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JP5517237B2 - エポキシ化合物の製造方法、エポキシ化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

エポキシ化合物の製造方法、エポキシ化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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JP5517237B2 JP2009214738A JP2009214738A JP5517237B2 JP 5517237 B2 JP5517237 B2 JP 5517237B2 JP 2009214738 A JP2009214738 A JP 2009214738A JP 2009214738 A JP2009214738 A JP 2009214738A JP 5517237 B2 JP5517237 B2 JP 5517237B2
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Description

本発明は塩素量の少ない高純度なエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料、レジストなどの幅広い分野に利用されている。近年、特に半導体関連材料の分野においてはカメラ付き携帯電話、超薄型の液晶やプラズマTV、軽量ノート型パソコンなど軽・薄・短・小がキーワードとなるような電子機器があふれ、これによりエポキシ樹脂に代表されるパッケージ材料にも非常に高い特性が求められてきている。特に先端パッケージはその構造が複雑になり、液状封止でなくては封止が困難な物が増加している。例えばEnhancedBGAのようなキャビティーダウンタイプの構造になっているものは部分封止を行う必要があり、トランスファー成型では対応できない。このようなことから高機能な液状エポキシ樹脂の開発が求められている。
またコンポジット材、車の車体や船舶の構造材として、近年、その製造法の簡便さからRTMが使用されている。このような組成物においてはカーボンファイバー等への含浸のされやすさから低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。
また、オプトエレクトロニクス関連分野、特に近年の高度情報化に伴い、膨大な情報を円滑に伝送、処理するために、従来の電気配線による信号伝送に変わり、光信号を生かした技術が開発されていく中で、光導波路、青色LED、および光半導体等の光学部品の分野においては透明性に優れた樹脂の開発が望まれている。これらの要求に対し、脂環式のエポキシ樹脂が注目されている。具体的にはエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂群である。
このようなエポキシ樹脂は従来、有機過酸化物を使用した製造法が一般的である。しかしながら、この製造法においては暴走等の危険が伴うこと、また生成物の高分子量化、さらには生成物に有機化酸化物の付加体、特にカルボン酸付加体が生成し、これらが電気電子材料に置ける厳しい環境下において、カルボン酸イオンが溶出する、と言う問題がある。
このようなことから、近年、過酸化水素を使用したエポキシ化が検討されている。例えばヘテロポリ酸と4級アンモニウム塩の組み合わせが多く報告されている。これらに使用される4級アンモニウム塩は一般に4級アンモニウムハライドである。4級アンモニウムハライドはその反応性に優れるものの、反応中に生成するエポキシ環にハロゲン化水素が付加してしまうという問題が生じる。これらハロゲン化物は特に電気電子材料に使用した場合、電気信頼性を低下させてしまう要因ともなり、好ましくない。また、4級アンモニウムハライドを使用した場合、その反応において反応性が良いものの、加水分解生成物が多く生成するという問題が生じ、生産性の面からも問題があった。
特開2002−69079号公報 特開2001−17863号公報 特開2005−169363号公報 特開2004−115455号公報 特開平5−213919号公報
本発明は過酸化水素を使用するエポキシ化合物の製造法であって、ハロゲン含有量の少ないエポキシ化合物、および、本エポキシ化合物を使用した光学用途に好適な硬化性樹脂組成物を提供する
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は
(1)
炭素-炭素二重結合を有する化合物を過酸化水素、タングステン酸類及び4級アンモニウムのカルボン酸塩の存在下に酸化することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法、
(2)
タングステン酸類がタングステン酸、燐タングステン酸またはケイタングステン酸から選ばれる少なくとも1種の酸、あるいはその塩である前項(1)記載のエポキシ化合物の製造方法、
(3)
タングステン酸類のカウンターカチオンがプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンのいずれか1種であることを特徴とする前項(1)に記載のエポキシ化合物の製造方法、
(4)
2種類以上のタングステン酸類を使用することを特徴とする前項(1)に記載のエポキシ化合物の製造方法、
(5)
2種類以上のタングステン酸類が酸性物質と塩基性物質の組み合わせであることを特徴とする前項(4)に記載のエポキシ化合物の製造方法、
(6)
4級アンモニウムのカルボン酸塩が酢酸塩であることを特徴とする前項(1)記載のエポキシ化合物の製造法、
(7)
タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量の比が使用するタングステン酸類の価数倍の1.1〜10倍当量の4級アンモニウムのカルボン酸塩を使用することを特徴とする前項(1)〜(6)に記載のエポキシ化合物の製造方法、
(8)
タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量の比がタングステン酸類の価数倍の0.1〜0.8倍当量の4級アンモニウムのカルボン酸塩を使用することを特徴とする前項(1)〜(6)に記載のエポキシ化合物の製造方法、
(9)
炭素-炭素二重結合を有する化合物を過酸化水素を用いたエポキシ化工程により製造される多価エポキシ化合物であって、かつ、その全塩素量が1ppm以上100ppm以下、さらに、エポキシに対し、炭素数1〜5のカルボン酸付加物の量が0.5%以下(ガスクロマトグラフィー 面積%)であることを特徴とするエポキシ化合物、
(10)
前項(1)〜(8)のいずれか一項に記載の製造法により得られるエポキシ化合物または前項(9)記載のエポキシ化合物を含有する硬化性樹脂組成物、
(11)
前項(1)〜(8)のいずれか一項に記載の製造法により得られるエポキシ化合物または前項(9)記載のエポキシ化合物とリン含有酸化防止剤を含有する硬化性樹脂組成物、
(12)
硬化剤および/または硬化触媒を含有する前項(10)または(11)に記載の硬化性樹脂組成物、
(13)
硬化剤が、酸無水物構造、および/またはカルボン酸構造を有することを特徴とする前項(12)に記載の硬化性樹脂組成物、
(14)
硬化触媒が、スルホニウム塩またはヨードニウム塩であることを特徴とする前項(12)に記載の硬化性樹脂組成物、
(15)
前項(12)〜(14)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
に関する。
本発明は、特定の4級アンモニウム塩を使用することにより、ハロゲン含有量、加水分解物の少ないエポキシ化合物を得ることができる。本発明により得られるエポキシ化合物は熱安定性に優れ、これを含む本発明の硬化性脂組成物は電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、などの広範囲の用途、特に低着色性から光学材料にきわめて有用である。
本発明は、過酸化水素を使用した炭素-炭素二重結合の酸化反応において、タングステン酸類と、4級アンモニウムのカルボン酸塩を使用することを特徴とする。
炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、分子中に炭素-炭素二重結合を有する化合物であれば特に限定はされないが、本発明においては特に二重結合がシクロ環中にあることが好ましく、特に分子内にシクロヘキセン構造、さらにはシクロヘキセンカルボキシエステル構造を有するものが好ましい。具体的な化合物としてはシクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980)等に記載の手法)、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(特開2003−170059号公報、特開2004−262871号公報等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物を酸化した物などが挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
さらには、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコール体とのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すれば製造でき、例えば、反応媒体にトルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号公報)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号公報)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
具体的なエポキシ化の手法としては原料である炭素-炭素二重結合を有する化合物とタングステン酸類及び4級アンモニウム塩を有機物、過酸化水素水のエマルジョン状態で反応を行う。
タングステン酸類としては、タングステン酸;12−タングストリン酸、12−タングストホウ酸または18−タングストリン酸等の燐タングステン酸;12−タングストケイ酸等のケイタングステン酸及びその塩等が挙げられる。
これらの塩のカウンターカチオンとしては4級アンモニウムイオン、アルカリ土類金属イオン、アルカリ金属イオンなどが挙げられる。
具体的にはテトラメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、トリデカニルメチルアンモニウムイオン、ジラウリルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリアルキルメチル(オクチル基とデカニル基の混合タイプ)アンモニウムイオン、トリヘキサデシルメチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン、トリカプリルメチルアンモニウムイオン、ジセチルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオン、カルシウムイオンマグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属イオンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
特に好ましいカウンターカチオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンである。
使用量としては原料1モルに対し、タングステン元素換算で0.5〜20ミリモル、好ましくは1.0〜20ミリモル、さらに好ましくは2.5〜15ミリモルである。
タングステン酸類は2種以上を組み合わせて使用することが好ましく、例えば酸性のタングステン酸類と塩基性のタングステン酸類の組み合わせが好ましく、特に好ましくはタングステン酸、12−タングストリン酸、12−タングストホウ酸、18−タングストリン酸、12−タングストケイ酸から選ばれる1種類以上と、タングステン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、12−タングストリン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、12−タングストホウ酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、18−タングストリン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、12−タングストケイ酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩から選ばれる1種類以上の組み合わせが好ましく、特にタングステン酸、12−タングストリン酸、12−タングストケイ酸から選ばれる1種類以上と、タングステン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、12−タングストリン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩から選ばれる1種類以上の組み合わせが好ましい。
4級アンモニウム塩としては、総炭素数が10以上、好ましくは25〜100、より好ましくは25〜55の4級アンモニウム塩が好ましく使用でき、特にそのアルキル鎖が全て脂肪族鎖であるものが好ましい。
具体的にはトリデカニルメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチル(アルキル基がオクチル基である化合物とデカニル基である化合物の混合タイプ)アンモニウム塩、トリヘキサデシルメチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、トリセチルメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。
またこれら塩のアニオン種は、カルボン酸イオンを使用する。カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、炭酸イオン、ギ酸イオンが好ましく、特に酢酸イオンが好ましい。ハロゲンイオンをカウンターイオンとして有する場合、そのハロゲンが生成するエポキシ基と反応し、ハロゲンイオンが残存してしまうという問題がある。さらに、硫酸イオン、メチル硫酸イオン等の硫酸系のイオンをカウンターイオンとして有する場合、エステル構造の加水分解が見られることから、好ましくない。
炭素数が100を上回ると疎水性が強くなりすぎて、4級アンモニウム塩の有機層への溶解性が悪くなる場合がある。炭素数が10以下であると親水性が強くなり、同様に4級アンモニウム塩の有機層への相溶性が悪くなる場合がある。
4級アンモニウム塩には一般にハロゲンが残存する。本発明においては特に、1重量%以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である4級アンモニム塩を使用するのが好ましい。総ハロゲン量が1重量%を超える場合、生成物に多量にハロゲンが残存するため好ましくない。
タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量は使用するタングステン酸類の価数倍の0.01〜0.8倍当量、あるいは1.1〜10倍当量が好ましい。より好ましくは0.05〜0.7倍当量、あるいは1.2〜6.0倍当量であり、さらに好ましくは0.05〜0.5倍当量、あるいは1.3〜4.5倍当量である。
例えば、タングステン酸であればHWOで2価であるので、タングステン酸1モルに対し、4級アンモニウムのカルボン酸塩は0.02〜1.6モル、もしくは2.2〜20モルの範囲が好ましい。またタングストリン酸であれば3価であるので、同様に0.03〜2.4モル、もしくは3.3〜20モル、ケイタングステン酸であれば4価であるので0.04〜3.2モル、もしくは4.4〜40モルが好ましい。
4級アンモニウムのカルボン酸塩の量が、タングステン酸類の価数倍の1.1倍当量よりも低い場合、エポキシ化反応が進行しづらい(場合によっては反応の進行が早くなる)、また副生成物ができやすいという問題が生じる。10倍当量よりも多い場合、過剰の4級アンモニウムのカルボン酸塩の処理が大変であるばかりか、反応を抑制する働きがあり、好ましくない。
カルボン酸イオンをアニオンとする4級アンモニウム塩は、市販品を使用してもよいし、例えば、原料4級アンモニウム塩を金属水酸化物やイオン交換樹脂で処理し、4級アンモニウムハイドロオキサイドに変換し、さらに各種カルボン酸と反応させるなどの方法により製造してもよい。原料4級アンモニウム塩としては、4級アンモニウムのハロゲン化物や各種金属塩等が挙げられる。また好適な4級アンモニウムハイドロオキサイドがあればそれを用いても構わない。
本発明における酸化反応には、好ましくは緩衝液を使用する。
緩衝液としてはいずれも用いることができるが、本反応においてはリン酸塩水溶液を用いるのが好ましい。そのpHとしてはpH4〜10の間に調整されたものが好ましく、より好ましくはpH5〜9である。pH4以下の場合、エポキシ基の加水分解反応、重合反応が進行しやすくなる。またpH10以上である場合、反応が極度に遅くなり、反応時間が長すぎるという問題が生じる。
特に本発明においては触媒であるタングステン酸類を溶解した際に、pH6〜8の間になるように調整されることが好ましい。
緩衝液の使用法は、例えば好ましい緩衝液であるリン酸−リン酸塩水溶液の場合は、過酸化水素に対し、0.1〜10モル%当量のリン酸(あるいはリン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩)を使用し、塩基性化合物(たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等)でpH調整を行うという方法が挙げられる。また、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどを用いて調整することも可能である。好ましいリン酸塩の濃度は0.1〜60重量%、好ましくは1〜45重量%である。
また、本反応においては緩衝液を使用せず、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、など(またはその水和物)を、pH調整無しにリン酸塩を直接添加しても構わない。工程の簡略化、という意味合いではpH調整のわずらわしさが無く、直接の添加が特に好ましい。この場合のリン酸塩の使用量は、過酸化水素に対し、通常0.1〜5モル%当量、好ましくは0.2〜4モル%当量、より好ましくは、0.3〜3モル%当量である。この際、過酸化水素に対し、5モル%当量を超えるとpH調整が必要となり、0.1モル%当量以下の場合、できたエポキシ化合物の加水分解物が進行しやすくなる、あるいは反応が遅くなるなどの弊害が生じる。
本反応は過酸化水素を用いてエポキシ化を行う。本反応に使用する過酸化水素としては、その取扱いの簡便さから過酸化水素濃度が10〜40重量%である水溶液が好ましい。濃度が40重量%を超える場合、取扱いが難しくなる他、生成したエポキシ化合物の分解反応も進行しやすくなることから好ましくない。
本反応は有機溶剤を使用する。使用する有機溶剤の量としては、反応基質である炭素-炭素二重結合を有する化合物1に対し、重量比で0.3〜10であり、好ましくは0.3〜5、より好ましくは0.5〜2.5である。重量比で10を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることから好ましくない。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が使用できる。また、場合によっては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物、アセトニトリル等の二トリル化合物なども使用可能である。特に好ましい溶剤としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物である。
具体的な反応操作方法としては、例えばバッチ式の反応釜で反応を行う際は、炭素-炭素二重結合を有する化合物、過酸化水素(水溶液)、タングステン酸類、緩衝液(もしくはリン酸塩類)、4級アンモニウム塩及び有機溶剤を加え、二層で撹拌する。撹拌速度に特に指定は無い。過酸化水素の添加時に発熱する場合が多いことから、各成分を添加した後に過酸化水素を徐々に添加する方法でも構わない。
この際、緩衝液(もしくは水とリン酸あるいはリン酸塩)、タングステン酸類を加えpH調整を行った後、4級アンモニウム塩、及び有機溶剤、炭素-炭素二重結合を有する化合物を加え、二層で撹拌したところに、過酸化水素を滴下するという手法を用いる。
あるいは水、有機溶剤、炭素-炭素二重結合を有する化合物を撹拌している中に、タングステン酸類、リン酸(あるいはリン酸塩類)を加え、pH調整を行った後、4級アンモニウム塩を添加し、二層で撹拌したところに、過酸化水素を滴下するという手法を用いるという方法でも構わない。
反応温度は特に限定されないが0〜90℃が好ましく、より好ましくは0〜75℃、さらに15℃〜60℃、特に30〜55℃の範囲が好ましい。反応温度が高すぎる場合、加水分解反応が進行しやすく、さらには生成物が着色しやすい、という問題が生じる。また、反応温度が低いと反応速度が極端に遅くなる。
また反応時間は反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。好ましい範囲としては1〜48時間、好ましくは3〜36時間、さらに好ましくは4〜24時間である。
反応終了後、過剰な過酸化水素のクエンチ処理を行う。クエンチ処理は、塩基性化合物を使用して行なうことが好ましい。塩基性化合物によってクエンチを行なうことで、触媒であるヘテロポリ酸(塩類)の残存量を大幅に低減できる。また、還元剤と塩基性化合物を併用することも好ましい。
好ましい処理方法としては塩基性化合物でpH6〜10に調整後、還元剤を用い、残存する過酸化水素をクエンチする。pHが6以下の場合、過剰の過酸化水素を還元する際の発熱が大きく、生成しているエポキシ化合物を部分的に加水分解してしまう場合がある。またpHが10以上の場合もエポキシ化合物の加水分解、さらにはエステル結合の加水分解を引き起こしてしまう可能性がある。
還元剤としては亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドラジン、シュウ酸、アスコルビン酸、グルコースなどが挙げられる。還元剤の使用量としては過剰分の過酸化水素もモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。
これらは水溶液として加えることが好ましく、その濃度は0.5〜30重量%である。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩、イオン交換樹脂、アルミナ等の塩基性固体等が挙げられる。
これらは固形で加えても、水溶液として加えても構わないが、金属水酸化物や金属炭酸塩などは特に水溶液として加えることが好ましく、その濃度は0.5〜30重量%である。
その使用量としては水、あるいは有機溶剤(例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類など、各種溶剤)に溶解するものであれば、過剰分の過酸化水素のモル数に対し、通常0.01〜20倍モル、より好ましくは0.05〜10倍モル、さらに好ましくは0.05〜3倍モルである。
水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合、系中に残存する過酸化水素の量に対し、重量比で1〜1000倍の量を使用することが好ましい。より好ましくは10〜500倍、さらに好ましくは10〜300倍である。水や有機溶剤に溶解しない固体塩基を使用する場合は、後に記載する水層と有機層の分離の後、処理を行っても構わない。
過酸化水素のクエンチ後(もしくはクエンチを行う前に)、有機層と水層を分離する。この際、有機層と水層が分離しない、もしくは有機溶剤を使用していない場合は、前述の有機溶剤を添加して操作を行い、水層より反応生成物の抽出を行う。この際使用する有機溶剤は得られる原料炭素-炭素二重結合を有する化合物に対し、重量比で0.5〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この操作を必要により数回繰り返した後分離した有機層を、必要に応じて水洗して精製する。
得られた有機層は必要に応じてイオン交換樹脂や金属酸化物(特に、シリカゲル、アルミナなどが好ましい)、活性炭(中でも特に薬品賦活活性炭が好ましい)、複合金属塩(中でも特に塩基性複合金属塩が好ましい)、粘度鉱物(中でも特にモンモリロナイトなど層状粘度鉱物が好ましい)等により、不純物を除去し、さらに水洗、ろ過等を行った後、溶剤を留去し、目的とするエポキシ化合物を得る。
このようにして得られたエポキシ化合物はエポキシ基と水との反応による加水分解物、塩素等のハロゲンが導入されたもの、酢酸等のカルボン酸付加物などが不純物として含まれる。またエポキシ基同士の重合した高分子量体や、その他副反応物が反応条件によっては生成する。
本発明においては得られるエポキシ化合物は、特に、ハロゲン量、酢酸付加物等のカルボン酸付加物量が少なくなることを特徴としている。ハロゲンの導入や酢酸付加体は電気特性を著しく低下する恐れがあることから特に電子材料用途においては問題視されるものである。
本発明において得られるエポキシ化合物中に含まれるハロゲン量は1〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppm、特に好ましくは1〜100ppmである(燃焼法で測定、加水分解法においても代替可能である)。
さらにカルボン酸付加体の量は1%以下、特に0.5%以下、より好ましくは0.3%以下が好ましい(ガスクロマトグラフィーにて測定)。
得られたエポキシ化合物は、例えばエポキシアクリレートおよびその誘導体、オキサゾリドン系化合物、環状カーボネート化合物等の各種樹脂原料として使用できる。
以下、上記のようにして得られたエポキシ化合物(本発明のエポキシ化合物という)を含む硬化性樹脂組成物(本発明の硬化性樹脂組成物という)について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は本発明のエポキシ化合物を含有する。本発明の硬化性樹脂組成物においては、硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)と酸を硬化触媒とするカチオン硬化(硬化性樹脂組成物B)の二種の方法が適応できる。
硬化性樹脂組成物Aと硬化性組樹脂成物Bにおいて本発明のエポキシ化合物は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ化合物の全エポキシ樹脂(本発明のエポキシ化合物と他のエポキシ樹脂;以下同様)中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。ただし、本発明のエポキシ化合物を硬化性樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、1〜30重量%の割合で添加する。
本発明のエポキシ化合物と併用できる他のエポキシ樹脂のとしては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類またはアルコール類から誘導される、それらのグリシジルエーテル化物;脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特に本発明の硬化性樹脂組成物を光学用途に用いる場合、脂環式エポキシ樹脂やシルセスキオキサン構造のエポキシ樹脂との併用が好ましい。特に脂環式エポキシ樹脂の場合、骨格にエポキシシクロヘキサン構造を有する化合物が好ましく、シクロヘキセン構造を有する化合物の酸化反応により得られるエポキシ樹脂が好ましい。
これらエポキシ樹脂としては、シクロヘキセンカルボン酸とアルコール類とのエステル化反応あるいはシクロヘキセンメタノールとカルボン酸類とのエステル化反応(Tetrahedron vol.36 p.2409 (1980)、Tetrahedron Letter p.4475 (1980)等に記載の手法)、あるいはシクロヘキセンアルデヒドのティシェンコ反応(特開2003−170059号公報、特開2004−262871号公報等に記載の手法)、さらにはシクロヘキセンカルボン酸エステルのエステル交換反応(特開2006−052187号公報等に記載の手法)によって製造できる化合物を酸化した物などが挙げられる。
アルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオールなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類などが挙げられる。またカルボン酸類としてはシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれに限らない。
さらには、シクロヘキセンアルデヒド誘導体と、アルコール体とのアセタール反応によるアセタール化合物が挙げられる。反応手法としては一般のアセタール化反応を応用すれば製造でき、例えば、反応媒体にトルエン、キシレンなどの溶媒を用いて共沸脱水しながら反応を行う方法(米国特許第2945008号公報)、濃塩酸に多価アルコールを溶解した後アルデヒド類を徐々に添加しながら反応を行う方法(特開昭48−96590号公報)、反応媒体に水を用いる方法(米国特許第3092640号公報)、反応媒体に有機溶媒を用いる方法(特開平7−215979号公報)、固体酸触媒を用いる方法(特開2007−230992号公報)等が開示されている。構造の安定性から環状アセタール構造が好ましい。
これらエポキシ樹脂の具体例としては、ERL−4221、UVR−6105、ERL−4299(全て商品名、いずれもダウ・ケミカル製)、セロキサイド2021P、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150CE(全て商品名、いずれもダイセル化学工業製)及びジシクロペンタジエンジエポキシドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない(参考文献:総説エポキシ樹脂 基礎編I p76−85)。
これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
以下、それぞれの硬化性樹脂組成物について説明する。
硬化剤による熱硬化(硬化性樹脂組成物A)
本発明の硬化性樹脂組成物Aが含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物(アミン、アミド化合物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体などの化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明においては特に前述の酸無水物、カルボン酸樹脂に代表される、酸無水物構造、及び/またはカルボン酸構造を有する化合物が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいて硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
本発明の硬化性樹脂組成物Aにおいては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩が挙げられる。(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤を用いる場合は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジンー2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
さらに本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aには、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物A中において0〜95重量%を占める量が用いられる。更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を光半導体封止剤に使用する場合、必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、硬化性樹脂組成物に予め分散させておいてから、光半導体を封止する。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができ、例えば、希土類元素のアルミン酸塩、チオ没食子酸塩、オルトケイ酸塩等が例示される。より具体的には、YAG蛍光体、TAG蛍光体、オルトシリケート蛍光体、チオガレート蛍光体、硫化物蛍光体等の蛍光体が挙げられ、YAlO:Ce、YAl12:Ce,YAl:Ce、YS:Eu、Sr(POCl:Eu、(SrEu)O・Alなどが例示される。係る蛍光体の粒径としては、この分野で公知の粒径のものが使用されるが、平均粒径としては、1〜250μm、特に2〜50μmが好ましい。これらの蛍光体を使用する場合、その添加量は、その樹脂成分に対して100重量部に対して、1〜80重量部、好ましくは、5〜60重量部が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物Aは、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の硬化性樹脂組成物Aは従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ化合物と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、リン含有化合物、バインダー樹脂、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して硬化性樹脂組成物を得、その硬化性樹脂組成物をポッティング、溶融後(液状の場合は溶融無しに)注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
また本発明の硬化性樹脂組成物Aを必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Aと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
また本発明の硬化性樹脂組成物Aをフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物を得る場合は、このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物Aを前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
更に、本発明の硬化性樹脂組成物Aは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途に用いることができ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
硬化性樹脂組成物B(酸性硬化触媒によるカチオン硬化)
酸性硬化触媒を用いて硬化させる本発明の硬化性樹脂組成物Bは、酸性硬化触媒として光重合開始剤あるいは熱重合開始剤を含有する。さらに、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始補助剤、光増感剤等の各種公知の化合物、材料等を含有していてもよい。また、所望に応じて無機充填材、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤等、各種公知の添加剤を含有してもよい。
酸性硬化触媒としてはカチオン重合開始剤が好ましく、光カチオン重合開始剤が特に好ましい。カチオン重合開始剤としてはヨードニウム塩もしくはスルホニウム塩、またはジアゾニウム塩等のオニウム塩を有するものが挙げられ、これらは単独または2種以上で使用することができる。
活性エネルギー線カチオン重合開始剤の例は、金属フルオロホウ素錯塩および三フッ化ホウ素錯化合物(米国特許第3379653号)、ビス(ペルフルアルキルスルホニル)メタン金属塩(米国特許第3586616号)、アリールジアゾニウム化合物(米国特許第3708296号)、VIa族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4058400号)、Va族元素の芳香族オニウム塩(米国特許第4069055号)、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート(米国特許第4068091号)、チオピリリウム塩(米国特許第4139655号)、MF−陰イオンの形のVIb族元素(米国特許第4161478号;Mはリン、アンチモンおよび砒素から選択される。)、アリールスルホニウム錯塩(米国特許第4231951号)、芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩(米国特許第4256828号)、およびビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(Journal of Polymer Science, Polymer Chemistry、第2巻、1789項(1984年))である。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。
また、具体例としては、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」(いずれも旭電化工業社製)、「UVE−1014」(ゼネラルエレクトロニクス社製)、「CD−1012」(サートマー社製)、「RP−2074」(ローディア社製)等が挙げられる。
該カチオン重合開始剤の使用量は、エポキシ樹脂成分100重量部に対して、好ましくは、0.01〜50重量部であり、より好ましくは、0.1〜10重量部である。
さらに、これらの光カチオン重合開始剤と公知の重合開始補助剤および光増感剤の1種または2種以上を同時に使用することが可能である。重合開始補助剤の例としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノールプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤等の重合開始補助剤の使用量は、光ラジカル可能な成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
光増感剤の具体例としては、アントラセン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アクリジン オレンジ、アクリジン イエロー、ホスフィンR、ベンゾフラビン、セトフラビンT、ペリレン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。光増感剤の使用量は、全エポキシ樹脂成分100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物Bは、各成分を均一に混合することにより得られる。またポリエチレングリコールモノエチルエーテルやシクロヘキサノン、γブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させ、均一とした後、乾燥により溶剤を除去して使用することも可能である。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物Bと該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。本発明の硬化性樹脂組成物Bは紫外線照射することにより硬化できるが、その紫外線照射量については、硬化性樹脂組成物により変化するため、それぞれの硬化条件によって、決定される。光硬化型硬化性樹脂組成物が硬化する照射量であれば良く、硬化物の接着強度が良好である硬化条件を満たしていれば良い。この硬化の際、光が細部まで透過することが必要であることから本発明のエポキシ化合物、および硬化性樹脂組成物Bにおいては透明性の高いものが望まれる。また、これらエポキシ樹脂系の光硬化では光照射のみでは完全に硬化することが難しく、耐熱性が求められる用途においては光照射後に加熱により完全に硬化を終了させる必要がある。
前記、光照射後の加熱は通常の硬化性樹脂組成物Bの硬化温度域で良い。例えば常温〜150℃で30分〜7日間の範囲が好適である。硬化性樹脂組成物Bの配合により変化するが、特に高い温度域であればあるほど光照射後の硬化促進に効果があり、短時間の熱処理で効果がある。このような熱アフターキュアすることで、エージング処理になるという効果も出る。
また、これら硬化性樹脂組成物Bを硬化させて得られる硬化物の形状も用途に応じて種々とりうるので特に限定されないが、例えばフィルム状、シート状、バルク状などの形状とすることもできる。成形する方法は適応する部位、部材によって異なるが、例えば、キャスト法、注型法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、転写法、ディスペンサー方式などの成形方法を適用することができるなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。成形型は研磨ガラス、硬質ステンレス研磨板、ポリカーボネート板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリメチルメタクリレート板等を適用することができる。また、成形型との離型性を向上させるためポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を適用することができる。
例えばカチオン硬化性のレジストに使用する際においては、まず、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、あるいはγブチロラクトン等の有機溶剤に溶解させた光カチオン硬化性樹脂組成物Bを、銅張積層板、セラミック基板またはガラス基板等の基板上に、スクリーン印刷、スピンコート法などの手法によって、5〜160μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を形成する。そして、該塗膜を60〜110℃で予備乾燥させた後、所望のパターンの描かれたネガフィルムを通して紫外線(例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、レーザー光等)を照射し、ついで、70〜120℃で露光後ベーク処理を行う。その後ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等の溶剤で未露光部分を溶解除去(現像)した後、さらに必要があれば紫外線の照射及び/または加熱(例えば100〜200℃で0.5〜3時間)によって十分な硬化を行い、硬化物を得る。このようにしてプリント配線板を得ることも可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bを硬化してなる硬化物は光学部品材料をはじめ各種用途に使用できる。光学用材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。より具体的には、ランプタイプ、SMDタイプ等のLED用封止材の他、以下のようなものが挙げられる。液晶ディスプレイ分野における基板材料、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料である。また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またLED表示装置に使用されるLEDのモールド材、LEDの封止材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム、また有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、またフィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤である。光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部である。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーである。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤などである。光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルムなどである。光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤などである。光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤などである。光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LEDの封止材、CCDの封止材、接着剤などである。光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーである。半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料である。自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品である。また、鉄道車輌用の複層ガラスである。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートである。建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料である。農業用では、ハウス被覆用フィルムである。次世代の光・電子機能有機材料としては、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤などである。
光学用材料の他の用途としては、硬化性樹脂組成物Aが使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィル)などを挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物Aおよび硬化性樹脂組成物Bは、光半導体装置にも適用することが可能である。かかる光半導体装置は、本発明の硬化性樹脂組成物で光半導体素子(光半導体チップ)を封止することによって製造することができる。その封止法としてはキャスティングやポッティングあるいは印刷等の方法で光半導体素子を封止する封止樹脂を成形(注型及び硬化)する方法が採用できる。成形条件は従来から行われている硬化性樹脂組成物による半導体素子の封止成形における成形条件をそのまま採用することができ、光半導体封止用硬化性樹脂組成物の組成等により適宜設定すればよい。
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において「部」は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、エポキシ当量はJIS K−7236、粘度は25℃においてE型粘度計を使用して測定を行った。
実施例1
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら10重量%リン酸2水素ナトリウム水溶液30部、12−タングストリン酸1.9部を仕込み、10重量%リン酸水素2ナトリウム水溶液でpHを5.0に調整した。更にトリオクチルメチルアンモニウムアセテート6部(TOMAA−50 ライオン・アクゾ製 濃度50重量% キシレン溶液)を加え、タングステン酸系触媒を精製させた後、トルエン150部を加え溶解、2層系溶液とし、激しく室温で1時間攪拌をした。
ここで、式(1)
Figure 0005517237
で表される化合物110部を加えた後、この溶液を50℃に昇温し、攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加え、後反応として50℃でさらに10時間攪拌した。室温まで冷却後、1重量%水酸化ナトリウム水溶液100部でpH7.5に調整した後、水層を廃棄、さらに20重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液50部を加え1時間攪拌を行った後、静置した。その後、2層に分離した有機層を取り出した。
得られた有機層にシリカゲルを30部、活性炭(NORIT製 CAP SUPER)30部を加え、室温で2時間撹拌した後、減圧濾過を行い、ろ過残をトルエン100部でさらに洗浄し、先のろ液と混ぜ合わせた。得られた溶液について水洗を水100部で3回行い、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ化合物(EP1)110部を得た。得られたエポキシ化合物は淡黄色であり、エポキシ当量は130g/eq.、粘度は227mPa・sであった。また全塩素量は110ppmであった。
比較例1
実施例1において、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート代わりにトリオクチルメチルアンモニウムクロライド(ライオン・アクゾ製 濃度75重量%のイソプロピルアルコール溶液)を使用した以外は同様の操作を行った。
得られたエポキシ化合物(EP2)は淡黄色の液体であり、エポキシ当量は132g/eq.、粘度は233mPa・sであった。また、全塩素量は2510ppm、アセチル体は0.1%(GC(ガスクロマトグラフィー;以下同様) 面積%)以下であった。
実施例2
実施例1において、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート代わりにジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムアセテート(ライオン・アクゾ製 濃度50重量%のヘキサン溶液もしくはスラリー)を使用した以外は同様の操作を行った。
得られたエポキシ化合物(EP3)は淡黄色の液体であり、エポキシ当量は130g/eq.、粘度は230mPa・sであった。また全塩素量は79ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
比較例2
実施例1において、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート代わりにジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド(ライオン・アクゾ製 濃度90重量%のイソプロピルアルコール含有フレーク)を使用した以外は同様の操作を行った。
得られたエポキシ化合物(EP4)は淡黄色の液体であり、エポキシ当量は132g/eq.、粘度は230mPa・sであった。また全塩素量は1790ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られたエポキシ化合物の物性値を下表に示す。なお、表中、GCデータは、下記条件で測定したガスクロマトグラフィーの測定の結果である。
カラム : HP-5MS 15m-0.25mm-0.25μm
キャリアガス : ヘリウム 1.0mL/min. (constant flow mode)
オーブン : 100℃−15℃/min.−300℃(15min.保持)
インジェクション : 1μL,split比 50:1,300℃
イオン化方法 : EI(EIイオン源)
測定サンプル : 有機層、水層のエマルジョン溶液より0.2mLのサンプルをとり、5mLのアセトンで希釈。
また、全塩素量は試料約0.1gを精秤し、燃焼装置で燃焼後、ガスを吸収液(吸収液:0.1%過酸化水素水20mL)に吸収させ、吸収液をイオンクラマトにて測定した結果である。
Figure 0005517237
本発明の製造方法により、全塩素量の少ないエポキシ化合物ができることを確認できた。したがって、本発明によって得られるエポキシ化合物は、電気電子材料用途に有用であることがわかる。
実施例3
実施例1で得られたEP1 26部、硬化剤としてH−TMAn(三菱瓦斯化学株式会社製 酸無水物)、MH−700G(新日本理化製 酸無水物)の1:1混合物 18.3部を均一に混合し、120℃で1時間、150℃で3時間かけて硬化させた。
(硬化物 C−1)
比較例3
実施例3においてEP1 26部の代わりに、EP2 26.2部に変えた以外は同様に硬化させた。
(硬化物;C−2)
実施例4、比較例4
実施例3及び比較例3において得られた硬化物(C−1)、(C−2)について150℃で96時間加熱したときのYI(イエローインデックス JIS K7105−6.3に準拠)を確認した。結果を下記表2に示す。
表2
硬化物 加熱前 加熱後 Tg(DMA)
(YI) (YI) (℃)
実施例4 C−1 2.5 2.9 274
比較例4 C−2 2.3 6.8 272
この結果より、本発明のエポキシ化合物を使用して得られる硬化性樹脂組成物は耐熱着色に良好な硬化物を与えることが明瞭である。
実施例5
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水20部、トルエン150部、前記式(1)の化合物の分散溶液にタングステン酸ナトリウム・2水和物1.0部、12−タングストリン酸1.9部を仕込み、リン酸2水素ナトリウム・2水和物1.6部を加え、水層のpHを6.5になるに調整した。更にトリオクチルメチルアンモニウムアセテート6部(TOMAA−50 ライオン・アクゾ製 濃度50% キシレン溶液)を加え、48℃に昇温し、攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加え、後反応として48℃でさらに6時間攪拌した。30℃まで冷却後、5%水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調整し、さらに10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液100部を加え1時間攪拌を行った後、静置した。その後、2層に分離した有機層を取り出した。
得られた有機層ベンゲルSH(ホージュン製 ベントナイト)を30部、活性炭(味の素ファインテクノ製 CP2)30部を加え、室温で4時間撹拌した後、減圧濾過を行い、ろ過残をトルエン120部でさらに洗浄し、先のろ液と混ぜ合わせた。得られた溶液について水洗を水100部で3回行い、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ化合物(EP5)108部を得た。得られたエポキシ化合物は無色であり、エポキシ当量は130g/eq.の液状のエポキシ化合物であった。また全塩素量は25ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例6
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら水20部、タングステン酸ナトリウム・2水和物1.0部、12−タングストリン酸1.9部を仕込み、リン酸2水素ナトリウム・2水和物1.0部を加え、水層のpHを6.0になるに調整した。更にトリオクチルメチルアンモニウムアセテート6部(TOMAA−50 ライオン・アクゾ製 濃度50% キシレン溶液)、トルエン150部、前記式(1)の化合物110部を加え、48℃に昇温した。これを攪拌しながら、35重量%過酸化水素水106部を加え、後反応として48℃でさらに6時間攪拌した。30℃まで冷却後、5%水酸化ナトリウム水溶液でpH8.5に調整し、分液後、得られた有機層にさらに10重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液100部を加え1時間攪拌を行った後、分液し、有機層を取り出した。
得られた有機層ベンゲルSH(ホージュン製 ベントナイト)を30部、活性炭(味の素ファインテクノ製 ZN2)30部を加え、室温で4時間撹拌した後、減圧濾過を行い、ろ過残をトルエン120部でさらに洗浄し、先のろ液と混ぜ合わせた。得られた溶液について水洗を水100部で3回行い、ロータリーエバポレータを用い、有機溶剤を留去することで、目的とするエポキシ化合物(EP6)108部を得た。得られたエポキシ化合物は無色であり、エポキシ当量は131g/eq.の液状のエポキシ化合物であった。また全塩素量は18ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例7
実施例5において、前記式(1)を110部、であったところを、特開平7−17917号公報に記載の手法により、製造した下記式(2)
Figure 0005517237
に示される構造のオレフィン樹脂を120部に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP7)を119部得た。エポキシ当量は142g/eqの液状のエポキシ化合物であった。また全塩素18ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例8
実施例5において、式(1)を110部を1,4−シクロヘキサンジメタノールと3−シクロヘキセンカルボン酸との脱水エステル化により合成した下記式(3)
Figure 0005517237

に示される構造のオレフィン樹脂を180部、トルエンを180部、反応時間を14時間に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP8)を169部得た。エポキシ当量は207g/eq.の液状のエポキシ化合物であった。また全塩素21ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例9
実施例5において、前記式(1)を110部、であったところを1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と3−シクロヘキセンメタノールとの脱水エステル化により合成した下記式(4)
Figure 0005517237
に示される構造のオレフィン樹脂を180部、トルエンを180部、反応時間を13時間に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP9)を175部得た。エポキシ当量は204g/eq.の半晶状(部分的に結晶が出ている)のエポキシ化合物であった。また全塩素20ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例10
実施例5において、前記式(1)を110部、であったところをトリメチロールプロパンと3−シクロヘキセンカルボン酸との脱水エステル化により合成した下記式(5)
Figure 0005517237
に示される構造のオレフィン樹脂を153部、トルエンを160部、反応時間を8時間に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP10)を146部得た。エポキシ当量は172g/eq.の液状のエポキシ化合物であった。また全塩素17ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例11
実施例5において、前記式(1)を110部、であったところを、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とシクロヘキセンメタノールとの脱水縮合で合成した下記式(6)
Figure 0005517237
に示される構造のオレフィン樹脂を180部、トルエンを180部、反応時間を10時間に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP11)を170部得た。エポキシ当量は202g/eqの液状のエポキシ化合物であった。また全塩素10ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例12
実施例5において、前記式(1)を110部、であったところを、アジピン酸とシクロヘキセンメタノールとの脱水縮合で合成した下記式(7)
Figure 0005517237
に示される構造のオレフィン樹脂を167部に変えた以外は同様に合成を行い、本発明のエポキシ化合物(EP12)を161部得た。エポキシ当量は172g/eqの液状のエポキシ化合物であった。また全塩素15ppm、アセチル体は0.1%(GC 面積%)以下であった。
実施例13、14、比較例5
実施例として、実施例5、6で得られた本発明のエポキシ化合物EP5、EP6、比較例として市販のエポキシ化合物EP13(ダウ・ケミカル製 ERL−4221 EP5,EP6と同骨格)を用い、硬化剤としてH−TMAn(三菱瓦斯化学株式会社製 酸無水物)、MH−700G(新日本理化製 酸無水物)の1:1混合物、硬化触媒としてテトラフェニルフォスフォニウムブロマイドを均一に混合し、120℃で1時間、150℃で3時間かけて硬化させた。得られた硬化物について電気伝導度試験を行った。
使用したエポキシ化合物の樹脂特性を表3に、その配合組成および電気伝導度の測定結果を表4に示す。なお、以下の電気伝導度とはプレッシャクッカーテスト(121℃ 20時間)による抽出水の電気伝導度の測定結果である。
Figure 0005517237
Figure 0005517237
以上の結果から酢酸付加体がほとんど存在しない本発明のエポキシ化合物は、電気特性に優れることが明らかである。

Claims (8)

  1. 炭素-炭素二重結合を有する化合物を過酸化水素、タングステン酸類及び4級アンモニウムのカルボン酸塩の存在下に酸化することを特徴とする多価エポキシ化合物の製造方法であって、炭素−炭素二重結合を有する化合物の原料1モルに対してタングステン酸類をタングステン元素換算で0.5〜20ミリモル使用することを特徴とする多価エポキシ化合物の製造方法。
  2. タングステン酸類がタングステン酸、燐タングステン酸またはケイタングステン酸から選ばれる少なくとも1種の酸、あるいはその塩である請求項1記載のエポキシ化合物の製造方法。
  3. タングステン酸類のカウンターカチオンがプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオンのいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  4. 2種類以上のタングステン酸類を使用することを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  5. 2種類以上のタングステン酸類が酸性物質と塩基性物質の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  6. 4級アンモニウムのカルボン酸塩が酢酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  7. タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量の比がタングステン酸類の価数倍の1.1〜10倍当量の4級アンモニウムのカルボン酸塩を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  8. タングステン酸類と4級アンモニウムのカルボン酸塩の使用量の比がタングステン酸類1モルに対し、使用するタングステン酸類の価数倍の0.1〜0.8倍当量の4級アンモニウムのカルボン酸塩を使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
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