以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合機1(インクジェット記録装置)の外観構成を示すものである。また、図2は、複合機1の内部構成を示す縦断面図である。本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファ
クシミリ機能を有する。該複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係るインクジェット記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明を実施してもよい。
また、本発明に係るインクジェット記録装置を多機能装置として実施する場合には、本実施形態に示す複合機1のような小型のものであっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えたものであってもよい。また、複合機1は、主に不図示のコンピュータ(外部情報機器)と接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録するものである。なお、複合機1は、デジタルカメラ等の外部機器が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体を装填して、該記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1に示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2である。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口2aの内部に上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵するためのものであり、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能である。また、給紙トレイ20は、図2に示すように、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出すことによりトレイ面が拡大される。この場合には、給紙トレイ20はリーガルサイズの記録用紙をも貯蔵できる。給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31は画像読取りを行う原稿を載置するためのものである。プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に走査可能に設けられている。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機1は、操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。また、複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データを読み出して該画像データに関する情報を液晶表示部に表示させ、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
以下、図2から図6を参照して複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図2に示すように、複合機1の底側に設けられた給紙トレイ20の奥側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板22が配設されている。また、用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を通過して排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して用紙搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ71(図7参照)の駆動が伝達されて回転する。
給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として配設されており、給紙トレイ20に接離可能に上下動する。給紙アーム26は、図2に示すように、自重により又はバネ等に付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動されており、図3に示すように、給紙トレイ20の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23は、外側ガイド面が複合機1のフレームと一体に形成され、内側ガイド面がガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、各搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、用紙搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。回転自在な各搬送コロ29により、用紙搬送路23が曲がっている箇所において、ガイド面に接触する記録用紙が円滑に搬送される。
図3に示すように、用紙搬送路23には、画像記録ユニット24が設けられている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。キャリッジ38の詳細な構造については後述される。インクジェット記録ヘッド39は、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクカートリッジ40(図4参照)からインクチューブ41を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するものである。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39からインク滴が吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図である。図4に示すように、用紙搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向(図4の上下方向)に所定距離を隔てて、一対のガイドフレーム43,44が記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動摺動可能に載置されている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドフレーム43は、用紙搬送路23の幅方向の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものであり、ガイドフレーム43の上面が、キャリッジ38の上流側の端部を摺動自在に担持している。
記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドフレーム44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドフレーム43とほぼ同じ長さの平板状のものであり、キャリッジ38の下流側の端部を支持する縁部45が、上方へ向かって略直角に曲折されている。キャリッジ38は、ガイドフレーム44の上面に摺動自在に担持されており、且つ、縁部45を不図示のローラ等により狭持している。したがって、キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44上に摺動自在に担持され、ガイドフレーム44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。なお、キャリッジ38がガイドフレーム43,44の上面と接触する部位には、摩擦を低減するための摺動部材が適宜設けられる。
ガイドフレーム44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47と従動プーリ48との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト49が張架されてなるものである。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図7参照)から駆動力が入力され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
キャリッジ38は、タイミングベルト49に固着されており、タイミングベルト49の周運動により、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドフレーム43,44上を往復動する。このようなキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、インクジェット記録ヘッド39が、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動可能となっている。また、縁部45に沿ってリニアエンコーダ77(図7参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。リニアエンコーダ77は、エンコーダストリップ50をフォトインタラプタにより検出するものであり、このリニアエンコーダ77の検出信号に基づいて、キャリッジ38の往復動が制御される。
図3に示すように、用紙搬送路23の下側には、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過することとなる。
図4に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル口53等から気泡や異物を吸引除去するためのものである。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル口53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル口53に接離させるための移動機構とからなる。なお、図4においては、ポンプ機構及び移動機構は省略されている。インクジェット記録ヘッド39の気泡等の吸引除去を行う際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動され、その状態でキャップ52が上方へ移動してインクジェット記録ヘッド39の下面のノズル口53(図5参照)を密閉するように密着し、キャップ52と連結されたポンプによりインクジェット記録ヘッド39のノズル口53等からインクが吸引される。
廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ84は、キャリッジ38の往復動範囲内であって画像記録範囲外に、例えばプラテン42と一体に設けられる。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去等のメンテナンスが行われる。
インクカートリッジ40は、図1及び図4に示すように、プリンタ部2の正面側であって左側方(図4の右側)の筐体内に設けられたカートリッジ装着部6に装着される。図4に示すように、カートリッジ装着部6は、装置内において、インクジェット記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38と別途に配置されており、インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部6に装着されたインクカートリッジ40からインクジェット記録ヘッド39にインクが供給される。
カートリッジ装着部6にそれぞれ装着された各インクカートリッジ40からインクジェット記録ヘッド39へは、各色毎に独立したインクチューブ41により各色インクが供給される。各インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に従って撓む可撓性を有するものである。
カートリッジ装着部6から導出された各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレーム等の適当な部材に一旦固定されている。そして、該固定箇所からキャリッジ38までの部分は、装置フレーム等に固定されておらず、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。すなわち、キャリッジ38が往復動方向の一端(図4の左側)へ移動するに従い、各インクチューブ41は、U字形状の湾曲部分の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。一方、キャリッジ38が往復動方向の他端(図右側)へ移動するに従い、各インクチューブ41は、湾曲部分の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、キャリッジ38の移動方向へ移動する。
図5は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。図に示すように、インクジェット記録ヘッド39は、その下面にノズル口53が、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インク毎に記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。そして、CMYBkの各色インクのノズル口53が主走査方向に並んでいる。また、各ノズル口53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてノズル口53の列数を増減することも可能である。
図6は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す部分拡大断面図である。図に示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたノズル口53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形されてキャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがノズル口53からインク滴として吐出される。
キャビティ55は、各ノズル口53毎に設けられており、複数のキャビティ55に渡ってマニホールド56が形成されている。マニホールド56は、CMYBkの各色インク毎に設けられている。マニホールド55の上流側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57も、CMYBkの各色インク毎に設けられている。各バッファタンク57には、インクカートリッジ40からインクチューブ41を通じてインク供給口58からインクが供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59から不図示のポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
このようにして、インクカートリッジ40からインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク通路が構成される。このようなインク通路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、圧電素子54の変形により、ノズル口53からインク滴として記録用紙に吐出される。
図3に示すように、画像記録ユニット24の上流側には、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持して、プラテン42上へ搬送する一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。画像記録ユニット24の下流側には、記録済みの記録用紙を狭持して搬送する一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されており、搬送ローラ60に設けられたロータリエンコーダ76(図7参照)が、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスクをフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
ピンチローラ61は搬送ローラ60に所定の押圧力で押圧するように付勢されて回転自在に設けられている。搬送ローラ60とピンチローラ61との間に記録用紙が進入すると、ピンチローラ61は記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ60とともに狭持する。これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。拍車ローラ63も排紙ローラ62に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。
図7は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機1の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部3は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図に示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Onli Memory)66、RAM(Random Accsess Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されて
いる。制御部64が、本発明に係る制御手段に相当する。
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51へ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、上記キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38へ伝達されことによりキャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。
ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリエンコーダ76、キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ77が接続されている。また、ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
図4に示すように、制御部64はメイン基板82により構成されており、メイン基板82からインクジェット記録ヘッド39へはフラットケーブル83を通じて記録用信号等の伝送が行われる。フラットケーブル83は、電気信号を伝送する導体をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板82とインクジェット記録ヘッド39の制御基板(不図示)とを電気的に接続している。フラットケーブル83は、キャリッジ38から往復動方向へ導出され、上下方向に略U字形状に曲折されており、この略U形状の部分は、他の部材に固定されておらず、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。
以下、キャリッジ38の構成について説明する。図8は、キャリッジ38の外観構成を示す拡大平面図である。図9は、キャリッジ38の右側面図である。図10は、キャリッジ38のX−X断面図である。図11は、摺動部材86,コイルバネ87,ギャップ調整部材88の構成を示す分解斜視図である。図12から図15は、ギャップ調整部材88をスライド移動させた状態のキャリッジ38を示す右側面図及び断面図である。なお、図8では、ガイドフレーム43が省略されており、図9から図15では、ガイドフレーム43,44が省略されている。
図8から図10に示すように、キャリッジ38は、インクジェット記録ヘッド39を搭載するキャリッジ本体85と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ本体85を所定高さに支持する摺動部材86と、摺動部材86を上方へ弾性付勢するコイルバネ87(付勢部材)と、キャリッジ本体85と摺動部材86との間に介設されたギャップ調整部材88とを具備する。摺動部材86、コイルバネ87、ギャップ調整部材88は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ本体85の記録用紙搬送方向両側にそれぞれ組み付けられているが、これらは同様の構成なので、以下、記録用紙搬送方向下流側の構成を例に説明する。
図11に示すように、摺動部材86は、ガイドフレーム43,44に摺接する摺接板89と、摺接板89から延出された足部90とを有する。摺接板89は短手方向の長さがギャップ調整部材88の短手方向の長さと略同一の矩形の平板であり、その底面がガイドフレーム43,44に接触しながら摺動される。摺接板89の上面には、長手方向の縁部に沿って一対の突条91が形成されており、一対の突条91がギャップ調整部材88の底面に均等に当接することにより、摺接板89の底面がガイドフレーム43,44の上面と平行に位置決めされる。
足部90は、摺接板89の上面の略中央から該上面と略直交する方向へ延出されている。足部90は、摺接板89の長手方向に延びる平板形状であり、その平板形状の厚み方向に貫通する案内溝92が、足部90の延出方向に形成され、足部90の延出端(図11の上側)に開口している。この案内溝92に、後述されるキャリッジ本体85の支持リブ98が嵌挿され、摺動部材86が案内溝92に沿って移動可能に支持される。足部90の延出端の両側には、摺接板89の長手方向の外側へ向かって突出する係止部93が形成されている。係止部93は、図11に示すように、摺接板89を留め板94に係止させるためのものである。留め板94には、足部90を挿入するための貫通孔95が穿設されている。貫通孔95の幅は、一対の係止部93の外縁の間より狭い。一対の係止部93は、いわばスナップフィットのように、案内溝92の溝幅を狭めるように内側へ押圧されることにより弾性変形されて、留め板94の貫通孔95を挿通され、押圧が解除されると、弾性復帰して貫通孔95の周縁より外側へ突出する。この一対の係止部93により、足部90が貫通孔95から抜け出ないように、摺接板89が留め板94に係止される。
図10に示すように、キャリッジ本体85記録用紙搬送方向下流側には、キャリッジ38のスライド方向(図10の左右方向)に隔てて、摺動部材86を上下動可能に支持する支持部材96がそれぞれ設けられている。支持部材96は、コイルバネ87の外径より若干大きい内径の凹部が下方向に凹陥されたものであり、該凹部の底面に、摺動部材86の足部90が挿通される貫通孔97と、摺動部材86の案内溝92に嵌入される支持リブ98とが形成されている。この支持リブ98が、摺動部材86の案内溝92に嵌入されることにより、摺動部材が86が、案内溝92に沿って上下動可能に支持部材96に支持される。
図10及び図11に示すように、ギャップ調整部材88は、細長棒状の平板であり、摺動部材86と支持リブ98との間に介設される。ギャップ調整部材88は、その長手方向に隔てて一対の調整部位99が形成されている。各調整部位99は、その肉厚(図10の上下方向)がギャップ調整部材88のスライド方向に3段階に変化されている。詳細には、最も薄肉の薄肉部100と、真ん中の中肉部101と、最も厚肉の厚肉部102とが、一方向に肉厚が段階的に変化するように隣接して形成されている。薄肉部100,中肉部101,厚肉部102の各上面は水平面であり、各上面の長手方向の長さは、摺動部材86の足部90の長手方向の長さより若干長くなっている。また、薄肉部100,中肉部101,厚肉部102の各上面の境界には、厚み変化を緩やかにするための傾斜面がそれぞれ形成されている。
各調整部位99には、薄肉部100,中肉部101,厚肉部102に渡って厚み方向に貫通する長孔103が、ギャップ調整部材88の短手方向の略中央に形成されている。長孔103の短手方向の幅(図10の紙面垂直方向)は、摺動部材86の足部90の厚みより若干広く、この長孔103に足部90が貫通される。長孔103に貫通された足部90の延出端は、図10に示すように、キャリッジ本体85の支持部材96の貫通孔97に挿通される。また、足部90の案内溝92には、支持リブ98が嵌入される。そして、図10及び図11に示すように、足部90の係止部93が留め板94に係止される。
留め板94と支持部材96との間には、コイルバネ87が介設されており、コイルバネ87により、留め板94には上方向の弾性付勢力が付与される。この弾性付勢力が、留め板94を介して摺動部材86に作用し、摺動部材86は、支持リブ98が許容する上下動範囲内で最も上側に位置するように弾性付勢される。また、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間には、ギャップ調整部材88が介設されているので、ギャップ調整部材88の調整部位99の肉厚分だけ、摺動部材86が弾性付勢力に反して下側へ移動される。調整部位99には、前述したように長孔103が形成されているので、ギャップ調整部材88は、摺動部材86の足部90を肉厚方向に貫通させた状態でスライド移動可能である。ギャップ調整部材88がスライド移動することにより、支持リブ98と摺接板89との間に位置する調整部位99の肉厚が変化され、その肉厚変化により、摺動部材86の上下方向の位置が変化される。
このように、摺動部材86の摺接板89の略中央に足部90を設け、該足部90ギャップ調整部材88の長孔103に摺動部材86の足部90を貫通させることにより、コイルバネ87の弾性付勢力が、摺接板89の略中央に作用するので、コイルバネ87の弾性付勢力に対して、摺動部材86及びギャップ調整部材88の姿勢が安定する。コイルバネ87の弾性付勢力は、摺動部材86が、ガイドフレーム43,44の上面を摺動することにより生ずる回転モーメントを抑え、且つ、ギャップ調整部材88のスライド移動を許容する程度に調整される。
摺動部材86は、足部90の案内溝92に支持リブ98が嵌入されることにより、ギャップ調整部材88のスライド方向に対して位置決めされる。さらに、足部90がギャップ調整部材88の調整部位99の長孔103に貫通されることにより、摺動部材86は、記録用紙搬送方向に対して位置決めされる。さらに、摺接板89がギャップ調整部材88の底面に当接されることにより、摺接板89の摺接面(底面)がガイドフレーム43,44の上面に対して平行に位置決めされる。これにより、摺動部材86の上下動に際して捻れや回転が生じず、キャリッジ38をガイドフレーム43,44上に水平に支持することができる。また、支持リブ98が、摺動部材86が上下動可能に支持されるとともに、ギャップ調整部材88と当接されることにより、キャリッジ38の往復動方向の幅が小さな構成で、摺動部材86を上下動させる構成が実現される。
図8及び図10に示すように、摺動部材86と支持リブ98との間に介設されたギャップ調整部材88は、そのスライド方向両端がキャリッジ本体85からそれぞれ突出する長さである。このスライド方向両端が、ガイドフレーム43,44の両端を切り起こして形成された当接部位106,107(図4参照)に当接されることにより、ギャップ調整部材88のスライド位置が変化される。ギャップ調整部材88のスライド方向両端を当接させるための部材は特に限定されず、ガイドフレーム43,44の所定位置を切り起こす他、装置フレームを当接部材としたり、当接部材を所定位置に配設する等の構成を適宜採用することができる。
図8及び図9に示すように、このような摺動部材86、コイルバネ87、及びギャップ調整部材88がキャリッジ本体85の搬送方向両側にそれぞれ設けられ、キャリッジ本体85には、摺動部材86を支持するための支持部材96がそれぞれ設けられている。図8に示すように、キャリッジ本体85の記録用紙搬送方向下流側には、2つの摺動部材86が配設され、この2つの摺動部材86が一つのギャップ調整部材88のスライド位置により上下動されるように構成されている。一方、キャリッジ本体85の記録用紙搬送方向上流側には、1つの摺動部材86が配設され、この1つの摺動部材86を上下動すべく、ギャップ調整部材88の中央に調整部位99が形成されている。
記録用紙搬送方向上流側及び下流側の各ギャップ調整部材88が、各摺動部材86を所定の高さに保持する位置は連係されており、キャリッジ38のスライド移動により、各ギャップ調整部材88のスライド方向両端が当接されて変動するスライド位置は、3つの摺動部材86が同じ高さに保持するものとなっている。したがって、キャリッジ本体85は、常にガイドフレーム43,44の上面に対して平行に維持され、キャリッジ本体85に搭載されたインクジェット記録ヘッド39を水平に維持した状態で、キャリッジ本体85が上下動される。これにより、インクジェット記録ヘッド39とプラテン42上の記録用紙とのギャップが、画像記録領域で水平に維持されるので、精度のよい画像記録が実現される。なお、摺動部材86の数は適宜変更することが可能であり、例えば、キャリッジ本体85の記録用紙搬送方向上流側にも、記録用紙搬送方向下流側と同様に、2つの摺動部材86を設けることとしてもよい。
また、図9に示すように、記録用紙搬送方向上流側及び下流側の各摺動部材86の内側には、キャリッジ本体85から下方に突出するようにして、支持部104がキャリッジ本体85にそれぞれ形成されている。支持部104は、摺動部材86がキャリッジ本体85に最も没入された際に、ガイドフレーム43,44の上面に当接して、キャリッジ本体85にの高さを決めるものである。
また、図9に示すように、記録用紙搬送方向下流側のキャリッジ本体85の下端には、下方へ延出されて内側へ鈎状に曲折されたL字部材105が形成されている。L字部材105は、キャリッジ38がガイドフレーム43,44上に載置された状態で、その鈎状の先端がガイドフレーム44の縁部を跨いで下面側に位置する。L字部材105の鈎状の先端とガイドフレーム44の下面とは所定の間隙が設けられており、キャリッジ38がガイドフレーム44から浮き上がると、L字部材105の鈎状の先端がガイドフレーム44の下面に当接して、キャリッジ38が更に浮き上がることを防止する。これにより、キャリッジ38は、ガイドフレーム44に上下方向に所定のガタを持たせて係合されている。
このように構成されたキャリッジ38を、制御部64は、ギャップ調整部材88のスライド方向両端を、当接部位106,107に当接させてスライド位置を変化させるべく、キャリッジ38の往復動を制御する。以下、その動作について説明する。
図4に示すように、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38は、一対のガイドフレーム43,44に跨るように載置されて、制御部64により、記録用紙の搬送方向と交差する方向に往復動される。キャリッジ38が往復動される際に、制御部64の制御信号に基づいて、インクジェット記録ヘッド39からインク滴が吐出され、プラテン42上を搬送されている記録用紙に所望の画像記録がなされる。
インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ38は、キャリッジ本体85の支持部104又は摺動部材86により、ガイドフレーム43,44上の所定高さに支持されている。この所定高さは、被記録媒体である記録用紙や封筒などの厚み、記録画像の解像度により、制御部64により選択される。本実施形態では、前述したように、ギャップ調整部材88の調整部位99の肉厚により、キャリッジ38の高さが3段階に変化される。
制御部64は、キャリッジ38を往復動させて、ギャップ調整部材のスライド方向両端をガイドフレーム43,44の両端に形成された当接部位106,107に選択的に当接させる。制御部64が、3段階のキャリッジ38の高さのうちいずれを選択するかは、プリンタドライバ等から複合機1に送信された情報が示す被記録媒体の厚みや、記録画像の解像度による。一般に、制御部64は、被記録媒体が厚紙や封筒である場合には、インクジェット記録ヘッド39をプラテン42から離すべく、キャリッジ38の高さを高くする。また、記録画像の解像度が高解像である場合には、インクジェット記録ヘッド39から吐出されるインク滴が小さくなるので、インクジェット記録ヘッド39をプラテン42に近づけるべく、キャリッジ38の高さを低くする。このように、キャリッジ38の高さ選択の条件は、被記録媒体の厚みや記録画像の解像度に対応させて予め設定されており、ROM66に格納されている。
本実施形態では、通常の状態で、図9及び図10に示すように、キャリッジ38の高さが3段階の真ん中の高さに設定されているとする。この3段階の真ん中の高さは、ギャップ調整部材88の調整部位99の中肉部101が、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態である。この状態で、図9に示すように、摺接板89の下面が、キャリッジ本体85の支持部104より下側に突出して、キャリッジ38が摺動部材86により3段階の真ん中の高さに維持される。この状態での摺接板89の下面、すなわちガイドフレーム44の上面からインクジェット記録ヘッド39の下面までの距離をD1とし、インクジェット記録ヘッド39からプラテン42の上面までの距離をD2とする。なお、図9から図15においては、ガイドフレーム43,44及びプラテン42は省略されている。
制御部64は、キャリッジ38の高さを高くする場合には、キャリッジ38をキャップ52が設けられた側(図4の右側)に移動させるべく、CRモータ73を所定方向へ回転駆動させる。ガイドフレーム43,44上をキャップ52側へ摺動したキャリッジ38が、キャップ52の直上に位置すると、キャップ52が上方へ移動してインクジェット記録ヘッド39の下面に密着する。これを受けて、キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44から若干浮き上がるが、前述したように、L字部材105によりキャリッジ38の浮きは所定範囲内に規制される。
キャリッジ38がキャップ52上へ移動する際に、キャリッジ38から外側へ突出していたギャップ調整部材88の端部が、当接部位106に当接する。ギャップ調整部材88の一方の端部(図4の右側)が当接部位106に当接した状態で、更にキャリッジ38が移動されることにより、図13に示すように、ギャップ調整部材88がキャリッジ本体85に対して図13の左側へスライドし、ギャップ調整部材88の一方の端部がキャリッジ本体85内に没入するように、そのスライド位置が変化する。これにより、ギャップ調整部材88の調整部位99の厚肉部102が、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態となる。この状態で、図12に示すように、摺接板89の下面が、キャリッジ本体85の支持部104より下側に突出して、キャリッジ38が摺動部材86により3段階の最も高い高さに維持される。
ギャップ調整部材88は、CRモータ73の駆動力を受けてガイドフレーム43,44上を摺動するキャリッジ38の慣性力により、コイルバネ87の弾性付勢力及びキャリッジ38の重量に反して支持リブ98と摺接板89との距離を拡げる方向にスライドされるが、前述したように、キャップ52がインクジェット記録ヘッド39の下面に密着することにより、キャリッジ38がガイドフレーム43,44から若干浮き上がるので、ギャップ調整部材88のスライドに際してキャリッジ38の重量が作用しない。これにより、ギャップ調整部材88をスライドさせるために、CRモータ73に要求されるトルクを低減することができる。
この状態での摺接板89の下面、すなわちガイドフレーム44の上面からインクジェット記録ヘッド39の下面までの距離をD3とし、インクジェット記録ヘッド39からプラテン42の上面までの距離をD4とする。摺接部材86がキャリッジ本体85から下方へ更に突出することにより、キャリッジ38はガイドフレーム43,44上の垂直上方へ移動されるので、D1>D3となる。その結果、インクジェット記録ヘッド39の下面がプラテン42から遠ざかってD2<D4となり、厚みのある被記録媒体がプラテン42上に搬送された際に、被記録媒体がインクジェット記録ヘッド39に接触することが防止できる。また、被記録媒体の厚み変化によるインクジェット記録ヘッド39から被記録媒体までの距離、すなわちギャップの変化を、キャリッジ38の高さにより調整することができる。
制御部64は、キャリッジ38の高さを低くする場合には、キャリッジ38を廃インクトレイ84が設けられた側(図4の左側)に移動させるべく、CRモータ73を所定方向へ回転駆動させる。ガイドフレーム43,44上を廃インクトレイ84側へ摺動したキャリッジ38が、ガイドフレーム43,44の端部へ移動する際に、キャリッジ38から外側へ突出していたギャップ調整部材88の他方の端部(図4の左側)が、当接部位107に当接する。ギャップ調整部材88の他方の端部が当接部位107に当接した状態で、更にキャリッジ38が移動されることにより、図15に示すように、ギャップ調整部材88がキャリッジ本体85に対して図15の右側へスライドし、ギャップ調整部材88の他方の端部がキャリッジ本体85内に没入するように、そのスライド位置が変化する。これにより、ギャップ調整部材88の調整部位99の薄肉部100が、支持リブ98と摺動部材86の摺接板89との間に介在された状態となる。この状態で、図14に示すように、摺接板89の下面が、キャリッジ本体85の支持部104より上側に没入して、キャリッジ38が支持部104により3段階の最も低い高さに維持される。
この状態での支持部104の下面、すなわちガイドフレーム44の上面からインクジェット記録ヘッド39の下面までの距離をD5とし、インクジェット記録ヘッド39からプラテン42の上面までの距離をD6とする。摺接部材86がキャリッジ本体85側に没入することにより、キャリッジ38はガイドフレーム43,44上の垂直下方へ移動されるので、D1<D5となる。その結果、インクジェット記録ヘッド39の下面がプラテン42に近づいてD2>D6となり、インクジェット記録ヘッド39から小さなインク滴を吐出して高解像度で画像記録するに好適となる。なお、本実施形態では、摺接部材86がキャリッジ本体85側に没入すれば、キャリッジ本体85の支持部104によりキャリッジ38がガイドフレーム43,44上に支持されることとしたが、キャリッジ本体85に支持部104を設けずに、いずれの高さにおいても摺接部材86がキャリッジ本体85をガイドフレーム43,44上に支持することとしてもよい。
このように本実施形態に係る複合機1によれば、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ本体85をガイドフレーム43,44上の所定高さに支持する摺動部材86の摺接板89とキャリッジ本体85の支持リブ98との間にギャップ調整部材88を介在させ、ギャップ調整部材88をスライド移動させることにより、摺動部材86の摺接板89と支持リブ98との間隔を変位させて、摺動部材86が支持するキャリッジ本体85の高さを変化させることとしたので、被記録媒体の厚みや画像記録の解像度に応じて、インクジェット記録ヘッド39と被記録媒体とのギャップを調整することができる。
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る複合機は、第1の実施形態に係る複合機1とキャリッジの構成が異なる他は、第1の実施形態と同様の構成である。したがって、第2の実施形態に係る複合機については、構成の異なるキャリッジ110についてのみ説明する。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同じ符号のものは同一の部材である。図16は、キャリッジ110の下面の構成を示す部分底面図である。図17は、回転軸112及びスライダ113の外観構成を示す斜視図である。図18は、回転軸112の外観構成を示す斜視図である。図19は、回転軸112及びスライダ113の側面図である。なお、図16では、キャリッジ110の記録用紙搬送方向上流側が省略されている。
図16に示すように、キャリッジ110は、インクジェット記録ヘッド39を搭載するキャリッジ本体111と、ガイドフレーム43,44にそれぞれ摺接してキャリッジ本体111を所定高さに支持する回転軸112と、回転軸112を回転させるためのスライダ113(入力部材)とを具備する。回転軸112及びスライダ113は、ガイドフレーム43,44に対応して、キャリッジ本体111の記録用紙搬送方向両側にそれぞれ組み付けられているが、これらは同様の構成なので、以下、記録用紙搬送方向下流側の構成を例に説明する。
図16及び図17に示すように、回転軸112は、キャリッジ本体111の幅寸法(図16の左右方向)とほぼ同じ軸方向長さのものであり、キャリッジ本体111の下面側に、軸方向をキャリッジ110の往復動方向と合致させて、軸周りに回転自在に支持されている。回転軸112の軸方向両端には、3種類の摺接部材114,115,116が設けられている。各摺接部材114,115,116は、回転軸112の周面から径方向外側へ突設されたブロック形状のものである。
3種類の摺接部材114,115,116は、回転軸112の径方向外側への突出幅が異なるものであり、摺接部材114,115,116の順に突出幅が大きくなっている。この3種類の摺接部材114,115,116が、回転軸112の両端において、順次突出幅が変化するように周方向に併設されている。また、同じ種類、すなわち同じ突出幅の摺接部材114,115,116が、回転軸112の両端で周方向の位置が合致するように配置されている。
図16に示すように、キャリッジ本体111に支持された回転軸112は、その摺接部材114,115,116のいずれか1種を、キャリッジ本体111の鉛直下方に突出させるように支持されている。キャリッジ本体11の記録用紙搬送方向上流側及び下流側において、鉛直下方にそれぞれ突出されたいずれか1種の摺接部材114,115,116により、キャリッジ本体111は、ガイドフレーム43,44上に水平に支持され、キャリッジ110は、摺接部材114,115,116をガイドフレーム43,44に摺接させて、第1の実施形態で説明したように往復動される。
回転軸112の軸方向略中央にはスライダ113が外嵌されている。スライダ113は、回転軸112の外周面に沿って軸方向に摺動可能な筒状の部材である。図17に示すように、スライダ113の筒状の内周面には、螺旋形状の一対の係合溝117が凹設されている。図18に示すように、回転軸112の軸方向略中央には、一対の係合凸部118が外周面から径方向外側へ突設されている。この係合凸部118が係合溝117に係入されて、回転軸112とスライダ113とが係合されている。スライダ113が回転軸112の軸方向にスライドすると、係合溝117に沿って係合凸部118が移動し、その結果、回転軸112が回転する。つまり、スライダ113のスライドが係合溝117及び係合凸部118により回転軸112の回転として伝達される。
図17に示すように、スライダ113の外周面には、径方向外側へ突出するL字状の突片119が設けられている。図16に示すように、回転軸112及びスライダ113がキャリッジ本体111に組み付けられた状態で、突片119は、キャリッジ本体111の下面から突出されている。キャリッジ110がガイドフレーム43,44上の所定位置に摺動されると、この突片119が、ガイドフレーム43,44の一部を切り欠いて形成された当接部位120に当接し、更にキャリッジ110が摺動されることにより、スライダ113が回転軸112の軸方向にスライドされる。
このように構成されたキャリッジ110を、制御部64は、スライダ113を当接部位120に当接させて回転軸112の回転位置を変化させるべく、キャリッジ110の往復動を制御する。図19に示すように、回転軸112の軸中心から径方向外側の端面までの距離R1が最も短い摺接部材114が、ガイドフレーム43,44の上面121に摺接することにより、キャリッジ本体111が3段階のうち最も低い高さに支持される。これにより、インクジェット記録ヘッド39と被記録媒体とのギャップが最も狭くなり、高解像度の画像記録に適したものとなる。
制御部64が、キャリッジ110をガイドフレーム43,44上を所定方向へ摺動させて、ガイドフレーム43,44に形成された当接部位120にスライダ113を当接させることにより、スライダ113が回転軸112の軸方向にスライドされる。このスライダ113のスライドが、係合溝117及び係合凸部118により回転軸112の回転として伝達されて回転軸112が回転する。したがって、摺接部材115がガイドフレーム43,44の上面121と摺接するように、スライダ113をスライドさせて回転軸112を回転させることにより、キャリッジ110は、回転軸112の軸中心から摺接部材115の径方向外側の端面までの距離R2に応じて、3段階の真ん中の高さに支持される。同様に、摺接部材116がガイドフレーム43,44の上面121と摺接するように、スライダ113をスライドさせて回転軸112を回転させることにより、キャリッジ110は、回転軸112の軸中心から摺接部材116の径方向外側の端面までの距離R3に応じて、3段階のうち最も高い高さに支持される。これにより、被記録媒体の厚みに応じて、インクジェット記録ヘッド39と被記録媒体とのギャップを3段階に調整することができる。
このように、第2の実施形態によれば、インクジェット記録ヘッド39を搭載したキャリッジ本体111をガイドフレーム42,43上の所定高さに支持する摺接部材114,115,116を、径方向外側への突出幅が異なる複数のものとして回転軸112の周方向に並設し、スライダ113のスライドにより回動軸112を回転することにより、突出幅が異なる複数の摺接部材114,115,116のいずれかが選択されてキャリッジ本体111の高さが変化されることとしたので、インクジェット記録ヘッド39と被記録媒体とのギャップを調整することができる。