JP5648904B2 - ポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを含浸させたプリプレグ、積層板および半導体装置 - Google Patents
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Description
で表される構成単位Aと、
下記式(2):
で表される構成単位Bとを含有し、且つ前記構成単位Aの含有率が50〜95モル%であるポリエステルイミド樹脂、および無機充填材を含有することを特徴とするものである。
で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
先ず、本発明のポリエステルイミド樹脂組成物について説明する。本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、特定のビフェニル骨格を含有する酸無水物エステル残基とアミド結合を含有する特定の芳香族ジアミン残基とからなる構成単位Aを所定の割合で含有するポリエステルイミド樹脂と無機充填材とを含有するものである。
本発明に用いられるポリエステルイミド樹脂は、下記式(1):
前記構成単位Aにアミド結合が存在することによって、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後における線熱膨張係数が低下し、寸法安定性が向上する。その結果、このようなポリエステルイミド樹脂組成物を用いることによって、反りの少ない積層板を得ることが可能となる。
で表される2価の基と異なるものである。前記式(2)中のAr3としては、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が緩和され、溶剤溶解性が向上するという観点から、下記式(I)〜(VIII):
本発明にかかるポリエステルイミド樹脂は、例えば、下記式(3):
H2N−Ar3−NH2 (5)
で表されるその他のジアミン(以下、「ジアミンB」という)と、
を反応させて、下記式(6):
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物には無機充填材が含まれている。無機充填材を含有させることによって、ポリエステルイミド樹脂組成物の流動性を制御したり、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後の線熱膨張係数を低下させたり、難燃性を向上させたりすることが可能となる。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物においては、カップリング剤を含有させることが好ましい。前記カップリング剤を含有させることによって、前記ポリエステルイミド樹脂と前記無機充填材との界面の濡れ性を向上させることができ、これにより、繊維基材などに対してポリエステルイミド樹脂および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。このようなカップリング剤としては特に制限はないが、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤などのシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。このようなカップリング剤の含有量としては、ポリエステルイミド樹脂と無機充填材の合計量100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。カップリング剤の含有量が前記下限未満になると、無機充填材をポリエステルイミド樹脂中に均一に分散させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリエステルイミド樹脂組成物の物性が低下する傾向にある。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は溶剤を含有していてもよい。このような溶剤としては、ポリエステルイミド樹脂が良好な溶解性を示すもの、例えば、前記例示した溶剤が好ましい。溶剤の含有量としては特に制限はないが、ポリエステルイミド樹脂組成物の含浸性が向上するという観点から、樹脂固形分濃度が5〜30質量%(より好ましくは10〜25質量%)となる量が好ましい。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、前記ポリエステルイミド樹脂と無機充填材と、必要に応じてカップリング剤とを混合することによって製造することができる。また、溶剤を混合することによって樹脂ワニスを得ることができる。このような樹脂ワニスを製造する方法としては、前記ポリエステルイミド樹脂とその合成時に使用した溶媒とを含む反応液と、無機充填材と、必要に応じてカップリング剤、その他半導体パッケージ用基板やプリント配線基板に使用される樹脂組成物において公知の添加剤とを混合して樹脂ワニスを得る方法、あるいは、反応液から前記ポリエステルイミド樹脂を単離した後、得られたポリエステルイミド樹脂と無機充填材と適切な溶剤と、必要に応じてカップリング剤などの前記各成分とを混合して樹脂ワニスを得る方法など、通常適用し得るあらゆる手順、方法を採用できる。また、無機充填材およびカップリング剤の混合方法としては、無機充填材とカップリング剤を乾式混合または湿式混合などにより予め混合して無機充填材をカップリング剤で処理した後、前記ポリエステルイミド樹脂などの残りの樹脂ワニス成分と混合する方法、無機充填材およびカップリング剤を各々別々に残りの樹脂ワニス成分に混合する方法、さらには、予め溶剤に分散したカップリング剤処理または未処理の無機充填材を残りの樹脂ワニス成分と混合する方法、など通常適用し得るあらゆる手順、方法を採用できる。
本発明のプリプレグは、基材に本発明のポリエステルイミド樹脂組成物を含浸させ、必要に応じて乾燥させることによって得られるものである。本発明のプリプレグに用いられる基材としては、ガラス織布、ガラス不織布、ガラスペーパーなどのガラス繊維基材;紙(パルプ)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維からなる織布や不織布;金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維などからなる織布、不織布、マット類などが挙げられる。これらの基材は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明の積層板は、本発明のプリプレグに熱処理を施すことによって形成される層を備えるものである。また、前記プリプレグは1枚であっても2枚以上が積層されていてもよい。このような積層板を製造する場合、後述する他の層を形成(積層)する前に1枚または複数枚を積層したプリプレグに熱処理を施してもよいが、1枚または複数枚を積層したプリプレグ上に他の層を形成(積層)した後、これらにまとめて熱処理を施すことが好ましい。これにより、積層するプリプレグ間の界面の接着性が高くなり、層間剥離に起因する物性低下が起こりにくくなる傾向にある。前記熱処理としては加熱加圧成形などが挙げられる。
本発明の半導体装置は、本発明の積層板と、この積層板上に配置された半導体そしとを備えるものである。前記半導体素子としては特に制限はなく、TEGチップなど公知の半導体素子を使用することができる。このような半導体装置においては、反りが少ない積層体を備えているあるため、接続不良が発生しにくく、接続信頼性が優れている。
(1)酸無水物
・OPPBP−TME:3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェノール−ビス(トリメリテートアンハイドライト)(本州化学工業(株)製)
・DABAN:4,4’−ジアミノベンズアニリド(日本純良薬品(株)製)
(1)3,3’−ジ(4−トリル)−4,4’−ビフェノール(OTBP)の合成
温度計、冷却管、攪拌機を備えた1Lの四つ口フラスコに、2−(4−トリル)−4−ブロモフェノール84.20g(0.320モル)、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液280ml、5%のパラジウム/カーボン触媒0.70g、ジオキサン280mlを仕込み、攪拌しながら90℃付近に昇温した。溶液の温度を90℃付近に保ちながら、水70mlに溶解した硫酸ヒドロキシルアミン26.26g(0.160モル)の水溶液を3時間かけて前記溶液に滴下した。滴下終了後、90℃で1時間加熱しながら反応を継続した。得られた反応液を濾過してパラジウム/カーボン触媒を濾別した。濾液を塩酸でpH4付近まで中和した後、クロロホルム150mlを加えて50℃で抽出してクロロホルム層を分離した。分離したクロロホルム溶液を150mlの純水で2回洗浄した後、脱溶媒し、減圧蒸留してモノフェノール成分を除去した。その後、残留物をイソプロピルエーテル/アセトンを用いて再結晶を行い、真空乾燥して白色結晶性粉末38.90gを得た。収率は66.0%であった。FT−IRおよび1H−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(OTBP)であることを確認した。
温度計、還流冷却管、滴下ロートを備えた1Lの四つ口フラスコに、無水トリメリット酸クロライド50.54g(0.240モル)、メチルイソブチルケトン180g、アセトン80gを仕込み、0〜5℃に冷却しながら溶解させた。一方、前記(1)で合成したOTBP36.65g(0.100モル)、ピリジン17.42g(0.300モル)、メチルイソブチルケトン30.0gを混合して室温下で溶解させた。この溶液を滴下ロートを用いて前記四つ口フラスコに温度を0〜5℃に保持しながら撹拌下で2時間かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、さらに温度0〜5℃で1時間攪拌した後、70℃で6時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、塩酸水と水を添加して撹拌した後、水層を分離した。得られた油層に水を添加して撹拌した後、水層を分離する操作(水洗)を4回繰り返して、副生物のピリジン塩酸塩を除去した。この水洗時に目的物が開環してテトラカルボン酸が形成されるため、水洗後の油層に無水酢酸40.84g(0.400モル)を加えて温度80〜90℃で20時間かけて閉環させた。得られた溶液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過して白色結晶51.46gを得た。収率は72.0%であった。FT−IRおよび1H−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(OTBP−TME)であることを確認した。
(1)3,3’−ジ(1−ナフチル)−4,4’−ビフェノール(ONBP)の合成
2−(4−トリル)−4−ブロモフェノールの代わりに2−(1−ナフチル)−4−ブロモフェノール95.73g(0.320モル)を用いた以外は、前記OTBPの合成方法と同様の方法により白色結晶性粉末50.61gを得た。収率は72.1%であった。FT−IRおよび1H−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(ONBP)であることを確認した。
OTBPの代わりに前記(1)で合成したONBP43.85g(0.100モル)を用いた以外は、前記OTBP−TMEの合成方法と同様の方法により白色結晶55.31gを得た。収率は70.3%であった。FT−IRおよび1H−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(ONBP−TME)であることを確認した。
温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、ジアミン成分としてDABAN7.95g(0.035モル)およびODA3.01(0.015モル)を仕込み、N−メチル−2−ピロリドン40.0gを加えて60℃で攪拌して溶解させた。ジアミン成分が均一に溶解した後、得られた溶液を室温まで冷却し、酸無水物成分として粉末状のOPPBP−TME34.30g(0.050モル)を数回に分けてフラスコ内に添加し、室温で48時間攪拌して反応させ、ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
ジアミン成分としてMDABAN9.65g(0.040モル)およびODA2.00g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)40.3gを合成した。収率は88%であった。
ジアミン成分としてMODABAN11.58g(0.045モル)およびODA1.00g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)40.2gを合成した。収率は86%であった。
ジアミン成分としてAPTP10.39g(0.030モル)およびODA6.97g(0.020モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=6:4で含有するもの)47.4gを合成した。収率は92%であった。
ジアミン成分としてDABAN7.95g(0.035モル)およびDMB3.72g(0.015モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=7:3で含有するもの)41.7gを合成した。収率は91%であった。
ジアミン成分としてDABAN9.09g(0.040モル)およびDDS2.48g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)41.2gを合成した。収率は90%であった。
ジアミン成分としてDABAN6.82g(0.030モル)およびDADMTSN5.49g(0.020モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=6:4で含有するもの)40.0gを合成した。収率は86%であった。
ジアミン成分としてAPTP13.86g(0.040モル)およびABP3.24g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)45.2gを合成した。収率は89%であった。
酸無水物成分としてOTBP−TME35.73g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN10.23g(0.045モル)およびBAFL1.74g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)41.8gを合成した。収率は88%であった。
酸無水物成分としてONBP−TME39.33g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN10.23g(0.045モル)およびBAFL1.74g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)43.5gを合成した。収率は85%であった。
酸無水物成分としてPMDA10.91g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、反応液と析出物を1Lのメタノール中に投入して再沈殿を行い、吸引濾過により樹脂粉末を単離した。得られた樹脂粉末をさらに1Lのメタノールで洗浄した後、濾過・風乾し、さらに120℃で24時間真空乾燥を行い、精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末19.9gを得た。収率は92%であった。
酸無水物成分としてBPDA14.71g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末23.2gを得た。収率は91%であった。
酸無水物成分としてDSDA17.90g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末23.5gを得た。収率は82%であった。
酸無水物成分としてBP−TME26.72g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN6.70g(0.025モル)およびODA5.01(0.025モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末36.0gを得た。収率は94%であった。
酸無水物成分としてBPDA14.71g(0.050モル)、ジアミン成分としてODA10.01(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末21.8gを得た。収率は89%であった。
酸無水物成分としてDSDA17.90g(0.050モル)、ジアミン成分としてAPB14.62(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末26.5gを合成した。収率は82%であった。
酸無水物成分としてBP−TME26.72g(0.050モル)、ジアミン成分としてBAFL17.42(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末38.7gを得た。収率は88%であった。
ジアミン成分としてDABAN11.36(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応終了後、室温まで冷却中に反応液のゲル化が起こった。ゲル化物を1Lのメタノール中に投入して析出した固形分をミキサーで粉砕し、吸引濾過により樹脂粉末を単離した。得られた樹脂粉末をさらに1Lのメタノールで洗浄した後、濾過・風乾し、さらに120℃で24時間真空乾燥を行い、精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末41.0gを得た。収率は90%であった。
ジアミン成分としてDABAN3.41(0.015モル)およびBAFL12.20(0.035モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末40.8gを合成した。収率は84%であった。
ジアミン成分としてBAFL17.42(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末42.3gを合成した。収率は82%であった。
樹脂濃度が10質量%となるようにポリイミド樹脂にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、60℃で加熱しながら攪拌により混合して溶液を調製した。この溶液を室温まで冷却し、室温で24時間放置した後の溶液の状態を目視により観察して、樹脂の溶解性を下記の3段階で評価した。その結果を表1に示す。
A:析出物やゲル化物が見られず、均一透明な溶解性に優れるもの。
B:僅かな析出物やゲル化物が見られ、やや溶解性に劣るもの。
C:明確な析出物やゲル化物が見られ、溶解性に劣るもの。
ポリイミド樹脂にNMPを加えて樹脂濃度が0.5質量%の溶液を調製し、この溶液の30℃の還元粘度をウベローデ粘度計を用いて測定した。その結果を表1に示す。
ポリイミド樹脂にNMPを加えて樹脂濃度が10質量%のワニスを調製した。このワニスをガラス基板上に流延し、空気中、80℃で2時間乾燥し、さらに窒素オーブン中、200℃で2時間乾燥した後、残留応力を除去するために基板からポリイミド膜を剥がして、真空中、250℃で1時間熱処理を行い、膜厚30μmのポリイミド膜を得た。
前記(3)と同様にして作製した膜厚30μmのポリイミド膜について、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度10℃/分の条件で熱機械分析を行い、60〜260℃の範囲でのポリイミド膜の面方向(X方向)の伸びの平均値を求め、この値からポリイミド膜(30μm厚)の面方向(X方向)の線熱膨張係数(CTE)を求めた。その結果を表1に示す。
(1)樹脂ワニスの調製
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂35.0質量部、無機充填材として球状溶融シリカ((株)アドマテックス製「SO−25R」、平均粒径0.5μm)65.0質量部、シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製「A187」)0.3質量部を混合し、この混合物に固形分濃度が50質量%となるようにNMPを加え、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して樹脂ワニスを得た。
前記(1)で得られた樹脂ワニスを、厚さ90μmのガラス織布(ユニチカ(株)製「E10Tクロス」)および厚さ27μmのガラス織布(ユニチカ(株)製「E03Eクロス」)にそれぞれ含浸させ、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、厚さ100μmのプリプレグと厚さ40μmのプリプレグを作製した。
前記(2)で得られた厚さ100μmのプリプレグの両面に、厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業(株)製「3EC−M3−VLP」)を重ね、圧力3MPa、温度260℃で2時間加熱加圧成形して両面銅箔を有する銅張積層板(厚さ0.1mm)を作製した。
前記(3)で得られた銅張積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。次いで、銅張積層板の両面にエッチングを施して回路を形成し、内層回路基板を作製した。この内層回路基板の表裏に、前記(2)で得られた厚さ40μmのプリプレグを重ね合わせ、これを、真空プレスを用いて温度260℃、圧力3MPaで2時間真空加熱成形して多層プリント配線板を作製した。
前記(4)で得られた多層プリント配線板の絶縁層(厚さ40μmのプリプレグ部分)に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路を形成し、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。次に、最外層としてソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、半導体素子が実装できるように露光・現像により接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施した後、多層プリント配線板を50mm×50mmの大きさに切断した。
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂の代わりに、それぞれ合成例2〜10で得られたポリエステルイミド樹脂35.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂の代わりに、比較合成例10で得られたポリイミド樹脂35.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
ポリエステルイミド樹脂35.0質量部の代わりに、ビスマレイミド樹脂として2,2’−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシフェニル)プロパン(ケイ・アイ化成(株)製「BMI−80」)25.7質量部、その硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製「4,4’−DAS」)9.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
ポリエステルイミド樹脂35.0質量部の代わりに、エポキシ樹脂としてビフェニルアラルキルノボラックエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC−3000」)20.0質量部、シアネート樹脂としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン(株)製「プリマセットPT−30」)15.0質量部、これらの硬化剤として2−フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「キュアゾール2P4MZ」)0.15質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
比較合成例10で得られたポリイミド樹脂の含有量を30.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
ビスマレイミド樹脂の含有量を22.0質量部に、その硬化剤の含有量を8.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
エポキシ樹脂の含有量を17.1質量部に、シアネート樹脂の含有量を12.9質量部に、硬化剤の含有量を0.12質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例3と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
比較合成例10で得られたポリイミド樹脂の含有量を25.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
ビスマレイミド樹脂の含有量を18.4質量部に、その硬化剤の含有量を6.6質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
エポキシ樹脂の含有量を14.3質量部に、シアネート樹脂の含有量を10.7質量部に、硬化剤の含有量を0.10質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例3と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
銅張積層板(厚さ0.1mm)の断面を走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JCM−5700」)を用いて観察した。この断面観察において観察されたボイドの面積の割合に基づいて、樹脂ワニスの含浸性を下記の3段階で評価した。その結果を表2〜3に示す。
A:ボイドの面積が断面の全面積の10%未満であった場合。
B:ボイドの面積が断面の全面積の10〜30%であった場合。
C:ボイドの面積が断面の全面積の30%を超えた場合。
銅張積層板(厚さ0.1mm)の銅箔を全面エッチングにより除去し、得られた積層板から6mm×25mmの試験片を切り出し、この積層板について、粘弾性スペクトロメータ(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DMS6100」)を用いて、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、tanδピークから積層体のガラス転移温度(Tg)を算出した。その結果を表2〜3に示す。
銅張積層板(厚さ0.1mm)の銅箔を全面エッチングにより除去し、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を切り出し、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分の条件で熱機械分析を行い、60〜260℃の範囲での積層体の面方向(X方向)の伸びの平均値を求め、この値から積層板の面方向(X方向)の線熱膨張係数(CTE)を求めた。その結果を表2〜3に示す。
銅張積層板(厚さ0.1mm)に、直径0.1mmのドリル刃を用い、30万回転/個で2000個の穴を開けた後のドリル刃の刃先の状態を下記の2段階で判定し、ドリル加工性を評価した。その結果を表2〜3に示す。
A:刃先が十分残っており、再研磨によるドリル刃の再生が可能。
B:刃先が丸まってしまい、ドリル刃の再生が困難。
多層プリント配線板について、温度可変レーザー三次元測定機((株)日立テクノロジーアンドサービス製「LS220−MT100MT50」)を用い、測定温度25℃または260℃において高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい部分の値を多層プリント配線板の反り量とした。その結果を表2〜3に示す。
10個の半導体装置について、デイジーチェーンにより接続部の導通を確認し、接続信頼性を導通不良個数で評価した。その結果を表2〜3に示す。
Claims (6)
- 下記式(1):
で表される構成単位Aと、
下記式(2):
で表される構成単位Bとを含有し、且つ前記構成単位Aの含有率が50〜95モル%であるポリエステルイミド樹脂、および無機充填材を含有することを特徴とするポリエステルイミド樹脂組成物。 - 前記式(1)および前記式(2)中のAr1およびAr2が、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニル基または置換もしくは無置換のナフチル基であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルイミド樹脂組成物。
- 前記式(2)中のAr3が、下記式(I)〜(VIII):
で表される2価の基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルイミド樹脂組成物。 - 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリエステルイミド樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
- 請求項4に記載のプリプレグに熱処理を施すことにより形成される層を備えることを特徴とする積層板。
- 請求項5に記載の積層板と、該積層板上に配置された半導体素子とを備えることを特徴とする半導体装置。
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