JP5423646B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
このような技術として、特許文献1には、電解又は化学エッチングにより地鉄内部に達する線状の溝を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、歯車型ロールを用いて、方向性電磁鋼板の表面に溝を形成する技術が開示されている。
また、特許文献3には、高ピーク出力、高パルスエネルギのレーザ光を照射して、方向性電磁鋼板の表面に溝を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2に記載の技術では、歯車型ロールを繰り返し何度も使用していると、当該歯車型ロールの刃が摩耗してしまう。そうすると、歯車型ロールの使用頻度によって、方向性電磁鋼板の表面に形成する溝の深さや幅にバラツキが生じるという問題点がある。
また、一般に、レーザ光のビーム径は、その焦点から少しずれた位置でも広がってしまう。よって、特許文献3に記載の技術では、方向性電磁鋼板に対するレーザ光の焦点の位置を安定させないと(好ましくはレーザ光の焦点を方向性電磁鋼板の表面に一致させないと)、方向性電磁鋼板の表面に形成する溝の深さにバラツキが生じるという問題点があった。
[磁区制御装置の構成]
図1は、磁区制御装置の概略構成の一例を示す図である。具体的に図1(a)は、磁区制御装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、図1(b)は、方向性電磁鋼板をその上方(磁区制御装置側)から見た概略図である。
図1(a)において、磁区制御装置は、レーザ発生部10と、高圧水発生部20と、加工ヘッド30と、を有する。
本実施形態では、磁区制御装置は、例えば、以下のようにして製造される方向性電磁鋼板100の表面(表層部)に対して、長手方向がその圧延方向に略直角の方向の溝101a〜101cを形成して方向性電磁鋼板100の磁区を細分化するようにする。
レーザ発生部10は、レーザ光を発生させ、発生させたレーザ光を、光ファイバ40を介して加工ヘッド30に供給するためのものである。レーザ光としては、例えば、高圧水を用いる場合に水への吸収の少ない、Nd:YAGレーザの2倍波(λ=532nm)のパルスレーザを用いることができる。また、レーザ光の出力は、方向性電磁鋼板100の表面に形成する溝101a〜101cの深さ等に応じて適宜決定することができ、例えば、100[W]以上200[W]以下の範囲で適宜決定することができる。
加工ヘッド30は、光学部品31とノズル32とを有し、レーザ発生部10から供給されたレーザ光の径を光学部品31により絞って照射用のレーザ光Lを生成すると共に、高圧水発生部20から供給された高圧水により噴流水柱Cを生成する。加工ヘッド30は、噴流水柱C内にレーザ光Lを導き、噴流水柱C内に閉じ込められた状態でレーザ光Lを、ノズル32から、通板中の方向性電磁鋼板100に照射する。このように、本実施形態では、レーザ光Lを噴流水柱Cで導光するので、レーザ光Lは、水を透過し易いものが好ましい。
図1に示すように、レーザ光L(加工ヘッド30)をスキャン(走査)する方向は、圧延方向(図1の矢印Aの通板方向)に対して直角の方向(図1の矢印Bの幅方向)であるのが好ましい。ただし、レーザ光Lをスキャンする方向は、圧延方向(図1の矢印Aの通板方向)に対して直角の方向に限定されず、圧延方向に対して直角の方向に対し±15[°]以内の方向であってもよい(すなわち、図1(b)のθ[°]が0[°]≦θ≦15[°]であってもよい)。このようにすることによって、方向性電磁鋼板100に形成される溝101a〜101cの長手方向を、圧延方向に対して直角の方向に対し±15[°]以内の方向(圧延方向に対して略直角の方向)にすることができる。このような範囲の方向に溝101a〜101cを形成した理由は、このような範囲の方向に溝101a〜101cを形成すれば、溝101a〜101cを形成したことによる磁区制御の効果(すなわち、鉄損の改善代)が大きくなるからである。一方、これ以外の方向に溝101a〜101cを形成した場合でも鉄損の改善効果はあるが、その程度は小さくなる。
また、レーザ光Lのスキャン速度は、方向性電磁鋼板100の表面に形成する溝101a〜101cの深さに応じて適宜決定することができ、例えば、20[mm/sec]以上1000[mm/sec]以下の範囲で適宜決定することができる。
[レーザ光Lのスポット径]
また、レーザ光Lのスポットの径は、方向性電磁鋼板100の表面に形成する溝101a〜101cの幅に応じて適宜決定することができ、当該形成しようとする溝101a〜101cの幅と同じか、又は、当該形成しようとする溝101a〜101cの幅よりも若干大きな径若しくは小さな径にすることができる。尚、レーザ光Lのスポットの径は、ノズル32の径を変更することにより変えることができる。
以上のようにして方向性電磁鋼板100に対してレーザ光Lをスキャンすることにより、方向性電磁鋼板100の表面に、長手方向が圧延方向に対して略直角の方向の溝101a〜101cが形成される。
また、本実施形態では、圧延方向で相互に隣り合う2つの溝101の間隔Iを、2[mm]以上15[mm]以下の範囲、好ましくは2[mm]以上8[mm]以下の範囲で略等間隔にしている。溝101の間隔Iの上限値をこのようにした理由は、溝101の間隔Iが8[mm]を超えると、磁区制御の効果(すなわち、鉄損の改善代)が減少傾向になり、15[mm]を超えると、その効果がより減少するからである。一方、溝101の間隔Iの下限値をこのようにした理由は、溝101の間隔Iを2[mm]未満にしても、磁区制御の効果(すなわち、鉄損の改善代)が殆ど変わらず、しかも、生産性が著しく悪化するからである。尚、本実施形態では、溝101を形成している面のうち、方向性電磁鋼板100の表面の平らな部分(突起の影響がない部分)と同じ高さの位置112a、112bを、溝101の間隔Iを測定する際の基準となる位置としている。また、溝101の間隔Iのそれぞれは、前述した範囲であれば、必ずしも略等間隔である必要はない。
また、本実施形態では、各溝101a〜101cの幅W(圧延方向における長さ)を、5[μm]以上200[μm]以下の範囲で略同じにしている。溝101a〜101cの幅Wの上限値をこのようにした理由は、溝101a〜101cの幅Wが200[μm]を超えると、方向性電磁鋼板100における磁束密度の低下が大きくなると共に、既存のウォータージェットレーザの標準的な仕様の範囲で噴流水柱Cを形成した場合、突起部111の高さHが3[μm]を超える虞があるからである。一方、溝101a〜101cの幅Wの下限値をこのようにした理由は、溝101a〜101cの幅Wが5[μm]未満であると、噴流水柱の溝からの排出が不安定になり、溝101の安定性が著しく低下するからである。尚、本実施形態では、溝101を形成している面のうち、方向性電磁鋼板100の表面の平らな部分(突起の影響がない部分)と同じ高さの位置112a、112bを、溝101の幅Wを測定する際の基準となる位置としている。また、溝101の幅Wのそれぞれは、前述した範囲であれば、必ずしも略同じである必要はない。
また、本実施形態では、各溝101a〜101cの深さDを、方向性電磁鋼板100の板厚の4[%]以上15[%]以下の範囲、好ましくは6[%]以上12[%]以下の範囲で略同じにしている。溝101の深さDの上限値をこのようにした理由は、溝101の深さDが、方向性電磁鋼板100の板厚の12[%]を超えると、磁束密度の低下が大きくなり、15[%]を超えると、その傾向が顕著になって溝101を形成することによって却って鉄損が大きくなる虞があるからである。一方、溝101の深さDの下限値をこのようにした理由は、溝101の深さDが、方向性電磁鋼板100の板厚の6[%]未満になると、磁区制御の効果(すなわち、鉄損の改善代)が小さくなり、4[%]未満になると、磁区制御の効果が殆ど得られないからである。尚、本実施形態では、溝101を形成している面のうち、方向性電磁鋼板100の表面の平らな部分(突起の影響がない部分)と同じ高さの位置112a、112bを、溝101の深さDの頂部の位置としている。また、溝101の深さDのそれぞれは、前述した範囲であれば、必ずしも略同じである必要はない。
次に、本発明の実施例を説明する。
[[実施例1]]
実施例1では、特許文献3に記載の技術に対する本実施形態の技術の優位性について示す。
実施例1では、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼板を前述したようにして製造したものを使用した。比較例1でも、実施例1と同じ条件で製造した、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼板を使用した。
実施例1では、Nd:YAGレーザの2倍波(λ=532nm)のパルスレーザ(20kHz)を用い、噴流水柱を通して照射した。溝101の深さDが図3に示す値になるように、レーザ光Lのスキャン速度を調整すると共に、溝101の幅Wが100[μm]で一定となるようにノズル32の径(レーザ光Lのスポットの径)を調整し、更に、溝101の間隔Iが3[mm]で一定となるようにした。また、レーザ光Lのスキャン方向を、圧延方向に対して直角の方向とした。また、噴流水柱Cの圧力と流量は、レーザ光Lをガイド(案内)することができ、且つ、方向性電磁鋼板100の溝201の縁の部分に形成される突起部202a、202bを流出できる範囲で一定となるようにした。
一方、比較例1では、CO2レーザを使用して、実施例1と同じ条件の溝201を形成した。
図3に示すように、溝101、201の深さDが同じである場合、突起部111、202の高さHは、実施例1の方が比較例1に比べ格段に低くなることが分かる。
実施例2でも、実施例1と同様に、特許文献3に記載の技術に対する本実施形態の技術の優位性について示す。
実施例2及び比較例2では、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼板を前述したようにして製造したものを使用した。
図4は、焦点からの距離と、溝101、202の深さDとの関係を表形式で示す図である。図5は、比較例における焦点からの距離(図5(a))と、実施例における焦点からの距離(図5(b))を概念的に示す図である。
実施例3では、溝101の幅Wを調査した結果を示す。
実施例3では、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼板を前述したようにして製造したものを使用した。
実施例3では、溝101の幅Wが図6に示す値になるように、ノズル32の径(レーザ光Lのスポットの径)を調整すると共に、溝101の深さDが10[μm]で一定になるように、レーザ光Lのスキャン速度を調整し、更に、溝101の間隔Iが3[mm]で一定となるようにした。また、レーザ光Lのスキャン方向を、圧延方向に対して直角の方向とした。また、噴流水柱Cの圧力と流量は、レーザ光Lをガイド(案内)することができ、且つ、方向性電磁鋼板100の溝201の縁の部分に形成される突起部202a、202bを流出できる範囲で一定となるようにした。
実施例4では、溝101の深さDを調査した結果を示す。
実施例4では、厚みが0.23[mm]の方向性電磁鋼板を前述したようにして製造したものを使用した。
図7は、方向性電磁鋼板100の板厚に対する溝101の深さの割合(=(溝の深さ/方向性電磁鋼板の板厚)×100[%])と、溝101の深さDと、溝101の間隔Iと鉄損と、突起部111の高さHとの関係を示す図である。尚、以下の説明では、「方向性電磁鋼板100の板厚に対する溝101の深さの割合」を必要に応じて「溝101の深さ割合」と称する。
実施例5では、溝101の間隔Iを調査した結果を示す。実施例5では、厚みが0.27[mm]の方向性電磁鋼板を前述したようにして製造したものを使用した。
図8は、溝101の間隔Iと、溝101の深さDと、鉄損との関係を示す図である。
以上のように本実施形態では、仕上焼鈍後の方向性電磁鋼板100、又は、仕上焼鈍後に表面に絶縁皮膜が形成された方向性電磁鋼板100の表面に、噴流水柱C内に閉じ込められた状態でレーザ光Lを照射して、幅Wが5[μm]以上200[μm]以下であり、深さDが方向性電磁鋼板100の板厚の4[%]以上15[%]以下であり、長手方向が方向性電磁鋼板100の圧延方向に対して直角の方向に対し±15[°]以内の方向にある複数の溝101を、方向性電磁鋼板100の圧延方向において2[mm]以上15[mm]以下の間隔Iで形成するようにした。このように、噴流水柱C内に閉じ込められた状態でレーザ光Lを照射してレーザ光Lを噴流水柱Cで導光するので、溝101の縁の部分に形成される突起部111の高さHを低減することができると共に、焦点からの距離の変動による溝101の深さDの変動を低減することができる。よって、例えば、巻き鉄心における層間の電気絶縁性が劣化することを防止することができると共に、レーザ光Lの焦点からの距離の変動によって溝101による磁区制御の効果にバラツキが生じることを防止することができる。よって、良好な磁気特性を有する方向性電磁鋼板100を安定的に得ることができる。また、以上の数値範囲の条件で溝101を形成するので、方向性電磁鋼板100に溝101を導入することによって鉄損を確実に改善することができる。
尚、本実施形態では、溝101を線状(直線状)に形成しているが、圧延方向に対して略直角の方向に形成するようにしていれば、必ずしも溝101を線状に形成する必要はなく、例えば、破線状又は点線状の溝を形成するようにしてもよい。
20 高圧水発生部
30 加工ヘッド
31 光学部品
32 ノズル
100 方向性電磁鋼板
101 溝
111 突起部
D 溝の深さ
H 突起部の高さ
I 溝の間隔
L レーザ光
T 焦点からの距離
W 溝の幅
θ 圧延方向に対して直角の方向からの角度
Claims (1)
- 仕上焼鈍後の方向性電磁鋼板、又は、仕上焼鈍後に表面に絶縁皮膜が形成された方向性電磁鋼板の表面に、噴流液柱内に閉じ込められた状態でレーザ光を照射して、幅が5[μm]以上200[μm]以下であり、深さが当該方向性電磁鋼板の板厚の4[%]以上15[%]以下であり、且つ、長手方向が当該方向性電磁鋼板の圧延方向に対して直角の方向に対し±15[°]以内の方向である複数の溝を、当該方向性電磁鋼板の圧延方向において2[mm]以上15[mm]以下の間隔で形成する方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記レーザ光を照射することによって前記溝の縁の部分に形成される溶融物の少なくとも一部を、前記噴流液柱によって、前記方向性電磁鋼板の外部に流すようにしたことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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