JP5583440B2 - メカニカルシールの摺動材及びメカニカルシール - Google Patents
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Description
互いに回転摺動するメカニカルシールの静止側摺動材又は回転側摺動材として使用される環状の摺動材であって、摺動面に相手摺動材との相対回転によって摺動面間に動圧を生成する動圧生成溝が周方向に複数設けられたメカニカルシールの摺動材において、
前記摺動面の動圧生成溝に対して反被封止流体側の領域に、回転中心を中心とする円環状の環状溝を設け、
前記動圧生成溝は微小な凹凸部が10μm以下のピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とすると共に、溝の深さを1μm以下とし、
さらに、前記摺動面の外周から動圧生成溝の被封止流体側端部が被封止流体側に露出しており、
前記動圧生成溝は、レーザ照射により形成された多数の周期構造の溝が周全体に亘って形成されていることを特徴とする。
前記環状溝は、微小な凹凸部が半径方向に同心円状に所定ピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とすることができる。
前記摺動面の動圧生成溝に対して反被封止流体側の領域に、回転中心と同心円状の環状溝を設け、
前記動圧生成溝は微小な凹凸部が10μm以下のピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とすると共に、溝の深さを1μm以下とし、
さらに、前記摺動面の外周から動圧生成溝の被封止流体側端部が被封止流体側に露出しており、
前記動圧生成溝は、レーザ照射により形成された多数の周期構造の溝が周全体に亘って形成されていることを特徴とする。
一方、動圧生成溝に対して反被封止流体側の領域には環状溝に沿った環状の流れが生成されており、この環状の流れが壁となり、動圧生成溝から反被封止流体側の空間へ排出される被封止流体の漏洩量が低減される。それにより、摺動材は良好・安定的な潤滑性を得ることができる。
また、動圧生成溝と環状溝の少なくとも一方を、周期構造の溝とすることにより、潤滑膜が安定して保持され摺動面同士が過大に押圧することが無いため、良好な摩擦係数のシールを得ることができる。さらに、摩擦を少なくするために、摺動面での温度上昇も少なく、良好なシール性を確保することができる。
この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1(A)は、摺動材1の摺動面Sを示すもので、特に図示しないが、互いに回転摺動するメカニカルシールの静止側摺動材又は回転側摺動材として使用されるものである。メカニカルシールの構成としては、特に、形式は問わない。また、摺動材の断面形状、材質等も問わず、種々の構造のものに適用可能である。
この摺動面Sは回転軸と直交する平坦面で、外径線S11と内径線S12の間の環状の中途領域に、動圧生成溝2が周方向に複数設けられている。この複数の動圧生成溝2が設けられた領域を動圧生成溝形成領域200とすると、摺動面Sは、この動圧生成溝形成領域200に対して被封止流体側(外径側)の被封止流体側領域SF、動圧生成溝形成領域200に対して反被封止流体側(内径側)である大気側領域SAの3つの環状領域が、回転中心Oを中心として同心円状に区分されている。
この動圧生成溝2は、微小な凹凸が所定ピッチで繰り返される周期構造によって構成さ
れるもので、そのピッチは10μm以下、その溝の深さは1μm以下に形成されることが好ましい。一つの動圧生成溝2は微小な凹凸の谷部であり、図1(A)では、各動圧生成溝2間の周方向の間隔は広く描いているが、模式的に示しているだけで、周期構造は10μm以下のピッチで形成されている。摺動面S自体は鏡面加工によって、動圧生成溝2が明瞭になる程度の表面粗さに設定される。
この動圧生成溝形成領域2の反被封止流体側(内径側)である大気側領域SAには、回転中心Oを中心とする円環状の環状溝3が設けられている。この環状溝3も、半径方向に同心円状に複数周期的に設けられたもので、環状溝3が形成された領域を環状溝領域300とすると、所定幅の円環状の領域である。
この摺動面Sに接する相手摺動材の摺動部5の形状は、動圧生成溝形成領域200と環状溝形成領域300を包含する幅の環状の領域である。摺動部5の外径線51を、動圧生成溝形成領域200の外径線201よりも僅かに内側に位置させ、動圧生成溝2の被封止流体側端部が被封止流体側Fに露出していることが好ましい。
もっとも、摺動部5の外径線51が動圧生成溝形成領域200の外径線201よりも外側に位置していてもよい。
一方、環状溝形成領域300は、その外径線301が、動圧生成溝形成領域200の内径線202からランド部を隔てて所定寸法離れていることが好ましい。摺動部5の内径線52は、環状溝領域300の内径線302と摺動面Sの内径線S12の間である。
一方、動圧生成溝2に対して反被封止流体側の大気側領域SAには、環状溝3に沿った環状の流れが生成されており、この環状の流れが壁となり、大気側Aへの被封止流体の漏洩が低減される。漏洩量を低減させることにより、摺動面間に形成される流体潤滑膜が安定して保持されるので、回転側および静止側摺動材は良好・安定的な潤滑性を得ることができる。
また、動圧生成溝2と環状溝3の少なくとも一方を、周期構造の溝とすることにより、
摺動面同士が過大に押圧することが無いため、良好な摩擦係数のシールを得ることができる。さらに、摩擦が少なくなるために、摺動面での温度上昇も少なく、良好なシール性を確保することができる。
なお、上記実施の形態では、動圧生成溝形成領域200を半径方向一か所に設けた例について説明したが、動圧生成溝形成領域200を半径方向に複数同心円状に形成してもよい。
また、動圧生成溝2をフェムト秒レーザで加工した微細な周期構造とした例について説
明したが、フェムト秒レーザで加工した周期構造に限定されるものではなく、フェムト秒レーザ以外で加工するような構造としてもよい。
一方、環状溝3についても、環状溝形成領域300を半径方向一か所に設けた場合を例示しているが、環状溝形成領域300を半径方向に複数同心円状に設けてもよい。
図2は、メカニカルシールの漏洩量(リーク量)を測定する試験機を示している。
この試験機は、ハウジング20と、ハウジング20に相対回転自在に挿入される回転軸15とを備え、ハウジング20と回転軸15の間に、試験対象のメカニカルシールを装着するようになっている。
ハウジング20は内部中空の円筒形状で、ハウジング20の内部が試験用の被封止流体が収納される流体室20Aとなっている。このハウジング20の一端に、回転軸15を挿入するための軸挿入口が設けられ、片持ち状態の回転軸15の自由端が軸挿入口から挿入される。
回転軸15には、軸心方向に流通路15Aが設けられ、この流通路15Aにはパイプ14が貫通して配置され、このパイプ14から、油等の被封止流体が導入されて流体室20A内に流入するとともに、流通路15Aから流出される。この流通路15Aとパイプ14の端部は、図示省略の油循環ユニットに連通しており、このパイプ14に接続されたポンプ装置により、所定圧力、所定温度に制御された被封止流体が流体室20Aと油循環ユニットとの間を循環するように構成されている。
これにより、回転側摺動材12の摺動部12Aが静止側摺動材11の対向摺動面に密接し、流体室20A内の被封止流体が外部へ漏えいしないようにシールされる。静止側摺動材11と回転側摺動材12の外径側は被封止流体、内径側は大気に接触している。
また、ハウジング20の軸挿入口と反対側の端部は、ベアリング18に回転可能に保持された軸19に固着され、静止側摺動材11と回転側摺動材12との回転時の摩擦力(摺動抵抗)により回転可能な構造とされており、これによって回転トルクを測定可能に構成されている。
よりシール面を押圧する。被封止流体の圧力が0のときは、保持装置13のスプリングのみにより摺動面が押圧され、被封止流体の圧力増加により摺動面への押しつけ圧力が増加する。
このような構成の試験機を用いて、本発明の実施例としてメカニカルシール摺動材と比較例としての摺動材について、その漏洩量(リーク量)を測定する。
漏洩量は、あらかじめ重量を測定した濾紙に漏洩した被封止流体を沁み込ませた後、再度重量を測定し、重量の差を漏洩量とすることにより求める。
1.フェムト秒レーザー試験片加工条件
(1)周期構造の角度:スパイラル(動圧生成溝):回転接線方向に対して45°
環状溝:回転接線方向に対して0°
レーザ:チタンサファイアレーザ(パルス幅120fs、中心波長800nm、繰り返し周波数1kHz)
(1)摺動材:回転側摺動材:炭化ケイ素材料(φ25×φ44×t12)
静止側摺動材:炭化ケイ素材料(φ28×φ50×t14)
摺動部形状:(φ32×φ40)
(2)表面粗さ:Ra0.02μm以下(フェムト秒レーザ照射前鏡面仕上げ表面粗さ)
Ra 0.05〜0.10μm(ラッピング工程後の表面粗さ)
(3)平坦度:1バンド(ヘリウムライト)以下
(4)被封止流体:出光興産スーパーマルチオイル10
(5)試験時間:0.5(h)
(6)被封止流体温度:30℃
(7)被封止流体圧力:0,0.07,0.15,0.3,0.5,1.0(MPaG)(8)周速:1,2,5,10(m/s)
(9)スプリング荷重:20(N)
実施例1
実施例1として、回転側摺動材12には鏡面仕上げした摺動面を有する摺動材、静止側摺動材11には鏡面仕上げした後にフェムト秒レーザーにて複数の微細なスパイラル溝を、動圧生成溝形成領域200に全周にわたって形成し、さらに大気側領域SAの環状溝形成領域300に環状溝を半径方向に周期的に形成したメカニカルシールの摺動材を用いた。
静止側摺動材11の摺動面Sは、図2(A)に示すように、φ28×φ50mm(内径×外径)の範囲、動圧生成溝形成領域200の中心直径はφ39.5mm、幅t2が2mmである。また、環状溝形成領域300は、中心直径D3は、36mm、幅t3が0.5mmであり、溝間のピッチ及び溝深さは動圧生成溝と同一である。
そして、静止側摺動材11の摺動面S上で、回転側摺動材12が摺接する摺動部12Aの形状は、φ32×φ40mm(内径×外径)の範囲であり、動圧生成溝形成領域200の被封止流体側の端部が摺動部12Aの形状の被封止流体側の端部より外側に位置する。
上記実施例1と同一寸法形状の静止側摺動材111で、同一の寸法形状の動圧生成溝を動圧生成溝形成領域200に全周にわたって形成し、環状溝を形成していない摺動材を比較例とした。回転側摺動材は上記実施例1と同一である。
このような実施例及び比較例に対する漏洩量の検出結果は、次の表1、2の通りである
。
表1は、実施例1の条件における被封止流体圧力及び回転周速毎の漏洩量を示す表であり、表2は、比較例の条件における被封止流体圧力及び回転周速毎の漏洩量を示す表である。
また、直線偏光のフェムト秒レーザを、加工閾値近傍の照射エネルギーで材料表面に照射することにより、動圧生成溝及び環状溝を形成しているので、摺動面の表面に微細溝を一定ピッチで多数簡単に形成することができる。
2 動圧生成溝
3 環状溝
200 動圧生成溝形成領域
300 環状溝形成領域
11 静止側摺動材
12 回転側摺動材
13 保持装置
14 パイプ
15 回転軸、15A 流通路
16 モータ
18 ベアリング、19 軸
20 ハウジング
20A 流体室
SF 被封止流体側領域
SA 大気側領域
O 回転中心
S 摺動面
S11 外径線
S12 内径線
Claims (3)
- 互いに回転摺動するメカニカルシールの静止側摺動材又は回転側摺動材として使用される環状の摺動材であって、摺動面に相手摺動材との相対回転によって摺動面間に動圧を生成する動圧生成溝が周方向に複数設けられたメカニカルシールの摺動材において、
前記摺動面の動圧生成溝に対して反被封止流体側の領域に、回転中心を中心とする円環状の環状溝を設け、
前記動圧生成溝は微小な凹凸部が10μm以下のピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とすると共に、溝の深さを1μm以下とし、
さらに、前記摺動面の外周から動圧生成溝の被封止流体側端部が被封止流体側に露出しており、
前記動圧生成溝は、レーザ照射により形成された多数の周期構造の溝が周全体に亘って形成されていることを特徴とするメカニカルシールの摺動材。 - 前記環状溝は、微小な凹凸部が半径方向に同心円状に所定ピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とした請求項1に記載のメカニカルシールの摺動材。
- 互いに相対回転するハウジングと回転軸間をシールするもので、前記ハウジングに取り付けられる静止側摺動材と、前記回転軸に取り付けられ前記静止側摺動材と回転摺動する回転側摺動材とを有し、前記静止側摺動材と回転側摺動材の内の一方の摺動材の摺動面に、相手摺動材との相対回転によって摺動面間に動圧を生成する動圧生成溝が形成されたメカニカルシールにおいて、
前記摺動面の動圧生成溝に対して反被封止流体側の領域に、回転中心と同心円状の環状溝を設け、
前記動圧生成溝は微小な凹凸部が10μm以下のピッチで繰り返される多数の周期構造の溝とすると共に、溝の深さを1μm以下とし、
さらに、前記摺動面の外周から動圧生成溝の被封止流体側端部が被封止流体側に露出しており、
前記動圧生成溝は、レーザ照射により形成された多数の周期構造の溝が周全体に亘って形成されていることを特徴とするメカニカルシール。
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