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JP5500758B2 - 非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末およびその製造方法 - Google Patents

非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非熱溶融性粒状フェノール樹脂およびその製造方法に関する。より詳しくは、有機フィラーとして、または分子篩炭素等の機能性炭素材料の前駆体などとして有用であり、成形材料、塗料、耐火物、製紙、摩擦材、砥石、接着剤等の各種工業分野にわたる材料の添加剤として好適に用いることができる、安全性の高い非熱溶融性粒状フェノール樹脂およびその製造方法に関する。
フェノール樹脂は、耐熱性、力学的性能および電気特性と、コストとのバランスに優れた材料であり、各種の工業分野で利用されている。特に、粒状または粉末状のフェノール樹脂またはその硬化物は、近年、様々な分野への適用可能性が見出され、多用途材料として、いくつかの製品がすでに市販されている。
たとえば、特許文献1には、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物から成る粒状ないし粉末状フェノール樹脂硬化物が開示されており、これは商品名「ベルパール(登録商標)Rタイプ」(エア・ウォーター株式会社製)として市販されているものである。当該フェノール樹脂硬化物は、たとえば耐熱性を付与したり、摺動特性を改善するための有機フィラーとして、あるいは未硬化のフェノール樹脂等を硬化させる際に発生するガス量を低減するためのフィラーとして有用である。また、その化学構造に起因して高残炭率の樹脂であることから、たとえば活性炭や、炭素電極材として好適に使用される粉末状炭素材料の焼成前駆体としても有用である。さらに、特許文献1に記載の粒状ないし粉末状フェノール樹脂硬化物は、有害なフェノールモノマーや低分子縮合成分を含まず、安全性が高いという特徴を有している。
ここで、上記のような粒状のフェノール樹脂またはその硬化物を有機フィラーや粉末状炭素材料の前駆体として用いる場合、有機フィラーや粉末状炭素材料の前駆体として望ましい性能を発揮するためには、その粒子の形状および形態が適切に制御されている必要がある。すなわち、製品中における高充填性、粉末状炭素材料としたときの高い比表面積および水性スラリーとして使用する際の低粘度性等を達成するためには、(i)粒子の平均粒径が十分小さく、かつ(ii)1次粒子同士の凝集による2次凝集物がほとんどないことが必要である。また、上記(i)および(ii)に加えて、(iii)粒子の粒度分布が十分に狭く、および/または(iv)粒子の形状が真球状により近い、ことがより望ましい。さらには、当該粒状フェノール樹脂が適用される製品の安全性を考慮すれば、(v)粒状フェノール樹脂中のフェノールモノマー(遊離フェノール)の残存量がより少ないことが望ましい。ここで、上記十分小さな粒径とは、粒状フェノール樹脂またはその硬化物の各種工業用途への適用を考慮すれば、少なくとも20μm以下であることが必要であり、より好ましくは10μm以下である。
しかしながら、粒状のフェノール樹脂またはその硬化物については、これまでに多くの研究がなされているものの、上記特性を具備する粒状フェノール樹脂またはその硬化物は、未だ知られておらず、このような粒状フェノール樹脂またはその硬化物の量産に適した製造方法もまた知られていないのが現状である。
たとえば、上記特許文献1には、使用するホルムアルデヒド、フェノール、塩酸および水媒体の量比、温度条件などの合成条件を適正化することにより、粒状ないし粉末状の非熱溶融性フェノール樹脂を得ることが記載されているが、得られる非熱溶融性フェノール樹脂は、(i)1次粒子径が比較的大きい、(ii)1次粒子の凝集により形成される2次凝集物が比較的多い、(iii)粒度分布が広い、(iv)球形以外の形状の粒子を多く含む、などの改善されるべき点を有していた。
また、特許文献2には、懸濁剤の存在下に、フェノールとホルムアルデヒドとをアルカリ触媒を用いて反応させた後、酸触媒を用いて硬化反応を行なうことにより得られる球状フェノール樹脂硬化物が開示されている。しかしながら、実施例に具体的に記載されている平均粒径は、100〜800μmである。
特許文献3には、フェノール類とホルムアルデヒド類を、酸性触媒と塩基性触媒のうち少なくとも一種と含窒素系化合物の触媒存在下で反応させて得られる初期縮合物に、セルロース系化合物を添加し、さらに反応を続けることによって粒状化し、その後脱水乾燥して、非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を得ることが記載されている。しかし、当該粒状フェノール樹脂の平均粒径は、700μm程度である。また、約6000ppmの遊離フェノールを含有し、安全性の観点から改善の余地がある。
特許文献4には、縮合反応触媒と乳化分散剤の存在下にフェノール類とアルデヒド類とを温度105℃以上200℃以下、圧力1.3kg/cm2以上15kg/cm2以下の条件下に縮合反応させることにより、球状フェノール樹脂を得ることが記載されている。当該球状フェノール樹脂は、実施例にあるように、2〜約200μm程度の平均粒径を有する。しかしながら、反応をオートクレーブを用いて行なうという煩雑さを伴い、攪拌方法や攪拌速度により粒径が大きく変動してしまうという問題があった。さらには、本質的に反応様式は、上記特許文献3と同様であり、得られるフェノール樹脂の化学構造も同等と考えられることから、遊離フェノールを多く含有すると考えられる。
特許文献5には、水溶性高分子化合物の存在下において含窒素化合物触媒を用いて、フェノール類とホルムアルデヒド類とを反応して得られるレゾール型球状フェノール樹脂の分散体を酸性触媒により硬化した球状フェノール樹脂について記載されている。しかしながら、この方法により得られる球状フェノール樹脂の平均粒径は、350〜520μm程度と大きい。
特許文献6には、レゾルシンとアルデヒド類から球状樹脂微粒子を製造する方法であって、レゾルシンと水との比(重量比)を1:5〜1:100とし、反応系のpHを5〜7に調節することを特徴とする球状樹脂微粒子の製造方法が開示されている。当該球状樹脂微粒子は、実施例にあるように、500nm〜2μmの平均粒径を有する。しかしながら、フェノール源としてレゾルシンしか使用し得ないという問題があり、したがって、フェノール等の他のフェノール類を用いる場合と比較して、得られるフェノール樹脂の残炭率は低いと考えられる。
特許文献7には、フェノール樹脂とセルロース誘導体と溶媒とを含む均質混合液から溶媒を除去し、フェノール樹脂とセルロース誘導体の相分離を生じさせて、フェノール樹脂を硬化させた後、フェノール樹脂硬化物とセルロース誘導体との複合体からセルロース誘導体を除去する、球状フェノール樹脂硬化物の製造方法が記載されている。このような方法により、28nm〜5μmの平均粒径を有する球状フェノール樹脂硬化物を得ている。しかしながら、本方法は、環境や人体の安全に問題のある有機溶媒を使用しなければならない。さらに、固相中の相分離反応を利用しているため、粒子の生成抽出に21時間〜114時間という長時間を要する。
特許文献8には、特定量の水または水/水混和性有機溶媒の混合溶媒中でフェノール化合物とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下に、該溶媒を濃縮しながら反応させ、析出したノボラック球状粒子を硬化剤との反応により硬化させて球状フェノール−ホルムアルデヒド系樹脂を製造する方法が開示されている。当該方法によれば、たとえば9μmや15μm程度の粒径の球状フェノール樹脂を得ることができる。しかしながら、本方法により得られる当該球状フェノール樹脂は、粒度分布の点から十分満足のいくものとはいえない。さらには、本質的に反応様式は、上記特許文献3と同様であり、得られるフェノール樹脂の化学構造も同等と考えられることから、遊離フェノールを多く含有すると考えられる。
このように従来、フェノール樹脂の微粒子を得る手法として、懸濁剤や乳化分散剤等の添加剤を用いたり、フェノール樹脂の重合条件等を適正化するなど、様々な方法が提案されているが、平均粒径が20μm以下、好ましくは10μm以下と微小な粒子径を有し、かつ2次凝集物のほとんどなく、モノマーフェノール類の含有量が非常に少なく、高い安全性を有するフェノール樹脂粒子およびその製造方法は提案されていなかった。さらにこれらの特性に加えて、その粒子の形状が真球状であり、粒子の粒径分布が十分に狭い粒状フェノール樹脂およびその製造方法は提案されていない。
たとえば、たとえフェノール樹脂の重合条件等を適正化した場合であっても、フェノール類とアルデヒド類とを重合させる際の重合条件自体が、通常用いられてきた重合条件と本質的に同等である場合には、得られたフェノール樹脂中には、従来と同程度に高いモノマーフェノール類を含有することとなる。また、攪拌速度が粒子径に影響を与えるような粒状フェノール樹脂の製造方法では、反応容器内を均一に攪拌し続けられ得ないことにより、粒径分布は必然的に広くなる。
特公昭62−30210号公報 特開2000−239335号公報 特公昭53−42075号公報 特許第3576433号公報 特公昭61−59324号公報 特開2002−226534号公報 特開平10−338728号公報 特開平7−18043号公報
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、平均粒径が微小であり、2次凝集体を含まず、粒子の形状が真球状であり、狭い粒度分布を有し、遊離フェノール含有量が少なく安全性の高い、非熱溶融性の粒状フェノール樹脂およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、保護コロイド剤の存在下、水性媒体中で高濃度の酸性触媒を用いてアルデヒド類とフェノール類とを反応せしめた後、反応液を加熱することにより、上記のような良好な特性を有する非熱溶融性の粒状フェノール樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、平均粒径が20μm以下であり、単粒子率が0.7以上であることを特徴とする。平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。なお、用語「非熱溶融性」、「平均粒径」および「単粒子率」の定義については、後述する。
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、下記式[1]で示される粒径分布の変動係数は、0.65以下であることが好ましい。
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
ここで、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法によって得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。
また、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、粒子の真球度は0.5以上であることが好ましい。
さらに、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、遊離フェノール含有量は500ppm以下であることが好ましい。なお、上記用語「真球度」および「遊離フェノール含有量」の定義については、後述する。
また、本発明は、(1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する、粒状フェノール樹脂形成工程と、(2)粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱して非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する、加熱工程と、(3)非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を反応液から分離し洗浄する、分離・洗浄工程と、を含む非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法であって、反応液中における酸性触媒のモル濃度は、2.0mol/L以上であることを特徴とする、非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法を提供する。
ここで、上記酸性触媒は塩酸であり、上記アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはこれらの混合物であることが好ましい。
また、上記アルデヒド類に対する上記フェノール類の仕込みモル比は、0.9以下であることが好ましい。
また、上記保護コロイド剤は、水溶性多糖類誘導体であることが好ましい。
さらに本発明は、上記いずれかの方法により得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂を提供する。
ここで、上記いずれかの方法により得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂の平均粒径は20μm以下であり、単粒子率は0.7以上であることが好ましい。さらに好ましくは、平均粒径は10μm以下である。
上記いずれかの方法により得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、上記式[1]で示される粒径分布の変動係数は、0.65以下であることが好ましい。
また、上記いずれかの方法により得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、粒子の真球度は0.5以上であることが好ましい。
さらに、上記いずれかの方法により得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂においては、遊離フェノール含有量は500ppm以下であることが好ましい。
本発明によれば、平均粒径が20μm以下と、非常に微小な粒径を有し、かつ当該微小な1次粒子の凝集による2次凝集物をほとんど含まない、すなわち単粒子率が高い非熱溶融性の粒状フェノール樹脂が提供される。このような本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、成形材料、塗料、耐火物、製紙、摩擦材、砥石、接着剤等の各種工業分野にわたる材料の添加剤として、特には、有機フィラーとして、または炭素電極材、活性炭、分子篩炭素等の機能性炭素材料の前駆体などとして好適に用いることができる。
また、本発明は、上記のような優れた特性を具備する非熱溶融性粒状フェノール樹脂を製造するのに好適な製造方法を提供する。本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法によれば、比較的簡便な方法で優れた特性を有する非熱溶融性粒状フェノール樹脂を製造することが可能であり、本発明の方法は、量産に適した方法である。
<非熱溶融性粒状フェノール樹脂>
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物からなる、非熱溶融性のフェノール樹脂であって、粒子(2次凝集物に対する用語として、1次粒子とも称する。)の平均粒径が20μm以下であり、2次凝集物の含有量についての指標となる単粒子率が0.7以上であることを特徴とする。このように、フェノール樹脂粒子の平均粒径を20μm以下、好ましくは10μm以下とし、単粒子率を0.7以上とすることにより、たとえば当該粒状フェノール樹脂を有機フィラーとして用いる場合、より高い充填率で充填することが可能となり、しかも当該粒状フェノール樹脂が充填された樹脂組成物等の被充填物は、従来と比較して低粘度であるため、取り扱いが容易となる。また、本発明の粒状フェノール樹脂は、たとえば活性炭、炭素電極材、分子篩炭素等の機能性炭素材料の前駆体としても好適に用いることができるが、フェノール樹脂粒子の平均粒径を20μm以下、好ましくは10μm以下とし、単粒子率を0.7以上とすることにより、焼成により得られる炭素粉末の空間充填性が大幅に改善される。したがって、本発明の粒状フェノール樹脂を用いることにより、当該機能性炭素材料の単位体積あたりの性能や単位重量あたりの表面積を大幅に向上させることができる。さらに、本発明の粒状フェノール樹脂から得られる機能性炭素材料を、たとえば水等の液媒体に分散させた分散液は、高濃度領域においても低粘度であるという特徴を有する。このような特徴を有する分散液は、たとえば、塗工炭素電極を作製する際などに好適に用いることができる。かかる本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、上記の用途だけではなく、成形材料、塗料、耐火物、製紙、摩擦材、砥石、接着剤等の幅広い工業分野にわたって適用することが可能である。
ここで、図1に、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の好ましい一例の走査型電子顕微鏡写真(以下、SEM写真という。)を示す。図1に示されるように、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、粒径の微小な粒状フェノール樹脂であって、当該粒子(1次粒子)の凝集による2次凝集物が少ない。なお、図1の粒状フェノール樹脂は、以下に定義される平均粒径が5μm、単粒子率が1.0のものである。
以下、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂について詳細に説明する。本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物からなる、非熱溶融性のフェノール樹脂である。ここで、フェノール類とアルデヒド類との反応生成物とは、基本的にはこれらが付加反応および縮合反応することにより得られる生成物であるが、一部付加反応のみ起こした生成物も含まれる。フェノール類としては、特に限定されないが、たとえばフェノール、ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシン、キシレノール、ピロガロールなどを挙げることができる。フェノール類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、得られるフェノール樹脂の性能とコストとのバランスを考慮すると、フェノール類はフェノールであることが好ましい。また、アルデヒド類としては、特に制限されるものではないが、たとえばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒドなどを挙げることができる。アルデヒド類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはこれらの混合物であることが好ましい。
ここで、本明細書中において「非熱溶融性」とは、特定の高温加圧条件下において粒状フェノール樹脂が融着しないことを意味するものであり、具体的には、粒状フェノール樹脂試料約5gを、2枚の0.2mm厚ステンレス板間に挿入し、あらかじめ100℃に加温したプレス機で、50kgの総荷重で2分間プレスしたときに、溶融および/または融着により、粒状フェノール樹脂が平板を形成したり、フェノール樹脂粒子が変形したり、またはフェノール樹脂粒子同士が互いに接着しない性質と定義される。このような性質は、粒状フェノール樹脂の製造において、フェノール類とアルデヒド類との反応によりフェノール樹脂を合成した後、該フェノール樹脂を架橋・硬化させることによって付与することができる。架橋・硬化は、たとえばフェノール類とアルデヒド類との反応を行なった反応液を加熱することによって行なうことができる。
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の煮沸メタノール溶解度は、30%未満であることが好ましく、より好ましくは20%未満である。本明細書中において「煮沸メタノール溶解度」とは、粒状フェノール樹脂中の煮沸メタノール可溶成分の含有量を意味し、具体的には、次のような試験により算出された値と定義される。すなわち、フェノール樹脂試料約10gを精秤し、実質的に無水のメタノール約500mL中で30分間還流下に加熱した後、No.3のガラスフィルターで濾過し、さらにガラスフィルター上の残渣を約100mLの無水メタノールで洗浄する。ついで、洗浄後のガラスフィルター上の残渣を40℃で5時間乾燥した後、当該残渣を精秤する。以下の式[2]により算出された値を「煮沸メタノール溶解度」とする。
煮沸メタノール溶解度(重量%)=(フェノール樹脂試料重量と乾燥後の残渣重量との差)/(フェノール樹脂試料重量)×100 [2]
「煮沸メタノール溶解度」は、該フェノール樹脂が「非熱溶融性」を有するか否かの直接的な判断基準ではないが、フェノール樹脂の熱溶融性の程度を知る上での1つの指標となり得るものである。すなわち、「煮沸メタノール溶解度」が低いほど、熱溶融性も低い傾向にある。煮沸メタノール溶解度が30%以上になると、使用の際の加熱や加圧により熱溶融性を示し、粒子が変形したり融着したりする場合がある。
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂を構成する粒子(1次粒子)の平均粒径は、上記したように、20μm以下であり、好ましくは10μm以下である。平均粒径を10μm以下とすることにより、本発明の粒状フェノール樹脂を有機フィラーや機能性炭素材料に適用した際の充填性や低粘度性、分散液として適用した際の低粘度性をさらに改善することができる。ここで、本明細書中において「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度測定機を用いた測定方法、すなわちレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって得られた頻度分布の累積頻度50%値を意味する。レーザー回折式粒度測定機としては、日機装(株)製 Microtrac X100を好適に用いることができる。
また、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の単粒子率は、0.7以上であり、好ましくは0.8以上である。単粒子率が0.7未満である場合には、上記した有機フィラーまたは機能性炭素材料に適用する際の充填性や低粘度性、分散液として適用する際の低粘度性が不十分となる傾向にある。ここで、本明細書中において「単粒子」とは、凝集による2次凝集物を形成していない1次粒子を意味し、「単粒子率」とは、水滴中に粒状フェノール樹脂を分散して光学顕微鏡観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数えたときの当該比、すなわち、単粒子個数/1次粒子総個数を意味する。
また、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、狭い粒径分布を有していることが好ましい。具体的には、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂を構成する粒子(1次粒子)の粒径分布の変動係数が、0.65以下であることが好ましい。粒径分布の変動係数は、さらに好ましくは、0.6以下である。本明細書中において「粒径分布の変動係数」とは、下記式[1]により算出される値である。
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
ここで、上記式[1]において、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法によって得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径であり、平均粒径とは上記で定義される平均粒径である。粒径分布の変動係数を0.65以下とすることにより、たとえば有機フィラーとして用いる場合の充填性および低粘度性や機能性炭素材料に適用する場合の空間充填性のさらなる向上を図ることができるとともに、成形材料、塗料、耐火物、製紙、摩擦材、砥石、接着剤等の幅広い工業分野にわたって適用できる粒状フェノール樹脂が提供される。レーザー回折式粒度測定機としては、日機装(株)製 Microtrac X100を好適に用いることができる。
さらに、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の粒子形状は、真球状に近いほど好ましい。具体的には、真球度が0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.9以上であることが特に好ましい。粒子形状が真球状に近いほど、すなわち、真球度が1.0により近いほど、たとえば有機フィラーとして用いる場合の充填性および低粘度性や機能性炭素材料に適用する場合の空間充填性のさらなる向上を図ることができるとともに、成形材料、塗料、耐火物、製紙、摩擦材、砥石、接着剤等の幅広い工業分野にわたって適用できる粒状フェノール樹脂が提供される。ここで、本明細書中において「真球度」とは、光学顕微鏡観察において約300個の1次粒子を含む視野を無作為に決定し、アスペクト比(すなわち、短径/長径の比)が最も低い1次粒子を10個選択して、これら10個の1次粒子各々について、その投影断面におけるアスペクト比を測定したときの、これら10のアスペクト比の平均値を意味する。
さらに、本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の遊離フェノール含有量は、500ppm以下であることが好ましい。当該遊離フェノール含有量は、より好ましくは300ppm以下であり、さらに好ましくは200ppm以下である。遊離フェノール含有量を500ppm以下とすることにより、フェノール樹脂取り扱い時の安全性および該フェノール樹脂を各種製品に適用した場合における製品の安全性を向上させることができる。ここで、本明細書中において「遊離フェノール含有量」とは、次のような試験により算出された値と定義される。すなわち、フェノール樹脂試料約10gを精秤し、190mLのメタノール中で還流下30分間抽出し、ガラスフィルターで濾過する。濾液中のフェノール類濃度を液体クロマトグラフィーにより定量して、該濾液中のフェノール類重量を算出する。該フェノール類重量と試料重量との比、すなわち、フェノール類重量/フェノール樹脂試料重量を「遊離フェノール含有量」とする。
以上のような優れた特性を具備する非熱溶融性粒状フェノール樹脂を製造するための方法は、特に限定されるものではないが、以下に示す方法を好適に使用することができる。以下に示す非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法も本発明に含まれる。
<非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法>
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法は、次に示す工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する、粒状フェノール樹脂形成工程、
(2)上記粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱して非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する、加熱工程、
(3)非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を反応液から分離し洗浄する、分離・洗浄工程。
(1)粒状フェノール樹脂形成工程
本工程において、酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより、粒状のフェノール樹脂を形成する。アルデヒド類としては、特に制限されるものではないが、たとえばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒドなどを挙げることができる。アルデヒド類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはこれらの混合物であることが好ましい。なお、後述するように、本発明の方法の特徴の1つは、高濃度の酸性触媒を用いることにあるが、アルデヒド類としてホルムアルデヒドの重合物であるパラホルムアルデヒドを用いた場合、このような条件下においては、パラアルデヒドは解重合されるため、実質的に反応に寄与するのはホルムアルデヒドであると考えられる。使用するアルデヒド類の種類およびその使用量は、反応時において水性媒体中に溶解するように選択されることが好ましい。
フェノール類としては、特に限定されないが、たとえばフェノール、ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシン、キシレノール、ピロガロールなどを挙げることができる。フェノール類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、水への溶解性および得られるフェノール樹脂の性能とコストとのバランスを考慮すると、フェノール類はフェノールであることが好ましい。使用するフェノール類の種類およびその使用量は、反応時において水性媒体中に溶解するように選択されることが好ましい。
具体的には、たとえばフェノール類としてフェノール等を用いる場合には、フェノール類の使用量(仕込み量)は、反応液全重量に対するフェノール類の濃度(重量比)が10重量%以下となるように選択されることが好ましい。水への溶解度がより低いフェノール類(たとえばナフトール等)を用いる場合には、反応時における水性媒体中への溶解を保証し、粒状フェノール樹脂に優れた特性(微小な平均粒径および高単粒子率等)を発現させるために、さらに低い濃度を採用することが望ましい。ここで、「反応液全重量」とは、フェノール類、アルデヒド類、酸性触媒、保護コロイド剤および水性媒体の合計重量である。反応液全重量に対するフェノール類の濃度を10重量%以下とすることにより、反応開始段階から粒状フェノール樹脂形成段階に至る温度管理を容易に行なうことができる。たとえば、常温付近で反応を開始する場合においては、フェノール類の濃度を10重量%以下とすれば、特に反応初期において暴走反応等による過度の発熱を伴わないため、温度管理をほとんど行なうことなく、平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂を形成させることができる。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度(重量比)を10重量%より高くすることも可能であるが、その場合には、反応時の温度管理を適切に行なう必要があることが多い。
また、上記アルデヒド類の使用量(仕込み量)は、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比が、0.9以下となるように選択されることが好ましい。アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比は、より好ましくは0.75以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比を0.9以下とすることにより、平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられ、さらには真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を形成させることが可能となる。また、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比を0.75以下とすることにより、さらに2次凝集を抑えることができる。これら粒状フェノール樹脂に係る特性をさらに良好なものとするためには、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比を0.5以下とすることが特に好ましい。アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比の下限値については、特に制限はなく、たとえば水性媒体に溶解する範囲内でアルデヒド類を増やすことによってアルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比を小さくすることができるが、反応の効率を考慮すると、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比は0.1以上であることが好ましい。
本工程において、上記のようなアルデヒド類とフェノール類とを水性媒体中で反応させるが、本発明の製造方法の特徴の1つは、当該反応を高濃度の酸性触媒を用いて行なう点にある。当該酸性触媒は、強酸性の触媒であることが好ましい。そのようなものとしては、たとえば塩酸、リン酸、硫酸等を挙げることができる。なかでも、除去の容易さや残留した場合の副反応を考慮すると、塩酸であることがより好ましい。なお、リン酸や硫酸等の不揮発性の強酸も粒状フェノール樹脂の用途によっては十分使用することが可能である。また、高濃度とは、具体的には、反応を常温付近で開始する場合、反応液中における酸性触媒のモル濃度が2.0mol/L以上であることを意味し、より好ましくは、3mol/L以上である。平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂、さらにこれらに加えて真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を得るためには、反応を常温付近で開始する場合、反応液中における酸性触媒のモル濃度を2.0mol/L以上にすることが必要である。また、工業生産に適した反応速度および付帯設備の耐酸性の観点からは、酸性触媒のモル濃度は、6mol/L以下であることが好ましい。なお、反応の開始温度を常温より高くすることにより、同等の反応速度を達成するために必要な酸性触媒のモル濃度は、反応開始温度が常温付近の場合よりも若干低くなる。
本発明の製造方法のもう1つの特徴は、アルデヒド類とフェノール類との反応を保護コロイド剤の存在下に行なう点にある。ここで、保護コロイド剤は、粒状のフェノール樹脂を形成するのに寄与するものである。平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂、さらにこれらに加えて真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を形成するためには、このような保護コロイド剤を使用することが必要である。本発明においては、保護コロイド剤として、水溶性の保護コロイド剤を使用することが好ましい。水溶性保護コロイド剤としては、たとえば水溶性の多糖類誘導体を好適に用いることができる。好適に用いることができる水溶性の多糖類誘導体の具体例を挙げれば、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アラビアゴム、アカシア等の水溶性多糖類誘導体を主成分とする天然糊料などである。カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を使用する場合、セルロースのカルボキシメチル化度は、特に限定されるものではないが、カルボキシメチル化度75%程度のものが市販されており、これを好適に用いることができる。なお、保護コロイド剤は、乾燥粉末として入手される場合、これを直接反応液に添加、溶解してもよく、あるいは、あらかじめ保護コロイド剤の水溶液を調製し、これを反応液に添加してもよい。
上記保護コロイド剤の使用量は、特に制限されないが、固形分重量で、上記フェノール類の使用量の0.01〜1重量%であることが好ましい。保護コロイド剤の使用量が0.01重量%未満である場合には、フェノール樹脂粒子の平均粒径を20μm以下とするには不十分であり、たとえばフェノール類使用量や攪拌速度など他のパラメータによる粒度制御が必要とされる。フェノール樹脂粒子の平均粒径を10μm以下とするためには、保護コロイド剤の使用量は、フェノール類の使用量の0.04重量%以上とすることが好ましい。また、保護コロイド剤の使用量がフェノール類の使用量の1重量%より多い場合、平均粒径が10μm以下のフェノール樹脂粒子を得ることができるが、1重量%を超える量の保護コロイド剤を添加しても、それに見合うだけの効果が得られない傾向にある一方、反応液の粘度上昇により、後述の分離・洗浄工程において分離速度が低下する傾向にある。ここで、特筆すべきは、保護コロイド剤の使用量が上記範囲内、すなわちフェノール類の使用量の0.02〜1重量%である場合には、フェノール樹脂粒子の平均粒径を保護コロイド剤の使用量を調整することによって制御可能であるという点である。
上記水性媒体としては、水または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を挙げることができるが、本発明においては、水溶媒が好ましく用いられる。水性媒体の使用量は、酸性触媒の濃度が上記範囲内となるように選択され、好ましくは、さらにフェノール類の濃度が上記好ましい範囲内となるように選択される。
次に、上記したアルデヒド類、フェノール類、酸性触媒および保護コロイド剤を用いて反応を行なう具体的方法について述べる。反応の具体的方法としては、次の2つの方法を挙げることができる。(i)水性媒体に酸性触媒と保護コロイド剤とアルデヒド類とを混合して混合液を調製した後、該混合液を攪拌しながらフェノール類を添加する方法、(ii)水性媒体に保護コロイド剤とアルデヒド類とフェノール類とを混合して混合液を調製した後、該混合液を攪拌しながら酸性触媒を添加する方法。
ここで、上記(i)および(ii)のいずれの方法においても、上記混合液は略均一な溶液であることが好ましい。すなわち、水性媒体に混合する溶質が完全に溶解しているか、または少なくともほぼ完全に溶解していることが好ましい。混合液の調製において、混合の順序は特に制限されるものではない。また、当該混合液の反応開始時の温度は、特に制限されないが、好ましくは10〜50℃程度、さらに好ましくは20〜40℃程度である。
上記(i)の方法においては、上記混合液を攪拌しながらフェノール類を添加することにより、アルデヒド類とフェノール類との反応を行なう。フェノール類の添加は、フェノール類を直接混合液に添加することにより行なってもよく、あるいは、あらかじめフェノール類を水に溶解して、当該水溶液を混合液に添加するようにしてもよい。当該反応は、反応温度が10〜60℃程度、好ましくは20〜50℃程度となるように制御されることが好ましい。反応温度が約10℃未満である場合、反応速度が小さくなる傾向にあり、反応温度が60℃を超えると、粒径の粗大化や2次凝集物の増加を起こす虞がある。なお、上記混合液の反応開始時の温度を20〜30℃程度の常温付近とし、反応液全重量に対するフェノール類の濃度を10重量%以下とすることにより、過度の発熱を伴わないため、温度管理をほとんど行なうことなく、上記好ましい温度範囲で反応を行なわせることが可能である。
上記(ii)の方法においては、上記混合液を攪拌しながら酸性触媒を添加することにより、アルデヒド類とフェノール類との反応を行なう。酸性触媒の添加は、一度に行なってもよく、あるいは一定の時間をかけて滴下により行なってもよい。また、酸性触媒の添加は、酸性触媒を直接混合液に添加することにより行なってもよく、あるいは酸性触媒を水で希釈して、当該希釈液を混合液に添加するようにしてもよい。反応温度は、上記(i)の場合と同様に、10〜60℃程度、好ましくは20〜50℃程度となるように制御されることが好ましい。
上記(i)および(ii)の方法のいずれにおいても、反応が進行するにつれ、反応液は次第に白濁化(懸濁化)し、粒状フェノール樹脂が形成されるが、このような白濁化は、典型的にはフェノール類または酸性触媒の添加後、数十秒〜数分後に起こる。白濁化、すなわちフェノール樹脂粒子の析出に要する時間は、(ii)の方法の方が(i)の方法よりも短い傾向にある。また、白濁化の後、典型的には反応液は、淡いピンク色〜濃ピンク色を呈するが、本発明においては、このような着色が見られるまで反応を継続することが好ましい。白濁後着色を呈するまでの時間は、概して数十分〜数時間程度である。なお、上記特許文献1に記載の方法においては、粒子が集合して餅状となるのを避けるために、フェノール樹脂粒子析出後は攪拌を停止する必要があったが、保護コロイド剤を用いる本発明の製造方法によれば、フェノール樹脂粒子の析出後もそのまま継続して攪拌を行なうことができる。したがって、本発明の製造方法によれば、反応液の温度をより厳密に制御することができ、ひいてはフェノール樹脂の重合度および架橋度が均一な状態で、次の加熱工程に供することが可能となる。このことは、最終的に得られる粒状フェノール樹脂の均質性に寄与し得る。
(2)加熱工程
本工程において、上記粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱することにより、該粒状フェノール樹脂を非熱溶融性とする。このような非熱溶融性は、加熱による樹脂の架橋、硬化によってもたらされるものである。本工程における反応液の加熱温度は、60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70℃以上である。また、反応液の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。加熱温度が60℃未満である場合には、十分な非熱溶融性が得られない虞がある。なお、ここでいう十分な非熱溶融性とは、上記で定義した「非熱溶融性」を有することをいう。また、加熱温度が100℃を超える場合には、コンデンサを有する反応器が必要であったり、付帯設備等の耐酸性が問題となる虞がある。なお、加熱温度が60℃程度と比較的低い場合であっても、十分な保持時間を設けることにより十分な非熱溶融性を付与することが可能である。加熱温度および加熱時間を、上記好ましい範囲において調整することにより、用途に応じて所望の重合度および架橋度に調整することができる。
加熱時間は、粒状フェノール樹脂に十分な非熱溶融性を付与できる限り特に限定されるものではなく、加熱温度にもよるが、典型的には数分〜数時間程度である。また、当該加熱処理の終了後、次工程に進むにあたっては、室温〜50℃程度の適宜の温度まで反応液を冷却してもよく、あるいは反応液を冷却することなくそのまま次工程に進んでもよい。
(3)分離・洗浄工程
本工程において、得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂を反応液から分離し洗浄する。分離方法としては、たとえば濾過や圧搾などを好適に用いることができる。このような分離操作のための装置として、たとえば、濾過装置、遠心脱水機、ベルトプレス、フィルタープレスなどを用いることができる。減圧留去、スプレードライなどの蒸発を利用した分離方法は、反応液が高濃度の酸性触媒を含むことから機器を傷める可能性があり、好ましくない。濾過による分離操作を行なう場合、珪藻土等の各種濾過助剤や凝集剤を用いてもよい。なお、本発明の粒状フェノール樹脂は、比重が約1.2〜1.3であり、静置により沈降することから、当該分離操作に先立ってデカンテーション等の予備操作を行なってもよい。
次に、分離した粒状フェノール樹脂を洗浄する。この洗浄操作により反応がほぼ完全に終了する。洗浄の具体的方法としては、たとえば(i)上記分離操作により分離されたフェノール樹脂ケーキに洗浄液を添加する方法(たとえば、分離された濾過機上のフェノール樹脂ケーキへ洗浄液を注ぎ、洗浄液を加圧または減圧により除去する等)、(ii)洗浄液中に分離されたフェノール樹脂ケーキを分散させた後、再度分離操作を行なう方法、を挙げることができる。洗浄液としては、水を好適に用いることができる。水を用いて洗浄することによりフェノール樹脂ケーキ中の酸性成分を除去することができる。
また、洗浄操作の一部として、あるいは上記水による洗浄操作の代わりに、塩基性を呈する水溶液に接触させることにより中和反応を行なってもよい。中和反応を行なうことにより、フェノール樹脂ケーキ中に含まれている酸性触媒成分を効果的に除去することができる。中和反応に用いる塩基性を呈する水溶液としては、有機または無機の弱塩基性水溶液を用いることが好ましい。強塩基性の濃厚な水溶液を用いると、フェノール樹脂粒子が変色したり、溶解する虞がある。弱塩基性水溶液としては、たとえばアンモニアの希薄水溶液を好適に用いることができる。アンモニアの希薄水溶液を用いた場合、生成する塩は水溶性であるため、水洗により当該塩を除去することが可能であり、またアンモニア自体は加熱により昇華除去できるためである。
洗浄された粒状フェノール樹脂は、乾燥させることなく、含水状態のまま使用することができ、このような水を含む非熱溶融性粒状フェノール樹脂もまた、本発明の範囲に属するものである。たとえば、このような含水フェノール樹脂は、水分散液を調製する場合等に使用することができる。あるいは、洗浄工程の後、乾燥工程を設けてもよい。乾燥の方法としては、特に限定されないが、たとえば棚型の静置乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機などを用いた方法を挙げることができる。乾燥を行なうことにより、含水率約5%以下の良好な流動性を示す非熱溶融性粒状フェノール樹脂を得ることができる。本発明の方法によれば、必要に応じて軽度の解砕を行なうことにより、高い単粒子率の粒状フェノール樹脂を得ることができるが、上記乾燥工程の際または後に、解砕機などを用いてさらに単粒子率を向上させてもよい。
以上のような本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法によれば、平均粒径が20μm以下、特には10μm以下であり、単粒子率が0.7以上である非熱溶融性粒状フェノール樹脂を、比較的簡便な方法で、かつ量産に適した方法で製造することができる。さらには、これらの特性を具備するとともに、粒径分布が狭く、粒子が真球状であり、遊離フェノール含量が非常に少ない非熱溶融性粒状フェノール樹脂を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
35重量%塩酸と36重量%ホルムアルデヒド水溶液とを用いて、ホルムアルデヒド濃度10重量%および塩酸濃度16重量%である混合溶液2000gを調製した後、該混合溶液にカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の2重量%水溶液8gを添加し、攪拌して均一溶液とした。次に該均一溶液の温度を20℃に調整した後、攪拌しながら、30℃の95重量%フェノール70gを加えた。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.11、反応液中の塩酸のモル濃度は4.7mol/Lである。フェノールの添加から約120秒で反応液は白濁化した。白濁化後も攪拌速度を落として反応を継続したところ、フェノール添加から約30分後に反応液は淡いピンク色に着色した。このとき、反応液の温度は30℃に達していた。反応液の着色後、外部加熱により反応液を80℃に加熱し、この温度で30分間保持した。ついで、この反応液を濾過し、得られたケーキを500gの水で洗浄した後、500gの0.5重量%アンモニア水溶液に懸濁させて、40℃で1時間中和反応を行なった。中和反応後、当該懸濁液をアスピレータを用いて吸引濾過し、500gの水で洗浄し、50℃の乾燥機で10時間乾燥させることにより、淡黄色の粒状フェノール樹脂80gを得た。
<実施例2>
混合液中のホルムアルデヒド濃度を18重量%、塩酸濃度を18重量%としたこと以外は、実施例1と同様に反応を行ない、粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.06、反応液中の塩酸のモル濃度は5.3mol/Lである。反応液の白濁化は、フェノールの添加から約150秒後であり、器壁への樹脂の付着などの操作上の問題もなかった。図2に、本実施例で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。
<実施例3>
混合液中のホルムアルデヒド濃度を7重量%、塩酸濃度を20重量%としたこと以外は、実施例1と同様に反応を行ない、粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.15、反応液中の塩酸のモル濃度は5.9mol/Lである。反応液の白濁化は、フェノールの添加から約30秒後であり、器壁への樹脂の付着などの操作上の問題もなかった。図3に、本実施例で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。
<実施例4>
95重量%フェノールを52g添加したこと以外は、実施例1と同様に反応を行ない、62gの粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は2.4重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.08、反応液中の塩酸のモル濃度は6.0mol/Lである。
<実施例5>
95重量%フェノールを105g添加したこと以外は、実施例1と同様に反応を行ない、115gの粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は4.7重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.16、反応液中の塩酸のモル濃度は5.8mol/Lである。
<実施例6>
36重量%ホルムアルデヒド水溶液556gと、95重量%フェノール70gと、水530gとを混合して混合溶液1156gを調製した後、該混合溶液にカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の2重量%水溶液8gを添加し、攪拌して均一溶液とした。次に該均一溶液の温度を20℃に調整した後、攪拌しながら、30℃の35重量%塩酸914gを加えた。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.11、反応液中の塩酸のモル濃度は4.7mol/Lであり、実施例1と同じである。塩酸の添加から約20秒で反応液は白濁化した。白濁化後も反応を継続したところ、塩酸添加から約30分後に反応液はピンク色に着色した。その後、実施例1と同様にして、加熱、分離、洗浄および乾燥を行ない、粒状フェノール樹脂78gを得た。
<実施例7>
95重量%フェノールを204g用いたこと以外は、実施例6と同様に反応を行ない、240gの粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は8.8重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.31、反応液中の塩酸のモル濃度は4.4mol/Lである。
<実施例8>
混合液の調製に36重量%ホルムアルデヒド水溶液278gと、95重量%フェノール204gと、水803gとを用いたこと以外は、実施例6と同様に反応を行ない、200gの粒状フェノール樹脂を得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は8.8重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.62、反応液中の塩酸のモル濃度は4.4mol/Lである。
<実施例9>
36重量%ホルムアルデヒド水溶液を用いる代わりに、同じ重量濃度のパラホルムアルデヒド水溶液を用いること以外は、実施例1と同様にして反応を行なった。反応の経過は、実施例1とほとんど同じであり、77gの粒状フェノール樹脂を得た。
<実施例10>
混合溶液中の塩酸濃度を8重量%としたこと、および95重量%フェノール添加後、外部加熱により反応液を50℃に昇温し、反応液の着色後80℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行ない、粒状フェノール樹脂を得た。反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は0.11、反応液中の塩酸のモル濃度は2.3mol/Lである。
<比較例1>
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の2重量%水溶液8gの代わりに、水を8g用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行ない、80gの粒状フェノール樹脂を得た。反応の経過は、フェノール添加後約95秒後に反応液が白濁したこと以外は、実施例1と同様であった。図4に、本比較例で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。
<比較例2>
混合溶液2000g中の塩酸濃度を5重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行なった。反応液の白濁は見られず、粒状フェノール樹脂は得られなかった。なお、反応液中の塩酸のモル濃度は1.45mol/Lである。
<比較例3>
混合液の調製に36重量%ホルムアルデヒド水溶液140gと、95重量%フェノール204gと、水940gとを用いたこと以外は、実施例6と同様に反応を行なった。反応液全重量に対するフェノール類の濃度は8.8重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比は1.23、反応液中の塩酸のモル濃度は4.4mol/Lである。反応液の加熱を開始すると、反応容器壁に樹脂の付着が生じた。加熱完了時に懸濁状態にあった粉末を濾別し、洗浄、中和、乾燥を行ない、約50gの粒状フェノール樹脂を得た。粒子を顕微鏡により観察したところ、不定形の粒子が多く存在しており、真球度、単粒子率を求めることができなかった。
上記実施例1〜10および比較例1〜3の粒状フェノール樹脂について、以下に掲げる特性を測定した。測定方法および測定条件は、次のとおりである。測定結果を、反応条件とともに、表1に示す。
(1)非熱溶融性:粒状フェノール樹脂試料約5gを、2枚の0.2mm厚ステンレス板間に挿入し、あらかじめ100℃に加温したプレス機で、50kgの総荷重で2分間プレスしたときに、溶融および/または融着により、粒状フェノール樹脂が平板を形成したり、フェノール樹脂粒子が変形したり、またはフェノール樹脂粒子同士が互いに接着しない場合を「非熱溶融性」を有すると判定した。
(2)煮沸メタノール溶解度:フェノール樹脂試料約10gを精秤し、実質的に無水のメタノール約500mL中で30分間還流下に加熱した後、No.3のガラスフィルターで濾過し、さらにガラスフィルター上の残渣を約100mLの無水メタノールで洗浄する。ついで、洗浄後のガラスフィルター上の残渣を40℃で5時間乾燥した後、当該残渣を精秤する。得られた乾燥後の残渣重量とフェノール樹脂試料重量から、以下の式に基づき、煮沸メタノール溶解度を算出する。
煮沸メタノール溶解度(重量%)=(フェノール樹脂試料重量と乾燥後の残渣重量との差)/(フェノール樹脂試料重量)×100
(3)平均粒径:レーザー回折式粒度測定機(日機装(株)製 Microtrac X100)により計測された頻度分布の累積頻度50%値である。
(4)単粒子率:水滴中に粒状フェノール樹脂を分散して光学顕微鏡により観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数えたときの当該比、すなわち、単粒子個数/1次粒子総個数である。
(5)粒径分布の変動係数:粒状フェノール樹脂を用いて水分散液を調製し、レーザー回折式粒度測定機(日機装(株)製 Microtrac X100)により計測された頻度分布から下記式[1]により算出した。
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
ここで、上記式[1]において、d84%、d16%はそれぞれ、得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。変動係数が0.65以下である場合に狭い粒度分布を有すると判定した。
(6)真球度:光学顕微鏡による観察において約300個の1次粒子を含む視野を無作為に決定し、アスペクト比(すなわち、短径/長径の比)が最も低い1次粒子を10個選択して、これら10個の1次粒子各々について、その投影断面におけるアスペクト比を測定したときの、これら10のアスペクト比の平均値である。
(7)遊離フェノール含有量:次のような試験により算出された値と定義される。すなわち、フェノール樹脂試料約10gを精秤し、190mLのメタノール中で還流下30分間抽出し、ガラスフィルターで濾過する。濾液中のフェノール類濃度を液体クロマトグラフィーにより定量して、該濾液中のフェノール類重量を算出する。該フェノール類重量と試料重量との比、すなわち、フェノール類重量/フェノール樹脂試料重量を「遊離フェノール含有量」とする。
<実施例11>
保護コロイド剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩のフェノールに対する量を種々変化させたこと以外は、実施例1と同様にして反応を行ない、粒状フェノール樹脂を得た後、各粒状フェノール樹脂の平均粒径を測定した。図5は、保護コロイド剤の濃度(反応液全重量に対する保護コロイド剤の重量(ppm))と粒状フェノール樹脂の平均粒径との関係を示すグラフである。なお、保護コロイド剤濃度の測定範囲13〜約103ppmは、保護コロイド剤使用量/フェノール使用量比(重量%)に換算すると、0.04〜0.32重量%の範囲に相当する。図5に示されるように、保護コロイド剤の使用量を調整することによって得られる粒状フェノール樹脂の平均粒径を制御できることがわかった。すなわち、保護コロイド剤の使用量を増やすことによって、平均粒径を小さくすることができることがわかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の非熱溶融性粒状フェノール樹脂の好ましい一例のSEM写真を示す。 実施例2で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。 実施例3で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。 比較例1で得られた粒状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を示す。 保護コロイド剤の濃度(反応液全重量に対する保護コロイド剤の重量(ppm))と粒状フェノール樹脂の平均粒径との関係を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 平均粒径が20μm以下であり、単粒子率が0.7以上であり、
    遊離フェノール含有量が500ppm以下であることを特徴とする、非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
  2. 平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
  3. 下記式[1]で示される粒径分布の変動係数が、0.65以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
    粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
    ここで、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法によって得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。
  4. 真球度が0.5以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
  5. (1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する、粒状フェノール樹脂形成工程と、
    (2)前記粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱して非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する、加熱工程と、
    (3)前記非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を反応液から分離し洗浄する、分離・洗浄工程と、を含む非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末の製造方法であって、
    前記反応液中における前記酸性触媒のモル濃度は、2.0mol/L以上であることを特徴とする、非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末の製造方法。
  6. 前記酸性触媒は塩酸であり、前記アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項に記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末の製造方法。
  7. 前記アルデヒド類に対する前記フェノール類の仕込みモル比は、0.9以下であることを特徴とする、請求項またはに記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末の製造方法。
  8. 前記保護コロイド剤は、水溶性多糖類誘導体であることを特徴とする、請求項のいずれかに記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末の製造方法。
  9. 請求項のいずれかに記載の方法を用いて得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末であって、
    平均粒径が20μm以下であり、単粒子率が0.7以上であり、
    遊離フェノール含有量が500ppm以下であることを特徴とする、非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末
  10. 平均粒径が10μm以下であることを特徴とする、請求項に記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
  11. 記式[1]で示される粒径分布の変動係数が、0.65以下であることを特徴とする、請求項または10に記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
    粒径分布の変動係数=(d 84% −d 16% )/(2×平均粒径) [1]
    ここで、d 84% 、d 16% はそれぞれ、レーザー回折・散乱法によって得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。
  12. 真球度が0.5以上であることを特徴とする、請求項11のいずれかに記載の非熱溶融性粒状フェノール樹脂粉末。
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