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JP5426158B2 - メチン系色素とその用途 - Google Patents

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JP5426158B2 JP2008504974A JP2008504974A JP5426158B2 JP 5426158 B2 JP5426158 B2 JP 5426158B2 JP 2008504974 A JP2008504974 A JP 2008504974A JP 2008504974 A JP2008504974 A JP 2008504974A JP 5426158 B2 JP5426158 B2 JP 5426158B2
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Description

この発明は、新規なメチン系色素とその用途に関するものであり、とりわけ、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるビスインドレニン骨格を有するメチン系色素に関するものである。
情報化時代の到来に伴い、紫外乃至赤外領域の光を吸収する有機化合物の需要が急増している。その用途は、今や、フィルター用材におけるがごとく、有機化合物が光を吸収し、遮断する性質を利用する用途から、有機化合物を介して光のエネルギーを積極的に利用する情報記録、太陽光発電などの用途へと広がることとなった。
斯かる用途へ適用される有機化合物が具備すべき特性としては、紫外乃至赤外領域における吸光特性、耐光性が良好であること、溶剤への溶解性が良好であること、そして、用途に応じた熱特性を発揮することなどが挙げられる。これまでに提案された代表的な有機化合物としては、例えば、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、メチン系色素としてのシアニン色素、スチリル色素などが挙げられるけれども(例えば、特開平1−116611号公報、特開2002−202592号公報、特開2003−167343号公報、特開平11−58961号公報、特開2003−231359号を参照)、このうち、アントラキノン系色素は吸光特性に難があり、また、フタロシアニン系色素については、吸光特性、溶剤への溶解性ともに難があるとされている。これまで、メチン系色素は、置換基の導入、色素骨格の2量化等により、吸光特性、溶解性の改善が試行されてきたものの、依然として吸光特性、溶解性に加えて、耐光性、熱特性等の性能までも満足するものは数少ないのが現状である。
ところで、情報記録の分野では、マルチメディア時代の到来に伴い、CD−R、DVD−R、追記型ブルーレイディスク(以下、BD−Rと略記する)やHD
DVD−Rなどの光記録媒体が脚光を浴びている。光記録媒体は、光磁気記録媒体、相変化記録媒体、カルコゲン酸化物光記録媒体、及び有機系光記録媒体に大別することができる。
このうち、有機系光記録媒体は、通常、メチン系色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(以下、「TFP」と略記する。)などの有機溶剤に溶解し、溶液をポリカーボネートの基板に塗布し、乾燥して記録層を形成した後、金、銀、銅などの金属による反射層及び紫外線硬化樹脂などによる保護層を順次密着させて形成することによって作製される。有機系光記録媒体は、読取光や自然光などの環境光によって記録層が変化し易いという欠点はあるものの、吸光材料としてのメチン系色素を溶液にして直接基板に塗布することによって記録層を構成し得ることから、光記録媒体を低廉に作製できる利点がある。
有機系光記録媒体における緊急の課題は、マルチメディア時代に対応するためのさらなる記録密度の高密度化と情報記録速度の高速化である。さらなる高密度化のためには、記録及び再生光の短波長化が推進されている。一方、さらなる高速化のためには、より感度の高いメチン系色素を用いることが望ましいものの、メチン系色素の高感度化にともなって、再生信号の時間方向の揺らぎ(ジッタ−)の増加や、光安定性(耐光性)の低下をともなう傾向がある。今後のさらなる高速化に対応すべく、従来公知のメチン系色素を斯かる光記録媒体へ適用したのでは、高速で情報を記録するために充分な感度、ジッタ−及び光安定性を保つことが困難となりつつある。
斯かる状況に鑑み、この発明は、紫外乃至赤外領域の光を吸収し、耐光性と溶剤への溶解性に優れ、かつ、有機化合物が適用される用途に応じた熱特性を兼備する新規な有機化合物を提供することによって、上記したごとき用途において、吸光材料として選択し得る有機化合物の幅を広げることを課題とする。
さらに、この発明の課題は、斯かる有機化合物を含んでなる光記録媒体を提供することにある。
さらに、この発明の課題は、斯かる有機化合物を製造するために有用な中間体とその製造方法を提供することにある。
本発明者が、従来、耐光性、熱特性に難があるとされていたメチン系色素に着目し、鋭意研究し、検索したところ、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるビスインドレニン骨格を含んでなるメチン系色素は、耐光性に優れ、紫外乃至赤外領域の光を効率良く吸収するとともに、諸種の有機溶剤において実用上支障のない溶解性を発揮し、熱特性にも優れていることを見出した。然して、斯かるメチン系色素は、紫外乃至赤外領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、紫外乃至赤外領域における光のエネルギーを利用する新規な吸光材料として、斯かる性質を具備するメチン系色素を必要とする多種多様の用途において有利に用い得るものであることが判明した。
さらに、斯かるメチン系色素を光記録媒体に適用することにより、良好な感度を有しながら、耐光性及びジッタ−に優れる記録特性を発揮できることを見出した。
すなわち、この発明は、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるビスインドレニン骨格を含んでなるメチン系色素を提供することによって前記課題を解決するものである。
とりわけ、この発明は、好ましい実施態様として、一般式1で表される原子団を含んでなるメチン系色素を提供することによって前記課題を解決するものである。
一般式1:
(一般式1において、Z及びZはそれぞれ独立に芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。R及びRは、互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。Q及びQは、それぞれ独立に他端側に芳香環基、複素環基、又はアミノ基を有するモノメチン鎖又はポリメチン鎖を表し、それらのモノメチン鎖又はポリメチン鎖は置換基及び/又は環状基を有していてもよい。)
さらに、この発明は、好ましい実施態様として、一般式2で表される原子団を含んでなるメチン系色素を提供することによって前記課題を解決するものである。
一般式2:
(一般式2において、Z乃至Zはそれぞれ独立に芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。R、R、R及びR10は互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。また、R乃至Rにおける置換基、又はR及びR10における炭化水素基のうちの2つが、2価の連結基により連結されていてもよい。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。J及びJは、それぞれ独立にモノメチン鎖又はポリメチン鎖を表し、それらのモノメチン鎖及びポリメチン鎖は置換基及び/又は環状構造を有していてもよい。Y及びYは、それぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表し、Y及び/又はYがヘテロ原子である場合、R乃至Rの一部又は全部が存在しない。)
さらに、この発明は、斯かるメチン系色素を含んでなる光記録媒体を提供することによって前記課題を解決するものである。
さらに、この発明は、斯かるメチン系色素を製造するための有用な中間体としての、一般式3で表されるインドレニン化合物を提供することによって前記課題を解決するものである。
一般式3:
(一般式3において、Z及びZはそれぞれ独立に芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。)
さらに、この発明は、一般式4で表されるジケトン化合物と、一般式5で表される1種又は2種のヒドラジン化合物を反応させる工程を経由する、インドレニン化合物の製造方法を提供することによって前記課題を解決するものである。
一般式4:
(一般式4において、Lは一般式3におけるLに対応する2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。)
一般式5:
(一般式5において、Zは一般式3に対応する芳香環Z又はZを表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。)
この発明は、紫外乃至赤外領域の光を実質的に吸収する、新規なメチン系色素の創製と、その産業上有用な特性の発見に基づくものである。
ビスインドレニン骨格を有する、この発明によるメチン系色素のうち、トリメチン系色素の溶液状態における吸収スペクトルである。 ビスインドレニン骨格を有する、従来公知のトリメチン系色素の溶液状態における吸収スペクトルである。 実施例で用いた光記録媒体の概略図である。
符号の説明
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 保護層
既述したとおり、この発明は、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるビスインドレニン骨格を含んでなるメチン系色素に関するものである。
この発明でいうビスインドレニン骨格とは、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるものを意味する。この発明によるメチン系色素は、文献未記載の新規な化合物であり、いかなるメチン系色素であろうとも、2つのインドレニン環が、それぞれの3位の炭素原子を介して、2価の連結基によって結合してなるビスインドレニン骨格を含んでなるものである限り、程度の差はあるにしても、この発明において有利に用いることができる。
この発明によるメチン系色素としては、ビスインドレニン骨格が、置換基を1又は複数有することのあるモノメチン鎖又はジメチン鎖、トリメチン鎖、テトラメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘキサメチン鎖、ヘプタメチン鎖、アザメチン鎖などのポリメチン鎖の一端側と結合してなり、斯かるメチン鎖の他端側に、置換基を1又は複数有することのある芳香環、複素環又はアミノ基を結合してなるものが挙げられる。
斯かるメチン系色素における芳香環としては、ベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。また、斯かるメチン系色素における複素環としては、イミダゾリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダソール環、α−ナフトイミダゾール環、β−ナフトイミダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドレニン環、イソインドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピリジノインドレニン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジノオキサゾール環、α−ナフトオキサゾール環、β−ナフトオキサゾール環、セレナゾリン環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、α−ナフトセレナゾール環、β−ナフトセレナゾール環、チアゾリン環、チアゾール環、イソチアゾール環、ベンゾチアゾール環、α−ナフトチアゾール環、β−ナフトチアゾール環、テルラゾリン環、テルラゾール環、ベンゾテルラゾール環、α−ナフトテルラゾール環、β−ナフトテルラゾール環、さらには、アクリジン環、アントラセン環、イソキノリン環、イソピロール環、イミダゾキノキサリン環、インダンジオン環、インダゾール環、インダリン環、オキサジアゾール環、カルバゾール環、キサンテン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、クロマン環、シクロヘキサンジオン環、シクロペンタンジオン環、シンノリン環、チオジアゾール環、チオオキサゾリドン環、チオフェン環、チオナフテン環、チオバルビツール酸環、チオヒダントイン環、テトラゾール環、トリアジン環、ナフタレン環、ナフチリジン環、ピペラジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾロン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、ピロリジン環、ピロリン環、ピロール環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントレン環、フェナントロリン環、フタラジン環、プテリジン環、フラザン環、フラン環、プリン環、ベンゾオキサジン環、ベンゾピラン環、モルホリン環、ロダニン環などが挙げられる。また、斯かるメチン系色素におけるアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、p−メトキシフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
この発明によるメチン系色素は、斯かるメチン鎖と芳香環、複素環、又はアミノ基の組み合わせによるものであり、具体的には、例えば、シアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、スクアリリウム色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、フェナントレン色素、アミノビニル色素などの色素を挙げることができる。
用途にもよるけれども、特に好ましいメチン系色素としては、例えば、一般式1で表される原子団を含んでなるものが挙げられる。
一般式1:
一般式1において、Z及びZはそれぞれ独立に芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Z及びZにおける芳香環としては、ベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などから選択される。この発明の目的を逸脱しない範囲で、斯かる芳香環は置換基を1又は複数有していてもよく、個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基などのアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、さらには、これらの組合わせによる置換基が挙げられる。
一般式1におけるR及びRは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。R及びRにおける置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基などのアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、さらには、これらの組合わせによる置換基が挙げられる。
一般式1におけるR及びRは、互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。R及びRにおける炭化水素基としては、炭素数1から20まで、通常、炭素数1乃至8の、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、斯かる脂肪族炭化水素基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基などによって置換されていてもよい。
一般式1におけるLは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。この発明でいう2価の連結基とは、上記したごときインドレニン環同士を連結するための、二つの結合部位を有する置換基を意味する。個々の2価の連結基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロペニレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などの脂肪族炭化水素基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基などの脂環式炭化水素基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基、1,2−フェニレンジメチレン基、1,3−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジエチレン基、メチレンジフェニレン基、エチレンジフェニレン基などの芳香族炭化水素基、オキシ基、カルボニル基などの酸素を含む特性基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのエーテル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、スペロイル基、o−フタロイル基、m−フタロイル基、p−フタロイル基などのアシル基、チオ基、チオカルボニル基などの硫黄を含む特性基、イミノ基、アゾ基などの窒素を含む特性基、シクロペンチレンジメチレン基、シクロヘキシレンジメチレン基などのシクロアルキレンジアルキレン基、メチレンジシクロヘキシレン基、エチレンジシクロヘキシレン基などのアルキレンジシクロアルキレン基、さらには、それらの組合わせによるものが挙げられる。このうち、メチン系色素の合成し易さと、有機溶剤に対するメチン系色素の溶解性の点で、2価の連結基の鎖長が炭素原子などの構成原子の数に換算して20個未満、詳細には、1乃至10個、より詳細には、3乃至8個のものが好ましい。なお、斯かる2価の連結基は、この発明の目的を逸脱しない範囲で、その水素原子の1又は複数が、例えば、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基などによって置換されていてもよい。
一般式1におけるQ及びQは、それぞれ独立に他端側に芳香環、複素環、又はアミノ基を有するモノメチン鎖又はポリメチン鎖を表し、それらのモノメチン鎖又はポリメチン鎖は置換基及び/又は環状基を有していてもよい。
及びQにおける芳香環としては、ベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などから選択される。この発明の目的を逸脱しない範囲で、斯かる芳香環は置換基を1又は複数有していてもよく、個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテン−4−イニル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基などのアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、さらには、これらの組合わせによる置換基が挙げられる。
及びQにおける複素環としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子などの周期律表における第15族又は第16族の元素から選ばれるヘテロ原子を1又は複数含んでなる単環式若しくは多環式の、例えば、イミダゾリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダソール環、α−ナフトイミダゾール環、β−ナフトイミダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドレニン環、イソインドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピリジノインドレニン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジノオキサゾール環、α−ナフトオキサゾール環、β−ナフトオキサゾール環、セレナゾリン環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、α−ナフトセレナゾール環、β−ナフトセレナゾール環、チアゾリン環、チアゾール環、イソチアゾール環、ベンゾチアゾール環、α−ナフトチアゾール環、β−ナフトチアゾール環、テルラゾリン環、テルラゾール環、ベンゾテルラゾール環、α−ナフトテルラゾール環、β−ナフトテルラゾール環、さらには、アクリジン環、アントラセン環、イソキノリン環、イソピロール環、イミダゾキノキサリン環、インダンジオン環、インダゾール環、インダリン環、オキサジアゾール環、カルバゾール環、キサンテン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、クロマン環、シクロヘキサンジオン環、シクロペンタンジオン環、シンノリン環、チオジアゾール環、チオオキサゾリドン環、チオフェン環、チオナフテン環、チオバルビツール酸環、チオヒダントイン環、テトラゾール環、トリアジン環、ナフタレン環、ナフチリジン環、ピペラジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾロン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、ピロリジン環、ピロリン環、ピロール環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントレン環、フェナントロリン環、フタラジン環、プテリジン環、フラザン環、フラン環、プリン環、ベンゾオキサジン環、ベンゾピラン環、モルホリン環、ロダニン環などが挙げられる。斯かる複素環は、この発明の範囲を逸脱しない範囲で、置換基を1又は複数有していてもよく、個々の置換基としては、前述した、芳香環におけるのと同一の置換基が挙げられる。
及びQにおけるアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、p−メトキシフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
及びQにおけるポリメチン鎖としては、例えば、トリメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘプタメチン鎖などの、奇数個のメチン基が連なってなるポリメチン鎖、ジメチン鎖、テトラメチン鎖、ヘキサメチン鎖などの、偶数個のメチン基が連なってなるポリメチン鎖、又はアザメチン鎖などのポリメチン鎖から選択される。斯かるモノメチン鎖又はポリメチン鎖は置換基及び/又は環状基を有していてもよく、置換基の例としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのエーテル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ジフェニルアミノ基、p−メトキシジフェニルアミノ基などのアミノ基、さらには、ニトロ基、シアノ基などが挙げられ、また、環状基としては、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、ベンゼン環などが挙げられる。
さらに好ましいメチン系色素としては、例えば、一般式2で表される原子団を有するものが挙げられる。
一般式2:
一般式2において、Z乃至Zはそれぞれ独立に芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Z及至Zにおける芳香環としては、ベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などから選択される。この発明の目的を逸脱しない範囲で、斯かる芳香環は置換基を1又は複数有していてもよく、個々の置換基としては、一般式1におけるのと同一の置換基が挙げられる。
一般式2におけるY及びYは炭素原子又はヘテロ原子を表し、ヘテロ原子の例としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などの周期律表における第15族及び第16族の原子が挙げられる。なお、Y及びYにおける炭素原子は、例えば、エチレン基やビニレン基などの2個の炭素原子を主体とする原子団であってもよい。また、一般式1におけるY及びYは互いに同じものであっても異なるものであってもよい。
一般式2におけるR、R、R乃至Rは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。R、R、R乃至Rにおける置換基としては、例えば、一般式1におけるR及びRと同一のものが挙げられる。なお、一般式2において、Y及び/又はYがヘテロ原子である場合、R乃至Rの一部又は全部が存在しないこととなる。
一般式2におけるR、R、R及びR10は、互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。R、R、R及びR10における炭化水素基としては、例えば、一般式1におけるR及びRと同一のものが挙げられる。
なお、一般式2において、R乃至Rにおける置換基、又はR及びR10における炭化水素基のうちの2つが、例えば、メチレン基、エチレン基、ビニレン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロペニレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などの脂肪族炭化水素基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキサジエニレン基などの脂環式炭化水素基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基、1,2−フェニレンジメチレン基、1,3−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジメチレン基、1,4−フェニレンジエチレン基、メチレンジフェニレン基、エチレンジフェニレン基などの芳香族炭化水素基、オキシ基、カルボニル基などの酸素を含む特性基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基などのエーテル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、スペロイル基、o−フタロイル基、m−フタロイル基、p−フタロイル基などのアシル基、チオ基、チオカルボニル基などの硫黄を含む特性基、イミノ基、アゾ基などの窒素を含む特性基、シクロペンチレンジメチレン基、シクロヘキシレンジメチレン基などのシクロアルキレンジアルキレン基、メチレンジシクロヘキシレン基、エチレンジシクロヘキシレン基などのアルキレンジシクロアルキレン基、さらには、それらの組合わせによるものなどの2価の連結基によって結合していてもよい。
一般式2におけるLは、一般式1におけるLに対応する2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。個々の2価の連結基としては、一般式1におけるのと同一のものを挙げることができる。
一般式2におけるJ及びJは、モノメチン鎖又はポリメチン鎖を表す。個々のポリメチン鎖としては、例えば、トリメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘプタメチン鎖などの、奇数個のメチン基が連なってなるポリメチン鎖、または、ジメチン鎖、テトラメチン鎖、ヘキサメチン鎖などの、偶数個のメチン基が連なってなるポリメチン鎖から選択される。斯かるモノメチン鎖又はポリメチン鎖は、置換基及び/又は環状基を有していてもよい。
モノメチン鎖又はポリメチン鎖の置換基の例としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのエーテル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、ジフェニルアミノ基、p−メトキシジフェニルアミノ基などのアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などの複素環基、ニトロ基、シアノ基、さらには、それらの組合わせによる置換基が挙げられる。また、ポリメチン鎖における環状構造としては、例えば、環状構造がエチレン性二重結合などの不飽和結合を少なくとも一つ有し、かつ、その不飽和結合がポリメチン鎖の一部として電子共鳴する、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、ベンゼン環などが挙げられ、これらは、いずれも、上記したごとき、ポリメチン鎖におけると同様の置換基を有していてもよい。
この発明のメチン系色素が対イオンを必要とする場合、斯かる対イオンは、有機溶剤におけるメチン系色素の溶解度やガラス状態における安定性を勘案しながら適宜のものとすればよく、通常、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオンなどの無機酸アニオン、サリチル酸、p−ヒドロキシサリチル酸、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオンなどの有機酸アニオン、アゾ系、ビスフェニルジチオール系、チオカテコールキレート系、チオビスフェノレートキレート系、ビスジオール−α−ジケトン系などの有機金属錯体アニオン、さらには、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ペンタフルオロエチルスルホニルイミドなどのビスアルキルスルホニルイミド系から選択する。
なお、一般式1乃び一般式2で表されるメチン系色素において、構造上、シス/トランス異性体、鏡像異性体などの異性体が存在する場合には、いずれの異性体もこの発明に包含されるものとする。
この発明によるメチン系色素は、いずれも、紫外領域乃至赤外領域、詳細には、300nmより長波長、より詳細には、波長350乃至850nm付近に主たる吸収極大を有し、吸収極大波長における分子吸光係数(以下、吸収極大波長における分子吸光係数を「ε」と略記することがある。)も1.0×10以上、通常、1.5×10以上と著しく大きいうえに、分解点が高く、耐熱性が大きい特徴がある。したがって、これらのメチン系色素化合物は、書込光として波長405nm付近のレーザー光を用いる、例えば、BD−R及びHD
DVD−Rなどの記録容量が片面あたり15乃至23.3GBの高密度光記録媒体、さらには、波長635乃至660nmのレーザー光を用いるDVD−R、及び波長780nm付近のレーザー光を用いるCD−Rなどの光記録媒体において極めて有利に用いることができる。
ここで、ビスインドレニン骨格を有するこの発明のメチン系色素のうち、化学式2で表されるトリメチン系色素は、溶液状態において、図1に見られるがごとき可視吸収スペクトルを示す。図1の可視吸収スペクトルに示されるように、斯かるトリメチン系色素は、波長550nm及び600nm付近にそれぞれ吸収極大を有し、それらの吸収極大の長波長側において波長635乃至660nm付近の書込光を実質的に吸収する。一方、ビスインドレニン骨格を有する、化学式67で表される従来公知のトリメチン系色素は、溶液状態において、図2に見られるがごとき可視吸収スペクトルを示す。両者を比較すると、吸収波形の違いが見られる。これは、インドレニン環における窒素原子を介して、2価の連結基により結合されたビスインドレニン骨格を有する、従来公知のトリメチン系色素と比較して、この発明によるトリメチン系色素は、ビスインドレニン骨格が、インドレニン環における3位の炭素原子を介して、2価の連結基により結合されていることにより、メチン系色素の2量体構造であるH会合体を容易に形成するためと推定される。したがって、この発明によるメチン系色素の吸収極大は、従来公知のメチン系色素と比べ、やや短波長側にシフトすることとなる。
この発明によるメチン系色素の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式45で表されるものが挙げられる。
化学式1:
化学式2:
化学式3:
化学式4:
化学式5
化学式6:
化学式7:
化学式8:
化学式9:
化学式10:
化学式11:
化学式12:
化学式13:
化学式14:
化学式15:
化学式16:
化学式17:
化学式18:
化学式19:
化学式20:
化学式21:
化学式22:
化学式23:
化学式24:
化学式25:
化学式26:
化学式27:
化学式28:
化学式29:
化学式30:
化学式31:
化学式32:
化学式33:
化学式34:
化学式35:
化学式36:
化学式37:
化学式38:
化学式39:
化学式40:
化学式41:
化学式42:
化学式43:
化学式44:
化学式45:
この発明によるメチン系色素は諸種の方法により合成できるけれども、経済性を重視するのであれば、活性メチン基と適宜の脱離基との求核置換反応を利用する方法が好適である。この方法によって一般式1で表される原子団を有するメチン系色素を合成する場合には、例えば、一般式1に対応するZ及びZ、R乃至R、並びにLを有する一般式6で表される化合物と、Q及び/又はQに由来する、適宜の脱離基を有する芳香族化合物又は複素化合物とを反応させるか、或いは、一般式1に対応するZ及びZ、R乃至R、並びにLを有する一般式7で表される化合物と、Q及び/又はQに由来する、芳香族化合物又は複素化合物とを反応させることによって、この発明によるメチン系色素を所望量得ることができる。
一般式6:
一般式7:
また、斯かる方法によって一般式2で表される原子団を有するメチン系色素を合成する場合には、例えば、一般式6で表される原子団を有する化合物と、一般式2に対応するZ、R、R、R、及びYを有する一般式8で表される原子団を有する化合物及び/又は一般式2に対応するZ、R、R、R10、及びYを有する一般式9で表される原子団を有する化合物とを反応させるか、あるいは、一般式7で表される原子団を有する化合物と、一般式2に対応するZ、R、R、R、及びYを有する一般式10で表される化合物及び/又は一般式2に対応するZ、R、R、R10、及びYを有する一般式11で表される化合物を反応させることによって、この発明によるメチン系色素を所望量得ることができる。なお、一般式6乃至11におけるX 及びX は、例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、弗素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、沃素酸イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、燐酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオンなどの無機酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン、テトラシアノキノジメタンイオンなどの有機酸イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ペンタフルオロエチルスルホニルイミドなどのビスアルキルスルホニルイミドイオンをはじめとする適宜の陰イオンを表す。また、一般式7乃至9におけるMは適宜の脱離基であって、通常、アニリノ基、p−トルイジノ基、p−メトキシアニリノ基、p−エトキシカルボニルアニリノ基、N−アセチルアニリノ基などのアニリン又はアニリン誘導体の1価基、或いはメルカプト基、メチルチオ基、エチルチオ基、3−スルホニルプロピル基、4−スルホニルブチル基などの含硫特性基が採用される。nは0乃至3の整数を表す。
一般式8:
一般式9:
一般式10:
一般式11:
合成に当たっては、反応容器に一般式6で表される化合物と、一般式8及び/又は一般式9で表される化合物か、あるいは、一般式7で表される化合物と一般式10及び/又は一般式11で表される化合物をそれぞれ適量とり、必要に応じて、適宜溶剤に溶解し、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピロリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの塩基性化合物、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸性化合物、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化錫、四塩化チタンなどのルイス酸性化合物を加えた後、加熱環流などにより加熱・撹拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6などのエーテル類、酢酸、無水酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、炭酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミドなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物、水などが挙げられ、必要に応じて、これらは組み合わせて用いられる。
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると、均一に加熱・撹拌するのが困難になったり、副反応が起こり易くなる。したがって、溶剤の量を質量比で原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件などにもよるけれども、反応は10時間以内、通常、0.5乃至5時間で完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。この発明によるメチン系色素は、この方法によるか、この方法に準じて所望量を製造することができる。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。
ここで、一般式6及び一般式7で表される化合物は、本発明による一般式3で表されるインドレニン化合物を経由して、例えば、速水正明監修、『感光色素』、1997年10月17日、産業図書株式会社発行、24乃至30頁などに記載された方法に準じて得ることができる。同様に、一般式8、一般式9、一般式10及び一般式11で表される化合物は、例えば、速水正明監修、『感光色素』、1997年10月17日、産業図書株式会社発行、24乃至30頁などに記載された方法に準じて得ることができる。
一般式3:
本発明による一般式3で表されるインドレニン化合物は、一般式4で表されるジケトン化合物と、一般式5で表される1種又は2種以上のヒドラジン化合物を反応させる工程を経由して得ることができる。
一般式4:
一般式5:
なお、一般式3で表されるインドレニン化合物において、構造上、鏡像異性体などの異性体が存在する場合には、いずれの異性体もこの発明に包含されるものとする。
この発明によるインドレニン化合物の具体例としては、例えば、化学式46乃至化学式53で表されるものが挙げられる。これらは、いずれも、本発明によるメチン系色素を製造するための中間体として機能する。
化学式46:
化学式47:
化学式48:
化学式49:
化学式50:
化学式51:
化学式52:
化学式53:
斯かるインドレニン化合物の合成にあたっては、反応容器に一般式4及び一般式5で表される化合物をそれぞれ適量とり、必要に応じて、適宜溶剤に溶解し、さらに酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの塩基性化合物を添加した後、加熱還流などにより加熱・撹拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。溶剤としては、上述したような、この発明によるメチン系色素化合物の合成におけると同様の溶剤を用いることができる。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は10時間以内、通常、5時間以内に完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。
斯くして得られるメチン系色素及びインドレニン化合物は、用途によっては反応混合物のまま用いられることもあるけれども、通常、使用に先だって、溶解、分液、傾斜、濾過、抽出、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、昇華、結晶化などの類縁化合物を精製するための汎用の方法により精製され、必要に応じて、それらの方法は組み合わせて適用される。メチン系色素及びインドレニン化合物の種類や用途にもよるけれども、高純度の有機色素化合物を必要とする、例えば、情報記録や太陽光発電などへ適用する場合には、使用に先だって、例えば、蒸留、昇華、結晶化などの方法により精製しておくのが望ましい。
さて、この発明によるメチン系色素は、既述したとおり、溶液状態において300nmより長波長域、通常、波長350乃至850nm付近に主たる吸収極大を有し、吸収極大波長における分子吸光係数(以下、吸収極大波長における分子吸光係数を「ε」と略記することがある。)も1.0×10以上、通常、1.5×10以上と著しく大きいことから、斯かる波長域の光を効率良く吸収する。しかも、この発明によるメチン系色素は、例えば、情報記録、太陽光発電をはじめとする諸分野で頻用される、例えば、アミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系の有機溶剤に対して実用上支障のない溶解性を発揮するうえに、その多くが約200℃以上の分解点を示す。周知のとおり、有機化合物における分解点は熱特性の重要な指標の一つとされており、分解点が高いものほど熱安定性が大きいとされている。然して、この発明のメチン系色素は、紫外乃至赤外領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、紫外乃至赤外領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする多種多様の用途において極めて有用である。ちなみに、メチン系色素などの有機化合物の分解点は、例えば、汎用の示差走査熱量分析(以下、「DSC分析」と略記する。)により決定することができる。
すなわち、この発明によるメチン系色素は、情報記録の用途においては、紫外域乃至赤外域の光を吸収し、光カード、製版、熱転写記録、感熱記録、ホログラム記録などに用いられる重合性化合物や重合開始剤などを増感することによって、重合を促進するための光増感剤又は光熱交換剤として有用である。光増感剤としての別の用途としては、例えば、太陽光発電の分野において、この発明によるメチン系色素を色素増感型湿式太陽電池の半導体電極へ担持せしめるときには、短波長の可視光に対する半導体電極の感度が向上し、太陽電池の光電変換効率を著明に改善することができる。この発明によるメチン系色素は、自然光、人工光などの環境光に対して実用上支障のない耐光性を発揮することから、この発明によるメチン系色素を光増感剤として用いる太陽電池は、長時間用いても、光増感剤に起因する起電力の低下を招来し難い実益がある。
電気通信器具、電気機械器具、光学器具の用途においては、この発明によるメチン系色素をフィルター用材として、例えば、撮像管、半導体受光素子、光ファイバー、映像表示機器用前面部材などへ適用するときには、紫外乃至赤外領域の光に由来する雑音や、輻射される熱線などにより周囲の温度が上昇するのを抑制したり、視感度を所望のレベルに調節することができる実益がある。フィルター用材としての別の用途としては、農業資材において、例えば、温室用のガラス板や、シート若しくはフィルム状に形成したビニルハウス用プラスチック基材へ塗布することによって、果樹、穀物、野菜、花卉をはじめとする観賞植物、園芸植物、食用植物、薬用植物などの有用植物へ到達する光の波長分布を調節し、植物の生長を制御することができる。
以上の用途に加えて、この発明によるメチン系色素と、必要に応じて、紫外領域、可視領域及び/又は赤外領域の光を吸収する他の材料の1又は複数とともに、遮光剤、熱線遮断剤、断熱剤、保温蓄熱剤などとして衣料一般、とりわけ、保温蓄熱繊維や、紫外線、可視光、赤外線などによる偵察に対して擬装性能を有する繊維を用いる衣料や、衣料以外の、例えば、ケースメント、シャーリング、ドレープ、プリーツ、プリント、ベネチアン・ブラインド、レース、ローマン・シェード、ロール・スクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団地、布団カバー、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、窓ガラス、建造物、車輌、電車、船舶、航空機などの内外装材、ウインドガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷き、靴の内張り地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ、照明装置、サングラス、サンバイザー、サンルーフ、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、さらには、これらの物品を包装、充填又は収容するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、望ましくない温度変化や、可視光が病因となる眼精疲労、視細胞の老化、白内障をはじめとする生物や物品の障害や不都合を防止したり、低減することができるだけではなく、物品の色度、色調、色彩、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望のレベルに維持したり、整えることができる実益がある。なお、この発明のメチン系色素は、可視光を吸収する従来公知の有機化合物と同様に、改竄防止用インキ、改竄・偽造防止用バーコードインキ、吸光インキ、吸光塗料、写真やフィルムの位置決め用マーキング剤、プラスチックをリサイクルする際の仕分け用染色剤、PETボトルを成形加工する際のプレヒーティング助剤、さらには、可視光に感受性があるとされている腫瘍一般を治療するための医薬品の有効成分や、有効成分の働きを助ける成分として有用である。
この発明によるメチン系色素は、自然光、人工光などの環境光に対して著明な耐光性を有するけれども、この発明によるメチン系色素を上記した用途へ供するに当たって、例えば、レーザー光などの照射に伴って発生することある一重項酸素などによるメチン系色素の退色、劣化、変性、変質、分解などを抑制する目的で、必要に応じて、いわゆる、耐光性改善剤(クエンチャー)の1又は複数を併用する実施態様を除外するものでは決してない。この発明によるメチン系色素と併用する耐光性改善剤としては、例えば、同じ出願人による再公表特許WO00/075111号公報、社団法人色材協会編集、『色材工学ハンドブック』、初版、1,274乃至1,282頁、株式会社朝倉書店、1989年、11月25日発行、深海正博ら『染料と薬品』、第37巻、第7号、185乃至197頁(1992年)などに記載されているアミン化合物、カロチン化合物、スルフィド化合物、フェノール化合物や、アセチルアセトナートキレート系、サリチルアルデヒドオキシム系、ジインモニウム系、ジチオール系、チオカテコールキレート系、チオビスフェノレートキレート系、ビスジチオ−α−ジケトンキレート系、ホルマザン系の無機錯体キレート錯体、有機金属錯体をはじめとする金属錯体が挙げられ、必要に応じて、それらは組み合わせて用いられる。このうち、この発明によるメチン系色素の耐光性を著明に改善する点と、この発明によるメチン系色素との混合状態において、良好なアモルファス固体を実現する点で、ホルマザン系、ジチオール系の金属錯体が特に好ましい。用途にもよるけれども、併用する耐光性改善剤の量としては、メチン系色素に対して、通常、1質量%以上、好ましくは、3乃至30質量%の範囲で加減する。耐光性改善剤を併用する場合、この発明のメチン系色素は、あらかじめ耐光性改善剤と均一に混合し、液状、半固状又は固状の組成物の形態で目的とする物品へ適用するか、あるいは、物品におけるメチン系色素と耐光性改善剤との配合割合が所定の範囲になるように加減しながら、それぞれを液状、半固状又は固状にて目的とする物品へ個別に適用する。
この発明によるインドレニン化合物は、既述したとおり、この発明のメチン系色素を製造するための中間体として有用である。さらに、斯かるインドレニン化合物は、紫外領域の光、通常、波長200乃至350nmの光を吸収するので、紫外線吸収剤として、例えば、コンピューターモニター、テレビスクリーンなどの光学ディスプレーにおける紫外線カットフィルター、感熱紙、感圧紙などにおける電子供与性染料、自動車塗装用塗料、家屋外装用塗料、被覆電線用塗料、磁性塗料などの塗料、ボールペン、万年筆、ドットプリンター、複写機用トナー、インクジェット、永久マーカー、乾燥消去マーカー、新聞印刷、雑誌印刷、レーザージェットプリンターなどにおけるインキ、窓、眼鏡用レンズ及び双眼鏡、ゴーグル、ハンドシールド、コンタクトレンズ、眼内レンズなどの眼用装置において極めて有用である。
ところで、この発明のメチン系色素は、紫外領域乃至赤外領域、通常、波長300nmより長波長域、詳細には、波長350乃至850nm、より詳細には、波長350乃至450nm付近、630乃至680nm、及び750乃至800nmの光を実質的に吸収するうえに、自然光や人工光などの環境光に対する耐光性が大きいので、書込光として波長800nm以下のレーザー光、とりわけ、波長350乃至450nm付近のレーザー光を用いる、例えば、BD−R及びHD DVD−Rなどの記録容量が片面あたり15乃至23.3GBの高密度光記録媒体、波長630乃至680nm付近のレーザー光を用いるDVD−R、及び波長750乃至800nm付近のレーザー光を用いるCD−Rなどの光記録媒体の記録層を構成するための吸光材料として特に有用である。
そこで、この発明のメチン系色素の光記録媒体における用途について説明すると、この発明のメチン系色素は、光記録媒体に用いるに際して特殊な処理や操作を必要としないことから、この発明による光記録媒体は従来公知の光記録媒体に準じて作製することができる。すなわち、吸光材料としてのこの発明のメチン系色素の1又は複数に、必要に応じて、記録層における反射率や光吸収率を調節すべく他の吸光材料の1又は複数を含有せしめたり、光記録媒体の作製作業や性能を改善すべく汎用の耐光性改善剤、バインダー、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを1又は複数添加したうえで有機溶剤に溶解し、溶液を噴霧法、浸漬法、ローラー塗布法、回転塗布法などにより基板の片面に均一に塗布し、乾燥させて記録層となる吸光材料による薄膜を形成した後、必要に応じて、反射率が45%以上、望ましくは、55%以上になるように真空蒸着法、化学蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより金、銀、銅、白金、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケル、鉄、クロムなどの金属か、あるいは、汎用の有機系反射層用材による記録層に密着する反射層を形成したり、傷、埃、汚れなどから記録層を保護する目的で、難燃剤、安定剤、帯電防止剤などを含有せしめた紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂などを回転塗布し、光照射するか加熱して硬化させることによって反射層に密着する保護層を形成する。
耐光性改善剤としては、例えば、ニトロソジフェニルアミン、ニトロソアニリン、ニトロソフェノール、ニトロソナフトールなどのニトロソ化合物や、テトラシアノキノジメタン化合物、ジインモニウム塩、ビス[2´−クロロ−3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)ジチオベンジル]ニッケル(商品名『NKX−1199』、株式会社林原生物化学研究所製造)、アゾ色素金属錯体、ホルマザン金属錯体などの金属錯体が用いられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。望ましい耐光性改善剤はニトロソ化合物やホルマザン金属錯体を含んでなるものであり、特に望ましいのは、同じ特許出願人による特開2000−344750号公報(発明の名称「フェニルピリジルアミン誘導体」)に開示されたフェニルピリジルアミン骨格を有するニトロソ化合物か、あるいは、再公表特許WO00/075111号公報(発明の名称「ホルマザン金属錯体」)に開示された、ホルマザン骨格における5位の位置にピリジン環を有し、かつ、3位の位置にピリジン環若しくはフラン環が結合してなるホルマザン化合物又はその互変異性体の1又は複数を配位子とする、例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、銅、パラジウムなどとの金属錯体を含んでなるものである。斯かる耐光性改善剤と併用するときには、有機溶剤におけるこの発明のメチン系色素の溶解性を低下させたり、望ましい光特性を実質的に損なうことなく、読取光や環境光などへの露光によるメチン系色素の劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を効果的に抑制することができる。配合比としては、通常、メチン系色素1モルに対して、耐光性改善剤を0.01乃至5モル、望ましくは、0.1乃至1モルの範囲で加減しながら含有せしめる。
この発明のメチン系色素は、諸種の有機溶剤において実用上全く支障のない溶解性を発揮するので、メチン系色素を基板に塗布するための有機溶剤にも制限がない。したがって、この発明による光記録媒体の作製にあっては、例えば、光記録媒体の作製に頻用されるTFPか、あるいは、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−イソプロポキシ−1−エタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、フルフラール、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、燐酸トリメチルなどのエステル類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミドなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、エチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリドンなどのアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物をはじめとするTFP以外の汎用の有機溶剤から選択し、必要に応じて、これらを適宜混合して用いる。
とりわけ、この発明のメチン系色素は、例えば、TFP、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどの蒸発し易い有機溶剤における溶解度が大きいので、斯かる溶剤にこの発明のメチン系色素を溶解し、基板に塗布しても、乾燥後、色素の結晶が出現したり、記録層の膜厚や表面が不均一になることがない。また、この発明のメチン系色素は、非ハロゲン溶剤である、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコールなどのアルコール類や、シクロヘキサノンなどのケトン類においても良好な溶解性を発揮する。この発明のメチン系色素を斯かるアルコール類に溶解して基板に塗布するときには、斯かるアルコール類が非ハロゲン溶剤のため、溶剤によって基板を傷めたり、環境を汚染し難くなる。
基板も汎用のものでよく、通常、圧出成形法、射出成形法、圧出射出成形法、フォトポリマー法(2P法)、熱硬化一体成形法、光硬化一体成形法などにより適宜の材料を最終用途に応じて、例えば、直径12cm、厚さ0.6mm又は1.2mmのディスク状に形成し、これを単板で用いるか、あるいは、粘着シート、接着剤などにより適宜貼合せて用いる。基板の材料としては、実質的に透明で、波長300乃至800nmの範囲で80%以上、望ましくは、90%以上の光透過率を有するものであれば、原理上、材質は問わない。個々の材料としては、例えば、ガラス、セラミックスのほかに、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン(スチレン共重合物)、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート・ポリスチレン−アロイ、ポリエステルカーボネート、ポリフタレートカーボネート、ポリカーボネートアクリレート、非晶質ポリオレフィン、メタクリレート共重合物、ジアリルカーボネートジエチレングリコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのプラスチックが用いられ、通常、ポリカーボネートが頻用される。プラスチック製基板の場合、同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部は、通常、成形の際にトラック内周に転写される。その凹部は、形状については特に制限はないものの、平均幅が0.2乃至1.8μmの範囲になるように、また、深さが70乃至200nmの範囲になるようにするのが望ましい。
この発明によるメチン系色素を含んでなる吸光材料は、粘度を勘案しながら、前述のごとき有機溶剤における濃度0.5乃至5質量%の溶液にして、乾燥後の記録層の厚みが10乃至1,000nm、望ましくは、50乃至300nmになるように基板に均一に塗布される。なお、溶液の塗布に先立って、基板の保護や接着性の改善などを目的に、必要に応じて、基板に下引層を設けてもよく、下引層の材料としては、例えば、イオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、シリコン、液状ゴムなどの高分子物質が挙げられる。また、バインダーを用いる場合には、ニトロセルロース、燐酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、パルミチン酸セルロース、酢酸・プロピオン酸セルロースなどのセルロースエステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースエーテル類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、無水マレイン酸共重合体などの共重合樹脂類、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などのポリマーを単独又は組合せて、質量比で、メチン系色素の0.01乃至10倍用いられる。
この発明による光記録媒体の使用方法について説明すると、斯くして得られるこの発明による、例えば、BD−R及びHD
DVD−Rなどの記録容量が片面あたり15乃至23.3GBの高密度光記録媒体、及びDVD−R、CD−Rなどの光記録媒体は、例えば、GaN系、AlGaInP系、GaAsP系、GaAlAs系、InGaP系、InGaAsP系若しくはInGaAlP系の半導体レーザーか、あるいは、分布帰還型、ブラッグ反射型などの第二高調波発生素子(SHG素子)と組合せたNd−YAGレーザーなどによる波長850nm以下のレーザー光、とりわけ、波長350乃至450nm、630乃至680nm、又は750乃至800nmのレーザー光を用いて諸種の情報を高密度に書き込むことができる。読取には、書込におけると同様の波長か、あるいは、それをやや上回る波長のレーザー光を用いる。書込、読取の際のレーザー出力について言えば、この発明においてメチン系色素と組合せて用いる耐光性改善剤の種類と配合量にもよるけれども、この発明による光記録媒体においては、情報を書き込むときのレーザー出力は、マークが形成されるエネルギーの閾値を越えて比較的強めに、一方、書き込まれた情報を読み取るときの出力は、その閾値を下回って比較的弱めに設定するのが望ましい。一般的には、1mWを上回り、50mWを越えない範囲で書き込み、読取は0.1乃至4mWの範囲で加減する。記録された情報は、光ピックアップにより、光記録媒体の記録面におけるマークとマークが形成されていない部分の反射光量又は透過光量の変化を検出することによって読み取る。
斯くして、この発明による光記録媒体においては、波長850nm以下のレーザー光、とりわけ、波長350乃至450nm、630乃至680nm、又は750乃至800nm付近のレーザー光による光ピックアップを用いることによって、1.6μm以下のトラックピッチで、マーク長0.9μm以下の安定にして微小なマークを高密度に形成することができる。したがって、例えば、直径12cmのディスク状基板において、波長750乃至800nm付近のレーザー光を用いる場合、記録容量が片面あたり0.7GB、波長630乃至680nm付近のレーザー光を用いる場合、記録容量が片面あたり4.7GB、波長350乃至450nm付近のレーザー光を用いる場合、記録容量が片面あたり15GB乃至23.3GBを達成でき、極めて高密度の光記録媒体を実現できることとなる。
この発明による光記録媒体は、文字情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を高密度に記録できるので、文書、データ、コンピュータープログラムなどを記録・保管するための民生用及び業務用記録媒体として極めて有用である。この発明による光記録媒体を適用し得る個々の業種と情報の形態としては、例えば、建設・土木における建築・土木図面、地図、道路・河川台帳、アパチュアカード、建築物見取図、災害防止資料、配線図、配置図、新聞・雑誌情報、地域情報、工事報告書など、製造における設計図、成分表、処方、商品仕様書、商品価格表、パーツリスト、メンテナンス情報、事故・故障事例集、苦情処理事例集、製造工程表、技術資料、デッサン、ディテール、自社作品集、技術報告書、検査報告書など、販売における顧客情報、取引先情報、会社情報、契約書、新聞・雑誌情報、営業報告書、企業信用調査、在庫一覧など、金融における会社情報、株価記録、統計資料、新聞・雑誌情報、契約書、顧客リスト、各種申請・届出・免許・許認可書類、業務報告書など、不動産・運輸における物件情報、建築物見取図、地図、地域情報、新聞・雑誌情報、リース契約書、会社情報、在庫一覧、交通情報、取引先情報など、電力・ガスにおける配線・配管図、災害防止資料、作業基準表、調査資料、技術報告書など、医療におけるカルテ、病歴・症例ファイル、医療関係図など、大学・研究所における学術論文、学会記録、研究月報、研究データ、文献、文献のインデックスなど、情報における調査データ、論文、特許公報、天気図、データ解析記録、顧客ファイルなど、法律における判例など、各種団体における会員名簿、過去帳、作品記録、対戦記録、大会記録など、観光における観光情報、交通情報など、マスコミ・出版における自社出版物のインデックス、新聞・雑誌情報、人物ファイル、スポーツ記録、テロップファイル、放送台本など、官庁関係における地図、道路・河川台帳、指紋ファイル、住民票、各種申請・届出・免許・許認可資料、統計資料、公共資料などが挙げられる。とりわけ、1回のみ書き込めるこの発明の光記録媒体は、記録情報が改竄されたり消去されてはならない、例えば、カルテや公文書などの記録保存に加えて、美術館、図書館、博物館、放送局などの電子ライブラリーとして極めて有用である。
この発明による光記録媒体のやや特殊な用途としては、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、レーザーディスク、MD(光磁気ディスクを用いる情報記録システム)、CDV(コンパクトディスクを利用するレーザーディスク)、DAT(磁気テープを利用する情報記録システム)、CD−ROM(コンパクトディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−ROM(デジタル多用途ディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−RAM(デジタル多用途ディスクを利用する書込可能な読取メモリ)、デジタル写真、映画、ビデオソフト、オーディオソフト、コンピューターグラフィック、出版物、放送番組、コマーシャルメッセージ、ゲームソフトなどの編集、校正、さらには、大型コンピューター、カーナビゲーション用の外部プログラム記録手段としての用途が挙げられる。
この発明でいう光記録媒体とは、この発明のメチン系色素が波長850nm以下の光、とりわけ、波長350乃至450nm、630乃至680nm、又は750乃至800nm付近の光を実質的に吸収するという性質を利用する記録媒体全般を意味するものであって、熱変形型のもの以外に、例えば、メチン系色素の光吸収に伴う発熱による発色剤と顕色剤との化学反応を利用する感熱発色方式や、基板の表面に設けられた周期的な凹凸パターンが斯かる発熱によって平坦化される現象を利用する、いわゆる、「蛾の目方式」のものであってもよい。
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
<インドレニン化合物>
反応容器に、化学式54で表される化合物40gと、化学式55で表される化合物76.6gとを加え、1時間攪拌しながら加熱して反応させた。反応混合物を冷却した後、濃塩酸80mlを加え、さらに30分間加熱して反応させた。反応混合物を冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液を滴々加えた後、クロロホルムを加えて抽出した。傾斜によりクロロホルム層を採取し、水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、濾過した後、クロロホルムを留去した。得られた油状物をクロロホルム及びメタノールの混液を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したところ、白色の化学式46で表される、この発明によるインドレニン化合物の油状物が29.8g得られた。
化学式54:
化学式55:
油状物の一部をとり、吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のインドレニン化合物は波長215nm乃至305nm付近の紫外域に複数の吸収ピークを示した(ε=7.94×10乃至5.45×10)。H−NMR分析において、クロロホルム−d溶液にした本例のインドレニン化合物は化学シフトδ(ppm、TMS)が0.15乃至0.21(2H、m、−CH−)、0.30乃至0.36(2H、m、−CH−)、1.37(6H、s、CH−)、1.60乃至1.70(2H、m、−CH−)、2.00乃至2.10(2H、m、−CH−)、2.14(6H、s、CH−)、7.41乃至7.51(4H、m、ArH)、7.68乃至7.72(2H、m、ArH)、7.78乃至7.85(4H、m、ArH)、及び7.92乃至7.95(2H、m、ArH)の位置にピークを示した。
本例のインドレニン化合物は、ビスインドレニン骨格を有する本発明のメチン系色素を製造するための中間体として有用である。さらに、本例のインドレニン化合物は、紫外域の光を吸収するので、紫外線吸収剤として、紫外線カットフィルター、染料、インキ、眼用装置において有用である。
<インドレニン化合物>
化学式54で表される化合物に代えて、化学式56で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させたところ、白色の化学式51で表される、この発明によるインドレニン化合物の油状物が8.3g得られた。
化学式56:
油状物の一部をとり、吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のインドレニン化合物は波長215nm乃至305nm付近の紫外領域に複数の吸収ピークを示した(ε=8.35×10乃至5.81×10)。H−NMR分析において、クロロホルム−d溶液にした本例のインドレニン化合物は化学シフトδ(ppm、TMS)が0.10乃至0.25(2H、m、−CH−)、0.30乃至0.45(2H、m、−CH−)、0.70乃至0.85(4H、m、−CH−)、1.43(6H、s、CH−)、1.74乃至1.84(2H、m、−CH−)、2.12乃至2.22(2H、m、−CH−)、2.20(6H、s、CH−)、7.38乃至7.51(4H、m、ArH)、及び7.70乃至7.92(8H、m、ArH)の位置にピークを示した。
本例のインドレニン化合物は、ビスインドレニン骨格を有する本発明のメチン系色素を製造するための中間体として有用である。さらに、本例のインドレニン化合物は、紫外域の光を吸収するので、紫外線吸収剤として、紫外線カットフィルター、染料、インキ、眼用装置において有用である。
<インドレニン化合物>
化学式54で表される化合物に代えて、化学式57で表される化合物を用いた以外は実施例1におけると同様に反応させたところ、白色の化学式47で表される、この発明によるインドレニン化合物の油状物が12.8g得られた。
化学式57:
油状物の一部をとり、吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のインドレニン化合物は波長216nm乃至350nm付近の紫外領域に複数の吸収ピークを示した。H−NMR分析において、クロロホルム−d溶液にした本例のインドレニン化合物は化学シフトδ(ppm、TMS)が1.52(6H、s、CH)、2.20(6H、s、CH)、3.00(2H、d、CH)、3.38(2H、d、CH)、6.01(4H、s、ArH)、7.25乃至7.56(6H、m、ArH)、7.74(2H、d、ArH)、7.91(2H、d、ArH)、7.98(2H、d、ArH)の位置にピークを示した。
本例のインドレニン化合物は、ビスインドレニン骨格を有する本発明のメチン系色素を製造するための中間体として有用である。さらに、本例のインドレニン化合物は、紫外域の光を吸収するので、紫外線吸収剤として、紫外線カットフィルター、染料、インキ、眼用装置において有用である。
この発明によるインドレニン化合物は、構造によって仕込条件や収率に若干の違いはあるものの、例えば、上記した以外の化学式46乃至53で表されるものを含めて、いずれも、実施例1乃至3の方法によるか、あるいは、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。
<メチン系色素>
反応容器に、化学式46で表される化合物12.5gとp−トルエンスルホン酸エチル16.9gとをそれぞれ加え、3.5時間加熱攪拌した後、反応混合物へアセトン125mlを滴々加え、冷却したところ、化学式58で表される化合物の白色結晶が16.65g得られた。
化学式58:
次いで、反応容器にアセトニトリルを適量とり、先に得られた化学式58で表される化合物1.5g、化学式59で表される化合物1.82g、及び無水酢酸0.75mlを加え、30分間加熱撹拌させた後、さらにトリエチルアミン0.99mlを滴々加え1.5時間加熱撹拌した。反応混合物へ適量のイソプロピルエーテルを加え、デカンテーションにより上澄み液を除去した後、メタノール15mlを加えて、30分間加熱還流した。その後、反応溶液へヘキサフルオロ燐酸アンモニウム0.87gのメタノール溶液8mlを滴々加え、冷却したところ、化学式1で表されるこの発明のメチン系色素の茶色結晶が1.37g得られた。
化学式59:
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は252℃付近に融点を、300℃付近に分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長544nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=1.94×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.15乃至0.32(2H、m、−CH−)、0.65乃至0.82(2H、m、−CH−)、1.10(6H、t、CH−)、1.23(6H、t、CH−)、1.62(6H、s、CH−)、1.80(6H、s、CH−)、1.87(6H、s、CH−)、1.85乃至2.07(2H、m、−CH−)、2.70乃至2.90(2H、m、−CH−)、3.95乃至4.20(8H、m、−CH−)、6.39(2H、d、−CH=)、6.48(2H、d、−CH=)、7.51(2H、t、ArH)、7.59(2H、t、ArH)、7.61(2H、d、ArH)、7.66(2H、t、ArH)、7.75(2H、d、ArH)、7.78(2H、t、ArH)、8.01(4H、t、ArH)、8.13(4H、t、ArH)、8.16(2H、d、ArH)、8.24(2H、d、ArH)、及び8.32(2H、t、−CH=)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、500nm乃至600nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
〈メチン系色素〉
化学式59で表される化合物に代えて、化学式60で表される化合物を用いた以外は実施例4におけると同様に反応させたところ、化学式2で表されるこの発明のメチン系色素の茶色結晶が1.71g得られた。
化学式60:
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は211℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のメチン色素は波長551nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=1.87×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.10乃至0.30(2H、m、−CH−)、0.70乃至0.90(2H、m、−CH−)、0.50乃至1.30(12H、m、CH−)、1.50乃至2.00(16H、m、CH−、−CH−)、1.90乃至2.10(2H、m、−CH−)、2.80乃至3.00(2H、m、−CH−)、3.80至4.20(8H、m、−CH−)、5.90乃至8.50(40H、m、ArH、−CH=)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、500nm乃至600nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
〈メチン系色素〉
化学式59で表される化合物に代えて、化学式61で表される化合物を用いた以外は実施例4におけると同様に反応させたところ、化学式3で表されるこの発明のメチン系色素の緑色結晶が1.37g得られた。
化学式61:
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は235℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のメチン色素は波長551nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=1.92×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.00乃至0.20(2H、m、−CH−)、0.60乃至0.75(2H、m、−CH−)、1.21(6H、t、CH−)、1.33(6H、t、CH−)、1.45乃至2.10(18H、m、−CH−)、1.78(6H、s、CH−)、2.25乃至2.50(4H、m、−CH−)、2.60乃至2.80(2H、m、−CH−)、4.00乃至4.12(4H、m、−CH−)、4.12乃至4.22(4H、m、−CH−)、6.56(2H、d、−CH=)、6.72(2H、d、−CH=)、7.48乃至7.72(12H、m、ArH)、7.98乃至8.21(14H、m、ArH、−CH=)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、500nm乃至600nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
<メチン系色素>
化学式46及び59で表される化合物に代えて、それぞれ化学式47及び60で表される化合物を用いた以外は実施例4におけると同様に反応させたところ、化学式36で表されるこの発明のメチン系色素の暗青色結晶が10.47g得られた。
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は220℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のメチン系色素は波長599nmに主たる吸収極大を示した(ε=1.54×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.7乃至0.9(6H、m)、2.0乃至2.2(12H、m)、3.2乃至3.6(10H、m)、3.9乃至4.2(8H、m)、6.0乃至8.8(44H、m)の位置にピークを示した。
本例のメチン系色素は、500nm乃至600nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
<メチン系色素>
反応容器に、化学式51で表される化合物2.0gとp−トルエンスルホン酸エチル2.54gとをそれぞれ加え、2時間加熱攪拌した後、反応混合物へアセトン20mlを滴々加え、冷却したところ、化学式62で表される化合物の白色結晶が2.64g得られた。
化学式62:
次いで、反応容器にアセトニトリルを適量とり、先に得られた化学式62で表される化合物2.0g、化学式59で表される化合物2.35g、及び無水酢酸0.97mlを加え、30分間加熱撹拌させた後、さらにトリエチルアミン1.28mlを滴々加え1.0時間加熱撹拌した。反応混合物へ適量のイソプロピルエーテルを加え、デカンテーションにより上澄み液を除去した後、メタノール20mlを加えて、30分間加熱還流した。その後、反応溶液にヘキサフルオロ燐酸アンモニウム1.12gのメタノール溶液5mlを滴々加え、冷却したところ、化学式8で表されるこの発明のメチン系色素の暗青色結晶が2.31g得られた。
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は251℃付近に融点を、300℃付近に分解点を示した。吸光特性として、常法により塩化メチレン溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長545nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=1.79×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.00乃至0.20(2H、m、−CH−)、0.50乃至0.65(2H、m、−CH−)、0.65乃至0.80(4H、m、−CH−)、1.25(6H、t、CH−)、1.35(6H、t、CH−)、1.72(6H、s、CH−)、1.87(6H、s、CH−)、1.91(6H、s、CH−)、2.00乃至2.20(2H、m、−CH−)、2.60乃至2.75(2H、m、−CH−)、4.15乃至4.30(8H、m、−CH−)、6.49(2H、d、−CH=)、6.51(2H、d、−CH=)、7.38(2H、t、ArH)、7.54(4H、m、ArH)、7.67(4H、m、ArH)、7.78(2H、t、ArH)、7.89(2H、d、ArH)、7.96(2H、d、ArH)、8.06乃至8.16(6H、m、ArH)、8.20(2H、d、ArH)、及び8.42(2H、t、−CH=)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、500nm乃至600nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
<メチン系色素>
反応容器にアセトニトリルを適量とり、化学式63で表される化合物5.0g、化学式64で表される化合物7.44g、及びトリエチルアミン7.37mlを加え、30分間加熱撹拌した。反応混合物へ適量のイソプロピルアルコールを加えた後、冷却し析出した結晶を濾取した。次いで、反応容器に、先に得られた結晶と適量のメタノールを加えて、30分間加熱還流した後、反応溶液へ過塩素酸ナトリウム4.5gの水溶液を滴々加え、冷却したところ、化学式21で表されるこの発明のメチン系色素の茶色結晶が3.17g得られた。
化学式63:
化学式64:
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は285℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長415nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=5.52×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.20乃至0.30(2H、m、−CH−)、0.40乃至0.50(2H、m、−CH−)、1.64(6H、s、CH−)、1.80乃至2.00(2H、m、−CH−)、2.70乃至2.90(2H、m、−CH−)、3.50(6H、s、CH−)、3.65(6H、s、CH−)、5.55(2H、s、−CH=)、及び7.20乃至7.80(20H、m、ArH)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、400nm乃至500nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
<メチン系色素>
反応容器に、化学式63で表される化合物5.0g及びN、N´−ジフェニルホルムアミジン2.08gを加え、3時間加熱撹拌した。反応混合物へ適量のアセトンを加えた後、冷却し析出した結晶を濾取した。次いで、反応容器に、先に得られた結晶と適量のメタノールを加えて、30分間加熱還流した後、反応溶液へ過塩素酸ナトリウム4.5gの水溶液を滴々加え、冷却したところ、化学式24で表されるこの発明のメチン系色素の茶色結晶が4.19g得られた。
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のメチン系色素は300℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。吸光特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長428nm付近に主たる吸収極大を示した(ε=1.62×10)。なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本例のメチン系色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフト(ppm、TMS)が0.15乃至0.30(2H、m、−CH−)、0.65乃至0.82(2H、m、−CH−)、1.62(6H、s、CH−)、1.82乃至2.02(2H、m、−CH−)、2.75乃至2.95(2H、m、−CH−)、3.40(6H、s、CH−)、6.43(2H、d、−CH=)、7.20乃至8.20(22H、m、ArH)、及び8.51(2H、d、−CH=)の位置にピークが観察された。
本例のメチン系色素は、400nm乃至500nm付近の可視領域の光を効率良く吸収し、溶剤への溶解性や熱特性にも優れていることから、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする諸分野において、可視領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、可視領域における光のエネルギーを利用する吸光材料として有用である。
この発明によるメチン系色素は、構造によって仕込条件や収率に若干の違いはあるものの、例えば、上記した以外の化学式1乃至45で表されるものを含めて、いずれも、実施例4乃至10の方法によるか、あるいは、それらの方法に準じて所望量を得ることができる。
〈メチン系色素の溶解性〉
表1に示すこの発明のメチン系色素につき、常法にしたがって、20℃においてTFP100mlに対して溶解した、当該メチン系色素の質量を溶解度として測定した。併行して、化学式65乃至化学式67で表される公知の類縁化合物についても同様にして溶解度を測定した。結果を表1に示す。
化学式65:
化学式66:
化学式67:
表1の結果から明らかなように、この発明によるメチン系色素は、TFPにおいて、いずれも化学式65乃至化学式67で表される公知の類縁化合物を凌駕する溶解度を示した。すなわち、公知の類縁化合物の溶解度が1.10%以下であったのに対して、試験に供したこの発明によるメチン系色素は、いずれも公知の類縁化合物を有意に上回る溶解度を示した。
〈シアニン色素の耐光性〉
実施例4乃至8の方法により得た化学式1乃至3、8及び化学式36で表されるメチン系色素のいずれかを15mgとり、3mlのTFPへ加え、室温下において超音波を5分間印加して溶解させた。スピンコート法により、研磨したガラス基板(5cm×5cm)の片面へ溶液を均一に滴下し、基板を1,000rpmで1分間回転させることによって基板上へ均一に塗布した後、温風及び冷風をこの順序で送風して乾燥させることによって、ガラス基板上へこの発明によるメチン系色素の薄膜を形成させた。
次いで、吸収極大波長(550nm付近)におけるメチン系色素の透過率(T)を薄膜状態で測定した後、ガラス基板から一定間隔を隔てて7.5kWキセノンランプを固定し、基板へ冷風を送風しながらキセノンランプへ2時間露光した(基板表面における光照射エネルギー180W/m)。その後、直ちに、吸収極大波長における透過率(T)を再度測定し、斯くして得られた透過率T及びTを数1へ代入して色素残存率(%)を計算した。併行して、化学式65乃至68で表される類縁化合物により形成した薄膜につき、これらを上記と同様に処置し、吸収極大波長における透過率をそれぞれ測定して対照とした。結果を表2に示す。
化学式68:
表2の結果に見られるとおり、化学式66乃至68で表される化合物のみにより構成した対照の薄膜においては、僅か2時間の露光によって著量の化合物が変化し、当初の吸光度が50%乃至60%に低下した。これに対して、化学式1乃至3、8及び36で表されるこの発明のメチン系色素により構成した薄膜は、同様に露光させても、いずれも、64乃至75%という色素残存率に見られるように、吸光能の低下が緩和された。ちなみに、化学式65で表される、従来公知のメチン系色素によって構成した対照の薄膜は、同様に露光させると、この発明のメチン系色素とほぼ同様の色素残存率(73%)を示した。
これらの実験結果は、この発明のメチン系色素が、従来公知のメチン系色素と比較して、可視領域における耐光性がほぼ同等か有意に優れているものであることを物語っている。
<メチン系色素の電気特性>
常法にしたがって、図3に示すがごとき、基板1、記録層2、反射層3及び保護層4をこの順序で積層してなる光記録媒体を作製した。すなわち、適量のTFPに化学式1乃至3、8又は化学式36で表されるこの発明のメチン系色素のいずれかを濃度1.6質量%になるように加え、暫時加熱した後、超音波を印加して溶解させた。常法にしたがって、この溶液をポリカーボネート製のディスク状基板1(直径12cm、厚さ0.6mm)の片面に均一に回転塗布し、乾燥することによって厚さ100nmの吸光材料による記録層2を形成した。その後、基板1へ銀を厚さ30乃至100nmまで蒸着して記録層2に密着する反射層3を形成した後、汎用の接着剤を用いて、反射層3に密着させてポリカーボネート製のディスク状保護層4(直径12cm、厚さ0.6mm)を貼り付けることによって試験用の光記録媒体を作製した。併行して、この発明のメチン系色素に代えて、化学式65又は68で表される従来公知のメチン系色素を用いる以外は上記と同様にして光記録媒体を作製し、対照とした。なお、化学式66及び67で表される従来公知のメチン系色素は、TFPに対する溶解度が低く、薄膜を形成することができなかったので、光記録媒体を作製することができなかった。
斯くして作製した7種類の光記録媒体につき、市販の光ディスク評価装置(商品名『DDU−1000型』、パルステック工業株式会社製造)を用い、書込波長658nm(開口率0.60)で、転送レート11.08Mbps(1倍速)、44.32Mbps(4倍速)、88.64Mbps(8倍速)において、8−16変調された試験信号を書き込み、そのときの記録感度および電気特性(再生光出力0.7mW)を測定した。結果は表3に併記する。
表3の結果は、この発明のメチン系色素を用いることによって、1倍速、4倍速、8倍速いずれの記録速度においても、従来公知のメチン系色素と比較して、反射率、変調度及びジッター値などの電気特性を維持しつつ、光記録媒体の記録パワーを有意に改善し得ていることを物語っている。とくに、本発明によるビスインドレニン骨格を有することにより、記録感度が改善される知見は、本発明により、初めて明らかになった点である。すなわち、この発明のメチン系色素を利用することにより、高感度化され、ジッタ−などの電気特性に優れた光記録媒体を実現できる。
〈光記録媒体〉
化学式1乃至3、8又は化学式36のいずれかで表されるメチン系色素を吸光材料として、TFPに単位体積あたり濃度1.2質量%になるように加え、さらに、耐光性改善剤として、汎用のホルマザン金属錯体を吸光材料に対し濃度5.0質量%になるように添加し、暫時加熱した後、超音波を印加して溶解した。常法にしたがって、この溶液を膜濾過した後、トラックの内周へ同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部(トラックピッチ0.74μm、幅0.03μm、深さ76nm)を射出成形により転写しておいたポリカーボネート製のディスク基板(直径12cm、厚さ1.2mm)の片面へ均一に回転塗布し、乾燥して厚さ200nmの記録層を形成した。その後、基板へ純銀を100nmの厚さになるようにスパッタリング法により蒸着して記録層に密着する反射層を形成し、さらに、その反射層へ公知の紫外線硬化樹脂(商品名『ダイキュアクリアSD1700』、大日本インキ化学工業株式会社製造)を均一に回転塗布し、紫外線照射して反射層に密着する保護層を形成することによって5種類の光記録媒体を作製した。実施例13におけると同様に試験したところ、本例の光記録媒体は、いずれも実施例13における光記録媒体と同等の、記録感度、及び変調特性、反射率、ジッター特性などの電気特性を発揮した。
記録感度、変調特性、反射率、ジッター特性などの電気特性に優れた本例の光記録媒体は、いずれも、4GBを越える記録容量を有し、700nmより短波長の可視光、とりわけ、波長630乃至680nm付近のレーザー光による光ピックアップを用いることにより、大量の文書情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を高密度に書き込むことができる。なお、発振波長658nmの半導体レーザー素子を用いて情報を書き込んだ本例の光記録媒体の記録面を電子顕微鏡で観察したところ、最小マーク長が、1.0μmを下回る微小マークを含むランダム信号が、トラック上に、高密度に形成されていた。
〈光記録媒体〉
化学式26乃至化学式28のいずれかで表されるメチン系色素を光吸収材料としてTFPに濃度1.2%(w/vol)になるように加え、さらに、耐光性改善剤として、汎用のホルマザン金属錯体を吸光材料に対して、濃度5.0%(w/w)になるように添加し、暫時加熱した後、超音波を印加して溶解した。常法にしたがって、この溶液を膜濾過した後、CD−R用ディスク基板(直径12cm、厚さ1.2mm、トラックピッチ1.6μm)の片面へ均一に回転塗布し、乾燥して厚さ200nmの記録層を形成した。その後、スパッタリング法により、塗布基板へ、純銀を100nmの厚さになるように付加して、記録層に密着する反射層を形成し、さらに、その反射層へ公知の紫外線硬化樹脂(商品名『ダイキュアクリアSD1700』、大日本インキ化学工業株式会社製造)を均一に回転塗布し、紫外線照射して反射層に密着する保護層を形成することによって3種類の光記録媒体を作製した。実施例13におけると同様に試験したところ、本例の光記録媒体は、いずれも実施例13における光記録媒体と同等の、記録感度、及び変調特性、反射率、ジッター特性などの電気特性を発揮した。
感度、変調特性、反射率、ジッター特性などの電気特性に優れた本例の光記録媒体は、いずれも、600MBを越える記録容量を有し、850nmより短波長の可視光、とりわけ、波長750乃至800nm付近のレーザー光による光ピックアップを用いることにより、大量の文書情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を高密度に書き込むことができる。なお、発振波長780nmの半導体レーザー素子を用いて情報を書き込んだ本例の光記録媒体の記録面を電子顕微鏡で観察したところ、最小マーク長が、1.0μmを下回る微小マークを含むランダム信号が、トラック上に、高密度に形成されていた。
〈光記録媒体〉
TFPに吸光材料として化学式21又は化学式24で表されるメチン系色素のいずれかを濃度1.0質量%になるように加え、さらに、耐光性改善剤として、汎用のホルマザン金属錯体を吸光材料に対して濃度20.0質量%になるように添加した後、超音波を印加して溶解した。この溶液を、HD
DVD−R用ディスク基板(直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.4μm)に、スピンコート法で塗布し、スパッタリング法により、純銀の反射膜を120nm設け、紫外線硬化樹脂を用い、0.6mm厚の裏板に接着することで2種類の光記録媒体を作製した。
本例の光記録媒体は、波長405nm、NA(開口数)0.65のテスター(パルステック工業株式会社製造)を用いて、線速度6.61m/s、最短マーク長0.2μmで記録を行った。記録及び再生試験は、DVDフォーラムにより定められたHD
DVD−R規格Ver1.0に準拠した方式で行い、同規格にあるPRSNR(Partial Response SNR)の評価を行った。
斯かる評価試験の結果、本例の光記録媒体記録はLOW TO HIGH型のメカニズムを示し、最適な記録パワーでのPRSNRは、規格値の15を大きく上回った。
この結果は、本例の光記録媒体が、いずれも、15GB以上の記録容量を有し、発振波長405nm付近のレーザー素子を用いることによって大量の文書情報、画像情報及び音声情報を高密度に書き込むことができることを物語っている。当然のことながら、本例の光記録媒体は光記録媒体一般に要求される耐用寿命を具備しており、加速試験の結果によると、一旦書き込まれた情報は繰返し読み取ったり環境光に露光しても長期間に亙って読み取ることができる。
叙上のごとく、この発明は新規なメチン系色素の創製と、その産業上有用な諸特性の発見に基づくものである。この発明のメチン系色素は耐光性に優れ、紫外乃至赤外領域の光を効率良く吸収するとともに、諸種の有機溶剤に対して実用上支障のない溶解性を発揮し、熱特性にも優れていることから、紫外乃至赤外領域の光を吸収することによって、これを遮断したり、紫外乃至赤外領域の光のエネルギーを利用する吸光材料として、例えば、情報記録、太陽光発電、電気機械器具、電気通信器具、光学器具、衣料、建寝装用品、保健用品、農業資材をはじめとする多種多様の用途において極めて有用である。
とりわけ、情報記録の分野において、波長350nm乃至850nmの光に感度を有するこの発明のメチン系色素は、例えば、8倍速以上の記録速度の高速化に対応した、DVD−R、さらには、BD−R、HD
DVD−Rなどの記録容量が片面あたり15乃至23.3GBの高密度光記録媒体における記録層を構成する吸光材料として極めて有用である。加えて、この発明のメチン系色素は、現行のCD−R、1倍速及び4倍速対応のDVD−Rなどの光記録媒体における記録層を構成する吸光材料としても有利に用いることができる。






Claims (3)

  1. 一般式1又は一般式2で表されるメチン系色素。
    一般式1:
    (一般式1において、Z及びZはそれぞれ独立にベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R及びRは、互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。Q及びQは、それぞれ独立に他端側に、芳香環、複素環、又はアミノ基を有するモノメチン鎖又はポリメチン鎖を表し、それらモノメチン鎖及びポリメチン鎖は置換基及び/又は環状基を有していてもよい。)
    一般式2:
    (一般式2において、Z乃至Zはそれぞれ独立にベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は適宜の置換基を表す。R、R、R及びR10は互いに同じか異なる炭化水素基を表し、それらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。また、R乃至Rにおける置換基、又はR及びR10における炭化水素基のうちの2つが、2価の連結基により連結されていてもよい。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。J及びJは、それぞれ独立にモノメチン鎖又はポリメチン鎖を表し、それらモノメチン鎖及びポリメチン鎖は置換基及び/又は環状構造を有していてもよい。Y及びYは、それぞれ独立に炭素原子又はヘテロ原子を表し、Y及び/又はYがヘテロ原子である場合、R乃至Rの一部又は全部が存在しない。)
  2. 請求項1に記載のメチン系色素を含んでなる光記録媒体。
  3. 一般式4で表されるジケトン化合物と、一般式5で表される1種又は2種以上のヒドラジン化合物を反応させる工程を経由する、一般式3で表される、請求項1に記載のメチン系色素を製造するための中間体としてのインドレニン化合物の製造方法。
    一般式3:
    (一般式3において、Z 及びZ はそれぞれ独立にベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Lは2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。)
    一般式4:
    (一般式4において、R及びRは、一般式3に対応する水素原子又は置換基を表す。Lは一般式3に対応する2価の連結基を表し、その連結基は置換基を有していてもよい。)
    一般式5:
    (一般式5において、Zは一般式3に対応するベンゼン環を基本単位とする単環式又は多環式の芳香環Z又はZを表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。)
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