JP5652611B2 - 定着部材、定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、カラー画像に適した定着性を得るための十分な弾性を保有する定着部材は、耐摩耗性・トナー離型性に著しく劣るという課題を持っている。
この定着方式では、用紙に融着したトナー像が定着部材に接触するので、離型性のよい材料(たとえばフッ素系樹脂)が表面に15〜30μmの膜厚にて形成される。しかし、樹脂であるがゆえに材料硬度が高いという短所がある。硬度が高いと、静電的に形成されたトナー画像を熱と圧力により定着させる際に、紙繊維の凹凸に対する追従性が低く、高画質な画像が得られない。特に近年は前述のようにカラー化により複数種のカラートナーを包み込むようにして溶融状態にする必要があるため、その影響は顕著である。
定着部材に弾性体を用いることにより前述の追従性が改善されるが、上記フッ素樹脂ほどの耐久性が確保できないため、転写紙の摩擦や転写紙を分離するための分離爪などによる傷が発生すると、定着部材に傷を付け、定着工程で傷が転写されて異常画像を発生させる。また、従来技術として、耐摩耗性向上のために、弾性層にシリコーンゴム組成物に多量のシリカ微粉末やアルミナ微粉末を配合する技術が公知であるが、このようなシリコーンゴムはゴム硬度が高くなり、前述の高画質を得るための十分な弾性が得られない。そのため例えば特許文献1にあるように、ゴムの低硬度化のためには架橋密度を低くしたりして、これを改善するための材料に関する発明も提案がなされている。しかしこの場合も、ゴム強度が低下するため、無機充填物の脱落などが発生し、十分な耐摩耗性を得られない。条件によっては無機充填材が摩耗材として作用し、摩耗が促進される場合もある。
また、特許文献5には定着部材の弾性材として金属アルコキシドと有形ケイ素化合物とを含むゾル液を加熱ゲル化せしめて得られる有機・無機ハイブリッドを用いて耐熱性と離型性を向上させることが提案されているが、実用化されていないようである。
(1)記録媒体上のトナー像を加熱して当該記録媒体に定着させるプロセスに用いられる定着部材であって、その基材上に3ないし4つの酸素原子と結合した珪素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する表層を設け、前記ポリオルガノシロキサン層が、深さ方向に酸素濃度の極大値を持つことを特徴とする定着部材。
(2)前記ポリオルガノシロキサン層を含有する表層が、深さ方向に炭素濃度の極小値を持つことを特徴とする(1)に記載の定着部材。
(3)前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層において、酸素濃度極大値を示す深さ位置と炭素濃度極小値を示す深さ位置とが一致することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の定着部材。
ことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の定着部材。
(4)前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層の表面に、酸素を介した結合によりパーフルオロアルキルエーテル基が形成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の定着部材。
(5)前記基材と前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層との間に弾性層が設けられていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の定着部材。
(6)前記弾性層がシロキサン結合を主鎖とする弾性ゴムであることを特徴とする(5)に記載の定着部材。
(7)前記弾性ゴムがフロオロシリコーンゴムであることを特徴とする(6)に記載の定着部材。
(8)ユニバーサル硬度(5μm押込み時)が0.5N/mm2以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の定着部材。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の定着部材を有する定着装置。
(10)定着部材が定着ローラ及び、該定着ローラに対抗配置されている加圧ローラの少なくとも一方として用いられていることを特徴とする(9)に記載の定着装置。
(11)定着部材が、定着ベルト及び概定着ベルトに対向配置されている加圧ベルトの少なくとも一方として用いられていることを特徴とする(9)に記載の定着装置。
(12)(9)〜(11)のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする電子写真式の画像形成装置。
「耐摩耗性を向上させることによる高耐久性」を実現する定着部材を提供できる。
上記(5)〜(9)の発明に対応する作用効果
上記(1)〜(4)の発明の効果に加えて、最表面の離型性を向上させ、溶融トナーの付着力低減や転写紙の巻きつきに起因するジャムを低減し、長期にわたり安定した定着を実現できる。
上記(10)〜(12)の発明に対応する作用効果
上記(1)〜(9)の発明の効果に加えて、この定着部材を用いることで、耐久性・信頼性を向上させた定着装置を提供できる
上記(13)の発明に対応する作用効果
この定着装置を有することで、高耐久、高信頼を有する電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンターが利用可能であり、「環境負荷低減」や「顧客満足の向上」に寄与できる。
まず、本発明の定着部材が使用される画像形成装置の概要について説明する。
図1は複写装置の感光体とその作像系及び定着装置の構成を概念的に示したものである。この電子写真方式の画像形成装置における画像作成プロセスは、回転する感光体ドラム101の感光層を帯電ローラ102を用いて一様に帯電させた後、図示しないレーザ走査ユニットからのレーザービーム103によって露光し、それによって感光体ドラム101上の静電潜像をトナーによって現像してトナー像とし、そのトナー像を記録シート107上に転写し、さらにその記録シート107を定着装置に通してトナー像を加熱、加圧して記録シートに定着させるように構成する。
なお図中104は現像ローラ、105はパワーパック(電源)、106は転写ローラ、108はクリーニング装置、109は表面電位計である。定着装置は、基材とこの基材上に設けた弾性層とからなる加熱定着ローラ110を使用する。このような加熱定着ローラ110は、芯金の中空部に回転中心線に沿ってハロゲンランプ等のヒータを配置し、その輻射熱によって加熱定着ローラ110を内側から加熱するようにする。
図2にベルト方式の定着装置を示す。図中113は定着ベルト、114は定着ローラ、115は加圧ローラ、116は加熱ローラである。ここで、フルカラーの複写機やレーザプリンタでは、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のカラートナーが用いられるが、カラー画像の定着時には、これらのカラートナーを溶融状態で混合する必要があり、トナーを低融点化して溶融しやすくするとともに、定着ベルト113の表面で、複数種のカラートナーを包み込むようにして溶融状態で、均一に混合させることが必要になる。(以降文中では定着ローラ、定着ベルトを総称して定着部材と表記することがある。)
図2に示すように、発熱部材としての定着ベルトは定着ローラ(114)と加熱ローラ(116)とに張架・支持されている。
また、図3は定着部材の構成を示す概略図であり、定着部材は基材201と弾性層202から構成されている。
さらに、シリコーンゴムの場合、Siの2p軌道の電子が飛び出すエネルギーを測定することにより、珪素に結合している元素及び結合状態を知ることができる。図4(b)にSiの結合状態を示すSi2p軌道におけるナロースキャンスペクトルからピーク分離を行い、化学結合状態を求めた。横軸は結合エネルギーで縦軸は強度比である。また、下から上に向かっては深さ方向での測定スペクトルを示している。
測定条件を表1に示す。一般にピークシフトの量は結合状態に依存することが知られており、本件に関するシリコーンゴムの場合、Si2p軌道において高エネルギー側にピークがシフトするということが、Siに結合している酸素の数が増えていることを示す。
図5(a)には、図4にみられたような酸素の極大値、炭素の極小値は見られない。さらにSi2p結合エネルギーシフトが高エネルギー側にシフトする様子もみられないことから、Siに結合した酸素の数も変化していないことが確認された。
層の厚みは0.01以上5μm以下であり、5μmを超えると、硬度が高くなることにより紙やトナーの凹凸に追従できなくなる。
また、0.01μm未満では耐久向上効果が得られない。好ましくは0.01以上1.0μm以下である。
化学式 R1(4−n) Si(OR2)n ・・・一般式(1)
(R1 およびR2 は、炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基、アルキルポリエーテル鎖、またはアリール基およびその誘導体、nは2〜4の整数)
さらに、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン類、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類等が挙げられる。
また、金属原子として、Si以外に、Ti、Sn、Al、Zrであるものを単独または2種以上を混合して用いることも可能である。
上記のカップリング剤等の表面処理剤による処理は、弾性体にプラズマ処理や電子線架橋、UVオゾン処理など表面改質処理を行った後に、弾性体の表面に表面処理剤の液を塗布またはディッピング等により含浸させることによって行うことができ、これにより酸素極大値をもつ改質層を形成できる。
カップリング剤等の表面処理剤を弾性体の表面に塗布またはディッピングして浸透させることにより、表面処理剤が基材にしみ込んでいき、ポリオルガノシロキサンが濃度分布をもって存在するようになり、この分布はポリオルガノシロキサンに含まれる酸素原子が深さ方向に極大値を有するような分布となる。
円筒状の長さ320mm厚み50μmの基材(ポリイミド)上にシリコーン用プライマー層を下地として乾燥後、その上にフロロシリコーンゴム(信越化学工業:X36−420U)を200μmの厚みで形成し、150℃で10min加熱した。
その上に以下の条件でプラズマ処理をおこなった。
装置 : ヤマト科学製:PR−500
出力 : 100W
処理時間 : 4分
反応ガス : アルゴン99.999%
反応圧力 : 10Pa
さらにこの上にフッ素系炭素化合物であるオプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)パーフルオロヘキサンで希釈した0.1%溶液を引き上げ速度10mm/minのディッピング工法にて塗布し、その後、湿度90%温度60℃の環境で30分以上保持後、150℃10分の乾燥を実施し乾燥したものを定着部材として用いた。
以上の様にして製作した定着部材を(株)リコー製複写機:imagio MPC3000の定着装置に装着させ、トナーベタ画像30k枚の通紙試験を行った。試験紙としてはアスクル:マルチペーパー スーパーホワイトを使用した。評価は表2に示す基準で判定した。
実施例1におけるフロロシリコーンゴムの代わりにシリコーンゴム(DY35−2083:東レ製)を200μm塗装し、150℃、30minで加熱後、200℃4hで二次加硫したものを用いた以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるオプツールDSXの代わりにテトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル)(和光純薬工業(株)製)をディッピング塗布した以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
[実施例4]
実施例2におけるオプツールDSXの代わりにテトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル)(和光純薬工業(株)製)をディッピング塗布した以外は実施例2と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるプラズマ反応ガスとしてアルゴンに代えて窒素を用いた以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるプラズマ反応ガスとしてアルゴンの代わりに酸素を用いた以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるプラズマ処理をおこなった直後のものを定着部材として用い、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるオプツールDSXの代わりにオルトケイ酸テトラエチル(和光純薬工業(株)製)をディッピング塗布し、フロロシリコーンゴムの代わりにアクリルゴム(Nipol AR51:日本ゼオン製) 製)を用いた以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例8におけるアクリルゴムの代わりにブチルゴム(BR51:JSR(株)製)を用いた以外は実施例8と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例8におけるアクリルゴムの代わりにエチレンプロピレンゴム(EP11:JSR(株)製)を用いた以外は実施例8と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
実施例1におけるオプツールDSXの代わりに、イソプロポキシドチタン(高純度化学製)50%エタノール溶液をディッピング塗布した以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
円筒状の長さ320mm厚み50μmの基材(ポリイミド)上にシリコーン用プライマー層を下地として乾燥後、その上にフロロシリコーンゴム(信越化学工業:X36−420U)を200μmの厚みで形成し、150℃で10min加熱したものを定着部材として作成し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
比較例1におけるフロロシリコーンゴムの代わりにシリコーンゴム(DY35−2083:東レ製)を200μm塗装し、150℃、30minで加熱後、200℃4hで二次加硫したものを用いた以外は実施例1と同様にして定着部材を作製し、実施例1と同様にして評価をおこなった。
比較例1では部材表面の摩耗が著しく進行し、その傷に起因する定着不良が発生し、離型性においては部材オフセットは発生しないものの異常画像相当の画像オフセットが発生し合格レベルに達しない。
比較例2では部材表面の摩耗が著しく進行し、その傷に起因する定着不良が発生し、離型性においては部材オフセット、異常画像相当の画像オフセットともに発生し、合格レベルに達しない。
実施例2,3、4、8,9,10,11では実施例1よりも離型効果が低いが合格レベルに達し、効果を確認できた実施例5,6,7では実施例1に対して耐摩耗性と離型性が低くなるが合格レベルに達し、効果を確認できた。
以上より、本発明を用いた定着部材を搭載することで、耐摩耗性に優れ、摩耗に起因する画像不良を長期にわたり発生することのない定着部材を提供できる。また、同時に画像オフセットが発生しないために十分な離型性をもつ定着部材を提供できる。結果として耐久性・信頼性を向上させた定着装置を提供でき、この定着装置を有することで、高耐久、高信頼を有する電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンターが利用可能であり、「環境負荷低減」や「顧客満足の向上」に寄与する。
102 帯電ローラ
103 露光
104 現像ローラ
105 パワーパック
106 転写ローラ
107 記録シート
108 クリーニング装置
109 表面電位計
110 加熱定着ローラ
111 加圧ローラ
112 ベルト方式定着器
113 定着ベルト
114 定着ローラ
115 加圧ローラ
116 加熱ローラ
201 基材
202 弾性層
Claims (12)
- 記録媒体上のトナー像を加熱して当該記録媒体に定着させるプロセスに用いられる定着部材であって、その基材上に3ないし4つの酸素原子と結合した珪素原子を有するポリオルガノシロキサンを含有する表層を設け、前記表層が、深さ方向に酸素濃度の極大値を持つことを特徴とする定着部材。
- 前記ポリオルガノシロキサン層を含有する表層が、深さ方向に炭素濃度の極小値を持つことを特徴とする請求項1に記載の定着部材。
- 前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層において、酸素濃度極大値を示す深さ位置と炭素濃度極小値を示す深さ位置とが一致することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の定着部材。
- 前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層の表面に、酸素を介した結合によりパーフルオロアルキルエーテル基が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の定着部材。
- 前記基材と前記ポリオルガノシロキサンを含有する表層との間に弾性層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の定着部材。
- 前記弾性層がシロキサン結合を主鎖とする弾性ゴムであることを特徴とする請求項5に記載の定着部材。
- 前記弾性ゴムがフロオロシリコーンゴムであることを特徴とする請求項6に記載の定着部材。
- ユニバーサル硬度(5μm押込み時)が0.5N/mm2以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の定着部材。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の定着部材を有する定着装置。
- 定着部材が定着ローラ及び、該定着ローラに対抗配置されている加圧ローラの少なくとも一方として用いられていることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
- 定着部材が、定着ベルト及び該定着ベルトに対向配置されている加圧ベルトの少なくとも一方として用いられていることを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
- 請求項9〜11のいずれかに記載の定着装置を用いたことを特徴とする電子写真式の画像形成装置。
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