登録商標)AK−200TR」;Tg−34℃、体積平均粒子径32μm)
(無機系微粒子)
粒子No.1:シリカ(富士シリシア化学社製「サイリシア446」;体積平均粒子径6μm)
粒子No.2:シリカ(コアフロント社製「sicastar」;体積平均粒子径70μm)
粒子No.3:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス(登録商標)MEK−ST」;体積平均粒子径12.5nm)
(実施例1)
両面に易接着層を有する共重合ポリエステルを含む二軸配向ポリエステルフィルム(東洋紡製「ソフトシャイン(登録商標)TA009」、厚み125μm)を基材フィルムとし、その上に、下記の処方で調製した塗布液を、塗布硬化後の硬化物層の厚み(詳しくは最小厚み)が所定の目標値(3μm)になるようにワイヤーバーを用いて塗布し(このとき、実際の塗布量は乾燥した状態で3.5g/m2となった)、温度80℃の熱風で60秒間乾燥した後、高圧水銀灯下、積算光量200mJ/cm2により硬化させて、表面加飾用フィルムを得た。得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、図2に示す写真が得られた。このSEM写真によれば、切断された有機系微粒子の粒子径は9μmであり、硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は2μmであった。つまり表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の22.2%であった。
[塗布液の調製]
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して溶解させた。次いで、公称ろ過精度が100μmのフィルターを用いて未溶解物を除去することにより、塗布液を調製した。
・メチルエチルケトン:15.384質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):81.191質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.855質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:1.709質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.812質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
(実施例2)
実施例1において、塗布液を調製するにあたり有機系微粒子No.1に代えて有機系微粒子No.2(根上工業社製「アートパール(登録商標)」C−800)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の22.8%であった。
(実施例3)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:25.753質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):67.809質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):4.283質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:1.428質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.678質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の34.5%であった。
(実施例4)
実施例1において、塗布液を調製するにあたり有機系微粒子No.1に代えて有機系微粒子No.3(根上工業社製「アートパール(登録商標)」AK−200TR)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の16.8%であった。
(実施例5)
実施例1において、塗布液を調製するにあたり無機系微粒子No.1に代えて無機系微粒子No.2(コアフロント社製「sicastar」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の76.7%であった。
(実施例6)
実施例1において、塗布液を調製するにあたり無機系微粒子No.1に代えて無機系微粒子No.3(日産化学社製「スノーテックス(登録商標)」MEK−ST)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の25.9%であった。
(実施例7)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:27.580質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):65.460質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.689質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:5.560質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.661質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の74.8%であった。
(実施例8)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:17.656質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):77.930質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.779質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:2.805質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.779質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の70.8%であった。
(実施例9)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:16.160質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):79.800質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.798質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:2.394質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.798質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の68.2%であった。
(実施例10)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:15.122質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):81.098質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.811質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:2.109質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.811質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は、有機系微粒子の粒子径の66.4%であった。
(実施例11)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:31.622質量%
・熱硬化性ウレタン樹脂(DIC社製「NY−331」;固形分25質量%):64.953質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.855質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:1.709質量%
・イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン社製「コロネート(登録商標)HL」):0.812質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
なお得られた表面加飾用フィルムを1個の有機系微粒子を含むラインで切断し、その断面を電子顕微鏡(2000倍)にて観察したところ、表面加飾層における硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さの最小値は有機系微粒子の粒子径の22.6%であった。
(比較例1)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:7.393質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):90.695質量%
・有機系微粒子No.1(根上工業社製「アートパール(登録商標)」P800T):0.955質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.907質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
(比較例2)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・メチルエチルケトン:13.081質量%
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):84.252質量%
・無機系微粒子No.1(富士シリシア化学社製「サイリシア446」:1.774質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.843質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
(比較例3)
実施例1において、塗布液を調製する際の処方を下記の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面加飾用フィルムを得た。
・ウレタンアクリレート系UV/EB硬化樹脂(トクシキ社製「AUP-707」;2官能、固形分20質量%):98.961質量%
・光重合開始剤(現BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)184」):0.990質量%
・レベリング剤(シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製「DC57」):0.050質量%
得られた表面加飾用フィルムにおける表面加飾層の表面粗さ(SMD)および静摩擦指標は表1に示すとおりであった。
以上の実施例、比較例で得られた表面加飾用フィルムの触感(べたつき感、ぬめり感、ザラツキ感、しっとり感)について、10人のモニターによる一対比較法での判定により評価した。評価結果を表1に示す。
25℃、60%RHの環境下に制御した恒温恒湿室に2種の試料(表面加飾用フィルム)を設置し、各試料上にモニターの左右の掌を1分間置いた。そして、1分後のべたつき感、ぬめり感、ザラツキ感、及び総合評価としてのしっとり感、を判定した。具体的には、左右どちらの試料がよりべたつかないか、ぬめり感があるか、ザラザラしていないか、さらに総合評価としてしっとりしているか、を判定し、全試料の組合せにて一対比較判定後、サーストンの一対比較法に準拠し、べたつき感、ぬめり感、ザラツキ感、しっとり感を−2〜+2点で標準化して得点化した。
なお、「べたつき感」は得点が高いほどべたつきを感じず、「ぬめり感」は得点が高いほどぬめり感を感じ、「ザラツキ感」は得点が高いほどザラツキを感じない(換言すれば滑らかさを感じる)ことを示す。それぞれ点数が高い方がしっとりしている感覚に近づくが、それぞれ単独ではしっとり感を表すことは出来ないので、総合評価として「しっとり感」も評価した。「しっとり感」も点数が高いほど、しっとりしている感覚が高くなることを示しており、具体的には、点数がプラスの値であれば「しっとり感」を感じ得ると言える。
表1より、表面加飾層に有機系微粒子と無機系微粒子の両方を含み、かつ表面粗さSMDが0.1μm以上0.4μm未満の範囲内であり、静摩擦指標が0.5〜3.0の範囲内である実施例1〜11の表面加飾用フィルムはいずれも、べたつき感、ぬめり感、ザラツキ感がプラスの得点であり、総合的な評価であるしっとり感もプラスの得点であることから、優れたしっとり感が得られることが分かる。
これに対し、表面粗さSMDが本発明の範囲よりも小さすぎる比較例1〜3では、べたつき感が不良となり、触感の総合評価であるしっとり感は得られないことが分かる。
本発明の表面加飾用フィルムは、成型加工が可能であるので、家電、自動車の銘板用または建材用部材、携帯電話、オーディオ、ポータブルプレーヤー/レコーダー、ICレコーダー、カーナビ、PDAなどの携帯機器やノートPCなどの筐体に好適に適用できる。
1 基材フィルム
2 表面加飾層(硬化性樹脂化合物の硬化物)
3 有機系微粒子
4 無機系微粒子

Claims (6)

  1. 基材フィルム上に表面加飾層を備えた表面加飾用フィルムであって、
    前記表面加飾層が、硬化性樹脂化合物の硬化物と有機系微粒子と無機系微粒子とを含有してなり、
    前記有機系微粒子は、ガラス転移点(Tg)が−10℃以下である架橋ウレタン微粒子であり、
    前記無機系微粒子の体積平均粒子径が50μm以下であり、
    前記無機系微粒子は、前記硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して1〜17質量部含まれており、
    かつ前記表面加飾層は、KES表面試験機で測定される表面粗さSMDが0.10μm以上、0.36μm以下であることを特徴とするしっとり感に優れた表面加飾用フィルム。
  2. 前記表面加飾層は、KES表面摩擦試験機でシリコンセンサー摩擦子を用いて測定される静摩擦指標が0.5〜3.0である請求項1に記載の表面加飾用フィルム。
  3. 前記有機系微粒子の体積平均粒子径が1〜30μmである請求項1または2に記載の表面加飾用フィルム。
  4. 前記有機系微粒子が、前記硬化性樹脂化合物の硬化物100質量部に対して、1〜20質量部含まれている請求項1〜のいずれか一項に記載の表面加飾用フィルム。
  5. 前記無機系微粒子の体積平均粒子径が1μm以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の表面加飾用フィルム。
  6. 前記表面加飾層における前記硬化性樹脂化合物の硬化物の厚さが、前記有機系微粒子の粒子径の80%以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の表面加飾用フィルム。
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