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JP5416894B2 - 接着タンパクの発現を誘導する歯科用組成物 - Google Patents

接着タンパクの発現を誘導する歯科用組成物 Download PDF

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JP5416894B2
JP5416894B2 JP2007251958A JP2007251958A JP5416894B2 JP 5416894 B2 JP5416894 B2 JP 5416894B2 JP 2007251958 A JP2007251958 A JP 2007251958A JP 2007251958 A JP2007251958 A JP 2007251958A JP 5416894 B2 JP5416894 B2 JP 5416894B2
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Description

本発明は歯科用インプラント体に塗布して使用するための、接着タンパクの発現を誘導する組成物に関する。
上皮組織は生体の最表層に連続して存在する組織であり、外界からの刺激に対する防御をになう組織である。ほとんどの人にとって、切り傷や擦り傷、あるいは外科処置によって生じた上皮組織の損傷は、不快に感じる原因となる。これは上皮組織の連続性が保たれず、外来刺激が直接生体内へと到達するためである。
上皮組織の損傷が軽度である場合には、表面を絆創膏で覆い隠す等の行為により、人工的な防御機構を適用し、その間に、生体の再生機構を用いて治癒を待つ方法を選択することが多く、重篤である場合、縫合等の処置を受け、上皮どうしの癒着を行わせるとともに、再生を待つ方法がとられることが多い。これらの処置を行う間は、絆創膏の張り方あるいは縫合の方法により、微小間隙が生じるため、部分的に上皮が不連続となり、病原菌等の外来刺激の影響を受け、感染症の原因となるおそれが非常に大きいことが常に問題となる。
また、歯科用インプラントでは、インプラント周囲炎が問題となっている。これは、天然歯において歯牙は、歯肉、セメント質、歯根膜と歯槽骨で維持されており、歯肉上皮と、同じく上皮組織である歯牙エナメル質とは、ラミニンやインテグリンなどといった接着タンパクによって接着され、上皮組織の連続性は保たれているのに対し、インプラントにおいては、歯肉と歯槽骨、とくに歯槽骨とインプラントとのオステオインテグレーションで維持されているが、上皮部分に目を向けると、非自己組織であるインプラント体は生体組織である歯肉上皮から連続するインプラント周囲上皮と呼ばれる上皮組織に囲まれ、弱く接合しているのみであり、上皮の連続性は保たれていない。さらに上述の損傷とは異なり、上皮の不連続性はインプラント適用後、恒常的である。このため、口腔内病原菌あるいは刺激物質が上皮下に侵入するおそれが非常に大きく、一旦炎症を生じるとその進行は天然歯よりもスムーズに、より重篤化することが知られており、インプラント適用部では、なによりも感染を防止することが重要とされている。
上皮の連続性に関しては、歯肉上皮から連続する付着上皮はラミニン5と呼ばれるタンパク質を発現し、歯牙エナメル質と接着し、上皮の連続性を保っているとの記載がある非特許文献1をはじめとして、様々な研究がなされている。
組織の接着タンパク発現を促進させる技術としては、特許文献1あるいは特許文献2に、組織のラミニン産生を促す植物抽出物質を配合する外用薬および化粧料が提案されているが、ラミニン産生促進物質が自然界よりの抽出で得られることからコスト面で不利であるとともに、その適用部位への固定化方法としてワセリンやパラフィン等が提案されており、効果の持続性等に疑問が残る。
また、医療用機器の表面を改質し、細胞接着等の生理活性を付与させる技術として、特許文献3にシリル基を含む有機化合物とヘパリンやフィブロネクチン等の生体高分子とが共有結合して得られる化合物による被覆組成物が提案されているが、その原料であるヘパリンをはじめとする生体高分子は、現在では各種動物の臓器からの抽出によってのみ得られるため、生産性が悪く、生産コストも高く、患者の経済性に大きな負担となっている。また、原料を各種動物の臓器に依存しているので、病原菌等の不純物の混入の危険性も否定出来ず、安全性の面でも問題がある。
特開2004−262861号公報 特開2005−314230号公報 特表2004−505124号公報 Journal of Periodontology、72巻、788〜797ページ、2001年
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、歯科用インプラント体を用いるための外科処置等により、生体における自己防御組織である上皮組織の連続性が欠落した状態となった際に、上皮組織の接着タンパクの発現を促し、歯科用インプラント体と上皮組織とを接着させ、生体の防御機構をより活性化させる組成物を提供することを目的とするものである。
発明者らが鋭意検討した結果、本発明の上記目的は、(メタ)アクリル系化合物とラジカル重合開始剤からなることを特徴とする接着タンパクの発現誘導組成物により達成しうることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明の接着タンパクの発現誘導組成物により、組成物と直接接する組織面に接着タンパクの発現を誘導し、生体に生物学的接着を引き起こさせ、封鎖を促し、上皮組織の連続性を保つことができる。
以下、本発明を詳述する。以下、本明細書において特別の断りのない限り「部」あるいは「%」は重量基準を示す。また、「アクリ・・・」と「メタアクリ・・・」の総称として「(メタ)アクリ・・・」を使用する。
本発明における(メタ)アクリル系化合物は以下(M)成分ということがある。(M)成分は、酸性基を有しない単官能(メタ)アクリレート化合物(以下、(M1)成分ということがある)と、酸性基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物(以下、(M2)成分ということがある)とからなる。
(M1)成分は、分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有しており、酸性基を有していない化合物である。具体的な化合物としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;
2−ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート等のハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;
1,2−または2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)ハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートあるいはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートに10−ウンデセニルアルコールがエーテル付加した化合物等のポリアルキレングリコールモノアルキル又はモノアルケニルエーテル(メタ)アクリレート;
(テトラハイドロフラン−2−イル)(メタ)アクリレート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどの複素環を有する(メタ)アクリレートおよびその塩;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート;
を挙げることができる。また、
メチル(メタ)アクリルアマイド、2,3−ジハイドロキシプロピル(メタ)アクリルアマイド等の、前記の(メタ)アクリレートの(メタ)アクリルに代えて(メタ)アクリルアマイドとした化合物も好適に使用しうる。
これら化合物のうち、メチル(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。
(M1)成分であるこれら化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(M2)成分は分子内に(メタ)アクリロイル基を1つと少なくとも一つの酸性基を有する化合物である。酸性基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、あるいはこれらの酸無水基などを挙げることができる。
好ましい化合物として、具体的には、
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−または1−スルホ−1−または2−プロピル(メタ)アクリレート、1−または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、1−または2−メチル−2−スルホプロピル(メタ)アクリレート等の酸性基を含有する(メタ)アクリレート;
3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートなどの (メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;
4−スチレンスルホン酸等の酸性基を含有するビニル化合物;
さらに、
1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアマイド−2−メチルプロパンスルホン酸等の上記(メタ)アクリレートに代えて(メタ)アクリルアマイドとした化合物
を挙げることができる。
これら化合物のうち、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリット酸および/またはその酸無水物を好ましく使用することができる。
(M2)成分であるこれら化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、(M)成分としては、(M1)成分と(M2)成分一緒に用いられる。
本発明の組成物において、(M)成分の含有割合は、組成物の全量を基準に、好ましくは25〜99.9重量%、より好ましくは30〜99.5重量%、さらに好ましくは35〜99重量%、最も好ましくは40〜98.8重量%の範囲である。また、後述する、フィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは80〜99.9重量%、より好ましくは85〜99.5重量%、さらに好ましくは88〜99重量%、最も好ましくは91〜98.8重量%の範囲である。この範囲を上回っても下回っても、適用部で組成物が硬化し、適用部へ滞留することなく、接着タンパクの発現誘導を行えないおそれがあり、ともに好ましくない。
さらに、主に口腔内領域における好適な(M)成分の使用例として、(M1)成分の使用量は、組成物全量を基準に、好ましくは22〜99重量%、より好ましくは27〜98.5重量%、さらに好ましくは32〜98重量%、最も好ましくは36〜97重量%の範囲である。また、(M2)成分の使用量は組成物全量を基準に、好ましくは0.25〜9.99重量%、より好ましくは0.3〜9.95重量%、さらに好ましくは0.35〜9.8重量%、最も好ましくは0.4〜9.7重量%の範囲である。もちろん、(M1)成分の使用量と(M2)成分の使用量の和は上述の(M)成分の使用量の範囲である。また、後述するフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、(M1)成分の使用量は、好ましくは72〜99重量%、より好ましくは76〜98.5重量%、さらに好ましくは79〜98重量%、最も好ましくは81〜97重量%の範囲である。(M2)成分の使用量は、好ましくは0.8〜9.99重量%、より好ましくは0.85〜9.95重量%、さらに好ましくは0.88〜9.8重量%、最も好ましくは0.9〜9.7重量%の範囲である。もちろん、この場合にも、(M1)成分の使用量と(M2)成分の使用量の和は上述の(M)成分の使用量の範囲である。この範囲で組成物を調製することにより、歯牙や歯科用金属との接着性が向上し、口腔内といった水分が常に存在する領域においても安定した効果を得ることができる。

本発明における、ラジカル重合開始剤は以下(I)成分ということがある。(I)成分としては、例えば有機ホウ素化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、α−ジケトン化合物、ホスフィンオキサイド、有機アミン化合物、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、無機硫黄化合物、有機リン化合物およびバルビツール酸類などの化合物を挙げることができる。(I)成分であるこれらの化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの重合開始剤は便宜的に常温化学重合タイプと光重合タイプとに分類することができる。具体的な(I)成分の例として、常温重合タイプでは、
トリエチルホウ素、トリ(n−プロピル)ホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリ(n−ブチル)ホウ素、トリ(s−ブチル)ホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などのトリアルキルホウ素;
ブトキシジブチルホウ素などのアルコキシアルキルホウ素;
ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどのジアルキルボラン;
テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル−p−トルイジン塩、テトラフェニルホウ素ジメチルアミノ安息香酸エチルなどのアリールボレート化合物;
部分酸化トリブチルホウ素などの部分酸化トリアルキルホウ素;
ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドおよびp,p’−ジニトロジベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物;
過硫酸アンモニウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物
などを挙げることができる。これらの中では、トリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素を用いることが好ましい。このうち部分酸化トリブチルホウ素が最も好ましく、重合速度を患部への適用に適当な速度としつつ、例えば水や血液などの存在下においても組成物を十分に硬化させることができるという利点を持つ。
また、具体的な(I)成分の例として、光重合タイプでは、
4,4−ジクロロベンジル、ジアセチル、dl−カンファーキノン等のα−ジケトン;
アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾイン・ベンゾインアルキルエーテル;
2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;
ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類;
などを挙げることができる。
本発明において、(I)成分の配合量は、組成物の全量を基準に、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜12重量%、最も好ましくは1.2〜9重量%の範囲である。また、後述するフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜12重量%、最も好ましくは2〜9重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、適用部で組成物が硬化し、適用部へ滞留することなく、接着タンパクの発現誘導を行えないおそれがあり、また、上回ると硬化が著しく急速となるとともに適用部で著しい発熱がおこって、熱傷の原因となるのおそれがあり、ともに好ましくない。なお、本発明の組成物は、好ましくは0.5〜15分、より好ましくは1〜10分、さらに好ましくは1.5〜8分で硬化する。
また、本発明において、所望により還元性化合物(以下(Ir)ということがある)を併用することができる。(Ir)としては、例えば無機化合物では、亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、亜ジチオン酸、ジチオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩類をあげることができる。これらの還元性無機化合物の中でも、亜硫酸塩を好ましく用いることができる。具体的な化合物としては、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましく例示することができる。
また、有機還元性化合物としては、ベンゼンスルフィン酸、o−またはp−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩;
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジハイドロキシメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリンなどのほか、下記式(1)
Figure 0005416894
(ここで、RおよびRは互いに独立して水素原子であるかあるいは官能基もしくは置換基を有していても良いアルキル基であり、Rは水素原子または金属原子である。)
および/または下記式(2)
Figure 0005416894
(ここで、RおよびRは互いに独立に水素原子またはアルキル基であり、Rは水素原子、官能基もしくは置換基を有していても良いアルキル基、または、官能基もしくは置換基を有していても良いアルコキシル基のいずれかである。)
で表わされる化合物を挙げることができる。
上記式(1)に含まれる具体的な化合物としては、N−フェニルグリシン、N−トリルグリシン、N−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ハイドロキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび/またはこれらの塩を挙げることができる。このうち、N−フェニルグリシンおよび/またはその塩を好ましく使用できる。
発明者らが鋭意検討した結果、本発明の上記目的は、(メタ)アクリル系化合物とラジカル重合開始剤からなることを特徴とする歯科用インプラント体塗布用接着タンパクの発現誘導組成物により達成しうることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
本発明において所望により配合される(Ir)成分の使用量は組成物の全量を基準に、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。また、後述するフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.25〜5重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、配合の効果が現れないおそれがあり、また、上回ると硬化が著しく急速となるとともに適用部で著しい発熱がおこり、熱傷の原因となるのおそれがあり、ともに好ましくない。
本発明においては、所望により、フィラー(F)を使用しても良い。(F)成分としては有機フィラー(F1)、無機フィラー(F2)および有機無機複合化フィラー(F3)を挙げることができる。(F)成分を配合することにより、生体へ直接組成物を適用する際の、組成物の流動性を調節することができ、組成物が不用意に患部以外の部位へと流出するのを防ぎ、同時に、適用の操作性を向上させることができる。
(F1)の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコール、ポリビニルアルコールなどのほか、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、ポリ(エチル(メタ)アクリレート)など、(M)成分として列挙したモノマーの単独あるいは共重合体を挙げることができる。
(F2)の具体例としては、ジルコニウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛および酸化アルミニウム粒子などの金属酸化物粉末、シリカ、炭酸ビスマス、リン酸ジルコニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムあるいは、CaHPO、Ca(PO、Ca(POOH、CaO(PO、Ca(PO、Ca10(PO(OH)、CaP11、Ca(PO、Ca、Ca(HPO、CaO、Ca(OH)、Ca(HCO、CaCO、CaClなどの無機カルシウム塩、さらには、4−(2−(メタ)アクリロキシエチル)トリメリット酸カルシウムや4−スチレンスルホン酸カルシウムなど、有機酸のカルシウム塩などの金属塩粉末、シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラスおよびジルコニウムシリケートガラスなどのガラスフィラー、銀徐放性を有するフィラー、フッ素徐放性を有するフィラーなどをあげることができる。
また、(M)成分への分散性を向上させるために、これら無機フィラー(F2)に、従来公知の方法によりシラン処理、ポリマーコートなどの表面処理を施して使用してもかまわない。
(F3)の例としてはトリメチロールプロパンメタアクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したものなどが使用できる。
これら(F)成分の中では、(M)成分の単独重合体を使用することが好ましく、なかでもポリ(メチルメタアクリレート)を使用することが最も好ましい。
これらの(F)成分は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(F)成分は粒子径が小さいほど少量の添加で粘度の調整が可能になるが、適用感や適用時の伸びなどの調整も可能である。好ましくは1nm〜50μm、より好ましくは5nm〜30μm、さらに好ましくは10nm〜20μmの範囲内にある平均粒子径のフィラーが使用される。
本発明において所望により配合される(F)成分の使用量は組成物の全量を基準に、好ましくは0.5〜75重量%、より好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは2〜66重量%、特に好ましくは30〜60重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、配合の効果を確認することができず、また、上回ると流動性が著しく上昇することにより操作性に影響を与えるおそれがあり、ともに好ましくない。
本発明においては、(メタ)アクリル系化合物((M)成分)の配合成分として、所望により、多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、(Mm)成分ということがある)を使用してもかまわない。(Mm)成分を配合することにより、重合硬化の速度を調節したり、硬化後の組成物の硬さを調節することができる。
(Mm)成分の具体例としては、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリ(オキシアルキレン)ジ(メタ)アクリレート;
グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メソ−エリスリトールジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ペンタントリオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート、ヘキサントリオールのジ(メタ)アクリレート、ヘキサンテトラオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのジ(メタ)アクリレートまたはトリ(メタ)アクリレート;
N−ベンジル−N,N−ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ドデシルアンモニウムクロライドなどの複数個の(メタ)アクリロイル基を有するアンモニウム塩;
あるいは下記式(3)
Figure 0005416894
〔式中、Rは少なくとも1個の芳香族環を有しかつ分子中に酸素原子または硫黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基、好ましくは下記式(4)のそれぞれで表わされる基:
Figure 0005416894
から選択されるいずれかを示し、RおよびRは互いに独立して水素原子またはメチル基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1〜10、好ましくは1〜8の整数を示す〕で示される多官能(メタ)アクリレート、
下記式(5)で示される脂肪族、脂環族または芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
Figure 0005416894
〔式中、R10は少なくとも1個の芳香族環を有しかつ分子中に酸素原子または硫黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基、好ましくは上記式(4)のそれぞれで表わされる基から選択されるいずれかを示し、R11およびR12は互いに独立して水素原子またはメチル基を示し、lは1〜10、好ましくは1〜5の整数を示す〕、
さらに下記式(6)で表される分子内にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
Figure 0005416894
〔式中、R13は少なくとも1個の芳香族環を有しかつ分子中に酸素原子または硫黄原子を有していてもよい2価の芳香族残基あるいはシクロアルキル残基、好ましくは上記式(4)のそれぞれで表わされる基から選択されるいずれかを示し、R14およびR15は互いに独立して水素原子またはメチル基を示す〕、
さらには、ビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)ハイドロジェンホスフェートなどの少なくとも1つの酸性基を有し、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などを挙げることができる。
(Mm)成分であるこれら化合物は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において所望により配合される(Mm)成分の使用量は、組成物の全量を基準に、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲である。また、前述のフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%、さらに好ましくは3〜10重量%の範囲である。この数値範囲を下回ると、組成物の硬化速度や硬化後の硬さを十分高めることができず、また、上回ると組成物の硬化が著しく速くなり、操作性に影響を及ぼすおそれがあり、ともに好ましくない。
また、本発明において所望により配合される(Mm)成分に包含される化合物のうち、酸性基を含む化合物の使用量は、組成物の全量を基準として、好ましくは0.25〜9.99重量%、より好ましくは0.3〜9.95重量%、さらに好ましくは0.35〜9.8重量%、最も好ましくは0.4〜9.7重量%の範囲であり、また、前述のフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは0.8〜9.99重量%、より好ましくは0.85〜9.95重量%、さらに好ましくは0.88〜9.8重量%、最も好ましくは0.9〜9.7重量%の範囲である。さらに、上述の(M2)成分および/または(Mm)成分に包含される化合物のうち、酸性基を含む化合物の合計使用量は、組成物全量を基準に、好ましくは0.25〜9.99重量%、より好ましくは0.3〜9.95重量%、さらに好ましくは0.35〜9.8重量%、最も好ましくは0.4〜9.7重量%の範囲である。もちろん、この場合も、これら成分の合計使用量は(M)成分の使用量の範囲を超えないものとする。また、前述のフィラー(F)を除いた組成物の成分の全量を基準に、好ましくは0.8〜9.99重量%、より好ましくは0.85〜9.95重量%、さらに好ましくは0.88〜9.8重量%、最も好ましくは0.9〜9.7重量%の範囲である。これらの数値範囲を下回ると、組成物が局所へ滞留しにくく、また、上回ると硬化後の組成物がもろくなったり、組成物の硬化が著しく速くなり、操作性に影響を及ぼすおそれがあり、いずれも接着タンパクの発現が促進されないおそれがあり、好ましくない。
本発明の接着タンパクの発現促進組成物には、効果を損なわない限りにおいて、その他の成分(以下、(X)成分ということがある)として、例えば
4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマー;
雲母チタン、酸化チタン、オキシ塩化ビスマス、合成金雲母、マイカ、酸化鉄などの無機顔料;
アセトン、エタノール、水などの溶剤;
青色1号、青色404号、赤色106号、赤色201号、赤色220号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、黄色4号、グンジョウ、コンジョウなどの口腔内での組成物の識別を容易にするための着色料;
塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属塩;
アンピシリンなどのβ−ラクタム、カナマイシンンなどのアミノグリコシド、塩酸テトラサイクリンなどのテトラサイクリン、エリスロマイシンなどのマクロライド、クロラムフェニコール類、テリスロマイシンなどのケトライド、アムフォテリシンBなどのポリエンマクロライド、バンコマイシンなどのグリコペプチド、ホスミドシンなどの核酸、レボフロキサシンなどのピリドンカルボン酸、リネゾリドなどのオキサゾリジノンなどの抗生物質;
β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、インドメタシン、イブプロフェン、エピジハイドロコレステリン、ジハイドロコレステロール、ヒノキチオール、セラペプターゼ、プロナーゼ、オウバクエキス、アラントインなどの抗炎症剤;
アスピリン、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、エピリゾール、ナプロキセン、エトドラク、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、メフェナム酸などの鎮痛剤;
ルチン、アスコルビン酸、トラネキサム酸、トロンビンなどの止血剤;
ビタミンE、塩化ナトリウム、ニコチン酸−dl−α−トコフェロールなどの血行促進剤;
シメチジン、マレイン酸クロルフェラミン、塩酸プロメタジン、塩酸ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤;
塩酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、グリチルリチン酸ジカリウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌剤;
過酸化水素、ヨードグリセリン、ヨードチンキ、クロラミン、アクリノール、ポピドンヨードなどの消毒剤
などを添加しても何ら差し支えない。
このようにして得られる組成物を適用した際に、組成物と接している上皮組織および/または再生した上皮組織の、組成物と接した面には接着タンパクが発現され、生物学的封鎖が行われる。
上皮組織に発現を誘導させる接着タンパクに特に制限はないが、好ましくは、ラミニン、インテグリン、ニドゲン、コラーゲン、パーリカンなどをあげることができる。中でもラミニンおよび/またはインテグリンを発現させることが好ましい。
ラミニンは三量体を形成し、機能を発現することが知られている。ラミニン3量体の構成成分としては、α、α、α、α、α、β、β、β、γ、γ、γなどのサブユニットが現在知られているが、このうち、特にα、α、β、β、β、γ、γからなる群より選択される少なくとも1種のラミニンサブユニットを発現することが好ましく、とりわけγのラミニンサブユニットを発現することが特に好ましい。
また、インテグリンは二量体を形成することが知られている。その構成成分としては、α、α、α、α、α、α、α、α、α、α、α、α、αIEL、αIIb、β、β、β、β、β、β、β、βなどのサブユニットが現在知られているが、このうち、α、α、α、α、α、β、βからなる群より選択される少なくとも1種のサブユニットが発現することが好ましく、とりわけα、α、β、βからなる群より選択される少なくとも1種のインテグリンサブユニットが発現することが特に望ましい。
さらにこれら接着タンパクは1種であっても、構成するサブユニットが異なる、2種以上が発現していてもかまわない。
これらタンパクの発現は、従来公知の方法で確認することができる。例えば、組織の一部を外科用メス、注射針などで採取し、必要に応じてパラフィンあるいは凍結切片としたうえで、免疫組織化学染色あるいは免疫蛍光染色により同定することができる。免疫組織化学染色では、ABC法、LSAB法、、酵素標識ポリマー法などの間接法を用いることが好ましく、免役蛍光染色においても、目的タンパクに対する一次抗体を反応させた後に、蛍光色素にて標識した二次抗体を用いる間接法を用いることが好ましい。これらのうち、ホルマリンあるいはパラホルムアルデハイドにて固定したパラフィン切片を用いた免疫組織化学染色の間接法を、同定の簡便さの観点から、好ましく選択することができる。なお、ホルマリンあるいはパラホルムアルデハイドにて固定したパラフィン切片を用いる際には切片の抗原賦活化が必要な場合がある。抗原賦活化には従来公知の方法を採用することができ、具体的にはプロテアーゼ処理や加熱処理、さらにマイクロウェーブ処理を挙げることができる。免疫組織化学染色あるいは免疫蛍光染色により同定する場合、陽性対照となりうる標本と同時に比較した際に、組成物と接している上皮組織および/または再生した上皮組織の、組成物と接した面および/または組成物と接する細胞が、陽性対照と同等以上の染色性が得られることが好ましい。好ましい陽性対照として、とくに口腔領域では正常歯肉上皮の結合組織側や正常付着上皮をあげることができる。
本発明において、「構成される」とは、はじめから、この組成にてすべて混合されていることに限定されるものではなく、必要に応じて、各成分を適宜分封して保存されていて、使用時に混合されることも含まれる。
本発明の接着タンパクの発現を誘導する組成物の使用の形態としては、好ましくは、次にあげる様式が選択される。
(1)(M)成分と、(I)成分とをそれぞれ分けて保存し、使用直前に混合し、筆等を用いて塗布、重合硬化させる方法;
(2)(M)成分と、(I)成分のうち、光重合開始剤から選択される群と含む組成物をボトルにて保存し、筆等を用いて直接塗布、光照射器を用いて、組成物を重合硬化させる方法;
などを例示することができる。
本発明の接着タンパクの発現を誘導する組成物を、歯科用インプラント体に塗布、硬化させ、埋入させた場合にはインプラント体と接する上皮にはインプラント面にラミニン等が発現され、インプラント体と上皮とは生物学的に接着し、非自己組織と自己組織との間隙をなくし、インプラント周囲炎の発生を抑制する効果が期待できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
<組成物の調製>
メチルメタアクリート9.5gに4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸無水物0.5gを溶解させ、よく混合し、液体Aを得た。後述の適用直前に、900mgの液体A、トリブチルボランの部分酸化物(サンメディカル株式会社製、酸素付加量トリブチルホウ素1モルに対し0.5モル)60mg、ポリメチルメタアクリレート粉末(数平均分子量40万、平均粒径約25μm、サンメディカル株式会社製)800mgを筆を用いてよく混合し、組成物を得た。
参考例1
Sprague−Dawley系雄性ラットをチオペンタールナトリウムにて全身麻酔し、口腔内を生理的食塩水で清掃した。ついで外科用メスにて上顎第一臼歯から第二臼歯にかけての口蓋側歯肉を約1mm幅で切除し、上述の組成物を約10mg塗布した。組成物は適用直後はその形態を修正することができ、適用開始より6分後に歯科用探針で組成物表面を押さえたところ、硬化していることを確認した。3、5、7、14日経過後にラットを屠殺、4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液にて灌流固定、EDTA脱灰し、通法に従い3μm厚の頬−舌的なパラフィン切片を作製、得られた切片をヘマトキシリン−エオジン染色した。さらに、0.1%トリプシン溶液にて抗原賦活化を行った後に、抗ラミニンγ抗体(Abcam製)、抗インテグリンβ(Abcam製)抗体を用い、ジアミノベンジジン四塩酸塩にて発色を行う免疫組織化学染色を通法に従って行った。
処置後3日では、硬化した組成物の下には切除を原因としてリンパ球・フィブリンが多数存在したが、5日目より経日的に角化層のない上皮が再生した。上皮の再生が確認されはじめた以降は、調査期間のいずれにおいても、再生粘膜の組成物と接する面にはラミニンγおよびインテグリンβの局在が観察された。
参考例2
Sprague−Dawley系雄性ラットに参考例1と同様に処置し、14日間経過後に歯科用探針にて硬化した組成物を除去し、さらに1、3、5、7日経過後にラットを屠殺、4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液にて灌流固定、EDTA脱灰し、通法に従い3μm厚の頬−舌的なパラフィン切片を作製、得られた切片をヘマトキシリン−エオジン染色した。さらに、0.1%トリプシン溶液にて抗原賦活化を行った後に、抗ラミニンγ抗体(Abcam製)、抗インテグリンβ(Abcam製)抗体を用い、ジアミノベンジジン四塩酸塩にて発色を行う免疫組織化学染色を通法に従って行った。除去後1日の口腔内所見では、正常組織との間に大きな差を得なかったが、ヘマトキシリン−エオジン染色像では再生上皮に角化層がないことを確認し、再生上皮が幼弱であることを観察したが、除去後3日以降では口腔内所見、ヘマトキシリン−エオジン染色像ともに角化層の存在する、正常組織と同様の像を得た。ラミニンγおよびインテグリンβは基底膜、付着上皮に局在を観察した。これにより、参考例1の処置によって生物学的封鎖が行われ、病原菌の感染等を発生させずに、上皮組織の再生を行うことができることが示された。
実施例
アセトン中にて10分間超音波洗浄し、乾燥させた、直径2mm、長さ5mm、スクリュー状のチタン合金製インプラントフィクスチャーに上述の組成物を塗布し、室温にて一昼夜硬化させ、インプラント試験体を得た。Sprague−Dawley系雄性ラットをチオペンタールナトリウムにて全身麻酔し、上顎第一大臼歯を抜歯した。抜歯窩を#120リーマーで拡大形成、生理的食塩水で窩洞を洗浄し、ただちにインプラント試験体を埋入させた。術後1、2、4週経過後にラットを屠殺、4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液にて灌流固定、EDTA脱灰し、注意深くインプラント試験体を除去した後に、通法に従い3μm厚の頬−舌的なパラフィン切片を作製、得られた切片をヘマトキシリン−エオジン染色した。さらに、0.1%トリプシン溶液にて抗原賦活化を行った後に、抗ラミニンγ抗体(Abcam製)、抗インテグリンβ(Abcam製)抗体を用い、ジアミノベンジジン四塩酸塩にて発色を行う免疫組織化学染色を通法に従って行った。術後1週程度でインプラント周囲上皮を観察し、インプラント周囲上皮のインプラント試験体と接する面にラミニンγの弱陽性像を観察した。また、術後2週以降で、インプラント周囲上皮のインプラント試験体と接する面にラミニンγおよびインテグリンβの強陽性像を観察した。これにより、実施例の処置によって、インプラント埋入という上皮の連続性を欠落させる行為を行っても、生物学的封鎖が行われることが示され、予後の病原菌の感染等を発生させない可能性が示された。

Claims (8)

  1. 酸性基を有しない単官能(メタ)アクリレート化合物と酸性基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物からなる(メタ)アクリル系化合物とラジカル重合開始剤からなることを特徴とする歯科用インプラント体塗布用接着タンパクの発現誘導組成物。
  2. 組成物と接する組織に接着タンパクの発現を誘導させる請求項1に記載の組成物。
  3. 接着タンパクがラミニンおよび/またはインテグリンである請求項1または2に記載の組成物。
  4. ラミニンがα、α、β、β、β、γおよびγより選択される少なくとも1つのサブユニットを有する請求項3に記載の組成物。
  5. インテグリンがα、α、βおよびβより選択される少なくとも1つのサブユニットを有する請求項3に記載の組成物。
  6. ラジカル重合開始剤が有機ホウ素化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. さらにフィラー(F)を含む請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. 酸性基を有しない単官能(メタ)アクリレート化合物と酸性基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物からなる(メタ)アクリル系化合物とラジカル重合開始剤の組合せの、歯科用インプラント体塗布用接着タンパクの発現誘導組成物を製造するためへの使用。

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