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JP5506597B2 - フレキシブルプリント配線板用基板の製造方法 - Google Patents

フレキシブルプリント配線板用基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フレキシブルプリント配線板用基板の製造方法に関し、詳しくは、回路形成後にカール、ねじれ、反り等を生ずることがなく、しかも、耐熱性、寸法安定性、接着性、電気的特性等に優れたフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法に関する。
従来、フレキシブルプリント配線板用基板はポリイミド、ポリエステルなどのフィルムからなる絶縁体と金属箔からなる導体とをエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの接着剤を介して貼り合わせて製造されている。しかし、この様な方法で製造されたフレキシブルプリント配線板用基板は、接着剤層が存在するために、耐熱性、難燃性などが低下するという問題があった。また、導体をエッチングした際や、何らかの熱処理を施した際の寸法変化率が大きく、その後の工程で支障をきたすという問題があった。
そこで、このような問題を解決するために、接着剤層を存在させることなく、ポリイミド系樹脂層を導体上に直接形成するフレキシブルプリント基板を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1においては、特定構造を有するポリイミド樹脂前駆体の溶液を導体上に直接塗布した後、これを硬化してフレキシブルプリント配線板用基板を得る方法が提案されている。
しかし、この方法で得られたフレキシブルプリント配線板用基板は回路を形成するためにエッチングにより導体の一部を除去すると、導体を除去した面を内側にして大きくカールするので、その後の工程において例えば電子部品を実装する工程で電子部品を正確に装着することができないなどの支障をきたすという問題があった。
この問題を解決する方法として、特許文献2〜5には導体上に絶縁体として形成するポリイミド系樹脂層を、特性が異なる複数のポリイミド系樹脂からなる多層構造に形成する方法が提案されている。
上記カールの小さいフレキシブルプリント配線板用基板を製造する方法として、特許文献6〜8には乾燥処理したシート状基板の少なくとも樹脂層側に通気性を有するシート状材料を接触させて伴巻きで円筒体に巻取り、通気性の多重層円筒体とした状態で加熱硬化炉内に移動し静置して200〜400℃の熱処理行うフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法が開示されている。このプロセスで用いる通気性シートは300℃以上の耐熱性を有する高価な通気性シートを用いる必要があった。また、この方法は輻射加熱手段と多重層円筒体の導体に電流を流し導体の抵抗による誘導加熱手段とを併用することが必要でプロセスが複雑であった。
また、特許文献9には、巻き状態での乾燥の際に、ポリイミド樹脂前駆体溶液が塗布された金属箔上に、溶液塗布部幅の0.5〜20%を占めるようにスペーサーを挿入する方法が開示されている。この方法はカールの小さいフレキシブルプリント配線板用基板を製造する方法として有効な方法ではあるが、スペーサーを挿入するための装置が複雑となるという問題があった。
特開昭60−157286号公報 特開平1−245586号公報 特開平4−274382号公報 特開平8−250860号公報 国際公開WO01/097578号公報 特開平4−084488号公報 特開平8−224797号公報 特開2005−271374号公報 特開2005−64278号公報
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、本発明の目的は、回路形成後にカール、ねじれ、反り等を生ずることが抑制され、しかも、耐熱性、寸法安定性、接着性に優れ、電気的特性等にも優れたフレキシブルプリント配線板用基板の簡便で経済性に優れた製造方法を提供することにある。本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の条件でポリイミド樹脂層の乾燥を行うことにより目的のフレキシブルプリント配線板用基板が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち本発明の要旨は、第一に、金属箔の片面にポリイミド前駆体樹脂溶液を直接塗布し、乾燥処理した後に、加熱硬化させる片面絶縁層を有するフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法であって、金属箔に前記樹脂溶液を塗布して樹脂層が形成されたシート状基板を1次乾燥処理して樹脂層の固形分濃度を40〜70質量%とした後、シート状基板の少なくとも樹脂層側にセルロース系の紙もしくは不織布からなる通気性シートを接触させて伴巻きで円筒体に巻取り、通気性の多重層円筒体とした状態で200℃未満の温度で2次乾燥処理を行い、絶縁層中のポリイミド固形分濃度を80質量%以上とし、しかる後、上記通気性を有するシートを取り除いて、200〜400℃の範囲でシート状基板のポリイミド層を熱硬化処理することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法であり、また、第二に、2次乾燥処理は空気中でおこない、熱硬化処理は、減圧または不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする前記フレキシブルプリント配線板用基板の製造方法である。
本発明によれば、実質的にカールがなく、寸法安定性にも優れたフレキシブルプリント配線板用基板を、簡単な装置で効率よく安価に製造することができる。
本発明でいうポリイミド樹脂前駆体とは、加熱硬化によってイミド結合を生じ、下記構造式(1)で示される構成単位を有するポリイミド樹脂となるものである。そのような化合物であれば如何なるものも用いることができるが、例えば、ポリイミド樹脂前駆体として、下記構造式(2)で示されるポリアミック酸を用いることができる。ポリアミック酸は通常、ポリアミック酸と溶媒からなるポリイミド樹脂前駆体溶液として製造することができる。

構造式(1)、(2)において、Rは4価の有機残基を、R’は2価の有機残基を示す。
ポリイミド樹脂前駆体溶液として製造するための溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、エーテル系化合物、水溶性アルコール系化合物が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等が挙げられる。
また、エーテル系化合物としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、 1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。 また、水溶性アルコール系化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
これらの溶媒は2 種以上を混合して用いることができる。これらの溶媒のうち、特に好ましい例としては、単独溶媒としてはN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられ、また、混合溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミドとN−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンとメタノール、N−メチル−2−ピロリドンと2―メトキシエタノール等の組み合わせが挙げられる。
次に、ポリイミド樹脂前駆体の製造方法について説明する。
まず、ポリアミック酸からなる溶液は、たとえば、下記構造式(3) で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物と下記構造式(4)で示される芳香族ジアミンとを上記溶媒例えば非プロトン性極性溶媒中で反応させることにより製造することができる。

ここで、R1は4価の芳香族残基を表す。
ここで、R2は2価の芳香族残基を表す。
上記反応においては、上記テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミンとの割合は、ジアミン1モルに対してテトラカルボン酸二無水物1.03〜0.97モルが好ましく、より好ましくはジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物が1.01〜0.99モルである。また、反応温度は、−30〜60℃が好ましく、−20〜40℃がより好ましい。上記反応において、モノマー及び溶媒の混合順序は特に制限はなくいかなる順序でもよい。溶媒として混合溶媒を用いる場合は、個々の溶媒に別々のモノマーを溶解又は懸濁させておき、それらを混合し、撹拌下、所定の温度と時間で反応させることによっても、ポリアミック酸からなる溶液が得られる。このポリイミド樹脂前駆体の溶液は2種類以上混合して用いることもできる。
上記構造式(3) で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、2,2 −ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンの二無水物等が挙げられる。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は2種類以上を混合して用いることもできる。
本発明において、特に好ましい芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸または3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸を用いることが出来る。これらは単独または混合して用いることができる。
また、上記構造式(4)で示される芳香族ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4 , 4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノベンゾエート、ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2− ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、ジアミノトルエン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、ジアミノアントラキノン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシフェニル) ジフェニルスルホン、1,3−ビス(アニリノ) ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン等が挙げられる。これらの芳香族ジアミンは2種類以上を混合して用いることもできる。
本発明において、特に好ましい芳香族ジアミンとして、p−フェニレンジアミン、または4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが出来る。これらは単独または混合して用いることができる。
本発明において、ポリイミド樹脂前駆体の溶液を製造する際、上記ポリアミック酸溶液もしくはオリゴアミック酸溶液にポリアミック酸もしくはオリゴアミック酸の末端アミンもしくはカルボン酸と塩を形成せしめるような芳香族テトラカルボン酸もしくは芳香族ジアミン等を添加することが出来る。また、重合性不飽和結合を有するアミン、ジアミン、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸の誘導体を添加して、熱硬化時に橋かけ構造を形成させることができる。不飽和化合物としては、マレイン酸、ナジック酸、テトラヒドロフタル酸、エチニルアニリン等が使用できる。ポリイミド樹脂前駆体の合成条件、乾燥条件、その他の理由等により、ポリイミド樹脂前駆体中に部分的にイミド化されたものが存在していても特に支障はない。
また、これらのポリイミド樹脂前駆体の溶液を製造する際、上記溶媒に可溶なポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等、他の耐熱性樹脂を混合することができる。さらに、接着性(密着性)向上やフィルム物性を向上させるため、シランカップリン剤や各種界面活性剤を微量添加することもできる。
本発明でいう金属箔とは、銅、アルミニウム、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン又はそれらの合金等の箔を挙げることができ、好ましくは銅である。これらの金属箔についてはその表面に、接着力の向上を目的として、サイディング、ニッケルメッキ、銅‐亜鉛合金メッキ、又は、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等によって化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよい。 金属箔の厚さは5〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
塗布は任意の塗工機を用いて行うことができるが、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、バーリバースロールコーターなどが挙げられる。また、特性の向上などを目的として多層塗布することも可能であり、その際、各層のポリイミド樹脂前駆体溶液は同じであっても異なっていてもよい。
1次乾燥には任意の装置を用いることができ、熱風乾燥機が好ましいが、赤外線加熱、電磁誘導加熱などを使用又は併用してもよい。1次乾燥は、好ましくは塗布直後に行い、塗膜中の固形分濃度が40〜70質量%の範囲となるまでおこなう。1次乾燥は100〜150℃の温度で連続的に行うことが好ましい。このとき固形分濃度が40質量%未満であると、塗布面のべたつきのため、巻き取りを良好に行うことができない。また、固形分濃度が70質量%を超えていると、巻き取り、乾燥後にカールが大きくなったり、寸法安定性が悪化しやすくなる。
上記1次乾燥処理したシート状基板の少なくとも樹脂層側にセルロース系の紙もしくは不織布からなる通気性シート を接触させて伴巻きで円筒体に巻取り、通気性の多重層円筒体とした状態で200℃未満の温度で2次乾燥処理を行い、絶縁層中のポリイミド固形分濃度を80質量%以上とする。80質量%未満の場合には、硬化処理の際に樹脂面と金属箔の融着が起こり、外観を損ねることがあるため好ましくない。
セルロース系の紙もしくは不織布からなる通気性シートとしては、クラフト紙、コピー紙、マット紙、濾紙、レーヨンなど再生繊維を用いた不織布などが用いられる。この通気性シートの厚みとしては30μmから500μm程度が好ましい。これらの紙は単独で使用できるが、伴巻きする際、同じ種類または異なる種類のシートを重ねて使用することも出来る。また、伴巻きする際の通気性シートの幅は1次乾燥処理したシート状基板の幅の90〜120%程度とすることが好ましい。2次乾燥処理は、製造コストの観点から空気中で行うことが好ましく、この際、温度を100℃程度から200℃未満まで連続的に昇温させてよく、一定の温度に保たれる期間が含まれていても良い。しかる後、上記通気性を有するシートを取り除いて、200〜400℃の範囲でシート状基板のポリイミド層を熱硬化処理する。
熱硬化処理は上記2次乾燥処理したシート状基板を巻いた状態もしくはロールツーロールで連続的に行うことが出来る。本発明では2次乾燥処理したシート状基板の固形分濃度は80質量%以上まで上がっているので、通気性シートを取り除いた状態で巻いた2次乾燥処理の熱処理を行っても、効率よくポリイミドの硬化を行うことができる。この熱硬化処理は、金属箔として銅箔などの酸化しやすい物質を用いる際は、減圧または不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、処理時間としては10〜500分程度が好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例、比較例で得られた基板の評価方法は次の通りである。
(1)カール特性
縦100mm、横100mmの大きさのサンプルを用い、温度23℃、湿度60%RH中に24時間放置後の曲率半径を測定し、80mm以上を◎、50mm以上80mm未満を○、20mm以上50mm未満を△、20mm未満を×で表す。
(2)寸法変化率
幅10mm、長さ200mm のサンプルを用い、これを塩化第二鉄水溶液中に浸漬し、銅箔を塩化第二鉄水溶液によって全面エッチングして、サンプルから銅箔を全て除去した。エッチング後、およびエッチング後にさらに150℃×30 分加熱処理した後の寸法を、デジタル読取顕微鏡(日本光器製NRM−D−2XZ型)を用いて測定し、エッチング前の寸法に対する変化率をMD方向についてそれぞれ計算する。
(ポリイミド樹脂前駆体溶液の合成例)
国際公開WO01/097578号公報に開示された方法に従ってポリイミド樹脂前駆体溶液を合成した。
(参考例1)
三つ口・フラスコに窒素ガス気流下、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル30.03g(0.15mol)、p−フェニレンジアミン91.92g(0.85mol)、N,N−ジメチルアセトアミドDMAc2330g及びN−メチル−2−ピロリドン999gを採取し、このフラスコを氷水中に入れて上記内容物を30分間攪拌した後、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.22g(1.00mol)を加え、40℃の湯浴中で1時間攪拌を行い、ポリアミック酸を固形分濃度として11質量%含む均一なポリイミド樹脂前駆体の溶液を得た。これを前駆体溶液aとする。
(参考例2)
三つ口・フラスコに窒素ガス気流下、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル30.03g(0.15mol)、p−フェニレンジアミン91.92g(0.85mol)、N,N−ジメチルアセトアミド1180g及びN−メチル−2−ピロリドン506gを採取し、このフラスコを氷水中に入れて上記内容物を30分間攪拌した後、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物250.09g(0.85mol)を加え、40℃の湯浴中で1時間攪拌を行った。次いで、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸49.54g(0.15mol)を加えて40℃の湯浴中で2時間攪拌し、さらに60℃の湯浴中で3時間攪拌を行い、オリゴアミック酸とテトラカルボン酸との塩を固形分濃度として20質量%含む均一なポリイミド樹脂前駆体の溶液を得た。これを前駆体溶液bとする。
(実施例1)
前駆体溶液aを厚さ18μmの巾540mmの電解銅箔上に硬化後の塗膜厚みが18μm、巾500mmになるようにリップコーターを用いて連続的に塗工し、空気中130℃で5分間乾燥した後、この塗膜の表面に上記と同じようにして前駆体溶液bの塗工を行い硬化後の塗膜厚みが7μmになるように空気中130℃で10分乾燥することにより1次乾燥を行った。 このときの塗膜中の固形分濃度は67質量%であった。上記銅箔上にポリイミド前駆体が積層されたシートを、厚さ105μm、幅540mmの上質コピー紙1枚(富士ゼロックス製:目付80g/m)とポリイミド前駆体面が対抗するように重ね、積層シートの銅箔が内側に樹脂面が外側にして伴巻きでステンレス製コアに巻き、銅箔端部をすべてカプトン(登録商標)テープで塞いだ。上記共巻きした多重層円筒体を熱風オーブン中に入れ、空気中で室温から120分かけて150℃ まで昇温し、さらに150℃で120分加熱することにより2次乾燥を行った。この時の塗膜中の固形分濃度は85質量%であった。 しかる後、上記共巻き円筒体から上記コピー紙を除去して他のステンレス製コアに巻き取り、熱風イナートオーブン中、窒素雰囲気下にて、室温から360分かけて350℃まで昇温させ、さらに350℃で120分加熱して硬化処理を行い、フレキシブルプリント配線板用基板Aを得た。
(実施例2)
上記厚さ105μm、幅540mmの上質コピー紙(富士ゼロックス製:80g/m)を2枚重ねて用いた以外は実施例1と同条件でフレキシブルプリント配線板用基板Bを得た。なお、2次乾燥後の塗膜中の固形分濃度は87質量%であった。
(実施例3)
厚さ200μm、幅540mmのマット紙(エプソン製:目付172g/m)を用いた以外は実施例1と同条件でフレキシブルプリント配線板用基板Cを得た。なお、2次乾燥後の塗膜中の固形分濃度は86質量%であった。
実施例4
実施例1〜3で得られたフレキシブルプリント配線板用基板A〜Cのカール特性、寸法安定性の測定結果を表1に示す。本表から本発明の製造法で得られたフレキシブルプリント配線板用基板は優れた特性を示すことが分る。
(比較例1)
2次乾燥を、空気中で室温から20分かけて150℃ まで昇温し、さらに150℃で10分加熱すること以外は実施例1と同様にして固形分濃度は75質量%の多重層円筒体を得た。これを実施例1と同様の条件で硬化処理を行ったが、硬化の際、ポリイミド樹脂面と銅箔の一部が融着してしまい良好な外観を有するフレキシブルプリント配線板用基板を得ることはできなかった。
(比較例2)
通気性シートとして厚さ110μmのポリエステル紙(阿波製紙製:86g/m)もしくは厚さ100μmのポリプロピレン製多孔質シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして2次乾燥を行ったが、いずれの通気性シートを用いた場合においても、2次乾燥中に通気性シートとポリイミド層が融着してしまい、目的とする多重層円筒体を得ることはできなかった。

Claims (2)

  1. 金属箔の片面にポリイミド前駆体樹脂溶液を直接塗布し、乾燥処理した後に、加熱硬化させる片面絶縁層を有するフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法であって、金属箔に前記樹脂溶液を塗布して樹脂層が形成されたシート状基板を1次乾燥処理して樹脂層の固形分濃度を40〜70質量%とした後、シート状基板の少なくとも樹脂層側にセルロース系の紙もしくは不織布からなる通気性シートを接触させて伴巻きで円筒体に巻取り、通気性の多重層円筒体とした状態で200℃未満の温度で2次乾燥処理を行い、絶縁層中のポリイミド固形分濃度を80質量%以上とし、しかる後、上記通気性を有するシートを取り除いて、200〜400℃の範囲でシート状基板のポリイミド層を熱硬化処理することを特徴とするフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法。
  2. 2次乾燥処理は空気中でおこない、熱硬化処理は、減圧または不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法。
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