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JP5509786B2 - 非水電解質二次電池用正極 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極、特に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池に適したアルミニウム多孔質焼結体を用いた電極に関するものである。
近年、非水電解質二次電池、中でもリチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池が、電気自動車、ハイブリッド型自動車等にも用いられるようになり、そのような用途拡大に伴って、電池における電極集電体に、高出力化、高信頼性への対応が要求されている。そこで、電極中の電解液に無機固体電解質を分散させたリチウムイオン電池が開示されている(特許文献1)。しかしながら、無機固体電解質の電気伝導率は10−3Ω・cm−1付近であり(特許文献2の第0057段落)、この無機固体電解質を分散させた電解液を含む電極は、十分な電気伝導率、延いては熱伝導率を有するものとはいえず、高出力放電時には、電極内部、特に電極中央部の温度が上昇することが懸念される。本発明者らは、非水電解質二次電池の電極、特に正極の電気伝導率および熱伝導率の向上を鋭意研究した結果、アルミニウム多孔質焼結体を備える集電体と、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含む二次電池用電極を実現することにより、正極の電気伝導率および熱伝導率を著しく向上させることができることを見出した。ここで、現在、これらの電池の正極集電体として一般的にアルミニウム箔が用いられているが、非水電解質二次電池用正極に適したアルミニウム多孔質焼結体の作製が問題となる。
電極集電体として、三次元網目構造の開気孔を有するアルミニウム多孔質体が知られるようになりつつあり(特許文献3および4)、このようなアルミニウム多孔質体の製造方法としては、例えば、溶融アルミニウムを増粘剤により増粘させた後に、発泡剤として水素化チタンを添加し、水素化チタンの熱分解反応で生じる水素ガスにより、溶融アルミニウムを発泡させつつ固化させる発泡溶融法が知られている(特許文献5)。しかしながら、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、数mmの大きな閉気孔を有するものであった。
その他、第2の方法として、スポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入し、ウレタンが焼失して形成される空洞にアルミニウムを充填することにより、スポンジ骨格の発泡アルミニウムを得る方法がある。同方法によれば、40PPI以下の孔径、すなわち、1インチ当たり40セル以下の孔径(孔径:約600μm以上)の開気孔を有する発泡アルミニウムが得られる。
また、第3の方法として、AlSi合金粉末とTiH粉末との混合粉末をアルミニウム板材に挟んで加熱圧延することによって、TiH粉末の分解によりアルミニウムを発泡させる方法があるものの、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、数mm単位の大きな孔径を有するものである(特許文献6)。
さらには、第4の方法として、アルミニウムとの共晶温度がアルミニウムの融点よりも低い金属をアルミニウムに混合し、共晶温度よりも高くアルミニウムの融点よりも低い温度に加熱焼成する方法があるものの(特許文献7)、同方法によって得られる発泡アルミニウムは、孔径を小さくすることができても気孔率が40%前後と小さい。このため、集電体としての発泡アルミニウムの気孔に浸透する正極活物質や負極活物質の量が少なく、所望の高出力化、高エネルギー密度化が図れない。
したがって、上述の方法の中では、高出力化、高信頼性、高エネルギー密度化の目的を達成し得る微小の開気孔を有する発泡アルミニウムを製造する方法として、第2の方法の採用が考えられる。
しかしながら、この第2の方法であっても、さらに開気孔の孔径を小さくするためには、目の細かいスポンジウレタンを用いざるを得ず、アルミニウムの流れが悪くなって圧入不能となったり、鋳造圧力が高くなりすぎたりすることから、40PPIよりも小孔径の発泡アルミニウムを製造することは困難である。
これに対して、多数の微小の開気孔が均等に配置された小孔径・整寸の開気孔を有する高気孔率の発泡金属を製造する方法として、金属粉および発泡剤を含有する発泡性スラリーを発泡させ、乾燥させた後に焼結させるスラリー発泡法がある(特許文献8)。同方法によれば、焼結可能な原料粉末が入手できれば、約10PPI〜約500PPI、すなわち、孔径2.5mm〜50μmの範囲の任意の孔径の整寸な開気孔を有する高気孔率の発泡金属を容易に製造することができる。なお、スラリー発泡法は、金属粉末を含むスラリーに発泡剤を含有させることによって発泡させる、あるいは気体の注入や攪拌によって発泡させて、乾燥させて、焼結させて発泡金属を得る方法を意味する。
しかし、従来、スラリー発泡法では、アルミニウム粉末表面の酸化被膜の存在により、アルミニウムの非加圧焼結ができなかったため、発泡アルミニウムを製造することは困難であった。また、仮に発泡アルミニウムを製造することができたとしても、純アルミニウムは柔らかいため、空孔内に活物質を充填した後、エネルギー密度を高めるための圧延をするときに、発泡アルミニウムが破断してしまうことが懸念される。
特開2008−300173号公報 特開2002−109955号公報 特許第3591055号公報 特開2009―43536号公報 特開平08−209265号公報 特表2003−520292号公報 特公昭61−48566号公報 特許第3535282号公報
本発明者らは、チタンを含む焼結助剤を用いることにより、非加圧焼結で、高強度のアルミニウム多孔質焼結体を製造することができることを見出した。本発明は、このアルミニウム多孔質焼結体を非水電解質二次電池用電極の集電体として用い、かつアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含有させることにより、非水電解質二次電池の高出力化、高信頼性を可能とする正極を提供することを課題とする。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した非水電解質二次電池用電極およびこれを用いた非水電解質二次電池に関する。
(1)アルミニウム多孔質焼結体を備える集電体と、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含む二次電池用正極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体が、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、前記金属骨格にはAlTi系化合物が分散していることを特徴とする、非水電解質二次電池用正極。
(2)集電体が、さらにアルミニウム箔またはアルムニウム板を備える、上記(1)記載の非水電解質二次電池用正極。
(3)アルミニウム多孔質焼結体が、アルミニウムとチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含む、上記(1)または(2)記載の非水電解質二次電池用正極。
(4)Liイオン導電性物質が、高分子ゲル電解質または固体電解質である、上記(1)〜(3)のいずれか記載の非水電解質二次電池用正極。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか記載の非水電解質二次電池用正極を含む、非水電解質二次電池。
本発明(1)によれば、三次元網目構造の金属骨格を有するアルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、導電助剤およびLiイオン導電性物質が存在するため、活物質との電気伝導および熱伝導が著しく良好であり、高出力の非水電解質二次電池が得られる。また、Al−Ti化合物の分散によるアルミニウム多孔質焼結体は、高強度であるため、アルミニウム多孔質焼結体の空孔に活物質を含有させた後、圧延をすることにより、高出力密度の非水電解質二次電池用正極を提供することができ、さらに、活物質導電助剤、Liイオン導電性物質との密着性が優れた高信頼性の非水電解質二次電池用正極が得られる。
本発明(2)によれば、さらに高出力に適した非水電解質二次電池用電極を容易に得ることができる。
実施例の集電体1のアルミニウム多孔質焼結体の走査電子顕微鏡写真である。 図1の一部拡大走査電子顕微鏡写真である。 図2の一部拡大走査電子顕微鏡写真である。 アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム板を備えた正極用集電体の概念図である。 本発明の非水電解質二次電池用電極の断面のイメージ図である。 実施例、従来例で作製したコインセルの断面図である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量基準の%である。
〔非水電解質二次電池用電極〕
本発明の非水電解質二次電池用正極は、アルミニウム多孔質焼結体を備える集電体と、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含む二次電池用正極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体が、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、前記金属骨格にはAlTi系化合物が分散していることを特徴とする。
アルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、前記金属骨格にAlTi系化合物が分散している。
図1に、実施例の集電体1で作製した圧延をする前のアルミニウム多孔質焼結体の走査電子顕微鏡写真を、図2に、図1の一部拡大走査電子顕微鏡写真を、図3に、図2の一部拡大走査電子顕微鏡写真を示す。図1、図2および図3から明らかなように、アルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格により、空孔を形成する。また、金属骨格自体も、高気孔率であるという特徴を有する。
アルミニウム多孔質焼結体の金属骨格は、所望のアルミニウム多孔質焼結体強度、空孔径および空孔率を得るために、金属骨格径(金属骨格を形成する各金属骨の最も細い部分の太さ)が5〜100μmであることが好ましい。また、この金属骨格は、孔径0.1〜3μmの骨格内空孔を有するものが好ましい。ここで、金属骨格径および骨格内空孔の空孔径は、骨格表面および骨格断面の走査電子顕微鏡写真により測定する。
また、金属骨格間の空孔(以下、骨格間空孔という)は、活物質、Liイオン導電性物質等を含ませやすくする観点、および電解液との良好な導電性確保の観点から、連通していることが好ましい。
骨格間空孔の空孔径は、所望量の活物質を充填させる観点から、20〜500μmであることが好ましい。なお、圧延後には、骨格間空孔の空孔径は、アルミニウム多孔質焼結体の長手方向が長い楕円形状となり、長手方向の空孔径は、30〜600μmであると好ましく、厚さ方向の空孔径は、10〜200μmであると好ましい。ここで、空孔径は、試料の表面および断面の走査電子顕微鏡写真により測定する。
アルミニウム多孔質焼結体の全体気孔率は、所望量の活物質を充填させる観点から、70〜99%であることが好ましく、80〜97%であると、より好ましい。なお、圧延後の空孔率は、10〜60%であると好ましく、15〜40%であると、より好ましい。ここで、気孔率は、アルミニウム多孔質焼結体の寸法、質量、および密度から算出する。
金属骨格のAlTi系化合物は、アルミニウム多孔質焼結体を製造するときに使用される焼結助剤に含まれるチタンに由来する。チタンは、アルミニウム多孔質焼結体を常圧焼結で製造することを可能にするだけではなく、AlTi系化合物を形成することにより、アルミニウム多孔質焼結体を高強度、特に高引張り強度にする。また、AlTi系化合物は、接触抵抗が低く、AlTi系化合物が存在することにより、より高出力に適する、と考えられる。
アルミニウム多孔質体が、アルミニウムとチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含むことが好ましい。チタンが、0.1質量部未満では、良好なアルミニウム多孔質焼結体が得られず、20質量部を超えると、焼結時に、アルミニウム混合原料粉末中で、チタンを含む焼結助剤粉末同士が接点を持つようになり、アルミニウムとチタンの反応熱を制御できなくなるとともに所望の多孔質焼結体が得られないようになる。ここで、アルミニウムとチタンの定量分析は、ICP法で行う。
アルミニウム多孔質焼結体の厚さは、非水電解質二次電池のエネルギー密度向上の観点から、圧延前で0.05〜5mmであると好ましく、0.1〜3mmであると、より好ましい。アルミニウム多孔質焼結体の厚さは、圧延後では0.03〜3mmであると好ましく、0.8〜2.5mmであると、より好ましい。
アルミニウム多孔質焼結体の幅は、一般的には、非水電解質二次電池の形状から決定されるが、複数個分の幅でアルミニウム多孔質焼結体を作製した後、活物質を含有し、圧延した後、スリット等により1個分の幅とすることもできる。
アルミニウム多孔質焼結体は、通常、ロール状で作製されるので、アルミニウム多孔質焼結体の長さは、通常、多数個分の長さで作製され、活物質を含有し、圧延した後、カット等により1個分の長さとされる。
また、アルミニウム多孔質焼結体は、空孔が直線長さ1cm当たりに20個以上形成されることにより、アルミニウム多孔質焼結体の全体気孔率が70〜90%であると、非水電解質二次電池用電極の信頼性および高出力化の観点から好ましく、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー電池等の非水電解質二次電池の正極用集電体として好適に用いられる。
集電体は、アルミニウム多孔質焼結体に加えて、さらにアルミニウム箔またはアルムニウム板を備えると高出力化の観点から好ましい。ここで、アルミニウム箔の厚さは、10μm以上50μm未満が好ましく、アルミニウム板の厚さは、50μm以上1mm以下が好ましい。図4に、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム板を備えた正極用集電体の概念図を示す。なお、アルミニウム板は、図4の左部のように、タブ用にアルミニウム多孔質焼結体が形成されていない部を設けることができる。
アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に含有される活物質としては、非水電解質二次電池用正極活物質として使用されるものが挙げられ、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではない。従来、一般的に用いられているものであればよく、具体的には、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、鉄のいずれか一種以上と、リチウムとを含む複合酸化物もしくは塩からなるのが好ましい。これにより、正極活物質が電解質に溶け出さず、大容量の電池とすることができる。
上記正極活物質として、より具体的には、LiCoO等のLi・Co系複合酸化物、LiNiO等のLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn等のLi・Mn系複合酸化物、LiFeO等のLi・Fe系複合酸化物、LiFePO等の遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物等が挙げられる。この他にも、V、MnO、TiS、MoS、MoO等の遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOH等も用いることができる。この活物質は、平均粒子径が2〜20μmの粉末であると、非水電解質二次電池の高出力化の観点から好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法によって測定する。
また、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に含有される導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等を挙げることができるが、これらに限定されない。
アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に含有されるLiイオン導電性物質は、Liイオン導電性があればよく、固体電解質、高分子ゲル電解質のいずれであってもよい。非水電解質は、好ましい一例を以下に示すが、通常の二次電池で用いられるものであればよく、特に限定されない。
固体電解質としては、イオン伝導性を有する高分子から構成されるものであれば特に限定されない。例えば、無機系の固体電解質であれば、チオリシコンやLiSiO−LiBOやLiX−LiO−M(X=I,Br,Cl;M=B,Si,P等、m,nは1〜5の数である)等のリチウムイオン導電性ガラス等が挙げられ、高分子系の固体電解質であれば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド系高分子は、電解質塩をよく溶解し、また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。ここで、電解質塩としては、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩等が挙げられる。
高分子ゲル電解質としては、特に限定されないが、イオン伝導性を有する電解質用高分子に電解液を含んだもの、イオン伝導性を持たない電解質用高分子の骨格中に同様の電解液を保持させたもの等が挙げられる。ここで、イオン伝導性を有する電解質用高分子としては、上述した固体電解質等が用いられる。
また、イオン伝導性を持たない電解質用高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)共重合体、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のゲル化ポリマーを形成するモノマーが使用できる。ただし、これらに限定されるわけではない。なお、PAN、PMMA等は、どちらかといえばイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する電解質用高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるイオン伝導性を持たない電解質用高分子として例示した。
高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、上記の電解質塩を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから少なくとも1種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたもの等が挙げられる。
高分子ゲル電解質中の電解質用高分子(ホストポリマー)と電解液との比率(質量比)は、使用目的等に応じて決定すればよいが、2:98〜90:10の範囲である。これにより、電極活物質層の外周部からの電解質の染み出しについても、絶縁層や絶縁処理部を設けることで効果的にシールすることができる。
アルミニウム多孔質焼結体の空孔内は、結合剤を含むことが好ましい。この結合剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、SBR、ポリイミド等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、Liイオン導電性物質として、高分子ゲル電解質を用いる場合には、高分子ゲル電解質を結合剤としても作用させることができる。
アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、活物質を100〜800質量部含むと、非水電解質二次電池のエネルギー密度向上の観点から好ましく、250〜750質量部含むとより好ましい。ここで、活物質の定量分析は、ICP法で行う。
アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、導電助剤を1〜100質量部含むと、非水電解質二次電池の高出力化、および活物質の欠落を防止する観点から好ましい。
アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、Liイオン導電性物質を30〜400質量部含むと、非水電解質二次電池の高出力化の観点から好ましい。
アルミニウム多孔質焼結体100質量部に対して、結合剤を2〜80質量部含むと、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質を適切に保持し、活物質の欠落を防止する観点から好ましい。
図5に、本発明の非水電解質二次電池用電極の断面のイメージ図を示す。活物質、導電助剤、結合剤およびLiイオン導電性物質層2は、アルミニウム多孔質焼結体1の空孔3で、金属骨格を被覆し、空孔体積を減少させていると考えられる。
なお、本発明においては、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に、活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質が含まれているが、集電体であるアルミニウム多孔質焼結体とセパレーター間にも、活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質が含まれ得る。本発明においては、非水電解質二次電池内の活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質の合計100質量部に対して、アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に含まれる活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質が60〜95質量部であると、非水電解質二次電池の高出力化の観点から好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用電極を使用するときの非水電解質としては、上述した電解液が挙げられるが、通常の二次電池で用いられるものであればよく、特に限定されない。
〔非水電解質二次電池用電極の製造方法〕
本発明の非水電解質二次電池用電極は、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、かつ前記金属骨格にAlTi系化合物が分散しているアルミニウム多孔質焼結体の空孔に、活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含むスラリーを充填し、乾燥した後、圧延をすることにより製造することができる。
アルミニウム多孔質焼結体は、以下により、製造することができる。
まず、アルミニウム粉末に、チタンおよび/または水素化チタン粉末を混合して、アルミニウム混合原料粉末とするアルミニウム混合原料粉末を調製する(アルミニウム混合原料粉末調製工程)。このアルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して、粘性組成物を調製する(粘性組成物調製工程)。この粘性組成物に気泡を混合させた状態で乾燥させて、焼結前成形体とし(焼結前工程)、焼結前成形体を非酸化性雰囲気下、630(℃)≦加熱焼成温度(T)<660(℃)で、加熱焼成する(焼結工程)。
このアルミニウム混合原料粉末調製工程では、アルミニウム粉末の平均粒子径が、好ましくは2〜200μm、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは7μm〜40μmの範囲内のものが用いられる。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法で測定される。
チタンを含む焼結助剤は、アルミニウム、およびチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含むことが好ましい。
水素化チタンの平均粒子径は、0.1(μm)≦r≦30(μm)が好ましいが、より好ましくは4(μm)≦r≦20(μm)である。水素化チタンの平均粒径が、0.1μmより小さいと、自然発火する恐れがあり、30μmを超えると、焼結体に所望の強さが得られなくなるためである。水素化チタンの配合量は、0.1(質量%)≦W≦20(質量%)が好ましい。0.1質量%よりも少ないと焼結が不十分となり、一方、焼結助剤粉末の配合比Wが20質量%を超えると、焼結体が脆くなって、所望の多孔質焼結体が得られないようになるからである。
次に、粘性組成物調製工程では、上記アルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂バインダー、可塑剤、蒸留水、界面活性剤を、それぞれ加える。
そして、これらを混練した後に、さらに炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤を混合することにより発泡させ、気泡の混合した粘性組成物を調整する。この炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンからなる群から選択される少なくとも一種が使用可能である。
次の焼結前工程では、帯状のポリエチレンシート箔に、粘性組成物を厚さ0.05mm〜5mmの厚さになるように、ドクターブレード法、スラリー押出し法またはスクリーン印刷法等で塗布した後、周囲の温度および湿度を一定時間管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させる。ここで、アルミニウム箔の厚さは、機械的な強さの観点から、10μm以上50μm未満が好ましく、15μm以上25μm以下がより好ましい。
そして、乾燥後の粘性組成物を、ポリエチレンシートから剥がし、所望の形状に切り出し、焼結前成形体が得られる。
次の焼結工程では、上記焼結前成形体を、ジルコニア等の敷粉を敷いたアルミナセッターの上に載置して、露点が−20℃以下のアルゴン雰囲気中、520℃で1時間加熱保持する仮焼成を行う。これにより、焼結前成形体の水溶性樹脂結合剤成分、可塑剤成分、蒸留水および界面活性剤のバインダー溶液を揮発および/または分解させる脱バインダーが行われるとともに、焼結助剤粉末として水素化チタンを用いた場合には脱水素化がされる。
この後、仮焼成後の焼結前成形体を、630(℃)≦加熱焼成温度(T)<660(℃)で加熱焼成することにより、アルミニウム複合体が得られる。
なお、焼結工程における加熱焼成は、アルミニウム粒子表面、チタン粒子表面およびニッケル粒子表面の酸化被膜の成長を抑制するため、非酸化性雰囲気下で行う必要がある。但し、加熱温度が400℃以下で30分間程度保持の条件であれば、空気中で加熱しても、アルミニウム粒子表面、チタン粒子表面およびニッケル粒子表面の酸化被膜はさほど成長しないので、例えば、焼結前成形体を、空気中で300℃〜400℃に10分間程度加熱保持して脱バインダーした後、アルゴン雰囲気中で所定の温度に加熱して焼成してもよい。
ここで、非酸化性雰囲気とは、不活性雰囲気または還元性雰囲気を含み、アルミニウム混合原料粉末を酸化させない雰囲気であることを意味する。また、上述の加熱焼成温度は、アルミニウム混合原料粉末の温度ではなく、すなわち、アルミニウム混合原料粉末の反応温度などを測定したものでなく、アルミニウム混合原料粉末の周囲の保持温度を意味するものである。
これにより得られたアルミニウム複合体のアルミニウム多孔質焼結体は、三次元網目構造の金属骨格を有し、金属骨格間に空孔を有しており、かつ金属焼結体に、ほぼ均一にAlTi系化合物が分散している。また、アルミニウム多孔質焼結体は、上記粘性組成物調製工程でのスラリー発泡時の気泡に由来する空孔と、焼結体であることに由来する金属骨格自体に形成される気孔との2種類の形態の異なる孔を有する。
次に、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔を備える集電体の製造方法を説明する。このときには、粘性組成物を、帯状のアルミニウム箔上に塗布し、乾燥後の粘性組成物をアルミニウム箔と共に、所望の形状に切り出す以外は、上記のアルミニウム多孔質焼結体と同様にして製造することができる。なお、アルミニウム箔の厚さは、機械的な強さの観点から、10μm以上50μm未満が好ましく、15μm以上25μm以下がより好ましい。
次に、アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム板を備える集電体の製造方法を説明する。このときには、チタンを含む焼結助剤に、さらにニッケルを含有させることが好ましい。
焼結助剤は、アルミニウム、ニッケル、およびチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含むことが好ましく、ニッケルを含む焼結助剤は、アルミニウム、ニッケル、およびチタンの合計100質量部に対して、ニッケルを0.2〜2質量部含むことが好ましい。ここで、ニッケル粉末の平均粒子径はアルミニウムの平均粒子径よりも小さいものが望ましく、例えば平均粒子径0.5μm〜3μm、さらに好ましくは0.8μm〜2μmのものが好ましい。ニッケル粉の配合量が少なすぎると焼結促進効果が発揮されず、一方、多すぎると、焼結体に直径0.5mm以上の、目視可能な液滴球状のアルミニウムの粗大粒子が生成するようになることから、ニッケル粉の配合量は0.2〜2質量部、さらに好ましくは0.4〜1.4質量部含むことが好ましい。
次の焼結前工程では、帯状のアルミニウム箔に、粘性組成物を厚さ0.05mm〜5mmの厚さになるように、ドクターブレード法、スラリー押出し法またはスクリーン印刷法等で塗布した後、周囲の温度および湿度を一定時間管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させる。ここでの好ましいアルミニウム箔の厚さは、上記のとおりである。
そして、乾燥後の粘性組成物をアルミニウム箔と共に、所望の形状に切り出し、所望の形状のアルミニウム板上に、アルミニウム箔側を載置して、焼結前成形体が得られる。アルミニウム板上にアルミ箔を存在させることにより、アルミニウム混合原料粉末が焼結時に収縮するときに、アルミニウム箔をアルミニウム板上で滑らせ、アルミニウム多孔質焼結体の割れを防止することができる。焼結工程は、アルミニウム多孔質焼結体と同様である。
次に、活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質、場合により結合剤を含むスラリーは、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、活物質、導電助剤、Liイオン導電性物質等を均一に混合した後、有機溶媒を加えて、スラリーとする。または、導電助剤を有機溶媒に分散した後、活物質、Liイオン導電性物質等を加える、あるいは、結合剤を有機溶媒に溶解、または均一に分散させ、この混合液と活物質粉末、導電助剤、Liイオン導電性物質を混合してスラリーとする、等の方法があるが、特に限定されない。このとき、用いる装置は、プラネタリーミキサー、ボールミル、ヘンシェルミキサー等の当業者が通常使用するものでよい。ここで、有機溶媒は、次のアルミニウム多孔質焼結体を、スラリーに浸漬させる工程で、アルミニウム多孔質焼結体にスラリーが容易に浸漬できる粘度、例えば10〜60Pa・s、となるように加えることが好ましい。なお、Liイオン導電性物質がLiPF等の電解質塩を含む場合には、まず、活物質、導電助剤および結合剤を含むスラリーを作製し、塗布、乾燥した後、Liイオン導電性物質を含むスラリー含浸させる方法も好ましい。
上記結合剤を溶解または分散させる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(以下、THFという)、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、酢酸エチル、酢酸ブチル等が使用できるが、乾燥により選択的にこの有機溶媒を除去するため、THF、アセトン等の沸点100℃以下の揮発性の有機溶媒、あるいは結合剤の溶解能力が高いN−メチルピロリドンが好ましい。
次に、アルミニウム多孔質焼結体の空孔に、活物質のスラリーを充填し、乾燥する。充填させる方法は、アルミニウム多孔質焼結体を活物質のスラリーにディッピングする方法、アルミニウム多孔質焼結体の上部からスラリーを注ぐ方法等が挙げられ、さらに、2本のロール間を通したり、へらでこすったりして表面に付着した余剰の活物質のスラリーを内部に押し込むことによって、より効果的にアルミニウム多孔質焼結体の空孔に活物質を充填することができる。乾燥は、大気中で放置してもよく、乾燥機等を用いてもよい。乾燥後、アルミニウム多孔質焼結体と、活物質およびLiイオン導電性物質等との質量比を測定し、活物質およびLiイオン導電性物質等の質量比が低い場合には、再度、浸漬・乾燥を繰り返し、所望量とすることができる。他方、活物質およびLiイオン導電性物質等の質量比が高い場合には、スラリーの粘性を低くして、浸漬・乾燥をやり直し、所望量とすることができる。
次に、活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含むアルミニウム多孔質焼結体を圧延し、非水電解質二次電池用電極を得る。本発明のアルミニウム多孔質焼結体は、金属骨格にAl−Ti化合物が分散しており、強度、特に引張り強度が高いので、アルミニウム多孔質焼結体を所望の厚さまで、圧延することができ、電極体の空隙率を減少させ、電極密度を高めることができる。ここで、電極厚さは、0.03〜3mmであると、好ましい。ここで、プレス等によってもアルミニウム多孔質焼結体の密度を高くすることができるが、生産性の観点から圧延が好ましい。なお、Liイオン導電性物質に、LiPF等の電解質塩を含む場合には、スラリー作製から非水電解質二次電池を作製するまでの工程を、不活性ガスで置換されたグローブボックスまたはドライルーム内で行うことが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池用電極は、高出力で、高信頼性の非水電解質二次電池に、非常に有効に利用される。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔アルミニウム多孔質焼結体からなる集電体1の製造〕
上述の実施の形態にしたがって、アルミニウム多孔質焼結体を製造した。まず、平均粒子径:24μmのアルミニウム粉末(不純物として、Fe:0.15質量%、Si:0.05質量%およびNi:0.01質量%を含む)と、平均粒子径9.1μmの水素化チタン粉末を、アルミニウム粉末と水素化チタン粉末の質量比が、99:1となるように合計500gで混合し、アルミニウム混合原料粉末を調製した。
バインダー溶液は、バインダー溶液:100質量部に対して、メチルセルロース:0.1質量部、エチルセルロース:2.9質量部、グリセリン:3質量部、ポリエチレングリコール:3質量部、アルキルベタイン:0.5質量部、残部水の比率で、合計500gで調製した。
アルミニウム混合原料粉末:50質量部と、バインダー溶液:49質量部と、ヘキサン:1質量部を合計500gで混合して、粘性組成物を調製した。
次に、この粘性組成物を、ドクターブレード法にて剥離剤が塗布されたポリエチレンシート上に引き伸ばして塗布し、温度および湿度を一定時間保持するよう管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させた。このときの粘性組成物の塗布厚さは、0.35mmであり、上記温度は35℃、湿度は90分、および保持時間は20分であった。続く乾燥は、70℃で50分間行った。そして、乾燥後の粘性組成物を、ポリエチレンシートから剥がし、直径100mmの円形に切り出して、焼結前成形体を得た。
この焼結前成形体を、ジルコニア敷粉を敷いたアルミナセッターの上に載置して、アルゴン気流雰囲気中で仮焼成(脱バインダー)を行った後に、加熱焼成し、多孔質アルミニウム多孔質焼結体の集電体1を得た。脱バインダーは、520℃で30分間行った。加熱焼成は、アルゴン雰囲気中、663℃で30分間行い、集電体1を得た。得られた集電体1の厚さは、1.2mmであった。集電体1を、X線回折で観察した結果、AlとAlTi化合物が確認された。
次に、アルミニウム多孔質焼結体1を、圧下率20%にてロール圧延を行い、割れの無いことを黙視にて確認をした。
〔アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム箔を備えた集電体2の製造〕
粘性組成物を、ドクターブレード法にて剥離剤が塗布されたアルミニウム箔上に引き伸ばして塗布したことと、乾燥後の粘性組成物を、アルミニウム箔とともに、直径100mmの円形に切り出して、焼結前成形体を得たこと以外は、集電体1と同様にして、集電体2を製造した。
〔アルミニウム多孔質焼結体とアルミニウム板を備えた集電体3の製造〕
まず、平均粒子径:24μmのアルミニウム粉末(不純物として、Fe:0.15質量%、Si:0.05質量%およびNi:0.01質量%を含む)と、平均粒子径1μmのニッケル粉末と、平均粒子径9.1μmの水素化チタン粉末を、アルミニウム粉末とニッケル粉末と水素化チタン粉末の質量比が、94:1:5となるように合計500gで混合し、アルミニウム混合原料粉末を調製した。
バインダー溶液は、バインダー溶液:100質量部に対して、メチルセルロース:0.1質量部、エチルセルロース:2.9質量部、グリセリン:3質量部、ポリエチレングリコール:3質量部、アルキルベタイン:0.5質量部、残部水の比率で、合計500gで調製した。
アルミニウム混合原料粉末:50質量部と、バインダー溶液:49質量部と、ヘキサン:1質量部を合計500gで混合して、粘性組成物を調製した。
次に、この粘性組成物を、ドクターブレード法で、厚さ:20μmのアルミニウム箔上に引き伸ばして塗布し、温度および湿度を一定時間保持するよう管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70℃で乾燥させた。このときの粘性組成物の塗布厚さは、0.35mmであり、上記温度は35℃、湿度は90分、および保持時間は20分であった。続く乾燥は、70℃で50分間行った。そして、乾燥後の粘性組成物をアルミニウム箔と共に、50mm×70mmの長方形に切り出して、厚さ:0.5mm、60mm×90mmのアルミニウム板上に載置し、焼結前成形体を得た。
この焼結前成形体を、アルゴン気流雰囲気中で仮焼成(脱バインダー)を行った後に、加熱焼成して、集電体3を得た。脱バインダーは、520℃で30分間行った。加熱焼成は、アルゴン雰囲気中、650℃で30分間行い、集電体3を得た。得られた集電体3は、アルミニウム多孔質体部位が45mm×63mmに焼結収縮してアルミニウム板に接合し、アルミニウム多孔質体接合部位の全体厚さは、1.2mmであった。集電体3のアルミニウム多孔質焼結体部位を、X線回折で観察した結果、AlとAlTi化合物が確認された。また、図1に、得られた集電体1のSEM写真を、図2および図3に、その一部拡大写真を、それぞれ示す。
〔非水電解質二次電池用電極の製造〕
(実施例1)
活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、導電材としてケッチェンブラック(KB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、質量比80:10:10で、合計200g混合して正極剤を調製し、この正極剤に溶剤としてN−メチル−2ピロリドン162gを混合して正極活物質スラリーを調製した。次いで、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(エルフアトケム製、Kynar2801:ヘキサフルオロプロピレン12wt%含有品)40gを、ジメチルカーボネート200gに60℃で溶解した後、1M LiPF/EC+PC(1:1(体積比))の非水電解質80gを撹拌混合し、Liイオン導電性物質スラリーを調整した。
次に、この正極活物質スラリーに、作製した集電体1を10分間浸漬し、取り出して乾燥させ、続いて、Liイオン導電性物質スラリーに10分間浸漬し、取り出して乾燥させた後に、圧延して厚さ0.5mmの実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。ここで、Liイオン導電性物質スラリーに、集電体1を浸漬し、乾燥した後、圧延前に、集電体1表面に付着したLiイオン導電性物質スラリーを拭き取り、ほぼ全量の活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質が、集電体1の空孔内に含まれるようにした。
(実施例2、3)
実施例2は、集電体1の替わりに集電体2を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3は、集電体1の替わりに集電体3を使用した以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン電池の正極を行った。なお、実施例2、3のいずれも集電体のアルミニウム多孔質焼結体側を、正極活物質スラリーおよびLiイオン導電性物質スラリーに浸漬した。
(従来例1)
従来例1の発泡アルミニウムとしては、従来技術の第2の方法であるスポンジウレタンを中子にした鋳型にアルミニウムを圧入する方法で製造した30PPIの発泡アルミニウムを用いた。
実施例1で作製した正極活物質スラリーに、従来例1の発泡アルミニウムを10分間浸漬し、取り出して乾燥させた後に、圧延して厚さ0.5mmの従来例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
〔非水電解質二次電池用電極の性能試験〕
(放電容量試験)
非水電解質二次電池の試験セルを作製した。図6に、用いた試験セルの構成の模式図を示す。
負極11として、箔状のリチウム金属(厚さ:0.5mm)を、幅:30mm、長さ:40mmに切断し、ニッケル製の負極集電タブ11aを溶接した。
次に、上記正極を、幅:30mm、長さ:40mmに切断し、正極10とし、正極10のアルミニウム複合体のアルミニウム箔に、アルミニウム製の正極集電タブ10aを溶接した。また、セパレーター12として、ポリプロピレン微多孔膜(厚さ:20μm)のセパレーター12を幅:32mm、長さ:42mmに切断した。これらを、負極集電タブ11a、負極11、セパレーター12、正極10、正極集電タブ10aの順に重ねて、積層体を作製した。
上記積層体が収容可能な大きさに切断された、一対のアルミニウムラミネートフィルム13a、13bの3辺の溶着部13cをヒートシールし、外装体13とした。
不活性雰囲気中で、外装体13の開口部からに上記積層体を挿入し、外装体13内に積層体を収容するとともに、1M LiPF/EC+PC(1:1(体積比))の非水電解質を注液した後、この外装体13の開口部をヒートシールして密閉し、試験セルを作製した。
上記試験セルを、放電レート:2C、放電電圧:4.2〜2.8Vで放電を行った。表1に、これらの結果を示す。
(信頼性試験)
上記試験セルを、充放電レート:2C(CVCC充電で45分)、充放電電圧:2.8〜4.2Vでの条件で、「充電→レスト:15分→放電→レスト:15分」を1サイクルとして、サイクル試験を行った。表1に、100サイクル後の放電容量の結果を示す。また、〔「100サイクル後の放電容量」/「初回の放電容量」〕を容量維持率(単位は「%」)とした。表1に、容量維持率の結果を示す。また、100サイクル試験後の試験セルの膨れの有無を目視で観察した。表1に、これらの結果を示す。
表1からわかるように、実施例1〜3の試験セルは、高出力の充放電レート:2Cでの100サイクル後の容量維持率が93%以上であり、膨れもなく、高信頼性であった。これに対して、従来例1の試験セルは、100サイクル後の容量維持率が約78%と低く、膨れも発生して、信頼性が高くなかった。
以上のように、本発明の非水電解質二次電池用正極により、高出力で、高信頼性の非水電解質二次電池を製造することができる。
1 アルミニウム多孔質焼結体
2 活物質、導電助剤、結合剤およびLiイオン導電性物質層
3 空孔
10 正極
10a 正極集電タブ
11 負極
11a 負極集電タブ
12 セパレーター
13 外装体
13a、13b アルミニウムラミネートフィルム
13c 溶着部

Claims (5)

  1. アルミニウム多孔質焼結体を備える集電体と、前記アルミニウム多孔質焼結体の空孔内に活物質、導電助剤およびLiイオン導電性物質を含む二次電池用正極であって、前記アルミニウム多孔質焼結体は、平均粒子径が、7〜40μmのアルミニウム粒子と、0.1〜30μmの水素化チタンとを非加圧焼結して得られ、前記アルミニウム多孔質焼結体が、三次元網目構造の金属骨格を有し、前記金属骨格間に空孔を有し、前記金属骨格自体に気孔を有し、前記金属骨格にはAlTi系化合物が分散していることを特徴とする、非水電解質二次電池用正極。
  2. 集電体が、さらにアルミニウム箔またはアルムニウム板を備える、請求項1記載の非水電解質二次電池用正極。
  3. アルミニウム多孔質焼結体が、アルミニウムとチタンの合計100質量部に対して、チタンを0.1〜20質量部含む、請求項1または2記載の非水電解質二次電池用正極。
  4. Liイオン導電性物質が、高分子ゲル電解質または固体電解質である、請求項1〜3のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用正極。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用正極を含む、非水電解質二次電池。
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