JP5668420B2 - 円すいころ軸受及び円すいころ軸受用保持器の製造方法 - Google Patents
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Description
この様な事情に鑑みて、特許文献1、2には、少ない潤滑油を有効利用して、各円すいころの大径側端面と大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部を潤滑する構造が記載されている。図20〜22は、このうちの特許文献1に記載された、従来構造の2例を示している。
このうちの外輪は、内周面に部分円すい凹面状の外輪軌道を有する。
又、前記内輪は、前記外輪の内径側にこの外輪と同心に配置されたもので、外周面に、部分円すい凸面状の内輪軌道、及び、この内輪軌道の大径側端部から径方向に関して外方に突出した大径側鍔部を有する。
又、前記各円すいころは、前記内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に配置されており、それぞれの大径側端面を前記大径側鍔部の軸方向側面と対向させている。
又、前記保持器は、合成樹脂製であり、前記各円すいころを保持する為のものである。
そして、この保持器は、互いに同心に、且つ、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部及び小径側リム部と、これら両リム部同士の間に掛け渡された複数本の柱部とを備える。そして、これら両リム部と円周方向に隣り合う1対ずつの柱部とにより四周を囲まれる部分を、それぞれ前記各円すいころを保持する為のポケットとした構造を有するものである。
又、これら各保油凹部は、前記保持器の軸方向に直交する仮想平面に関する断面形状が、円周方向に関する幅方向中央部で最も深くなった円弧形である。
又、前記各保油凹部の底面のうちで前記各ポケットの内面に開口している部分を、当該各ポケット内に保持された円すいころの大径側端面(好ましくは、この大径側端面に形成された凹部)に対向させている。但し、この大径側端面の凹部は、省略する事もできる。
更に、前記大径側リム部の内周面のうちの、前記各保油凹部から円周方向に外れた部分が、軸方向の全長に亙り、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面又は前記各ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜した傾斜面である。
尚、前記大径側リム部に形成した保油凹部の内周面を、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面とする事もできる。
(1) 互いに同心に配置された1対の金型を軸方向に関して互いに遠近動させる、アキシアルドロー構造である。
(2) 前記両金型の互いに対向する軸方向端面のうちの一方の金型の軸方向端面に成形用凹部が、他方の金型の軸方向端面に成形用凸部が、それぞれ設けられている。
(3) 前記一方の金型の軸方向端面に、前記保油凹部を形成すべき保油凹部成形用凸部が設けられている。
この様な請求項7に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項8に記載した発明の様に、前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用する。
本発明の円すいころ軸受を組み込んだ回転機械装置の運転時に潤滑油は、一般的な円すいころ軸受の場合と同様に、円すいころ軸受特有の、各円すいころの公転運動に伴う遠心力に基づくポンプ作用により、外輪の内周面と内輪の外周面との間の軸受内部空間を、外輪軌道及び内輪軌道の小径側から大径側に向けて流れる。潤滑油の供給量が十分である場合には、この様に軸受内部空間を流れる潤滑油が、前記各円すいころの大径側端面と内輪外周面の大径側鍔部の軸方向内側面との摺接部も十分に潤滑する。又、この状態では、前記軸受内部空間を流れる潤滑油の一部が、大径側リム部の内周面に形成した保油凹部内に、各ポケット側の開口部から流入しつつ、この大径側リム部の軸方向外端縁側に排出される。言い換えれば、先に前記保油凹部内に入り込んでいた潤滑油が、前記開口部から新たに流入する潤滑油によって、この保油凹部から押し出される。従って、潤滑油供給が十分に行われている通常運転時には、この保油凹部内に、常に潤滑油が溜まっている(存在している)状態となる。
尚、本発明の技術的範囲から外れるが、前記保油凹部は、少なくとも一部のポケットに整合する部分に形成すれば、当該ポケットに保持された円すいころの大径側端面(好ましくは、この大径側端面に形成された凹部)を通じて、大径側鍔部の軸方向内側面に潤滑油が供給され、この軸方向内側面と他の円すいころの大径側端面との摺接部の潤滑も行える。従って、前記保油凹部は、例えば円周方向に関して一つ置き或は二つ置きのポケット部分に設ける事もできる。
又、本発明を実施する場合に、前記保油凹部は、前記円すいころの大径側端面に対向する前記大径側リム部の内端面側で、或る程度の深さを有し、潤滑油を一時貯溜できるものであれば、この大径側リム部の外端面側では深さがゼロになっている(内端面側から外端面側に向かって深さが漸減して、この大径側リム部の内周面の軸方向中間部で消滅する)形状であっても良い。
更に、請求項8に記載した発明の様に、前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用すれば、前述の請求項2に記載した発明の様に、潤滑油の有効利用をより高度に図れる合成樹脂製の保持器を能率良く造れる。又、前記保油凹部成形用凸部の先端部の断面積を確保して(この先端部が薄肉にならない様にして)この先端部を破損しにくくでき、金型装置の耐久性を確保できる。
図1〜4は、本発明に関連する参考例の第1例を示している。尚、本参考例の構造を含めて、本発明の特徴は、保持器の大径側端部、並びに各円すいころの大径側端面の形状及び構造を工夫する事により、潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間の延長を図る点にある。その他の、円すいころ軸受の基本的構成に就いては、前述の図16、20、21に示した従来から知られている円すいころ軸受と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本参考例の特徴部分、並びに、先に説明しなかった部分を中心に説明する。
図5は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合には、大径側リム部12bの内周面で各ポケット15aに整合する部分に形成した保油凹部19の底部だけでなく、これら各保油凹部19から円周方向に外れた、前記大径側リム部12b本来の内周面も、各ポケット15aに向かうに従って径方向外方に向かう方向に、保持器5eの中心軸に対し、角度θ2分だけ傾斜させている。この様な本例の構造によれば、前記保油凹部19だけでなく、前記大径側リム部12bの内周面に付着した潤滑油に就いても、前記各ポケット15a内に保持した各円すいころ4aの大径側端面10に向けて効率良く導ける。この結果、潤滑不良状態が発生した時点で、前記保持器5eの大径側端部に残留している潤滑油を、前記各円すいころ4aの大径側端面10と内輪3の外周面の大径側端部に設けた大径側鍔部8の軸方向内側面11との摺接部の潤滑に有効利用できて、前記潤滑不良状態の発生時から回転不能に至るまでの時間をより長くできる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した参考例の第1例の場合と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
図6〜9は、本発明に関連する参考例の第2例を示している。本参考例は、前述した参考例の第1例及び実施の形態の第1例よりも各円すいころ4aの接触角が大きな円すいころ軸受1の構造を採用した場合に就いて示している。前述した通り、外輪2の内周面に形成した外輪軌道6、及び、内輪3の外周面に形成した内輪軌道7の、中心軸に対する傾斜角度が大きく、各円すいころ4aの自転軸と前記外輪2及び内輪3の中心軸との傾斜角度が、20度以上、更には25度以上と、大きな円すいころ軸受1の場合、潤滑不良時も問題が顕著になり易い。言い換えれば、潤滑不良状態になってから、焼き付き等の重大な損傷に結び付くまでの時間が短くなり易い。
その他の部分の構成及び作用は、前述の図1〜4に示した参考例の第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
図10は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合も、上述した参考例の第2例の場合と同様に、各円すいころ4aの接触角が大きな円すいころ軸受1を採用し、この様な円すいころ軸受1に関して、本発明を適用した場合に就いて示している。この接触角が大きい事に合わせて、保持器5hを構成する大径側リム部12cの直径と小径側リム部13bの直径との差を大きくし、各柱部14bの傾斜角度を大きくした点は、上述した参考例の第2例と同様であり、前記大径側リム部12cの内周面で各保油凹部19から円周方向に外れた部分の内周面を、各ポケット15aに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜させた点は、前述の図5に示した実施の形態の第1例の場合と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
図11〜14は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、保持器5iを構成する大径側リム部12cの内周面で、円周方向に関する位相が各ポケット15a、15aに整合する部分にそれぞれ形成した保油凹部19a、19aの深さ寸法を、これら各保油凹部19a、19aの奥端部でも十分に大きくしている。言い換えれば、前記大径側リム部12cの外端面側(図11〜12の右端側、図13〜14の下端側)に、前記各保油凹部19a、19aの内部と前記大径側リム部12cの外端面とを遮断する堰25、25を設けて、これら保油凹部19a、19aの内部とこの大径側リム部12cの外端面とが軸方向に貫通しない様にしている。即ち、前記各保油凹部19a、19aに、前記各ポケット15a、15a側の開口側端部から、前記大径側リム部12cの外端面側の奥端部まで、この大径側リム部12cの内周面よりも径方向外方に凹入する方向の深さを持たせて、前記各保油凹部19a、19aの底面の奥端部と前記大径側リム部12cの内周面との間に段差26、26を設けている。尚、本例の場合には、この大径側リム部12cの内周面のうちで前記各保油凹部19a、19aから外れた部分を、軸方向に関して内径が変化しない、単なる円筒面状としている。
その他の部分の構成及び作用は、前述した各参考例及び各実施の形態のうちの何れかと同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
図15は、請求項6〜8に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例は、以上に述べた各参考例及び各実施の形態の構造に組み込む保持器(例えば、上述した実施の形態の第4例に組み込む保持器5i)を合成樹脂の射出成形により造る、円すいころ軸受用保持器の製造方法に関する。この製造方法の実施に使用する金型装置24aの基本構成は、前述の図26に示した金型装置24と同様である。即ち、本例の金型装置24aは、互いに同心に配置された状態で、軸方向に関して互いに遠近動する、1対の金型22a、23aを備える。これら両金型22a、23aは、互いに対向する軸方向端面同士を突き合わせた状態で、突き合わせ部の内部に成形用空間(キャビティ)を画成する。そして、この成形用空間内に、前記両金型22a、23aの一方又は双方に設けた送り込み口(ゲート)を通じて加熱溶融した熱可塑性合成樹脂を、圧力を加えた状態で送り込み、前記保持器5iを、アキシアルドローにより射出成形する。
2 外輪
3 内輪
4、4a 円すいころ
5、5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5h、5i 保持器
6、6a 外輪軌道
7、7a 内輪軌道
8 大径側鍔部
9 小径側鍔部
10 大径側端面
11 軸方向内側面
12、12a、12b、12c 大径側リム部
13、13a、13b 小径側リム部
14、14a、14b 柱部
15、15a ポケット
16 曲げ板部
17、17a 保油部
18 仕切板部
19、19a 保油凹部
20 凹部
21 軸受内部空間
22、22a 金型
23、23a 金型
24、24a 金型装置
25 堰
26 段差
27 成形用凹部
28 成形用凸部
29a、29b 平坦面
30 保油凹部成形用凸部
Claims (8)
- 内周面に部分円すい凹面状の外輪軌道を有する外輪と、この外輪の内径側にこの外輪と同心に配置された、外周面に部分円すい凸面状の内輪軌道及びこの内輪軌道の大径側端部から径方向に関して外方に突出した大径側鍔部を有する内輪と、この内輪軌道と前記外輪軌道との間に転動自在に配置され、それぞれの大径側端面を前記大径側鍔部の軸方向側面と対向させた複数個の円すいころと、これら各円すいころを保持する為の合成樹脂製の保持器とを備え、この保持器は、互いに同心に、且つ、軸方向に間隔をあけて配置された、それぞれが円環状である大径側リム部及び小径側リム部と、これら両リム部同士の間に掛け渡された複数本の柱部とを備え、これら両リム部と円周方向に隣り合う1対ずつの柱部とにより四周を囲まれる部分を、それぞれ前記各円すいころを保持する為のポケットとした構造を有するものである円すいころ軸受に於いて、前記大径側リム部のうちで、円周方向に関する位相が前記各ポケットに整合する部分の内周面部分に、円周方向に関して互いに独立し且つ径方向外方に凹んだ状態で、前記各ポケットと同数の保油凹部を設けており、これら各保油凹部の、前記保持器の軸方向に直交する仮想平面に関する断面形状は、円周方向に関する幅方向中央部で最も深くなった円弧形であり、前記各保油凹部の底面のうちで前記各ポケットの内面に開口している部分が、当該各ポケット内に保持された円すいころの大径側端面に対向しており、
前記大径側リム部の内周面のうちの、前記各保油凹部から円周方向に外れた部分が、軸方向の全長に亙り、前記保持器の中心軸と平行な円筒状面又は前記各ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜した傾斜面である事を特徴とする円すいころ軸受。 - 前記各保油凹部に、前記各ポケット側の開口側端部から前記大径側リム部の外端面側の奥端部まで、前記大径側リム部の内周面よりも径方向外方に凹入する方向の深さを持たせる事により、前記各保油凹部の大径側リム部の外端面側に、これら各保油凹部の内部と大径側リム部の外端面とを遮断する堰を設けている、請求項1に記載した円すいころ軸受。
- 前記各保油凹部の底部が、軸方向の全長に亙り前記各ポケットに向かうに従って径方向外方に向かう方向に傾斜している、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
- 前記保持器が、熱可塑性を有する合成樹脂を溶融状態で金型装置の成形用空間内に、複数の送り込み口を通じ、圧力を加えた状態で送り込む事により造られるものであって、一部に、異なる送り込み口から送り込まれた溶融状態の合成樹脂が突き当たる事により生じるウェルドが存在しており、このウェルドが、前記両リム部と前記各柱部との連続部から外れた部分に存在する、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
- 車両の駆動源と駆動用車輪との間に設けられて、この駆動源の回転駆動力をこの駆動用車輪に伝達する車両駆動系を構成する回転軸の支持部に使用される、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受。
- 請求項4に記載した円すいころ軸受に組み込まれる保持器の製造方法であって、前記金型装置として、前記成形用空間内に溶融状態の合成樹脂を送り込む為の送り込み口を、この成形用空間のうちで前記両リム部を形成する為のリム部成形用空間部分にそれぞれ設けると共に、前記各送り込み口の設置位置を、これら両リム部成形用空間部分の円周方向に関して、これら両リム部成形用空間部分同士の間で互いに一致させたものを使用する事を特徴とする円すいころ軸受用保持器の製造方法。
- 請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した円すいころ軸受に組み込まれる円すいころ軸受用保持器の製造方法であって、前記金型装置として、次の(1)〜(3)の条件を総て満たすものを使用する事を特徴とする円すいころ軸受用保持器の製造方法。
(1) 互いに同心に配置された1対の金型を、軸方向に関して互いに遠近動させるアキシアルドロー構造である。
(2) 前記両金型の互いに対向する軸方向端面のうちの一方の金型の軸方向端面に成形用凹部が、他方の金型の軸方向端面に成形用凸部が、それぞれ設けられている。
(3) 前記一方の金型の軸方向端面に、前記保油凹部を形成すべき保油凹部成形用凸部が設けられている。 - 前記一方の金型として、前記保油凹部成形用凸部の先端部に段部が存在するものを使用する、請求項7に記載した円すいころ軸受用保持器の製造方法。
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