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JP5416101B2 - コークス乾式消火設備 - Google Patents

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Description

本発明は、コークスの冷却を行うコークス乾式消火設備に関する。
製鉄所等に設置されるコークス乾式消火設備(Coke Dry Quenching equipment:CDQ)は、コークス炉で乾留された高温のコークスを不活性ガス等の冷却ガスで消火する設備であり、高温のコークスを徐冷ことによって品質を向上させ、これにより製鉄用高炉の操業安定化を図っている。コークス乾式消火設備は、系内で冷却ガスを循環させることによって、コークス粉塵の飛散を防ぐことができ、さらに省エネのために廃熱ボイラー等の熱回収装置でコークスの顕熱を回収するといった特長を有する。
コークス乾式消火設備としては、特許文献1及び2に開示されているような設備が知られている。従来のコークス乾式消火設備1は、図12に示すように、コークス装入口10が上部に形成されたプレチャンバー2と、下部にコークス排出装置11が設けられたクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。クーリングチャンバー3内の底部側中央には、不活性ガス等の冷却ガスを噴射する冷却ガス供給手段であると共に、コークスの降下流れを均一化するためのブラストヘッド4が設けられている。また、冷却ガスの一部は、クーリングチャンバー3の下部にあたる傾斜部に円周上に配置された冷却ガス供給手段(例えば、供給口41)からもクーリングチャンバー3内に供給される。さらに、プレチャンバー2の胴部を周方向に囲むように、冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道5が形成されている。
上記構成において、コークス装入口10を介して高温のコークス6をチャンバー内に装入し、コークス排出装置11によってチャンバー底部から連続的にコークスを排出する。このとき、チャンバー内を降下するコークス6は、ブラストヘッド4を含むチャンバー下部からの冷却ガスと熱交換して冷却される。一方、熱交換によって高温となった冷却ガスは、小煙道5を通じてチャンバーから排出される。そして、図示は省略するが、排出されたガスは、除塵器を通過した後、廃ガスボイラー等の熱回収装置に供給されて熱回収され、再び冷却ガスとしてチャンバー内に供給される。
しかしながら、前述した従来のコークス消火設備では、小煙道5の入口近辺におけるコークスの鉛直下向きの流れが悪く、熱交換後のガスが小煙道5を通過する際に、しばしばコークス塊がガス流れに載って流入することがあった。その結果、コークスが小煙道5に堆積し、或いは小煙道5を閉塞して操業を停止しなければならないという問題が起きていた。さらに、このような問題があることによって冷却ガスの風量が制限されてしまい、増風を行うことできず、結果として設備のコンパクト化を実現するのが困難であった。
また、特許文献3には、小煙道5を連結する環状路内の熱損傷対策を講じたコークス消火設備が開示されている。特許文献4には、小煙道5の入口に格子を設けることにより、小煙道5内にコークスが流入するのを防止したコークス乾式消火設備が開示されている。特許文献3及び4には、明細書中に説明記載はないが、図面を参酌すると、小煙道5の下端部がクーリングチャンバー3の側壁面よりも炉芯側に位置するような構造が記載されている。しかしながら、特許文献4のように格子を設けなければコークスの流入を防ぐことができない。特許文献3及び4は、クーリングチャンバー3内の全体的なコークス及び冷却ガスの流動状態に関連付けて小煙道5の下端部の位置を決めることを行っていないからであり、その開示もない。
また、特許文献5には、バンカ本体内に第1及び第2のガス分配器を配置して、チャンバー下部のロート状の部分におけるコークスの流動を改善することが記載されている。しかしながら、特許文献5は、チャンバー下部のロート状の部分の流動改善を主題とするものであり、小煙道内にコークスが流入するのを防止する構造はない。すなわち、チャンバー内の一部分の流動を改善しただけでは、コークスの流入を防ぐ解決策とはならない。しかも、特許文献5のようにガス分配器を支持した場合、コークスとの摩耗によってガス分配器が脱落してしまう問題がある。特に、第2のガス分配器の支持部材は径が小さく、脱落する可能性が高い。
特開2002−265950号公報 特開2003−183662号公報 特開昭54−32505号公報 実開昭62−153352号公報 実公昭59−17883号公報
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、クーリングチャンバー内の全体的なコークス及び冷却ガスの流動状態に関連付けて小煙道の下端部の位置を規定し、これにより冷却ガスを排出する小煙道にコークスが堆積したり、或いは閉塞したりするのを抑制することのできるコークス乾式消火設備を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、冷却ガスの増風を制限されることが少なく、結果として装置のコンパクト化を図ることのできるコークス乾式消火設備を提供することにある。
本発明のコークス乾式消火設備は、プレチャンバーと、該プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、該クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に前記冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道を有し、前記プレチャンバーの上部から高温のコークスを投入し、前記冷却ガスにてコークスを冷却し、前記クーリングチャンバーの下部に設けた排出口から冷却されたコークスを排出するコークス乾式消火設備において、前記クーリングチャンバーの下部に設けた支持部材の上部に主ブラストヘッドを載置し、前記支持部材の下部に主ブラストヘッドより小さい直径の小ブラストヘッドを1段以上懸架し、前記小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させたことを特徴とする。
小煙道の下端部の位置を、上述したように炉芯側に配置した場合、コークスの排出量を次のように制御することが好ましい。すなわち、前記クーリングチャンバー下部の排出口に連結されるコークス排出装置をさらに備え、前記クーリングチャンバー内のコークスの滞留時間T(=κV/Q)が、1.5≦T≦3となるようにコークスの排出量を制御することが好ましい。なお、「V」は、クーリングチャンバー内容積(m)であり、「Q」は、コークス排出量(t/h)であり、「κ」は、コークスのかさ密度(t/m)である。
また、前記プレチャンバーの炉内面の位置は、前記小煙道の下端部の位置と同じか、あるいは、前記小煙道の下端部より炉芯側に位置することが好ましい。さらに、前記プレチャンバーの炉内面の下部に、炉芯側に突起する突起物を設けることが好ましい。さらに、前記小煙道の背面側を、例えば55〜80度に傾斜させることが好ましい。さらに、前記小煙道内には、小煙道を上下方向に仕切る仕切板を配設することが好ましい。
本発明によれば、プレチャンバーとクーリングチャンバーを有するコークス乾式消火設備において、前記クーリングチャンバーの下部に設けた支持部材の上部に主ブラストヘッドを載置し、前記支持部材の下部に主ブラストヘッドより小さい直径の小ブラストヘッドを1段以上懸架し、前記小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させたことにより、小煙道内とその近辺におけるコークスの鉛直下向きの動きが促進され、その結果、コークスが冷却ガスと共に小煙道内に流入するのを格段に抑制することが可能となる。
さらに本発明によれば、小煙道内とその近辺におけるコークスの鉛直下向きの動きが促進されることによって、コークスが冷却ガスと共に小煙道内に流入するのを格段に抑制することができるので、冷却ガスの風量が規制されなくなり、増風を行うことが可能となる。これにより装置の冷却効率が向上し、その結果、チャンバーサイズのコンパクト化を図ることが可能となる。
本発明の第1実施形態のコークス乾式消火設備を示す概略図である。 上記コークス乾式消火設備の横断面図である。 上記コークス乾式消火設備の部分図である。 上記コークス乾式消火設備のコークス滞留時間を説明するための図である。 上記コークス乾式消火設備の作用を説明するための図である。 上記コークス乾式消火設備の作用を説明するための図である。 上記コークス乾式消火設備の効果を説明するための図である。 本発明の第2実施形態のコークス乾式消火設備を示す概略図である。 上記第1及び第2実施形態の変形例を示す図である。 上記第1及び第2実施形態の変形例を示す図である。 上記第1及び第2実施形態の変形例を示す図である。 従来のコークス乾式消火設備の炉本体の概略図である。
1 コークス乾式消火設備
10 コークス装入口
2 プレチャンバー
3 クーリングチャンバー
31 クーリングチャンバー側壁面(炉内面)
4 ブラストヘッド
41 冷却ガス供給口
43 主ブラストヘッド
44 小ブラストヘッド
5 小煙道
55 小煙道の下端部
56 小煙道の背面(背面傾斜部)
57 仕切り板
6 コークス
7 冷却ガス
8 プレチャンバー側壁面(炉内面)
81 突起部
本発明によるコークス乾式消火設備の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定解釈されることはない。
(第1実施形態)
本実施形態のコークス乾式消火設備1は、図1に示すように、上部にコークス装入口10を有するプレチャンバー2と、底部にコークス排出口12を有するクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。プレチャンバー2及びクーリングチャンバー3は、一例として煉瓦等の耐火性材料で形成することができる。そして、例えばコークス炉で生成された高温のコークス6は、図示しないバケットなどのコークス搬送装置によって、コークス装入口10からプレチャンバー2内に装入される。プレチャンバー2内に装入されたコークス6は、徐々に降下してクーリングチャンバー3内に進入する。さらに、クーリングチャンバー3内に進入したコークス6は、徐々に降下しながら冷却ガス7によって冷却され、コークス排出口12に設けられたコークス排出装置11により連続的に排出される。一般的には、コークス排出装置11によりコークス6を連続的に排出し、バッチ方式でコークス6を補充するような操業が行われる。但し、これに限定されるものではない。
クーリングチャンバー3は、下部がコーン形状(例えば、逆円錐形状或いは逆円錐台形状)に形成されており、このコーン部の中央(例えば、中心軸上)に、不活性ガス等の冷却ガスを吹き込む冷却ガス供給手段であると共に、コークス6の降下流れを均一化するためのブラストヘッド4が設けられている。ブラストヘッド4は、図2に示すように、コーン部の側壁を貫通させて設置した略十字形状の支持部材42の上部に、主ブラストヘッド43を載置し、この主ブラストヘッド43の下方に、主ブラストヘッド43よりも外径が小さい小ブラストヘッド44を支持部材42に懸架配置した構造である。小ブラストヘッドは1個に限られず、複数の小ブラストヘッドを2段以上懸架配置してもよい。
主ブラストヘッド43は、特に形状が限定されることはないが、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、この笠部材に形成されたガス噴射口(不図示)から冷却ガス7を周方向に噴射する構造である。小ブラストヘッド44も、特に形状が限定されることはなく、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、鉛直方向に延びる連結部材45を介して支持部材42に懸架されている。さらに、小ブラストヘッドは、下面側にガス噴射口(不図示)を有し、連結部材45の内部に形成されたガス流路(不図示)を通じて供給される冷却ガス7を周方向に噴射する構造である。
さらに冷却ガス7の一部は、クーリングチャンバー3のコーン部の傾斜面に円周上に形成された冷却ガス供給手段(例えば、冷却ガス供給口41)からもクーリングチャンバー3内に供給される。冷却ガス供給口41は、好ましくは図1及び図2に示すように、支持部材42の上面近傍に配置するか、或いは支持部材42と同じ高さに配置することができる。但し、ブラストヘッド4と冷却ガス供給口41の両方から冷却ガスを供給する構成に限定されることはなく、ブラストヘッド4又は供給口41のいずれか一方から冷却ガス7を供給するようにしてもよい。
また、プレチャンバー2の円筒直胴部を周方向に囲むように、冷却ガス7を排出する複数に分割された小煙道5が形成されている。小煙道5には、煙道51が接続されており、除塵器52を介して廃熱ボイラー等の熱回収設備53に接続されている。そして熱回収設備53で冷却されたガスは、ブロワー等の送風手段54によって、再び冷却ガスとしてクーリングチャンバー3内に供給される。
ここで、本実施形態のコークス乾式消火装置1は、半径方向において小煙道5の下端部55がクーリングチャンバー3の側壁面(炉内面)31より炉芯側(中心軸側)に位置するように構成している。すなわち、一例として図1に示すように、クーリングチャンバー3の上方側の側壁を炉芯側に向かって傾斜させ、その上端部に小煙道5の下端部55が連結されている。
但し、小煙道5の下端部55を単に炉芯側に位置させるのではなく、クーリングチャンバー3内の全体的(全域的)なコークス6及び冷却ガス7の流動状態に関連付けて小煙道5の下端部55の位置を設定する。すなわち、図3に示すように、ブラストヘッド4から周方向に冷却ガス7が噴射する構造においては、直径が最も大きく設定されている主ブラストヘッド43の外周先端部よりも炉芯側に小煙道5の下端部55の位置が位置すると、クーリングチャンバー3上部側では炉芯側に集中するガス流が形成され、なおかつ、上煙道5近傍のコークスの動きもブラストヘットの影響を受けて悪くなる。この場合、クーリングチャンバー3上部の炉壁側におけるコークス6の熱交換効率が低下する。従って、炉の半径方向においてクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側であって、且つ、主ブラストヘッドの外周先端部43までの間(L1)に、小煙道5の下端部55を位置させる。
さらに好ましくは、小煙道5の下端部55は、クーリングチャンバー3の側壁面31から炉芯側に、少なくとも200mm以上離れた位置に設定する。このように小煙道5の下端部55の位置を設定することにより、小煙道5近傍のコークス6の鉛直下向きの流れを改善すると共に、中央部に比べてコークス6の空隙率が比較的大きくなる傾向にある側壁面31の近辺での冷却ガス7の吹き抜け(スルーパス)を抑制し、これにより小煙道5内にコークス6が流入および堆積することを防止する。
ところで、従来構造のコークス消火設備の場合は、クーリングチャンバー3内における中央部と周縁部との間でコークス6の降下のバラツキが大きく、そのためクーリングチャンバー3内における熱交換効率のバラツキが大きかったので、所定の温度(例えば、200℃)まで冷却するにはクーリングチャンバー3内のコークス6の滞留時間Tを長めに設定しなければならなかった。しかし、滞留時間Tを長くすると、クーリングチャンバー3内のコークス6の流下速度が遅いため、小煙道5近傍のコークス6が冷却ガス7に吹き上げられて小煙道5内に流入する確率が高まる。
一方、本実施形態では、小煙道5の下端部55を炉芯側に位置させると共に、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置することによって、クーリングチャンバー3周縁部のコークス6の流れ(特に、小煙道5近傍のコークス6の鉛直下向きの流れ)を改善する。このように熱交換効率のバラツキを改善することにより、本実施形態ではクーリングチャンバー3内のコークス6の滞留時間を可能な限り短く設定して、小煙道5内にコークス6が流入するのを防止する。具体的には、図4に示すように、クーリングチャンバー3内のコークス6の滞留時間T(=κV/Q)が、1.5≦T≦3となるようにコークス排出口12から排出する量を制御する。なお、「V」は、限定はされないが、例えば冷却ガス供給口41から下端部55までのクーリングチャンバー内容積(m)である。「Q」は、コークス排出量(t/h)であり、コークス排出装置11によって排出されるコークス6の流量である。「κ」は、コークス6のかさ密度(t/m)である。すなわち、コークスの流動改善に加えて熱交換効率も考慮して小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動をより一層促進させるのである。
図4に示すように、滞留時間Tが3h以上では回収熱量(効率)は横ばいになり、それ以上滞留時間Tを延ばしても回収熱量(効率)は改善されない。にもかかわらず、従来構造のコークス消火設備の場合は、クーリングチャンバー3内における熱交換効率のバラツキがあったために滞留時間Tを3hよりも長く設定せざるを得なかった。本実施形態は、クーリングチャンバー3内における熱交換効率のバラツキを改善して、滞留時間Tを3h以下(≦3)する。但し、図4の結果から分かるように、滞留時間Tが短すぎると回収熱量(効率)が著しく低下するので、滞留時間Tは1.5h以上(1.5≦)とする。
上述のコークス乾式消火設備1において、コークス装入口10からプレチャンバー2内に装入されたコークス6は、クーリングチャンバー3の底部からの排出に伴い、徐々に降下してクーリングチャンバー3内に進入する。そして、クーリングチャンバー3内で冷却ガス7と熱交換することによって冷却され、コークス排出装置11によって排出される。ここで、チャンバー内を降下するコークス6は、全てが均一に真下に降下するのではなく、チャンバーの形状や壁面の影響、そしてコークス物性の違いにより様々な向きに進路をとりながら徐々に降下して行く。その様な状況下、解決課題として記載したように、冷却ガス7が小煙道5を通過する際に、ガス流によってコークス6が小煙道5内に流入するのを抑制し、また小煙道5内に流入/堆積してしまったコークス6を外部に排出するためには、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動を促進させる必要が有ることに本発明者らは着目した。そして鋭意検討を行った結果、小煙道5内とその近辺における鉛直下向きの流動をより確実に促進させるためには、小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31よりも炉芯側に配置すると共に、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置することによって奏される流動改善の相乗効果を利用することが得策であることをつきとめ、本発明を完成するに至ったのである。
小煙道5内とその近辺における鉛直下向きの流動を促進させることができる理由として、本発明者らは次のように考えている。
すなわち、図5に模式的に示すように、クーリングチャンバー3の中央部を降下するコークス6は、主ブラストヘッド43によって周方向外側に向かう流れに変えられ、炉壁側のコークス6の流動を促進させる。そして主ブラストヘッド43の下方で安息角により中央に向かう流れを形成する。中央に向かう流れを形成したコークス6は、さらに小ブラストヘッド44によって周方向外側に向かう流れに変えられ、炉壁側のコークス6の流動を促進させる。そして小ブラストヘッド44の下方で安息角により中央に向かう流れを形成してコークス排出口12より排出される。このような整流を行うことによって炉壁側のコークス6の流れが促進されるので、その結果、小煙道5内とその近辺における鉛直下向きの流動が促進されると共に、クーリングチャンバー3内の降下のバラツキが改善される。本実施形態では、図5に模式的に示したようなコークスの流れを把握した上で、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置する構成としたことにより、連結部材45等がコークス6との摩耗によって破断して小ブラストヘッド44が脱落するのを抑制できる利点がある。
また、小煙道5付近におけるコークスの流れを見ると、従来構造の場合は、図6(a)に模式的に示すように、小煙道5の入口近辺では、安息角を形成するコークス6が小煙道5の背面側(背面傾斜部)56にまで拡がり、この部分でコークス6は内側に向きを変えて降下する。また一方で、クーリングチャンバー3内のコークス6は、クーリングチャンバー3の側壁面31の影響やチャンバー下部の流動状態の影響を受け、側壁面31近傍での鉛直下向きの流れが非常に悪く停滞する傾向にある。その結果、図6(a)の従来の構造では、その上方部に位置する小煙道5の入口近辺のコークス6も鉛直下向きの流れが悪化し流速が低下、渋滞する。小煙道5の入口近辺での流速の低下は、図6(b)に示すように、さらにコークス6が小煙道5内に拡がることを誘発する。そのため、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流れが停滞し、小煙道5を通過するガス流に載ってコークス6が小煙道5内に流入し易くなる。
一方、図6(c)に示すように、本実施形態のように小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31よりもL1の範囲内で炉芯側に配置すれば、小煙道5の入口近辺のコークス6の流れが、下方向に位置するクーリングチャンバー3の側壁面31により影響されることが無くなるので、流速が低下するのを格段に抑えることができる。これによっても小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されるが、さらに小ブラストヘッド44を懸架配置したことによる炉壁面31側の流動を促進させたことと相俟って、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動がより確実に促進される。その結果、ガス流に載ってコークス6が小煙道5内に流入するのを格段に抑制することが可能となるのである。さらに本実施形態のように構成すれば、たとえ小煙道5内にコークス6が一時的に堆積しても、小煙道5内からの排出(すなわちクーリングチャンバー3内への降下)が促されるので、小煙道5が閉塞されるのを防止することができる。
前述のように、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が確実に促進されることから、本実施形態においては全体としてチャンバー2,3内のコークス6が均一に降下するようになる。実際に設備を稼動させてチャンバー内の降下均一性及び温度分布を測定したところ、図7に模式的に示すように、チャンバー内のコークス6の降下均一性及び温度分布が改善されたことを確認している。換言すると、小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側に位置させると共に、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置することで、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されたと理解できる。そして、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されれば、前述したように、コークス6が小煙道5内に流入するのを格段に抑制することが可能となる。
以上のように、本実施形態によれば、小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31よりL1の範囲内で炉芯側に位置させると共に、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置したことにより、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの動きが確実に促進され、これにより冷却ガス7が小煙道5を通過する際に、コークス6がガスと一緒に小煙道5内に流入することを格段に抑制することができる。その結果、コークス乾式消火設備1の安定操業を実現することが可能となる。さらに、小煙道5内に流入/堆積したコークス6を除去する手段(例えば、空気ノズルなど)を必ずしも設ける必要がなくなるので、装置構成の簡素化を図ることが可能となる。
さらに上述の実施形態によれば、小煙道5内へのコークス6の流入を抑制することができるので、冷却ガス7の風量が規制されなくなり、増風を行うことが可能となる。これによりクーリングチャンバー3の冷却効率が向上し、その結果、チャンバーサイズのコンパクト化を図ることが可能となる。
加えて、チャンバー内を流れる冷却ガス7は、空隙率が大きくなる傾向にあるチャンバーの側壁部に多く流れる傾向にあり、これが原因で冷却効率の低下が問題となっていたが、本実施形態のように構成することで、この問題も一挙に改善することが可能である。すなわち、小煙道5の下端部55をクーリングチャンバー3の側壁面31よりも炉芯側にずらして配置することで、空隙率の大きな側壁面31の近辺での冷却ガス7の吹き抜け(スルーパス)を抑制し、チャンバー内における中央側と側壁側のガス流の不均一を改善し、全体としてガス流れを均一にすることが可能となる。このような冷却ガス流れの均一化も作用して、クーリングチャンバー3内での冷却効率が格段に向上するため、更なるクーリングチャンバー3のコンパクト化を図ることが可能となる。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態によるコークス乾式消火設備1について、図8を参照しながら説明する。本実施形態は、図1に示すクーリングチャンバー3を変形した実施形態であり、クーリングチャンバー3の側壁面31の鉛直な部分をなくして「くの字形状」に形成した構成である。すなわち、図8の例は、小煙道5の下端部55が、小煙道5の下端部55から符号31の矢印が指す部分までのクーリングチャンバー側壁面よりも炉芯側に位置する構成である。この場合、図8に示すようにクーリングチャンバー3の上部側側壁の傾斜角が、プレチャンバー底部側側壁の傾斜角と同じになるように設計することができる。但し、これに限定されることなく、異なる傾斜角としてもよい。なお、図1に示すコークス乾式消火設備1と同じ構成については、同じ符号を付すことによって詳しい説明を省略する。このような構成であっても、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
また、上述の第1及び第2実施形態においては、プレチャンバー2の炉内面(側内面)8は、図1及び図2に示すように半径方向において小煙道5の下端部55より炉芯側に位置するか、あるいは小煙道5の下端部55の位置と同じになるようにするのが好ましい。
さらに、上述の第1及び第2実施形態においては、図9に示すように、プレチャンバーの炉内面8の下部に、炉芯側に突出する突起部81を設けることができる。このように突起部81を設けることにより、安息角を形成するコークス6が小煙道5内に拡がるのを抑えることができ、小煙道5の下端部55をクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側に位置させたことと相俟って、より確実に上述した効果を得ることが可能となる。
さらに、上述の第1及び第2実施形態においては、図10に示すように、小煙道5の背面側(背面傾斜部)56を、55〜80度に傾斜(傾斜角θ1)させることができる。この傾斜角θ1で小煙道5の背面側56を傾斜させることによって、安息角によって小煙道5内に拡がったコークス6を、クーリングチャンバー3内に排出することを促進させることができ、小煙道5の下端部55をクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側に位置させたことと相俟って、より確実に上述した効果を得ることが可能となる。
さらに、上述の第1及び第2実施形態においては、図11に示すように、小煙道5内を上下方向に仕切る仕切板57を配設することができる。このような仕切板57を設けることによって、コークス6が小煙道5内に流入するコークス量を規制することができ、小煙道5の下端部55をクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側に位置させたことと相俟って、より確実に上述した効果を得ることが可能となる。なお、図11には1枚の仕切板57を配設した例を示しているが、複数枚の仕切板57を配設するようにしてもよい。
以上、本発明の一実施形態および実施例について例示をしたが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で多くの修正および変形が可能であることは当業者にとって明らかであり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。

Claims (7)

  1. プレチャンバーと、該プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、該クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に前記冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道を有し、前記プレチャンバーの上部から高温のコークスを投入し、前記冷却ガスにてコークスを冷却し、前記クーリングチャンバーの下部に設けた排出口から冷却されたコークスを排出するコークス乾式消火設備において、
    前記クーリングチャンバーの下部に設けた支持部材の上部に主ブラストヘッドを載置し、前記支持部材の下部に主ブラストヘッドより小さい直径の小ブラストヘッドを1段以上懸架し、
    前記小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させたことを特徴とするコークス乾式消火設備。
  2. 前記小煙道の下端部の位置は、ク−リングチャンバーの側壁面から炉芯側に少なくとも200mm以上離れていることを特徴とする請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
  3. 前記クーリングチャンバー下部の排出口に連結されるコークス排出装置をさらに備え、前記クーリングチャンバー内のコークスの滞留時間T(=κV/Q)が、1.5≦T≦3となるようにコークスの排出量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス乾式消火設備。
    V:クーリングチャンバー内容積(m
    Q:コークス排出量(t/h)
    κ:コークスのかさ密度(t/m
  4. 前記プレチャンバーの炉内面の位置は、前記小煙道の下端部の位置と同じか、あるいは、前記小煙道の下端部より炉芯側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
  5. 前記プレチャンバーの炉内面の下部に、炉芯側に突起する突起部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
  6. 前記小煙道の背面側が55度〜80度に傾斜していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
  7. 前記小煙道内に、該小煙道を上下方向に仕切る仕切板を配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
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