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JP5431055B2 - 導電性組成物、導電体及びその製造方法 - Google Patents

導電性組成物、導電体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性に優れた導電薄膜を形成し得る導電性組成物、これを用いた導電体及びその製造方法に関する。
各種の電極、回路、コンデンサ等の電子部品の幅広い用途に、金属微粒子、有機溶媒等
を含む導電性材料により形成された導電膜が用いられている。これらの導電膜は、例えば、ガラス基板や半導体基板等の基材上に導電性材料からなる塗膜を形成し、焼成して形成される。
近年、携帯情報機器やLCD等の薄型ディスプレイパネルに代表されるように、電子部品の小型化、薄型化が進み、導電膜が適用される回路等の微細化、高密度化が要求されている。このような電子部品を形成するために、導電膜には、基材に対するより強固な密着性及び表面平滑性が必要となる。
このような導電膜を形成する方法として、銀イオンと、アルキルアミン等の保護剤とを含む第一有機溶媒に還元剤を添加し、沈殿物をろ過したろ液を濃縮して固形物を形成し、この固形物を第二有機溶媒に添加し、さら有機金属化合物を添加して得られたペーストを基板に塗布して、250〜350℃の温度で焼成する銀薄膜の形成方法が提案されている(特許文献1)。
また、導電膜を形成するために、有機金属塩と、溶媒と、シランカップリング剤等の密着性向上剤と、必要に応じてジエタノールアミン等のpH調整剤を含む導電性インクが提案されている(特許文献2)。
特開2005−100980号公報 特開2006−348160号公報
しかし、特許文献1の銀薄膜を形成する方法にあっては、250〜350℃の低温焼成により銀薄膜を得るために、可溶化した銀イオンを還元して微粒子化する必要があり、工程が煩雑である。
また、特許文献2の導電性インクにあっては、有機金属塩として酢酸銀等を用いると、ジエタノールアミン等のpH調整剤を用いても溶解性が充分ではなく、得られた導電膜の基材に対する密着性、表面平滑性に劣る場合がある。
本発明の課題は、煩雑な工程を必要とせずに、密着性及び表面平滑性に優れる導電薄膜を形成することのできる導電性組成物、導電体及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、特定のアミンと、金属アルコキシド及び第2の有機酸金属塩から選択される少なくとも1種の化合物とを用いることによって、第1の有機酸金属塩の溶解度を高めるとともに、金属の凝集を抑制して、基材に対する密着性及び表面平滑性に優れた導電薄膜を形成することができる導電性組成物が得られることを見出した。
[1]本発明は、(A)第1の有機酸金属塩と、(B)脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物から選択される少なくとも1種のアミンと、(C)金属アルコキシド及び第2の有機酸金属塩(ただし、第1の有機酸金属塩に含まれる金属を含有する有機酸金属塩を除く)から選択される少なくとも1種の化合物とを含む導電性組成物である。
[2]本発明は、上記導電性組成物を用いて得られた導電膜を有する導電体である。
[3]本発明は、上記導電性組成物からなる塗膜を基材に形成する工程と、上記導電性組成物が塗布された基材を150〜900℃で焼成して導電膜を形成する工程とを含む導電体の製造方法である。
本発明は、成分(B)のアミンによって、成分(A)の第1の有機酸金属塩の溶解度を高めることができ、還元剤等によって有機酸金属塩に含まれる金属を微粒子化する等の煩雑な工程を必要とすることがなく、成分(A)、(B)及び(C)を含む滑らかで伸展性に富む均一な導電性組成物を得ることができる。また、本発明は、成分(C)の金属アルコキシド及び第2の有機酸金属塩から選択された少なくとも1種の化合物によって、焼成時における成分(A)の第1の有機酸金属塩に含まれていた金属の凝集を抑制して、基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性に優れた導電薄膜を形成する導電性組成物を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、150〜900℃で焼成した場合においても、基材への導電薄膜の密着性及び表面平滑性が優れた導電体を形成することができる。
実施例6の導電薄膜について、倍率5000倍で撮影したSEM写真である。 比較例2の導電薄膜について、倍率5000倍で撮影したSEM写真である。 実施例1,7及び比較例3の導電膜の焼成温度とRa値(表面粗さ)との関係を示すグラフである。 比較例3及び実施例1、7〜12の各導電体の写真である。 比較例3及び実施例1、7〜12の各導電体について、成分(C)の含有量と表面粗さRa(μm)との関係を示すグラフである。 各導電薄膜の焼成温度と比抵抗(Ω・cm)との関係を示すグラフである。 比較例3及び実施例14,15の各導電体の写真である。
本発明の導電性組成物は、(A)第1の有機酸金属塩(以下、成分(A)とする)と、(B)脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物から選択される少なくとも1種のアミン(以下、成分(B)とする)と、(C)金属アルコキシド又は第2の有機酸金属塩(ただし、第1の有機酸金属塩を除く)から選択される少なくとも1種の化合物(以下、成分(C)とする)とを含む。
成分(A)の第1の有機酸金属塩は、成分(B)のアミンにより、溶解度が高められ、均一な溶液となるため、導電性組成物を基板に塗布して焼成した際に、第1の有機酸金属塩中に含まれていた金属が均一に伸展して薄膜化し、基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性に優れた導電膜を形成できる。
成分(A)の第1の有機酸金属塩としては、脂肪酸の金属塩であり、ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛及びスズからなる群より選択された金属元素を含むものであることが好ましい。第1の有機酸金属塩としては、上記金属塩を含む酢酸金属塩、ギ酸金属塩、シュウ酸金属塩、カプリル酸金属塩、シクロヘキサンカルボン酸金属塩、シクロヘキサンプロピオン酸金属塩等が挙げられる。
成分(A)の第1の有機酸金属塩の具体例としては、酢酸パラジウム、酢酸銀、酢酸銅、酢酸スズ、酢酸ルテニウム、酢酸ニッケル等の酢酸金属塩、ギ酸パラジウム、ギ酸スズ、ギ酸銀、ギ酸ルテニウム等のギ酸金属塩、シュウ酸パラジウム、シュウ酸銀、シュウ酸銅、シュウ酸スズ、シュウ酸ルテニウム、シュウ酸ニッケル、シュウ酸亜鉛等のシュウ酸金属塩、カプリル酸ニッケル、カプリル酸銅、カプリル酸スズ、カプリル酸銀、カプリル酸パラジウム、カプリル酸白金、カプリル酸ルテニウム等のカプリル酸金属塩、シクロヘキサンカルボン酸ルテニウム、シクロヘキサンカルボン酸白金、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム等のシクロヘキサンカルボン酸金属塩、シクロヘキサンプロピオン酸ルテニウム等が挙げられる。
中でも、成分(A)の第1の有機酸金属塩は、酢酸銀、ギ酸銀、シュウ酸銀又はカプリル酸銀であることが好ましい。
成分(A)の第1の有機酸金属塩は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。また、上記の有機酸金属塩は水和物であってもよい。
成分(A)は、導電性組成物全量100質量%に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%である。
導電性組成物中の成分(A)の含有量が上記範囲であると、第1の有機酸金属塩中に含まれていた金属が均一に薄膜化し、優れた導電膜を形成できる。成分(A)が、導電性組成物全量に対して5質量%未満であると、導電膜の基材への密着性、金属光沢が劣る場合があり、50質量%を超えると、導電膜の表面平滑性が劣る場合がある。
成分(B)の脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種のアミンは、成分(A)の第1の有機酸金属塩の溶解度を高める。
成分(B)のアミンは、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物から選択された1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。中でも、成分(A)の第1の有機酸金属塩の溶解度を高める効果に優れている脂環式ポリアミン及び/又は少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物を選択することが好ましい。
成分(B)の脂肪族ポリアミンは、分子内にアミノ基を2個以上有する脂肪族アミンであり、脂肪族ポリアミンとしては、分子内に2個のアミノ基を有する脂肪族ジアミン、分子内に3個のアミノ基を有する脂肪族トリアミン等が挙げられる。中でも炭素数4〜8の直鎖の脂肪族ジアミンであることが好ましい。
成分(B)の脂肪族ジアミンの例として、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。中でも、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサンが好ましい。
成分(B)の脂環式ポリアミンは、置換基としてアミノ基及び/又はアミノアルキル基を2個以上有する単又は多環式アミンであり、脂環式ポリアミンとしては、分子内に2個のアミノ基及び/アミノアルキル基を有する単又は多環式ジアミン、分子内に3個のアミノ基及び/又はアミノアルキル基を有する単又は多環式トリアミン等が挙げられ、中でも、炭素数6〜12の脂環骨格を有する単環式ジアミンであることが好ましい。
成分(B)の単環式ジアミンとしては、1,2−ジアミノシクロヘキサン又は1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
成分(B)の少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物は、アミノ基を環構成原子として含んでいてもよく、複素環を構成する少なくとも1個の原子上で、アミノ基及び/又はアミノアルキル基により置換されていてもよい。成分(B)としては、少なくとも1個のアミノ基を環構成原子として含んでいる飽和含窒素複素環化合物であることが好ましく、環構成原子である少なくとも1個の窒素原子上で、アミノ基及び/又はアミノアルキル基により置換された飽和含窒素複素環化合物であることがより好ましい。置換基としてのアミノアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖アルキルを含む基であることが好ましい。
(B)少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物としては、2−アミノメチルピペリジン、3−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン又はN,N´−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
中でも、環を構成する少なくとも1個の窒素原子がアミノアルキル基で置換された、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジンが好ましい。
成分(B)は、成分(A)1モルに対して、好ましくは0.5〜10.0モル、より好ましくは0.8〜5.0モル、さらに好ましくは1.2〜3.0モル、特に好ましくは1.5〜2.0モルである。
成分(B)が、成分(A)1モルに対して、0.5モル未満であると、成分(A)の第1の有機酸金属塩を均一に溶解することができない場合がある。成分(B)が、成分(A)1モルに対して、10.0モルを超えると、導電性組成物中の金属含有率が低くなり過ぎて、良好な金属膜を形成できない場合があるだけでなく、(B)の成分が焼成時に金属の焼結を阻害する場合がある。
成分(C)の金属アルコキシド及び第2の有機酸金属塩(ただし、第1の有機酸金属塩に含まれる金属を含有する有機酸金属塩を除く)から選択される少なくとも1種の化合物は、焼成時に、成分(A)の第1の有機酸金属塩に含まれていた金属の凝集を抑制し、基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性を高めることができる。
成分(C)の化合物は、金属アルコキシド及び第2の有機酸金属塩から選択された1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
成分(C)の金属アルコキシドとしては、M(OR)(式中、Mはチタン、ビスマス、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、インジウム及びスズからなる群より選択された金属元素であり、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、nは金属元素Mの原子価である)で表されるものが挙げられる。
成分(C)の金属アルコキシドの具体例としては、チタンテトラメトキシド(Ti(OCH)、チタンテトラエトキシド(Ti(OC)、チタンテトラプロポキシド(Ti(OC)、チタンテトラブドキシド(Ti(OC)、ジルコニウムテトラメトキシド(Zr(OCH)、ジルコニウムテトラエトキシド(Zr(OC)、ジルコニウテトラプロポキシド(Zr(OC)、ジルコニウムブドキシド(Zr(OC)、アルミニウムトリメトキシド(Al(OCH)、アルミニウムトリエトキシド(Al(OC)、アルミニウムトリプロポキシド(Al(OC)、アルミニウムトリブトキシド(Al(OC)、ニオブペンタンメトキシド(Nb(OCH)、ニオブペンタンエトキシド(Nb(OC)、ニオブペンタンプロポキシド(Nb(OC)、ニオブペンタンブドキシド(Nb(OC)、ホウ素トリメトキシド(B(OCH)、ホウ素トリエトキシド(B(OC)、ホウ素トリノルマルプロポキシド(B(OC)、ホウ素トリノルマルブトキシド(B(OC)、インジウムトリメトキシド(In(OCH)、インジウムトリエトキシド(In(OC)、インジウムトリプロポキシド(In(OC)、インジウムブトキシド(In(OC)、スズテトラメトキシド(Sn(OCH)、スズテトラエトキシド(Sn(OC)、スズテトラプロポキシド(Sn(OC)、スズテトラブドキシド(Sn(OC)、トリ−2−エチルヘキシロキシビスマス等が挙げられる。
中でも、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド又はチタンテトラノルマルブドキシドが好ましい。
成分(C)の第2の有機酸金属塩としては、炭素数1〜8の脂肪酸金属塩であり、ビスマス、コバルト、チタン、ジルコニウムからなる群より選択された金属元素を含むものが挙げられる。
第2の有機酸金属塩としては、具体的には、酢酸ビスマス、酢酸コバルト、酢酸チタン、酢酸ジルコニウム、オクタン酸ビスマス、オクタン酸コバルト、オクタン酸チタン、オクタン酸ジルコニウム、2−エチルへキサン酸ビスマス、2−エチルへキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸チタン、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等を用いることができ、中でも、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸ビスマスが好ましい。
成分(C)は、金属換算で成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.01〜20重量部含む。
成分(C)の含有量が、金属換算で成分(A)100重量部に対して0.01〜50重量部であると、成分(C)に含まれる金属が、焼成時に成分(A)に含まれる金属の凝集を抑制するため、基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性を高め、所望の比抵抗値を有する導電性に優れた導電膜を得ることができる。なお、導電膜の比抵抗値は、導電性組成物中の金属アルコキシド又は第2の有機酸金属塩中に含まれる金属の含有量、焼成温度等を変化させることによって、所望の比抵抗値を有する導電膜を得ることができる。
例えば、金属換算(Ag換算)で成分(A)100重量部に対して、金属換算(Ti換算)で成分(C)の含有量が1重量部である導電性組成物を、300℃で焼成して得られる導電膜の比抵抗値は、2.2×10−5Ω・cm程度であり、成分(C)の含有量が0.01重量部である導電性組成物を、300℃で焼成して得られる導電膜の比抵抗値は、4.7×10−6Ω・cm程度である。
本発明の導電性組成物は、さらに(D)有機溶媒(以下、成分(D)とする)を含有してもよい。
本発明の導電性組成物において、さらに成分(D)を含有することにより、有機酸金属塩の溶解性が増し、滑らかで伸展性に富む導電性組成物を得ることができ、印刷性の向上を図り、薄く均一な導電膜を形成することが可能となる。
成分(D)の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等のテルペン系化合物が挙げられる。
中でも、メタノール、エタノール等が好ましい。
上記の有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
成分(D)は、成分(A)1モルに対して、好ましくは0〜64モル、より好ましくは1〜20モル、更に好ましくは6〜16モルである。
本発明の導電性組成物は、さらに必要に応じて、分散助剤、表面処理剤、消泡剤、シランカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
本発明の導電性組成物は、例えば、以下のように調製することができる。
本発明の導電性組成物は、フラスコなどの撹拌混合槽などを用いて成分(A)と成分(B)を攪拌・混合し、必要に応じて成分(D)加えて均一に攪拌・溶解する。得られた溶液に成分(C)を加え、15分〜3時間程度攪拌して均一な溶液を調製する。任意の添加剤は、成分(D)に溶解させてもよく、成分(A)、(B)、(C)を溶解させた混合物に溶解させてもよい。
本発明の導電性組成物は、電子回路や電極のような導電体、特に基材表面のパターン状の導電体の形成に好適に用いることができる。そのほか、本発明の導電性組成物は、メッキ下地用導電ペースト、抵抗ペースト、導電性接着剤等として用いることができる。
本発明の導電体は、導電性組成物を用いて形成された導電膜を有する。
導電膜は、厚さ0.1〜5.0μmの薄膜であることが好ましい。
本発明の導電体の製造方法は、例えば上記のように調製した導電性組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、上記塗膜が形成された基材を150〜900℃で焼成して導電膜を形成する工程とを含む。
基材としては、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックス、ガラス、ガラス強化エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂が挙げられる。
塗膜の形成方法としては、スクリーン印刷機、ディスペンサー、スピンコーター等を用いて導電性組成物を基材等に塗布する方法等の任意の方法を用いることができる。
本発明の導電性組成物によれば、真空蒸着法やスパッタリング法で用いられるような高価な設備機器を使用することなく、厚さ0.1〜5.0μmの薄い導電膜を簡便に形成することができる。
塗膜が形成された基材を焼成する工程において、基材への密着性、表面平滑性、金属光沢に優れる薄膜を得るためには、150〜250℃で焼成することが好ましい。これらの特性に加えて、さらに例えば比抵抗値が2.2×10−5Ω・cm程度の導電性に優れた導電薄膜を得るためには、250〜900℃で焼成することが好ましい。
本発明の導電性組成物を用いて得られた導電膜は、特に限定されないが、例えばメッキ下地用膜、抵抗膜等に適用が可能である。
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す組成により、成分(A)の酢酸銀と、成分(B)の1,2−ジアミノシクロヘキサンを攪拌・混合し、さらに成分(C)のチタンテトライソプロポキシドと、成分(D)のエタノールを加えて、室温で2時間程度混合し、攪拌して均一な溶液である導電性組成物を調製した。
実施例1の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.2質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
(実施例2)
表1に示す組成により、実施例1と同様にして、導電性組成物の溶液を調製した。
実施例2の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が18.3質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
(実施例3)
表1に示す組成により、実施例1と同様にして、導電性組成物の溶液を調製した。
実施例3の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が18.7質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
(実施例4)
表1に示す組成により、実施例1と同様にして、導電性組成物の溶液を調製した。
実施例4の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が18.7質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
(実施例5)
表1に示す組成により、実施例1と同様にして、導電性組成物の溶液を調製した。
実施例5の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.6質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
(比較例1)
(B)成分として、ジエタノールアミンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表1に示す組成により、導電性樹脂組成物の溶液を調製した。
比較例1の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.5質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、ジエタノールアミンが0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
実施例1〜5及び比較例1の導電性組成物の状態を目視で観察した。結果を表1に示す。なお、表1中、○は、可溶化して均一な溶液となった状態を示し、×は、完全に溶解せず不均一な状態を示す。
表1に示すように、実施例1〜5は、成分(B)により成分(A)の溶解度が高められて、完全に可溶化し、滑らかで伸展性に富む均一な溶液を得ることができた。一方、比較例1は、成分(A)が十分に溶解せず、均一な溶液とならなかった。
(実施例6)
表2に示す組成により、実施例1〜5と同様にして、導電性組成物を調製した。実施例6の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が12.3質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが3.00重量部である。
この導電性組成物を、液体状の導電性ペーストとして用いて、この導電性ペーストを幅10mm、長さ50mmのパターンで、厚さ約0.05mmに成るようにスライドガラス上に塗布して、500℃で20分焼成して、焼成後の膜厚が0.2μmである導電薄膜を形成した。なお、導電薄膜の膜厚は、表面粗さ・形状測定機(東京精密社製、SURFCOM 1500SD2−12)を用いて、平均膜厚を測定した。
(比較例2)
表2に示す組成により、成分(C)を含有しないこと以外は、実施例6と同様にして、液体状の導電性ペーストを調製した。この導電性ペーストを用いて、実施例6と同様にして、膜厚0.2μmの導電薄膜を形成した。
実施例6及び比較例2について、走査型電子顕微鏡(FE−SEM(JSM−7500F)、日本電子社製)を用いて、倍率5000倍でSEM写真を撮影した。結果を図1及び図2に示す。
図1に示すように、実施例6の導電体は、表面平滑性及び金属光沢に優れた導電薄膜が形成されていた。一方、図2に示すように、比較例2の導電体は、導電膜は形成されているものの、表面平滑性が悪く、表面に多数の孔(凹部)が存在するポーラスな状態となっていた。
(実施例7)
表3に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例7の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が18.7質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが6.00重量部である。
(比較例3)
表3に示す組成で、成分(C)を含んでいないこと以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物を調製した。比較例3の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.6質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルである。
実施例1,7及び比較例3の導電性組成物を導電性ペースとして用いて、焼成温度を表3に示す各温度で焼成したこと以外は、実施例6と同様にして、焼成後の膜厚が0.5μmの導電薄膜を形成した。この導電薄膜を形成した導電体について、導電薄膜の表面粗さRa(算術平均粗さ)を次の方法で測定した。結果を表3及び焼成温度と表面粗さRaの関係を示すグラフを図3に示す。
[表面粗さRaの測定方法]
本明細書において、表面粗さRaとは中心線平均粗さ(算術平均粗さ)をいい、表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)に準拠して、表面粗さ・形状測定機(東京精密社製、SURFCOM 1500SD2−12)を用いて測定した。
表3及び図3に示すように、本発明の導電性組成物を用いて形成した導電薄膜は、300℃の低温で焼成した場合においても、900℃の高温で焼成した場合においても、比較例と比べて、表面粗さRaの数値が低く、表面平滑性に優れていた。
(実施例8)
表4に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例8の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.6質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが0.01重量部である。
(実施例9)
表4に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例9の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.6質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが0.10重量部である。
(実施例10)
表4に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例10の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.5質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが0.50重量部である。
(実施例11)
表4に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例11の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が19.5質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが1重量部である。
(実施例12)
表4に示す組成により、成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性組成物を調製した。実施例12の導電性組成物は、組成物全量100質量%に対して、成分(A)が17.9質量%であり、成分(A)0.1モルに対して、成分(B)が0.15モルであり、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが12重量部である。
実施例1,7〜12及び比較例3の導電性組成物を導電性ペーストとして用いて、300℃で焼成したこと以外は、実施例6と同様にして、焼成後の膜厚が0.5μmの導電薄膜を形成した。
実施例1,7〜12及び比較例3の各導電体について、上記の方法により導電薄膜の表面粗さRa(算術平均粗さ)を測定した。また、下記の方法により、導電薄膜の比抵抗値を測定した。結果を表4に示す。また、表4中、○は、目視で見たとき、表面平滑性に優れ、金属光沢などが認められることを示し、△は、表面平滑性にやや優れ、金属光沢が若干認められることを示し、×は、表面がポーラスで平滑性がなく、金属光沢などが認められないことを示す。
[比抵抗値の測定方法]
各導電薄膜の抵抗値を2001型デジタルマルチメーターを用いて、4端子法で測定した。また、各導電薄膜の膜厚を上記の表面粗さ・形状測定機で測定した。比抵抗値は、例えば3.2×10−6Ω・cmを「3.2E−06Ω・cm」と示す。
図4に比較例3及び実施例1、7〜12の各導電体の写真を示す。また、図5に、各導電体について、成分(C)の含有量と比抵抗値との関係を示す。図6に、各導電体について、成分(C)の含有量と表面粗さRa(μm)との関係を示す。
表4及び図4に示すように、実施例1、7〜12は、表面平滑性に優れ、美しい金属光沢を有し、光が反射していることが確認できた。一方、比較例3の導電薄膜は、ポーラスで表面平滑性に優れておらず、表面が曇っていた。
表4及び図5に示すように、成分(C)の含有量が、金属換算で成分(A)100重量部に対して0.5重量部以上になると、表面粗さ(Ra)の数値が0.01μm以下と低くなっており、表面平滑性が優れていることが確認できた。この結果から、成分(C)の含有量は、金属換算で成分(A)100重量部に対して0.5重量部以上がより好ましいことが確認できた。
(実施例13)
成分(C)の含有量を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物を調製した。実施例13の導電性組成物は、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のチタンが12重量部である。
実施例1,7,10,13及び比較例3の導電性組成物を導電性ペーストとして用いて、焼成温度を300℃、350℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃の各温度で焼成したこと以外は、実施例6と同様にして、焼成後の膜厚が0.5μmの導電薄膜を形成した。これらの導電体について、上記の方法と同様にして、導電薄膜の比抵抗値を測定した。結果を図6に示す。
図6に示すように、焼成温度が高くなるほど比抵抗値は低くなる。ただし、導電薄膜中に含まれるチタンの含有量が高くなるにつれて、比抵抗値は高くなるため、チタンの含有量は、金属換算で成分(A)100重量部に対して低い方が好ましいことが確認できた。チタンの含有量は、金属換算で成分(A)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下である。
(実施例14)
成分(C)を2−エチルへキサン酸ビスマスに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物を調製した。この導電性組成物は、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のビスマスが2重量部である。
(実施例15)
成分(C)を2−エチルへキサン酸コバルトに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物を調製した。この導電性組成物は、金属換算で成分(A)の銀100重量部に対して、成分(C)のコバルトが2重量部である。
実施例14,15及び比較例3の各導電体について、上記の方法により導電薄膜の比抵抗値及び表面粗さRa(算術平均粗さ)を測定した。結果を表5に示す。また、表5中、○は目視で見たとき、表面平滑性に優れていることを示し、×は表面がポーラスで平滑性がないことを示す。
図7に実施例14、15及び比較例3の各導電体の写真を示す。
表5及び図7に示すように、成分(C)として2−エチルへキサン酸ビスマス(実施例14)、2−エチルへキサン酸コバルト(実施例15)を用いた場合においても、表面平滑性に優れた導電薄膜を形成できることが確認できた。一方、比較例3の導電薄膜は、ポーラスで表面平滑性のない膜だった。
本発明の導電性組成物は、基材に対する密着性、表面平滑性及び金属光沢性に優れた導電薄膜を形成することができる。本発明の導電性組成物を用いる用途としては、特に限定されないが、メッキ下地用導電ペースト、抵抗ペースト、導電性接着剤等に適用することが可能であり、産業上有用である。また、本発明の導電体は、薄く均一な導電膜を有し、この導電膜の基材への密着性、表面平滑性及び金属光沢性に優れているので、メッキ下地用膜、抵抗膜等に適用することが可能であり、産業上有用である。

Claims (10)

  1. (A)第1の有機酸金属塩と、(B)脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン及び少なくとも1個のアミノ基を有する含窒素複素環化合物から選択される少なくとも1種のアミンと、(C)金属アルコキシドとを含み、
    成分(C)の金属アルコキシドが、M(OR) (式中、Mはチタン、ビスマス、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ホウ素、インジウム及びスズからなる群より選択された金属元素であり、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、nは金属元素Mの原子価である)で表されるものである、導電性組成物。
  2. 成分(A)の第1の有機酸金属塩が、脂肪酸の金属塩であり、ルテニウム、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛及びスズからなる群より選択される金属元素を含む、請求項1に記載の導電性組成物。
  3. 成分(B)が、炭素数4〜8の脂肪族ジアミンである脂肪族ポリアミン、置換基としてアミノ基及び/又はアミノアルキル基を有する炭素数6〜12の脂環骨格を有する単環式ジアミンである脂環式ポリアミン、アミノ基又はアミノアルキル基で環を構成する少なくとも1個の窒素原子が置換された含窒素複素環化合物から選択される少なくとも1種のアミンである、請求項1又は2に記載の導電性組成物。
  4. 成分(C)の金属アルコキシドが、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド又はチタンテトラ−n−ブトキシドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  5. 成分(A)を、組成物全量に対して5〜50質量%含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  6. 成分(B)を、成分(A)1モルに対して0.5〜10.0モル含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  7. 成分(C)を、金属換算で成分(A)100重量部に対して0.01〜50重量部含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  8. さらに成分(D)の有機溶媒を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性組成物を用いて得られる導電膜を有する導電体。
  10. 請求項1〜いずれか1項に記載の導電性組成物を用いて基材上に塗膜を形成する工程と、塗膜が形成された基材を300〜900℃で焼成して導電膜を得る工程とを含む導電体の製造方法。
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