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JP5565186B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電力変換装置、特にスイッチング電源等に用いられるダイオード等の半導体スイッチング素子に印加されるサージ電圧を抑制するに好適なスナバ回路を備えた電力変換装置に関する。
従来、入力された直流電圧を半導体スイッチング素子によりスイッチングして交流を生成した後、変圧器によって昇圧または降圧し、これを整流して異なる直流電圧に変換して出力する絶縁型DC−DCコンバータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
図8は、直流から交流を生成する半導体スイッチング素子にMOSFETを用いて構成した絶縁型DC−DCコンバータ(以下、「DC−DCコンバータ」という。)の一例を示した概略構成図である。このDC−DCコンバータは、2つのMOSFETのうち、一方のMOSFET(Q1またはQ3)のソースと、他方のMOSFET(Q2またはQ4)のドレインを接続した直列回路が2組並列に接続されてインバータ2を構成している。
オンオフ制御部3は、インバータ2のMOSFET(Q1,Q4)をそれぞれオンする一方、MOSFET(Q2,Q3)をそれぞれオフする状態(第1の状態)と、このオンとオフを入れ替えた状態(第2の状態)およびすべてのMOSFET(Q1〜Q4)をオフする状態(第3の状態)を作る。そしてオンオフ制御部3は、これら第1〜第3の状態を高速で切り替え、変圧器Tの一次巻線W1に高周波の交流(矩形波)が印加されるように制御する。このように制御することによって、変圧器Tの二次巻線W2には一次巻線W1に与えられた矩形波に応じた電圧(交流)が生じる。この高周波交流の周波数は、変圧器Tの小型化および騒音防止のために、一般に10kHz以上とされることが多い。
変圧器Tの二次巻線W2には、この二次巻線W2に生じた高周波交流を整流するため、電流遮断時間の短いダイオードD1,D2,D3,D4からなる整流回路4が接続されている。この整流回路4の出力は脈流であるため、平滑インダクタLおよび平滑コンデンサCを直列に接続した平滑回路が、整流回路4の出力端子間に接続される。そして、平滑コンデンサCの両端に生じる平滑された直流電圧が負荷5に供給されるようになっている。
オンオフ制御部3は、上述したように第1〜第3の状態を高速で切り替えるとともに、MOSFET(Q1〜Q4)のオン期間とオフ期間の比率を制御することによって、負荷5に印加される直流電圧値を調整する。
なお、第3の状態では、上記MOSFET(Q1〜Q4)のすべてがオフし、変圧器Tの一次巻線W1に印加された電圧が0Vとなる。この第3の状態においても、DC−DCコンバータは、平滑インダクタLに蓄えられた磁気エネルギーを放出し、負荷5に電流を供給し続ける。DC−DCコンバータが第3の状態にある期間を還流期間とする。
ところで、DC−DCコンバータが還流期間から第1の状態に移行すると、ダイオードD2,D3には逆電圧が印加される。このとき、ダイオードD2,D3はごく短時間に逆電流すなわち逆回復電流を流した後、これを遮断する動作を行う。この逆回復電流の供給源は、変圧器Tである。
変圧器Tに流れる逆回復電流の経路には、変圧器Tの漏れインダクタンスLeと、ダイオードD1〜D4の寄生容量Cp1〜Cp4とが存在する。漏れインダクタンスLeと寄生容量Cp2,Cp3とは直列共振回路を形成している。したがって、還流期間から第1の状態に移行するとき、変圧器Tの二次巻線W2に生じた起電力E2によりLC共振が発生する。
このLC共振において、漏れインダクタンスLeの初期電流を0A、寄生容量Cp2,Cp3の初期電圧を0Vとすると、寄生容量Cp2,Cp3に生じるサージ電圧のピーク値は、LC共振回路に印加される電圧(ここでは、起電力E2)の2倍に達することが知られている。このサージ電圧のピーク値は、LC共振回路に流れる初期電流(ここでは、逆回復電流)の存在によってさらに高くなる。なお、還流期間から第2の状態に移行する場合には、ダイオードD1,D4についても同様のサージ電圧が印加される。
このサージ電圧のピーク値が素子の許容する逆電圧を超えると、ダイオードD1〜D4は破損する恐れがある。そこで、このようなサージ電圧からスイッチング素子を保護するためのスナバ回路を備えた電力変換装置が知られている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
例えば、図8に示したDC−DCコンバータは特許文献4に開示されているものであり、そのスナバ回路は、コンデンサCs1とダイオードDs1とが直列に接続された第1直列回路と、ダイオードDs2とツェナーダイオードDzsとが直列に接続された第2直列回路と、ダイオードDs3とインダクタLsとが直列に接続された第3直列回路とで構成されている。
そして、第1直列回路は整流回路4の出力端子間に接続されている。第2直列回路はその一端が第1直列回路のコンデンサCs1とダイオードDs1の直列接続点に接続され、その他端が平滑回路の平滑インダクタLと平滑コンデンサCの直列接続点に接続されている。第3直列回路は第2直列回路に並列に接続されている。
このように構成されたスナバ回路を有するDC−DCコンバータにおいて、まず、還流期間中、図9に示すようにコンデンサCs1→平滑インダクタL→負荷5→ダイオードDs1→コンデンサCs1の経路で電流が流れる。この電流により、コンデンサCs1に蓄えられたエネルギーは負荷5に回生される。したがって、コンデンサCs1は、不要な損失を伴わずに次の充電サイクルに移行する前にほぼ0Vまで放電する。
次に、還流期間から第1の状態に移行すると、スナバ回路に流れる電流は、図10に示すように、最初に変圧器Tの二次巻線W2→ダイオードD1→コンデンサCs1→ダイオードDs3→インダクタLs→平滑コンデンサC→ダイオードD4→変圧器Tの二次巻線W2の経路で流れ始める。このとき、インダクタLsにより、コンデンサCs1を充電する電流のピーク値が抑制される。
次に、第1直列回路のコンデンサCs1とダイオードDs1の直列接続点の電圧が、ツェナーダイオードDzsのツェナー電圧Vzsと平滑コンデンサCの両端電圧、すなわち負荷5に印加されるDC−DCコンバータの出力電圧Eoとの和[Vzs+Eo]を超えると、スナバ回路に流れる電流は、上記経路に加えて、図11に示すように変圧器Tの二次巻線W2→ダイオードD1→コンデンサCs1→ダイオードDs2→ツェナーダイオードDzs→平滑コンデンサC→ダイオードD4→変圧器Tの二次巻線W2の経路でも流れ始める。
このようにダイオードD2,D3が電流を遮断しても漏れインダクタンスLeの電流がスナバ回路に流れ続ける。その結果、ダイオードD2,D3の寄生容量Cp2,Cp3の充電電流が低減され、ダイオードD2,D3に印加される電圧は低くなる。
次に、上記スナバ回路に流れる電流によりコンデンサCs1が充電され、その両端電圧Ecは上昇する。これにより、漏れインダクタンスLeにはDC−DCコンバータの出力電圧EoとコンデンサCs1の両端電圧Ecとを加えた電圧が逆電圧として印加される。その結果、漏れインダクタンスLeに流れていた電流は減少する。
これに伴ってダイオードDs1が導通するとインダクタLsの電流は、図12に示すようにインダクタLs→平滑コンデンサC→ダイオードDs1→ダイオードDs3→インダクタLsの経路で流れるようになる。この電流により、インダクタLsに蓄えられたエネルギーが平滑コンデンサCに移行する。
ところで、還流期間から第1の状態に移行するとき、上述のとおり、変圧器Tの漏れインダクタンスLeとコンデンサCs1との間で、LC共振が生じる。このLC共振によってコンデンサCs1の両端に生じる電圧Ecのピーク値Ecpは、簡単化のためインダクタLsの影響を無視すると、次式で示される。
Ecp=2×{E2−(Eo+Vzs)}
このため、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpは、次式となる。
Erp=2×{E2−(Eo+Vzs)}+(Eo+Vzs)
=2×E2−(Eo+Vzs)
この式が示すように、図8に示すDC−DCコンバータにおいて、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpは、スナバ回路がない場合に印加される電圧[2×E2]よりも低く抑えられる。
特開昭61−106068号公報 特開平9−285126号公報(図3) 特開平11−98836号公報(図8) 特開2009−247132号公報(図6)
しかしながら、上述の従来のスナバ回路では、DC−DCコンバータの運転状態によって、整流回路4に印加される電圧が抑制されない場合がある。具体的には、DC−DCコンバータが起動するとき、オンオフ制御部3はMOSFET(Q1〜Q4)のオン期間をゼロから開始し、徐々にオン期間を長くして、出力電圧Eoを0Vから定格電圧まで立ち上げていくという、いわゆるソフトスタート制御を一般的に行う。また、負荷5が過負荷状態になった場合には、MOSFET(Q1〜Q4)のオン期間をゼロ付近にまで短くして出力電圧Eoを低下させ、出力電流が制限値を超えないようにする制御が行われる。このときにも、出力電圧Eoは略0Vになる場合がある。
このような場合、上述のスナバ回路では、出力電圧Eoが0Vになると、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpは、
Erp=2×E2−Vzs
となり、電圧を抑制する効果が低減するという問題がある。
ここで、ダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値を低い値に抑制するためにツェナー電圧Vzsを高い値に設定することが考えられる。しかし、ツェナー電圧Vzsを高くすると、ツェナーダイオードDzsで生じる損失が増加し、装置効率が低下する。さらに、熱容量の大きなツェナーダイオードDzsを使用する必要があり、装置が大型、高価格になるという問題がある。
本発明は、このような従来の電力変換装置が有していた問題を解決しようとするものであり、出力電圧Eoの値に関係なく、整流回路を構成するダイオードに印加される電圧のピーク値を抑制することができる電力変換装置を実現することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明は、入力電圧を整流して出力する整流回路と、平滑インダクタと平滑コンデンサとが直列に接続され、その両端が前記整流回路の出力端子間に接続される平滑回路と、スナバ回路と、を備える電力変換装置であって、
この電力変換装置のスナバ回路は、少なくとも、
第1コンデンサと第1ダイオードと制御端子を有する電圧制御部とが直列に接続され、その両端が前記整流回路の出力端子間に接続される直列回路と、
前記直列回路の第1コンデンサと第1ダイオードの直列接続点と、前記平滑回路の平滑インダクタと平滑コンデンサの直列接続点との間に接続される第2ダイオードと、
その一端が前記電圧制御部の制御端子に接続され、他の一端が前記平滑インダクタと平滑コンデンサの直列接続点に接続される電圧指令部と、で構成され、
前記電圧指令部は所定の基準電源を備える電力変換装置である。
また、第2の発明は、第1の発明に係る電力変換装置であって、
前記電圧指令部は、前記整流回路と前記平滑コンデンサとの接続点を基準点とし、前記電圧制御部と前記第1ダイオードとの接続点を電圧制御点として、前記電圧制御に生ずべき電圧を指令値として出力し、
前記電圧制御部は、前記電圧指令部が出力する指令値に対して前記電圧制御点の電圧が一致するように、前記電圧制御点の電圧を調節するものである。
また、第3の発明は、第2の発明に係る電力変換装置であって、
前記電圧指令部は、前記平滑コンデンサの電圧から前記基準電源の電圧を差し引いた電圧を、前記電圧制御部に対する指令値とするものである。
また、第4の発明は、第3の発明に係る電力変換装置であって、
前記電圧指令部が備える基準電源は、前記電力変換装置の定格出力電圧と略同じ電圧を基準電圧として発生するものである。
また、第5の発明は、第3の発明に係る電力変換装置であって、
前記電圧指令部が備える基準電源は、前記電力変換装置の定格出力電圧よりも高い電圧を基準電圧として発生するものである。
また、第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれか1の発明に係る電力変換装置であって、
前記電圧制御部は、コンデンサと制御端子を有する半導体スイッチ素子とを並列に接続した回路からなり、
前記電圧指令部は、定電圧素子からなるものである。
本発明により、入力電圧を直流電圧に変換する電力変換装置において、整流回路を構成するダイオードが逆回復電流を遮断したとき、出力電圧Eoの値に関係なく、第1コンデンサの電圧Ecと平滑コンデンサの電圧、すなわち電力変換装置の出力電圧Eoとを加えた電圧が常に基準電源の電圧となるようにしたので、前記整流回路を構成するダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値を効果的に抑制することができる。
本発明に係る電力変換装置の一実施形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図。 図1に示すスナバ回路の具体的な実施形態を示すDC−DCコンバータの概略回路図。 図2に示すDC−DCコンバータにおいて還流期間中にスナバ回路を流れる電流の経路を示す図。 図2に示すDC−DCコンバータにおいてコンデンサCs1の充電電流が流れる経路を示す図。 本発明に係る電力変換装置の他の実施形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図。 本発明に係る電力変換装置のさらに他の実施形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図。 本発明に係る電力変換装置のさらに他の実施形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図。 従来の電力変換装置の一実施形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図。 図8に示すDC−DCコンバータにおいて還流期間にスナバ回路を流れる電流の経路を示す図。 図8に示すDC−DCコンバータにおいてコンデンサCs1の充電初期の電流が流れる経路を示す図。 図8に示すDC−DCコンバータにおいてコンデンサCs1の充電電流が流れる経路を示す図。 図8に示すDC−DCコンバータにおいてインダクタLsが保持するエネルギーを負荷に回生する電流経路を示す図。
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜図7において、従来の電力変換装置の一例として示した図8のDC−DCコンバータと共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
本発明に係る電力変換装置の特徴はスナバ回路にある。その特徴を表す実施の態様の一例として、本発明に係るDC−DCコンバータの概略回路図を図1に示す。
図1に示すDC−DCコンバータのスナバ回路は、コンデンサCs1とダイオードDs1と制御端子を有する電圧制御部6とが直列に接続された直列回路と、ダイオードとDs2、電圧指令部7とからなる。上記構成要素からなるスナバ回路の具体的な接続および機能は以下のとおりである。
まず、前記直列回路は、その両端が整流回路4の出力端子間に接続される。次に、ダイオードDs2は、コンデンサCs1とダイオードDs1の直列接続点と、平滑インダクタLと平滑コンデンサCの直列接続点との間に接続される。さらに、電圧指令部7の一端は、電圧制御部6の制御端子に接続され、少なくとも他の一端が平滑インダクタLと平滑コンデンサCの直列接続点に接続される。ここで、整流回路4と平滑コンデンサとの接続点を基準点Nとする。この基準点Nには、上述のとおり、電圧制御部6の一端も接続される。
ここで、電圧指令部7は、その内部に基準電源を有しており、その基準電圧Vzbは電力変換装置の出力電圧Eoの値に関係なく一定である。そして、電圧指令部7は、電力変換装置の出力電圧Eoからこの基準電圧Vzbを差し引いた電圧[Eo−Vzb]を出力する。電圧指令部7の出力は、基準点Nに対して電圧制御部6がその他端に生ずべき電圧である。
一方、電圧制御部6は、その電圧(基準点Nに対する電圧制御部6の他端の電圧)[−Vs]が、電圧指令部7が出力する指令電圧[Eo−Vzb]と一致するように動作する。したがって、[−Vs=Eo−Vzb]の関係が成り立つ。
次に、電圧指令部7が出力する指令電圧を0V以下の負電圧に設定する。すなわち、電圧指令部7内の基準電圧Vzbを、Vzb≧Eoと設定する。これにより、電圧制御部6の電圧は0V以下の負電圧[−Vs]となる。したがって、整流回路4の出力電圧Erが0Vとなる還流期間において、コンデンサCs1の電圧EcはVsとなる。
一方、還流期間から第1の状態に移行するとき、変圧器Tの二次巻線W2には起電力E2が立ち上がる。このとき、整流回路4の出力電圧Erは、変圧器Tの二次巻線W2に生じた起電力E2である。これに対抗するスナバ回路の電圧[Ec+Eo]は、
Ec+Eo=Vs+Eo=Vzb
となる。
上記から、図1のDC−DCコンバータにおいて、変圧器Tの漏れインダクタンスLeとコンデンサCs1とによるLC共振により、コンデンサCs1の両端に生じる電圧Ecのピーク値Ecpは、次式で示される。
Ecp=2×(E2−Vzb)
このため、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpは、次式となる。
Erp=Ecp+Vzb=2×E2−Vzb
この式が示すように、整流回路4を構成するダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpは、スナバ回路がない場合に印加される電圧[2×E2]よりも、電圧指令部7内の基準電圧Vzbの分だけ低く抑えられる。
また、電圧指令部7内の基準電圧Vzbは出力電圧Eoの値に関係なく一定である。したがって、本発明に係るDC−DCコンバータは、出力電圧Eoの値に関係なく、整流回路4に印加される電圧の抑制効果を、常に発揮することができる。
次に、図2は、電圧制御部6および電圧指令部7を具体的な回路で構成した実施の態様である。この実施の態様におけるスナバ回路の作用を、図2から図4を参照して説明する。
図2に示す実施の態様において、図1で示した電圧制御部6を、コンデンサCs2とトランジスタTrとを並列に接続した回路で構成している。また、電圧指令部7をツェナーダイオードDzbで構成している。図1でした説明に従い、コンデンサCs2の電圧をVsとし、ツェナーダイオードDzbの電圧をVzbとする。図2の他の構成要素については、図1の構成要素と同一である。
ツェナーダイオードDzbの一端はトランジスタTrのベース端子Bに接続されている。したがって、トランジスタTrのベース端子Bの電位[Eo−Vzb]がエミッタ端子Eの電位より高いとき、トランジスタTrは導通する。トランジスタTrの導通により、コンデンサCs2の電荷は、トランジスタTrを介して放電する。このとき、トランジスタTrのベース電流は、平滑コンデンサC→ツェナーダイオードDzb→トランジスタTrのベース端子B→トランジスタTrのエミッタ端子E→コンデンサCs→平滑コンデンサCの経路で流れる。
なお、トランジスタTrを流れる放電電流のピーク値を制限するときは、基準点NとトランジスタTrのエミッタ端子Eとの間に、電流制限のための抵抗を挿入すればよい。
一方、ベース端子Bの電位[Eo−Vzb]がエミッタ端子Eの電位より低いとき、トランジスタTrは非導通となる。トランジスタTrが非道通のときは、コンデンサCs2の電荷は放電しない。
トランジスタTrの上記動作により、トランジスタTrのエミッタ端子Eの電位は、基準点Nに対し、常に[−Vs=Eo−Vzb]に維持される。
図3は、図2に示す実施の態様において、DC−DCコンバータが還流期間にあるとき、スナバ回路に流れる電流の経路を示す図である。還流期間において、スナバ回路の電流はコンデンサCs1→平滑インダクタL→平滑コンデンサC→コンデンサCs2→ダイオードDs1→コンデンサCs1の経路で流れる。この電流によってコンデンサCs2は充電される。しかし、上述のとおり、コンデンサCs2の電圧は、トランジスタTrとツェナーダイオードDzbの作用により、[−Vs=Eo−Vzb]に維持される。
図4は、上記還流期間から第1の状態に移行するとき、スナバ回路に流れる電流の経路を示す図である。変圧器Tの二次巻線W2に起電力E2が立ち上がることにより、変圧器Tの二次巻線W2→ダイオードD1→コンデンサCs1→ダイオードDs2→平滑コンデンサC→ダイオードD4→変圧器Tの二次巻線W2の経路で電流が流れる。
この電流が流れ始めたとき、逆回復動作をしたダイオードD2,D3に逆電圧が印加される。この電圧のピーク値は、図1に示した実施の形態の場合と同様、整流回路4の出力電圧Erのピーク値Erpである。また、その大きさは、DC−DCコンバータの出力電圧Eoに関係なく、[Erp=2×E2−Vzb]である。
ツェナーダイオードDzbの電圧Vzbは、DC−DCコンバータの出力電圧Eoの値に関係なく一定である。したがって、図2に示す実施の形態に係るDC−DCコンバータのスナバ回路は、出力電圧Eoの値に関係なく、常に、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpを抑制する効果を発揮することができる。
次に、図5は、本発明に係る電力変換装置の他の実施の形態であるDC−DCコンバータの構成を示す概略回路図である。図1に示した実施の形態と異なる点は、ダイオードDs2と直列にインダクタLsを備えているところである。インダクタLsは、コンデンサCs1を充電する電流のピーク値を抑制する働きをする。その他の構成要素の機能は、図1に示す構成要素の機能と同じである。
したがって、図5に示す実施の態様においても、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpを、[Erp=2×E2−Vzb]に抑制することができる。また、ピーク値Erpは、DC−DCコンバータの出力電圧Eoの影響を受けない。したがって、図5に示す実施の形態に係るスナバ回路は、常に、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpを抑制する効果を発揮することができる。
また、図2に示した実施の態様と同様、図5で示した電圧制御部6を、コンデンサCs2とトランジスタTrとを並列に接続した回路で構成し、電圧指令部7をツェナーダイオードDzbで構成することができる。
このような実施の態様においても、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpを、[Erp=2×E2−Vzb]とすることができる。また、ピーク値Erpは、DC−DCコンバータの出力電圧Eoの影響を受けない。したがって、このように構成したスナバ回路であっても、常に、整流回路4のダイオードD1〜D4に印加される電圧のピーク値Erpを抑制する効果を発揮することができる。
次に、図6は、本発明に係る電力変換装置の他の実施の形態であるDC−DCコンバータを示す概略回路図である。図6に示すDC−DCコンバータは、図2に示すDC−DCコンバータの構成要素である変圧器Tを二次側にセンタータップを有する変圧器Taに置き換えている。また、ダイオードD1〜D4からなるフルブリッジの整流回路4を、ダイオードD1、D3からなる整流回路4aに置き換えている。
ここで、変圧器Taの二次巻線W21に整流回路4aのダイオードD1が接続され、二次巻線W22に整流回路4aのダイオードD3が接続されている。整流回路4aのダイオードD1とD3の接続点には平滑回路の平滑インダクタL側の一端が接続され、変圧器Taの二次巻線W21とW22の直列接続点(基準点N)に平滑回路の平滑コンデンサCの一端が接続される。また、変圧器Taの二次巻線には漏れインダクタンスLe1、Le2が存在する。
このように構成されたDC−DCコンバータにおいて、コンデンサCs1とダイオードDs1とを直列に接続した回路に、さらにコンデンサCs2とトランジスタを並列接続した回路を直列に接続した直列回路が、平滑回路と並列に、整流回路4aのダイオードD1とD3の接続点と基準点Nとの間に接続される。また、ダイオードDs2が、コンデンサCs1とダイオードDs1の接続点と平滑インダクタLと平滑コンデンサCの接続点との間に接続される。さらに、ツェナーダイオードDzbが、トランジスタTrのベース端子Bと、平滑インダクタLと平滑コンデンサCの接続点との間に接続される。
ところで、変圧器Taの二次巻線W21に起電力E21が立ち上がると、スナバ回路には、変圧器Taの二次巻線W21→整流回路4aのダイオードD1→コンデンサCs1→平滑コンデンサC→変圧器Taの二次巻線W21の経路で電流が流れる。また、変圧器Taの二次巻線W22に起電力E22が立ち上がると、スナバ回路には、変圧器Taの二次巻線W22→整流回路4aのダイオードD3→コンデンサCs1→平滑コンデンサC→変圧器Taの二次巻線W22の経路で電流が流れる。
したがって、図6に示す実施の形態においても、図2に示した実施の形態と同様、本発明に係るスナバ回路を適用することにより整流回路4aのダイオードD1およびD3に印加される電圧のピーク値Erpを、常に[2×E21(E22)−Vzb]に抑制することができる。
なお、上述してきた本発明に係る実施の態様では、コンデンサCs2にトランジスタTrを並列に接続しているが、コンデンサCs2と並列に接続するのはトランジスタである必要はなく、MOSFETやIGBTなど制御端子を有し、この制御端子に入力される信号により導通/非導通の状態を切り換えることができるスイッチ素子であればよい。
また、上述してきた実施の態様では、インバータ2をフルブリッジで記載しているが、インバータ2はハーフブリッジであってもよい。インバータ2をハーフブリッジとする場合には、電源1が2分割される。
図7は、本発明に係る電力変換装置のさらに他の実施の形態であるDC−DCコンバータを示す概略回路図である。図7に示すDC−DCコンバータは、一石式DC−DCコンバータと呼ばれるものである。図2に示すDC−DCコンバータの構成要素であるMOSFET(Q1〜Q4)からなるインバータ2を、MOSFET(Q1)からなるインバータ2bに置き換えている。また、ダイオードD1〜D4からなるフルブリッジの整流回路4をダイオードD1、D3からなる整流回路4bに置き換えている。
ここで、変圧器Tの一次巻線の一端は直流電源1の一端に接続され、その他端はMOSFET(Q1)を介して直流電源1の他端に接続される。整流回路4bはダイオードD1とダイオードD3の直列回路からなり、変圧器Tの二次巻線W2に接続される。変圧器Tの二次巻線W2には漏れインダクタンスLeが存在する。平滑インダクタLと平滑コンデンサCの直列回路からなる平滑回路は、整流回路4bのダイオードD3の両端に接続される。負荷5は、平滑回路の平滑コンデンサCの両端に接続される。
また、コンデンサCs1とダイオードDs1とを直列に接続した回路に、さらにコンデンサCs2とトランジスタを並列接続した回路を直列に接続した直列回路が、平滑回路と並列に、整流回路4bのダイオードD3の両端に接続される。さらに、ダイオードDs2が、コンデンサCs1とダイオードDs1の接続点と平滑インダクタLと平滑コンデンサCの接続点との間に接続される。さらに、ツェナーダイオードDzbが、トランジスタTrのベース端子Bと、平滑インダクタLと平滑コンデンサCの接続点との間に接続される。
このように構成されたDC−DCコンバータにおいて、変圧器Tの二次巻線W2に起電力E2が生じると、コンデンサCs1を充電する電流が、変圧器Tの二次巻線W2→ダイオードD1→コンデンサCs1→平滑コンデンサC→変圧器Tの二次巻線W2の経路で流れる。
したがって、図7に示す実施の形態においても、図2に示した実施の形態と同様、本発明に係るスナバ回路を適用することにより整流回路4bのダイオードD3に印加される電圧のピーク値Erpを[2×E2−Vzb]に抑制することができる。
なお、上述してきた本発明に係る電力変換装置の実施の形態は、正の電圧を出力するDC−DCコンバータに関するものであるが、本発明は負の電圧を出力するDC−DCコンバータ等の電力変換装置にも適用することができる。
さらに、本発明に係る電力変換装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、漏れインダクタンスに起因してダイオード等の半導体素子に印加されるサージ電圧を抑制する装置に適用することができる。
1・・・直流電源、2,2b・・・インバータ、3・・・オンオフ制御部、4,4a,4b・・・整流回路、5・・・負荷、6・・・電圧制御部、7・・・電圧指令部、C・・・平滑コンデンサ、Cp1〜Cp4・・・寄生容量、Cs1,Cs2・・・コンデンサ、D1〜D4・・・ダイオード、Ds1,Ds2・・・ダイオード、Dzb,Dzs・・・ツェナーダイオード、L・・・平滑インダクタ、Le・・・漏れインダクタンス、Ls・・・インダクタ、Q1〜Q4・・・MOSFET、T,Ta・・・変圧器、Tr・・・トランジスタ

Claims (6)

  1. 入力電圧を整流して出力する整流回路と、
    平滑インダクタと平滑コンデンサとが直列に接続され、その両端が前記整流回路の出力端子間に接続される平滑回路と、
    スナバ回路と、
    を備える電力変換装置であって、
    前記スナバ回路は、少なくとも
    第1コンデンサと第1ダイオードと制御端子を有する電圧制御部とが直列に接続され、その両端が前記整流回路の出力端子間に接続される直列回路と、
    前記直列回路の第1コンデンサと第1ダイオードの直列接続点と、前記平滑回路の平滑インダクタと平滑コンデンサの直列接続点との間に接続される第2ダイオードと、
    その一端が前記電圧制御部の制御端子に接続され、他の一端が前記平滑インダクタと平滑コンデンサの直列接続点に接続される電圧指令部と、
    で構成され、
    前記電圧指令部は基準電源を備えていることを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記電圧指令部は、前記整流回路と前記平滑コンデンサとの接続点を基準点とし、前記電圧制御部と前記第1ダイオードとの接続点を電圧制御点として、前記電圧制御に生ずべき電圧を指令値として出力し、
    前記電圧制御部は、前記電圧指令部が出力する指令値に対して前記電圧制御点の電圧が一致するように、前記電圧制御点の電圧を調節する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記電圧指令部は、前記平滑コンデンサの電圧から前記基準電源の電圧を差し引いた電圧を前記電制御部に対する指令値とすることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記電圧指令部が備える基準電源は、前記電力変換装置の定格出力電圧と略同じ電圧を基準電圧として発生することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
  5. 前記電圧指令部が備える基準電源は、前記電力変換装置の定格出力電圧よりも高い電圧を基準電圧として発生することを特徴とする請求項3に記載の電力変換装置。
  6. 前記電圧制御部は、コンデンサと制御端子を有する半導体スイッチ素子とを並列に接続した回路からなり、
    前記電圧指令部は、定電圧素子からなる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
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