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JP5546119B2 - ファイバレーザ加工装置及びファイバレーザ加工方法 - Google Patents

ファイバレーザ加工装置及びファイバレーザ加工方法 Download PDF

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JP5546119B2 JP2008292014A JP2008292014A JP5546119B2 JP 5546119 B2 JP5546119 B2 JP 5546119B2 JP 2008292014 A JP2008292014 A JP 2008292014A JP 2008292014 A JP2008292014 A JP 2008292014A JP 5546119 B2 JP5546119 B2 JP 5546119B2
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Description

本発明は、被加工物にQスイッチパルスのレーザ光を照射して所望のレーザ加工を施すファイバレーザ加工装置およびファイバレーザ加工方法に関する。
最近、ファイバレーザで生成したレーザ光を被加工物に照射して所望のレーザ加工を行うファイバレーザ加工装置が実用化されてきている。その中で、ファイバMOPA(Master Oscillator _ Power Amplifier)方式のファイバレーザ加工装置も注目されている。
ファイバMOPA方式は、特許文献1に開示されるように、所定の希土類元素を含むコアを有する光ファイバをレーザ増幅用に使用し、シード(種)レーザ発振器で生成した低出力のシードレーザ光を一端から該光ファイバのコアに入れて他端まで伝播させながら、コアを励起することによって、コアの中でシードレーザ光を高出力の加工用レーザ光に増幅または変換するものであり、光/光変換効率が高くてビームモードが安定している等の特長を有している。
ファイバMOPA方式を採るQスイッチ型のファイバレーザ加工装置は、シードレーザ発振器にQスイッチ型の固体レーザたとえばYAGレーザを用いて、ピークパワーの比較的低いQスイッチパルスのシードレーザ光を一定の繰り返し周波数で生成し、増幅用光ファイバに通して、十分高いピーク出力を有するQスイッチパルスの加工用レーザ光を得るようにしている。
シードレーザ発振器のQスイッチには、通常の音響光学式あるいは電気光学式のQスイッチが用いられる。シードレーザ発振器内の活性媒質(YAGロッド)を光学的に励起するための励起光源は、半導体レーザつまりレーザダイオード(LD)が主流になっている。また、増幅用光ファイバのコアを光学的に励起するための励起光源にもレーザダイオード(LD)がよく使われている。
特開2007−253189
上記のようなファイバMOPA方式を採るQスイッチ型ファイバレーザ加工装置では、Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始させる際に加工用レーザ光に1発目から所望のレーザ出力を持たせるように増幅用光ファイバを待機させておく目的で、装置電源がオンになっている限り、シードレーザ発振器のオン/オフ状況に関わらず、つまりQスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力されているか否かに関係なく、ファイバコア励起部は励起用LDを常時点灯させて増幅用光ファイバのコアを励起し続けている。しかしながら、待機期間中は、増幅用光ファイバに導入された励起用LD光のエネルギー、さらにはファイバ内で発生する特定波長(たとえば1040nm)の蛍光のエネルギーを吸収するはずのシードレーザ光がコア内を伝播しないため、励起用LD光や蛍光が十分減衰せずに増幅用光ファイバの端面から不用なノイズ光として漏れることが加工現場では嫌われている。
さらに、従来のこの種のファイバレーザ加工装置には、次のようなより深刻な問題があった。すなわち、コア励起用LDの出力に比してシードレーザ光の出力が低すぎると、たとえばコア励起用LDの出力が75Wでシードレーザ光の出力が0.1W(750分の1の出力)である場合は、シードレーザ光を増幅している最中でも励起用LD光が増幅用光ファイバ内で十分消費されず、その余ったエネルギーによってピークパワーの異常に高い(正常時の数倍の)加工用のパルスレーザ光が発生する。したがって、シードレーザ光の出力はある程度高い値にした方が光−光変換の効率やレーザ増幅の安定性には良いとされており、通常は大体1W以上に設定されている。
一方で、Qスイッチ型の固体レーザからなるシードレーザ発振器においては、Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始させる際に、それまで飽和状態にあった反転分布を急激に下げると1発目のパルス(ファーストパルス)が異常に高いピークパワーを持ったシードレーザであるジャイアントパルスとなって発振出力されるという不所望な特性がある。これを回避する方法(いわゆる、ファーストパルスキラーの一手法)として、発振器内のQ値をステップ的にではなく一定勾配のアップスロープで立ち上げる手法が常用的に採られている。
この手法によれば、反転分布の急激な減少を抑制してファーストパルスを低出力で発振出力させ、ジャイアントパルスの発生を防止することができる。
実際には、ファーストパルスキラーの手法によってファーストパルスのピークパワーを設定値に制御するのは非常に難しく、通常はジャイアントパルスの発生防止を重視して、ファーストパルスが非常に低いピークパワーで発振出力されるようにQ値立ち上げのアップスロープを制御し、2発目のパルスから設定通りのピーク出力を得るようにしている。
ところが、シードレーザ発振器から極端に低いピークパワーのファーストパルスが増幅用光ファイバに導入または投与されることによって、増幅用光ファイバではシードレーザ光の出力がコア励起用LD光の出力に比して著しく低い関係(条件)が成立することとなり、結果としてピークパワーの異常に高いパルスの加工用レーザ光が増幅用光ファイバから射出され、その増幅用光ファイバの端面が焼けたり、レーザ加工の特性・品質が損なわれる等の問題があった。
また、上記のように待機状態の増幅用光ファイバは励起用LDによってポンピングされ続けているため、励起用LD光や蛍光のエネルギーで満ち溢れており、繰り返し発振の開始直後の増幅率は定常時の増幅率(設定値)よりも高い。このため、シードレーザ発振器より発せられるファーストパルスのピークパワーをファーストパルスキラーの手法によって設定値に制御できた場合でも、繰り返し発振の開始直後に加工用レーザ光の出力がオーバーシュートして設定値を超えてしまい、これも増幅用光ファイバの端面焼けやレーザ加工特性・品質の低下を来たす原因となっていた。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、繰り返し発振の開始または再開直後に異常増幅パルスの発生を防止して、増幅用光ファイバの保護およびレーザ加工特性・品質の向上を実現するファイバレーザ加工装置およびファイバレーザ加工方法を提供することを目的とする。
本発明のファイバレーザ加工装置は、光学的に対向して配置された一対のミラーからなる光共振器と、前記光共振器内の光路上に配置された固体の活性媒質と、前記活性媒質を連続的に励起する活性媒質励起部と、前記光共振器内で前記活性媒質と同一の光路上に配置されたQスイッチと、前記Qスイッチを駆動するためのQスイッチ駆動部とを有し、所定の繰り返し周波数でQスイッチパルスのシードレーザ光を発振出力するシードレーザ発振部と、所定の希土類元素を含むコアを有し、前記シードレーザ発振部からの前記シードレーザ光を一端より前記コアの中に入れ、該シードレーザ光を増幅して他端より出す増幅用の光ファイバと、前記増幅用光ファイバの一端から前記コアの中に入射して前記シードレーザ光を増幅させるための第1の励起用レーザ光を連続発振で出力するファイバコア励起部と、前記増幅用光ファイバの他端から出射したレーザ光を加工用レーザ光として出射するレーザ出射部と、前記シードレーザ発振部が前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開する際に、1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光については前記光共振器内のQ値が一定の勾配を有する第1のアップスロープ波形で立ち上がるように前記Qスイッチ駆動部を制御するとともに、前記第1の励起用レーザ光の出力が一定の勾配を有する第2のアップスロープ波形で立ち上がり、かつ前記第2のアップスロープ波形の立ち上がりが1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力された後に完了するように前記ファイバコア励起部を制御する制御部とを有する。
本発明のファイバレーザ加工方法は、Qスイッチ型の光共振器を有するシードレーザ発振部により所定の繰り返し周波数でQスイッチパルスのシードレーザ光を発振出力し、増幅用の光ファイバのコアを連続発振の第1の励起用レーザ光で励起しながら前記コアの一端から他端まで前記シードレーザ光を伝搬させ、前記増幅用光ファイバの他端より増幅されたシードレーザ光として取り出される加工用レーザ光を被加工物に向けて照射して、前記被加工物に所望のレーザ加工を施すファイバレーザ加工方法であって、前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開する際に、1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光については前記光共振器内のQ値を一定の勾配を有する第1のアップスロープ波形で立ち上げると同時に、前記第1の励起用レーザ光の出力を一定の勾配を有する第2のアップスロープ波形で立ち上げ、かつ前記第2のアップスロープ波形の立ち上がりを1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力された後に完了させる。
上記の装置構成または方法においては、被加工物に所望のレーザ加工を施すために、シードレーザ発振部がQスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開する際に、1発目ないし数発目までのQスイッチパルスのシードレーザ光については制御部がQスイッチ駆動部の制御を通じて光共振器内のQ値を一定の勾配を有する第1のアップスロープ波形で立ち上げることにより、いわゆるファーストパルスキラーがかけられ、シードレーザ発振部より1発目(あるいは1発目〜数発目)のQスイッチパルスが非常に低いピークパワーで発振出力される。一方、制御部の制御の下でファイバコア励起部が、増幅用光ファイバをポンピングするための第1の励起用レーザ光の出力を一定の勾配を有する連続発振の第2のアップスロープ波形で立ち上げ、かつその第2のアップスロープ波形の立ち上がりを1発目ないし数発目までのQスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力された後に完了させることにより、1発目(あるいは1発目〜数発目)のシードレーザ光が増幅用光ファイバ内でさほど増幅されずに伝播する。これにより、増幅用光ファイバ内で異常増幅パルスが生成されることはなく、つまり増幅用光ファイバより異常増幅パルスが射出されることはない。したがって、増幅用光ファイバの端面が焼けることはなく、レーザ加工特性・品質が損なわれることもない。
本発明の好適な一態様においては、ファイバコア励起部が、第1の励起用レーザ光を発振出力する第1のレーザダイオードと、この第1のレーザダイオードに第1のLD駆動電流を供給する第1のLD電源とを有する。この場合、制御部は、第1の励起用レーザ光の出力を制御するために、第1のLD電源を通じて第1のLD駆動電流を制御する。また、活性媒質励起部が、活性媒質を励起するための第2の励起用レーザ光を発振出力する第2のレーザダイオードと、この第2のレーザダイオードに第2のLD駆動電流を供給する第2のLD電源とを有する。好適な一態様として、第1および第2のレーザダイオードは、第1および第2の伝送用光ファイバを介して増幅用光ファイバに光学的に結合される。
本発明の好適な一態様においては、Qスイッチパルスの繰り返し発振を行っている時は、第1の励起用レーザ光の出力を所望のレーザ加工に適した増幅用のレーザ出力値に制御し、Qスイッチパルスの繰り返し発振を休止または中断している時は、第1の励起用レーザ光の出力を増幅用のレーザ出力値よりも低くて所望の立ち上がり特性に適した待機用のレーザ出力値に制御する。この場合、増幅用のレーザ出力値を変更するときは、これに応じて待機用のレーザ出力値も最適な値に変更する。これにより、レーザ加工を開始した時に、加工用レーザ光の出力がオーバーシュートすることがなくなる。
本発明のファイバレーザ加工装置またはファイバレーザ加工方法によれば、繰り返し発振の開始または再開直後から設定通りのレーザ出力を有するQスイッチパルスのレーザ光を被加工物に照射して、増幅用光ファイバの保護を図り、レーザ加工の特性・品質を向上させることができる。
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図1に、本発明の一実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す。このレーザ加工装置は、ファイバMOPA方式のファイバレーザ加工装置として構成されており、増幅用の光ファイバ(以下「アンプファイバ」と称する。)10、シードレーザ発振部12、ファイバコア励起部14、レーザ出射部16、加工テーブル18、制御部20を備えている。
アンプファイバ10は、図示省略するが、希土類元素たとえばイッテルビウム(Yb)のイオンをドープしたたとえば石英からなるコアと、このコアを同軸に取り囲むたとえば石英からなるクラッドとを有しており、コアを後述するシードレーザ光SBの伝播光路とし、クラッドを後述するコア励起用LD光FBの伝播光路としている。このアンプファイバ10の長さは任意に、たとえば数mに選ばれてよい。
シードレーザ発振部12は、QスイッチパルスのYAGレーザ光(波長1064nm)を発振出力するQスイッチ型のYAGレーザ発振器(光共振器)22を有している。このYAGレーザ発振器22は、光学的に対向して配置された一対の共振器ミラー24,26の間に直線配列型でYAGロッド(活性媒質)28とQスイッチ30とを配置している。Qスイッチ30は、たとえば音響光学スイッチからなり、制御部20の制御の下でQスイッチドライバ32により所定の繰り返し周波数でスイッチングされる。
シードレーザ発振部12は、YAGロッド28を励起するために端面励起方式の電気光学励起部34を有している。この電気光学励起部34は、ファイバカップリングLD36およびLD電源38を備えている。ファイバカップングLD36は、制御部20の制御の下でLD電源38よりLD駆動電流I1を注入され、たとえば808nmの波長を有するYAGロッド励起用のレーザ光またはLD光EBを連続発振で出力する。
ファイバカップリングLD36で生成された励起用LD光EBは、収束レンズ(図示せず)を介して伝送用の光ファイバ(以下、「伝送ファイバ」と称する。)40の一端面(入射端面)に入射し、この伝送ファイバ40の中を伝搬してその他端面(出射端面)より放射状に出て、コリメートレンズおよび収束レンズ(図示せず)を通ってYAGレーザ発振器22の中に入り、全反射ミラー24を裏側(反射面の反対側)から透過してYAGロッド28の一端面に入射し、YAGロッド28を連続的または持続的にポンピングする。この連続ポンピングによりレーザ共振器22内にエネルギーを蓄積して(反転分布を高くして)おいて共振器内のQ値を立ち上げる(反転分布を下げる)ようにQスイッチ30をスイッチングさせると、ジャイアントパルス発振が起こって、ピークパワーの高いQスイッチパルスのYAGレーザ光がレーザ共振器22の出力ミラー26から出力される。なお、伝送ファイバ40はたとえばSI(ステップインデックス)形ファイバであってよい。
上記のようにしてシードレーザ発振部12より発振出力されるQスイッチパルスのYAGレーザ光は、シードレーザ光SBとしてアンプファイバ10に導入される。図示省略するが、シードレーザ発振部12のレーザ出射口とアンプファイバ10の入射端面10aとの間に入射光学系のビームエクスパンダおよび収束レンズが配置されている。シードレーザ発振部12からのQスイッチパルスのシードレーザ光SBは、該ビームエクスパンダでビーム径を拡げてから該収束レンズを通ってアンプファイバ10の入射端面10a(より正確にはコアの入射端面)に集光入射するようになっている。
このファイバレーザ加工装置においては、後述するようにアンプファイバ10内でシードレーザ光SBを増幅して被加工物W向けの加工用レーザ光MBを生成するので、シードレーザ光SBのレーザ出力(実効値)を低い値(たとえば1〜5W)に設定することが可能であり、それに関連してシードレーザ発振部12を小出力の固体レーザとして構成し、特に電気光学励起部34に小出力のファイバカップリングLDを使用することができる。このように、シードレーザ発振部12は小出力のYAGレーザであり、しかも端面励起方式を採るので、シングルモードのシードレーザ光SBを容易に得ることができる。
ファイバコア励起部14は、ファイバカップリングLD42、LD電源44、伝送ファイバ46等を有している。ファイバカップリングLD42は、制御部20の制御の下でLD電源44よりLD駆動電流I2を注入され、たとえば980nmの波長を有するコア励起用のレーザ光またはLD光FBを連続発振で出力する。ファイバカップリングLD42は、アンプファイバ10のコアをたとえば50〜80W程度の比較的高いパワーで励起できるように、LD素子を一次元または二次元に多数配列してなる比較的大規模なアレイ構造またはスタック構造を採るのが好ましい。
ファイバカップリングLD42より出射されたコア励起用LD光FBは、収束レンズ(図示せず)を通って伝送ファイバ46の一端面(入射端面)に集光入射する。伝送ファイバ46は、たとえばSI形ファイバからなり、LD42から取り込んだコア励起用LD光FBをアンプファイバ10の入射面10a付近まで伝送する。
伝送ファイバ46の他端面(出射端面)は、コリメートレンズ,収束レンズ(図示せず)および折り返しミラー48を介してアンプファイバ10の入射面10aに光学的に結合されている。折り返しミラー48は、伝送ファイバ46の出射側の光軸とアンプファイバ10の入射側の光軸とが交差する位置に所定の角度または向きで配置されており、コア励起用LD光FBの波長に対して反射性の膜と加工用レーザ光MBの波長に対して非反射性の膜とをコーティングしている。伝送ファイバ46の出射端面から出射されたコア励起用LD光FBは、上記コリメートレンズで平行光にコリメートされ,上記収束レンズで集光させられ、折り返しミラー48で光路を直角に曲げてアンプファイバ10の入射端面10aに入射する。
アンプファイバ10においては、上記のように、その入射端面10aに、シードレーザ発振部12からのQスイッチパルスのシードレーザ光SBとファイバコア励起部14からの連続発振のコア励起用LD光FBとが入射する。シードレーザ光SBは、コアとクラッドとの境界面での全反射によって閉じ込められながらコアの中を軸方向にファイバ他端面(出射端面10b)側に向って伝搬する。一方、コア励起用LD光FBは、クラッド外周界面の全反射によって閉じ込められながらアンプファイバ10の中を軸方向に伝搬し、その伝搬中にコアを何度も横切ることでコア中のYbイオンを光励起する。こうして、シードレーザ光SBは、アンプファイバ10を伝搬する間に活性状態のコアの中で設定値(たとえば30W)のレーザ出力を有するまでに増幅され、高出力の加工用レーザ光MBとしてアンプファイバ10の出射端面10bより外へ出る。この加工用レーザ光MBは、シードレーザ光SBと同じ波長(1064nm)のYAGレーザ光である。
アンプファイバ10は、口径が50μm程度、長さが数メートル程度の細長いコアにシードレーザ光SBを閉じ込めて増幅するので、ビーム径が細くてビーム広がり角の小さな加工用レーザ光MBを取り出すことができる。しかも、アンプファイバ10の入射端面10aに入射したコア励起用LD光FBがアンプファイバ10の中で長い光路を伝搬する間に何度もコアを横切って励起エネルギーを使い果たすので、非常に高い効率で低出力(たとえば1W)のシードレーザ光SBを高出力(30W)の加工用レーザ光MBまで増幅することができる。
加えて、アンプファイバ10のコアは熱レンズ効果を起こさないため、ビームモードが安定しており、特別な冷却は要らない。
なお、コア励起用LD光FBは、アンプファイバ10内でそのレーザエネルギーを殆ど使い果たし、その光強度を相当減衰させた状態でアンプファイバ10の出射端面10bから外へ出る。アンプファイバ10を通り抜けたこの用済みの光FBを側方へ外すための折り返しミラー(図示せず)を配置してもよい。
上記のようにアンプファイバ10の出射端面10bより光軸上に出たQスイッチパルスの加工用レーザ光MBは、たとえばベントミラー50で光路を変えて出射ユニット16に入る。
出射ユニット16には、ガルバノメータ・スキャナやfθレンズなどが収容されている。ガルバノメータ・スキャナは、直交する2方向に首振り運動の可能な一対の可動ミラーを有しており、制御部20の制御の下でシードレーザ発振部12のQスイッチング動作に同期して両可動ミラーの向きを所定角度に制御することで、アンプファイバ10からのQスイッチパルスの加工用レーザ光MBを加工テーブル18上の被加工物W表面の所望の位置に集光照射する。被加工物Wの表面に施される加工は、典型的には文字や図形等を描画(マーキング)するものであるが、トリミング等の表面除去加工等も可能である。
制御部20は、マイクロコンピュータで構成されてよく、キーボード等の入力部(図示せず)および液晶ディスプレイ等の表示部52からなるマン・マシン・インタフェースを介して人(作業員、保守員等)とデータまたは情報をやりとりし、所定のプログラムにしたがって装置全体ないし各部を制御する。
とりわけ、制御部20は、シードレーザ発振部12に対しては、ファイバカップリングLD36よりYAGロッド励起用LD光EBが所望の一定パワーで発振出力されるようにLD電源38にLD駆動電流I1に関する指令値AI1を与えるとともに、YAGレーザ発振器22よりQスイッチパルスのシードレーザ光SBが所望のタイミングおよび期間に、かつ所望の繰り返し周波数で発振出力されるようにQスイッチドライバ32にQスイッチ変調信号AQSWを与える。Qスイッチドライバ32は、たとえば24MHzの高周波を発生する発振回路を有しており、制御部20からのQスイッチ変調信号AQSWにより該高周波を振幅変調し、この振幅変調された高周波でQスイッチ30を駆動する。この実施形態では、上述したいわゆるジャイアントパルスの発生を防止するために、制御部20がQスイッチ変調信号AQSWに対する波形制御を通じてファーストパルスキラーをかけるようにしている。
また、制御部20は、ファイバコア励起部14に対しては、ファイバカップリングLD42より生成されるコア励起用LD光FBの出力がシードレーザ発振部22でQスイッチパルスの繰り返し発振を行っている時と休止または中断している時とで所望の値(繰り返し発振を行っている時は加工用のレーザ出力値、休止または中断している時は待機用のレーザ出力値)に切り替わり、かつ繰り返し発振の開始または再開直後に所望または最適なアップスロープ特性で待機用のレーザ出力値から増幅用のレーザ出力値まで立ち上がるように、電流切替制御信号CH、待機用電流指令値IW,増幅用電流指令値IS、立ち上がり時間(あるいは立ち上がり速度、傾斜度等)指令値JupをLD電源44に与える。
次に、図2の波形図につき、この実施形態のファイバレーザ加工装置における主要な作用を説明する。
加工テーブル18上の被加工物Wに加工用レーザ光MBを照射する前の待機中は、シードレーザ発振部22においてQスイッチパルスの繰り返し発振は行われない。この待機期間中、電気光学励起部34は、ファイバカップリングLD36よりYAGロッド励起用のLD光EBを連続発振で出力し続けている。また、Qスイッチドライバ32には制御部20よりQスイッチ変調信号AQSWが入力されず、Qスイッチドライバ32は無変調の高周波をQスイッチ駆動信号としてYAGレーザ発振器22内のQスイッチ30に印加している。これにより、YAGレーザ発振器22内では反転分布が最大値または飽和状態になっていてQ値が最も低い値に保たれている。
一方、ファイバコア励起部14は、待機期間中もファイバカップリングLD42よりコア励起用のLD光FBを連続発振で出し続ける。ただし、LD電源44は、ファイバカップリングLD42に供給(注入)するLD駆動電流I2を待機用電流値IWに合わせる。
ここで、待機用電流値IWは、増幅用電流値ISへの立ち上がり特性を最適化するように、すなわち被加工物Wに対するレーザ照射(Qスイッチパルスの繰り返し発振)を開始した直後にQスイッチパルスの加工用レーザ光MBがオーバーシュートを起こさずに1発目から設定通りの加工用レーザ出力値を持つように、増幅用電流指令値ISに対応した適度な電流値に選定される。
この実施形態では、たとえば図3に示すような表あるいは図4に示すような関数として増幅用電流値ISに対応(比例)する待機用電流値IWが設定され、制御部20内のメモリにテーブルが設けられている。この例によれば、増幅用電流値ISが40A(アンペア)に選定されたときは、待機用電流値IWが16A(アンペア)に選定される。したがって、待機期間中は、16A(アンペア)のLD駆動電流I2がLD電源44よりファイバカップリングLD42に供給される。
このように、待機期間中は、ファイバコア励起部14よりアンプファイバ10に供給されるコア励起用LB光FBがレーザ加工時のレーザ出力値よりも低い待機用のレーザ出力値に抑制されているので、アンプファイバ10の中が励起用LD光や蛍光のエネルギーで満ち溢れることはなく、アンプファイバ10の端面から不用なノイズ光として漏れるLD光FBおよび蛍光の量もわずかである。
被加工物Wに対するレーザ照射のシーケンスはすべて制御部20の制御の下で行われる。制御部20は、レーザ照射を開始するために、図2に示すように、Qスイッチドライバ32へのQスイッチ変調信号AQSWの供給を開始し、これと同時にファイバコア励起部14のLD電源44に対する電流切替制御信号CHをそれまでのLレベルからHレベルに立ち上げる。
制御部20より与えられるQスイッチ変調信号AQSWは、ファーストパルスキラーの手法にしたがい、図2に示すように、最初の変調パルスが所望の勾配を有するアップスロープ波形で立ち上がる。Qスイッチドライバ32は、このアップスロープ波形の変調パルスで高周波を振幅変調し、変調パルスのアップスロープ勾配に対応したダウンスロープ勾配で出力信号つまりQスイッチ駆動信号の振幅を減衰させる。これによって、YAGレーザ発振器22内の反転分布がそれまでの最大値から急激に(ステップ的に)ではなく漸次的に(一定の勾配をもって)減少し、つまりYAGレーザ発振器22内のQ値がそれまでの基底値から急激に(ステップ的)ではなく漸次的に(一定の勾配をもって)上昇し、少ないエネルギー損失でQスイッチパルス発振が行われる。こうして、YAGレーザ発振器22より非常に低いピークパワーで1発目のシードレーザ光SB(1)が発振出力される。
一方、ファイバコア励起部14のLD電源44は、電流切替制御信号CHのLレベルからHレベルへの切り替わりに応じて、LD駆動電流I2をそれまでの待機用電流値IWから所定の勾配および時間特性を有するアップスロープ波形で増幅用電流値ISまで立ち上げる。
アンプファイバ10においては、YAGレーザ発振器22より1発目のシードレーザ光SB(1)がコアに入ってきた時にコア励起用LD光や蛍光のエネルギーで満ち溢れている状態ではなく、しかもファイバコア励起部14がコア励起用LD光FBの出力を待機用レーザ出力値から増幅用レーザ出力値までステップ的にではなくアップスロープ波形で立ち上げるので、図2に仮想線で示すようにピークパワーの異常に高いパルスレーザ光MB(1)'が発生することはなく、むしろ1発目のシードレーザ光SB(1)が殆ど増幅されないままアンプファイバ10の射出端面10bから1発目の加工用レーザ光MB(1)として取り出される。
このピーク出力のきわめて低い1発目の加工用レーザ光MB(1)は、ベントミラー50およびレーザ出射部16を介して被加工物Wに照射されるが、レーザ加工には殆ど寄与せず、レーザ加工特性・品質を損なうものではない。
シードレーザ発振部12は、上記のようにファーストパルスキラーの手法によって1発目のシードレーザ光SB(1)を抑制的に発振出力してジャイアントパルスの発生を防止し、2発目からは正常パルスのQスイッチ変調信号AQSWによって安定した一定のピークパワーを有するシードレーザ光SB(2),SB(3),SB(4)・・・を所定の繰り返し周波数で順次発振出力する。一方、ファイバコア励起部14は、上記のように1発目のシードレーザ光SB(1)がアンプファイバ10のコアを伝播する時は、アンプファイバ10の励起エネルギーを抑制して増幅率を下げ、異常増幅パルスの発生を防止する。そして、2発目からはアンプファイバ10を正常な励起状態に保持して各シードレーザ光SB(2),SB(3),SB(4)・・・を設定通りの増幅率で増幅し、アンプファイバ10の射出端面10bよりピークパワーの揃った一連の加工用レーザ光MB(2),MB(3),MB(4)・・・を取り出すことができる。
こうして、ピークパワーの揃った2発目以降の加工用レーザ光MB(2),MB(3),MB(4)・・・が被加工物Wの各加工点に照射され、被加工物W上に所望のマーキング加工あるいは表面除去加工が施される。
上述したように、この実施形態のファイバレーザ加工装置においては、アンプファイバ10から異常増幅パルスは発生されないので、アンプファイバ10の端面10bが焼けることもなければ、レーザ加工特性・品質が損なわれることもない。
また、ファイバコア励起部14においては、待機期間中にLD駆動電流I2を増幅用電流値IWよりも適度に低い待機用電流値ISに保持し、しかも増幅用電流値IWに応じて待機用電流値ISを最適な値に調整するので、加工用レーザ光MBの出力がオーバーシュートすることはなく、この点でもレーザ加工特性・品質を向上させることができる。
上記した例では、Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開した直後に、1発目のパルスに対してシードレーザ発振部12がファーストパルスキラーをかけ、1発目のシードレーザ光SB(1)がアンプファイバ10を伝播している間にファイバコア励起部14がLD駆動電流I2を待機用電流値IWから増幅用電流値ISまで立ち上げるようにした。しかし、必要に応じて、シードレーザ発振部12において2発目ないし3発目のパルスにもファーストパルスキラーと同様のパルスキラーをかけることも可能であり、あるいはファイバコア励起部14においてLD駆動電流I2の立ち上げ完了時点を2発目のパルス以降まで引き延ばすことも可能である。
また、上記した実施形態はシードレーザ発振部12にYAGレーザを用いたが、他のQスイッチ型固体レーザ、たとえばYVO4レーザ等も使用可能であり、シードレーザ光および励起用レーザ光の波長も任意に選べる。伝送ファイバ40,46を省いて、ファイバカップリングLD36,42を普通のLDまたはLDアレイに置き換えることも可能である。
本発明の一実施形態におけるファイバMOPA方式のファイバレーザ加工装置の構成を示すブロック図である。 実施形態のファイバレーザ加工装置における主要な作用を説明するための各部の波形を示す波形図である。 実施形態のファイバレーザ加工装置で用いる増幅用電流値−待機用電流値テーブルの一例を示す表である。 図3の増幅用電流値−待機用電流値テーブルに相当する近似式の関数を示すグラフ図である。
符号の説明
10 増幅用光ファイバ(アンプファイバ)
12 シードレーザ発振部
14 ファイバコア励起部
16 出射ユニット
20 制御部
22 YAGレーザ発振器
28 YAGロッド
30 Qスイッチ
32 Qスイッチドライバ
34 電気光学励起部
36 YAGロッド励起用のファイバカップリングLD
38 LD電源
40 伝送用光ファイバ(伝送ファイバ)
42 ファイバコア励起用のファイバカップリングLD
44 LD電源
46 伝送用光ファイバ(伝送ファイバ)

Claims (10)

  1. 光学的に対向して配置された一対のミラーからなる光共振器と、前記光共振器内の光路上に配置された固体の活性媒質と、前記活性媒質を連続的に励起する活性媒質励起部と、前記光共振器内で前記活性媒質と同一の光路上に配置されたQスイッチと、前記Qスイッチを駆動するためのQスイッチ駆動部とを有し、所定の繰り返し周波数でQスイッチパルスのシードレーザ光を発振出力するシードレーザ発振部と、
    所定の希土類元素を含むコアを有し、前記シードレーザ発振部からの前記シードレーザ光を一端より前記コアの中に入れ、該シードレーザ光を増幅して他端より出す増幅用の光ファイバと、
    前記増幅用光ファイバの一端から前記コアの中に入射して前記シードレーザ光を増幅させるための第1の励起用レーザ光を連続発振で出力するファイバコア励起部と、
    前記増幅用光ファイバの他端から出射したレーザ光を加工用レーザ光として出射するレーザ出射部と、
    前記シードレーザ発振部が前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開する際に、1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光については前記光共振器内のQ値が一定の勾配を有する第1のアップスロープ波形で立ち上がるように前記Qスイッチ駆動部を制御するとともに、前記第1の励起用レーザ光の出力が一定の勾配を有する第2のアップスロープ波形で立ち上がり、かつ前記第2のアップスロープ波形の立ち上がりが1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力された後に完了するように前記ファイバコア励起部を制御する制御部と
    を有するファイバレーザ加工装置。
  2. 前記制御部は、前記シードレーザ発振部が前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を行っている時は、前記第1の励起用レーザ光が所望のレーザ加工に適した加工用のレーザ出力値を有するように前記ファイバコア励起部を制御し、前記シードレーザ発振部が前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を休止または中断している時は、前記第1の励起用レーザ光が前記第1のレーザ出力値よりも低くて所望の立ち上がり特性に適した待機用のレーザ出力値を有するように前記ファイバコア励起部を制御する、請求項1に記載のファイバレーザ加工装置。
  3. 前記ファイバコア励起部が、前記第1の励起用レーザ光を発振出力する第1のレーザダイオードと、前記第1のレーザダイオードに第1のLD駆動電流を供給する第1のLD電源とを有し、
    前記制御部が、前記第1の励起用レーザ光の出力を制御するために、前記第1のLD電源を通じて前記第1のLD駆動電流を制御する、
    請求項2に記載のファイバレーザ加工装置。
  4. 前記制御部が、前記第1の励起用レーザ光の出力を前記加工用のレーザ出力値に制御するときは、前記第1のLD駆動電流を増幅用電流値に制御し、前記第1の励起用レーザ光の出力を前記待機用のレーザ出力値に制御するときは、前記第1のLD駆動電流を待機用電流値に制御し、前記増幅用電流値に前記待機用電流値を対応づけるためのテーブルをメモリに有するか、または前記増幅用電流値に前記待機用電流値を対応づけるための関数を演算する、請求項3に記載のファイバレーザ加工装置。
  5. 前記第1のレーザダイオードが、第1の伝送用光ファイバを介して前記増幅用光ファイバに光学的に結合される、請求項3または請求項4に記載のファイバレーザ加工装置。
  6. 前記活性媒質励起部が、前記活性媒質を励起するための第2の励起用レーザ光を発振出力する第2のレーザダイオードと、この第2のレーザダイオードに第2のLD駆動電流を供給する第2のLD電源とを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のファイバレーザ加工装置。
  7. 前記第2のレーザダイオードが、第2の伝送用光ファイバを介して前記活性媒質に光学的に結合される、請求項6に記載のファイバレーザ加工装置。
  8. Qスイッチ型の光共振器を有するシードレーザ発振部により所定の繰り返し周波数でQスイッチパルスのシードレーザ光を発振出力し、増幅用の光ファイバのコアを連続発振の第1の励起用レーザ光で励起しながら前記コアの一端から他端まで前記シードレーザ光を伝搬させ、前記増幅用光ファイバの他端より増幅されたシードレーザ光として取り出される加工用レーザ光を被加工物に向けて照射して、前記被加工物に所望のレーザ加工を施すファイバレーザ加工方法であって、
    前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を開始または再開する際に、1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光については前記光共振器内のQ値を一定の勾配を有する第1のアップスロープ波形で立ち上げると同時に、前記第1の励起用レーザ光の出力を一定の勾配を有する第2のアップスロープ波形で立ち上げ、かつ前記第2のアップスロープ波形の立ち上がりを1発目ないし数発目までの前記Qスイッチパルスのシードレーザ光が発振出力された後に完了させることを特徴とするファイバレーザ加工方法。
  9. 前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を行っている時は、前記第1の励起用レーザ光の出力を所望のレーザ加工に適した増幅用のレーザ出力値に制御し、前記Qスイッチパルスの繰り返し発振を休止または中断している時は、前記第1の励起用レーザ光の出力を前記増幅用のレーザ出力値よりも低くて所望の立ち上がり特性に適した待機用のレーザ出力値に制御する請求項8に記載のファイバレーザ加工方法。
  10. 前記加工用のレーザ出力値に対応させて前記待機用のレーザ出力値を選定する請求項9に記載のファイバレーザ加工方法。
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