JP5671561B2 - 麦芽を原料とする低カロリー醸造酒の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、麦芽を原料とする醸造酒であるビールや発泡酒については酒類の中ではカロリーが高い方でありながら、飲用の機会が多い、1回の飲用時での飲用量が多い等から、低カロリーの麦芽を原料とする醸造酒の登場への消費者の期待は高かった。
低カロリーのビールや発泡酒を製造する場合、低カロリーとするために、1)通常4〜
6%程度のアルコールを1〜3%程度に減じる、2)糖質を減じる、3)いずれも減じる方法がある。これらは例えば発酵工程で残糖が少なくなるような高発酵となる原料を使用する、発酵工程をコントロールし高発酵とする、最終的な調整の段階で希釈或いは除去によりアルコール或いは糖質を減じる方法などがある。しかしながら、いずれも味が薄い、飲み応えがない、風味がない、ボディ感がないなど、風味、呈味、例えばコク味や旨味、ボディ感などで、不満の声が非常に高かった。
現在、国内で市販されているビールや発泡酒のカロリーは、38Kcal/100mlから48Kcal/100ml位であり、本願明細書において、低カロリー醸造酒とは、後記実施例に記載する方法で計算したとき、カロリーが35Kcal/100ml以下の醸造酒を意味する。
なお、本明細書中の低カロリー甘味料或いはノンカロリー甘味料に関するカロリーは、栄養標準基準(平成8年厚生省告示第146号)によるものである。
エリスリトールは、四炭糖の糖アルコールであり、ブドウ糖を原料とする酵母の発酵で生成されるブドウ糖発酵甘味料であり、ワインや清酒にも含まれている天然甘味料である。甘味度は砂糖の約70%であるが、体内へ吸収されたエリスリトールはほとんど消化されず、大部分 (90%以上)は尿として排泄され、カロリーが0(エネルギー係数 0Kcal/g)である。糖アルコールの中では低いが、大量に摂取すると体調や体質により一過性の緩下作用を起こすことがある。
スクラロースは、カロリーが0(エネルギー係数 0Kcal/g)であり、砂糖の約600倍の甘味を持つ砂糖由来の甘味料である。化学名は4−クロロ−4−デオキシ−α−D−ガラクトピラノシル−1,6−ジクロロ−1,6−ジデオキシ−β−D−フラクトフラノシド(1,6−dichloro−1,6−dideoxy−β−D−fructofuranosyl−4−chloro−4−deoxy−α−D−garactopyranoside)である。
アセスルファムカリウムおよびスクラロースはいずれも高甘味度を有し、その甘味の感
じられ方も蔗糖(シュークロース)に比して、シャープで且つ強い。エリスリトールは、甘味度は低いが、その甘さに清涼感がある。アセスルファムカリウム、エリスリトール又はスクラロースは甘味料として、またダイエット用の菓子、栄養補助食品、飲料等に、甘味料として添加され、使用されている。しかしながら、アセスルファムカリウム又はスクラロースはいずれも甘味度が非常に高いため、甘味料以外の用途としては、飲食物に対して使用されることはほとんどなかった。エリスリトールは、その緩下作用のため、大量に摂取される飲料に関しては、使用量を制限して使用されている。
アセスルファムカリウムの場合は、飲料に甘味料以外の目的で添加された例としては、特公平2−60307号公報「果汁飲料の製造法」には、アセスルファムカリウムを果汁飲料に添加すると、保存中に発生する日向臭、枯草臭、イモ臭と言われる経日臭が抑制することができることが記載されている。この時、アセスルファムカリウムは果汁飲料中に約0.0006-0.006重量%となるように含有せしめるとなっている。ただし、果汁飲料は元々糖分をかなり含み、甘味も果汁飲料の風味の構成要件となっているので、アセスルファムカリウムの添加量は、果汁飲料の甘味の点からでは特に規定されていない。
以上のように、スクラロース或いはアセスルファムカリウムを、甘味料以外の用途で飲食物に使用する場合は、その甘味が使用する飲食物の風味を妨げない範囲での使用という使用量の限界があった。
アセスルファムカリウムとスクラロースの混合組成物については、各々が甘味剤としての組み合わせ、そしてその目的も、より風味、甘味が改善された甘味組成物の創製としてしか開発されていなかった。
とはなじみのあるものである。また甘味が砂糖よりも低いことから、甘味料以外の用途での使用も容易に製品設計することができる。
アセスルファムカリウム及びスクラロースは混合した場合、甘味度が相乗的に増すとされているが、本発明によると、アセスルファムカリウム及びスクラロースを一定の重量比率で酒類に添加することにより、好ましくない甘味を感じさせることなく、醸造酒の風味、呈味を増加させることができる。アセスルファムカリウム又はスクラロースを単独で酒類に添加させた場合には、非常にインパクトのある甘味が強く感じられるようになり、醸造酒の風味或いは呈味をかえって損なうが、本発明の方法によれば、好ましくない甘味を感じさせることなく、醸造酒の風味、呈味を増加させることができる。これは本発明が初めて見出したものである。またアセスルファムカリウム又はスクラロースはいずれもカロリー0の物質であるので、低カロリーの酒類においても、最適に用いられる。
最終製品中のスクラロースの含有量が1.0重量ppm未満且つ、アセスルファムカリウムの含有量が3.0重量ppm未満であると醸造酒の風味、呈味を増加させることができない。一方、最終製品中のスクラロースの含有量が5.0重量ppmを超え且つ、アセスルファムカリウムの含有量が15.0重量ppmを超えると、製品に風味、呈味を付与することはできるが、甘味が強く、また、風味の中で甘味が浮いて感じられるようになってしまうため、好ましくない。
本発明において、2種類以上の低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料を組み合わせて使用する場合、アセスルファムカリウム及びスクラロースの組み合わせでは最終製品中での重量比は、1.5:1から6.0:1の範囲で添加することが好ましいが、添加する醸造酒の種類、他の風味である酸味、苦味などとのバランス等により、適宜選択すれば良い。
低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料は、醸造用酵母によって資化されないため、発酵工程より以前に添加しても、発酵工程により添加した量が低減されることはない。低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料はいずれも水溶性が高く、例えば醸造酒の製造工程における麦汁等の糖液や発酵液に対する溶解性も高い。また、製造工程における珪藻土等の濾過機での濾過によっても殆ど捕捉されることはない。従って、醸造酒の製造過程において、いずれの工程においても添加することができ、また添加された低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料は、その含有量を殆ど変化させることなく最終製品に移行する。
従って、本発明は、従来の低カロリー醸造酒の製造方法を特に変更する必要はなく、各工程のいずれかで添加、攪拌するだけで良く、特に新たな工程や特別な装置を必要とせず、非常に経済的であり、また利便な方法である。
なお、本明細書における麦芽を原料とする醸造酒、特にビール、発泡酒のカロリー計算は、以下の通りである。
(アルコール濃度(W/W%)×7.08+真正エキス濃度(W/W%)×3.80)×比重
実施例1 発泡酒への充填工程における添加
(1)発泡酒の製造
通常の発泡酒醸造の方法に従って、原麦汁エキス濃度が6.5%の発泡酒を製造し、充填工程において第1表に示すとおりスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加し、6種の発泡酒である製品Aから製品Fを得た。なお、カロリーは充填工程前の発泡酒で23Kcal/100mlであり、第1表に示すとおりのスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加した場合も、発泡酒製品Aから製品Fはいずれもカロリーは23Kcal/100mlであった。
上記で得られた6種の発泡酒製品Aから製品Fについて、パネリスト10名により官能検査を行った。この官能検査においては、各製品について、個々に「コク味」、「甘味」及び「旨味」の3項目について、「乏しい」、「少ない」、「やや少ない」、「ややあり」、「あり」、「やや強い」、「強い」の7段階の評価を行うと共に、「おいしい」又は「まずい」の2段階の総合評価を行い、おいしいと感じた(プラス(+)表記)パネリストの人数と、まずいと感じた(マイナス(−)表記)パネリストの人数をそれぞれ数えた。結果を第2表に示す。
ァムカリウムを含まない製品Aと同様にコク味も旨みの付与も認められなかった。
これに対しスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加した製品のうち製品C〜Fはコク味と旨みが付与されていた。特に製品D(スクラロース3.0重量ppm、アセスルファムカリウム9.0重量ppm含有)ではコク味と旨味のバランスが良く、最も高い評価が得られた。また製品Eと製品Fではコク味と旨味が付与されているが、発泡酒としては好ましくない程度の甘味が感じられるようになり、パネリストによってはマイナスの評価をする者もいた。特に製品F(スクラロース6.0重量ppm、アセスルファムカリウム18.0重量ppm含有)では、甘味が過剰に感じられるようになり、コク味と旨味が付与されているにもかかわらず、総体的にまずいと評価された。
この官能検査の結果から、最終製品中のスクラロース含量が1.0重量ppm以上且つ、アセスルファムカリウム含量が3.0重量ppm以上あれば、コク味が付与され、スクラロース含量が5.0重量ppmを超え且つ、アセスルファムカリウム含量が15.0重量ppmを超えると甘味が過剰に感じられるようになり、コク味と旨味が付与されているにも関わらず、総体的な風味が好ましくないため、これを超える量のスクラロース及びアセスルファムカリウムの添加では本発明の効果が得られないことが分かった。
以上のように、スクラロース及びアセスルファムカリウムを添加することにより、無添加の製品と比較して、明らかにコク味や質の良い旨味が付与された発泡酒が得られた。
(1)発泡酒の製造
通常の発泡酒醸造の方法に従って、発酵までの工程を行い、発酵が終了した発泡酒を発酵工程から貯酒工程に移送する工程で、第3表に示すとおりスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加し、その後は通常の発泡酒醸造の方法に従って、原麦汁エキス濃度が6.5%の2種の発泡酒製品G及び製品Hを製造した。なお、カロリーはスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加しないで、同様の方法で製造した発泡酒が23Kcal/100mlであり、第3表に示すとおりのスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加した後、通常の発泡酒醸造の方法に従って製造された発泡酒製品G及び製品Hのいずれもカロリーは23Kcal/100mlであった。
上記で得られた2種の発泡酒製品G及び製品Hを、パネリスト10名により官能検査を行った。この官能検査においては、各製品について、個々に「コク味」、「甘味」及び「旨味」の3項目について、「乏しい」、「少ない」、「やや少ない」、「ややあり」、「あり」、「やや強い」、「強い」の7段階の評価を行うと共に、「おいしい」又は「まずい」の2段階の総合評価を行い、おいしいと感じた(プラス(+)表記)パネリストの人数と、まずいと感じた(マイナス(−)表記)パネリストの人数をそれぞれ数えた。結果を第4表に示す。
また製品Hは実施例1の製品Dとスクラロース及びアセスルファムカリウムの添加濃度は同じでスクラロース及びアセスルファムカリウムの添加時期は異なるが、同じく高い官能評価を得られた。
以上のように、スクラロース及びアセスルファムカリウムを添加することにより、無添加の製品と比較して、明らかにコク味や質の良い旨味が付与された雑酒発泡酒が得られること、スクラロース及びアセスルファムカリウムを雑酒発泡酒製造における異なる工程で添加しても、同様にコク味や質の良い旨味を付与できることがわかった。
スクラロース単独の添加、アセスルファムカリウム単独での添加、スクラロースとアセスルファムカリウムの添加の例
(1)発泡酒の製造
通常の発泡酒醸造の方法に従って、原麦汁エキス濃度が6.5%の発泡酒を製造し、充填工程において第5、6表に示すとおりスクラロース及び/又はアセスルファムカリウムを添加し、14種の発泡酒製品Iから製品Vを得た。なお、カロリーは発泡酒で23Kcal/100mlであり、第5、6表に示すとおりのスクラロース及び/又はアセスルファムカリウムを添加した後の発泡酒製品Iから製品Vはいずれもカロリーは23Kcal/100mlであった。
上記で得られた14種の発泡酒製品Iから製品Vを、パネリスト10名により官能検査を行った。この官能検査においては、各製品について、個々に「コク味」、「甘味」及び「旨味」の3項目について、「乏しい」、「少ない」、「やや少ない」、「ややあり」、「あり」、「やや強い」、「強い」の7段階の評価を行うと共に、「おいしい」又は「まずい」の2段階の総合評価を行い、おいしいと感じた(プラス(+)表記)パネリストの人数と、まずいと感じた(マイナス(−)表記)パネリストの人数をそれぞれ数えた。結果を第7表及び第8表に示す。
第8表によると、スクラロースとアセスルファムカリウムをさまざまな重量比で添加した場合、製品R〜Tにおいてコク味、旨味、甘味のバランスが良く、総合評価で良い結果が得られた。
この官能検査の結果から、スクラロース、アセスルファムカリウムを単独で添加するより、これらを混合して添加した方が、発泡酒としてバランスの良いコク味、甘味、旨味が得られることが分かった、また、その混合比はアセスルファムカリウムとスクラロースの添加の重量比で 1.5:1〜6.0:1程度が好ましいことが分かった。
以上のように、アセスルファムカリウム及びスクラロースを混合で添加することにより、それぞれを単独で添加した製品と比較して、明らかにコク味、旨味、甘味のバランスの良い雑酒発泡酒が得られた。
(1)ビールの製造
通常のビール製造の方法に従って、原麦汁エキス濃度が6.5%のビールを製造し、充填工程において第9表に示すとおりスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加し、6種の発泡酒製品アから製品カを得た。なお、カロリーはビール(充填工程前)で23Kcal/100mlであり、第9表に示すとおりのスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加した後の発泡酒製品アから製品カはいずれもカロリーは23Kcal/100mlであ
った。
上記で得られた6種の発泡酒製品アから製品カを、パネリスト10名により官能検査を行った。この官能検査においては、各製品について、個々に「コク味」、「甘味」及び「旨味」の3項目について、「乏しい」、「少ない」、「やや少ない」、「ややあり」、「あり」、「やや強い」、「強い」の7段階の評価を行うと共に、「おいしい」又は「まずい」の2段階の総合評価を行い、おいしいと感じた(プラス(+)表記)パネリストの人数と、まずいと感じた(マイナス(−)表記)パネリストの人数をそれぞれ数えた。結果を第10表に示す。
これに対しスクラロース及びアセスルファムカリウムを添加した製品のうち製品ウ〜カはコク味と旨みが付与されていた。特に製品エ(スクラロース3.0重量ppm、アセスルファムカリウム9.0重量ppm含有)ではコク味と旨味のバランスが良く、最も高い評価を得られた。また製品オと製品カではコク味と旨味が付与されているが、発泡酒としては好ましくない程度の強すぎる甘味が感じられるようになり、パネリストによってはマイナスの評価をする者もいた。特に製品カ(スクラロース6.0重量ppm、アセスルファムカリウム18.0重量ppm含有)では、甘味が過剰に感じられるようになり、コク味と旨味が付与されているにもかかわらず、総体的にまずいと評価された。
この官能検査の結果から、最終製品中のスクラロース含量が1.0重量ppm以上且つ、アセスルファムカリウム含量が3.0重量ppm以上あれば、コク味が付与され、スクラロース含量が5.0重量ppmを超え且つ、アセスルファムカリウム含量が15.0重量ppmを超えると甘味が過剰に感じられるようになり、コク味と旨味が付与されているにも関わらず、総体的な風味が好ましくないため、これを超える量のスクラロース及びアセスルファムカリウムの添加では本発明の効果が得られないことが分かった。
以上のように、スクラロース及びアセスルファムカリウムを添加することにより、無添
加の製品と比較して、明らかにコク味や質の良い旨味が付与された発泡酒が得られた。
Claims (3)
- 麦芽を原料とする低カロリー醸造酒の製造にあたり、低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料を製造工程中に醸造酒に添加することで、醸造酒にコク味及び旨味を付与する方法であって、
該低カロリー甘味料又はノンカロリー甘味料が、アセスルファムカリウムとスクラロースの組み合わせであり、最終製品中での該アセスルファムカリウム含有量が3.0〜15.0重量ppm、最終製品中での該スクラロース含有量が1.0〜5.0重量ppmであり、アセスルファムカリウムとスクラロースの重量比が3.0:1から6.0:1の範囲である、上記方法。 - アセスルファムカリウムとスクラロースの組み合わせが、最終製品中での該アセスルファムカリウム含有量が3.0〜15.0重量ppm、最終製品中での該スクラロース含有量が1.0〜5.0重量ppm、アセスルファムカリウムとスクラロースの重量比が3.0:1から6.0:1の範囲となるように添加された、麦芽を原料とする低カロリー醸造酒。
- 麦芽を原料とする低カロリー醸造酒にコク味及び旨味を付与するためのアセスルファムカリウムとスクラロースの組み合わせの使用であって、
最終製品中での該アセスルファムカリウム含有量が3.0〜15.0重量ppm、最終製品中での該スクラロース含有量が1.0〜5.0重量ppmであり、アセスルファムカリウムとスクラロースの重量比が3.0:1から6.0:1の範囲となるように使用する、上記使用。
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