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JP5573507B2 - 積層シートロールの製造方法 - Google Patents

積層シートロールの製造方法 Download PDF

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JP5573507B2 JP2010196559A JP2010196559A JP5573507B2 JP 5573507 B2 JP5573507 B2 JP 5573507B2 JP 2010196559 A JP2010196559 A JP 2010196559A JP 2010196559 A JP2010196559 A JP 2010196559A JP 5573507 B2 JP5573507 B2 JP 5573507B2
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Description

本発明は、アクリル樹脂基材シート上に樹脂組成物層を積層した積層シートロールの製造方法に関する。特に、積層シートロールのゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥を改善し、巻き出した積層シートが優れた外観、意匠性、耐磨耗性、耐薬品性及び耐候性を有する積層シートロールを提供できる。
アクリル樹脂基材シートは、その優れた耐候性、透明性及び加工性を生かし、各種樹脂基材や、ガラス、金属、木材、布等の表面に貼り合わせて使用され、各種基材の保護、意匠性付与に応用されている。また、アクリル樹脂基材シートの印刷特性の向上や、巻き崩れ、しわといった外観欠陥の改善を目的として種々検討が行われている。(例えば特許文献1〜3)。
しかしながら、前記特許文献では、アクリル樹脂基材シートそのものの製造方法に関しては開示されているが、後の工程においてコーティング等の方法により、アクリル樹脂基材シートにさらに樹脂組成物層を積層させた積層シートの製造方法については開示されていない。
一方、アクリル樹脂基材シートに光硬化性樹脂組成物層が積層された光硬化性シートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献4)。該方法によれば、光硬化性樹脂組成物層のクラックの発生や光硬化性シートの搬送途中における緩みやしわの抑制は可能である。しかしながら、巻き取った後の積層シートロールにおいてゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥が発生する場合があり、更なる検討の余地があった。
特開2008−230722号公報 特開2010−30202号公報 特開2010−30756号公報 特開2003−285006号公報
本発明の目的は、ゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥を抑制し、印刷特性の良好な積層シートロールを提供することである。
本発明に係る積層シートロールの製造方法は、樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する工程と、アクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する工程と、樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取る工程と、を含む積層シートロールの製造方法であって、下記式(1)より算出される前記加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)の伸び率(L)が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ前記積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m以上、170N/m以下であることを特徴とする方法である。
L=[F1/(E*t*W)]*100 (1)
(式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向(MD方向)の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。)
本発明に係る方法によれば、ゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥が抑制され、且つ印刷を施した際に印刷抜けが少ない良好な印刷特性を有する積層シートロールを製造することができる。
本発明に係る積層シートロールの製造方法は、樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する工程と、アクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する工程と、樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取る工程と、を含む積層シートロールの製造方法であって、下記式(1)より算出される前記加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)の伸び率(L)が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ前記積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m以上、170N/m以下であることを特徴とする方法である。
L=[F1/(E*t*W)]*100 (1)
(式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。)。これにより、積層シートロールのゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥を改善することができる。
<混合溶液塗布工程>
本発明に係る方法では、樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する。塗布方法としては、例えば、樹脂組成物(A)を溶剤(S)に十分に攪拌溶解させた混合溶液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法や、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、ナイフコート法、コンマコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法等の公知のコート方法にてアクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する方法が挙げられる。なお、本発明に係る方法は、本工程と、後述する溶剤(S)除去のための加熱乾燥を行い、樹脂組成物(A)層を形成する工程と、積層シートを巻き取る工程とを含む、ロールtoロール方式による方法とすることができる。
[樹脂組成物(A)]
樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)層となってアクリル樹脂基材シート(B)上に積層され、耐擦傷性、耐磨耗性、耐水性、耐薬品性、耐候性等の特性をアクリル樹脂基材シート(B)表面に付与するために使用される。樹脂組成物(A)は、樹脂組成物(A)が積層された積層シートをロール状に巻き取ることができれば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物等の中から任意の樹脂組成物を適宜選択することができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えば、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、セロハン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、軟質アクリル系樹脂等公知の熱可塑性樹脂又はこれらの混合物を含有する樹脂組成物が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等公知の熱硬化性樹脂又はこれらの混合物を含有する樹脂組成物が挙げられる。
光硬化性樹脂組成物としては、分子中に光重合性基を有する化合物を含有する樹脂組成物が挙げられる。光重合性基としては、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性基が挙げられる。
前記樹脂組成物の中でも、樹脂組成物(A)としては生産性の観点から光硬化性樹脂組成物が好ましい。また、透明性、耐候性、耐磨耗性、積層シート表面の粘着性等の観点から、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を含有する樹脂組成物であることがより好ましい。
樹脂組成物(A)は、必要に応じて、増感剤、変性用樹脂、染料、顔料及びレベリング剤やハジキ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化安定剤等の添加剤を配合することができる。該増感剤は、硬化反応を促進する化合物であって、例えばベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントン等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、公知の化合物を用いることができ、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤のいずれも使用することができる。しかしながら、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤を用いる方が好ましい。
[側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)]
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)としては、例えば、単量体を単独重合又は共重合させた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入した重合体が挙げられる。
単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体、(メタ)アクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネート等のカルボキシル基を有する単量体、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリル等のアジリジニル基を有する単量体、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン基を有する単量体、2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの等モル付加物のような、ジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合性単量体の付加物、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する単量体が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。さらに、これらの単量体の重合体のガラス転移温度(Tg)を調節したり、積層シートの物性を調節したりするために、前記単量体と、該単量体と共重合可能な単量体とを共重合させることもできる。共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のイミド誘導体、ブタジエン等のオレフィン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
次に、例えば以下の方法により、前記単量体を単独重合又は共重合させた重合体にラジカル重合性不飽和基を導入することができる。
(i)前記水酸基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体等を縮合反応させる。
(ii)前記カルボキシル基、スルホン基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基を有する単量体を縮合反応させる。
(iii)前記エポキシ基、イソシアネート基又はアジリジニル基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、前記水酸基を有する単量体又は前記カルボキシル基を有する単量体を付加反応させる。
前記水酸基又はカルボキシル基を有する単量体の重合体又は共重合体の場合には、前記エポキシ基を有する単量体又は前記アジリジニル基を有する単量体、あるいは前記イソシアネート基を有する単量体又はジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体との等モル付加物を付加反応させることができる。これらの反応は、微量のハイドロキノン等の重合禁止剤を加え、乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)の側鎖のラジカル重合性不飽和基の量は、二重結合当量(側鎖ラジカル重合性不飽和基1個あたりの平均分子量)が、仕込み値からの計算値で1〜3000g/molであることが、耐擦傷性、耐摩耗性向上の観点から好ましい。前記二重結合当量は、1〜1200g/molであることがより好ましく、1〜800g/molであることが更に好ましい。このように、架橋に関与するラジカル重合性不飽和基を複数導入することにより、効率的に硬化物性を向上させることができる。なお、二重結合当量の算出方法は後述する。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)の数平均分子量(Mn)は、5,000〜2,500,000であることが好ましく、10,000〜1,000,000であることがより好ましい。Mnが5,000以上である場合、アクリル樹脂(a−1)を含む樹脂組成物(A)を用いて作製した積層シートをインサート成形する際に、成形時に予備加熱を行っても成形用金型に積層シートが貼り付きにくくなる。また、製造される積層成形品の表面硬度が適切となる。一方、Mnが2,500,000以下である場合、合成が容易であり、外観、アクリル樹脂基材シート(B)との密着性が良好となる。なお、Mnの測定方法は後述する。
側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)は、ガラス転移温度(Tg)が25〜175℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。Tgが25℃以上である場合、インサート成形時の積層シートの金型剥離性が良好となり、積層成形品の表面硬度が適切となる。一方、Tgが175℃以下である場合、積層シートの取り扱い性が良好となる。また、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)のTgを考慮すると、単量体としては、ホモポリマーとした場合に高いTgを有するビニル重合性単量体を用いることが好ましい。さらに、耐候性向上の観点から、ビニル重合性単量体として(メタ)アクリレート類を主成分として用いることがより好ましい。なお、Tgの測定方法は後述する。
また、後述するように樹脂組成物(A)中に無機微粒子(a−3)を添加する場合には、無機微粒子(a−3)の表面の官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、シラノール基等)と反応しうる基を分子内に有するビニル重合性単量体を単量体として用いることにより、樹脂組成物(A)の剛性、靱性、耐熱性等の物性をより向上させることができる。前記無機微粒子(a−3)の表面の官能基と反応しうる基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン化シリル基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。このようなビニル重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
[光重合開始剤(a−2)]
樹脂組成物(A)が側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を含有する場合には、樹脂組成物(A)は光重合開始剤(a−2)を含有することが好ましい。光重合開始剤(a−2)としては、例えば光照射によってラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては公知の化合物を用いることができ、特に限定されない。硬化時の黄変性や耐候時の劣化等を考慮すると、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような分子内にアミノ基を含まない開始剤が好ましい。例えば、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。これらの化合物には、成形時に沸点以上の温度とならない沸点を有する化合物を用いることが好ましい。
また、成形品の表面硬度を上げるため、n−メチルジエタノールアミン等の酸素重合禁止硬化防止剤を添加してもよい。更に、これらの光重合開始剤の他に、成形時の熱を利用した硬化も考慮して、各種過酸化物を添加してもよい。樹脂組成物(A)が過酸化物を含有する場合には、樹脂組成物(A)を150℃、30秒程度で硬化させる必要がある。このため、臨界温度の低い過酸化物、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好ましく用いられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
光重合開始剤(a−2)の添加量は、硬化後の残存量が耐候性に影響するため、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。特に、光重合開始剤(a−2)として、硬化時の黄変に関連するアミノ系の光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、1質量部以下が好ましい。
[無機微粒子(a−3)]
樹脂組成物(A)は、更に無機微粒子(a−3)を含有することが、耐擦傷性や耐摩耗性が向上する観点から好ましい。無機微粒子(a−3)としては、樹脂組成物(A)の透明性が確保されれば、その種類や粒子径、形態は特に制限されない。無機微粒子(a−3)としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、異種元素ドープ酸化スズ(ATO等)、酸化インジウム、異種元素ドープ酸化インジウム(ITO等)、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。この中でも、入手の容易さや価格面、樹脂組成物(A)層の透明性や耐摩耗性発現の観点から、コロイダルシリカが好ましい。
コロイダルシリカは通常の水性分散液の形態や、有機溶媒に分散させた形態で用いることができる。しかしながら、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)に均一かつ安定に分散させるためには、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカを用いることが好ましい。該有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、キシレン/ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用することもできる。この中でも、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)により均一に分散させることができる観点から、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を溶解可能な有機溶媒を選択することが好ましい。
有機溶媒に分散させた形態のコロイダルシリカとしては、市販品では、例えば、メタノールシリカゾルMT−ST、イソプロピルアルコールシリカゾルIPA−ST、n−ブタノールシリカゾルNBA−ST、エチレングリコールシリカゾルEG−ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA−ST、エチルセロソルブシリカゾルETC−ST、ブチルセロソルブシリカゾルBTC−ST、ジメチルホルムアミドシリカゾルDBF−ST、ジメチルアセトアミドシリカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトンシリカゾルMEK−ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルMIBK−ST(以上商品名、日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
無機微粒子(a−3)の粒子径は、樹脂組成物(A)層の透明性の観点から200nm以下が好ましいく、100nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましい。また、無機微粒子(a−3)の粒子径の下限値としては、1nm以上が好ましい。なお、無機微粒子(a−3)の粒子径は、無機微粒子(a−3)を含む樹脂組成物(A)層をアクリル樹脂基材シート(B)上に形成した後、断面TEM写真による観察を行い、その平均値とする。
無機微粒子(a−3)の添加量は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)100質量部に対して、無機微粒子固形分で5〜400質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましい。無機微粒子(a−3)の添加量が5質量部以上の場合には、耐磨耗性向上効果が認められる。一方、無機微粒子(a−3)の添加量が400質量部以下の場合には、樹脂組成物(A)の保存安定性が高く、積層シートの成形性も高い。
また、無機微粒子(a−3)としては、下記式(I)で表されるシラン化合物によって予め表面が処理された無機微粒子を用いてもよい。表面処理された無機微粒子を使用した場合、樹脂組成物(A)の保存安定性がさらに良好となり、また積層シートの表面硬度及び耐候性も良好となるためである。
SiR4 a5 b(OR6c (I)
(前記式(I)中、R4及びR5は、それぞれ、エーテル結合、エステル結合、エポキシ結合又は炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R6は水素原子又はエーテル結合、エステル結合、エポキシ結合もしくは炭素−炭素二重結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。a及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である。)。
前記式(I)で表されるシラン化合物の中でも、下記式(II)〜(VII)で表されるシラン化合物がより好ましい。
SiR7 a8 b(OR9c (II)
SiR7 n(OCH2CH2OCO(R10)C=CH24-n (III)
CH2=C(R10)COO(CH2pSiR11 n(OR93-n (IV)
CH2=CHSiR11 n(OR93-n (V)
HS(CH2pSiR11 n(OR93-n (VI)
Figure 0005573507
(前記式(II)から(VII)中、R7及びR8は、それぞれ、エーテル結合、エステル結合又はエポキシ結合を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R9は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R10は水素原子又はメチル基を表す。R11は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を表す。a及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、cは4−a−bを満足する1〜4の整数である。nは0〜2の整数である。pは1〜6の整数である。)。
前記式(II)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリエトキシシラン、ジエトキシエチルジメトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(III)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラキス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、テトラキス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(アクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
前記式(IV)で表されるシラン化合物としては、例えば、β−アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記式(VI)で表されるシラン化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記式(VII)で表されるシラン化合物としては、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
無機微粒子(a−3)を、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)に添加する方法としては、特に限定されない。例えば、予め側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を合成後、無機微粒子(a−3)を混合してもよいし、また側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)を構成する単量体と無機微粒子(a−3)とを混合した条件下で、該単量体を重合する方法等、任意の方法を選択することができる。
[光安定剤(a−4)]
樹脂組成物(A)は、更に光安定剤(a−4)を含有することが、耐候性向上の観点から好ましい。光安定剤(a−4)としては公知の光安定剤を用いることができ、特に限定されない。しかしながら、光安定剤の中でもヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤は、窒素原子の隣接する2つの炭素原子に複数の立体障害作用を示す置換基が結合されたピペリジン環を有する化合物である。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えばメチル基等が挙げられる。このような置換基を有する化合物の好ましい例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル基を有する化合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有する化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、チマソーブ119FL、2020FDL、944FD、944LD、チヌビン622LD、123S、144、765、770、770DF、770FL、111FD、123、292(以上商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、サノールLS−770、LS−765、LS−292、LS−2626、LS−744、LS−440(以上商品名、三共(株)製)、アデカスタブLA−57、LA−62、LA−63、LA−68(以上商品名、(株)ADEKA製)等を挙げることができる。これらのヒンダードアミン系光安定剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。但し、樹脂組成物(A)中に無機微粒子(a−3)が含まれる場合、ピペリジン環中の窒素原子上の置換基が水素原子であるヒンダードアミン系光安定剤を用いると、無機微粒子(a−3)の凝集を誘発し、樹脂組成物(A)の保存安定性が低下したり、樹脂組成物(A)層の透明性や耐磨耗性が低下したりする場合がある。無機微粒子(a−3)と併用する場合は、窒素原子上の置換基がメチル基等のアルキル基や、オクチルオキシ基等のアルコキシ基であるヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。
光安定剤(a−4)の含有量は、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.2〜5質量部が更に好ましい。光安定剤(a−4)の含有量が0.1〜15質量部の場合には、耐候性が向上し、高い経済性を有する。また、光安定剤(a−4)のブリードによる積層シートロールの汚れや積層シートの外観の低下が生じにくく、積層シートを貼り合わせた積層成形品の表面硬度が向上する。
[溶剤(S)]
溶剤(S)は特に限定されないが、樹脂組成物(A)の各成分を溶解し、又は均一に分散し、かつ、アクリル樹脂基材シート(B)の物性(機械的強度、透明性等)の低下を実質的に生じない溶剤が好ましい。また、アクリル樹脂基材シート(B)の主たる構成成分である樹脂成分のTg+80℃より低い沸点、好ましくはTg+30℃より低い沸点を有する揮発性の溶剤が好ましい。
このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤、フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤、無水酢酸等の酸無水物系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤、チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン等の2種以上の官能基を有する溶剤、あるいは水等の各種公知の溶剤を使用することができる。
また、混合溶液における樹脂組成物(A)/溶剤(S)の質量比は25/75〜70/30(合計100質量部)であることが好ましい。樹脂組成物(A)が25質量部以上であれば、積層シート内に溶剤(S)が多量に残存することがなく、樹脂組成物(A)層の表面が粘着性を有さないようになる。また、印刷工程における歩留まりの低下や、ロール状態での保存安定性の低下、あるいはインサート成形時の金型汚染性の低下等を生じない。一方、樹脂組成物(A)が70質量部以下であれば高粘度とはならず、積層シートの外観低下を生じない。
[アクリル樹脂基材シート(B)]
本発明では、耐候性、透明性等の観点からアクリル樹脂基材シート(B)が用いられる。アクリル樹脂基材シート(B)は、架橋ゴム成分を有する熱可塑性樹脂基材シートであることが好ましい。
(引張弾性率)
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)としては、100℃加熱時における伸度が100%以上であるアクリル樹脂基材シート(B)が、インサート成形やインモールド成形時に金型の形状への追従性が良好となるため好ましい。
最終的に得られる積層成形品の硬さ、積層成形品を製造する工程での傷つき耐性の観点から、本発明の熱可塑性アクリル樹脂基材シートは23℃条件下での引張弾性率は1,500MPa以上、3,500MPa以下が好ましい。
(鉛筆硬度)
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)の鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)は、特に限定されないが、最終的に得られる積層成形品の硬さの観点から、2B以上であることが好ましく、HB以上であることが好ましく、F以上であることが特に好ましい。
(厚さ)
本発明のアクリル樹脂基材シート(B)の厚さは、特に限定されないが、10〜500μmが好ましい。アクリル樹脂基材シート(B)の厚さを500μm以下とすることにより、インサート成形およびインモールド成形に適した剛性が得られ、より安定にフィルムを製造することができる。また、アクリル樹脂基材シート(B)の厚みを10μm以上とすることにより、基材の保護性とともに、得られる積層体に深み感をより十分に付与することができる。アクリル樹脂基材シート(B)の厚みは、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
アクリル樹脂基材シート(B)としては、メタクリル酸メチルを主成分としガラス転移温度が40〜105℃のアクリル系樹脂95〜50重量%に、アクリル架橋ゴムを3〜50質量%分散させたものが好ましい。アクリル架橋ゴムとしては、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートから選ばれる少なくとも1種を主構成単位とするゴムの存在下にメチルメタクリレートを主として含有する単量体がグラフト重合された重合体が挙げられる。
上記のような熱可塑性アクリル樹脂基材シートとしては、例えば、特開平8−323934号公報、特開平9−263614号公報、特開平11−147237号公報、特開2001−10674号公報等に開示されている透明熱可塑性アクリルシートが挙げられる。市販されている架橋ゴム成分を有する熱可塑性アクリル樹脂基材シートとしては、例えばアクリプレンHBX−N47、HBS−006、HBD−013、HBS−010、HBA−001、HBA−002(以上商品名、三菱レイヨン(株)製)、テクノロイS001、S003、SN101(以上商品名、住友化学工業(株)製)、サンデュレンSD007、SD009(以上商品名、(株)カネカ製)が挙げられる。
アクリル樹脂基材シート(B)中には、必要に応じて、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の滑剤、シリカ、球状アルミナ、鱗片状アルミナ等の減摩剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル等の有機物系の紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、可塑剤、安定剤、顔料、染料等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
[コロナ放電]
アクリル樹脂基材シート(B)上に混合溶液を塗布する際には、アクリル樹脂基材シート(B)と樹脂組成物(A)層との密着性を向上させるため、予め、コロナ放電等でアクリル樹脂基材シート(B)表面を活性化することが好ましい。該コロナ放電により活性化した直後が、密着性が最も高いため、該コロナ放電は混合溶液を塗布する直前に行うことが好ましい。更に、樹脂組成物(A)が光硬化性樹脂組成物である場合には、光硬化時に体積収縮し、アクリル樹脂基材シート(B)との密着性が低下することを防ぐ目的で、アクリル樹脂基材シート(B)上に予めプライマー層を積層することが好ましい。
<加熱乾燥工程>
前記混合溶液を塗布したアクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する。加熱乾燥の方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥等の加熱乾燥や、赤外線乾燥等が挙げられ、適宜選択することができる。
[伸び率(L)]
加熱乾燥時において、アクリル樹脂基材シート(B)に外力(f)(N)が作用しているとき、アクリル樹脂基材シート(B)の内部には外力と等しい内力(f)(N)が作用し、応力が発生する。単位面積当たりの内力(f)は垂直応力(σ)(N/mm2)と呼ばれ、下記式(2)により算出される。
σ=f/A (2)
ここで、Aはアクリル樹脂基材シート(B)の断面積(mm2)であり、アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(t)(mm)と幅(W)(mm)の積から求められる。なお、垂直応力(σ)は、アクリル樹脂基材シート(B)が伸びる方向にかかる場合(引張応力)をプラス、アクリル樹脂基材シート(B)が縮む方向にかかる場合(圧縮応力)をマイナスと定義する。加熱乾燥時にアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向(MD方向)にテンション(F1)(N)が作用したとき、アクリル樹脂基材シート(B)の長さがL0(mm)からL1(mm)に変化したとする。このときの垂直応力(σ)(N/mm2)と伸び率(L)(%)は、それぞれ下記式(3)、(4)で表される。
Figure 0005573507
垂直応力(σ)と伸び率(L)との間には材料固有の関係があり、伸び率(L)の小さな範囲では垂直応力(σ)と伸び率(L)との間には比例関係が成立し、下記式(5)が成り立つ。
σ=E*L/100 (5)
ここで、Eは加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)である。前記式(3)と前記式(5)から前記式(1)を求めることができる。
前記式(1)で表される加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)の伸び率(L)は、0.001%以上、0.5%以下である必要がある。伸び率(L)の値は、0.003%以上、0.45%以下が好ましく、0.005%以上、0.4%以下がより好ましい。伸び率(L)が0.001%未満の場合、アクリル樹脂基材シート(B)を弛ませて搬送する必要がある。一方、0.5%を超える場合、アクリル樹脂基材シート(B)が変形してシワとたるみが発生して表面に凹凸が発生する。なお、加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(F1)、加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)の測定方法は後述する。
[加熱温度]
加熱乾燥における加熱温度については、伸び率(L)の値及び溶剤(S)の残存の観点から十分に検討する必要がある。加熱温度が高すぎる場合には、加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)が低下し、伸び率(L)の上昇につながる場合がある。一方、加熱温度が低すぎる場合には、積層シート内に溶剤(S)が多量に残存し、樹脂組成物(A)層の表面が粘着性を有するようになる場合がある。加熱温度は、伸び率(L)の値が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ溶剤(S)が十分に揮発する条件であれば、用いるアクリル樹脂基材シート(B)の種類及び溶剤(S)の種類から適宜選択することができる。
<巻き取り工程>
前記工程により形成された樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取り、積層シートロールを製造する。積層シートの巻き取り方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラを接触させず近接して巻き取るニア巻き方式や、タッチローラを積層シートに完全に接触させるタッチ巻き方式等が挙げられる。また、巻き取りの際、テーパーをつけて、初期巻き取りテンションに対して最終巻き取りテンションを低くすることができる(テーパー巻き)。テーパー巻きでは、用いるアクリル樹脂基材シート(B)や巻き取り条件に応じて、初期巻き取りテンションに対する最終巻き取りテンションの比率(テーパー率)を任意の値に設定することができる。
[単位幅あたりのテンション(F2)]
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)(以下、単位幅あたりのテンション(F2)とも示す)は、60N/m以上、170N/m以下とする必要がある。単位幅あたりのテンション(F2)の値は、65N/m以上、165N/m以下が好ましく、70N/m以上、160N/m以下がより好ましい。単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m未満の場合、巻き崩れが生じ、積層シートロールの巻き形状が不良となる。一方、170N/mを超える場合、積層シートロールにゲージバンド、しわ、たるみ等の外観不良が発生する。なお、単位幅あたりのテンション(F2)の測定方法は後述する。また、テーパー巻きの場合は変動する単位幅あたりのテンション(F2)がいずれも上記範囲に収まることが好ましい。
[中間層]
本発明に係る積層シートは、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層が積層された構造で、インサート成形やインモールド成形等の加工性に優れるだけでなく、各種物性(特に、耐候性−耐磨耗性(表面硬度)−密着性のバランス)に優れた積層成形品を与えることができる。樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)との間には、前記積層シートの優れた性状を損なわない限りにおいて、更に1層以上の樹脂組成物からなる中間層を積層することもできる。この時、該中間層の樹脂組成物としては、樹脂組成物(A)と同等もしくは類似の樹脂組成物を用いることが、積層シートの表面性状(特に、密着性、耐候性、外観、意匠性等)が良好となる傾向にあるため好ましい。
[保護フィルム(C)]
本発明に係る積層シートには、アクリル樹脂基材シート(B)上の樹脂組成物(A)層上に、保護フィルム(C)を積層することができる。保護フィルム(C)は樹脂組成物(A)層の表面の防塵に有効であり、樹脂組成物(A)層表面の傷つき防止にも有効である。
保護フィルム(C)は、樹脂組成物(A)層に密着しており、成形前に剥離もしくは貼り合わせたまま成形し、その後剥離するため、樹脂組成物(A)層に対して適度な密着性と良好な離型性を有することが好ましい。このような条件を満たす保護フィルムであれば、任意の保護フィルムを選択して用いることができる。そのような保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
保護フィルム(C)の積層は、積層シートを巻き取る工程の前に行うことができる。保護フィルム(C)を積層する際、積層シートの温度は10℃以上、33℃以下であることが好ましく、15℃以上、33℃以下であることがより好ましい。積層シートの温度が10℃以上であれば、積層シートに結露を発生させることなく保護フィルム(C)を貼り合わせることができる。また、33℃以下であれば、巻き取った後の積層シートロールの積層シートの変形を抑制でき、積層シートロールから巻き出した積層シートは外観良好となる。
[加飾層]
本発明に係る方法により製造される積層シートロールから巻き出された積層シートは、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、印刷層及び蒸着層から選ばれる少なくとも1種の加飾層が積層された成形用積層シートとすることができる。加飾層は成形品表面に模様や文字等の加飾を施すものである。加飾の形態は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。また、該成形用積層シートは加飾層上にさらに接着層が積層されていてもよい。
[印刷層]
印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとして、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有するインキを用いることが好ましい。
インキの顔料としては、例えば、次のものが使用できる。黄色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料、赤色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料や弁柄等の無機顔料、青色顔料としてはフタロシアニンブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料、黒色顔料としてはアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料としては二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。インキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
インキの印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法やロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いることが好ましい。
[蒸着層]
蒸着層の材料としては、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、又はそれらの合金もしくは化合物を使用することができる。蒸着層は、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。これらの加飾のための印刷層や蒸着層は、所望の積層成形品の表面外観が得られるように、成形時の伸張度合いに応じて適宜その厚みを選択することができる。
[接着層]
接着層の材料としては、印刷層又は蒸着層と成形樹脂との密着性を高める性質のものであれば、任意の合成樹脂材料を選択して用いることができる。例えば、成形樹脂がポリアクリル系樹脂の場合には、材料としてポリアクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、成形樹脂がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性があるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を材料として使用することが好ましい。さらに、成形樹脂がポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂である場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂、ブロックイソシアネートを用いた熱硬化型ウレタン樹脂等を材料として使用可能である。なお、接着層の粘着性低減や耐熱性向上を目的として、疎水性シリカやエポキシ樹脂、石油樹脂等をさらに含有させることもできる。
[成形用積層シート]
本発明に係る成形用積層シートの厚みは、0.030〜0.750mmであることが好ましい。成形用積層シートの厚みが0.030mm以上であれば、曲面での成形用積層シートの厚みを著しく低下させることなく、深しぼり成形を行うことができる。また、成形用積層シートの厚みが0.750mm以下であれば、成形用積層シートの金型への形状追従性を低下させることなく、成形用積層シートの成形を行うことができる。
[積層成形品]
本発明に係る積層成形品は、樹脂組成物(A)層が最表面層となるように、前記積層シートロールから巻き出された積層シート又は前記成形用積層シート(以下、単にシートとも示す)が積層された積層成形品である。樹脂組成物(A)層が表面になるように積層することで、積層成形品に樹脂組成物(A)層の優れた表面性状(耐候性、外観、意匠性等)を与えることができる。なお、シートに保護フィルム(C)が積層されている場合には、通常成形品表面にシートを積層する直前に保護フィルム(C)を剥がして使用するが、保護フィルム(C)を剥がさず最表面層となるように成形品表面にシートを貼り付けてもよい。
積層成形品の製造方法としては公知の製造方法を使用でき、特に制限されない。例えばインサート成形法、インモールド成形法、特開2002−67137号公報に開示されている真空成形機を用いた方法等が挙げられる。
インサート成形法とは、シートを予め真空成形等によって三次元の形状に成形し、不要なシート部分を除去し、その後射出成形金型内に移し、基材となる成形樹脂を射出成形することにより一体化させて積層成形品を製造する方法である。
インモールド成形法とは、シートを射出成形金型内に設置し、真空成形を施し、その後同じ金型内で基材となる成形樹脂を射出成形することにより一体化させて積層成形品を製造する方法である。
特開2002−67137号公報に開示されている真空成形機を用いた方法とは、まずシートで仕切られた2つの密閉空間を形成して一方の空間側に成形体を配置し、両方の空間を減圧する。その後、シートを加熱軟化し、一方の空間側から他方の空間側に向かってシート表面に成形体を押し当てた状態で、成形体を配置していない他方の空間のみを常圧に戻す。これにより、差圧を利用してシートを成形体に貼り付ける方法である。また、成形体を配置している空間のみを減圧する方法でもよい。この方法によれば、加熱されたシートが全体的に均一に圧力を受けて成形体表面に貼り付けられるため、成形体の表面が曲面等であっても良好にシートを成形体に貼り付けることができる。このような成形加工を行うための装置としては、例えば、TOM(Three Dimension Overlay Method)成型機(布施真空(株)製)等を挙げることができる。
成形樹脂としては、射出成形等の各種成形が可能な全ての樹脂を用いることができ、特に制限されない。成形樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル/スチレン系共重合体)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の汎用の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂、及びポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂が挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
成形樹脂中には目的に応じてガラス繊維やタルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等の無機フィラー等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂、各種変性樹脂等を配合することができる。更に、成形樹脂の成形後の収縮率を積層シートの収縮率に近似させることにより、積層成形品の反りやシートの剥がれ等の不具合を解消できる傾向にあるため好ましい。
本発明に係る積層シート又は成形用積層シートは、既に射出成形等により成形された物品に直接あるいは接着層を介してラミネートして、成形品表面に積層して使用することもできる。
積層成形品の端部に形成されるシートの不要部分は、適宜トリミングして除去することができる。トリミングの時期としては、シートを金型内に挿入配置した後、積層成形品を取り出した後、のいずれの時期でもよい。不要部分のトリミングの方法としては、例えば、レーザー光線等を照射してシートを焼き切る方法、トリミング用の打ち抜き型を作製し、プレス加工によってシートを打ち抜く方法及び人手によりシートをちぎるようにして除去する方法が挙げられる。
本発明に係る方法によれば、積層シートロールのゲージバンド、しわ、たるみ、巻き崩れ等の外観欠陥を改善することができ、巻き出した積層シートは、優れた外観、意匠性、耐磨耗性、耐薬品性及び耐候性を有する。該積層シートは、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装材用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装材用途、AV機器や家電製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、更には家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗物の内外装材用途、瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途等に好適に使用することができる。また、透明樹脂においてはその透明性を活かしたまま、自動車や鉄道車両、飛行機等の窓やヘッドランプカバー、風防部品等に好適に使用することができる。また、成形品の表面を塗装する場合に比べて工程数を省略することができ生産性も高く、環境への負荷も少ない。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、「部」は「質量部」を意味する。また、本実施例における各種測定、評価は以下の方法により行った。
(1)重合率
アクリル樹脂Iにおける単量体の重合率は以下の方法により測定した。重合により得られたアクリル樹脂Iの溶液に残存する単量体を、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー社製、商品名:HP6890)により分析し、残存する単量体の量から重合率(%)を算出した。
(2)固形分
アクリル樹脂Iの固形分は以下の方法により測定した。アクリル樹脂Iの溶液又は分散液約1gをアルミ皿の上に採取し、室温にて溶媒又は分散媒を揮発させた後、80℃で1時間加熱して得られるアクリル樹脂Iの透明固体の質量を測定し、固形分(質量%)を算出した。
(3)数平均分子量(Mn)
アクリル樹脂IのMnは高速GPC装置(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて測定した。なお、数値に関してはポリスチレン換算した値を用いた。
(4)二重結合当量
アクリル樹脂Iの二重結合当量は、合成の処方及び前述の方法により算出した単量体の重合率から得られたアクリル樹脂Iの構造を推定し、二重結合当量(g/mol)を算出した。
(5)ガラス転移温度(Tg)
アクリル樹脂IのTg(℃)は、示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、商品名:DSC6200)を用いて測定した。
(6)巻き崩れ
積層シートを巻き取った後の積層シートロールの端面のずれを下記基準により目視評価した。
○:積層シートロールの端面のずれがほぼ無い(使用可能な状態)
×:積層シートロールの端面のずれが有る(使用不可能な状態)。
(7)表面凹凸
巻き取った積層シートロールを再度100N/mのテンションで巻き出した際の、積層シートの変形(ゲージバンド、しわ、たるみ)を下記基準により目視評価した。
○:変形が無い
×:変形が有る。
(8)加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)
JIS K6251に準拠して、スーパーダンベルカッター((株)ダンベル製、商品名:SDK−100D)を用いてアクリル樹脂基材シート(B)の試験片を5枚作製した。得られた試験片について、ストログラフT((株)東洋精機製作所製、商品名)を使用し、引張弾性率(E)の測定を行った。なお、試験片を装置に固定する前に、装置内を加熱乾燥時の熱風式乾燥機内と同じ温度に設定し、設定温度に到達したことを確認した後に試験片を装置内に固定し、2分間装置内に静置した。その後、引張速度500mm/分で各試験片の引張試験を実施し、その時の応力歪み曲線の接線の平均値を求め、引張弾性率(E)(MPa)とした。
(9)積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)
コーティングマシン((株)ヒラノテクシード製グラビアコーター)の制御モニター上に表示される、積層シートにかかる単位幅あたりのテンション(F2)(N/m)を読み取った。
(10)加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(F1)
前記コーティングマシンの制御モニター上に表示される、加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかる単位幅あたりのテンション(N/m)とアクリル樹脂基材シート(B)の幅(m)から、加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(F1)(N)を算出した。
[実施例1]
(アクリル樹脂Iの合成)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1Lの4つ口フラスコにメチルエチルケトン50部を入れ、80℃に昇温した。窒素雰囲気下でメチルメタクリレート80部、グリシジルメタクリレート20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を3時間かけて滴下した。その後、メチルエチルケトン80部とアゾビスイソブチロニトリル0.2部の混合物を加え、重合させた。4時間後、メチルエチルケトン50部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部、トリフェニルホスフィン2.5部及びアクリル酸10.1部を加え、空気を吹き込みながら80℃で30時間攪拌した。その後冷却し、反応物をフラスコより取り出し、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂Iの溶液を得た。アクリル樹脂Iにおける単量体の重合率は99.5%以上であり、アクリル樹脂Iの固形分は約40質量%、Mnは約6万、二重結合当量は614g/mol、Tgは88℃であった。
(コロイダルシリカS1の合成)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに表1記載の成分を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を75℃とした。75℃で2時間反応することにより、表面がシラン化合物で処理され、メタノール中に分散したコロイダルシリカS1を得た。続いて、メタノールを留去した後トルエンを添加する操作を繰り返し、メタノールをトルエンで完全に置換した。これにより、表面がシラン化合物で処理され、トルエン中に分散したコロイダルシリカS1を得た。
Figure 0005573507
注)表1中の数値は質量部を示す。(MT−STに関しては固形分換算の質量部を示す)
1)MT−ST:メタノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業(株)製、商品名、シリカ粒子径15nm)
2)KBM503:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名)。
(混合溶液の調製)
合成したアクリル樹脂I及びコロイダルシリカS1を用いて、表2の組成を有する樹脂組成物(A)と溶剤(S)(MEK:トルエン=4:1)とを含む混合溶液を調製した。
Figure 0005573507
注)樹脂組成物(A)中の数値は質量部である。(アクリル樹脂I及びコロイダルシリカS1に関しては固形分換算の質量部を示す)
1)光重合開始剤:Irg184[1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)]
2)光安定剤:チヌビン123[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)]
3)MEK:メチルエチルケトン。
(積層シートロールの製造)
調製した混合溶液を、厚さ(t)0.075mm、基材幅(W)1100mmのアクリル樹脂基材シート(B)(三菱レイヨン(株)製、商品名:HBS−010P)上の片面に、リバースグラビア方式にて塗工幅約1100mmで塗布した。引き続き、アクリル樹脂基材シート(B)に130Nのテンション(F1)をかけ、アクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向へ20m/分の速度で搬送しながら、フローティング方式の熱風式乾燥機にて70℃で約40秒間、加熱乾燥を行った。これにより、溶剤(S)を十分に揮発させ、厚さ約0.008mmの樹脂組成物(A)層を形成し、積層シートとした。更に、厚さ0.060mm、基材幅1095mmの保護フィルム(C)((株)サンエー化研製、商品名:サニテクトPAC−3−60)を樹脂組成物(A)層の表面に貼りつけた。この時の積層シートの温度は30℃であった。その後、積層シートに対し積層シートの単位幅あたり100N/mのテンション(F2、テーパー率:5%(最終テンションを95N/mに調整))をかけて、積層シート500mをニア巻き方式で巻き取った。これにより、積層シートロールを製造した。該積層シートロールは巻き崩れがなく、巻き出した積層シートに表面凹凸は確認されなかった。また、70℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は1050MPaであった。結果を表3に示す。
[比較例1]
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を50N/m(テーパー率:5%)とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。しかしながら、巻き取り途中に巻き崩れの発生が確認された。巻き取り時のテンションが低すぎたため、巻き崩れによる端部のずれが発生したと考えられる。結果を表3に示す。
[比較例2]
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を180N/m(テーパー率:5%)、加熱乾燥における熱風式乾燥機の温度を80℃とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。80℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は720MPa、保護フィルム(C)を貼り合わせる際の積層シートの温度は26℃であった。巻き出した積層シートには表面凹凸が確認された。巻き取り時のテンションが高すぎたため、ゲージバンドが顕著となり積層シートの表面に凹凸が発生したと考えられる。結果を表3に示す。
[比較例3]
積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)を150N/m(テーパー率:5%)、加熱乾燥時における熱風式乾燥機の温度を100℃とした以外は、実施例1と同様に積層シートロールを作製した。100℃におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(E)は300MPaであった。伸び率(L)が大きくなりすぎたため、巻き出した積層シートの変形によるシワとたるみが発生し、表面に凹凸が発生し、外観不良となった。結果を表3に示す。
Figure 0005573507
[実施例2]
実施例1で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、金型内に配置した。この時、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向かい合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて350℃で10秒間積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に積層シートを追従させた。なお、該金型の形状は切頭角錐形状であった。切頭面のサイズは100mm×100mm、底面のサイズは108mm×117mm、深さは10mmであり、切頭面の端部の曲率半径はそれぞれ3、5、7、10mmであった。金型追従性を目視で評価したところ、各端部とも良好に追従していた。次に、成形温度280〜300℃、金型温度40〜60℃の条件において、ポリカーボネート樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。該成形品の外観に欠陥は見られなかった。次いで、該成形品に、紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)層を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢、意匠性に優れる積層成形品を得た。
[比較例4、5]
比較例2、3で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例2と同様に積層成形品を作製した。表面凹凸が発生した積層シートを使用したため、得られた積層成形品には表面凹凸に起因する欠陥が発生した。
[実施例3]
実施例1で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートの、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、黒、茶、黄の各色の顔料からなるインキを用いて絵柄をグラビア印刷法によって印刷した。これにより印刷層を形成し、成形用積層シートを得た。該積層シートは表面粘着性がないため、印刷適性は良好であった。印刷後の成形用積層シートを目視観察して印刷抜けの有無を評価したところ、印刷抜けは観察されなかった。
[比較例6、7]
比較例2、3で得られた積層シートロールから巻き出された積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例3と同様に成形用積層シートを作製した。該積層シートは表面粘着性がないため、印刷は可能であった。しかしながら、該積層シートには表面凹凸が発生していたため、印刷後の成形用積層シートには表面凹凸に起因する印刷抜けが観察され、印刷適性は低位であった。
[実施例4]
実施例3で得られた成形用積層シートを金型内に配置した。この時、成形用積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向かい合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて300℃で15秒間成形用積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に成形用積層シートを追従させた。成形用積層シートの金型追従性は良好であった。なお、金型は実施例2で用いた金型と同一の金型を用いた。次に、成形温度220〜250℃、金型温度40〜60℃の条件において、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体樹脂を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより成形用積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。成形用積層シートの金型離型性は良好であった。該成形品は印刷抜けがなく、外観良好であった。次いで、該成形品に紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)層を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有し、意匠性に優れる積層成形品を得た。
[比較例8、9]
比較例6、7で得られた成形用積層シートをそれぞれ用いた以外は、実施例4と同様に積層成形品を作製した。該積層成形品は表面硬度、耐磨耗性は高いものの、表面凹凸に起因する印刷抜けが観察され、意匠性に劣る積層成形品であった。
[実施例5]
実施例3で得られた成形用積層シートの印刷層上に、塩素化ポリプロピレン樹脂(塩素化度15%)からなる接着層をグラビア印刷法によって形成した。該成形用積層シートを金型内に配置した。この時、成形用積層シートの保護フィルム(C)を予め剥がした後、積層シートの樹脂組成物(A)層側表面が金型の内壁面に向き合うように配置した。次いで、赤外線ヒーターを用いて300℃で15秒間成形用積層シートを予備加熱した。その後、加熱を行いながら真空吸引することにより金型の形状に成形用積層シートを追従させた。成形用積層シートの金型追従性は良好であった。なお、金型は実施例2で用いた金型と同一の金型を用いた。次に、成形温度200〜240℃、金型温度30〜60℃の条件において、ポリプロピレン系樹脂(タルクを20質量%含有、エチレン−プロピレン系ゴムを10質量%含有)を成形樹脂として用いてインモールド成形を行った。これにより成形用積層シートが成形品表面に密着した成形品を得た。成形用積層シートの金型離型性は良好であった。該成形品は印刷抜けがなく、外観良好であった。次いで、該成形品に紫外線照射装置を用いて約600mJ/cm2の紫外線を照射し、樹脂組成物(A)を硬化した。これにより表面硬度、耐磨耗性が高く、光沢に優れ、印刷絵柄を有し、意匠性に優れる積層成形品を得た。

Claims (11)

  1. 樹脂組成物(A)と溶剤(S)とを含む混合溶液を、アクリル樹脂基材シート(B)上に塗布する工程と、
    アクリル樹脂基材シート(B)を加熱乾燥することで溶剤(S)を揮発させ、アクリル樹脂基材シート(B)上に樹脂組成物(A)層を形成する工程と、
    樹脂組成物(A)層とアクリル樹脂基材シート(B)とを含む積層シートを巻き取る工程と、を含む積層シートロールの製造方法であって、
    下記式(1)より算出される前記加熱乾燥時のアクリル樹脂基材シート(B)の伸び率(L)が0.001%以上、0.5%以下であり、且つ前記積層シートの巻き取り時における積層シートの単位幅あたりのテンション(F2)が60N/m以上、170N/m以下であることを特徴とする方法。
    L=[F1/(E*t*W)]*100 (1)
    (式(1)において、F1:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)にかかるテンション(N)、E:加熱乾燥時におけるアクリル樹脂基材シート(B)の流れ方向の引張弾性率(MPa)、t:アクリル樹脂基材シート(B)の厚み(mm)、W:アクリル樹脂基材シート(B)の幅(mm)を示す。)
  2. 積層シートを巻き取る工程の前に、樹脂組成物(A)層上に保護フィルム(C)を積層する工程を行う請求項1に記載の方法。
  3. 保護フィルム(C)を積層する工程において、積層シートの温度が10℃以上、33℃以下である請求項2に記載の方法。
  4. 樹脂組成物(A)が、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(a−1)と、光重合開始剤(a−2)と、を含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 樹脂組成物(A)が、さらに無機微粒子(a−3)を含有する請求項4に記載の方法。
  6. 無機微粒子(a−3)がコロイダルシリカである請求項5に記載の方法。
  7. 樹脂組成物(A)が、さらに光安定剤(a−4)を含有する請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1から7のいずれか一項に記載の方法により製造される積層シートロール。
  9. 請求項8に記載の積層シートロールから巻き出された積層シートの、アクリル樹脂基材シート(B)側表面に、印刷層及び蒸着層から選ばれる少なくとも1層の加飾層が積層された成形用積層シート。
  10. 加飾層上に、さらに接着層が積層された請求項9に記載の成形用積層シート。
  11. 樹脂組成物(A)層が最表面層となるように、請求項8に記載の積層シートロールから巻き出された積層シート、或いは請求項9又は10に記載の成形用積層シートが積層された積層成形品。
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