〔第1の実施形態〕
以下、本発明の好ましい第1の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明に係るインクジェット記録装置は、主に不図示のコンピュータ(外部情報機器)と接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録媒体に画像や文書を記録するものである。また、デジタルカメラ等の外部機器が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録媒体に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体を装填して、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録媒体に記録することも可能である。なお、インクジェット記録装置を多機能装置として実施する場合には、複合機のような小型のものであっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えたものであってもよい。
以下、図1から図9を参照してインクジェット記録装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合機1の外観構成を示すものである。複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。該複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係るインクジェット記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明を実施してもよい。また、複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作する操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。
図2は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。図2において、載置台としての給紙カセット20は、A3サイズ以下の各種サイズの記録媒体としての用紙Pを収容可能である。用紙Pは、給紙カセット20からプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
図3は、給紙カセット20の平面図である。給紙カセット20には、用紙Pの端を揃えるための、搬送方向と垂直な方向に可動な用紙幅ガイド11と、搬送方向と平行な方向に可動な用紙後端ガイド12を備えており、用紙後端ガイド12には、ペーパセンサ13が設けられている。用紙幅ガイド11および用紙後端ガイド12は、用紙Pの形状に応じて移動することができる。このとき、用紙後端ガイド12に設けられたペーパセンサ13は、用紙Pの搬送方向と平行な方向の寸法を検知する。
図2に示すように、給紙カセット20の上側には、給紙カセット20に載置された用紙Pを1枚ずつ分離して用紙搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ71(図10参照)の駆動が伝達されて回転する。
給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として配設されており、給紙トレイ20に接離可能に上下動する。給紙アーム26は、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動され、図2に示すように、給紙トレイ20の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の用紙Pの表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と用紙Pとの間の摩擦力で最上位置の用紙Pが分離傾斜板22へ送り出される。用紙Pは、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、プリンタ部2の背面側の用紙搬送路23は、外側ガイド面がプリンタ部2のフレームと一体に形成され、内側ガイド面がガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、搬送手段としての複数の搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。回転自在な各搬送コロ29により、用紙搬送路23が曲がっている箇所において、ガイド面に接触する用紙Pが円滑に搬送される。
図2に示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。インクジェット記録ヘッド39は、プリンタ部2内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジ40(図4参照)からインクチューブ41を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するものである。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39からインク滴が吐出されることにより、プラテン42上を搬送される用紙Pに画像記録が行われる。
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、用紙Pが通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいものであり、用紙Pの両端は常にプラテン42の上を通過することとなる。
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。インクカートリッジ40は、図4に示すように、プリンタ部2の正面側であって左側方(図4の右側)の筐体内に設けられたカートリッジ装着部6に装着される。図4に示すように、カートリッジ装着部6は、装置内において、インクジェット記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38と別途に配置されており、インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部6に装着されたインクカートリッジ40からインクジェット記録ヘッド39にインクが供給される。
図5は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。インクジェット記録ヘッド39は、その下面にノズル口53が、C、M、Y、Bkの各色インク毎に用紙Pの搬送方向に列設されている。また、各ノズル口53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてノズル口53の列数を増減することも可能である。
また、図5に示すように、インクジェット記録ヘッド38の下面には、メディアセンサ31が搭載されている。メディアセンサ31は、発光ダイオードからなる発光部32と、光学式センサからなる受光部33とを備えている。メディアセンサ31の発光部32は、プラテン42へ向かって光を照射し、その光の反射光を受光部33が受光するように構成されている。
プラテン42の上面の色は、例えば黒色のように用紙Pと反射率が異なる色で構成されており、用紙Pが存在しない場合には、反射率の低いプラテン42からの反射光を受光部33が受光するのでメディアセンサ31の検出値(AD値)は低い値となる。一方、用紙Pが存在する場合には、反射率の高い用紙Pからの反射光を受光部33が受光するのでメディアセンサ31の検出値(AD値)は高い値となる。したがって、メディアセンサ31が受光する反射光量の差により用紙Pの有無を検知することができる。
このようなメディアセンサ31が、用紙Pの搬送方向上流側においてインクジェット記録ヘッド39に搭載されて、キャリッジ38により走査方向へ往復移動するようになっている。メディアセンサ31がインクジェット記録ヘッド39に搭載されることにより、インクジェット記録ヘッド39を走査するためのキャリッジ38と別途に、メディアセンサ31を走査するためのキャリッジを設ける必要がないので、装置を小型化できるという利点がある。また、メディアセンサ31をインクジェット記録ヘッド39の搬送方向上流側に配置することにより、用紙Pに画像記録を行う前に、メディアセンサ31により用紙Pの左右端位置を検出することができる。
図4に示すように、インクジェット記録ヘッド39の画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル口53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル口53に接離させるための移動機構とからなる。なお、図4においては、ポンプ機構及び移動機構は省略されている。
インクジェット記録ヘッド39の気泡等の吸引除去を行う際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動され、その状態でキャップ52が上方へ移動してインクジェット記録ヘッド39の下面のノズル口53(図5参照)を密閉するように密着し、キャップ52と連結されたポンプによりインクジェット記録ヘッド39のノズル口53等からインクが吸引される。なお、吸引された不良インクは、廃インクトレイ84に貯められる。
図4に示すように、用紙搬送路23の上側において用紙Pの搬送方向(図4の上下方向)に所定距離を隔てて、一対のガイドフレーム43,44が用紙Pの搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44を跨ぐようにして用紙Pの搬送方向と直交する方向に往復動摺動可能に載置されている。用紙Pの搬送方向の上流側に配設されたガイドフレーム43は、用紙搬送路23の幅方向の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものであり、ガイドフレーム43の上面が、キャリッジ38の上流側の端部を摺動自在に担持している。
用紙Pの搬送方向の下流側に配設されたガイドフレーム44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドフレーム43とほぼ同じ長さの平板状のものであり、キャリッジ38の下流側の端部を支持する縁部45が、上方へ向かって略直角に曲折されている。キャリッジ38は、ガイドフレーム44の上面に摺動自在に担持されており、且つ、縁部45を不図示のローラ等により狭持している。したがって、キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44上に摺動自在に担持され、ガイドフレーム44の縁部45を基準として、用紙Pの搬送方向と直交する方向に往復動する。なお、キャリッジ38がガイドフレーム43,44の上面と接触する部位には、摩擦を低減するための摺動部材が適宜設けられる。
ガイドフレーム44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図10参照)から駆動力が入力され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
キャリッジ38は、タイミングベルト49に固着されており、タイミングベルト49の周運動により、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドフレーム43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、インクジェット記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動可能となっている。また、縁部45に沿ってリニアエンコーダ77(図10参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。リニアエンコーダ77は、エンコーダストリップ50をフォトインタラプタにより検出するものであり、このリニアエンコーダ77の検出信号に基づいて、キャリッジ38の往復動が制御される。
以下、本発明の第1のインクジェット記録ヘッド39と用紙Pとの間隔(ギャップ)調整機構について説明する。図6は、摺動部材86,コイルバネ87,ギャップ調整部材88の構成を示す分解斜視図である。キャリッジ38は、インクジェット記録ヘッド39と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ38を所定高さに支持する摺動部材86と、摺動部材86を上方へ弾性付勢するコイルバネ87と、キャリッジ38と摺動部材86との間に介設されたギャップ調整部材88とを具備する。摺動部材86、コイルバネ87、ギャップ調整部材88は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ38の記録用紙搬送方向両側にそれぞれ組み付けられている。
図6に示すように、摺動部材86は、ガイドフレーム43,44に摺接する摺接板89と、摺接板89から延出された足部90とを有する。摺接板89は短手方向の長さがギャップ調整部材88の短手方向の長さと略同一の矩形の平板であり、その底面がガイドフレーム43,44に接触しながら摺動される。摺接板89の上面には、長手方向の縁部に沿って一対の突条91が形成されており、一対の突条91がギャップ調整部材88の底面に均等に当接することにより、摺接板89の底面がガイドフレーム43,44の上面と平行に位置決めされる。
足部90は、摺接板89の上面の略中央から該上面と略直交する方向へ延出されている。足部90は、摺接板89の長手方向に延びる平板形状であり、その平板形状の厚み方向に貫通する案内溝92が、足部90の延出方向に形成され、足部90の延出端(図6の上側)に開口している。この案内溝92に、キャリッジ38の支持リブ(不図示)が嵌挿され、摺動部材86が案内溝92に沿って移動可能に支持される。足部90の延出端の両側には、摺接板89の長手方向の外側へ向かって突出する係止部93が形成されている。係止部93は、図6に示すように、摺接板89を留め板94に係止させるためのものである。留め板94には、足部90を挿入するための貫通孔95が穿設されている。貫通孔95の幅は、一対の係止部93の外縁の間より狭い。一対の係止部93は、案内溝92の溝幅を狭めるように内側へ押圧されることにより弾性変形されて、留め板94の貫通孔95を挿通され、押圧が解除されると、弾性復帰して貫通孔95の周縁より外側へ突出する。この一対の係止部93により、足部90が貫通孔95から抜け出ないように、摺接板89が留め板94に係止される。
図6に示すように、ギャップ調整部材88は、細長棒状の平板であり、その長手方向に隔てて一対の調整部位99が形成されている。各調整部位99は、その肉厚(図6の上下方向)がギャップ調整部材88のスライド方向に3段階に変化されている。詳細には、最も薄肉の薄肉部100と、真ん中の中肉部101と、最も厚肉の厚肉部102とが、一方向に肉厚が段階的に変化するように隣接して形成されている。薄肉部100,中肉部101,厚肉部102の各上面は水平面であり、各上面の長手方向の長さは、摺動部材86の足部90の長手方向の長さより若干長くなっている。また、薄肉部100,中肉部101,厚肉部102の各上面の境界には、厚み変化を緩やかにするための傾斜面がそれぞれ形成されている。
各調整部位99には、薄肉部100,中肉部101,厚肉部102に渡って厚み方向に貫通する長孔103が、ギャップ調整部材88の短手方向の略中央に形成されている。長孔103の短手方向の幅(図6の紙面垂直方向)は、摺動部材86の足部90の厚みより若干広く、この長孔103に足部90が貫通される。長孔103に貫通された足部90の延出端は、キャリッジ38の貫通孔97に挿通される。また、足部90の案内溝92には、キャリッジ38の支持リブが嵌入される。そして、図6に示すように、足部90の係止部93が留め板94に係止される。
留め板94と支持部材96との間には、コイルバネ87が介設されており、コイルバネ87により、留め板94には上方向の弾性付勢力が付与される。この弾性付勢力が、留め板94を介して摺動部材86に作用し、摺動部材86は、最も上側に位置するように弾性付勢される。また、キャリッジ38の支持リブと摺動部材86の摺接板89との間には、ギャップ調整部材88が介設されているので、ギャップ調整部材88の調整部位99の肉厚分だけ、摺動部材86が弾性付勢力に反して下側へ移動される。調整部位99には、長孔103が形成されているので、ギャップ調整部材88は、摺動部材86の足部90を肉厚方向に貫通させた状態でスライド移動可能である。ギャップ調整部材88がスライド移動することにより、キャリッジ38の支持リブと摺接板89との間に位置する調整部位99の肉厚が変化され、その肉厚変化により、摺動部材86の上下方向の位置が変化される。
用紙Pの搬送方向上流側及び下流側の各ギャップ調整部材88が、各摺動部材86を所定の高さに保持する位置は連係されており、キャリッジ38のスライド移動により、各ギャップ調整部材88のスライド方向両端が当接されて変動するスライド位置は、各摺動部材86が同じ高さに保持するものとなっている。したがって、キャリッジ38は、常にガイドフレーム43,44の上面に対して平行に維持され、キャリッジ38に搭載されたインクジェット記録ヘッド39を水平に維持した状態で、キャリッジ38が上下動される。これにより、インクジェット記録ヘッド39とプラテン42上の用紙Pとのギャップが、画像記録領域で水平に維持されるので、精度のよい画像記録が実現される。なお、摺動部材86の数は適宜変更することが可能である。
このように本実施形態に係るプリンタ部2によれば、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38をガイドフレーム43,44上の所定高さに支持する摺動部材86の摺接板89とキャリッジ38との間にギャップ調整部材88を介在させ、ギャップ調整部材88をスライド移動させることにより、摺動部材86が支持するキャリッジ38の高さを変化させることとしたので、インクジェット記録ヘッド39と用紙Pとのギャップを調整することができる。
以下、本発明の第2のギャップ調整機構について説明する。第2のギャップ調整機構に係るプリンタ部は、前述のプリンタ部2とキャリッジの構成が異なる他は、同様の構成である。従って、第2のギャップ調整機構については、構成の異なるキャリッジ110についてのみ説明する。なお、以下の説明において、前述のプリンタ部2と同じ符号のものは同一の部材である。
図7は、キャリッジ110の下面の構成を示す部分底面図である。なお、回転軸112及びスライダ113は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ本体111の用紙搬送方向の上流側及び下流側の両側にそれぞれ組み付けられているが、これらは同様の構成なので、図7では、キャリッジ110の用紙搬送方向上流側が省略されている。図8は、回転軸112及びスライダ113の外観構成を示す斜視図である。図9は、回転軸112及びスライダ113の側面図である。
図7に示すように、キャリッジ110は、インクジェット記録ヘッド39を搭載するキャリッジ本体111と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ本体111を所定高さに支持する回転軸112と、回転軸112を回転させるためのスライダ113とを具備する。
図7に示すように、キャリッジ本体111に支持された回転軸112は、その摺接部材114,115,116のいずれか1種を、キャリッジ本体111の鉛直下方に突出させるように支持されている。キャリッジ本体111の用紙搬送方向上流側及び下流側において、鉛直下方にそれぞれ突出されたいずれか1種の摺接部材114,115,116により、キャリッジ本体111は、ガイドフレーム43,44上に水平に支持され、キャリッジ110は、摺接部材114,115,116をガイドフレーム43,44に摺接させて、前述したように往復動される。
図9に示すように、3種類の摺接部材114,115,116は、回転軸112の径方向外側への突出幅が異なるものであり、摺接部材114,115,116の順に突出幅が大きくなっている。この3種類の摺接部材114,115,116が、回転軸112の両端において、順次突出幅が変化するように周方向に併設されている。また、同じ種類、すなわち同じ突出幅の摺接部材114,115,116が、回転軸112の両端で周方向の位置が合致するように配置されている。
図8に示すように、回転軸112の軸方向略中央にはスライダ113が外嵌されている。スライダ113は、回転軸112の外周面に沿って軸方向に摺動可能な筒状の部材である。スライダ113の筒状の内周面には、螺旋形状の一対の係合溝117が凹設されている。回転軸112の軸方向略中央には、一対の係合凸部(不図示)が外周面から径方向外側へ突設されている。この係合凸部が係合溝117に係入されて、回転軸112とスライダ113とが係合されている。スライダ113が回転軸112の軸方向にスライドすると、係合溝117に沿って係合凸部が移動し、その結果、回転軸112が回転する。つまり、スライダ113のスライドが係合溝117及び係合凸部により、回転軸112の回転は伝達される。
図8に示すように、スライダ113の外周面には、径方向外側へ突出するL字状の突片119が設けられている。図7に示すように、回転軸112及びスライダ113がキャリッジ本体111に組み付けられた状態で、突片119は、キャリッジ本体111の下面から突出されている。キャリッジ110がガイドフレーム43,44上の所定位置に摺動されると、この突片119が、ガイドフレーム43,44の一部を切り欠いて形成された当接部位120に当接し、更にキャリッジ110が摺動されることにより、スライダ113が回転軸112の軸方向にスライドされる。
このように構成されたキャリッジ110を、制御部64(図10参照)は、スライダ113を当接部位120に当接させて回転軸112の回転位置を変化させるべく、キャリッジ110の往復動を制御する。図9に示すように、回転軸112の軸中心から径方向外側の端面までの距離R1が最も短い摺接部材114が、ガイドフレーム43,44の上面121に摺接することにより、キャリッジ本体111が3段階のうち最も低い高さに支持される。これにより、インクジェット記録ヘッド39と被記録媒体とのギャップが最も狭くなり、高解像度の画像記録に適したものとなる。
このように、第2のギャップ調整機構によれば、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ本体111をガイドフレーム42,43上の所定高さに支持する摺接部材114,115,116を、径方向外側への突出幅が異なる複数のものとして回転軸112の周方向に並設し、スライダ113のスライドにより回動軸112を回転することにより、突出幅が異なる複数の摺接部材114,115,116のいずれかが選択されてキャリッジ本体111の高さが変化されることとしたので、インクジェット記録ヘッド39と用紙Pとのギャップを調整することができる。
図10は、プリンタ部2の制御部64の構成を示すブロック図である。制御部64は、図に示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read OnliMemory)66、RAM(Random AccsessMemory)67を主とするマイクロコンピュータとして
構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、プリンタ部2の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51へ伝達される。
また、ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、上記キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを用紙Pに対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。
ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリエンコーダ76、キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ77が接続されている。また、ASIC70には、スキャナ部3や、プリンタ部2の操作指示を行う操作パネル4、キャリッジ38に搭載された用紙Pの横寸法を検知するメディアセンサ31、給紙カセットの用紙後端ガイドに設置された用紙Pの縦寸法を検知するペーパセンサ13が接続されている。
次に、上述した構成を備えるプリンタ部2の印刷処理について説明する。図11は、プリンタ部2の印刷処理を示すフローチャートである。この印刷処理は、初期設定においてインクジェット記録ヘッド39と用紙Pとのギャップを表す変数Gを初期値に設定する(ステップ(以下Sと記す)31)。初期設定では、ギャップが2.0mmとなるように変数Gが設定されている。なお、変数Iおよび変数Tについては後述する。続いて、印刷データの有無を判断する(S32)。印刷データがない場合は(S32:No)、繰り返し印刷データの有無を判断し、印刷データがある場合には(S32:Yes)、印刷を開始する(S35)。続いて、印刷を終了するか否かを判断し(S36)、終了しなければ(S36:No)本処理における印刷データの有無の判断まで戻り、繰り返し処理を続ける。一方、印刷が終了するならば(S36:Yes)本処理を終了する。
ここで、ギャップ調整の動作について、第1のギャップ調整機構を用いて詳細に説明する。図4に示すように、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38は、摺動部材86により、ガイドフレーム43,44上の所定高さに支持されている。第1のギャップ調整機構では、前述したように、ギャップ調整部材88の調整部位99の肉厚により、キャリッジ38の高さが3段階に変化される。
図6に示すように、第1のギャップ調整機構では、通常の状態で、キャリッジ38の高さが3段階の真ん中の高さに設定されているとする。この3段階の真ん中の高さは、ギャップ調整部材88の調整部位99の中肉部101が、キャリッジ38の支持リブ(不図示)と摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態である。なお、真ん中の高さに設定されているときのギャップは2.0mmである。
後述するS4において、変数Gが変更された場合、制御部64は、ギャップを広くするために、キャリッジ38を往復動させて、ギャップ調整部材88のスライド方向右端をガイドフレーム43,44の右端に形成された当接部位106(図4参照)に当接させる。ギャップ調整部材88の一方の端部(図4の右側)が当接部位106に当接した状態で、更にキャリッジ38が移動されることにより、ギャップ調整部材88の一方の端部がキャリッジ38内に没入するように、そのスライド位置が変化する。これにより、ギャップ調整部材88の調整部位99の厚肉部102が、キャリッジ38の支持リブと摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態となる。この状態で、キャリッジ38が摺動部材86により3段階の最も高い高さに維持される。このときギャップは2.8mmである。
また、高解像度の画像を印刷する場合には、ギャップを通常よりも小さくすることもできる。この場合、制御部64は、キャリッジ38を廃インクトレイ84が設けられた側(図4の左側)に移動させるべく、CRモータ73を所定方向へ回転駆動させる。ガイドフレーム43,44上を廃インクトレイ84側へ摺動したキャリッジ38が、ガイドフレーム43,44の端部へ移動する際に、キャリッジ38から外側へ突出していたギャップ調整部材88の他方の端部(図4の左側)が、当接部位107に当接する。ギャップ調整部材88の他方の端部が当接部位107に当接した状態で、更にキャリッジ38が移動されることにより、ギャップ調整部材88がキャリッジ本体85に対して図4の左側へスライドし、ギャップ調整部材88の他方の端部がキャリッジ38内に没入するように、そのスライド位置が変化する。これにより、ギャップ調整部材88の調整部位99の薄肉部100が、キャリッジ38の支持リブと摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態となる。このときのギャップは1.6mmである。
図11に示した印刷処理中に、用紙Pが搬送方向に対して横向きであると検知された場合、図12に示す用紙横置き処理1が行われる。図12は用紙横置き処理1のフローチャートである。以下に、用紙Pの載置方向を検知する動作と、用紙横置き処理について順に説明する。
まず、用紙Pの載置方向を検知する動作を説明する。表1は、用紙Pの縦寸法と横寸法に対応する用紙サイズおよび載置方向を示す表である。図3に示したペーパセンサ13によって用紙Pの搬送方向の寸法(縦寸法)が検知され、図5に示したメディアセンサ31によって用紙Pの搬送方向に垂直な方向の寸法(横寸法)が検知される。その結果、用紙Pの横寸法が用紙Pの縦寸法よりも大きい場合に、用紙Pの載置方向が搬送方向に対して横向きであると検知される。また、用紙Pの縦横寸法が表1に示すような、定型サイズであった場合には、用紙サイズおよび用紙Pの載置方向を検知する。
例えば、縦の寸法が210mm、横の寸法が297mmであると検知された場合には、表1に示すようにA4横向きであると検知される。このように、用紙Pの載置方向は、ぺーパセンサ13およびメディアセンサ31によって用紙Pの縦横寸法を検知した結果、決定される。このように、ぺーパセンサ13およびメディアセンサ31は、用紙Pの載置方向を検知する検知手段である。
続いて、図12に示す用紙横置き処理1について説明する。前述したようにぺーパセンサ13およびメディアセンサ31によって用紙Pの載置方向を検知した結果、用紙横置き処理1は、用紙Pが横向きであるか否かを判断する(S2)。用紙Pが横向きであると判断した場合は、ギャップが2.8mmとなるように、変数Gを変更し(S4)、用紙Pが横向きでないと判断した場合は、ギャップが2.0mmとなるように、変数Gを初期値に戻す(S3)。以上で用紙横置き処理1を終了する。
この用紙横置き処理1は、用紙Pの載置方向が横向きであると検知されたときに、用紙Pの載置方向が縦向きであると検知されたときよりも、前記ギャップを広くさせる。従って、用紙Pが搬送方向に水平に変形した場合(図15(b)参照)であって、搬送ローラの押力によって軽減が困難であっても、用紙Pとインクジェット記録ヘッド39が接触することはなく、用紙Pを円滑に搬送し、かつ、用紙Pの記録面の汚れを防止することができる。
[第2の実施形態]
以下、本発明の好ましい第2の実施形態について、添付図面を参照して説明する。第2の実施形態に係るプリンタ部は、用紙Pの載置方向に応じてインクジェット記録ヘッド39から吐出されるインクの量を変化させるものであるから、第1の実施形態のプリンタ部に備えられているギャップ調整機構は備えていなくてもよい。また、以下の説明において、前述のプリンタ部2と同じ符号のものは同一の部材である。さらに、用紙Pの載置方向を検知する方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
第2の実施形態に係るプリンタ部の印刷処理について、図11および図13を参照して説明する。図13は、用紙横置き処理2のフローチャートである。用紙横置き処理2は、用紙Pの載置方向が搬送方向に対して横向きであると検知された場合において、インクジェット記録ヘッド39から吐出されるインクの量を減らすような処理を行う。
図11に示した印刷処理は、初期設定においてインクジェット記録ヘッド39からのインク吐出量を表す変数Iを初期値に設定する(S31)。初期設定では、インク吐出量が10plとなるように変数Iが設定されている。続いて、印刷データの有無を判断する(S32)。印刷データがない場合は(S32:No)、繰り返し印刷データの有無を判断し、印刷データがある場合には(S32:Yes)、印刷を開始する(S35)。続いて、印刷を終了するか否かを判断し(S36)、終了しなければ(S36:No)本処理における印刷データの有無の判断まで戻り、繰り返し処理を続ける。一方、印刷が終了するならば(S36:Yes)本処理を終了する。なお、制御部64(図10参照)では、駆動回路75が、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御して、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングで所定量のインクを用紙Pに対して選択的に吐出させる。
続いて、図13に示す用紙横置き処理2について説明する。用紙横置き処理2は、用紙Pが横向きであるか否かを判断する(S12)。用紙Pが横向きであると判断した場合は(S12:Yes)、インク吐出量を初期設定の半分にするように、インク吐出量を表す変数Iを変更し(S14)、用紙Pが横向きでないと判断した場合は(S12:No)、インク吐出量10plにするように変数Iを初期値に戻す(S13)。以上で用紙横置き処理2を終了する。
この用紙横置き処理2は、用紙Pの載置方向が横向きであると検知されたときに、用紙Pの載置方向が縦向きであると検知されたときよりも、前記インク吐出量を少なくする。従って、用紙Pが必要以上量のインクを吸収することはなく、用紙Pがインクを吸収することによって生じる用紙の変形を最小限に抑えて、用紙Pを円滑に搬送することができる。
[第3の実施形態]
以下、本発明の好ましい第3の実施形態について、添付図面を参照して説明する。第3の実施形態に係るプリンタ部は、用紙Pの載置方向に応じて、キャリッジ38,110の往復動走査の往走査と復走査の間の待機時間を変更するものであるから、前述のプリンタ部に備えられているギャップ調整機構は備えていなくてもよい。また、以下の説明において、前述のプリンタ部2と同じ符号のものは同一の部材である。さらに、用紙Pの載置方向を検知する方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
第3の実施形態に係るプリンタ部の印刷処理について、図11および図14を参照して説明する。図14は、用紙横置き処理3のフローチャートである。用紙横置き処理3は、用紙Pの載置方向が搬送方向に対して横向きであると検知された場合において、キャリッジ38,110の往復動走査の往走査と復走査の間の待機時間を長くするような処理を行う。
図11に示した印刷処理は、初期設定においてキャリッジ38,110の往復動走査の往走査と復走査の間の待機時間を表す変数Tを初期値に設定する(S31)。初期設定では、該待機時間が0secとなるように変数Iが設定されている。続いて、印刷データの有無を判断する(S32)。印刷データがない場合は(S32:No)、繰り返し印刷データの有無を判断し、印刷データがある場合には(S32:Yes)、印刷を開始する(S35)。続いて、印刷を終了するか否かを判断し(S36)、終了しなければ(S36:No)本処理における印刷データの有無の判断まで戻り、繰り返し処理を続ける。一方、印刷が終了するならば(S36:Yes)本処理を終了する。なお、制御部64(図10参照)では、駆動回路74が、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が所定のタイミングで回転し、該CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38の往走査と復走査との間に所定時間だけ待機させる。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
続いて、図13に示す用紙横置き処理3について説明する。用紙横置き処理3は、用紙Pが横向きであるか否かを判断する(S22)。用紙Pが横向きであると判断した場合は(S22:Yes)、キャリッジ38,110の往走査と複走査の間の待機時間を0.5secとなるように、キャリッジ38の該待機時間を表す変数Tを変更し(S24)、用紙Pが横向きでないと判断した場合は(S22:No)、変数Tを初期値に戻す(S23)。以上で用紙横置き処理3を終了する。
この用紙横置き処理3は、用紙Pの載置方向が横向きであると検知されたときに、用紙Pの載置方向が縦向きであると検知されたときよりも、該待機時間を少なくする。従って、用紙Pは吸収したインクを十分に定着させることができ、用紙の変形を最小限に抑えて、記録媒体を円滑に搬送し、かつ、用紙Pの記録面の汚れを防止することができる。
なお、S2,S12,S22は、用紙の載置方向を指示するための指示手段として機能し、S3,S4,S13.S14,S23,S24は、変更手段として機能する。
以上実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上述した実施例ではペーパセンサ13とメディアセンサ31によって用紙Pが横向きであると検知したが、用紙Pの載置方向を指示する手段としては、この方法に限られず、ユーザーが直接指示できるように操作パネル4およびプリンタ部2に外接されたコンピュータを用いてもよい。この場合、操作パネル4およびコンピュータは、用紙Pの載置方向を指示するための指示手段として機能する。また、ユーザーの指示が間違っていたとしても、ペーパセンサ13とメディアセンサ31によって用紙Pの載置方向を正しく検知し、処理が行えるものとする。さらに、上述した実施例では、用紙Pの載置方向が、搬送方向に対して横向きであることを検知した結果、用紙横置き処理1ないし3を実行しているが、検知された用紙の載置方向が横向きの場合に限らず、用紙の載置方向、例えば、用紙の繊維方向に応じて適切な処理を実行することができる。