本発明の不織布製造装置を構成することのできる紡糸装置の紡糸単位について、その先端部の模式的斜視図である図1(a)、及び図1(a)におけるC平面切断図である図1(b)をもとに説明する。
図1の紡糸装置の紡糸単位は、紡糸液を吐出できる液吐出部Elを一方の端部に有する液吐出ノズルNl1本と、液吐出部Elから吐出された紡糸液に対して作用することのできるガスを吐出できるガス吐出部Egを一方の端部に有するガス吐出ノズルNg1本の外壁面が当接し、ガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側となる位置にある。なお、液吐出ノズルNlは液吐出部Elを端部とする、壁材(液吐出ノズル)に囲まれた液用柱状中空部Hlを有しており、ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egを端部とする、壁材(ガス吐出ノズル)に囲まれたガス用柱状中空部Hgを有している。また、前記液用柱状中空部Hlを延長した液仮想柱状部Hvlと前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にある。しかも前記液用柱状中空部Hlの液吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行である関係にある。更には、図1(b)にガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した切断図を示すように、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外形、液用柱状中空部Hlの切断面の外形ともに円形であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができるのは1点であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さClは、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の50%以下である。
そのため、図1のような紡糸単位の液吐出ノズルNlに紡糸液を供給し、ガス吐出ノズルNgにガスを供給すると、紡糸液は液用柱状中空部Hlを通り液吐出部Elから液用柱状中空部Hlの軸方向に吐出されると同時に、ガスはガス用柱状中空部Hgを通りガス吐出部Egからガス用柱状中空部Hgの軸方向に吐出される。この吐出されたガスと吐出された紡糸液とは近接した状態にあり、ガスの吐出方向と紡糸液の吐出方向とは平行関係にあり、しかも平面C上、吐出されたガスと吐出された紡糸液とは最も近い点が1点、つまり、紡糸液は1本の直線状にガスおよび随伴気流による剪断作用を受け、細径化しながら液用柱状中空部Hlの軸方向に飛翔して繊維化する。なお、この紡糸液に対して電界を作用させることのできる手段を備えていると、形成される電界の作用によって、ガスの剪断作用によって延伸されず、液滴となりやすい紡糸液も引き伸ばされて繊維化する。また、電界の作用によって繊維が帯電し、互いに反発することによって、繊維同士が結着して繊維束を形成せず、個々の繊維が分散した状態で捕集される。
液吐出ノズルNlは紡糸液を吐出できるものであれば良く、液吐出部Elの形状は特に限定するものではないが、液吐出部Elの形状は、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくいように、円形であるのが好ましい。なお、液吐出部Elの形状が多角形である場合には、多角形の1つの角をガス吐出ノズルNg側となるように配置することにより、ガス及び随伴気流の剪断作用が1本の直線状となり、液滴を生じにくくなる。つまり、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1を、1本だけ引くことができる状態となり、吐出された紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。
また、液吐出部Elの大きさも特に限定するものではないが、0.0025〜3000mm2であるのが好ましく、0.04〜500mm2であるのがより好ましく、0.1〜3mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、3000mm2を超えると、吐出された紡糸液全体に剪断作用を均一に作用させることが困難となり、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)を生じやすくなる傾向があるためである。
なお、液吐出ノズルNlは金属製であっても樹脂製であってもよく、その素材は特に限定するものではない。また、金属製又は樹脂製のチューブを用いることもできる。液吐出ノズルNlが金属製であれば、液吐出ノズルNlに対して電圧を印加することにより、紡糸液に対して電界を作用させることができる。更に、図1においては、円柱状の液吐出ノズルNlを図示しているが、先端が傾斜を持って切断された鋭角ノズルを使用することもできる。この鋭角ノズルの場合、紡糸液の粘度が高い場合に有効である。このような鋭角ノズルを使用する場合、尖った側をガス吐出ノズル側とすると、ガス及び随伴気流の剪断作用を受けやすく、安定して繊維化できる。
ガス吐出ノズルNgはガスを吐出できるものであれば良く、ガス吐出部Egの形状は特に限定するものではないが、ガス吐出部Egの形状は、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス及び随伴気流の剪断作用を働きやすくするために、円形であるのが好ましい。なお、ガス吐出部Egの形状が多角形である場合には、多角形の1つの角を液吐出ノズルNl側となるように配置することにより、1本の直線状にガス及び随伴気流の剪断作用が働きやすくなる。つまり、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1を、1本だけ引くことができる状態となり、吐出された紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。
また、ガス吐出部Egの大きさも特に限定するものではないが、0.0025〜4000mm2であるのが好ましく、0.04〜800mm2であるのがより好ましく、0.5〜5mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、吐出された紡糸液全体に剪断作用を働かせることが困難となり、安定して繊維化することが困難になる傾向があるためで、4000mm2を超えると剪断作用を働かせるために十分な風速が必要で、多量のガスが必要となって不経済であるためである。なお、ガス吐出部Egの大きさは液吐出部Elの大きさと同じか、より大きいのが好ましい。ガス及び随伴気流の剪断作用が働きやすいためである。
なお、ガス吐出ノズルNgは金属製であっても樹脂製であっても良く、その素材は特に限定しない。また、ガス吐出ノズルに替えて金属製や樹脂製のチューブを用いることもできる。
ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側(紡糸液の供給側)となる位置に配置されているため、液吐出部周辺へ紡糸液が巻き上がるのを防止できる。そのため、液吐出部Elを汚すことなく、長時間の紡糸が可能である。なお、ガス吐出部Egと液吐出部Elとの距離は特に限定するものではないが、20mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。20mmを超えると紡糸液に対するガス及び随伴気流の剪断力が不十分となり、繊維化しにくくなる傾向があるためである。ガス吐出部Egと液吐出部Elとの距離の差の下限は特に限定するものではなく、ガス吐出部Egと液吐出部Elとが一致していないのが好ましい。
液用柱状中空部Hlは紡糸液の通過経路であり、紡糸液の吐出時における形状を形作り、ガス用柱状中空部Hgはガスの通過経路であり、ガスの吐出時における形状を形作る。
なお、液用柱状中空部Hlを延長した液仮想柱状部Hvlは液吐出部Elから吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgはガス吐出部Egから吐出されたガスの吐出直後の噴出経路である。この液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgとの距離は液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当しているが、この距離は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmを超えるとガス及び随伴気流の剪断力が作用しにくく、繊維化しにくくなる傾向があるためである。
この液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgはいずれも内部充実した柱状である。例えば、円柱状の液仮想部を中空円柱状のガス仮想部で覆った状態、又は円柱状のガス仮想部を中空円柱状の液仮想部で覆った状態であると、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる、液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さClが、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の100%となり、紡糸液の様々な点にガス及び随伴気流の剪断力が作用し、繊維化が不十分となり、液滴が多くなるためである。この「仮想柱状部」はノズルの内壁面を延長して形成される部分である。
更に、液用柱状中空部Hlの液吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行であるため、吐出された紡糸液に対して1本の直線状にガス及び随伴気流が作用し、安定して繊維を形成することができる。例えば、円柱状の液用中空部を中空円柱状のガス中空部で覆った状態、又は円柱状のガス中空部を中空円柱状の液用中空部で覆った状態であるように、これら中心軸が一致すると、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる、液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さClが、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の100%となり、紡糸液の様々な点にガス及び随伴気流の剪断力が作用し、繊維化が不十分となり、液滴が多くなる。また、これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を形成することができない。この「平行」であるとは、液用柱状中空部Hlの液吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが同一平面上に位置することができ、しかも平行であることを意味する。また、「吐出方向中心軸」とは吐出部の中心と仮想柱状部の横断面における中心とを結んでできる直線である。
本発明の紡糸装置として使用できる紡糸単位の1つの態様は、図1(b)に示すように、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1を、1本だけ引くことができる。このようなガス用柱状中空部Hgから吐出されたガス及び随伴気流は、液用柱状中空部Hlから吐出された紡糸液に対して、1本の直線状に作用し、剪断作用を発揮し、液滴の発生を抑え、安定して紡糸することができる。
なお、図1(a)には図示していないが、紡糸液がポリマーを溶媒に溶解させたものである場合には、液吐出ノズルNlは紡糸液貯蔵装置(例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグなど)に接続されており、ガス吐出ノズルNgはガス供給装置(例えば、圧縮機、ガスボンベ、ブロアなど)に接続されている。また、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合には、液吐出ノズルNlは押出し機、ヒーターにより加熱された金属製シリンジなどの供給装置に接続され、ガス吐出ノズルNgはヒーターに接続した圧縮機、ガスボンベ、ブロアなどの供給装置に接続されている。
また、紡糸液に対して電界を作用させる場合には、液吐出ノズルNlに電圧印加装置に接続すれば良い。或いは液吐出ノズルNl内の紡糸液に対して電圧を印加できるように、液吐出ノズル内に導電ワイヤーを挿入し、導電ワイヤーを電圧印加装置に接続すれば良い。
図1の紡糸単位においては、液吐出ノズルNlとガス吐出ノズルNgとが固定された状態にあるが、図1の態様に限定されない。例えば、液吐出ノズルNlの液吐出部El及び/又はガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egの位置を自由に調整できる機構を備えていることができる。また、段差を有する基材に対して液用柱状中空部Hlとガス用柱状中空部Hgを穿孔したものであっても良い。
本発明で使用できる紡糸装置は、図1のように、1つの紡糸単位から構成されていても良いが、2つ以上の紡糸単位から構成されていても良い。2つ以上の紡糸単位から構成されていると、不織布の生産性を高めることができる。
本発明で使用できる紡糸装置の別の紡糸単位について、液吐出部2箇所とガス吐出部1箇所とを有する紡糸単位の先端部を拡大した斜視図である図2及び図2におけるC平面切断図である図3(a)をもとに説明する。
この紡糸単位は、紡糸液を吐出できる第1液吐出部El1を一方の端部に有する第1液吐出ノズルNl1と、紡糸液を吐出できる第2液吐出部El2を一方の端部に有する第2液吐出ノズルNl2とが、ガスを吐出できるガス吐出部Egを一方の端部に有するガス吐出ノズルNgを挟むように外壁面が当接し、ガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egが第1液吐出部El1、第2液吐出部El2のいずれよりも上流側となる位置にある。なお、第1液吐出ノズルNl1は第1液吐出部El1を端部とする壁材(第1液吐出ノズルNl1)に囲まれた第1液用柱状中空部Hl1を有し、第2液吐出ノズルNl2は第2液吐出部El2を端部とする壁材(第2液吐出ノズルNl2)に囲まれた第2液用柱状中空部Hl2を有し、ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egを端部とするガス用柱状中空部Hgを有している。また、前記第1液用柱状中空部Hl1を延長した第1液仮想柱状部Hvl1と前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、第1液吐出ノズルNl1の壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にあり、前記第2液用柱状中空部Hl2を延長した第2液仮想柱状部Hvl2と前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、第2液吐出ノズルNl2の壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にある。しかも前記第1液用柱状中空部Hl1の第1液吐出方向中心軸Al1とガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行である関係にあり、前記第2液用柱状中空部Hl2の第2液吐出方向中心軸Al2とガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行である関係にある。更には、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外形が円形であり、液用柱状中空部Hl1、Hl2の切断面の外形がいずれも円形であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができるのは1点であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周の長さは、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周長の50%以下である。同様に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周から距離が最も短い直線L2を引くことができるのは1点であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周から距離が最も短い直線L2を引くことができる第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周の長さは、第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周長の50%以下である。
そのため、図2のような紡糸単位の第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2に紡糸液を供給し、ガス吐出ノズルNgにガスを供給すると、紡糸液は第1液用柱状中空部Hl1、第2液用柱状中空部Hl2をそれぞれ通り、第1液吐出部El1、第2液吐出部El2から第1液用柱状中空部Hl1の第1軸方向、第2液用柱状中空部Hl2の第2軸方向にそれぞれ吐出されると同時に、ガスはガス用柱状中空部Hgを通りガス吐出部Egからガス用柱状中空部Hgの軸方向に吐出される。この吐出されたガスと吐出された各紡糸液とはいずれも近接した状態にあり、各液吐出部El1、El2の直近においては、吐出ガスのガス吐出方向中心軸Agと各吐出紡糸液の液吐出方向中心軸Al1、Al2とがいずれも平行関係にあり、しかもC平面上、吐出されたガスと吐出された紡糸液とは、いずれの組み合わせにおいても最も近い点が1箇所であることから、つまりいずれの紡糸液も1本の直線状にガスおよび随伴気流による剪断作用を受け、細径化しながら第1液用柱状中空部Hl1の第1軸方向、第2液用柱状中空部Hl2の第2軸方向にそれぞれ飛翔し、繊維化する。このように、図2の紡糸単位は1つのガス流によって、2つの紡糸液を紡糸して繊維化することができ、ガス量を減らすことができるため、浮遊する繊維の発生を防止しやすい。また、この紡糸液に対して電界を作用させることのできる手段を備えている場合、電界の作用によって、ガスの剪断作用によって延伸されず、液滴となりやすい紡糸液も引き伸ばされて繊維化する。また、電界の作用によって、繊維が帯電し、互いに反発することによって、繊維同士が結着した繊維束を形成せず、個々の繊維が分散した状態で捕集されるため、繊維径の揃った不織布を製造できる。
第1液吐出ノズルNl1、第2液吐出ノズルNl2は紡糸液を吐出できるものであれば良く、第1液吐出部El1、第2液吐出部El2の外形は特に限定するものではなく、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に作用を受け、液滴を生じにくいように、円形であるのが好ましい。つまり、第1液吐出ノズルNl1、第2液吐出ノズルNl2の外形が円形であると、ガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と液用柱状中空部Hl1、Hl2の切断面の外周との距離が最も短い直線L1、L2を、いずれの組み合わせにおいても1本だけ引くことができる状態となりやすいため、吐出された紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。なお、第1液吐出部El1と第2液吐出部El2の外形は同じ外形であっても良いし、異なる外形であっても良いが、いずれも円形であるのが好ましい。
第1液吐出部El1、第2液吐出部El2の形状が多角形である場合には、多角形の1つの角をガス吐出ノズルNg側となるように配置することにより、ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくするのが好ましい。つまり、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hl1、第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周との距離が最も短い直線(図3(b)、(d)、(e)におけるL1、L2)を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができるように第1液吐出ノズルNl1、第2液吐出ノズルNl2を配置すると、紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、安定して紡糸でき、液滴を生じにくくなる。
また、第1液吐出部El1及び第2液吐出部El2の大きさも特に限定するものではないが、いずれも0.0025〜3000mm2であるのが好ましく、0.04〜500mm2であるのがより好ましく、0.1〜3mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、3000mm2を超えると、吐出された紡糸液全体に剪断作用を均一に働かせることが困難となり、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)を生じやすくなる傾向があるためである。なお、第1液吐出部El1の大きさと第2液吐出部El2の大きさは同じであっても異なっていても良い。同じ大きさであれば、繊維径の揃った繊維を紡糸しやすい。
なお、第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2は金属製であっても樹脂製であってもよく、その素材は特に限定するものではない。また、金属製又は樹脂製のチューブを用いることもできる。第1液吐出ノズルNl1又は第2液吐出ノズルNl2が金属製であれば、第1液吐出ノズルNl1又は第2液吐出ノズルNl2に対して電圧を印加することによって、紡糸液に対して電界を作用させることができる。更に、図2においては、円柱状の第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2を図示しているが、先端が傾斜を持って切断された鋭角ノズルを使用することもできる。この鋭角ノズルの場合、紡糸液の粘度が高い場合に有効である。このような鋭角ノズルを使用する場合、尖った側をガス吐出ノズル側とすると、ガス及び随伴気流の剪断作用を受けやすく、安定して繊維化できる。
なお、図2においては、第1液吐出ノズルNl1と第2液吐出ノズルNl2の2本について図示しているが、液吐出ノズルは2本である必要はなく、3本以上であっても良い(図4参照)。この液吐出ノズルの本数が多ければ多いほど、ガスを効率的に使用し、生産性良く不織布を製造することができる。
ガス吐出ノズルNgはガスを吐出できるものであれば良く、ガス吐出部Egの形状は特に限定するものではなく、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス吐出部Egに対して各液吐出部El1、El2をどのように配置しても、各液吐出部El1、El2から吐出された各紡糸液に、ガス吐出部Egから吐出されたガスおよび随伴気流による剪断力をそれぞれ1本の直線状に作用させ、細径化した繊維を紡糸しやすいように、円形であるのが好ましい。なお、ガス吐出部Egの形状が多角形である場合には、多角形の1つの角が第1液吐出ノズルNl1側となり、もう1つの角が第2液吐出ノズルNl2側となるように配置することにより、ガス及び随伴気流の剪断作用が働きやすくなる。つまり、前述の通り、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hl1、第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周との距離が最も短い直線L1、L2を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができる状態となるように第1液吐出ノズルNl1、第2液吐出ノズルNl2を配置する(図3(c)〜(d)参照)と、紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。
また、ガス吐出部Egの大きさも特に限定するものではないが、0.0025〜4000mm2であるのが好ましく、0.04〜800mm2であるのがより好ましく、0.5〜5mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、吐出された各紡糸液全体に剪断作用を働かせることが困難になり、安定して繊維化することが困難になる傾向があるためで、4000mm2を超えると剪断作用を働かせるために十分な風速が必要で、多量のガスが必要となって浮遊する繊維を発生しやすくなるためである。
なお、ガス吐出ノズルNgは金属製であっても樹脂製であっても良く、その素材は特に限定しない。また、ガス吐出ノズルに替えて金属製や樹脂製のチューブを用いることもできる。
ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egが第1液吐出部El1及び第2液吐出部El2よりも上流側(紡糸液の供給側)となる位置に配置されているため、第1液吐出部El1及び第2液吐出部El2の周辺へ紡糸液が巻き上がるのを防止できる。そのため、液吐出部El1、El2を汚すことなく、長時間の紡糸が可能である。なお、ガス吐出部Egと第1液吐出部El1又は第2液吐出部El2との距離は特に限定するものではないが、いずれも20mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。20mmを超えると第1液吐出部El1又は第2液吐出部El2におけるガス及び随伴気流の剪断力が不十分となり、繊維化しにくくなる傾向があるためである。ガス吐出部Egと第1液吐出部El1及び第2液吐出部El2との距離の下限は特に限定するものではなく、ガス吐出部Egと第1液吐出部El1及び第2液吐出部El2とが一致していないのが好ましい。
なお、ガス吐出部Egと第1液吐出部El1又は第2液吐出部El2との距離は同じであっても異なっていても良いが、同じであると、各紡糸液に対して同程度の剪断力を作用させることができ、安定して紡糸できるため好適である。
第1液用柱状中空部Hl1及び第2液用柱状中空部Hl2は紡糸液の通過経路であり、紡糸液の吐出時における形状を形作り、ガス用柱状中空部Hgはガスの通過経路であり、ガスの吐出時における形状を形作る。図2の紡糸単位においては、第1液用柱状中空部Hl1、第2液用柱状中空部Hl2、ガス用柱状中空部Hgのいずれも柱状の紡糸液又はガスを形成できるため、ガス及び随伴気流の剪断作用を各紡糸液に十分に作用させることができ、繊維化することができる。
なお、第1液用柱状中空部Hl1を延長した第1液仮想柱状部Hvl1は第1液吐出部El1から吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、第2液用柱状中空部Hl2を延長した第2液仮想柱状部Hvl2は第2液吐出部El2から吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgはガス吐出部Egから吐出されたガスの吐出直後の噴出経路である。この第1液仮想柱状部Hvl1とガス仮想柱状部Hvgとの距離は第1液吐出ノズルNl1の壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当し、第2液仮想柱状部Hvl2とガス仮想柱状部Hvgとの距離は第2液吐出ノズルNl2の壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当しているが、これら距離は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmを超えるとガス及び随伴気流の剪断力が作用しにくく、繊維化しにくくなる傾向があるためである。
この第1液仮想柱状部Hvl1、第2液仮想柱状部Hvl2、ガス仮想柱状部Hvgのいずれも内部充実した柱状である。例えば、円柱状の第1液仮想部を中空円柱状のガス仮想部で覆った状態、又は円柱状のガス仮想部を中空円柱状の第1液仮想部で覆った状態であるように、ガス仮想柱状部Hvgの中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周の長さが、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周長の100%であると、紡糸液の様々な点にガス及び随伴気流の剪断力が作用し、繊維化が不十分となり、液滴が多くなる。
更に、第1液用柱状中空部Hl1の第1液吐出方向中心軸Al1とガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行であり、また、第2液用柱状中空部Hl2の第2液吐出方向中心軸Al2とガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行であるため、吐出されたいずれの紡糸液に対してもガス及び随伴気流が1本の直線状に作用し、安定して繊維を形成することができる。例えば、円柱状の第1液用中空部を中空円柱状のガス中空部で覆った状態、又は円柱状のガス中空部を中空円柱状の第1液用中空部で覆った状態であるように、これら中心軸が一致すると、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周から距離が最も短い直線L1を引くことができる、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周の長さが、第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周長の100%となり、紡糸液の様々な点にガス及び随伴気流の剪断力が作用し、繊維化が不安定となり、液滴が多くなる。また、これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を形成することができない。
図2の紡糸単位はガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hl1の切断面の外周との距離が最も短い直線L1を1本だけ引くことができ、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第2液用柱状中空部Hl2の切断面の外周との距離が最も短い直線L2を1本だけ引くことができる。このようなガス用柱状中空部Hgから吐出されたガス及び随伴気流は、第1液用柱状中空部Hl1から吐出された紡糸液と第2液用柱状中空部Hl2から吐出された紡糸液のいずれに対しても1本の直線状に作用し、剪断作用を発揮することができ、液滴の発生を抑え、安定して紡糸することができる。
なお、図2には図示していないが、紡糸液がポリマーを溶媒に溶解させたものである場合には、第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2は紡糸液貯蔵装置(例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグなど)に接続されており、ガス吐出ノズルNgはガス供給装置(例えば、圧縮機、ガスボンベ、ブロアなど)に接続されている。また、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合には、第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2は押出し機、ヒーターにより加熱された金属製シリンジなどの供給装置に接続され、ガス吐出ノズルNgはヒーターに接続した圧縮機、ガスボンベ、ブロアなどの供給装置に接続されている。
また、紡糸単位の第1液吐出ノズルNl1及び第2液吐出ノズルNl2を電圧印加装置に接続すれば、繊維に電界を作用させることができる。或いは第1液吐出ノズルNl1及び/又は第2液吐出ノズルNl2内の紡糸液に対して電圧を印加できるように、第1液吐出ノズルNl1及び/又は第2液吐出ノズルNl2内に導電ワイヤーを挿入し、導電ワイヤーを電圧印加装置に接続しても、繊維に電界を作用させることができる。
また、図2においては、第1液吐出ノズルNl1、第2液吐出ノズルNl2、及びガス吐出ノズルNgを固定した状態にあるが、図2の態様に限定されない。例えば、第1液吐出ノズルNl1の第1液吐出部El1、第2液吐出ノズルNl2の第2液吐出部El2、及び/又はガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egの位置を自由に調整できる機構を備えていてもよい。また、段差を有する基材に対して第1液用柱状中空部Hl1、第2液用柱状中空部Hl2及びガス用柱状中空部Hgを穿孔したものであっても良い。
本発明で使用できる紡糸装置は、図2のような1つの紡糸単位から構成することも、2つ以上の紡糸単位から構成することもできる。2つ以上の紡糸単位を有する紡糸装置であれば、不織布の生産性を更に高めることができる。
本発明で使用できる紡糸装置の更に別の紡糸単位について、紡糸単位の模式的斜視図である図5(a)、及び図5(a)におけるC平面での切断図である図5(b)をもとに説明する。
図5における紡糸単位は紡糸液を吐出できる液吐出部Elを一方の端部に有する液吐出ノズルNl1本と、ガスを吐出できるガス吐出部Egを一方の端部に有するガス吐出ノズルNg1本の外壁面が当接し、ガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側となる位置にある。なお、液吐出ノズルNlは液吐出部Elを端部とする液用柱状中空部Hlを有しており、ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egを端部とするガス用柱状中空部Hgを有している。また、前記液用柱状中空部Hlを延長した液仮想柱状部Hvlと前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にある。しかも前記液用柱状中空部Hlの液吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行である関係にある。更には、図5(b)にガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した切断図を示すように、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外形、液用柱状中空部Hlの切断面の外形ともに四角形(正方形)であり、これら外周間の距離が最も短い直線を、2本以上(無数)引くことができる状態にある。また、図5(b)のガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した切断図からわかるように、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さ(図5(b)におけるCl)が、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の25%である。
そのため、図5のような紡糸単位の液吐出ノズルNlに紡糸液を供給し、ガス吐出ノズルNgにガスを供給すると、紡糸液は液用柱状中空部Hlを通り液吐出部Elから液用柱状中空部Hlの軸方向に吐出されると同時に、ガスはガス用柱状中空部Hgを通りガス吐出部Egからガス用柱状中空部Hgの軸方向に吐出される。この吐出されたガスと吐出された紡糸液とは近接した状態にあり、ガスの吐出方向と紡糸液の吐出方向とは平行関係にあるため、紡糸液は随伴気流による剪断作用を受け、細径化しながら液用柱状中空部Hlの軸方向に飛翔し、繊維化する。
なお、図5のような紡糸単位においては、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と、液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線を、2本以上(無数)引くことができるため、紡糸液は随伴気流による剪断作用を2ヶ所以上で受ける可能性があるが、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さClが、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の50%以下の場合に、実際に紡糸をすると、液滴の発生を抑え、安定して紡糸することができる。
本発明者らは、ガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側にあるため、ガス吐出部Egから吐出されたガスが液吐出部Elに到達する間に、四角柱の状態から円柱状又は楕円柱状に拡散し、同様に、液吐出部Elから吐出された紡糸液も表面張力と重力の作用により、四角柱の状態から半球体状になると考えている。このように、半球体状の紡糸液に対して、円柱状又は楕円柱状のガスの随伴気流が作用する、つまり、紡糸液には限りなく1箇所に近い状態で随伴気流が連続的に作用するため、液滴の発生を抑え、安定した紡糸ができると考えている。
このように、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と、液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線を、2本以上(無数)引くことができるということは、図5のように、ガス用柱状中空部Hgの切断面と液用柱状中空部Hlの切断面のいずれもが四角形(長方形)でも良く、加工性に優れているため、単位長さあたりの紡糸単位数を多くすることができ、結果として生産性に優れる紡糸装置であることができる。
液吐出ノズルNlは紡糸液を吐出できるものであれば良く、液吐出部Elの形状は特に限定するものではないが、液吐出部Elの形状は、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができる。これらの中でも、四角形であると、特に加工性に優れ、単位長さあたりの紡糸単位数を多くすることができるため好適である。
また、液吐出部Elの大きさも特に限定するものではないが、0.0025〜3000mm2であるのが好ましく、0.04〜500mm2であるのがより好ましく、0.1〜3mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、3000mm2を超えると、吐出された紡糸液全体に剪断作用を均一に働かせることが困難となり、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)を生じやすくなる傾向があるためである。
なお、液吐出部Elから吐出された紡糸液のガスとの接触可能長さ(図5(b)におけるCl)は、0.05〜3000mmであるのが好ましい。0.05mmよりも短いと粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、かつ、液吐出部Elを形成するための機械加工が困難となる傾向がある。また、3000mmを超えると、吐出された紡糸液全体に剪断作用を均一に働かせることが困難となり、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)を生じやすくなる傾向があるためである。
図5の紡糸単位における液吐出部Elは壁材によって完全に周囲を囲まれた領域と、壁材によって不完全に周囲を囲まれた領域(壁材によって全く囲まれていない領域を含む)との境界部分を意味する。
なお、液吐出ノズルNlは金属製であっても樹脂製であってもよく、その素材は特に限定するものではない。液吐出ノズルNlが金属製であれば、液吐出ノズルNlに対して電圧を印加することにより、紡糸液に対して電界を作用させることができる。また、図5においては、角柱状の液吐出ノズルNlを図示しているが、先端が傾斜を持って切断された鋭角ノズルを使用することもできる。この鋭角ノズルの場合、紡糸液の粘度が高い場合に有効である。このような鋭角ノズルを使用する場合、尖った側をガス吐出ノズル側とし、ガスが直接紡糸液に作用しないようにするのが好ましい。ガスが直接紡糸液に作用すると液滴を発生しやすいためである。
ガス吐出ノズルNgはガスを吐出できるものであれば良く、ガス吐出部Egの形状は特に限定するものではないが、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができる。これらの中でも、四角形であると、特に加工性に優れ、単位長さあたりの紡糸単位数を多くすることができるため好適である。
また、ガス吐出部Egの大きさも特に限定するものではないが、0.0025〜4000mm2であるのが好ましく、0.04〜800mm2であるのがより好ましく、0.5〜5mm2であるのが更に好ましい。0.0025mm2よりも小さいと、吐出された紡糸液全体に剪断作用を働かせることが困難になる傾向があり、安定して繊維化することが困難になる傾向があるためで、4000mm2を超えると剪断作用を働かせるために十分な風速が必要で、多量のガスが必要となり、浮遊する繊維を発生しやすくなるためである。
なお、ガス吐出部Egから吐出されたガスの紡糸液との接触可能長さ(図5(b)におけるCg)は、紡糸液のガスとの接触可能長さ(Cl)よりも長ければ良く、特に限定するものではない。
図5の紡糸単位におけるガス吐出部Egは、壁材によって完全に周囲を囲まれた領域と、壁材によって不完全に周囲を囲まれた領域(壁材によって全く囲まれていない領域を含む)との境界部分を意味する。
なお、ガス吐出ノズルNgは金属製であっても樹脂製であっても良く、その素材は特に限定しない。
ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側となる位置に配置されているため、液吐出部周辺へ紡糸液が巻き上がるのを防止できる。そのため、液吐出部Elを汚すことなく、長時間の紡糸が可能である。また、ガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側に配置していることによって、吐出されたガスが円柱状又は楕円柱状となり、そのガスの随伴気流を紡糸液に対して作用させることができるため、液滴の発生を抑え、紡糸できると考えている。
なお、ガス吐出部Egと液吐出部Elとの距離は特に限定するものではないが、20mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。20mmを超えると紡糸液に対する随伴気流の剪断力が不十分となり、繊維化しにくくなる傾向があるためである。ガス吐出部Egと液吐出部Elとの距離の差の下限は特に限定するものではなく、ガス吐出部Egと液吐出部Elとが一致していないのが好ましい。このように、ガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側に位置しているため、紡糸液の吐出方向において、ガス吐出部Egと液吐出部Elとの間に必ず紡糸液の吐出方向に延びる壁材が存在することを意味する。紡糸液とガスとは平行に吐出されることと相まって、紡糸液に対して円柱状又は楕円柱状のガスの随伴気流が作用するため、安定して紡糸することができる。
液用柱状中空部Hlは紡糸液の通過経路であり、紡糸液の吐出時における形状を形作り、ガス用柱状中空部Hgはガスの通過経路であり、ガスの吐出時における形状を形作る。なお、液用柱状中空部Hl、ガス用柱状中空部Hgのいずれも壁材に囲まれていることによって形成されている。図5においては、液用柱状中空部Hl、ガス用柱状中空部Hgのいずれも1つの材料からなる壁材で構成されているが、壁材は2つ以上の材料から構成されていることができる。
なお、液用柱状中空部Hlを延長した液仮想柱状部Hvlは液吐出部Elから吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgはガス吐出部Egから吐出されたガスの吐出直後の噴出経路である。この液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgとの距離は液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当しているが、この距離は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmを超えると随伴気流の剪断力が作用しにくく、繊維化しにくくなる傾向があるためである。
この液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgはいずれも内部充実した柱状である。例えば、角柱状の液仮想部を中空角柱状のガス仮想部で覆った状態、又は角柱状のガス仮想部を中空角柱状の液仮想部で覆った状態であると、1つの紡糸液全体に対して、外周又は内周から随伴気流の剪断力が作用し、ショットやビーズ(粒子形状の樹脂)が多くなるためである。
更に、液用柱状中空部Hlの液吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgのガス吐出方向中心軸Agとが平行で、吐出された紡糸液に対して直接的ではなく、間接的に随伴気流を作用させることができるため、安定して紡糸することができる。例えば、これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を紡糸することができない。
図5の紡糸単位は、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面(C)で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と、液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線を、2本以上(無数)引くことができるが、この場合であっても、安定して紡糸できる。本発明者らは、ガス吐出部Egが液吐出部Elよりも上流側にあるため、ガス吐出部Egから吐出されたガスが液吐出部Elに到達する間に、四角柱の状態から円柱状又は楕円柱状に拡散し、同様に、液吐出部Elから吐出された紡糸液も表面張力と重力の作用により、四角柱の状態から半球体状になると考えている。このように、半球体状の紡糸液に対して、円柱状又は楕円柱状のガスの随伴気流が作用する、つまり、紡糸液には限りなく1箇所に近い状態で随伴気流が連続的に作用するため、液滴の発生を抑え、安定した紡糸ができると考えている。
このように、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と、液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線を、2本以上(無数)引くことができるということは、図5のように、ガス用柱状中空部Hgの切断面と液用柱状中空部Hlの切断面のいずれもが四角形(長方形)でも良い。このように四角形であると、加工性に優れているため、単位長さあたりの紡糸単位数を多くすることができ、結果として生産性に優れる紡糸装置とすることができる。
図5における紡糸単位は、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面(C)で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる液用柱状中空部Hlの切断面の外周の長さClが、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の50%以下である。つまり、ガスによる剪断作用が紡糸液の外周長の50%以下であると、紡糸液はガスによる剪断作用を部分的に受け、ショットやビーズを発生することなく、安定して紡糸できる。なお、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる外周の長さは、図5(b)においては、Clに相当する。例えば、円柱状の液仮想部を中空円柱状のガス仮想部で覆った状態、又は円柱状のガス仮想部を中空円柱状の液仮想部で覆った状態であるように、液用柱状中空部Hlの切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる外周の長さClが、液用柱状中空部Hlの切断面の外周長の100%であると、液吐出部Elから吐出された紡糸液に対して、外周又は内周から随伴気流の剪断力が何箇所からも不連続的に作用し、ショットやビーズが多くなりやすいのに対して、図5のように、50%以下であれば、ショットやビーズを発生することなく紡糸できる。
なお、図5には図示していないが、紡糸液がポリマーを溶媒に溶解させたものである場合には、液吐出ノズルNlは紡糸液貯蔵装置(例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグなど)に接続されており、ガス吐出ノズルNgはガス供給装置(例えば、圧縮機、ガスボンベ、ブロアなど)に接続されている。また、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合には、液吐出ノズルNlは押出し機、ヒーターにより加熱された金属製シリンジなどの供給装置に接続され、ガス吐出ノズルNgはヒーターに接続した圧縮機、ガスボンベ、ブロアなどの供給装置に接続されている。
図5は液吐出部Elを1箇所とガス吐出部Egを1箇所とを有する紡糸単位であるが、ガス吐出部Eg1箇所に対して、2箇所以上の液吐出部を有する紡糸単位であっても良い。この場合、効率的に紡糸することができるため、不織布の生産性が向上する。
本発明の紡糸装置が図5のような紡糸単位を有する場合、紡糸単位は1つであっても良いが、2つ以上有すると、不織布の生産性に優れている。例えば、紡糸単位間の距離は10mm以下であるのが好ましい。紡糸単位における液吐出部El及びガス吐出部Egは四角形であるなど、非円形であると、加工性に優れているため、紡糸単位間距離を10mm以下とすることが可能である。なお、紡糸単位間距離は規則正しくても、不規則であっても良いが、規則正しいと繊維が均一に分散した状態で集積することができ、結果として地合いの優れる不織布を製造できる。なお、「紡糸単位間距離」とは、隣接する紡糸単位におけるガス吐出部Egの中心間距離をいう。
本発明で使用できる紡糸装置について、図5(b)と同様に、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面で切断した、紡糸装置の一部模式的切断図である図6〜図10をもとに簡単に説明する。
図6は四角形のガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl22つが対応する紡糸単位Nuを複数有する紡糸装置である。この紡糸装置においては、1つのガス用柱状中空部Hgに対して、2つの液用柱状中空部Hl1、Hl2が対応する紡糸単位Nuであるため、生産性良く不織布を製造することができる。なお、図6の紡糸単位Nuは紡糸装置の長さ方向Lに対して直交する方向に2つの液用柱状中空部Hl1、Hl2が配置している。
図7は図6と同様に、四角形のガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl22つが対応する紡糸単位Nuを複数有する紡糸装置であるが、紡糸単位Nuが紡糸装置の長さ方向Lと同じ方向に、液用柱状中空部Hl1、Hl22つが配置している点が相違する。図7のような紡糸装置であっても、生産性良く不織布を製造することができる。
図8は図7と同様に、紡糸単位Nuが配置しているものの、断面小鼓状のガス用柱状中空部Hg1つに対して、断面円形の液用柱状中空部Hl1、Hl22つが対応する紡糸単位Nuを複数有する点が相違している。このように、四角形同士の組み合わせである必要はない。図8のような紡糸装置であっても、生産性良く不織布を製造することができる。なお、図8の紡糸単位Nuにおいては、ガス用柱状中空部Hgの中心軸に対して垂直な平面Cで切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周に対して、液用柱状中空部Hl1又は液用柱状中空部Hl2の切断面の外周から距離が最も短い直線を引くことができる液用柱状中空部Hl1又は液用柱状中空部Hl2の切断面の外周の長さは、いずれの液用柱状中空部Hl1、Hl2においても、液用柱状中空部Hl1又は液用柱状中空部Hl2の切断面の外周長の50%である。このような場合であっても、紡糸できることを実験的に確認している。
図9は四角形のガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3、Hl44つが対応する紡糸単位Nuを複数有する紡糸装置である。この紡糸装置においては、ガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3、Hl44つが対応する紡糸単位Nuであるため、更に生産性良く不織布を製造することができる。
図10は四角形のガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3、Hl4、Hl5、Hl66つが対応する紡糸単位Nuを有する紡糸装置である。この紡糸装置においては、ガス用柱状中空部Hg1つに対して、四角形の液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3、Hl4、Hl5、Hl66つが対応する紡糸単位Nuであるため、更に生産性良く不織布を製造することができる。図10の紡糸単位Nuにおいては、ガス用柱状中空部Hgを介して各液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3と、各液用柱状中空部Hl4、Hl5、Hl6とが対向して配置しているが、対向している必要はなく、千鳥状のように規則正しく、又は不規則にずれて配置していても良い。このようにずれて配置していることにより、液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3を通って紡糸された繊維と、液用柱状中空部Hl4、Hl5、Hl6を通って紡糸された繊維とが完全に重複しないため、繊維が分散した状態で集積しやすく、結果として、地合いの優れる不織布を製造しやすい。
本発明で使用できる紡糸装置について、より理解を深めるために、紡糸装置を分解して示す斜視説明図である図11(a)、紡糸装置のA方向側面図である(b)、及び紡糸装置のB方向底面図である(c)を参考に説明する。
図11における紡糸装置は紡糸液貯留部材Ss、液用中空部形成壁材Wl、中空部形成壁材Wa、ガス用中空部形成壁材Wg及びガス貯留部材Sgが順に積層された構造を有する。
紡糸液貯留部材Ssは図示しない紡糸液供給装置に接続され、紡糸液が供給される。紡糸液貯留部材Ssは中央部に断面が長円の中空部からなる貯留部Srを有するため、供給された紡糸液はこの貯留部全体に貯留された後、圧力が均等に加わることによって、均一に紡糸液を液用柱状中空部へ供給することができる。また、紡糸液貯留部材Ssの下方(図面上)は中空部等のない、平滑面であり、液用柱状中空部の一壁面として作用する。
液用中空部形成壁材Wlは液用柱状中空部を形成できるように、液用中空部形成壁材Wlの一端から伸びるスリットSが形成されている。スリットSが形成されていることによって、液用中空部形成壁材Wlの厚さ方向壁面が液用柱状中空部の壁面として作用できる。なお、スリットSの上端は円形状に開口している。そのため、この開口部を通じて、液用柱状中空部に均一に紡糸液を紡糸液貯留部材Ssから供給することができる。
中空部形成壁材Waは中空部等のない、平滑面からなる平板であり、液用柱状中空部の一壁面として作用する。このように、紡糸液貯留部材Ssの下方平滑面、液用中空部形成壁材Wlの厚さ方向壁面及び中空部形成壁材Waの平滑面によって囲まれ、液用柱状中空部を形成できる。このように、図11の態様においては、液用中空部形成壁材WlにスリットSを入れ、紡糸液貯留部材Ssと中空部形成壁材Waで液用中空部形成壁材Wlを挟むだけで液用柱状中空部を形成できるため、液吐出部間の距離を非常に短くすることができる。そのため、生産性良く不織布を製造することができる。また、液用中空部形成壁材WlにスリットSを入るだけで良いため、液用柱状中空部とガス用柱状中空部の位置関係の調整が簡単である。更には、紡糸後に、各部材に分解することができ、各部材毎に洗浄することができるため、メンテナンス性にも優れている。
ガス貯留部材Sgは図示しないガス供給装置に接続され、ガスが供給される。ガス貯留部材Sgは中央部に断面が長円の中空部からなる貯留部を有するため、供給されたガスはこの貯留部全体に貯留された後、圧力が均等に加わることによって、均一にガスをガス用柱状中空部へ供給することができる。また、ガス貯留部材Sgの下方(図面上)は中空部等のない、平滑面であり、ガス用柱状中空部の一壁面として作用する。
ガス用中空部形成壁材Wgはガス用柱状中空部を形成できるように、ガス用中空部形成壁材Wgの一端から伸びるスリットSが形成されている。スリットSが形成されていることによって、ガス用中空部形成壁材Wgの厚さ方向壁面がガス用柱状中空部の壁面として作用できる。なお、スリットSの上端は円形状に開口している。そのため、この開口部を通じて、均一にガスをガス貯留部材Sgから供給することができる。なお、ガス用中空部形成壁材Wgの高さ(紙面上、上下方向)は液用中空部形成壁材Wlよりも低いため、液吐出部El1、El2、El3、El4よりも上流側にガス吐出部Eg1、Eg2、Eg3、Eg4を配置することができる。また、ガス用中空部形成壁材WgのスリットSの中心軸は、紡糸液に対して効率的にガスを作用させることができるように、液用中空部形成壁材WlのスリットSの中心軸と対向しており、平行である。
中空部形成壁材Waは前述の通り、中空部等のない、平滑面からなる平板であり、ガス用柱状中空部の一壁面としても作用する。このように、ガス貯留部材Sgの下方平滑面、ガス用中空部形成壁材Wgの厚さ方向壁面及び中空部形成壁材Waの平滑面によって囲まれ、ガス用柱状中空部を形成できる。このように、図11の態様においては、ガス用中空部形成壁材WgにスリットSを入れ、ガス貯留部材Sgと中空部形成壁材Waでガス用中空部形成壁材Wgを挟むだけでガス用柱状中空部を形成できるため、ガス吐出部間の距離を非常に短くすることができる。そのため、生産性良く不織布を製造することができる。なお、図11の紡糸装置における紡糸単位Nuは、図11(c)に示すように、紡糸装置の長さ方向に対して直交する方向に、ガス吐出部Eg1、Eg2、Eg3、Eg41箇所に対して、液吐出部El1、El2、El3、El41箇所がそれぞれ対向している。
図11の紡糸装置においては、ガス用中空部形成壁材WgとしてスリットSを入れたものを使用しているが、ガス用中空部形成壁材WgはスリットSである必要はない。例えば、図12に示すような、ガス用中空部形成壁材Wgの下方が長方形に打ち抜かれたものであっても良い。図12のガス用中空部形成壁材Wgを使用した場合、図10と同様に、四角形のガス吐出部Eg1つに対して、四角形の液吐出部El1、El2、El3、El44つが対応する紡糸単位Nuを有する紡糸装置となる。
また、図11の紡糸装置においては、液用中空部形成壁材Wlとガス用中空部形成壁材Wgとを使用する態様であるが、液用中空部形成壁材Wl及び/又はガス用中空部形成壁材Wgを使用しないこともできる。この態様について、図13をもとに説明する。
図13の紡糸装置は紡糸液貯留部材Ss、中空部形成壁材Wa及びガス貯留部材Sgが順に積層された構造を有する。
図13の紡糸液貯留部材Ssは図11の紡糸液貯留部材Ssとは、紡糸液貯留部材Ssの下方(図面上)に、紡糸液貯留部材Ssの下端から貯留部Srへ通じる溝dを有する点が相違する。この溝dは液用柱状中空部の一部を構成する。
中空部形成壁材Waは中空部等のない、平滑面からなる平板であり、液用柱状中空部の一壁面として作用する。このように、紡糸液貯留部材Ssの下方の溝dを中空部形成壁材Waの平滑面によって囲むことにより、液用柱状中空部を形成できる。このように、図13の態様においては、紡糸液貯留部材Ssに溝dを形成し、中空部形成壁材Waと当接させるだけで液用柱状中空部を形成できるため、液吐出部間の距離を非常に短くすることができる。そのため、生産性良く不織布を製造することができる。なお、図13(c)に示すように、液用柱状中空部の形状は同一である必要はなく、液用柱状中空部ごとに異なる形状であっても良い。
他方、図13のガス貯留部材Sgは図11のガス貯留部材Sgとは、紡糸液貯留部材Ssの下方(図面上)に、ガス貯留部材Sgの下端から貯留部へ通じる溝を有する点が相違する。この溝はガス用柱状中空部の一部を構成する。
中空部形成壁材Waは中空部等のない、平滑面からなる平板であり、ガス用柱状中空部の一壁面としても作用する。このように、ガス貯留部材Sgの下方の溝を中空部形成壁材Waの平滑面によって囲むことにより、ガス用柱状中空部を形成できる。このように、図13の態様においては、ガス貯留部材Sgに溝を形成し、中空部形成壁材Waと当接させるだけでガス用柱状中空部を形成できるため、ガス吐出部間の距離を非常に短くすることができる。そのため、生産性良く不織布を製造することができる。図13(c)に示すように、ガス用柱状中空部の形状も同一である必要はなく、ガス用柱状中空部ごとに異なる形状であっても良い。なお、図13においては、紡糸液貯留部材Ssとガス貯留部材Sgの両方に溝を形成しているが、いずれか一方のみに溝を形成し、他方には図11と同様の液又はガス用中空部形成壁材Wl、Wgを挟み込んで、液用柱状中空部又はガス用柱状中空部を形成することもできる。
また、図13の紡糸装置においては、ガス貯留部材Sgに溝を形成したものを使用しているが、ガス貯留部材Sgにおいては溝である必要はない。例えば、図14に示すように、ガス貯留部材Sgの下方が長円状の中空部と繋がる断面長方形状の開口を有するものであっても良い。図14のガス貯留部材Sgを使用した場合、図10と同様に、四角形のガス吐出部Eg1つに対して、四角形の液吐出部El1、El2、El3、El44つが対応する紡糸単位Nuを有する紡糸装置となる。
本発明で使用できる紡糸装置においては、液吐出部El及び/又はガス吐出部Egの形状及び/又は大きさが、紡糸単位間で同じであっても、異なっていても良い。液吐出部Elの形状及び大きさ、及びガス吐出部Egの形状及び大きさが、いずれの紡糸単位Nuも同じであると、繊維径の揃った繊維を紡糸することができる。同様に、液吐出部Elとガス吐出部Egとの距離は紡糸単位間で同じであっても、異なっていても良い。液吐出部Elとガス吐出部Egとの距離がいずれの紡糸単位Nuも同じであると、繊維径の揃った繊維を紡糸することができる。
また、図6〜図14においては、紡糸単位Nuが一直線状に配置されているが、紡糸単位Nuが一直線状に配置されている必要はない。例えば、紡糸単位Nuが曲線、波線、円状、X字状、コの字状、渦巻状、三角形状、四角形状、或いはこれらを組み合わせて線状に配置されていても同様の効果を奏する。
更に、紡糸装置自体を前後及び/又は左右に移動させることのできる機構を備えていることもできる。このような機構を備えていることにより、繊維を均一に分散させることができるため、地合いの均一な不織布をより製造しやすい。
以上、本発明で使用できる紡糸装置について説明したが、本発明の紡糸装置は前述のような紡糸装置に限定されず、従来から周知のメルトブロー装置であっても使用することができる。
本発明の不織布製造装置は前述のような(イ)紡糸装置に加えて、(ロ)紡糸装置により紡糸された繊維を捕集できる、一方向に移動可能な多孔性捕集体、(ハ)多孔性捕集体の繊維捕集面とは反対面側に位置する、第1吸引装置、及び(ニ)多孔性捕集体の繊維捕集面とは反対面側、かつ前記第1吸引装置よりも上流側に位置する、第1吸引装置よりも低静圧かつ高流量の第2吸引装置、を備えており、紡糸装置が特定の配置を有する。本発明の不織布製造装置について、本発明の不織布製造装置の一例の模式的断面説明図である図15を参照しながら説明する。
図15の不織布製造装置は前述のような紡糸装置1に加えて、紡糸装置1の液吐出ノズルNlに接続され、液吐出ノズルNlに電圧を印加できる電源2、紡糸された繊維を捕集できる、一方向に移動可能な多孔性捕集体3、多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側に位置し、主として紡糸された繊維を吸引する第1吸引装置41、多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側、かつ第1吸引装置41よりも上流側に位置し、主としてガスを吸引する、第1吸引装置41よりも低静圧かつ高流量の第2吸引装置42、多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側、かつ第1吸引装置41の吸引口上に配置され、紡糸された繊維を電気的に吸引するアースされた導電体群5、紡糸装置1、電源2、多孔性捕集体3、第1及び第2吸引装置41、42、及び導電体群5を収納できる紡糸容器6、紡糸容器6へ所定相対湿度のガスを供給できる容器用ガス供給装置、及び紡糸容器6内のガスを排気できる排気装置を備えている。更に、紡糸装置1には紡糸液を液吐出ノズルNlへ供給できる紡糸液供給装置が接続され、ガスをガス吐出ノズルNgへ供給できる紡糸用ガス供給装置が接続されている。なお、図16に紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alと多孔性捕集体3の捕集面との関係の説明図を示す通り、紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alが第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に到達する到達点Aを有するとともに、液吐出方向中心軸Alと前記到達点Aよりも下流側の捕集面とのなす角度αが鋭角であるように、紡糸装置1が傾いて配置している。
このような不織布製造装置の場合、紡糸液は紡糸溶液供給装置によって液吐出ノズルNlへ供給されると同時に、紡糸用ガス供給装置によってガスがガス吐出ノズルNgへ供給される。同時に、電源2によって液吐出ノズルNlに対して電圧を印加することにより、紡糸液に電界を作用させることができるため、液吐出ノズルNlから吐出された紡糸液はガス吐出ノズルNgから吐出されたガスの剪断作用によって延伸され、繊維化するとともに、ガスの剪断作用によって延伸されず、液滴となりやすい紡糸液は電界の作用によって引き伸ばされて繊維化し、第1吸引装置41による吸引及び導電体群5による電気的吸引力により、第1吸引装置41へ向かって飛翔する。また、電界の作用によって、繊維が帯電し、互いに反発することによって、繊維同士が結着した繊維束を形成せず、個々の繊維が分散した状態で捕集されるため、繊維径の揃った不織布を製造できる。導電体群5は多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側に位置しているため、繊維の集積を邪魔することがない。この時、ガスは第1吸引装置41よりも低静圧かつ高流量の第2吸引装置42に吸引され、浮遊した繊維の発生を抑制することができるため、地合いの優れる不織布を製造できるとともに、浮遊した繊維が紡糸装置1の液吐出ノズルNl等に付着して汚染しないため、連続して不織布を製造することができる。このように、繊維の集積作用とガスの吸引作用を分離することができ、緻密な構造の不織布を透過させてガスを吸引する必要がなく、十分にガスを吸引することができる結果、浮遊する繊維を発生させないため、地合いの優れる不織布を連続して製造することができるとともに、必要最低限の吸引能力を有する第1吸引装置41及び第2吸引装置42を使用することができるため、エネルギー効率に優れ、安価な不織布製造装置である。なお、更に、紡糸装置1はガスの作用によって繊維を紡糸しているため、紡糸液の粘度が高い場合であっても安定して紡糸することができる。更に、ガスの作用によって繊維を紡糸し、従来の静電紡糸法による電圧よりも低い電圧で紡糸が可能で、かつ個々の繊維が分散した状態で集積させることができるため、静電紡糸法により製造した不織布よりも嵩高な不織布を製造することができる。
また、紡糸装置1が傾いて配置しているため、繊維の捕集範囲を広くすることができる。そのため、第1吸引装置41の吸引能力を低下させにくく、また、多孔性捕集体3が移動することによって、徐々に捕集されるため、地合いの優れる不織布を製造することができる。つまり、図15の不織布製造装置においては、多孔性捕集体3は紙面上、右から左方向へ移動可能であるが、紙面上、第1吸引装置41の吸引口の右端に相当する領域に集積した繊維が左方向へ移動するにしたがって、徐々に繊維が集積するため、地合いの優れる不織布を製造することができる。この時、ガスは紙面上、右側に位置する第2吸引装置42によって吸引されるため、ガスの影響をほとんど受けることなく、繊維を集積させることができ、不織布の地合いが乱されない。
更に、図15の不織布製造装置においては、紡糸装置1、電源2、多孔性捕集体3、第1及び第2吸引装置41、42及び導電体群5を紡糸容器6に収納し、閉鎖空間としているため、紡糸液として溶媒を含む場合には、紡糸液から揮発した溶媒の飛散を防ぎ、場合によっては溶媒を回収して再利用することができる。
また、紡糸容器6に、第1及び第2吸引装置41、42とは別に紡糸容器6内のガスを排気できる排気装置を接続しているため、紡糸液として溶媒を含む場合には、繊維径のバラツキを小さくすることができる。つまり、紡糸を行っていると、紡糸容器6内における溶媒蒸気濃度が次第に高くなり、溶媒の蒸発が抑制される結果、繊維径のバラツキが発生しやすく、また繊維化されにくくなる傾向があるが、排気装置によってガスを排気することによってこれらの現象を抑制することができる。
更に、紡糸容器6に温湿度を調整したガスを供給できる容器用ガス供給装置が接続されているため、紡糸液として溶媒を含む場合には、紡糸容器6内における溶媒蒸気濃度を安定させ、繊維径のバラツキを小さくできる。
図15における電源2は紡糸液に電圧を印加できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機を用いることができる。また、印加極性は正であっても負であっても良く、繊維の分散状態を確認しながら適宜設定する。なお、図15における不織布製造装置においては、電源2を紡糸装置1の液吐出ノズルNlに接続しているが、紡糸液に印加できるのであれば、液吐出ノズルNl内に挿入したワイヤー等に印加しても良い。
この電源2による印加によって液吐出ノズルNlと導電体群5との間に生じる電位差は液滴の発生を抑えることのできる電位差であるのが好ましい。この電位差は紡糸液の種類、液吐出ノズルNlと導電体群5との距離、温湿度などの紡糸条件によって変化するため、特に限定するものではないが、0.05〜1.5kV/cmであるのが好ましい。電位差が1.5kV/cmを超えると、ガスの剪断作用による紡糸よりも静電紡糸法と同様に、電界による紡糸が支配的となるが、ガスの作用も受けて不織布の地合いが悪くなる傾向があるためである。他方、0.05kV/cm未満であると、電界を作用させているにもかかわらず、繊維の帯電が不十分あるいは弱く、十分に繊維化できない傾向があるためである。
本発明の不織布製造装置においては、繊維を紡糸するためにガスを使用しているため、ガスを吸引し、集積した繊維がガスによって浮遊しないように、捕集体は多孔性である。このような多孔性捕集体3として、例えば、不織布、織物、編物、ネットを挙げることができる。本発明の多孔性捕集体3は導電性であっても良いし、非導電性であっても良いが、導電性であると、液吐出ノズルNlと多孔性捕集体3との間に電界が生じる結果、繊維が電気的に吸引され、多孔性捕集体3上に捕集された際に、多孔性捕集体3の模様が転写される傾向があるため、多孔性捕集体3は非導電性であるのが好ましい。この「非導電性」とは絶縁体を指し、体積抵抗率が1012Ω・cm以上あるものをいう。このような非導電性材料として、例えば、雲母、磁器、アルミナ磁器、酸化チタン磁器、ソーダガラス、石英ガラス、樹脂類(フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)、ポリエチレン、ポリスチロール、軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、生ゴム、軟質ゴム、エボナイト、ブチルゴム、ネオプレン、シリコーンゴム等を挙げることができる。
本発明の不織布製造装置においては、多孔性捕集体3として、一方向に移動可能なものを使用する。そのため、不織布を連続して製造することができる。なお、図15において、多孔性捕集体3はTdの方向(紙面上、左方向)へ移動可能である。また、図15においては、コンベア状の多孔性捕集体3を使用しているが、コンベア状である必要はなく、ローラ状であっても良い。
図15においては、多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側に、第1吸引装置41を備えている。この不織布製造装置においては、紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alが第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に到達する到達点Aを有しているため、第1吸引装置41の吸引作用により、繊維を吸引し、多孔性捕集体3の繊維捕集面に繊維を集積させることができる。
また、図15においては、多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面側、かつ第1吸引装置41よりも上流側に、第1吸引装置41よりも低静圧かつ高流量の第2吸引装置42を備えている。この第2吸引装置42によって、ガス吐出部Egから吐出されたガスを吸引することができ、ガスによる捕集した繊維の浮遊を防ぐことができるため、不織布の地合いを乱すことがなく、また、浮遊した繊維が液吐出部El等に付着して連続製造を妨げることがない。このように、第1吸引装置41によって繊維を捕集し、第2吸引装置42によりガスを吸引しており、緻密な構造を有する不織布を通過させてガスを吸引する必要がないため、エネルギー効率に優れ、また、第1吸引装置41、第2吸引装置42として、従来の吸引装置を利用することができるため、安価にスケールアップ又は高目付の不織布を製造することができる。
なお、この第2吸引装置42が第1吸引装置41よりも下流側に位置していると、多孔性捕集体3に集積して形成した不織布が第2吸引装置42の上を通り、第2吸引装置42の吸引作用を十分に発揮できず、また、第2吸引装置42は高流量であるため、吸引作用によって不織布の地合いが乱れる傾向にあるが、第2吸引装置42が第1吸引装置41よりも上流側に位置していることによって、多孔性捕集体3に集積して形成した不織布が第2吸引装置42の上を通ることがないため、第2吸引装置42の吸引作用を十分に発揮することができ、また、不織布の地合いを乱すこともない。このように、「上流側」とは、多孔性捕集体3の移動可能方向と反対側であることを意味し、図15においては、紙面上、右側である。なお、図15のように、第2吸引装置42は第1吸引装置41と接触して配置されていることが好ましいが、接触して配置されている必要はない。
また、本発明における第2吸引装置42はガスを優先的に吸引できるように、第1吸引装置41よりも低静圧かつ高流量である。なお、第1吸引装置41および第2吸引装置42に必要な静圧及び流量は、製造する目的の不織布の物性(例えば、目付、繊維径、厚さなど)によって異なるため、特に限定するものではない。しかしながら、第1吸引装置41の静圧は、不織布の圧力損失の負荷が第1吸引装置41に掛かるため、不織布の圧力損失以上の圧力により一定風量で吸引できる能力を有するものが好ましい。また、第2吸引装置42の静圧は、第1吸引装置41よりも上流側に位置しており、不織布の圧力損失が影響しない位置に配置されているため、第1吸引装置41よりも低い静圧(圧力損失が掛かった場合に吸引能力(流量)が低下する)の吸引装置を使用することができる。
図15のように、紡糸装置1等を紡糸容器6内に収納している場合、第2吸引装置42は紡糸時のガスを優先的に十分に吸引できるように、その流量は第1吸引装置41の流量よりも大きく、第1吸引装置41の流量の6倍以下であるのが好ましく、3倍以下であるのがより好ましい。第2吸引装置42の流量が第1吸引装置41の流量と同量以下であると、紡糸容器6内に気流が発生し、その気流が紡糸容器6内に、温湿度を調整するために供給しているガスや、紡糸装置1と多孔性捕集体3との間の紡糸空間に影響を与え、地合いの優れる不織布を製造しにくくなるためである。他方、第2吸引装置42の流量が第1吸引装置41の流量の6倍を超えると、必要以上に調湿されたガスを必要とし、且つ、不織布を得るために、必要以上にエネルギーを要することになる傾向があるためである。
このような、第1吸引装置41、第2吸引装置42として、例えば、ブロア、ルーツ型ブロア、ターボ型ブロア、集塵機、ターボファン、エアホイルファン、シロッコファンなどを挙げることができ、第2吸引装置42として、第1吸引装置41よりも低静圧かつ高流量のものを適宜選択して使用することができる。なお、第1吸引装置41、第2吸引装置42により吸引されたガスは排気、または再び紡糸容器内に戻し、循環させることもできる。また、図15における不織布製造装置においては、第1吸引装置41と第2吸引装置42の2台の吸引装置を配置しているが、2台である必要はなく、3台以上の吸引装置を配置することもできる。このように、3台以上の吸引装置を配置する場合、図15の場合と同様に、上流側に位置する吸引装置は、下流側に隣接して位置する吸引装置よりも、低静圧かつ高流量であるという関係を、隣接するいずれの組合せにおいても満たすように配置するのが好ましい。このように配置することによって、上流側に位置する吸引装置によって、主にガスを吸引することができる。なお、このように3台以上の吸引装置を配置した場合、後述の紡糸装置からの液吐出方向中心軸が多孔性捕集体の捕集面に到達する到達点Aは、最上流に位置する吸引装置以外の吸引口に相当する多孔性捕集体の捕集面上に存在するように、紡糸装置を配置する。
本発明の不織布製造装置である図15においては、紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alと多孔性捕集体3の捕集面とは、図16に示すような関係を有する。つまり、(i)紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alが第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に到達する到達点Aを有するとともに、(ii)紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alと、到達点Aよりも下流側の捕集面とのなす角度αが鋭角であるように、紡糸装置1が配置している。前者の(i)の紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alは紡糸された繊維の飛翔方向とほぼ一致するため、この液吐出方向中心軸Alが第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に到達する到達点Aを有するということは、飛翔する繊維が第1吸引装置41に向うことを意味するため、繊維は第1吸引装置41によって吸引されやすい。この「第1吸引装置の吸引口に相当する多孔性捕集体の捕集面」とは、第1吸引装置の吸引口を多孔性捕集体3に対して投影した領域に対向する、多孔性捕集体3の捕集面の領域である。なお、紡糸装置1に2つ以上の液吐出部が存在する場合には、いずれの到達点Aも、第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に存在するのが好ましい。なお、図15においては、この到達点Aは第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面のほぼ中央部に位置しているが、到達点Aの位置は、紡糸装置1の高さ、液吐出方向中心軸Alと到達点Aよりも下流側の捕集面とのなす角度α、紡糸条件(吐出量、ガス量、ガス流速、温湿度など)、不織布の所望物性(目付、厚さ、圧力損失など)により、最適な位置が異なるため、特に限定するものではない。
後者の(ii)紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alと、到達点Aよりも下流側の捕集面とのなす角度αが鋭角であるように、紡糸装置1が配置しているということは、図16からも理解できるように、紡糸装置1と多孔性捕集体3とが相対的に傾いて配置していることを意味する。通常、紡糸した際、飛翔するにしたがって円錐状に拡がるため、図15からも分かるように、比較的飛翔距離の短い繊維から比較的飛翔距離の長い繊維が多孔性捕集体上に集積することになる。そのため、紡糸装置1を多孔性捕集体3に対して直角に配置した場合よりも、広い範囲で繊維が集積することになる。このように、広い範囲で繊維が集積するということは、紡糸液の吐出量が同じであれば、単位面積あたりの繊維集積量が少なくなり、緻密性が低くなるため、第1吸引装置41の吸引能力を低下させにくい。なお、多孔性捕集体3は移動可能であることから、多孔性捕集体3が移動することによって、徐々に繊維が捕集されるため、緻密で地合いの優れる不織布を製造することができる。
本発明における「液吐出方向中心軸Alと到達点Aよりも下流側の捕集面とのなす角度が鋭角である」とは、到着点Aを通る多孔性捕集体3の幅方向に伸びる直線と液吐出方向中心軸Alとがなす角度、及び/又は到着点Aを通る多孔性捕集体3の移動方向Tdに伸びる直線と液吐出方向中心軸Alとがなす角度が鋭角であることを意味する。特に、到着点Aを通る多孔性捕集体3の幅方向に伸びる直線と液吐出方向中心軸Alとがなす角度が直角、かつ到着点Aを通る多孔性捕集体3の移動方向Tdに伸びる直線と液吐出方向中心軸Alとがなす角度が鋭角(図16)であると、多孔性捕集体3の幅方向において、均一に繊維を集積させることができるため、特に好適である。なお、この鋭角は30°〜60°であるのが好ましい。前記鋭角が60°を超えると、紡糸装置1から円錐状に拡散した繊維の拡散範囲が狭くなり、第1吸引装置41の特定の吸引領域に集中して集積しやすくなる。そのため、第1吸引装置41の吸引能力以上の風量の紡糸用ガスと、それに伴う随伴気流が多孔性捕集体3に到達することになるため、吸引されずに滞留する気流が発生しやすくなり、紡糸装置1と多孔性捕集体3との間の紡糸空間に影響を与え、地合いの優れる不織布を製造しにくくなるためである。他方で、前記鋭角が30°未満であると、紡糸装置1から円錐状に拡散した繊維の拡散範囲が広くなり、第2吸引装置42の吸引領域まで繊維と紡糸用ガスが飛翔しやすくなる。第2吸引装置42は静圧が低いため、吸引能力(吸引量)が著しく低下し、紡糸用のガスとそれに伴う随伴気流を十分にできなくなり、浮遊した繊維を発生しやすくなるためである。より好ましい鋭角の角度は40°〜50°である。なお、紡糸装置1に2つ以上の液吐出部が存在する場合には、前記角度のいずれも鋭角であるのが好ましく、いずれも30°〜60°であるのが好ましく、いずれも40°〜50°であるのがより好ましい。また、いずれの角度も同じであると、均一に繊維を集積させることができるため、特に好適である。なお、図16においては、到着点Aを通る多孔性捕集体3の移動方向Tdに伸びる直線と液吐出方向中心軸Alとがなす角度をαとして表記している。
なお、図15の不織布製造装置においては、液吐出ノズルNlからの吐出方向は重力の作用方向と交差する方向であるが、紡糸装置1と多孔性捕集体3とが前述の関係を満たす限り、液吐出ノズルNlからの吐出方向は重力の作用方向と同じ方向であっても、反対方向であっても、重力の作用方向と直交する方向であっても良く、特に限定するものではない。
図15における不織布製造装置においては、アースされた導電体5本(導電体群5)を、第1吸引装置41の吸引口の上方に配置しているため、第1吸引装置41による吸引作用に加えて、印加された液吐出ノズルNlと導電体群5との間に生じる電界の作用によって、紡糸された繊維は多孔性捕集体3へと効率的に誘導され、多孔性捕集体3上に繊維を集積して不織布を形成できる。このように、電源2とアースされた導電体群5とで電界を形成できるようになっている。
このアースされた導電体は平滑な表面を有するのが好ましい。平滑な表面を有すると液吐出ノズルNlを2本以上有する場合に、液吐出ノズルNlと導電体との距離を同じにすることができ、実質的に同じ電界を作用させることができるため、繊維径の揃った繊維を紡糸することができ、また、地合いの優れる不織布を製造することができるためである。また、アースされた導電体は多孔性捕集体3の幅方向に伸びていれば良いが、液吐出ノズルNlを2本以上有する場合に、液吐出ノズルNlと導電体との距離が同じとなり、均一に電界を形成できるように、多孔性捕集体3の幅方向と平行、つまり多孔性捕集体3の移動方向Tdと直角方向へ直線状に伸びているのが好ましい。なお、導電体は液吐出ノズルNlとの間に電界を形成し、繊維を引き付ける作用を奏するため、導電体の多孔性捕集体3を横切る方向における長さは不織布の所望幅とほぼ同じか、少し長い長さであるのが好ましい。
このような導電体は、例えば棒状、板状であることができるが、棒状であるのが好ましい。板状であると、ガスを反射し、不織布の地合いを乱す傾向があるためである。なお、棒状である場合、均一な電界を形成し、ガスの流れを阻害しないように、断面は円形であるのが好ましい。また、図15においては導電体を5本使用しているが、5本である必要はない。2本以上備えている場合、不織布の地合いを乱さないように、導電体同士を離間させて配置するのが好ましい。
アースされた導電体群5は多孔性捕集体3の繊維捕集面とは反対面に接していても良いし、離間していても良い。なお、導電体とは体積抵抗率が10−4Ω・cm以下であることをいい、例えば、鉄、アルミニウム、金、銀、銅等の金属、これら金属の合金、高導電性プラスチック等から構成することができる。
なお、液吐出部Elと到達点Aとの最短距離は、紡糸液の吐出量やガス流速によって変化するため、特に限定するものではないが、ポリマーを紡糸液に溶解させた紡糸液を用いた場合、100〜500mmであるのが好ましく、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合、200〜500mmであるのが好ましい。ポリマーを紡糸液に溶解させた紡糸液を用いた場合に100mm未満であると、紡糸液の溶媒が十分に蒸発しない状態で集積され、集積された後に繊維形状を保つことができず、不織布が得られない場合があるためであり、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合に200mm未満であると、ガスなどの影響を受けて、多孔性捕集体上に集積した繊維が溶けてしまったり、繊維同士が溶着する傾向があるためである。他方、紡糸液がいずれの場合であっても、500mmを超えると、ガスの流れが乱れ、繊維が切れて飛散しやすくなる傾向があるためである。
容器用ガス供給装置としては、例えば、プロペラファン、シロッコファン、エアコンプレッサー、或いは送風機などを挙げることができる。なお、図15においては、紡糸容器6の上壁面からガスを供給しているが、側壁面からガスを供給することもできる。しかしながら、繊維が飛翔する紡糸空間へ効率的に、かつ繊維の集積状態に影響を与えないようにガスを供給できる位置から供給するのが好ましい。
また、排気装置は特に限定するものではないが、例えば、排気口に設置されたファンであることができる。図15のように、容器用ガス供給装置によって紡糸容器6へガスを供給する場合には、単に排気口を設けるだけで供給量と同量のガスを排出することができるため、排気装置は必ずしも必要ではない。なお、図15のように排気装置によって排気する場合、排気量は紡糸用ガス供給装置及び容器用ガス供給装置からのガス供給量と同量あるいはわずかに排気量の方が多い方が好ましい。紡糸液が溶媒を含む場合、供給量と排気量とが異なると、紡糸容器6内における圧力が変わることによって、溶媒の蒸発速度が変わり、繊維径のバラツキが生じやすいためである。また、若干排気量を多くし、紡糸容器内を陰圧にすることで、紡糸容器外への溶媒の漏れを防ぐことができる。また、図15に示す態様とは異なり、排気装置への排気口は紡糸容器6の底壁面ではなく、側壁面に設けることもできる。また、第1吸引装置41、第2吸引装置42に排気装置を兼用させることもできる。
なお、紡糸液供給装置としては、紡糸液がポリマーを溶媒に溶解させたものである場合には、例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグなどを挙げることができ、紡糸液がポリマーを加熱溶融させたものである場合には、押出し機、ヒーターにより加熱された金属製シリンジなどを挙げることができる。また、紡糸用ガス供給装置としては、例えば、圧縮機、ヒーターに接続した圧縮機、ガスボンベ、ブロアなどを挙げることができる。
図15の不織布製造装置においては、紡糸装置1を1台だけ配置しているが、1台である必要はなく、2台以上配置することができる。2台以上配置することによって不織布の生産性を高めることができる。2台以上紡糸装置を配置した場合には、前述の関係を満たすように、第1吸引装置41及び第2吸引装置42を配置するとともに、各紡糸装置と多孔性捕集体との位置関係が前述の関係を満たすように配置するのが好ましい。
また、図15の不織布製造装置においては、特に繊維を結合させるための装置を配置していないが、繊維を結合するための装置を配置することができる。例えば、バインダーを付与し、乾燥する装置、繊維同士を融着させることのできる熱処理装置、繊維同士を絡合させることのできる絡合装置、などを配置することができる。
以上、本発明の不織布製造装置について、アースされた導電体群5を配置した図15をもとに説明したが、本発明の不織布製造装置はアースされた導電体群5が配置されたものに限定されない。例えば、導電体を配置していない不織布製造装置であっても良い。アースされた導電体群5を配置していることによって、電気的にも吸引されて繊維は第1吸引装置41に向って飛翔するが、本発明の不織布製造装置においては、紡糸装置1からの液吐出方向中心軸Alが第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に到達する到達点Aを有するため、導電体を配置しなくても第1吸引装置41の吸引口に相当する多孔性捕集体3の捕集面に繊維が捕集されやすいため、図15の不織布製造装置同様の作用効果を奏する。また、紡糸液に対して電界を作用させることができるように、導電体群5に対して電圧を印加しても良い。このような態様であっても、図15の不織布製造装置と同様の作用効果を奏する。
本発明の不織布の製造方法は前記不織布製造装置を用いる方法である。特には、紡糸装置1のガス吐出部Egから流速100m/sec.以上のガスを吐出するのが好ましい。ガス吐出部Egから流速100m/sec.以上のガスを吐出することによって、液滴の発生を抑え、繊維径の揃った細径化した繊維を含む不織布を効率的に製造することができるためである。より好ましくは流速150m/sec.以上のガスを吐出し、更に好ましくは流速200m/sec.以上のガスを吐出する。なお、ガス流速の上限は安定して紡糸できる流速であれば良く、特に限定するものではない。
このような流速のガスは、例えば、圧縮機からガスを供給すれば良い。なお、ガスの種類は特に限定するものではないが、例えば、空気、窒素ガス、アルゴンガスなどを使用することができ、これらの中でも空気であると経済的である。また、ガスの温度は紡糸液によって異なり、特に限定するものではないが、ポリマーを紡糸液に溶解させた紡糸液である場合には、常温であるのが経済的に好ましく、ポリマーを加熱溶融させた紡糸液である場合には、紡糸液に対してガスの随伴気流が作用する部分で、加熱溶融したポリマーの温度よりも100℃低い温度から、加熱溶融したポリマーの温度よりも100℃高い温度までの範囲の温度のガスであるのが好ましい。加熱溶融したポリマーの温度よりも低い温度のガスの場合、冷却作用により繊維の固化を促進することができ、また、加熱溶融したポリマーの温度よりも高い温度のガスの場合、ポリマーの固化を抑制し、長い時間、紡糸液にガスを作用させることができる。
なお、紡糸装置1と多孔性捕集体3との間の紡糸空間に、冷却ガスなどを供給して繊維を冷却することにより、繊維の固化を促進することもできる。また、紡糸装置1と多孔性捕集体3との間の空間に、加熱ガスを供給して繊維を加熱、保温することにより、繊維の固化を抑制することもできる。
不織布製造装置が図15のように、電界を作用させることができる場合には、紡糸液の繊維化を促進するように、電界を作用させるのが好ましい。この時、その電位差は0.05〜1.5kV/cmであるのが好ましい。
本発明の製造方法に使用できる紡糸液は、例えば、所望ポリマーを溶媒に溶解させたもの、所望ポリマーを加熱溶融させたものなどを挙げることができ、特に限定するものではない。
例えば、所望ポリマーを溶媒に溶解させた紡糸液として、例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル、共重合ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、共重合ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリウレタン、パラ又はメタ系アラミド、セルロース系、酸化ケイ素系ゾル、酸化アルミニウム系ゾル、酸化チタン系ゾル、酸化ジルコニウム系ゾル、酸化スズ系ゾルなど1種又は2種以上のポリマーを、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなど1種又は2種以上の溶媒に溶解させたものを挙げることができる。
このポリマーを溶媒に溶解させた紡糸液の紡糸時の粘度は10〜10000cPの範囲であるのが好ましく、20〜8000cPの範囲であるのがより好ましい。粘度が10cP未満であると、粘度が低すぎて曳糸性が悪く、繊維になりにくい傾向があり、粘度が10000cPを超えると、紡糸液が延伸されにくく、繊維となりにくい傾向があるためである。なお、常温で粘度が10000cPを超える場合であっても、紡糸液自体、紡糸装置等を加熱することにより、紡糸時に前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。逆に、常温で粘度が10cP未満であっても、紡糸液自体、紡糸装置等を冷却することにより、紡糸時に前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。本発明における「粘度」は、粘度測定装置を用い、紡糸時と同じ温度で測定した、シェアレート100s−1の時の値をいう。
ポリマーを加熱溶融させた紡糸液を構成できるポリマーとして、例えば、ポリオレフィン系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンーポリエチレン共重合体、ポリメチルペンテンなど)、ポリエステル系(脂肪族ポリエステル系、芳香族ポリエステル系)、アクリル系(ポリアクリロニトリル、共重合ポリアクリロニトリル)、セルロース系、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610)、ポリアセタール、アラミド系、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、或はフッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、共重合ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、共重合テトラフルオロエチレンなど)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などを1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
このポリマーを加熱溶融させた紡糸液の紡糸時の温度範囲は、ポリマーの融点から融点より200℃高い温度までの範囲であるのが好ましく、融点より20℃高い温度から融点より100℃高い温度までの範囲であるのがより好ましい。温度依存性を示すポリマーの場合、融点より200℃高い温度よりも高い温度では、ポリマーの熱分解が発生して紡糸が困難となるためである。また、紡糸時のポリマーにかかる剪断速度は、1〜10000s−1であるのが好ましく、剪断速度50〜5000s−1であるのがより好ましい。圧力依存性を示すポリマーの場合、剪断速度が1s−1未満であると、吐出が安定せず、10000s−1を超えると、高い吐出圧力が必要となり吐出が困難となる傾向があるためである。なお、上記の温度範囲および剪断速度範囲において、ポリマーの紡糸時の粘度が10〜10000cPの範囲であるのが好ましく、20〜8000cPの範囲であるのがより好ましい。粘度が10cP未満であると、粘度が低すぎて曳糸性が悪く、繊維になりにくい傾向があり、粘度が10000cPを超えると、紡糸液が延伸されにくく、繊維となりにくい傾向があるためである。なお、溶融時に粘度が10000cPを超える場合であっても、紡糸液自体、紡糸装置等を加熱することにより、紡糸時の粘度が前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。逆に、溶融時に粘度が10cP未満であっても、紡糸液自体、紡糸装置等を冷却することにより、紡糸時の粘度が前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。
なお、液吐出部Elからの紡糸液の吐出量は、紡糸液の粘度やガス流速によって変化するため、特に限定するものではないが、0.1〜100g/時間/1吐出部であるのが好ましい。なお、液吐出部Elを2つ以上有する場合、液吐出部間の吐出量は同じであっても、異なっていても良い。同じであれば、繊維径の揃った繊維を紡糸することができる。
また、液吐出部Elを2つ以上有する場合、2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化することにより、異なる種類の繊維が混在する不織布を製造することができる。例えば、図10のような紡糸装置における、液用柱状中空部Hl1、Hl2、Hl3からの吐出条件と液用柱状中空部Hl4、Hl5、Hl6からの吐出条件を異なるようにすると、吐出された紡糸液に作用するガスは同じであるため、異なった種類の繊維を紡糸することができ、結果として異なった種類の繊維が混在する不織布を製造することができる。
この「2種以上の吐出条件」とは全く同一ではないことを意味し、例えば、液吐出部Elの形が異なる、液吐出部Elの大きさが異なる、液吐出部Elのガス吐出部Egからの距離が異なる、紡糸液の吐出量が異なる、紡糸液の濃度が異なる、紡糸液構成ポリマーが異なる、紡糸液の粘度が異なる、紡糸液の溶媒が異なる、紡糸液構成ポリマーが2種類以上である場合にはその配合比率が異なる、紡糸液構成溶媒が2種類以上である場合にはその配合比率が異なる、紡糸液の温度が異なる、紡糸液の調製方法が異なる(例えば、溶媒に溶解させた紡糸液と加熱溶融させた紡糸液)、紡糸液に添加されている添加剤の種類及び/又は量が異なる、などのこれら1つ、又は2つ以上が異なる。
同様に、ガス吐出部Egを2箇所以上有する場合、2種以上の吐出条件でガスを吐出することにより、異なる種類の繊維が混在する不織布を製造することができる。例えば、ガス吐出部Egの形が異なる、ガス吐出部Egの大きさが異なる、ガス吐出部Egの液吐出部Elからの距離が異なる、ガスの吐出量が異なる、ガスの組成が異なる、ガスの温度が異なる、ガスの吐出流速が異なる、などのこれら1つ、又は2つ以上が異なると、異なる種類の繊維が混在する不織布を製造することができる。
本発明においては、繊維を紡糸し、集積して不織布を製造する際に、飛翔する繊維に対して、粉体、繊維、及び/又は繊維集合体を供給し、これらを混合することによって、不織布に機能を付与することもできる。
例えば、粉体として、活性炭(例えば、水蒸気賦活炭、アルカリ処理活性炭、酸処理活性炭など)、無機粒子(例えば、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、チタン含有酸化物、ゼオライト、触媒担持セラミックス、シリカなど)、イオン交換樹脂、植物の種子などを挙げることができる。
繊維として、レーヨン、ポリノジック、キュプラなどの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維、綿、麻などの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維などを挙げることができる。
繊維集合体として、前記と同様の繊維の集合体を挙げることができる。なお、繊維集合体の集合状態は特に限定するものではなく、例えば、繊維同士が絡んだ状態、繊維同士が接着した状態、繊維同士が融着した状態、繊維同士を撚って糸となった状態、などを挙げることができる。
本発明の不織布は上述の方法により製造された不織布である。したがって、繊維径が小さく、連続して製造でき、しかも地合いの優れるものである。なお、不織布を構成する繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、50〜5000nmであることができる。この平均繊維径は300本の繊維径の算術平均値であり、この繊維径は、走査電子顕微鏡(SEM)により得た不織布表面の写真画像をもとに、そのスケールから算出して得られる値をいう。
本発明の不織布の目付は0.1〜100g/m2、厚さは1〜2000μm、嵩密度は0.05〜0.5g/cm3であることができる。目付は10cm角の不織布試料の重量から1m2の重量に換算した値であり、厚さは圧縮弾性式厚み計により計測した値であり、具体的には5cm2の荷重領域に3mm/sの速度で100gfの荷重をかけたときの値をいう。嵩密度は目付(単位:g/m2)を厚さ(μm)で除した値である。