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JP5560253B2 - インクジェット記録装置及び方法並びに異常ノズル検知方法 - Google Patents

インクジェット記録装置及び方法並びに異常ノズル検知方法 Download PDF

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Description

本発明はインクジェット記録装置及び方法並びに異常ノズル検知方法に係り、特に、多数のノズル(液滴吐出口)を有するインクジェットヘッドにおいて発生する吐出不良(飛翔曲がり、滴量異常、スプラッシュ、不吐出など)を検知する技術及びその異常ノズルに起因する画質低下を抑制する補正技術に関する。
インクジェットヘッドを用いて機能性材料(以下「インク」も同義とする。)を記録媒体上に吐出して画像形成を行うインクジェット装置は、環境に優しい点、種々の記録媒体に高速で記録できる点、滲みにくく高精細画像が得られる点、などの特徴を有している。
しかし、インクジェット方式による記録では、ヘッド内のノズルについて一定の確率で吐出不良が発生し、その不良ノズルに対応した画像位置に筋ムラ、濃度ムラが発生する。その結果、画質が損なわれ、吐出不良が発生するたびにメンテナンスや補正を行わなければならず、スループットの低下や損紙の増加をまねいてしまう。
特に、1回の記録走査で描画を行うシングルパス方式では、1つのノズルの吐出不良が全体の画質に大きく影響する。また、スループットを重視したシングルパス方式のインクジェット印刷機の場合、記録ヘッド(インクジェットヘッド)が常に記録媒体の上にあるため、描画稼働中にヘッドメンテナンスを行うことが困難であり、影響が大きい。
インクジェットヘッドにおいて吐出不良が発生する原因としては、ノズル内部に混入した気泡による吐出力低下、ノズル近傍への異物付着、ノズル近傍の撥液性異常、ノズル形状異常等が挙げられる。さらに、吐出不良となったノズルは、吐出が不安定なためにインクミストを発生させやすく、このミストが周囲の正常ノズルを不良化させる原因にもなる。
特許文献1には、ノズル面の不良を精度よく検出する手段として、ノズル表面の検査を行う際に液滴を1回吐出させる1周期毎に、ノズルの外部に液体を溢れさせてノズル面に液体を付着させた後に当該ノズルから液滴を吐出させる構成が開示されている。
また、特許文献2には、吐出不良になりやすいノズルを事前に検知する方法として、記録波形とは異なる波形を用い、描画領域外のメンテナンス位置で不吐出ノズル検出を行い、不吐出と検知された場合にメンテナンスを行う記載がある。
特許文献3では、異常吐出するノズルを検出し、周りの正常ノズルで補正を行う技術が記載されている。
特開2008−093994号公報 特開2003−205623号公報 特開平11−348246号公報
しかし、特許文献1には、ノズル表面に液体を溢れされるための具体的な方法(条件や駆動信号の波形など)が記載されていない。
特許文献2の技術は、描画領域外のメンテナンス位置に印字ヘッドを移動させ、当該メンテナンス位置で不吐出ノズル検知とメンテナンスを行う構成であるため、スループットが低下する問題がある。また、不吐出以外の吐出不良(飛翔曲がり、スプラッシュ)の検知に関しては記載されておらず、具体的な検知用波形に関しても明らかにされていない。
特許文献3の技術は、視認される異常吐出を検出するためには、インク滴の着弾を正確に読み取ることができる高解像度の撮像デバイス(CCD)やインク滴の飛翔状態を観測可能な手段など、高価な検出手段が必要であり、検出時間もかかる。さらに、当該技術による異常検知を描画中に行うことができないためスループットが低下する。
上述のとおり、従来提案されている技術では、記録安定性とスループットを両立することは困難であった。
さらに、記録用波形とは異なる異常検知用の波形(「検査波形」、「異常検知波形」、「検知波形」などと呼ぶ場合ある。)として、不良を検知しや易くするために、記録波形よりも吐出速度が遅くなるような波形を採用すると、正常なノズルが「異常」と検知されてしまうケースが増えることが懸念される。また、シングルパス方式に用いる長尺のラインヘッドの場合、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせて1本のラインヘッド(バーヘッド)を構成する場合があるが、ヘッドにおけるノズル径のばらつきや流路の寸法ばらつき等の製造ばらつきがあるため、記録波形よりも吐出速度が遅くなるような波形を用いると、検知性能にモジュール個体差が生じ得る。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、製造ばらつき等に起因する検知性能のばらつきを緩和することができる検知用波形を提供し、記録安定性とスループット向上の両立を実現し得るインクジェット記録装置及び方法並びに異常ノズル検知方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明に係るインクジェット記録装置は、複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号を発生させる記録用波形信号生成手段と、前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成手段と、を備え、前記インクジェットヘッドは前記ノズルから重力方向下側にインクを吐出するものであり、前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とする。
本発明における異常ノズル検知用波形は、ノズルから液滴を吐出させる吐出パルスの部分に関して、パルス幅、パルス間隔が記録用波形と同等の構成を有している一方で、記録用波形と比較して、残響抑制部の抑制効果が弱められたものとなっている。このため、異常ノズル検知用の吐出の際に、記録用波形で実現される吐出性能がほぼ同様に維持され、かつ、吐出後の残響振動によりメニスカスが盛り上がった状態を得ることができる。このようにメニスカスが溢れやすい条件で異常ノズル検知用の吐出を行うことにより、早期に吐出異常の発生を検知することができる。また、記録用波形と同様の吐出性を確保できるため、ノズル径のばらつき等による検知性能のばらつきも緩和することができる。
「同等のパルス幅及びパルス間隔」とは、厳密な意味で完全に一致している場合に限らず、実用上吐出性能に実質的な相違が生じない程度の僅かな差異を含んでいる場合も包含される。
記録用波形には、複数の吐出パルスを含むことができる。複数の吐出パルスが並んだパルス列における最終の吐出パルスの後段に残響抑制部を設けることができる。
他の発明態様については明細書及び図面の記載により明らかにする。
本発明によれば、記録用波形の駆動信号によって描画記録される出力画像において吐出不良による濃度ムラ(筋ムラ)が視認される画像欠陥が発生する前に、異常ノズル検知用波形を用いて早期に吐出異常の発生を検知することができる。これにより記録安定性とスループット向上の両立を実現することができる。
吐出不良の原因を模式的に示したノズル部の拡大図 記録用波形の駆動信号の一例を示す波形図 図3(a)ステップパルスを印加したときのメニスカス速度の変化の様子を示すグラフ、図3(b)はステップパルスの波形図 図2に示した記録用波形の説明図 図5(a)はステップパルスを印加したときのメニスカス速度の変化の様子を示すグラフ、図5(b)は残響抑制部の抑制作用を説明するための波形図 図5(b)の波形に対応したメニスカスの様子を示した模式図 残響抑制部を無くした検知用波形の例を示す波形図 残響抑制の効果を弱めた残響抑制部を有する検知用波形の例を示す波形図 記録用波形と同様の滴速度が得られるように吐出力が調整された検知用波形の例を示す波形図 引き動作による残響抑制の説明図 二段押し動作による残響抑制の説明図 ポストパルスによる残響抑制の説明図 インクジェット記録装置の全体構成図 ヘッドの構造例を示す平面透視図 ヘッド250の他の構造例を示す平面透視図 図14中のA−A線に沿う断面図 本例のインクジェット記録装置のシステム構成を示すブロック図 インライン検出部の構成図 テストチャートの形成例を示す説明図 本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置におけるムラ補正のシーケンスを示すフローチャート 事前補正のシーケンスを示すフローチャート オンライン吐出不良検知用テストチャートの例を示す平面図 濃度測定用テストチャートを示す平面図 図20のステップS38における画像データの補正処理の詳細を示すフローチャート 図24のステップS118における濃度データの修正処理の詳細を説明するための図 図24のステップS120における濃度ムラ補正値の算出処理の詳細を説明するための図 図24のステップS122における処理の詳細を説明するための図 図24のステップS118における濃度データの補正処理に関する他の実施形態を示す図 ムラ補正の他のシーケンス例を示すフローチャート インクジェット記録装置に適用される事前補正処理の他の例を示すフローチャート インクジェット記録装置における吐出制御に関する要部ブロック図
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
<吐出不良の原因について>
はじめに、吐出不良の原因について考察する。図1は吐出不良の原因を模式的に示したノズル部の拡大図である。図1において符号1はノズル、2はノズル1内に充填されたインク、3はメニスカス(気液界面)を表している。同図(a)はノズル1内のインク2中に気泡4が混入している様子を示している。ノズル1は図示せぬ圧力室と連通しており、圧力室には圧力発生手段としての圧電素子(ピエゾアクチュエータ)が設けられている。圧電素子を駆動して圧力室の容積を変化させることにより、ノズル1から液滴が吐出される。このとき、ノズル1内に気泡4が存在すると、気泡4によって圧力が吸収されたり、液の流れが妨げられたりするため、吐出不良となる。
図1(b)はノズル1の内壁面に異物5が付着している様子を示している。ノズル内部に異物5が付着している場合、この異物5によって液の流れが妨げられ、飛翔曲がりなどの吐出不良の原因となる。
図1(c)はノズル1の外部においてノズル穴近傍に異物6が付着している場合を示している。ノズル外部のノズル近傍に異物6が付着している場合、この異物6に液が接触することでメニスカスの軸対称性が崩れ、飛翔曲がりなどの吐出不良の原因となる。
異物6の付着に代えて、ノズル面1Aにおけるノズル近傍の部分的な撥液性の低下(例えば、撥液膜の剥がれ)などの場合も、この図1(c)と同様である。なお、異物5,6としては、例えば、インク成分の凝集物、乾燥物、紙粉、ホコリ、インクミスト、ヘッド製造プロセスで意図せず残留した残渣などがある。
<異常ノズルの検出方法>
図1で示したように吐出不良の原因は、(a)、(b)で説明したノズル内部要因と、(c)で説明したノズル外部要因とに大別される。ノズル内に気泡4や異物5が存在する場合(ノズル内部要因の異常ノズル)は、吐出力を低下させると、当該ノズル内部要因による吐出不良が助長される。すなわち、圧電素子の変位量を小さくしたり、ヘッド共振周波数からずれた周波数で圧力変動を与えたりするなどの方法で、吐出速度を低下させる駆動を行うことにより、気泡4や異物5の影響が吐出結果に一層顕著に反映される。その結果、不吐が助長され、或いは、飛翔曲がりの曲がり量が増幅されたりする。
その一方、ノズル外部に異物6や撥液性不良などがあるときは、ノズル1の穴からインクを溢れさせ(インクを盛り上げて)、ノズル外部の異物6や撥液性不良部分にインクを接触させることによって、当該ノズル外部要因による吐出不良が助長される。
本実施形態では、吐出不良を検知する際には、描画記録用の駆動波形とは別に、吐出不良を助長する波形の駆動信号を用いてテストパターンの描画を行い、その印字結果を測定する。つまり、通常の描画時における吐出用の駆動波形を用いて圧電素子を駆動した場合には、吐出不良として発現しない(検知できない)レベルの気泡4や異物5,6等の状況であったとしても、吐出不良を助長・増幅させる検知用波形を用いることで、検知可能な不良として発現させることができる。これにより、描画記録用の駆動波形では未だ吐出不良として認識できない初期段階レベルの吐出不良を早期に検知することができる。
以下、具体的な波形例を説明する。
(描画記録時の駆動波形について)
まず、記録用波形について説明する。図2は、本発明の実施形態によるインクジェットヘッドの駆動波形の一例を示す波形図である。この駆動波形10は、通常の描画記録時における吐出用の駆動波形(以下「記録用波形」或いは「印字波形」という。)である。駆動波形10は、記録媒体上における1画素のドット記録を担う一記録周期内に複数の吐出パルス11〜14と残響抑制部20が連続する駆動波形である。なお、「一記録周期」という用語は、当該分野において「一印字周期」、「一印刷周期」と呼ばれる場合がある。
図2では、4つの吐出パルス11、12、13、14が連続する4発連射タイプの例が示され、最終の吐出パルス14の後に続いてメニスカス振動(残響)を静定させる残響抑制部20が設けられている。ただし、一記録周期内における吐出パルスの数はこの例に限定されない。記録用波形は、一記録周期中に少なくとも1つの吐出パルスを含み、2つ以上の吐出パルスを含む構成を採用することができる。
各吐出パルス11〜14は、いわゆる引き-押し(pull-push)型の波形であり、1パルスの印加につき1発の吐出動作が行われる。駆動波形10における先頭パルス(第1吐出パルス)11は、ノズルに連通する圧力室の体積を拡張させる方向に圧電素子(不図示)を変形させる「引き(pull)」動作の駆動を行う第1信号要素11aと、その引き動作で圧力室を拡張させた状態を維持(保持)する第2信号要素11bと、圧力室を収縮させる方向に圧電素子(不図示)を変形させる「押し(push)」動作の駆動を行う第3信号要素11cと、を含んで構成される。
第1信号要素11aは基準電位Vから電位を下げる立ち下がり波形部である。第2信号要素11bは第1信号要素11aで下降した電位Vを維持する波形部、第3信号要素11cは第2信号要素11bの電位(V)を基準電位に上昇させる立ち上がり波形部である。
先頭の吐出パルス11に続く、第2の吐出パルス12、第3の吐出パルス13、第4の吐出パルス(最終パルス)14についても、同様に、「引き」、「維持」、「押し」の各動作に対応した信号要素を有している。先頭の吐出パルス11で説明した11a、11b、11cと同様に、各吐出パルス12〜14を示す符号の末尾に「a」、「b」、「c」の添字を付加して、「引き」、「維持」、「押し」の各信号要素を表す。
また、第1の吐出パルス11と第2の吐出パルス12の間には、基準電位Vを維持する波形部としての第4信号要素11dが設けられる。同様に、第2の吐出パルス12と第3の吐出パルス13の間、第3の吐出パルス13と第4の吐出パルス14の間には、それぞれ基準電位Vを維持する波形部としての第4信号要素12d、13dが設けられている。
本明細書では説明の便宜上、基準電位に対する各吐出パルス11〜14の第2信号要素11b〜14bの電位差を「電圧振幅」或いは「波高」と呼ぶ。すなわち、基準電位Vと第1信号要素11aの電位Vの電位差(V-V)を第1の吐出パルス11の「電圧振幅」或いは「波高」という。同様に、第2の吐出パルス12における第2信号要素12bの電位V、第3の吐出パルス13における第2信号要素13bの電位V、第4(最終)パルス14における第2信号要素13bの電位Vについて、それぞれ基準電位Vとの電位差を各パルス12〜14の「電圧振幅」或いは「波高」という。
本例の駆動波形10は、第1の吐出パルス11から第3の吐出パルス13まで、各パルスの電圧振幅は等しく(V=V=V)、第4(最終)の吐出パルス14の電圧振幅は先行する他の吐出パルス(11〜13)の電圧振幅と比較して最も大きいものとなっている(|V-V|<|V−V|)。
なお、先行する他の吐出パルス(11〜13)の電圧振幅は必ずしも等しいものに限らない。例えば、先頭の吐出パルス11の電圧振幅(波高)に対して後続の吐出パルス12〜13の電圧振幅(波高)を徐々に小さくし、最終パルス14の電圧振幅を先頭パルス11よりも大きくするような形態も可能である。
最終の吐出パルス14の電圧振幅が他の先行吐出パルス(11〜13)よりも大きいことで、最終滴の吐出速度が最も大きくなり、最終滴が飛翔中に先行滴に追いついて、これらを一体的に合一させてから記録媒体上に着弾させることができる。各吐出パルス11〜14が圧電素子に印加されることにより、ノズルから液滴が吐出されるため、一記録周期内に含まれる吐出パルスの数と同数の吐出動作が一記録周期で行われる。最終パルス14の電圧振幅が他の先行パルス(11〜13)よりも大きいことで、最終滴の吐出速度が最も大きくなり、最終滴が飛翔中に先行滴に追いついて、これらを一体的に合一させてから記録媒体上に着弾させることができる。
図2の例では一記録周期で4発の連射により液滴が連続吐出され、これら吐出液滴(4滴)は記録媒体に着弾する際に一体的に合体する。この合体した液滴(合一滴)が記録媒体上に付着することにより1ドットが記録される。
最終(第4)の吐出パルス14における第3信号要素14cに続く残響抑制部20は、第4の吐出パルス14で収縮させた圧力室の状態を維持するための第5信号要素20aと、圧力室を元の状態に戻す第6信号要素20bと、を含んで構成される。
第5信号要素20aは、第3信号要素14cで上昇させた電位Vを一定期間維持する波形部である。第6信号要素20bは、第5信号要素20aの電位Vから基準電位に戻す立ち下がりの波形部である。
なお、図2では、説明を簡単にするために、いわゆる引き−押し(pull-push)型の吐出パルスを含む駆動波形を例示したが、本発明の実施に際しては、駆動波形の形態は特に限定されない。引き押し引き(pull-push-pull)波形その他の各種の駆動波形を用いることができる。
<パルス幅とパルス間隔について>
図3(a)は、インクジェットヘッドにステップパルスを印加したときのノズル内のメニスカス速度の変動を示したグラフである。横軸は時間、縦軸はメニスカス速度を表す。速度の方向は、吐出方向をプラスとした。図3(b)は印加したステップパルス(駆動電圧)の波形を示した図である。横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
ピエゾジェット方式のインクジェットヘッドの場合、1ノズルの吐出機構は、ノズル孔(吐出口)に連通する圧力室に振動板を介して圧電素子が設けられ、この圧電素子を駆動して振動板を変位させることにより圧力室の容積を変化させ圧力室内の液に圧力変動を与え、ノズル孔から液滴の吐出を行う仕組みとなっている。
図3(b)に示すようなステップパルスを圧電素子に印加して圧力室の振動板を動かすと、圧力室内の圧力変動によりノズルのメニスカスは、共振周期Tcで振動、減衰する。なお、ヘッド共振周期とは、インク流路系、インク(音響要素)、圧電素子の寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有周期をいう。吐出パルス(11〜14)の印加による吐出動作や残響抑制部20による残響抑制の作用はこの振動周期(共振周期Tc)を利用して設計される。
図3(b)に示すステップパルスの波形は、基準電位から電圧を下げると、圧力室が膨張するため、圧力は低下し、ノズル内のメニスカスは圧力室の内部へ向かう方向(吐出方向と反対向きの方向)に引き込まれる。この「引き」波形要素の印加によりメニスカスの引き込み動作が開始された後、引き電圧を一定に維持すると、振動系の固有振動周期でメニスカスが振動する(図3(a))。
このメニスカス振動によって丁度吐出方向の速度が0をまたぎ負から正へ切り替わるときに、圧力室を収縮させれば、最も加速されるところで、液滴を吐出することができる。このようなメニスカスの動きと、駆動波形による引き押しのサイクルを合わせることで効率的な吐出が可能である。
図3(a)に示すように、メニスカス振動の1周期が1共振周期Tcになるため、その約半分(Tc/2)で吐出用駆動波形のパルス幅を区切ると最も効率がよい。また、2発目のパルスは、1発目のパルスの印加によって発生したメニスカスの振動による引き込み、加速の動きに合わせて、引き−押しの波形要素が重なるようにパルス間隔が設定されることが好ましい。
インクジェットヘッドは、その流路構造や使用する液体の物性などから、安定して吐出させることができるパルス幅やパルス間隔がある。記録用波形の吐出パルス(11〜14)はこの安定吐出可能なパルス幅及びパルス間隔に定められている。
なお、図4に示すように、パルス間隔Tは、先行するパルスの立ち下がりの開始から、次のパルスの立ち上がり開始までの時間間隔をいう。パルス幅Tは1つのパルスの立ち下がりの開始から立ち上がりの開始までの時間間隔をいう。吐出パルス(11〜14)のパルス間隔Tは、ヘッド共振周期(ヘルムホルツ固有振動周期)Tcと一致させることが好ましく、パルス幅Tは、ヘッド共振周期(ヘルムホルツ固有振動周期)Tcの{(2×n)−1}/2とすることが望ましい(ただし、nは正の整数)。図2及び図4で説明した駆動波形10は、パルス間隔を共振周期Tcとほぼ一致させ、パルス幅をTc/2とほぼ一致させた例となっている。
また、本例の残響抑制で重要となるのは、圧力室を拡張させる「引き」の信号要素(符号20b)の電圧(電位差)Vと、その立ち下げのタイミング(Td)である(図4参照)。図3(a)(b)で説明したように、メニスカス振動と逆位相のタイミングで圧力変動を与えるために、駆動波形10における残響抑制部20の引き波形部(第6信号要素20b)の開始タイミングTは、共振周期Tcに近い値とする。また、引き波形部(第6信号要素20b)の高さV(=V−V)によって残響抑制の抑制力を調整することができる。
<残響抑制の仕組みについて>
図5及び図6を用いて残響抑制の動作について説明する。図5(a)は、図3(a)で説明したステップパルス印加時のメニスカス速度の変化を参考のために表示したものである。図5(b)は吐出パルスの後段に残響抑制部が付加された波形の説明図である。図5(b)は、図1で説明した最終吐出パルス14と残響抑制部20の部分に相当する。
図5(b)中の括弧( )で囲んだ数字「(0)」、「(1)」、「(2)」、「(3)」、「(4)」にそれぞれ対応した各信号要素の印加タイミングにおけるメニスカスの様子をそれぞれ図6(a)〜(e)に模式的に示した。
図5(b)の符号(0)で示した信号要素によって基準電位が維持されている状態で図6(a)に示すようにメニスカスは定常状態となっているとする。この状態で図5(b)の符号(1)で示した信号要素によって基準電位から電圧を下げると圧力室が膨張し、図6(b)に示すようにメニスカスが一旦大きく後退する。その後、この電圧を一定時間維持し、固有振動周期でメニスカスが戻ってくるタイミングに合わせて、図5(b)の符号(2)で示した信号要素によって電圧を上昇させ、圧力室を収縮させると、図6(c)に示すように液が押し出される。その結果、図6(d)に示すようにノズルから液滴が吐出される。図5(b)の符号(3)で示した信号要素(電圧が維持される部分)でリフィルが行われ、メニスカスの速度がプラスに向かうタイミングで、図5(b)の符号(4)に示す信号要素を印加して、逆位相の「引き」動作を行うことにより、残響振動が抑制される(図6(e))。
図5及び図6に示したように、メニスカス速度がプラスの速度を持つタイミングで逆位相の力を与える(圧力室を拡張してメニスカスの速度をマイナス方向へ引き込む)ことにより、後半の残響を抑制する効果がある。このように、吐出後のメニスカスの残響振動を抑えた状態で、次の記録周期の駆動波形が印加されることになるため、吐出及びリフィルが安定し、良好な連続吐出が可能となる。
<検知用波形について>
次に、異常ノズル検知用波形について説明する。
本実施形態では、異常ノズルを検知するための検知用印字を実施する際に、記録用波形とは異なる異常ノズル検知用の波形(以下「検知用波形」という。)を用い、メニスカスが溢れやすい条件で検知用印字を行う。すなわち、異常ノズル検知用の吐出を行うに際し、メニスカスの盛り上がり量が大きくなる波形として、記録用波形に比べて残響抑制部20の残響抑制効果を低減させた波形を用いる。
インクジェット印刷機では、ヘッドモジュール毎の滴量を揃えるために、濃度やドット径等から吐出インクの滴量を把握し、圧電素子に印加される駆動信号の電圧や時間軸方向の調整が行われる。このような調整に際しては、記録用波形を用いて吐出を行い、濃度やドット径を測定し、その測定結果に基づいて駆動電圧や印加タイミングの調整が行われる。
したがって、当該駆動波形の調整を行った記録用波形(調整後の印字波形)と異なる波形を印加すると、その吐出特性はモジュール毎に大きく変化してしまう可能性がある。その主な要因は、製造ばらつきに起因するノズル径や流路寸法のばらつきによる共振周波数のズレや、リフィル特性のズレにある。そのため、波形調整後の印字波形に比べて、吐出パルスの印加タイミングや電圧などが大幅に異なる検知用波形を採用すると、モジュール毎に検査結果にばらつきが出てしまうという問題がある。
つまり、同じ検知用波形を用いて吐出駆動を行った場合でも、特定のモジュールは、ノズルから大きく溢れ、飛翔液滴が曲がり易くなり、別のモジュールではほとんど溢れない、といった事象が起こりうる。異常ノズルの検知に際して、このようなモジュール個体差が発生すると、適切な異常ノズル検知ができなくなる。
そこで、本実施形態では、波形調整を行った波形(波形調整後の印字波形)と構造的に近い波形を異常ノズル検知波形として用いる。これにより、上記の特性ばらつきを緩和することができる。
図7で説明した記録用波形では、通常吐出後にメニスカスの振動を抑えるため、逆位相の振動を与える残響抑制部20が存在する。この残響抑制部20の部分を調整することで、望む強度の異常ノズル検知を行うことができる。
検知用波形の具体例として、図7及び図8を示す。図7は、記録用波形(図2)と比較して残響抑制部を完全に無くした波形例である。図8は、記録用波形(図2)と比較して残響抑制部20の抑制力を弱めるように調整された波形例である。
調整済み記録用波形と構造的に近い波形として、吐出パルス(11〜14)の構成は記録用波形と共通の構成を採用し、残響抑制部(符号20)の部分について、記録用波形から修正(調整)を加えた構成を有する検知用波形を用いることができる。図7に示した波形と、図8に示した波形では、吐出後のメニスカスの盛り上がり量に違いが出てくる。
なお、図8では電圧方向に残響抑制部を調整したが、残響抑制効果を弱める方法として、残響抑制部を時間軸方向に調整してもよい。例えば、記録用波形(図2)における残響抑制部20の「引き」のタイミング(第6信号要素20b)が逆位相から前後にずれるように時間軸方向を調整してもよい。また、電圧方向の調整と時間軸方向の調整とを組み合わせることも可能である。
<<検知用波形による吐出力の調整について>>
図7及び図8で例示したように、記録用波形(図2)と比べて残響抑制部を弱めた構成の検知用波形とした場合、吐出パルスの圧力室収縮に寄与する箇所の電圧(第3信号要素14cの電位差)も小さくなってしまう。その結果、吐出される液の滴量、滴速度が変化し得る。
図5で説明したとおり、吐出パルス(11〜14)の印加による吐出動作は、圧力室の膨張(引き)の大きさと、圧力室の収縮(押し)の大きさの合計が吐出力の大きさに寄与するものとなる。残響振動もこの両者の和の大きさが効いてくる。残響抑制を弱めようとして残響抑制部の電圧を調整すると、吐出パルスの押しの電圧変化量が小さくなり、吐出力が弱まってしまうことがある。吐出力が弱くなると、飛翔曲がりを起こしやすいなど、元々のノズルが持つ軸ズレ特性などが表れてしまう場合も想定され、通常の画像記録時には問題にならない正常ノズルが異常ノズルと判定されてしまう可能性が高くなる。また、残響振動の大きさも小さくなり、メニスカスの盛り上がり量を十分に得ることができないことも考えられる。
そこで、かかる問題を解消するために、例えば、図7、図8に示す波形の構造(パルス幅やパルス間隔など)は、そのままに維持して、波形全体を電圧方向に調整する。
このような調整を行うことにより、検知用吐出時の滴速度や滴量が記録用波形による吐出時と概ね同等になる。その一方で、このように調整された検知用波形は、記録用波形と比較して残響抑制の効果は弱められているので、メニスカスの溢れは多くなる。
なお、波形全体を電圧方向に調整する方法に限らず、少なくとも残響抑制部直前の吐出パルス(図7,8の例では、符号14の吐出パルス)についての電圧を変更してもよい。図9に図8の波形を調整した例を示した。図9中、調整前の波形を破線で示し、調整後の波形(符号50’)を実線で示した。こうして、圧力室の膨張状態から収縮状態までの変化(膨張の大きさと、収縮の大きさの合計が)を元々の記録用波形とだいたい同程度になるように調整する。つまり、図9に示した検知用波形50’の吐出パルス14における第3信号要素14cの電位差(電圧変化量)を図2で説明した記録用波形(駆動波形10)における吐出パルス14の第3信号要素14cの電位差|V−V|とほぼ等しくする。
<残響抑制部の変形例について>
ここで残響抑制部の形態について説明する。
<<引きの動作による残響抑制波形>>
図10は、図2、図4及び図5で説明した逆位相での「引き」による残響抑制波形である。図10に示したように、吐出パルス14の押し波形要素(符号14c)に続いて、電位を一定期間維持する波形要素(符号60a)と、電位を基準電位に戻す引き波形要素(符号60b)を含んで構成される。
吐出パルス14の押し波形要素(14c)の立ち上がり開始タイミングから、引き波形要素(符号60b)の立ち下げ開始タイミングまでの時間が共振周期Tcと同等に設定されることが好ましい。
<<二段押しの動作による残響抑制波形>>
図11は「押し」の動作によって残響を抑制するものであり、吐出パルス14の押し波形要素(符号14c)の後に、さらに「押し」の波形要素(符号70b)を加え、2段階で圧力室を収縮させる方式の残響抑制波形である。
図11に示す残響抑制部70は、最終吐出パルス14の押し波形部(第3信号要素14c)で上昇させた電位Vを維持する信号要素70aと、その信号要素70aが維持する電位から基準電位若しくはそれを超える電位Vに電位を上昇させる(圧力室を収縮させる)押し波形要素70bと、その電位Vを維持する信号要素70cとを含む。
この2段押しタイプの残響抑制部70は、「押し」の動作で逆位相にする必要があるため、1段目の押しの開始タイミング(押し波形部(第3信号要素14c)の立ち上がりタイミング)から2段目の押しの開始タイミング(押し波形要素70bの立ち上がりタイミング)までの時間が共振周期の1/2であること(Tc/2)が好ましい。
残響抑制の作用を弱めるには、信号要素70aの時間を調整したり、電圧Vの値を調整すればよい。
<<ポストパルスによる残響抑制波形>>
図12は、最終吐出パルス14の後にポストパルスを付加して残響を抑制する波形である。すなわち、この残響抑制部80は、最終吐出パルス14の押し波形部(第3信号要素14c)で上昇させた電位(ここでは基準電位Vを例示)を維持する信号要素80aと、圧力室を収縮させる押し波形要素80bと、押し波形要素80bで上昇させた電位Vを維持する波形要素80cと、電位Vから基準電位に戻す引き波形要素80dを含む。
ポストパルスの引き動作によって、残響を抑制するため、最終吐出パルス14の立ち上げ開始タイミングから、ポストパルスの立ち下げ開始タイミングまでの時間が共振周期Tcと同等とする構成が好ましい。
残響抑制の作用を弱めるには、引き波形要素80dの立ち下げタイミングを調整したり、電圧Vの値を調整すればよい。
<メニスカスの盛り上がり量をさらに増大させるため工夫>
上述した検知用波形の利用と組み合わせて、さらに、メニスカスの盛り上がり量を大きくするために、メニスカスにかかる圧力を通常の印字時よりもノズル外部側(溢れる方向)になるように調整することが有効である。また、クロストークの影響が大きくなる条件で検査波形を印字することでもメニスカスを盛り上げることができる。
異常ノズル検知用波形でも検知が困難な異常ノズルに対して、さらにメニスカスが溢れ易い条件で異常ノズル検知用波形による吐出(検知用の印字)を行うことで、検知が可能になる。ここでは、メニスカスが溢れやすい条件で印字する例として、(1)メニスカスにかかる圧力を通常の印字時よりもノズル外部側(ノズルから液が溢れる方向)になるように調整する態様と、(2)クロストークの影響が大きくなる条件で検査波形を印加する態様と、を説明するが、これらを組み合わせてもよい。
<<メニスカスの圧力制御(背圧制御)について>>
図には示さないが、インクジェットヘッドのノズル面には、いわゆるマトリクス配列により複数のノズルが形成されている。また、インクジェットヘッドにはインクタンクが接続されており、各ノズルにインクが供給される。インク供給系は、ヘッド内のインクに適正な負圧(背圧)を与える背圧調整の手段を備える。背圧調整手段は、水頭差を利用するもの、毛細管力を利用するもの、ポンプを利用するもの、或いはこれらの組み合わせなどがある。背圧は、大気圧を基準としたインク供給系内の圧力を意味する。背圧が過度に低いとノズル内におけるメニスカスの湾曲(凹面型のアーチ形状)が大きくなり、インク吐出後に気泡を巻き込みやすくなる。その一方、背圧が過度に高いと、ノズルからインクが漏れてしまう。したがって、このような不具合が生じない適正な範囲で背圧は調整される。
異常ノズル検知用の吐出を行う際には、メニスカスにかかる圧力を通常の印字時よりもノズル外側に溢れる方向に調整することが好ましい。すなわち、通常、インクジェットヘッドは、負圧がかかっているので、メニスカスはひかれた状態で(表面張力と負圧によって)、ある位置で維持されている。異常ノズルを検知するための吐出動作を行う際に、メニスカスにかかる圧力を高める調整を行い、メニスカスが溢れやすい状況で、異常ノズル検知用の波形を用いて検知用の吐出を行う。これにより、メニスカスの盛り上がり量をより一層増大させることができ、異常ノズルの検知性能を高めることができる。
<<クロストークの利用について>>
多数のノズル(吐出口)を有するインクジェットヘッドでは、近傍ノズルからの吐出の有無により、吐出インク量(液滴量)並びに吐出速度(液滴の飛翔速度)が変化することが知られている。このような現象を以下、「クロストーク」と呼ぶ。これは、吐出時におけるインク室のインク量減少に伴い生じるメニスカス力、又は吐出に伴う圧力波に起因する。
例えば、同じ流路に接続されている複数の圧力室(ノズル)において、使用するノズル数や駆動周期によって、滴量や滴速が変化する。クロストークは、隣接ノズルが駆動されることで流体的な相互作用により吐出状態が影響を受ける現象であり、通常、固有振動数とは異なる周期で励起される。クロストークは吐出の際の残響音波の伝播により、他のノズルの吐出に影響を与えることであるため、厳密に言えば接続されている全流路が影響する。ただし、その影響度はノズルと各流路間の抵抗に依存する。
クロストークは、同一流路内で吐出数が多いほど起こりやすい。特に、同一流路に属するノズルからの同時吐出数が多い場合に、起こりやすい。また、ヘッド内の流路構造の特性から、特定ノズルから吐出が連続する場合や吐出周波数が特定周波数である場合に起こりやすい傾向がある。
クロストークが強まる条件の下で、異常ノズル検知用の吐出を行うことにより、一層の検知性能の向上を達成できる。具体的には、クロストークが発生しやすいノズル個数(同時使用ノズル数)や駆動周期(クロストークを励起する周波数)で駆動を行うことにより、メニスカスを一層盛り上げることができる。
クロストークの影響が最も大きくなる条件として、インクジェットヘッドのうち複数ノズルを同時駆動させた際の滴量(液滴重量)、若しくは滴速が極大若しくは極小となる周波数を用いることが好ましい。滴量若しくは滴速が極大になる周波数を用いることにより、クロストークが吐出方向に力を与えるように働く。逆に、滴量若しくは滴速が極小になる周波数を用いることにより、クロストークは、吐出方向と反対方向(インクを吐出しにくくする方向)に力を与えるように働く。メニスカスの盛り上がり量を増やす場合には、滴量若しくは滴速が極小になる周波数を用いることが好ましい。
<異常ノズルの検知方法について>
図7〜図9で説明したように、描画記録用の駆動波形(記録用波形)とは異なる特別の波形(異常ノズル検知用波形)を用いてテストパターン(「テストチャート」ともいう。)を打滴し、このテストチャートの印字結果から異常ノズルの有無を検知する。
この異常ノズル検知用波形は、記録用波形に比べて、ノズルにおける異常の具合を増幅することができる。したがって、記録用波形を用いた描画記録時に記録不良が発生する前の段階で早期に異常検出が可能である。また、低解像度検出器での検出が可能であるとともに、高速検出、高感度検出が可能である。
また、ノズル内部要因とノズル外部要因の両方の故障原因に対応して、複数種類の異常ノズル検知用波形を用い、異常ノズルを検知することにより、それぞれの故障原因による吐出不良を高感度で検出することが可能である。
更に、目的の画像を描画記録中に、記録媒体の非画像部(余白部分)に異常ノズル検知用波形を用いてテストチャートを形成し、このテストチャートの印字結果から異常ノズル検知を行うことができる。そして、異常ノズルが検知されたときには、当該異常ノズルの使用を止めて残りの正常ノズルのみで良好な画像出力ができるように画像データを修正し、当該修正後の画像データに基づき、目的の画像の印刷を継続することができる。こうして、記録用波形の駆動信号を用いた画像部の描画記録で不具合が発生するまでの間に、早めに異常ノズルを発見してこれに対処し、連続記録(連続印刷)を可能とする。すなわち、画像部の描画について実際に不具合が発生する前に、吐出不良となりそうな異常ノズルを早期に検知して、これを不吐化処理し、その不吐化による影響を残りのノズルで補うように画像データを補正する。このため、連続記録中に発生する不具合に対して、損紙の発生やスループット低下を回避して、印刷を継続することができる。
<インクジェット記録装置の構成>
次に、上記の不吐検出技術を適用したインクジェット記録装置の構成例について説明する。図13は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。このインクジェット記録装置100は、インク打滴部108の圧胴(描画ドラム)126cに保持された記録媒体114(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)に直接的に複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インク及び処理液(ここでは凝集処理液)を用いて、記録媒体114上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたドロップオンデマンドタイプの画像形成装置である。
インクジェット記録装置100は、主として、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制剤を付与する浸透抑制剤付与部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114にインクを打滴するインク打滴部108と、記録媒体114上に形成された画像を定着させる定着部110と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部112を備えて構成される。
給紙部102には、枚葉紙の記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120に積載された記録媒体114は上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出され、渡し胴124aを介して、浸透抑制剤付与部104の圧胴(浸透抑制剤ドラム)126aに受け渡される。
圧胴126aの表面(周面)には、記録媒体114の先端を保持する保持爪115a,115b(グリッパ)が形成されている。渡し胴124aから圧胴126aに受け渡された記録媒体114は、保持爪115a,115bによって先端を保持されながら圧胴126aの表面に密着した状態(即ち、圧胴126a上に巻きつけられた状態)で圧胴126aの回転方向(図12において反時計回り方向)に搬送される。後述する他の圧胴126b〜126dについても同様な構成が適用される。また、渡し胴124aの表面(周面)には、記録媒体114の先端を圧胴126aの保持爪115a,115bに受け渡す部材116が形成されている。後述する他の渡し胴124b〜124dについても同様な構成が適用される。
〔浸透抑制剤付与部〕
浸透抑制剤付与部104には、圧胴126aの回転方向(図13において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器が設けられる。圧胴126aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、熱風乾燥器によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114の表面に向かって吹き付けられる構成となっている。
浸透抑制剤吐出ヘッド130は、圧胴126aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を含有した溶液(以下、単に「浸透抑制剤」ともいう。)を吐出する。本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制剤を付与する手段として、打滴方式を適用したが、これに限定されず、例えば、ローラ塗布方式、スプレー方式、などの各種方式を適用することも可能である。
浸透抑制剤は、後述する処理液及びインク液に含まれる溶媒(及び親溶媒的な有機溶剤)の記録媒体114への浸透を抑制する。浸透抑制剤としては、樹脂粒子を溶液中に分散(または溶解)させたものを用いる。浸透抑制剤の溶液としては、例えば、有機溶剤または水を用いる。浸透抑制剤の有機溶剤としては、メチルエチルケトン、石油類、等が好適に用いられる。
用紙予熱ユニット128は、記録媒体114の温度T1を、浸透抑制剤の樹脂粒子の最低造膜温度Tf1よりも高くする。温度T1の調整方法には、圧胴126aの内部に設置したヒータ等の発熱体を用いて記録媒体114を下面から加熱する方法、記録媒体114の上面に熱風を当てて加熱する方法などがあり、本例では赤外線ヒータ等を用いて記録媒体114の上面から加熱する方法を用いている。これらの方法を組み合わせてもよい。
浸透抑制剤の付与方法には、打滴、スプレー塗布、ローラ塗布等が好適に用いられる。打滴の場合には、後述するインク液の打滴箇所及びその周辺のみに、選択的に浸透抑制剤を付与することができるので、好適である。また、カールが発生し難い記録媒体114の場合には、浸透抑制剤の付与を省略してもよい。
浸透抑制剤付与部104に続いて処理液付与部106が設けられている。浸透抑制剤付与部104の圧胴(浸透抑制剤ドラム)126aと処理液付与部106の圧胴(処理液ドラム)126bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124bが設けられている。これにより、浸透抑制剤付与部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤が付与された後、渡し胴124bを介して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
〔処理液付与部〕
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図13において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット134は、浸透抑制剤付与部104の用紙予熱ユニット128と同一構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、異なる構成が適用されてもよい。
処理液吐出ヘッド136は、圧胴126bに保持される記録媒体114に対して処理液を打滴するものであり、インク打滴部108の各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kと同一構成が適用される。
本例で用いられる処理液は、インク打滴部108に配置される各インク打滴ヘッド140M、140K、140C、140Yから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
処理液乾燥ユニット138には、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器が設けられており、圧胴126bに保持された記録媒体114が処理液乾燥ユニット138の熱風乾燥器に対向する位置を通過する際、熱風乾燥器によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。
熱風乾燥器の温度や風量は、圧胴126bの回転方向上流側に配置される処理液吐出ヘッド136により記録媒体114上に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような値に設定される。
ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
また、「凝集処理剤」は、固体状又は半固溶状のものだけでなく、それ以外の液体状のものも含む広い概念で用いるものとし、特に、含溶媒率を70%以上として液体状にした凝集処理剤を「凝集処理液」と称する。
記録媒体114上の処理液(凝集処理剤層)の含溶媒率を変化させたときの色材移動についての評価実験によれば、処理液付与後に、処理液の含溶媒率が70%以下となるまで処理液を乾燥させたときには色材移動が目立たなくなり、更に50%以下まで処理液を乾燥させると目視による色材移動の確認ができないほど良好なレベルとなり、画像劣化の防止に有効であることが確認された。
このように記録媒体114上の処理液の含溶媒率が70%以下(好ましくは50%以下)となるまで乾燥を行って、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層を形成することにより、色材移動による画像劣化を防止することができる。
〔インク打滴部〕
処理液付与部106に続いてインク打滴部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴(処理液ドラム)126bとインク打滴部108の圧胴126cとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124cが設けられている。これにより、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを介してインク打滴部108の圧胴126cに受け渡される。
インク打滴部108には、圧胴126cの回転方向(図13において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、CMYKの4色のインクにそれぞれ対応したインク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kが並んで設けられており、更に、その下流側に溶媒乾燥ユニット142a、142bが設けられている。
各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、上述した処理液吐出ヘッド136と同様に、液体を吐出する方式の記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)が適用される。即ち、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
インク貯蔵/装填部(不図示)は、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kにそれぞれ供給するインクを各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各インク打滴ヘッドに対してそれぞれ対応するインクを供給する。インク貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
インク貯蔵/装填部の各インクタンクから各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kにインクが供給され、画像信号に応じて各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kから記録媒体114に対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kは、それぞれ圧胴126cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図12中不図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図13参照)。各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kが圧胴126cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、圧胴126cによって記録媒体114を一定の速度で搬送し、この搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例のインクジェット記録装置100は、例えば最大菊半サイズの記録媒体(記録用紙)までの記録が可能であり、圧胴(描画ドラム)126cとして、例えば記録媒体幅720mmに対応した直径810mmのドラムが用いられる。また、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kのインク吐出体積は例えば2plであり、記録密度は主走査方向(記録媒体114の幅方向)及び副走査方向(記録媒体114の搬送方向)ともに例えば1200dpiである。
また、本例では、CMYKの4色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて、R(赤)、G(緑)、B(青)インク、淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
また、図には示されていないが、予備吐出や吸引動作などのヘッドメンテナンスは、ヘッドを圧胴126c(描画ドラム)の直上の画像記録位置(描画位置)から所定のメンテナンス位置(例えば、圧胴126c軸方向のドラム外の位置)へ退避させた状態で実行するように構成されている。
溶媒乾燥ユニット142a、142bは、上述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138と同様に、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥器を含んで構成される。記録媒体114の表面上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、溶媒乾燥ユニット142a、142bの熱風乾燥器によって、溶媒成分を蒸発させ、乾燥を行っている。
インク打滴部108に続いて定着部110が設けられている。インク打滴部108の圧胴(描画ドラム)126cと定着部110の圧胴(定着ドラム)126dとの間には、これらに対接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、インク打滴部108の圧胴126cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124dを介して定着部110の圧胴126dに受け渡される。
〔定着部〕
定着部110には、圧胴126dの回転方向(図12において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置に、インク打滴部108による印字結果を読み取るインライン検出部144、加熱ローラ148a、148bがそれぞれ設けられている。
インライン検出部144は、出力画像を読み取る読取手段であり、インク打滴部108の印字結果(各インク打滴ヘッド140C、140M、140Y、140Kの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能したり、色情報を取得する測色手段として機能する。
本例では、記録媒体114の画像記録領域又は非画像領域(いわゆる余白部)にラインパターンや濃度パターン、或いはこれらの組合せなどによるテストパターンを形成し、インライン検出部144によってこのテストパターンを読み取り、その読取結果に基づいて、色情報の取得(測色)や濃度むらの検出、各ノズルについて吐出異常の有無の判定など、インライン検出が行われるように構成されている。
加熱ローラ148a、148bは、所定の範囲(例えば100℃〜180℃)で温度制御可能なローラであり、加熱ローラ148a、148bと圧胴126dとの間に挟みこまれた記録媒体114を加熱加圧しながら、記録媒体114上に形成された画像を定着させ
る。加熱ローラ148a、148bの加熱温度は、処理液又はインクに含有されているポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。
定着部110に続いて排紙部112が設けられている。排紙部112には、画像が定着された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
<ヘッドの構造>
次に、ヘッドの構造について説明する。各ヘッド130、136、140C、140M、140Y、140Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図14(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図14(b) はその一部の拡大図である。また、図15はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図16は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図14中のA−A線に沿う断面図)である。
図14に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に2次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体114の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図14(a) の構成に代えて、図15(a)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図15(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図14(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への
流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。図16に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと、圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が2次元的に形成されている。
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図16では簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロ
セスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
圧力室252の一部の面(図16において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えたピエゾアクチュエータ258が接合されている。本例の振動板256は、ピエゾアクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置されるピエゾアクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
個別電極257に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図14(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図14で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
<制御系の説明>
図17は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示すブロック図である。図17に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファ
メモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ172は、インライン検出部144から読み込んだテストチャートの読取データから着弾位置誤差のデータや濃度分布を示すデータ(濃度データ)を生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部172Aと、測定された着弾位置誤差の情報や濃度情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部172Bとを含んで構成される。なお、着弾誤差測定演算部172A及び濃度補正係数算出部172Bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度補正係数算出部172Bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正係数記憶部190に記憶される。
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(テストチャートを打滴するためのデータ、異常ノズル検知用の波形データ、描画記録用の波形データ、異常ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を濃度補正係数記憶部190として兼用する構成も可能である。
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための
各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド250の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
すなわち、プリント制御部180は、濃度データ生成部180Aと、補正処理部180Bと、インク吐出データ生成部180Cと、駆動波形生成部180Dとを含んで構成され
る。これら各機能ブロック(180A〜180D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部180Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
補正処理部180Bは、濃度補正係数記憶部190に格納されている濃度補正係数を用いて濃度補正の演算を行う処理手段であり、ムラ補正処理を行う。この補正処理部180Bは後述する第1補正方法及び第2補正方法の各方法による処理を行う。
インク吐出データ生成部180Cは、補正処理部180Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に、M値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も単純な例では、2値(ドットのオン/オフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
インク吐出データ生成部180Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド250のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部180Dは、ヘッド250の各ノズル251に対応したアクチュエータ258(図16参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
駆動波形生成部180Dは、記録用波形の駆動信号と、異常ノズル検知用波形の駆動信号とを選択的に生成する。各種波形データは予めROM175に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図17において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
インクジェット記録装置100では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180の濃度データ生成部180A、補正処理部180B、インク吐出データ生成部180Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド250のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド250の各ノズル251に対応するアクチュエータ258を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド250に加えられることによって、該当するノズル251からインクが吐出される。記録媒体114の搬送速度に同期してヘッド250からのインク吐出を制御することにより、記録媒体114上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
インライン検出部144は、図13で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体114に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じてインライン検出部144から得られる情報に基づいてヘッド250に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
図中のメンテナンス機構194は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
また、ユーザインターフェースとしての操作部196は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置197と表示部(ディスプレイ)198を含んで構成される。入力装置197には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置197を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部198の表示を通じて確認することができる。この表示部198はエラメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
本実施形態のインクジェット記録装置100は、複数の画質モードを有しており、ユーザの選択操作により、または、プログラムによる自動選択により、画質モードが設定される。この設定された画質モードで要求される出力画質レベルに応じて、異常ノズルを判断する基準が変更される。要求品質が高いほど、判定基準は厳しい方向に設定される。
各画質モードの印刷条件並びに異常ノズル判定基準に関する情報はROM175に格納
されている。
図17で説明した着弾誤差測定演算部172A、濃度補正係数算出部172B、濃度データ生成部180A、補正処理部180Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ186側に搭載する態様も可能である。
図17の駆動波形生成部180Dが「記録用波形信号生成手段」及び「異常ノズル検知用波形生成手段」に相当する。また、システムコントローラ172及びプリント制御部180の組合せが「検知用吐出制御手段」、「補正制御手段」及び「記録用吐出制御手段」に相当する。
<インライン検出部の構成例>
図18は、インライン検出部144の構成図である。インライン検出部144は、ラインCCD270(「画像読取手段」に相当)と、そのラインCCD270の受光面に画像を結像させるレンズ272、光路を折り曲げるミラー273とを一体とした読取センサ部274が、並列に配置され、記録媒体上の画像を夫々読み取る。ラインCCD270はRGB3色のカラーフィルタを備えた色別のフォトセル(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能である。例えば、RGB3ライン夫々のフォトセルアレイの隣には、1ライン中の偶数画素と奇数画素の電荷とを夫々、別々に転送するCCDアナログシフトレジスタを備える。
具体的には、画素ピッチ9.325μm、7600画素×RGB、素子長(フォトセルの配列方向のセンサ幅)70.87mmのNECエレクトロニクス株式会社のラインCCD「μPD8827A」(商品名)を用いることができる。
ラインCCD270は、フォトセルの配列方向と記録媒体が搬送されるドラムの軸が平行になる配置形態で、固定される。
レンズ272は搬送ドラム(図13の圧胴126d)上に巻かれた記録媒体上の画像を所定の縮小率で結像させる縮小光学系のレンズである。例えば、0.19倍に画像を縮小するレンズを採用した場合、記録媒体上の373mm幅がラインCCD270上に結像される。このとき、記録媒体上の読み取り解像度は518dpiとなる。
図18のようにラインCCD270と、レンズ272、ミラー273とを一体とした読取センサ部274を搬送ドラムの軸と平行に移動調整可能とし、2つの読取センサ部274の位置を調整して、夫々の読取センサ部274が読み取る画像が僅かに重なる配置とする。また、図示されていないが、検出のための照明手段として、例えば、キセノン蛍光ランプがブラケット275の裏面、記録媒体側に配置され、定期的に白色基準板が画像と照明の間に挿入され、白基準を測定する。その状態でランプを消灯して、黒基準レベルを測定する。
ラインCCD270の読み取り幅(一度に検査できる範囲)は、記録媒体における画像記録領域の幅との関係で多様な設計が可能である。レンズ性能と解像度の観点から、例えば、ラインCCD270の読み取り幅は、画像記録領域の幅(検査対象となり得る最大の幅)の1/2程度としている。
ラインCCD270によって得られた画像データは、A/Dコンバータ等によってデジタルデータに変換され一時的なメモリへ格納された後、システムコントローラ172を介して処理され、画像メモリ174へ格納される。
<オンライン吐出不良検知用パターンの形成例>
図19は、印刷中に異常ノズルを早期に検知するための検知用パターン(テストチャート)の形成例である。ここでは、記録媒体114における画像形成領域302の外側の余白部分(「非画像領域」)304に検知用パターン310を形成している。図19において縦方向の下向きが記録媒体搬送方向である。記録媒体114の搬送方向について用紙先端側の余白部分304に検知用パターン310を形成したが、用紙後端部の余白部分に検知用パターンを形成することもできる。
画像形成領域302は、目的の画像を描画する領域である。画像形成領域302に目的の画像を描画記録した後は、裁断線306に沿って裁断され、周囲の非画像部を除去して当該画像形成領域302の画像部が製品印刷物として残される。
検知用パターン310としては、例えば、ヘッド内の各ノズルについて独立した副走査方向ラインを形成できる、いわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターンが形成される。
1つのノズルから連続的に液滴を吐出しつつ、記録媒体114を搬送することにより、記録媒体114上には当該ノズルからの着弾インクによるドットが副走査方向にライン状に並んだドット列(ライン)が形成されるが、高記録密度のラインヘッドの場合、全てのノズルから同時に打滴すると隣接ノズルによるドット同士が部分的に重なり合うため、ノズル毎のラインを判別できなくなる。各ノズルで形成されるラインを個別に判別できるようにするため、同時吐出するノズル間の間隔を、少なくとも1ノズル、好ましくは3ノズル以上、あけてライン群を形成する。
本例では、1つのラインヘッドにおいて、実質的に主走査方向に沿って1列に並ぶノズル列(正射影によって得られる実質的なノズル列)を構成するノズルについて、その主走査方向の端から順番にノズル番号を付与したとき、ノズル番号を2以上の整数「A」で除算したときの剰余数「B」(B=0,1・・A−1)によって同時吐出するノズル群をグループ分けし、AN+0、AN+1、・・・AN+Bのノズル番号のグループごとに打滴タイミングを変えて、それぞれ各ノズルからの連続打滴によるライン群を形成する(ただし、Nは0以上の整数)。
これにより、各ラインブロック内で隣接ライン同士が重なり合わず、全ノズルについてそれぞれ独立したラインを形成できる。CMYKの各インク色に対応するヘッドについて、同じような検知パターンが形成される。
ただし、記録媒体114における非画像部304の領域には制限があるため、1枚の記録媒体114における非画像部304に全ヘッド全ノズル分のラインパターン(テストチャート)を形成できないことがある。このような場合は、複数枚の記録媒体114に分けてテストチャートが形成される。例えば、1枚の記録媒体114における非画像部304に形成できるテストチャートが全ノズルの1/8であるとすると、8枚の記録媒体114に分けて全ノズルの打滴結果をチェックすることになる。
また、異常ノズル検知用波形として、ノズル内部要因の増幅に適した波形と、ノズル外部要因の増幅に適した波形の2種類の波形を用いる場合には、更に2倍の16枚の記録媒体で全ヘッド全ノズルの要因別チェックが可能となる。そして、全ヘッドの全ノズルについて異常の有無を確認し、発見された異常ノズルに対する補正処理が行われるまでの間も画像部についての描画記録は継続することができる。
ただし、全ノズルの確認が一巡するまでに多くの枚数を要することになるため、ノズル内部要因の増幅に適した波形、又は、ノズル外部要因の増幅に適した波形のいずれか1種類の波形のみを用いる構成も可能である。また、ノズル内部要因の増幅に適した波形による検知とノズル外部要因の増幅に適した波形による検知の実施頻度を異ならせる構成も可能である。
<ムラ補正シーケンスのフローチャート(例1)>
図20は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置におけるムラ補正のシーケンスを示すフローチャートである。本例のムラ補正は、印刷ジョブによる連続印刷の開始前に、装置内のセンサ(インライン検出部144)によってテストチャートを測定して補正データを取得する事前補正の工程(ステップS11)と、連続印刷中にインライン検出部144でテストチャートを測定することで、連続印刷を実施しながら(印刷を中断することなく)、適応的に補正を行うオンライン補正の工程(ステップS20〜S38)とを組み合わせたものとなっている。
事前補正の工程(ステップS11)では、事前ムラ補正の処理と並行して事前吐出不良検知の処理が行われる。
図21に事前補正処理のフローチャートを示す。図21に示すように、事前補正処理では、まず、記録媒体(用紙)の画像部に描画用駆動波形を用いてオンライン吐出不良検知用ムラ補正パターンを描画する(ステップS101)。このオンライン吐出不良検知用ムラ補正パターンには、各ノズルの着弾位置ばらつき(着弾誤差)の測定に適したラインパターン、不吐ノズルの位置を特定するのに適したラインパターン、濃度ムラなどの測定に適した濃度パターンなどを含んでよい。1枚の記録媒体にこれらテストパターンを組み合わせて印字してもよいし、各テストパターンの要素を複数枚の記録媒体に分けて印字してもよい。
こうして出力されたムラ補正パターンの印字結果を装置内のインライン検出部144を利用して読み取り、濃度データや、各ノズルの着弾位置誤差を示す着弾誤差データ、不吐出ノズルの位置を特定した不吐出ノズルデータなど、画像補正等の処理に必要な各種データを生成する(ステップS102)。
このムラ補正パターンの測定結果を利用して、インクジェット記録装置100は、所定の補正方法を適用してムラ補正を行う(ステップS103)。ここでは、補正方法として、後述する第1補正方法又は第2補正方法のうち、いずれか1種類の補正方法を適用する。
また、上記ステップS101〜S103で示した事前ムラ補正と並行して、ステップS104〜S109に示す事前吐出不良検知が行われる。すなわち、用紙先端部若しくは画像部に、異常ノズル検知用波形でオンライン吐出不良検知用パターン(テストチャート)を形成し(ステップS104)、これをインライン検出部144により測定する(ステップS105)。なお、異常ノズル検知用波形は、1種類又は複数種類の波形が用いられる。ノズル内部・外部の異常原因に対応できる波形又は複数種類の波形を用いることが好ましい。
この測定結果から吐出不良ノズルを検知し(ステップS106)、特定した吐出不良ノズルを不吐出化処理する(ステップS107)。つまり、描画時の打滴に使用しないものとする。また、ヘッド中の不吐出ノズルの情報(不吐出ノズルデータ)を生成し(ステップS108)、これをメモリ等の記憶手段に保存する。
そして、これら不吐出ノズルに対応したムラ補正の処理を行う(ステップS109)。このときのムラ補正の方法は、ステップS103で採用する補正方法と同じ方法を採用することが可能である。また、ステップS103とは異なる補正方法を採用してもよい。
上記のような事前補正の工程(ステップS101〜109)によって取得された補正係数のデータ、並びに不吐出ノズルデータ、着弾誤差データは、インクジェット記録装置100内の記憶手段(好ましくは、不揮発性記憶手段、例えば、ROM175)に格納される。
なお、図21で説明した事前補正を実施するタイミングは特に限定されないが、例えば、数日に1回の頻度で、装置起ち上げ時などに行われる。
(第1補正方法について)
第1補正方法として、例えば、特開2006−347164号公報に開示された公知の補正手段を用いることができる。この方法は、着弾誤差による濃度ムラを是正することができる。同公報には、次の構成からなる画像記録装置(1)〜(8)が開示されている。
(1)複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッド及び被記録媒体のうち少なくとも一方を搬送して前記記録ヘッドと前記被記録媒体を相対移動させる搬送手段と、前記記録素子の記録特性を示す情報を取得する特性情報取得手段と、前記複数の記録素子のうち、その記録素子の記録特性に起因する濃度ムラを補正する補正対象記録素子を決定する決定手段と、前記複数の記録素子のうち、出力濃度の補正に用いるN個(ただし、Nは2以上の整数)の補正記録素子を設定する補正範囲設定手段と、前記補正対象記録素子の記録特性に起因する濃度ムラを算出し、同濃度ムラの空間周波数特性を表すパワースペクトルの低周波成分を低減する補正条件に基づいて前記N個の補正記録素子の濃度補正係数を決定する補正係数決定手段と、前記補正係数決定手段で決定された濃度補正係数を用いて出力濃度を補正する演算を行う補正処理手段と、前記補正処理手段による補正結果に基づいて前記記録素子の駆動を制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする画像記録装置。
(2)前記補正条件は、濃度ムラの空間周波数特性を表すパワースペクトルの周波数原点(f=0)における微分係数が略0となる条件であることを特徴とする(1)に記載の画像記録装置。
(3)前記補正条件は、空間周波数の直流成分の保存条件と、N−1次までの微分係数が略0となる条件より得られるN本の連立方程式で表されることを特徴とする(2)記載の画像記録装置。
(4)前記記録特性は、記録位置誤差であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れか1項に記載の画像記録装置。
(5)前記記録素子の位置を特定するインデックスをiとし、記録素子iの記録位置をxiとするとき、記録素子iの濃度補正係数diは、次式
を用いて決定されることを特徴とする(4)記載の画像記録装置。
(6)前記記録素子の印字モデルを記憶する記憶手段を備え、
前記補正係数決定手段は、前記印字モデルに基づいて前記補正係数を決定することを特徴とする(1)又は(2)記載の画像記録装置。
(7)前記記録素子の記録状態に基づいて前記印字モデルを変更する変更手段を備えることを特徴とする(6)記載の画像記録装置。
(8)前記印字モデルは半球モデルであることを特徴とする(6)又は(7)記載の画像記録装置。
記録画像における濃度の不均一性(濃度ムラ)は、空間周波数特性(パワースペクトル)での強度で表すことができ、濃度ムラの視認性はパワースペクトルの低周波成分で評価できる。例えば、濃度補正データを用いた補正後のパワースペクトルの周波数原点(f=0)における微分係数が略0となる条件を用いて濃度補正係数を決めることで、周波数原点でのパワースペクトルの強度が最小となり、原点付近(すなわち、低周波領域)のパワースペクトルを小さく抑えることができる。これにより、精度のよいムラ補正を実現できる。
特開2006−347164号公報に開示された補正方法を用い、補正対象ノズル及びその周辺の補正範囲に含まれるノズルに対応する濃度補正係数を求める。ノズルの記録特性(着弾誤差など)に起因する濃度ムラを算出し、同濃度ムラの空間周波数特性を表すパワースペクトルの低周波成分を低減する補正条件に基づいて濃度補正データを算出する。当該濃度補正データを用いて、印刷用の入力画像データに対して画像データの補正を行う。
この画像データの補正処理は、ハーフトーニング処理(2値又は多値のドットデータに変換する処理)の手前段階の連続階調画像データに対して実施することが好ましい。
(第2補正方法について)
第2補正方法としては、特願2008−254809号の明細書に提案された補正方法を適用できる。第2補正方法では、不吐出ノズルを特定し、不吐出ノズル以外の周囲ノズルによって、その不吐出ノズルの濃度を補うように画像データを補正する補正係数を算出する。特願2008−254809号の明細書では、次の構成([1],[2])を提案している。
[1]所定の方向に配置された複数の記録素子を備えた記録ヘッドによって記録された濃度測定用テストチャートの画像を読み取って、各記録素子の記録濃度を示す濃度情報を取得する手段であって、前記記録素子の配列に沿う方向の読み取り解像度が前記記録素子の記録解像度よりも小さい濃度情報取得手段と、前記記録素子の不吐出の有無を示す不吐出情報を取得する不吐出情報取得手段と、前記不吐出取得手段によって取得した不吐出情報に基づいて、前記濃度情報取得手段によって取得した濃度情報を修正する濃度情報修正手段と、前記修正された濃度情報から濃度ムラ補正情報を算出する濃度ムラ補正情報算出手段と、前記不吐出情報に基づいて不吐出を補正する不吐出補正情報を算出する不吐出補正情報算出手段と、前記濃度ムラ補正情報と前記不吐出補正情報とを合算し画像データ補正情報を算出する画像データ補正情報算出手段と、を備える画像処理装置。
[2]前記濃度情報修正手段は、前記不吐出情報に基づいて不吐出の記録素子を特定し、該不吐出の記録素子に対応する濃度情報を修正前の濃度情報よりも高く修正する、[1]記載の画像処理装置。
なお、具体的な方法については、後述の図23〜図28で説明する。
図20のフローチャートの説明に戻り、ステップS11において事前補正の処理を行い、補正に必要なデータを取得後、適宜のタイミングで多数枚の連続印刷を行う印刷JOBが開始される(ステップS20)。印刷開始後は、第2補正方法に準じた補正方法によるオンライン補正が行われる。すなわち、印刷が開始されると、用紙先端部の非画像部に、異常ノズル検知用波形でオンライン吐出不良検知用パターン(テストチャート)を形成し(ステップS22)、画像部については通常の描画用駆動波形の駆動信号によって目的の画像が描画記録される(ステップS24)。
図22は、オンライン吐出不良検知用テストチャートの例を示す平面図である。図22に示すように、このテストチャートC1は、インク打滴ヘッド250を用いてy方向(副走査方向)に略平行な線状のパターン200をx方向(主走査方向)に所定の間隔で印字したものである。ここで、パターン200のx方向の間隔dは、インライン検出部144の解像度に応じて設定される。例えば、インク打滴ヘッド250のx方向の実質的なノズル密度Nを1200npi、インライン検出部144のx方向の読み取り解像度Rを400dpiとした場合、パターン200のx方向の間隔dは、d≧1/R=1/400[インチ]となる。
不吐出検出用テストチャートC1を作成する場合、具体的には、x方向にn(≧3(=N÷R=1200÷400))ノズルおきにインクを吐出させて1行分のパターン200Lを印字する。次に、インクを吐出させるノズルをx方向に1つずらしてnノズルおきに印字する。これをn回繰り返すことにより、すべてのノズルからの液体吐出によるパターン200が印字される。これにより、すべてのノズルに対して、インライン検出部144の解像度で不吐出ノズルであるかどうかを判定することが可能なテストチャートC1を作成することができる。
テストチャートC1及び画像部の描画記録が完了した記録媒体114は、渡し胴124d及び圧胴126d等の搬送手段によって搬送され、インライン検出部144によってオンライン吐出不良検知用パターンの印字結果が読み取られる(図20のステップS26)。この読み取り情報を基に、吐出不良の有無が判定される(ステップS28)。
異常ノズルの判断基準に関する情報は、予めROM175等に記憶されており、画質モードに応じた判定基準値が設定される。例えば、飛翔曲がりによる着弾誤差の許容値や、ライン幅の許容値(吐出量の許容値)、濃度値など、1つ又は複数の評価項目に関する基準値が規定される。この基準値に従い異常ノズルの有無が判断され、異常ノズルが特定される。
ステップS28において、吐出不良(不吐出や飛翔曲がり)のノズルが存在しなければ、ステップS22に戻り、目的画像の印刷を継続しながら上記処理(ステップS22〜S28)を繰り返す。
その一方、ステップS28において、吐出不良のノズルが存在しているときは、当該異常ノズルの位置を特定し、この異常ノズルを画像部の描画時に使用しない不吐出ノズルとして取り扱うべく、不吐出ノズルを示す不吐出ノズルデータを更新する(ステップS30)。そして、次の記録媒体114の非画像部に、上記吐出不良に対応したムラ補正パターンを作成する(ステップS32)。このムラ補正パターンは、上記特定された異常ノズルからの打滴を禁止して(吐出を止めて)、残りの正常ノズルのみで濃度測定用のパターンを印字したものである。
非画像部においてムラ補正パターンを描画した場合の当該記録媒体114の画像部についての描画記録は、ステップS28で異常ノズルとして検出されたノズルも使用して(吐出させ)、かつ、通常の記録用波形の駆動信号を用いて行われる(ステップS32)。つまり、1枚前の印刷時と同じ条件で描画が続けられる。
図23は、濃度測定用テストチャート(ムラ補正パターン)の例を示す平面図である。図23に示すように、濃度測定用テストチャートC2は、x方向に濃度が一定で、y方向に濃度が段階的に変化する濃度パターンを印字したものである。この濃度測定用テストチャートC2の画像をインライン検出部144によって読み取ることにより、インライン検出部144のノズル列方向の画素位置(測定濃度位置)に対応する濃度データを得ることができる。なお、記録媒体114の余白領域の制約から、複数枚の記録媒体114に分けてテストチャートC2を形成してもよい。
ムラ補正パターン(テストチャートC2)及び画像部の描画記録が完了した記録媒体114は、渡し胴124d及び圧胴126d等の搬送手段によって搬送され、インライン検出部144によって、当該テストチャートC2の印字結果が読み取られる(図20のステップS36)。この読み取り情報からデータが得られ、主走査方向の濃度分布を表す濃度データが得られる。
そして、この測定結果を基に画像データが補正される(ステップS38)。
図24は、ステップS38における画像データの補正処理のフローチャートである。
濃度測定用チャートの濃度を測定した結果から、ノズル列方向(主走査方向;x方向という。)の濃度分布を示す濃度データを取得する(ステップS116)。次に、不吐出ノズルデータに基づいてノズル列方向の濃度データを修正する(ステップS118)。
図25は、図24のステップS118の濃度データの修正処理の詳細を説明するための図である。
まず、不吐出ノズルとして特定されたノズルに対して、x方向に隣り合うノズル対して不吐出濃度補正値(m1)を設定する(ステップS180)。ここで、不吐出濃度補正値(m1)は、予め実験的に定められてインクジェット記録装置100に保持された値であり、m1≧1(一例でm1=1.4〜1.6)である。なお、不吐出ノズルの両隣のノズル以外のノズルに対するm1の値は1.0である。そして、図25のm1’に示すように、ローパスフィルタ(LPF)又は移動平均演算により不吐出濃度補正値の値がx方向に平滑化(スムージング)される(ステップS182)。
次に、ノズル位置(ノズル番号)に対応する不吐出納所補正値m1’がインライン検出部144の画素位置(測定濃度位置)ごとの測定濃度修正値m1”に変換される(ステップS184)。図25に示す例では、説明の便宜上、ヘッド250のx方向のノズル密度1200npi、インライン検出部144のx方向の読み取り解像度400dpiとした。この場合、不吐出濃度補正値(m1’)を3(=1200÷400)ノズル単位で平均化することにより、測定濃度修正値が得られる。
次に、ステップS184において求めた測定濃度修正値m”により、下記の(式1)に従って、濃度データ(測定濃度値)を修正する(ステップS186)。
(修正された測定濃度値)=(測定濃度値)×(測定濃度修正値) …(式1)
図25に示す例では、測定濃度修正値は、不吐出ノズルを含む測定濃度位置及びその近傍の測定濃度位置では1.0より大きい値に設定され、当該測定濃度位置における測定濃度値は修正により高くなるようになっている。
次に、図23のステップS120に進み、ステップS118において修正された、インライン検出部144の測定濃度位置ごとの濃度データに基づいて、濃度ムラ補正値(シェーディングムラ補正値)を算出する(ステップS120)。
図26は、図24のステップS120の濃度ムラ補正値の算出処理の詳細を説明するための図である。図26に示すように、まず、インライン検出部144の画素位置(測定濃度位置)とノズル位置との対応関係を示す解像度変換曲線に従って、ステップS118において修正された測定濃度位置ごとの測定濃度値がノズル位置ごとの濃度データに変換される(ステップS200)。
次に、ステップS200により得られたノズル位置ごとの濃度データD1と目標濃度値D0との差分が算出される(ステップS202)。
次に、画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、ステップS202において算出された濃度値の差分が画素値の差分に変換される(ステップS204)。この画素値の差分は、ノズル位置ごとの濃度ムラ補正値として画像バッファメモリ182に記憶される(ステップS206)。
次に、図24のステップS122に進み、不吐出ノズルデータを用いて、濃度ムラ補正値を不吐出補正値で補正する(ステップS122)。即ち、図27に示すように、不吐出ノズルの両隣のノズルに不吐出補正値(m2)が設定される。ここで、不吐出補正値(m2)は、予め実験的に定められてインクジェット記録装置100に保持された値であり、m2≧1.0(一例でm2=1.4〜1.6)である。なお、不吐出ノズルの両隣のノズル以外のノズルに対するm2の値は1.0である。そして、下記の(式2)により濃度ムラ補正値が補正される。なお、下記の(式2)では、濃度ムラ補正値に不吐出補正値を乗算しているが、加算するようにしてもよい。
(修正された濃度ムラ補正値)=(濃度ムラ補正値)×(不吐出補正値)…(式2)
次に、濃度ムラ補正値を用いて、入力された画像データを補正して出力用画像データを生成する(図24のステップS124)。こうして得られた補正後の出力画像データに基づいて、次の描画プロセスで記録媒体上に画像が描画される。
すなわち、図20のステップS38後は、ステップS40において、印刷ジョブが完了したか否かを判定し、未完了であれば、ステップS22に戻って、次の記録媒体114への描画を行う。ステップS38で画像データを補正した後の画像部の描画に際しては、先の吐出不良検知において異常ノズルと認定されたノズルは使用せずに(不吐化して)、他の正常ノズルのみで記録が行われる。
こうして、印刷ジョブが完了するまで上記の処理(ステップS22〜S40)が繰り返される。ステップS40にて印刷ジョブの完了が確認されたら、印刷を終了する(ステップS42)。
上述のとおり、連続印刷中に、画像部の描画記録を実施しながら、非画像部においてテストチャートの形成と当該テストチャートの読み取りを行い、その読み取り結果からオンライン補正が行われる。
本実施形態によれば、不吐出ノズルの存在に起因する濃度ムラの補正を行う際に、濃度測定用テストチャートの読み取りに使用するインライン検出部144の解像度によらず、正確な濃度補正を行うことができる。また、インライン検出部144の解像度を低くすることができるので、濃度ムラ補正に関するデータ量を減らして処理を軽くすることができる。また、インライン検出部144として低解像度で安価なものを用いることができるので、装置のコストを下げることができる。
[他の補正方法]
次に、他の補正方法について説明する。なお、以下の説明において、図20〜図27で説明した実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図28は、図24のステップS118の濃度データの補正処理の詳細を示す図である。
図28に示すように、本実施形態では、濃度データの補正を行う際に、まず、解像度変換曲線に基づいて、不吐出ノズルデータの不吐出ノズルの位置を、インライン検出部144の測定濃度位置に変換する(ステップS180)。
次に、図20のステップS30において更新取得した不吐出ノズルデータに基づいて、インライン検出部144の測定濃度位置における不吐出ノズルの本数が求められ、不吐出発生本数テーブルT1に格納される(ステップS182)。図28に示す例では、ヘッド250のx方向のノズル密度1200npi、インライン検出部144のx方向の読み取り解像度400dpiとしているため、不吐出発生本数テーブルT1の各測定濃度位置における不吐出発生本数データとして0から3の値が保存される。
次に、不吐出発生本数データに基づいて、ノズル列方向の濃度データが下記の(式3)により修正される(ステップS184、S186)。
(修正された測定濃度値)=(測定濃度値)×(測定濃度修正値) …(式3)
ここで、測定濃度修正値は、実験的に決められたパラメータであり、インクジェット記録装置100のROM175に予め格納されている。図28に示す例では、測定濃度位置における不吐出ノズル数が多いほど、また、測定濃度値が大きいほど、測定濃度修正値が大きくなっている。即ち、ステップS186では、当該位置における不吐出ノズル数が多いほど、また、測定濃度値が大きいほど、当該位置における修正後の測定濃度値(濃度データ)が大きくなるように修正される。
本実施形態によれば、図24〜図27で説明した実施形態と同様、不吐出ノズルの存在に起因する濃度ムラの補正を行う際に、濃度測定用テストチャートの読み取りに使用するインライン検出部144の解像度によらず、正確な濃度補正を行うことができる。
[異常ノズルが多く検出された場合の対処]
図20のステップS28〜S30で説明した工程において、異常ノズルとして検知されたノズル数が所定の規定値を超えた場合には、使用者(ユーザ)に対して警告を行うことが好ましい。例えば、表示部198に警告メッセージを表示し、ヘッドメンテナンスの必要性等についてユーザに注意を喚起する。
或いは、上記の警告に代えて、又はこれと併せて、自動的にヘッドメンテナンスを実行する制御を行う態様も好ましい。この場合は、ヘッドをメンテナンス位置に移動する必要があるため、印刷を中断し、メンテナンス部において、加圧パージ、インク吸引、空吐出、ノズル面のワイピングなどのメンテナンス動作が実施される。
<ムラ補正シーケンスのフローチャートの例2>
図29は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置におけるムラ補正のシーケンスの第2例を示すフローチャートである。図29中、図21で説明したフローチャートと同一又は類似の工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図29に示したムラ補正シーケンスは、図20におけるインライン検出部を利用した事前補正に代えて、オフラインで事前補正を行うものとなっている。すなわち、図29に示すムラ補正は、印刷ジョブによる連続印刷の開始前に、オフラインでテストチャートを測定して補正データを取得する事前補正(オフライン補正)の工程(ステップS12〜S16)と、連続印刷中に装置内のセンサ(インライン検出部144)でテストチャートを測定することで、連続印刷を実施しながら(印刷を中断することなく)、適応的に補正を行うオンライン補正の工程(ステップS20〜S40)とを組み合わせたものとなっている。
図29に示すように、まず、オフライン測定用のテストチャートを出力し(ステップS12)、その印刷結果をオフラインスキャナ(不図示)によって詳細に測定する(ステップS14)。ここでいうテストチャートには、各ノズルの着弾位置ばらつき(着弾誤差)の測定に適したラインパターン、不吐ノズルの位置を特定するのに適したラインパターン、濃度ムラなどの測定に適した濃度パターンなどが含まれる。オフライン測定の場合は、記録媒体114の記録面全体(画像形成領域及び非画像領域)にテストパターンを形成することができる。
1枚の記録媒体にこれらテストパターンを組み合わせて印字してもよいし、各テストパターンの要素を複数枚の記録媒体に分けて印字してもよい。こうして出力されたテストチャートの印字結果をフラットベットスキャナなどの画像読取装置を利用して読み取り、各ノズルの着弾位置誤差を示す着弾誤差データや、不吐出ノズルの位置を特定した不吐出ノズルデータなど、画像補正等の処理に必要な各種データを生成する。なお、オフラインスキャナは、装置内のインライン検出部144よりも高解像度(高分解能)のものを使用することが望ましい。
こうして得られた各種データは、通信インターフェースや外部記憶媒体(リムーバブルメディア)等を介して、インクジェット記録装置100に入力される。
このオフライン測定結果を利用して、インクジェット記録装置100では、既述した着弾誤差による濃度ムラを是正する第1補正方法と、不吐出ノズルによる濃度ムラを是正する第2補正方法との2種類の補正方法を適用する。
こうして第1補正方法、第2補正方法の各方法で算出された補正係数のデータ、並びに不吐出ノズルデータ、着弾誤差データは、インクジェット記録装置100内の記憶手段(好ましくは、不揮発性記憶手段、例えば、ROM175)に格納される。
なお、オフラインの測定を実施するタイミングは特に限定されないが、例えば、数日に1回の頻度で、装置起ち上げ時などに行われる。また、オフライン測定用のテストチャートを形成する際には、記録用波形の駆動信号を用いることが可能であるし、異常ノズル検知用波形の駆動信号を用いても良く、両方の波形を用いて詳細に測定を行うことも可能である。ただし、着弾位置誤差を測定するためのテストチャートについては、記録用波形の駆動信号を用いることが好ましい。
図29のフローチャートにおけるステップS20以降の工程(ステップS20〜S42)は図20と同様であるため説明を省略する。
<ヘッド毎の駆動波形信号の微調整について>
CMYKの各ヘッド(又は、ヘッドモジュール)は、個々の特性により、それぞれ同じ駆動信号を与えた場合でも吐出される滴量や吐出速度が異なる場合がある。このため、ヘッド毎(又はヘッドモジュール毎)に波形の微調整を行う態様も好ましい。
例えば、異常ノズル検知用波形をヘッド毎に補正するための補正パラメータをROM175等に格納しておき、この補正パラメータを用いて各ヘッドに印加する駆動信号の波形を補正して良い。また、この補正パラメータを描画(記録)波形用の補正パラメータとして共通に用いて良い。
具体的な方法の例として、予め装置出荷時などに描画用(記録用)波形でテストパターンを描画し、画像の濃度(もしくはドット径)の測定結果から、各ヘッドの補正パラメータ(例えば、波形の電圧倍率)を決定しておく。この補正パラメータの情報は、ROM175などに記憶され、吐出駆動時の波形補正に利用される。また、当該補正パラメータは異常ノズル検知用波形の補正にも適用される。
<事前補正処理の他のフローチャート>
図30は、インクジェット記録装置100に適用される事前補正処理の他の例を示すフローチャートである。図30で説明する事前補正処理は、図20のステップS11や、図29のステップS12〜S16で説明した事前補正処理の部分に、これらに代えて適用可能である。
インクジェット記録装置100によって印刷を始めるときに、まず、事前補正の処理として、図30のステップS312に示すように、異常ノズル検知波形を用いてテストチャート(吐出不良ノズルを検知するためのテストチャート)の印字を行う。このテストチャート印字工程では、図7〜図9で例示したような異常ノズル検知用波形を用いる。
ステップS312によって出力されたテストチャートを光学式読取装置(ここでは、オフラインスキャナを用いるものとする)によって読み取り、その取込画像データを解析して吐出不良ノズルを検知する(ステップS324)。
ステップS324で異常(吐出不良)と判断された吐出不良ノズルについては、既に吐出不良(不吐出を含む)の状態であるか、或いは、印字中に不良吐出になる可能性が高いノズルであることから、印刷JOBの実行時には、これらノズルを印字に使用しないように不吐出化させる(マスクする)ことになる。そのため、ステップS324による吐出不良ノズルの検知結果から、印刷時に使用しないノズルの情報(DATA325)が作成される。
この不吐出化処理の対象とするノズルの情報(すなわち、マスクするノズル位置の情報)を以下、「検知マスク」(DATA325)と言う。
ステップS312によるテストチャート(第1のテストチャート)の印字に続いて、標準波形(記録用波形)を用いて、第2のテストチャート(吐出不良ノズルを検知するためのテストチャート)の印字を行う(ステップS314)。ステップS314におけるテストチャートの印字では、通常の描画で使用する記録用波形が用いられる。
ステップS314によって出力されたテストチャートを光学式読取装置(ここでは、オフラインスキャナを用いるものとする)によって読み取り、その取込画像データを解析して吐出不良ノズルを検知する(ステップS336)。
ステップS336で異常(吐出不良)と判断された吐出不良ノズルについても、印刷JOBの実行時には、これらノズルを印字に使用しないように不吐出化させることになる。したがって、ステップS336による吐出不良ノズルの検知結果から、印刷時に使用しないノズルの情報(DATA337)が作成される。この不吐出化処理の対象とするノズルの情報(すなわち、マスクするノズル位置の情報)を以下、「標準波形検知マスク」(DATA337)と言う。
異常ノズル検知用波形を用いたテストチャートの測定から取得された検知マスク(DATA325)には、概ね標準波形検知マスク(DATA337)の情報が包含されていると考えられる。ただし、ステップS312の前やステップS312とステップS314の間に実施される図示せぬメンテナンス動作(例えば、ノズル面のワイピング、予備吐出、若しくはこれらの組合せなど)の効果のばらつきなどにより、検知されるノズルが増減する場合がある。
そのため、図30の実施形態では、検知マスク(DATA325)と標準波形検知マスク(DATA337)の論理和(OR、オア)をとった複合マスク(DATA340)が作成され、この複合マスク(DATA340)を用いて不吐出補正(ムラ補正)などの画像処理が行われる(ステップS350)。例えば、複合マスク(DATA340)を用いて不吐出補正のための補正係数が決定され、印刷用の入力画像データについて、その補正係数が適用され、不吐出ノズル(マスクしたノズル)による描画不良を他の近傍ノズルの描画によって補償して不吐出ノズルに起因する描画不良の視認性を低減させるような印刷用データが生成される。この補正後の印刷用データにしたがって印刷JOBが実行される(図20、図29のステップS20以降参照)。
このように、図30に示した処理が適用されるインクジェット記録装置は、通常の印刷時における描画記録で利用する標準波形と、異常ノズル検知のためのテストパターン(チャート)印字時など特定の領域若しくはタイミングでのみ使用する異常ノズル検知用波形を組み合わせて、異常ノズルの情報を取得し、印刷JOBの実行中に不良吐出になる可能性が高いノズルの使用を制限し(不吐出化処理し)、それに併せて、出力画像の補正を行うものである。
なお、図30のフローでは、ステップS312において、異常ノズル検知用波形を1種類だけ用いているが、複数種類の異常ノズル検知用波形を用いて、それぞれ同様のテストパターンを形成し、対応するマスク情報(吐出不良ノズル情報)を取得して、これらから複合マスクを形成してもよい。すなわち、図30の事前補正の処理において、異常ノズルを検知するための波形には、通常描画で使用する波形(標準波形)の他に、少なくとも1つの異常ノズル検知用波形が用いられる。
上記説明では、ステップS312、S314で出力された各テストパターンを、オフライン作業で読み取る例を説明したが、図13の符号144で説明したインライン検出部を利用して、インラインで読み取る構成も可能である。
この場合、図30の一点鎖線で囲まれた各工程の処理手段が印刷機(インクジェット記録装置)に搭載され、ステップS312からS350の全処理が印刷機の制御シーケンスの中に組み込まれる。
<ヘッドの吐出駆動に関連する要部ブロック図>
図31は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの駆動装置が適用されたインクジェット記録装置の構成例を示す要部ブロック図である。プリントヘッド(「インクジェットヘッド」に相当)350は、複数個のインクジェットヘッドモジュール(以下、「ヘッドモジュール」という。)352a、352bを組み合わせて構成される。ここでは、説明を簡単にするために、2つのヘッドモジュール352a、352bを図示したが、1つのプリントヘッド350を構成するヘッドモジュールの数は特に限定されない。
図31のプリントヘッド350は、図14で説明したヘッド250(140C、140M、140Y、140K)に相当する。
ヘッドモジュール352a、352bの詳細な構成は図示しないが、各ヘッドモジュール352a、352bのインク吐出面には、複数のノズル(インク吐出口)が高密度で二次元配置されている。また、ヘッドモジュール352a、352bには、各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例の場合、圧電素子)が設けられている。
被描画媒体としての用紙(図示せず)の幅方向に対して、複数個のヘッドモジュール352a、352bを繋ぎ合わせることにより、紙幅方向の全記録可能範囲(描画可能幅の全域)について所定の記録解像度(例えば、1200dpi)で描画可能なノズル列を有する長尺のラインヘッド(シングルパス印字が可能なページワイドヘッド)が構成される。
プリントヘッド350に接続されているヘッド制御部360(「液体吐出ヘッドの駆動装置」に相当)は、複数のヘッドモジュール352a、352bの各ノズルに対応する圧電素子の駆動を制御し、ノズルからのインク吐出動作(吐出の有無、液滴吐出量)を制御するための制御手段として機能する。
ヘッド制御部360は、画像データメモリ362、画像データ転送制御回路364、吐出タイミング制御部365、波形データメモリ366、駆動電圧制御回路368、D/A変換器379a、379bを含んで構成される。なお、本例では、画像データ転送制御回路364が「ラッチ信号送信回路」を含んでおり、画像データ転送制御回路364から各ヘッドモジュール352a、352bに適宜のタイミングでデータラッチ信号が出力される。
画像データメモリ362には、印刷用イメージデータ(ドットデータ)に展開された画像データが記憶される。波形データメモリ366には、圧電素子を作動させるための駆動信号の電圧波形(駆動波形)を示すデジタルデータが記憶される。例えば、図2で説明した記録用波形のデータ、図7〜図9で説明した検知用波形のデータ、パルスの区切りを示すデータなどが波形データメモリ366に格納される。画像データメモリ362に入力される画像データや、波形データメモリ366に入力される波形データは、上位データ制御部380(「上位制御装置」に相当)にて管理される。上位データ制御部380は、例えば、パソコンやホストコンピュータで構成することができる。ヘッド制御部360は、上位データ制御部380からデータを受け取るためのデータ通信手段として、USB(Universal SerialBus)その他の通信インターフェースを備えている。
図31では、説明を簡単にするために、1つのプリントヘッド350(1色分)のみを示しているが、複数色のインクの各色に対応した複数本の(色別の)プリントヘッドを備えるインクジェット記録装置の場合、各色のプリントヘッド350について個別に(ヘッド単位で)ヘッド制御部360が設けられる。例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色に対応した色別のプリントヘッドを備える構成では、CMYK各色のプリントヘッドにそれぞれヘッド制御部360が設けられ、これら各色のヘッド制御部を1つの上位データ制御部380が管理する構成が採用される。
システム起動時に、上位データ制御部380から各色のヘッド制御部360に対して波形データや画像データが転送される。なお、画像データについては、印刷実行時の用紙搬送と同期して、データ転送が行われる場合もある。そして、プリント動作時には、各色の吐出タイミング制御部365が用紙搬送部382からの吐出トリガー信号を受信し、画像データ転送制御回路364及び駆動電圧制御回路368へ、吐出動作開始のスタートトリガーを出力する。画像データ転送制御回路364及び駆動電圧制御回路368は、このスタートトリガーを受けて画像データ転送制御回路364及び駆動電圧制御回路368からヘッドモジュール352a、352bに解像度単位に波形データ及び画像データ転送を行うことで、画像データに応じた選択的な吐出動作(ドロップオンデマンドの吐出駆動制御)を行い、ページワイドの印刷を実現する。
外部から入力されるプリントタイミング信号(吐出トリガー信号)に合わせて駆動電圧制御回路368からD/A変換器379a、379bへ駆動電圧波形データが出力されることにより、D/A変換器379a、379bにて波形データからアナログ電圧波形へと変換される。D/A変換器379a、379bの出力波形(アナログ電圧波形)は図示せぬアンプ回路(電力増幅回路)によって圧電素子の駆動に適した所定の電流・電圧に増幅された後にヘッドモジュール352a、352bに供給される。
画像データ転送制御回路364は、CPU(central processing unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成することができる。画像データ転送制御回路364は、画像データメモリ362に記憶したデータを基に、各ヘッドモジュール352a、352bのノズル制御データ(ここでは、記録解像度のドット配置に対応した画像データ)を各ヘッドモジュール352a、352bに転送する制御を行う。ノズル制御データは、ノズルのON(吐出駆動)/OFF(非駆動)を決定する画像データ(ドットデータ)である。画像データ転送制御回路364は、このノズル制御データを各ヘッドモジュール3352a、352bに転送することで、ノズル毎の開閉(ON/OFF)を制御する。
画像データ転送制御回路364から出力されるノズル制御データを各ヘッドモジュール352a、352bに伝送する画像データ伝送路(符号392a、392b)は、「画像データバス」、「データバス」或いは「画像バス」などと呼ばれ、複数の信号線(n本)で構成されている(n≧2)。本実施形態では以下「データバス」(符号392a、392b)と呼ぶ。データバス392a、392bの一端は画像データ転送制御回路364の出力端子(ICピン)に接続され、他端は各ヘッドモジュール352a、352bに対応したコネクタ394a、394bを介してヘッドモジュール352a、352bに接続される。
データバス392a、392bは、画像データ転送制御回路364や駆動電圧制御回路368等を実装した電気回路基板390の銅線パターンによって構成してもよいし、ワイヤーハーネスで構成してもよく、或いは、これらの組み合わせであってもよい。
各ヘッドモジュール352a、352bに対応したデータラッチ信号の信号線396a、396bは、ヘッドモジュール352a、352b毎に設けられている。データラッチ信号は、データバス392a、392b経由で転送したデータ信号を各ヘッドモジュール352a、352bのノズルデータとして設定するために、画像データ転送制御回路364から各ヘッドモジュール352a、352bに対し、必要なタイミングで送信される。画像データ転送制御回路364から画像データバス392a、392bを介してヘッドモジュール352a、352bに一定量の画像データを送信した時点で、データラッチと呼ばれる信号(ラッチ信号)をヘッドモジュール352a、352bに送信する。このデータラッチ信号のタイミングで各モジュールにおける圧電素子の変位のオン(ON)/オフ(OFF)のデータが確定される。その後、ヘッドモジュール352a、352bにそれぞれ駆動電圧a、bを印加することで、ON設定に係る圧電素子を微小変位させ、インク滴を吐出させる。こうして吐出したインク滴を用紙に付着(着弾)させることで、所望の解像度(例えば、1200dpi)の印刷が行われる。なお、OFF設定した圧電素子は駆動電圧を印加しても変位が起こらず、液滴が吐出されない。
波形データメモリ366、駆動電圧制御回路368、D/A変換器379a、379b、各ノズルに対応した圧電素子の動作/非動作を切り換えるためのスイッチ素子(不図示)の組み合わせが「駆動信号生成手段」に相当する。
上述した本発明の実施形態によれば、連続印字中に発生する異常吐出となるノズルを事前に検知することができ、特定された異常ノズルの吐出を停止させて、当該異常ノズル以外のノズルで目的の画像を描画記録するように画像データを補正するため、損紙を抑えて良好な画像を得ることができる。
<滴種(ドットサイズ)を異ならせて打滴する場合について>
図2で説明した駆動波形10を構成している複数の吐出パルス11〜14のうち、一部のパルスを選択して使用することによって、1画素中の滴量を異ならせて打滴することができる。
例えば、複数の吐出パルス11〜14のうち、後ろから一部のパルスを選択して使用することによって、小滴、中滴、大滴の3種類の滴サイズを打ち分けることができる。一例として、第4の(最終の)吐出パルス14のみを使用する場合に小滴、第3の吐出パルス13と第4の吐出パルス14を使用する場合に中滴、第1の吐出パルス11から第4の吐出パルス14のすべてを使用する場合に大滴とすることができる。
或いはまた、さらに吐出パルスを追加してもよい。複数種類の滴サイズを吐出できる構成の場合、使用頻度が最も高いと想定される滴種(例えば、中滴)の波形を用いて、滴量を揃えるための調整を行ってもよい。特定の滴種に対応した記録用波形を用いて、滴量を揃えるための電圧調整やタイミング調整を実施した場合、その調整に用いた波形と、検知用波形とが構造的に近似していることが好ましい。
<変形例>
上記実施形態では、記録媒体114に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置(1回の副走査によって画像を完成させるシングルパス方式の画像形成装置)を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用できる。
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。
<記録媒体について>
「記録媒体」は、インクジェットヘッドから吐出された液滴によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
<開示する発明の各種態様>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号を発生させる記録用波形信号生成手段と、前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成手段と、を備え、前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とするインクジェット記録装置。
(第2態様):第1態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部が電圧方向に調整された波形である構成とすることができる。
記録用波形における残響抑制部の電圧を変更(調整)することによって、残響抑制を弱めることができる。
(第3態様):第1態様又は第2態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部を無くした波形である構成とすることができる。
記録用波形における残響抑制部の波形部分を無くすことにより、吐出後の残響振動が残り、ノズル外部側にインクを溢れさせることができる。
(第4態様):第1態様又は第2態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果を弱めるように前記残響抑制部が電圧方向に調整された残響抑制部を有する波形である構成とすることができる。
第3態様のように残響抑制部を無くす態様に代えて、電圧方向に調整された残響抑制部を有する波形を用いることができる。
(第5態様):第1態様又は第4態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果を弱めるように前記残響抑制部が時間軸方向に調整されたものである構成とすることができる。
残響抑制の効果を弱める手段として、記録用波形における残響抑制部を電圧方向に調整する構成に代えて、又はこれと組み合わせて時間軸方向に調整してもよい。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形を用いた吐出時の滴速度と当該異常ノズル検知波形を用いた吐出時の滴速度とが同等になるように、前記記録用波形に対して、前記異常ノズル検知波形の全体の電圧、若しくは、少なくとも前記残響抑制部の直前にあるパルスの電圧が調整されたものである構成とすることができる。
残響抑制を弱める結果、滴速度が遅くなる場合、記録用波形と同等の滴速度が得られるように、異常ノズル検知用波形の電圧を調整することが好ましい。
(第7態様):第1態様から第6態様のうちいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドの内部圧力を調整する圧力調整手段を有し、前記異常ノズル検知波形を用いて吐出を行う際にメニスカスにかかる圧力が、前記記録用波形を用いて前記目的の画像を描画記録するための吐出を行う際にメニスカスにかかる圧力よりも、さらにメニスカスをノズル外部側に押す方向になるように前記内部圧力が調整される構成とすることができる。
かかる態様によれば、メニスカスが溢れやすい条件で吐出を行うことができ、異常ノズルの検知性能がより一層向上する。
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形を用いて異常ノズルを検知するための吐出を行う際に、クロストークの影響が大きくなる条件で吐出させる構成とすることができる。
かかる態様によれば、メニスカスが溢れやすい条件で吐出を行うことができ、異常ノズルの検知性能がより一層向上する。
(第9態様):第8態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形を用いて異常ノズルを検知するための吐出を行う際の駆動周波数は、前記目的の画像を描画する際の駆動周波数と異なる構成とすることができる。
クロストークの影響が大きく表れる周波数で異常ノズル検知用の吐出を行うことが好ましい。
(第10態様):第8態様又は第9態様に記載のインクジェット記録装置において、前記異常ノズル検知用波形を用いて異常ノズルを検知するための吐出を行う際の駆動周波数は、前記インクジェットヘッドの複数ノズルを同時駆動させた際の滴量、若しくは、滴速度が、極大若しくは極小となる周波数とすることが好ましい。
クロストークの影響が最も大きく表れる条件のもとで、異常ノズル検知用の吐出を行うことが好ましい。
(第11態様):第1態様から第10態様のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御手段と、前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知手段と、前記特定された異常ノズルの吐出を停止させ、当該異常ノズル以外のノズルで目的の画像を描画記録するように画像データを補正する補正制御手段と、前記補正制御手段による補正後の画像データに従い前記異常ノズル以外のノズルからの吐出を制御して描画記録を行う記録用吐出制御手段と、を備える構成とすることができる。
この態様によれば、記録用波形の駆動信号によって描画記録される出力画像において吐出不良による濃度ムラ(筋ムラ)が視認される画像欠陥が発生する前に、異常ノズル検知用波形を用いて早期に吐出異常の発生を検知する。吐出不良化しつつある異常ノズルを早めに察知し、出力画像上で欠陥として現れる前に、当該異常ノズルを不吐化処理(吐出停止)し、この異常ノズルの不吐化による画質低下の影響を周囲の正常ノズルで補正する。これにより、記録安定性を維持することができ、損紙の少ない連続記録が可能となる。
また、この態様によれば、インクジェットヘッドをメンテナンス位置などに退避させることなく、記録媒体上に吐出可能なヘッド位置(描画エリア内)で異常ノズルの検出が可能であるため、検出によるスループットの低下も回避できる。
例えば、記録媒体上の非画像領域に異常ノズル検知用のテストパターンを出力するためのテストパターン出力制御手段を具備し、必要に応じてテストパターンを出力して、異常ノズルを検知する。さらに、具体的な例として、出力目的の画像を連続して描画記録(連続印刷)しているプロセス中に記録媒体の非画像領域に異常ノズル検知用のテストパターンを形成しながら異常ノズル発生の有無を常時監視する。この記録中のモニタリングにおいて異常ノズルが検知された場合に、当該異常ノズルの不吐化処理の影響を改善する補正処理に必要な濃度データを取得するために、記録媒体の非画像領域に濃度ムラ補正用のテストパターンを形成する。そして、このテストパターンを読み取り、その読み取り結果から異常ノズル以外のノズルのみで所要の画質を達成し得るよう画像データの補正を行う。その後、この補正後のデータに従って描画記録が行われる。異常ノズルの発生が検知されてから補正後のデータによる描画に切り替わるまでの間も補正前のデータに従って目的画像の描画記録を継続することができ、損紙の発生も抑えることができる。
また、異常ノズル検知手段として、前記異常ノズル検知用波形の駆動信号の印加による前記異常検知用の吐出結果を光学的に検出する光学センサを用いることができる。
光学センサの一例として、記録媒体上に形成されたパターン等の描画結果を読み取る画像読取手段を用いることができる。また、画像読取手段に代えて、飛翔中の液滴を捉える光学センサを用いることもできる。光学センサは、当該インクジェット記録装置の内部に設置されるものに限らず、装置と別体に構成されるスキャナなど外部装置とする態様も可能である。この場合、当該外部装置を含んだインクジェットシステム全体が「インンクジェット記録装置」と解釈される。さらに、複数の光学センサを備える態様も可能である。例えば、読み取り解像度が異なる複数のセンサを備えることができる。
また、前記光学センサは、前記インクジェットヘッドによる描画後の記録媒体を搬送する搬送手段に対向して配置され、当該搬送手段によって搬送中の記録媒体の記録面を読み取る画像読取手段とすることができる。
かかる態様によれば、目的の画像を描画記録している印刷プロセス中に(描画を停止させることなく)、記録媒体上のテストパターンを読み取ることができ、その読み取り結果を補正に反映することができる。このように、描画中に異常ノズルの検知とその検知結果を反映した補正処理が可能なため、記録品質を維持しつつ、スループットが向上する。
(第12態様):複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号を発生させる記録用波形信号生成工程と、前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成工程と、前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御工程と、前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知工程と、前記特定された異常ノズルの吐出を停止させ、当該異常ノズル以外のノズルで目的の画像を描画記録するように画像データを補正する補正制御工程と、前記補正制御工程による補正後の画像データに従い前記異常ノズル以外のノズルからの吐出を制御して描画記録を行う記録用吐出制御工程と、を有し、前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(第13態様):複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号とは別に、前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成工程と、前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御工程と、前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知工程と、を有し、前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とする異常ノズル検知方法。
1…ノズル、2…インク、3…メニスカス、4…気泡、5,6…異物、10…駆動波形(記録用波形)、11,12,13,14…吐出パルス、20…残響抑制部、40…検知用波形、50,50’…検知用波形、60…残響抑制部、70…残響抑制部、80…残響抑制部、100…インクジェット記録装置、126c,126d…圧胴(搬送手段)、144…インライン検出部、140C,140M,140Y,140K…インク打滴ヘッド(インクジェットヘッド)、172…システムコントローラ、175…ROM、180…プリント制御部、196…操作部、251…ノズル、252…圧力室、258…アクチュエータ、302…画像形成領域、304…非画像領域、350…プリントヘッド、350…ヘッドモジュール、360…ヘッド制御部、366…波形データメモリ

Claims (12)

  1. 複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドと、
    前記インクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号を発生させる記録用波形信号生成手段と、
    前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成手段と、
    を備え、
    前記インクジェットヘッドは前記ノズルから重力方向下側にインクを吐出するものであり、
    前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、
    前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部が電圧方向に調整された波形であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部を無くした波形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果を弱めるように前記残響抑制部が電圧方向に調整された残響抑制部を有する波形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果を弱めるように前記残響抑制部が時間軸方向に調整されたものであることを特徴とする請求項1又は4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形を用いた吐出時の滴速度と当該異常ノズル検知用波形を用いた吐出時の滴速度とが同等になるように、前記記録用波形に対して、前記異常ノズル検知用波形の全体の電圧、若しくは、少なくとも前記残響抑制部の直前にあるパルスの電圧が調整されたものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インクジェットヘッドの内部圧力を調整する圧力調整手段を有し、
    前記異常ノズル検知用波形を用いて吐出を行う際にメニスカスにかかる圧力が、前記記録用波形を用いて前記目的の画像を描画記録するための吐出を行う際にメニスカスにかかる圧力よりも、さらにメニスカスをノズル外部側に押す方向になるように前記内部圧力が調整されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記異常ノズル検知用波形を用いて異常ノズルを検知するための吐出を行う際に、クロストークの影響が大きくなる条件で吐出させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記異常ノズル検知用波形を用いて異常ノズルを検知するための吐出を行う際の駆動周波数は、前記インクジェットヘッドの複数ノズルを同時駆動させた際の滴量、若しくは、滴速度が、極大若しくは極小となる周波数であることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御手段と、
    前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知手段と、
    前記特定された異常ノズルの吐出を停止させ、当該異常ノズル以外のノズルで目的の画像を描画記録するように画像データを補正する補正制御手段と、
    前記補正制御手段による補正後の画像データに従い前記異常ノズル以外のノズルからの吐出を制御して描画記録を行う記録用吐出制御手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  11. 複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号を発生させる記録用波形信号生成工程と、
    前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成工程と、
    前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御工程と、
    前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知工程と、
    前記特定された異常ノズルの吐出を停止させ、当該異常ノズル以外のノズルで目的の画像を描画記録するように画像データを補正する補正制御工程と、
    前記補正制御工程による補正後の画像データに従い前記異常ノズル以外のノズルからの吐出を制御して描画記録を行う記録用吐出制御工程と、
    を有し、
    前記インクジェットヘッドは前記ノズルから重力方向下側にインクを吐出するものであり、
    前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、
    前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  12. 複数のノズルが配列されるとともに各ノズルに対応した複数の圧力発生素子が設けられているインクジェットヘッドによって記録媒体上に目的の画像を描画記録する際に前記圧力発生素子に与える記録用波形の駆動信号とは別に、前記インクジェットヘッドにおける異常ノズルを検知するための吐出を行う際に前記圧力発生素子に与える異常ノズル検知用波形の駆動信号を発生させる異常ノズル検知用波形信号生成工程と、
    前記記録媒体上に吐出可能なヘッド位置に前記インクジェットヘッドを配置した状態で前記異常ノズル検知用波形の駆動信号を前記圧力発生素子に印加して前記ノズルから異常検知用の吐出を行わせる検知用吐出制御工程と、
    前記異常検知用の吐出結果から吐出異常を示す異常ノズルを特定する異常ノズル検知工程と、
    を有し、
    前記インクジェットヘッドは前記ノズルから重力方向下側にインクを吐出するものであり、
    前記記録用波形は、一記録周期内に少なくとも1回の吐出を行うための少なくとも1つの吐出パルスと、吐出後のメニスカスの残響振動を抑制するための残響抑制部と、を含む波形であり、
    前記異常ノズル検知用波形は、前記記録用波形の前記吐出パルスと同等のパルス幅及びパルス間隔の吐出パルスを含み、前記記録用波形と比較して、前記残響抑制部の抑制効果が低減された波形であることを特徴とする異常ノズル検知方法。
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