JP5673466B2 - 熱線遮蔽膜とその製造方法、および熱線遮蔽合わせ透明基材 - Google Patents
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Description
しかしながら、本発明者らが更なる検討をおこなった結果、以下の課題が見出された。
第1の課題は、上述したように、特許文献1〜4に記載された従来の技術に係る合わせガラスでは、いずれも高い可視光透過率が求められたときの熱線遮蔽機能が十分でないことである。さらに透明基材の曇り具合を示すヘイズ値は、車両用窓材で1%以下、建築用窓材で3%以下であることが求められるのに対し、当該要求を満足出来るものではなかった。
一方、特許文献5に記載された熱線遮蔽用合わせガラスにおいても、高い可視光透過率と高い熱線遮蔽機能との両立の点で、未だ改善の余地を有していた。
具体的には、安全ガラス等の合わせガラス等には、貫通への耐性が求められることである。
上述したように、特許文献5に記載された熱線遮蔽用合わせガラスにおいても、高い可視光透過率と、高い熱線遮蔽機能との両立に課題が残ったことから、本発明者らは、ポリビニルアセタール樹脂を紫外線硬化樹脂に代替し、当該紫外線硬化樹脂に複合タングステン化合物と六ホウ化物とを含有させた熱線遮蔽膜を中間層とした熱線遮蔽用合わせガラスを特許文献6に開示した。
ここで、従来、中間層用の樹脂としては、合わせガラスに貫通耐性を付与する為、ポリビニルアセタール樹脂が用いられてきた。ところが、ポリビニルアセタール樹脂へ複合タングステン酸化物微粒子を含有させた中間層は、太陽光を受けた際に発生する熱や空気中の水分、酸素の影響を受け、当該合わせガラスの周辺部分より色抜けが発生し、当該熱線遮蔽膜の光学特性が低下することが知見された。
そこで、本発明者らは次善の策として、ポリビニルアセタール樹脂を紫外線硬化樹脂に代替し、紫外線硬化樹脂に複合タングステン化合物と六ホウ化物とを含有させた熱線遮蔽膜を発明し、特許文献6として開示した。
しかし、市場では安全ガラス等の機械的強度充足の観点から、中間層用の樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を要望する声が高い。
尚、色抜け防止剤とは、上述したポリビニルアセタール樹脂へ複合タングステン酸化物微粒子を含有させた中間層が、太陽光を受けた際に発生する熱等の影響で、合わせガラスの周辺部分より色抜けが発生し光学特性が低下することを抑止する効果を発揮する物質である。
本発明は、当該技術的発見に基づき完成されたものである。
熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記色抜け防止剤が、以下の構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物であることを特徴とする熱線遮蔽膜。
但し、構造式(1)において、R 1 、R 2 、R 4 およびR 5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基のいずれかであり、
R 3 は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、硫黄原子または以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−1)において、R 6 は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−2)において、R 7 は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、一般式M y WO Z (但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
色抜け防止剤が、以下の構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物と、
ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤及びリン酸系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤との、混合物であることを特徴とする熱線遮蔽膜。
但し、構造式(1)において、R 1 、R 2 、R 4 およびR 5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基のいずれかであり、
R 3 は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、硫黄原子または以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−1)において、R 6 は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−2)において、R 7 は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
前記色抜け防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して、3重量部〜500重量部であることを特徴とする第1〜第2の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽膜である。
前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽膜である。
第1〜第4の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽膜が、複数枚の透明基材間に存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材である。
前記透明基材の内、少なくとも1枚が無機ガラスであることを特徴とする第5の発明に記載の熱線遮蔽合わせ透明基材である。
熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜の製造方法であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子である一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子を、前記可塑剤へ分散させ、熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液を製造する第1の工程と、
前記ポリビニルアセタール樹脂へ、第1の工程で製造された熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液を添加して混練した後、成形し、熱線遮蔽膜を製造する第2の工程とを有し、
前記第1工程の分散工程または第2工程の混練工程の少なくともいずれかにおいて色抜け防止剤として、第1の発明に記載の亜リン酸エステル化合物、または、第2の発明に記載の亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤及びリン酸系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤との混合物を添加する工程と、を有することを特徴とする熱線遮蔽膜の製造方法である。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液は、熱線遮蔽機能を有する微粒子、分散剤、色抜け防止剤、可塑剤を含有している。そこで、まず、熱線遮蔽機能を有する微粒子、分散剤、色抜け防止剤、可塑剤について説明し、次に、熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液の製造方法について説明する。
本発明に係る熱線遮蔽機能を有する微粒子は、複合タングステン酸化物微粒子である。当該複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm以上の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。
複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を有しているものであることが好ましい。
これは、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が40nm以下になると、上記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる為である。レイリー散乱領域では、散乱光が粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が25nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。
また、熱線遮蔽膜に含まれる複合タングステン微粒子の量は、単位面積あたり0.2g/m2〜2.5g/m2が望ましい。
上述した複合タングステン酸化物微粒子の成分と製造方法とについて、以下、さらに説明する。
好ましい複合タングステン酸化物微粒子の例としては、Cs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3などを挙げることが出来る。尤も、y、zの値が上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。添加元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33付近である。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。また、Zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。これは、MyWOZで表記される複合タングステン酸化物材料においても、上述したWOxで表記されるタングステン酸化物材料と同様の機構が働くのに加え、z≦3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給があるためである。尤も、光学特性の観点から、より好ましくは2.45≦z≦3.00である。
一般式MYWOZ表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
タングステン化合物出発原料は、三酸化タングステン粉末、ニ酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であって、さらに元素Mを、元素単体または化合物の形態で含有するタングステン化合物を出発原料とすることが好ましい。
まず、不活性ガス雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線吸収力を有し熱線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N2等の不活性ガスを用いることがよい。
また、還元性雰囲気中における熱処理条件としては、出発原料を、まず還元性ガス雰囲気中にて100℃以上650℃以下で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中にて650℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないが、H2が好ましい。そして、還元性ガスとしてH2を用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N2等の不活性ガスにH2を体積比で0.1%以上を混合することが好ましく、さらに好ましくは0.2%以上混合したものである。H2が体積比で0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
水素で還元された出発原料粉末は、マグネリ相を含み、良好な熱線遮蔽特性を示す。従って、この状態でも熱線遮蔽微粒子として使用可能である。
本発明に係る熱線遮蔽膜に用いられるポリビニルアセタール樹脂の可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられる。いずれの可塑剤も、室温で液状であることが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、上述した一塩基性有機酸とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好適である。トリエチレングリコールの脂肪酸エステルは、ポリビニルアセタールとの相溶性や耐寒性など様々な性質をバランスよく備えており、加工性、経済性にも優れている。
可塑剤の選択にあたっては、加水分解し難い可塑剤であることが望ましい。当該観点からは、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネートが好ましい。
本発明者らは、熱線遮蔽機能を有する微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)がポリビニルアセタール樹脂に分散された熱線遮蔽膜を挟み込んだ合わせガラスを、外界にて長期間使用した際、太陽光を受けた際に発生する熱や、空気中の水分や酸素の影響により、当該合わせガラスの周辺部分より色抜けすることを知見した。そして、当該合わせガラス周辺部分の色抜けが、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子の劣化発生に起因することに想到した。
当該色抜け防止剤の具体例としては、亜リン酸エステル化合物を挙げることが出来る。また、適宜、当該亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド化合物系安定剤、リン酸系安定剤から選ばれる1種類以上とを併用しても良い。
亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド化合物系安定剤、リン酸系安定剤から選ばれる1種類以上との併用使用は、亜リン酸エステル化合物の効果を持続させる効果があり好ましい構成である。
(a)亜リン酸エステル化合物
本発明に用いる亜リン酸エステル化合物は、構造式(1)で示される化合物である。
当該構造式(1)で示される化合物において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基を示す。
炭素数5〜12の脂環族基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数7〜12のフェニル基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
R1、R4は、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基などのt−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等であることがさらに好ましい。
一方、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示す。ここで炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられるが、単結合、エチレン基等がさらに好ましい。
係る亜リン酸エステル類は、市販品を使用することも出来、例えば上述した、商品名スミライザーGP(住友化学株式会社製)等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、フェノール性OH基の一位に第三ブチル基等の大きな基が導入された化合物がある。ヒンダードフェノール系安定剤は、主として連鎖禁止機能(すなわち、フェノール性OH基がラジカルを捕捉して、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられる。
但し、上述した各種の着色防止剤の有害ラジカル補足過程は、未解明な点も多く、上述以外の作用が働いている可能性もあり、上述した作用に限定されるわけではない。
スルフィド化合物は、分子内に2価の硫黄が2個の有機基で置換された化合物であり、チオエーテルとも言われている。そのうちスルフィド化合物系安定剤は、主として過酸化物分解機能(すなわち、S原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられる。
低分子型のスルフィド化合物系安定剤の好適な具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC12H25)2)、ジステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)2)、ラウリルステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)(CH2CH2COOC12H25))、ジミリスチルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC14H29)2)、ジステアリルβ、β’−チオジブチレート(S(CH(CH3)CH2COOC18H39)2)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(C6H4NHNCSH)、ジラウリルサルファイド(S(C12H25)2)等が挙げられる。
リン酸系安定剤は3価のリン原子を含むものであることが望ましく、その構造を構造式(2)に示す。
構造式(2)において、x、y、zは、それぞれ0または1の値をとる。また、R1、R2およびR3は、一般式CmHnで表される直鎖、環状、もしくは分岐構造のある炭化水素基、または、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、または、水素原子である。さらに、yまたはzが1の場合には、R2またはR3は、金属原子でもよい。
さらに、本発明においてリン酸系安定剤とは、構造式(2)において、R1を除いた部分(すなわち、一般式:−Ox−P(OyR2)(OzR3)が挙げられる。
(4)分散剤
分散剤は、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を、熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液へ均一に分散させる為に用いられる。
本発明に係る分散剤は、示差熱熱重量同時測定装置(以下、TG−DTAと記載する場合がある。)で測定される熱分解温度が200℃以上あって、ウレタン、アクリル、スチレン主鎖を有する分散剤であることが好ましい。ここで、熱分解温度とはTG−DTA測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。
熱分解温度が200℃以上であれば、ポリビニルアセタール樹脂との混練時に当該分散剤が分解することがないからである。これによって、分散剤の分解に起因した熱線遮蔽合わせガラス用熱線遮蔽膜の褐色着色、可視光透過率の低下、本来の光学特性が得られない事態を回避出来る。
具体的には、カルボキシル基を官能基として有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤が例として挙げられる。官能基にアミンを含有する基を有する分散剤は、分子量Mw2000〜200000、アミン価5〜100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では、分子量Mw2000〜200000、酸価1〜50mgKOH/gのものが好ましい。
本発明に係る熱線遮蔽膜を製造する際、最終的に、ポリビニルアセタール樹脂へ添加される可塑剤の全量または一部分へ、複合タングステン酸化物微粒子を分散させ熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液を製造する。そして、当該熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液とポリビニルアセタール樹脂とを混合することで、本発明に係る熱線遮蔽膜中において、複合タングステン酸化物微粒子を略均一に分散させることが可能となる。熱線遮蔽膜中に複合タングステン酸化物微粒子を略均一に分散することで、熱線遮蔽膜のヘイズ等の光学特性を満足できることとなる。
当該可塑剤と、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤との混合物において 複合タングステン酸化物微粒子を均一に可塑剤へ分散させる方法は、一般的な方法から任意に選択出来る。具体例としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることが出来る。
尤も、色抜け防止剤は、当該熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液の製造時点で添加しても良いが、後述するポリビニルアセタール樹脂と前記熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液とを混合して熱線遮蔽膜を製造する時点で添加しても良く、さらに両製造時点で添加しても良く、適宜選択可能である。
本発明に係る熱線遮蔽膜は、熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜である。また、本発明に係る熱線遮蔽膜は、さらに接着力調整剤やその他の添加剤を含む場合もある。
以下、本発明に係る熱線遮蔽膜に含まれるポリビニルアセタール樹脂、接着力調整剤、その他の添加剤について説明する。
本発明に係る熱線遮蔽膜に用いるポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。また、熱線遮蔽膜の物性を考慮した上で、アセタール化度が異なる複数種のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。さらに、アセタール化時に複数種類のアルデヒドを組み合わせて反応させた共ポリビニルアセタール樹脂も、好ましく用いることが出来る。
ここで、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は60%、上限は75%である。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られ、一般的には、ケン化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、上限は3000である。重合度が200以上であると、製造される熱線遮蔽合わせ透明基材の貫通への耐性が保持され、安全性が保たれる。一方、3000以下であれば、樹脂膜の成形性が保たれ、樹脂膜の剛性も好ましい範囲に保たれ、加工性が保たれる。
熱線遮蔽膜へのこれら可塑剤の全添加量は、熱線遮蔽膜の物性を考慮して添加量を定めればよい。望ましい全添加量は10質量%〜70質量%である。
本発明に係る熱線遮蔽膜へ、さらに接着力調整剤を含有させることも好ましい。
当該接着力調整剤は、特に限定されないが、アルカリ金属塩および/又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。当該金属塩を構成する酸は、特に限定されず、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。アルカリ金属塩および/又はアルカリ土類金属塩の中でも、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩、炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩が好ましい。
当該炭素数2〜16の有機酸のカルボン酸マグネシウム塩、カリウム塩としては、特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が好適に用いられる。
これらの接着力調整剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る熱線遮蔽膜へは、さらに所望により、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、所望により任意の色調を与えるための、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料を添加しても良い。
また、紫外線吸収剤としてヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の有機紫外線、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤を添加しても良い。
さらに、添加剤としてカップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を使用することが出来る。
本発明に係る熱線遮蔽膜は、上述した熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液と、ポリビニルアセタール樹脂と、「残部の」可塑剤と、所望により接着力調整剤やその他の添加剤とを混合し、混練した後、押出成形法、カレンダー成形法等の公知の方法により、例えば、フィルム状に成形することによって得られる。
尚、上述したように、当該混合工程において前記色抜け防止剤を加えることも好ましい構成である。
本発明に係る熱線遮蔽膜を用いた熱線遮蔽合わせ透明基材には、様々な形態がある。
例えば、透明基材として無機ガラスを用いた熱線遮蔽合わせ無機ガラスは、熱線遮蔽膜を挟み込んで存在させた対向する複数枚の無機ガラスを、公知の方法で張り合わせ一体化するよって得られる。得られた熱線遮蔽合わせ無機ガラスは、主に自動車のフロント無機ガラスや建物の窓として使用することが出来る。
用途によっては、熱線遮蔽膜単体として使用すること、無機ガラスや透明樹脂等の透明基材の片面または両面に熱線遮蔽膜を存在させて使用することも、勿論可能である。
以上、詳細に説明したように、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを可塑剤に分散させて熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液とした後、当該分散液に色抜け防止剤を添加し混合することで、熱線遮蔽膜用可塑剤分散液を得ることが出来た。
そして、当該熱線遮蔽膜用可塑剤分散液と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを混練し、さらに、公知の方法により、フィルム状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外域に強い吸収を有する、熱線遮蔽膜の作製が可能となった。そして、当該熱線遮膜を、対向する複数枚の透明基材の間に挟み込むように存在させることによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外域に強い吸収をもち、耐候性に優れた熱線遮蔽合わせ透明基材の作製が可能となった。
また、各実施例における複合タングステン酸化物微粒子の粉体色(10°視野、光源D65)、および、熱線遮蔽合わせ透明基材の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。尚、当該日射透過率は、熱線遮蔽合わせ透明基材の熱線遮蔽性能を示す指標である。
また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用い、JIS K 7105に基づいて測定した。
H2WO450gとCs(OH)218.7g(Cs/W(モル比)=0.33相当)とをメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N2ガスをキャリアーとした5%H2ガスを供給下で加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、N2ガス雰囲気下において800℃で30分間焼成して微粒子(以下、微粒子aと略称する。)を得た。
微粒子aの組成式は、Cs0.33WO3であり、粉体色はL*が35.2845、a*が1.4873、b*が−5.2114であった。
ここで、分散液A内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を、日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ20nmであった。
続けて、合わせ透明基材Aを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.5%であった。この結果を表1に示した。
スミライザーGPを、微粒子a100重量部に対して3重量部添加する以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Bと略称する。)を調製した。
ここで、分散液B内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ24nmであった。
合わせ透明基材Bの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.4%のときの日射透過率は38.5%で、ヘイズ値は0.6%であった。
続けて、合わせ透明基材Bを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.6%であった。この結果を表1に示した。
スミライザーGPを、微粒子a100重量部に対して500重量部添加する以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Cと略称する。)を調製した。
ここで、分散液C内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ23nmであった。
合わせ透明基材Cの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率73.5%のときの日射透過率は40.0%で、ヘイズ値は0.4%であった。
続けて、合わせ透明基材Cを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.6%であった。この結果を表1に示した。
色抜け防止剤として、スミライザーGPとともにヒンダードフェノール系安定剤のイルガノックス1010構造式(4)を添加し、微粒子a100重量部に対するそれぞれの添加量を15重量部とする以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Dと略称する。)を調製した。
ここで、分散液D内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ22nmであった。
合わせ透明基材Dの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.3%のときの日射透過率は38.4%で、ヘイズ値は0.6%であった。
続けて、合わせ透明基材Dを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.8%であった。この結果を表1に示した。
色抜け防止剤として、スミライザーGPとともにスルフィド化合物系安定剤のスミライザーTPM構造式(5)を添加し、微粒子a100重量部に対するそれぞれの添加量を15重量部とする以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Eと略称する。)を調製した。
ここで、分散液E内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ20nmであった。
合わせ透明基材Eの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.8%のときの日射透過率は39.0%で、ヘイズ値は0.4%であった。
続けて、合わせ透明基材Eを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.9%であった。この結果を表1に示した。
色抜け防止剤として、スミライザーGPとともにリン酸系安定剤のアデカスタブA2112構造式(6)を添加し、微粒子a100重量部に対するそれぞれの添加量を15重量部とする以外は、実施例1と同様にして実施例8に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Fと略称する。)を調製した。
ここで、分散液F内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ22nmであった。
合わせ透明基材Fの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率73.5%のときの日射透過率は40.0%で、ヘイズ値は0.6%であった。
続けて、合わせ透明基材Fを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+0.9%であった。この結果を表1に示した。
スミライザーGPを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Gと略称する。)を調製した。
ここで、分散液G内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ28nmであった。
合わせ透明基材Gの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.5%のときの日射透過率は38.6%で、ヘイズ値は0.5%であった。
続けて、合わせ透明基材Gを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+5.0%であった。この結果を表1に示した。
色抜け防止剤として、スミライザーGPをイルガノックス1010に代替した以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Hと略称する。)を調製した。
ここで、分散液H内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ26nmであった。
合わせ透明基材Hの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.3%のときの日射透過率は38.4%で、ヘイズ値は0.5%であった。
続けて、合わせ透明基材Hを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+4.2%であった。この結果を表1に示した。
色抜け防止剤として、スミライザーGPをスミライザーTPMに代替した以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る熱線遮蔽膜用可塑剤分散液(以下、分散液Iと略称する。)を調製した。
ここで、分散液I内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ27nmであった。
合わせ透明基材Mの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.8%のときの日射透過率は39.0%で、ヘイズ値は0.5%であった。
続けて、合わせ透明基材Iを120℃空気浴中に30日間保持した後の可視光透過率変化を測定した。可視光透過率変化は+4.4%であった。この結果を表1に示した。
Claims (7)
- 熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記色抜け防止剤が、以下の構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物であることを特徴とする熱線遮蔽膜。
但し、構造式(1)において、R 1 、R 2 、R 4 およびR 5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基のいずれかであり、
R 3 は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、硫黄原子または以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−1)において、R 6 は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−2)において、R 7 は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物の酸素原子側に結合していることを示す。 - 熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子が、一般式M y WO Z (但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
色抜け防止剤が、以下の構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物と、
ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤及びリン酸系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤との、混合物であることを特徴とする熱線遮蔽膜。
但し、構造式(1)において、R 1 、R 2 、R 4 およびR 5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基のいずれかであり、
R 3 は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、硫黄原子または以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−1)において、R 6 は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基のいずれかである。
但し、構造式(1−2)において、R 7 は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル化合物の酸素原子側に結合していることを示す。 - 前記色抜け防止剤の添加量が、前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して、3重量部〜500重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽膜。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱線遮蔽膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱線遮蔽膜が、複数枚の透明基材間に存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材。
- 前記透明基材の内、少なくとも1枚が無機ガラスであることを特徴とする請求項5に記載の熱線遮蔽合わせ透明基材。
- 熱線遮蔽機能を有する微粒子と、可塑剤と、色抜け防止剤とを含有するポリビニルアセタール樹脂を含む熱線遮蔽膜の製造方法であって、
前記熱線遮蔽機能を有する微粒子である一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子を、前記可塑剤へ分散させ、熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液を製造する第1の工程と、
前記ポリビニルアセタール樹脂へ、第1の工程で製造された熱線遮蔽微粒子含有可塑剤分散液を添加して混練した後、成形し、熱線遮蔽膜を製造する第2の工程と、
前記第1工程の分散工程または第2工程の混練工程の少なくともいずれかにおいて、色抜け防止剤として、請求項1に記載の亜リン酸エステル化合物、または、請求項2に記載の亜リン酸エステル化合物と、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤及びリン酸系安定剤から選ばれる1種類以上の安定剤との混合物を添加する工程と、を有することを特徴とする熱線遮蔽膜の製造方法。
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