JP5573507B2 - 積層シートロールの製造方法 - Google Patents
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Description
(式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向(MD方向)の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。)
(式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。)。これにより、積層シートロールのゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥を改善することができる。
本発明に係る方法では、樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する。塗布方法としては、例えば、樹脂組成物(A)を溶剤(S)に十分に攪拌溶解させた混合溶液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、ナイフコート法、コンマコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法等の公知のコート方法にてアクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する方法が挙げられる。なお、本発明に係る方法は、本工程と、後述する溶剤(S)除去のための加熱乾燥を行い、樹脂組成物(A)層を形成する工程と、積層シートを巻き取る工程とを含む、ロールtoロール方式による方法とすることができる。
樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)層となってアクリル樹脂基材シート(B)上に積層され、耐擦傷性、耐磨耗性、耐水性、耐薬品性、耐候性等の特性をアクリル樹脂基材シート(B)表面に付与するために使用される。樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)が積層された積層シートをロール状に巻き取ることができれば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物等の中から任意の樹脂組成物を適宜選択することができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)としては、例えば、単量体を単独重合又は共重合させた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入した重合体が挙げられる。
(i)前記水酸基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体等を縮合反応させる。
(ii)前記カルボキシル基、スルホン基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基を有する単量体を縮合反応させる。
(iii)前記エポキシ基、イソシアネート基又はアジリジニル基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基を有する単量体又は前記カルボキシル基を有する単量体を付加反応させる。
樹脂組成物(A)が側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を含有する場合には、樹脂組成物(A)は光重合開始剤(a−2)を含有することが好ましい。光重合開始剤(a−2)としては、例えば光照射によってラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
樹脂組成物(A)は、更に無機微粒子(a−3)を含有することが、耐擦傷性や耐摩耗性が向上する観点から好ましい。無機微粒子(a−3)としては、樹脂組成物(A)の透明性が確保されれば、その種類や粒子径、形態は特に制限されない。無機微粒子(a−3)としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。この中でも、入手の容易さや価格面、樹脂組成物(A)層の透明性や耐摩耗性発現の観点から、コロイダルシリカが好ましい。
(前記式(I)中、R4及びR5は、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、エポキシ結合又は炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R6は水素原子又はエーテル結合、エステル結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。a及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である。)。
SiR7 n(OCH2CH2OCO(R10)C=CH2)4-n (III)
CH2=C(R10)COO(CH2)pSiR11 n(OR9)3-n (IV)
CH2=CHSiR11 n(OR9)3-n (V)
HS(CH2)pSiR11 n(OR9)3-n (VI)
樹脂組成物(A)は、更に光安定剤(a−4)を含有することが、耐候性向上の観点から好ましい。光安定剤(a−4)としては公知の光安定剤を用いることができ、特に限定されない。しかしながら、光安定剤の中でもヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。
溶剤(S)は特に限定されないが、樹脂組成物(A)の各成分を溶解し、又は均一に分散し、かつ、アクリル樹脂基材シート(B)の物性(機械的強度、透明性等)の低下を実質的に生じない溶剤が好ましい。また、アクリル樹脂基材シート(B)の主たる構成成分である樹脂成分のTg+80℃より低い沸点、好ましくはTg+30℃より低い沸点を有する揮発性の溶剤が好ましい。
本発明では、耐候性、透明性等の観点からアクリル樹脂基材シート(B)が用いられる。アクリル樹脂基材シート(B)は、架橋ゴム成分を有する熱可塑性樹脂基材シートであることが好ましい。
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)としては、100℃加熱時における伸度が100%以上であるアクリル樹脂基材シート(B)が、インサート成形やインモールド成形時に金型の形状への追従性が良好となるため好ましい。
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)の鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)は、特に限定されないが、最終的に得られる積層成形品の硬さの観点から、2B以上であることが好ましく、HB以上であることが好ましく、F以上であることが特に好ましい。
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)の厚さは、特に限定されないが、10〜500μmが好ましい。アクリル樹脂基材シート(B)の厚さを500μm以下とすることにより、インサート成形およびインモールド成形に適した剛性が得られ、より安定にフィルムを製造することができる。また、アクリル樹脂基材シート(B)の厚みを10μm以上とすることにより、基材の保護性とともに、得られる積層体に深み感をより十分に付与することができる。アクリル樹脂基材シート(B)の厚みは、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
アクリル樹脂基材シート(B)上に混合溶液を塗布する際には、アクリル樹脂基材シート(B)と樹脂組成物(A)層との密着性を向上させるため、予め、コロナ放電等でアクリル樹脂基材シート(B)表面を活性化することが好ましい。該コロナ放電により活性化した直後が、密着性が最も高いため、該コロナ放電は混合溶液を塗布する直前に行うことが好ましい。更に、樹脂組成物(A)が光硬化性樹脂組成物である場合には、光硬化時に体積収縮し、アクリル樹脂基材シート(B)との密着性が低下することを防ぐ目的で、アクリル樹脂基材シート(B)上に予めプライマー層を積層することが好ましい。
前記混合溶液を塗布したアクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する。加熱乾燥の方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等が挙げられ、適宜選択することができる。
加熱乾燥時において、アクリル樹脂基材シート(B)に外力(f)(N)が作用しているとき、アクリル樹脂基材シート(B)の内部には外力と等しい内力(f)(N)が作用し、応力が発生する。単位面積当たりの内力(f)は垂直応力(σ)(N/mm2)と呼ばれ、下記式(2)により算出される。
ここで、Aはアクリル樹脂基材シート(B)の断面積(mm2)であり、アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(t)(mm)と幅(W)(mm)の積から求められる。なお、垂直応力(σ)は、アクリル樹脂基材シート(B)が伸びる方向にかかる場合(引張応力)をプラス、アクリル樹脂基材シート(B)が縮む方向にかかる場合(圧縮応力)をマイナスと定義する。加熱乾燥時にアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向(MD方向)にテンション(F1)(N)が作用したとき、アクリル樹脂基材シート(B)の長さがL0(mm)からL1(mm)に変化したとする。このときの垂直応力(σ)(N/mm2)と伸び率(L)(%)は、それぞれ下記式(3)、(4)で表される。
ここで、Eは加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)である。前記式(3)と前記式(5)から前記式(1)を求めることができる。
加熱乾燥における加熱温度については、伸び率(L)の値及び溶剤(S)の残存の観点から十分に検討する必要がある。加熱温度が高すぎる場合には、加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)が低下し、伸び率(L)の上昇につながる場合がある。一方、加熱温度が低すぎる場合には、積層シート内に溶剤(S)が多量に残存し、樹脂組成物(A)層の表面が粘着性を有するようになる場合がある。加熱温度は、伸び率(L)の値が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ溶剤(S)が十分に揮発する条件であれば、用いるアクリル樹脂基材シート(B)の種類及び溶剤(S)の種類から適宜選択することができる。
前記工程により形成された樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取り、積層シートロールを製造する。積層シートの巻き取り方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラを接触させず近接して巻き取るニア巻き方式や、タッチローラを積層シートに完全に接触させるタッチ巻き方式等が挙げられる。また、巻き取りの際、テーパーをつけて、初期巻き取りテンションに対して最終巻き取りテンションを低くすることができる(テーパー巻き)。テーパー巻きでは、用いるアクリル樹脂基材シート(B)や巻き取り条件に応じて、初期巻き取りテンションに対する最終巻き取りテンションの比率(テーパー率)を任意の値に設定することができる。
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)(以下、単位幅あたりのテンション(F2)とも示す)は、60N/m以上、170N/m以下とする必要がある。単位幅あたりのテンション(F2)の値は、65N/m以上、165N/m以下が好ましく、70N/m以上、160N/m以下がより好ましい。単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m未満の場合、巻き崩れが生じ、積層シートロールの巻き形状が不良となる。一方、170N/mを超える場合、積層シートロールにゲージバンド、しわ、たるみ等の外観不良が発生する。なお、単位幅あたりのテンション(F2)の測定方法は後述する。また、テーパー巻きの場合は変動する単位幅あたりのテンション(F2)がいずれも上記範囲に収まることが好ましい。
本発明に係る積層シートは、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層が積層された構造で、インサート成形やインモールド成形等の加工性に優れるだけでなく、各種物性(特に、耐候性−耐磨耗性(表面硬度)−密着性のバランス)に優れた積層成形品を与えることができる。樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)との間には、前記積層シートの優れた性状を損なわない限りにおいて、更に1層以上の樹脂組成物からなる中間層を積層することもできる。この時、該中間層の樹脂組成物としては、樹脂組成物(A)と同等もしくは類似の樹脂組成物を用いることが、積層シートの表面性状(特に、密着性、耐候性、外観、意匠性等)が良好となる傾向にあるため好ましい。
本発明に係る積層シートには、アクリル樹脂基材シート(B)上の樹脂組成物(A)層上に、保護フィルム(C)を積層することができる。保護フィルム(C)は樹脂組成物(A)層の表面の防塵に有効であり、樹脂組成物(A)層表面の傷つき防止にも有効である。
本発明に係る方法により製造される積層シートロールから巻き出された積層シートは、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、印刷層及び蒸着層から選ばれる少なくとも1種の加飾層が積層された成形用積層シートとすることができる。加飾層は成形品表面に模様や文字等の加飾を施すものである。加飾の形態は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。また、該成形用積層シートは加飾層上にさらに接着層が積層されていてもよい。
印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとして、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有するインキを用いることが好ましい。
蒸着層の材料としては、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、又はそれらの合金もしくは化合物を使用することができる。蒸着層は、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。これらの加飾のための印刷層や蒸着層は、所望の積層成形品の表面外観が得られるように、成形時の伸張度合いに応じて適宜その厚みを選択することができる。
接着層の材料としては、印刷層又は蒸着層と成形樹脂との密着性を高める性質のものであれば、任意の合成樹脂材料を選択して用いることができる。例えば、成形樹脂がポリアクリル系樹脂の場合には、材料としてポリアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、成形樹脂がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性があるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を材料として使用することが好ましい。さらに、成形樹脂がポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂である場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂、ブロックイソシアネートを用いた熱硬化型ウレタン樹脂等を材料として使用可能である。なお、接着層の粘着性低減や耐熱性向上を目的として、疎水性シリカやエポキシ樹脂、石油樹脂等をさらに含有させることもできる。
本発明に係る成形用積層シートの厚みは、0.030〜0.750mmであることが好ましい。成形用積層シートの厚みが0.030mm以上であれば、曲面での成形用積層シートの厚みを著しく低下させることなく、深しぼり成形を行うことができる。また、成形用積層シートの厚みが0.750mm以下であれば、成形用積層シートの金型への形状追従性を低下させることなく、成形用積層シートの成形を行うことができる。
本発明に係る積層成形品は、樹脂組成物(A)層が最表面層となるように、前記積層シートロールから巻き出された積層シート又は前記成形用積層シート(以下、単にシートとも示す)が積層された積層成形品である。樹脂組成物(A)層が表面になるように積層することで、積層成形品に樹脂組成物(A)層の優れた表面性状(耐候性、外観、意匠性等)を与えることができる。なお、シートに保護フィルム(C)が積層されている場合には、通常成形品表面にシートを積層する直前に保護フィルム(C)を剥がして使用するが、保護フィルム(C)を剥がさず最表面層となるように成形品表面にシートを貼り付けてもよい。
アクリル樹脂Iにおける単量体の重合率は以下の方法により測定した。重合により得られたアクリル樹脂Iの溶液に残存する単量体を、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製、商品名:HP6890)により分析し、残存する単量体の量から重合率(%)を算出した。
アクリル樹脂Iの固形分は以下の方法により測定した。アクリル樹脂Iの溶液又は分散液約1gをアルミ皿の上に採取し、室温にて溶媒又は分散媒を揮発させた後、80℃で1時間加熱して得られるアクリル樹脂Iの透明固体の質量を測定し、固形分(質量%)を算出した。
アクリル樹脂IのMnは高速GPC装置(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて測定した。なお、数値に関してはポリスチレン換算した値を用いた。
アクリル樹脂Iの二重結合当量は、合成の処方及び前述の方法により算出した単量体の重合率から得られたアクリル樹脂Iの構造を推定し、二重結合当量(g/mol)を算出した。
アクリル樹脂IのTg(℃)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、商品名:DSC6200)を用いて測定した。
積層シートを巻き取った後の積層シートロールの端面のずれを下記基準により目視評価した。
×:積層シートロールの端面のずれが有る(使用不可能な状態)。
巻き取った積層シートロールを再度100N/mのテンションで巻き出した際の、積層シートの変形(ゲージバンド、しわ、たるみ)を下記基準により目視評価した。
×:変形が有る。
JIS K6251に準拠して、スーパーダンベルカッター((株)ダンベル製、商品名:SDK−100D)を用いてアクリル樹脂基材シート(B)の試験片を5枚作製した。得られた試験片について、ストログラフT((株)東洋精機製作所製、商品名)を使用し、引張弾性率(E)の測定を行った。なお、試験片を装置に固定する前に、装置内を加熱乾燥時の熱風式乾燥機内と同じ温度に設定し、設定温度に到達したことを確認した後に試験片を装置内に固定し、2分間装置内に静置した。その後、引張速度500mm/分で各試験片の引張試験を実施し、その時の応力歪み曲線の接線の平均値を求め、引張弾性率(E)(MPa)とした。
コーティングマシン((株)ヒラノテクシード製グラビアコーター)の制御モニター上に表示される、積層シートにかかる単位幅あたりのテンション(F2)(N/m)を読み取った。
前記コーティングマシンの制御モニター上に表示される、加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかる単位幅あたりのテンション(N/m)とアクリル樹脂基材シート(B)の幅(m)から、加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(F1)(N)を算出した。
(アクリル樹脂Iの合成)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1Lの4つ口フラスコにメチルエチルケトン50部を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でメチルメタクリレート80部、グリシジルメタクリレート20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、メチルエチルケトン80部とアゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合物を加え、重合させた。4時間後、メチルエチルケトン50部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部及びアクリル酸10.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後冷却し、反応物をフラスコより取り出し、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂Iの溶液を得た。アクリル樹脂Iにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、アクリル樹脂Iの固形分は約40質量%、Mnは約6万、二重結合当量は614g/mol、Tgは88℃であった。
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに表1記載の成分を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を75℃とした。75℃で2時間反応することにより、表面がシラン化合物で処理され、メタノール中に分散したコロイダルシリカS1を得た。続いて、メタノールを留去した後トルエンを添加する操作を繰り返し、メタノールをトルエンで完全に置換した。これにより、表面がシラン化合物で処理され、トルエン中に分散したコロイダルシリカS1を得た。
1)MT−ST:メタノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名、シリカ粒子径15nm)
2)KBM503:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名)。
合成したアクリル樹脂I及びコロイダルシリカS1を用いて、表2の組成を有する樹脂組成物(A)と溶剤(S)(MEK:トルエン=4:1)とを含む混合溶液を調製した。
1)光重合開始剤:Irg184[1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)]
2)光安定剤:チヌビン123[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)]
3)MEK:メチルエチルケトン。
調製した混合溶液を、厚さ(t)0.075mm、基材幅(W)1100mmのアクリル樹脂基材シート(B)(三菱レイヨン(株)製、商品名:HBS−010P)上の片面に、リバースグラビア方式にて塗工幅約1100mmで塗布した。引き続き、アクリル樹脂基材シート(B)に130Nのテンション(F1)をかけ、アクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向へ20m/分の速度で搬送しながら、フローティング方式の熱風式乾燥機にて70℃で約40秒間、加熱乾燥を行った。これにより、溶剤(S)を十分に揮発させ、厚さ約0.008mmの樹脂組成物(A)層を形成し、積層シートとした。更に、厚さ0.060mm、基材幅1095mmの保護フィルム(C)((株)サンエー化研製、商品名:サニテクトPAC−3−60)を樹脂組成物(A)層の表面に貼りつけた。この時の積層シートの温度は30℃であった。その後、積層シートに対し積層シートの単位幅あたり100N/mのテンション(F2、テーパー率:5%(最終テンションを95N/mに調整))をかけて、積層シート500mをニア巻き方式で巻き取った。これにより、積層シートロールを製造した。該積層シートロールは巻き崩れがなく、巻き出した積層シートに表面凹凸は確認されなかった。また、70℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は1050MPaであった。結果を表3に示す。
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を50N/m(テーパー率:5%)とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。しかしながら、巻き取り途中に巻き崩れの発生が確認された。巻き取り時のテンションが低すぎたため、巻き崩れによる端部のずれが発生したと考えられる。結果を表3に示す。
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を180N/m(テーパー率:5%)、加熱乾燥における熱風式乾燥機の温度を80℃とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。80℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は720MPa、保護フィルム(C)を貼り合わせる際の積層シートの温度は26℃であった。巻き出した積層シートには表面凹凸が確認された。巻き取り時のテンションが高すぎたため、ゲージバンドが顕著となり積層シートの表面に凹凸が発生したと考えられる。結果を表3に示す。
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を150N/m(テーパー率:5%)、加熱乾燥時における熱風式乾燥機の温度を100℃とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。100℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は300MPaであった。伸び率(L)が大きくなりすぎたため、巻き出した積層シートの変形によるシワとたるみが発生し、表面に凹凸が発生し、外観不良となった。結果を表3に示す。
実施例1で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、金型内に配置した。この時、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向かい合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて350℃で10秒間積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に積層シートを追従させた。なお、該金型の形状は切頭角錐形状であった。切頭面のサイズは100mm×100mm、底面のサイズは108mm×117mm、深さは10mmであり、切頭面の端部の曲率半径はそれぞれ3、5、7、10mmであった。金型追従性を目視で評価したところ、各端部とも良好に追従していた。次に、成形温度280〜300℃、金型温度40〜60℃の条件において、ポリカーボネート樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。該成形品の外観に欠陥は見られなかった。次いで、該成形品に、紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)層を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢、意匠性に優れる積層成形品を得た。
比較例2、3で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例2と同様に積層成形品を作製した。表面凹凸が発生した積層シートを使用したため、得られた積層成形品には表面凹凸に起因する欠陥が発生した。
実施例1で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートの、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、黒、茶、黄の各色の顔料からなるインキを用いて絵柄をグラビア印刷法によって印刷した。これにより印刷層を形成し、成形用積層シートを得た。該積層シートは表面粘着性がないため、印刷適性は良好であった。印刷後の成形用積層シートを目視観察して印刷抜けの有無を評価したところ、印刷抜けは観察されなかった。
比較例2、3で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例3と同様に成形用積層シートを作製した。該積層シートは表面粘着性がないため、印刷は可能であった。しかしながら、該積層シートには表面凹凸が発生していたため、印刷後の成形用積層シートには表面凹凸に起因する印刷抜けが観察され、印刷適性は低位であった。
実施例3で得られた成形用積層シートを金型内に配置した。この時、成形用積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向かい合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて300℃で15秒間成形用積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に成形用積層シートを追従させた。成形用積層シートの金型追従性は良好であった。なお、金型は実施例2で用いた金型と同一の金型を用いた。次に、成形温度220〜250℃、金型温度40〜60℃の条件において、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより成形用積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。成形用積層シートの金型離型性は良好であった。該成形品は印刷抜けがなく、外観良好であった。次いで、該成形品に紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)層を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有し、意匠性に優れる積層成形品を得た。
比較例6、7で得られた成形用積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例4と同様に積層成形品を作製した。該積層成形品は表面硬度、耐磨耗性は高いものの、表面凹凸に起因する印刷抜けが観察され、意匠性に劣る積層成形品であった。
実施例3で得られた成形用積層シートの印刷層上に、塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素化度15%)からなる接着層をグラビア印刷法によって形成した。該成形用積層シートを金型内に配置した。この時、成形用積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向き合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて300℃で15秒間成形用積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に成形用積層シートを追従させた。成形用積層シートの金型追従性は良好であった。なお、金型は実施例2で用いた金型と同一の金型を用いた。次に、成形温度200〜240℃、金型温度30〜60℃の条件において、ポリプロピレン系樹脂(タルクを20質量%含有、エチレン−プロピレン系ゴムを10質量%含有)を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより成形用積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。成形用積層シートの金型離型性は良好であった。該成形品は印刷抜けがなく、外観良好であった。次いで、該成形品に紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有し、意匠性に優れる積層成形品を得た。
Claims (11)
- 樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する工程と、
アクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する工程と、
樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取る工程と、を含む積層シートロールの製造方法であって、
下記式(1)より算出される前記加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)の伸び率(L)が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ前記積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m以上、170N/m以下であることを特徴とする方法。
L=[F1/(E*t*W)]*100 (1)
(式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。) - 積層シートを巻き取る工程の前に、樹脂組成物(A)層上に保護フィルム(C)を積層する工程を行う請求項1に記載の方法。
- 保護フィルム(C)を積層する工程において、積層シートの温度が10℃以上、33℃以下である請求項2に記載の方法。
- 樹脂組成物(A)が、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)と、光重合開始剤(a−2)と、を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 樹脂組成物(A)が、さらに無機微粒子(a−3)を含有する請求項4に記載の方法。
- 無機微粒子(a−3)がコロイダルシリカである請求項5に記載の方法。
- 樹脂組成物(A)が、さらに光安定剤(a−4)を含有する請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1から7のいずれか一項に記載の方法により製造される積層シートロール。
- 請求項8に記載の積層シートロールから巻き出された積層シートの、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、印刷層及び蒸着層から選ばれる少なくとも1層の加飾層が積層された成形用積層シート。
- 加飾層上に、さらに接着層が積層された請求項9に記載の成形用積層シート。
- 樹脂組成物(A)層が最表面層となるように、請求項8に記載の積層シートロールから巻き出された積層シート、或いは請求項9又は10に記載の成形用積層シートが積層された積層成形品。
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