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JP5402069B2 - 針状構造物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、皮膚の特定層に薬剤を注入する冶具として用いる針状構造物の製造方法に関するものである。
人の皮膚は、表面から表皮、真皮及び皮下脂肪の3層に大きく分けられる。表皮は、掌や踵を除くとその厚さは平均100μm前後であり、1mm当たり500〜600個のランゲルハンス細胞を有している。ランゲルハンス細胞は、皮膚に侵入した抗原を取り込んで活性化するとともに、リンパ節に移動し、T細胞を刺激して細胞障害性細胞に分化させ、T細胞を介してB細胞を刺激することにより抗体を産出する。この作用から、ランゲルハンス細胞は、生体を感染や癌等から防御する役割を担っていると言える。
ワクチンや薬物を表皮のランゲルハンス細胞に到達させる手段として、従来から注射針による投与が行われてきたが、注射針では針先が真皮まで到達してしまうとランゲルハンス細胞に効率的に取り込まれないという不具合や、患者にとっては痛みが伴うとともに、出血や2次感染の危険性がある。
そこで、注射針に替わり、基材上に複数の針状構造物を形成した上で、針先に薬物を塗布し、針を皮膚の表皮まで穿刺して薬物を注入する技術の開発がなされている(特許文献1〜4)。
従来、針状構造物の製造方法としては、予め融解してある樹脂材に所望の凹凸形状を有するスタンパーを当接しつつ、加圧して成形するナノインプリント法(特許文献1)、あるいは特許文献2から4に記載されているような、融解した樹脂材を所望の立体形状を有する型枠に注入して成形固化する射出成形法による製造が主たるものである。
さらに、特許文献1では、アスペクト比の高い凸形状を得るために、光硬化性の樹脂を使用して所望の高さとなるまで、樹脂の注入と硬化を繰り返し行っている。また、特許文献2から4によると、凸形状アレイを射出成形で成形した後、基材シートと重ね合わせる構成として型枠と樹脂材の剥離を容易にしている。いずれにしても、装置としては、射出成形用の装置もしくは類似の装置が必要となり、装置、工程ともに大掛かりな構成となるという問題がある。
針状構造物を組成する材料としては、体内に残存しても安心な生分解性の樹脂が望ましい。しかしながら、射出成形法は成形型に樹脂材を注入するため、予め樹脂材をある温度域で加熱待機させておく必要がある。そのため、熱の影響を受けて分解しやすい生分解性樹脂には適していない。
特開2006−320986号公報 特開2008−6178号公報 特開2008−245955号公報 特開2008−29710号公報
そこで、生分解性樹脂からなるアスペクト比の高い針状構造物を製造する方法としては、底面に針状の凹部を形成した転写版上に、生分解性樹脂材を積載して適度な温度に保持して軟化させた後、所定時間プレスして針状の凹部に生分解性樹脂を浸透させ、その後徐冷し剥離する方法が有望である。ところが、この方法の単純な適用では、軟化した生分解性樹脂を転写版の針状凹部の先端部まで樹脂を到達させることが出来ず、針状構造物としての所定の形状を得ることが難しいという問題があった。
そこで、本発明は、上記の方法において、転写版に形成された針状凹部の最先端部末端まで樹脂を到達させる手段の提供を目的とした。
本発明の請求項1に記載の発明は、針状構造物の針形状を転写した転写版に樹脂材を積載する樹脂材積載工程と、
前記転写版上の樹脂材を加熱融解する樹脂材加熱工程と、
前記融解した樹脂材をプレスして前記転写版の針形状部位に埋設して成形するプレス工程と、
前記成形された樹脂材を冷却硬化させる冷却工程と、を有し、
前記樹脂材加熱工程および前記プレス工程をこの順序で2回以上繰り返すことを特徴とする針状構造物の製造方法である。
また、請求項2に記載の発明は、前記針状構造物の針形状部が、格子状または同心円状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の針状構造物の製造方法である。
また、請求項3に記載の発明は、前記転写版に積載される樹脂材が、生分解性樹脂から成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の針状構造物の製造方法である。
また、請求項4に記載の発明は、前記転写版に積載される樹脂材が、固形状または粒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の針状構造物の製造方法である
また、請求項5に記載の発明は、前記針状構造物が、平板状の基材の片面に複数の微小針が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の針状構造物の製造方法である。
本発明によれば、複数回のプレス工程と再加熱再融解工程を設けることにより、転写版に形成した針形状凹部に樹脂材を行き渡らせることが可能で、特に、製造工程1サイクルで針状構造物1個分の分量である極少量の樹脂量で微細な形状の成形が可能である。
さらに、本発明の成形装置においては、射出成形装置では必要とされる、樹脂材を所定の温度域で加熱(溶融)待機させておくための装置が不必要である。また、プレス工程で必要なプレス圧力もそれほど大きくしなくても成形が可能であるため、大出力のプレス手段を必要としない。従って本発明の成形装置は、設備が大掛かりでなく、設置スペースも縮小できるという長所がある。
(a)〜(b)は本発明で使用した成形装置の構成を説明する概略図。(a)は正面視の概略図、(b)は側面視の概略図である。 本発明になる針状構造物成形工程を説明するプロセス工程図。 (c)〜(k)は本発明の針状構造物の製造方法の一例を模式的に説明する工程図。 本発明が製造の対象とする針状構造物の外観図。
以下、本発明になる針状構造物の製造方法の一例を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の成形装置の構成を説明する概略図であって、(a)は成形装置を正面から見た概略図、(b)は成形装置を側面から見た概略図である。1〜4はエアシリンダ、5は成形枠、6はパンチ、7はヒーター、8は冷却ノズルである。図2は本発明の針状構造物成形のプロセス工程図である。図3(c)〜(k)は、本発明の成形にかかる一連の流れを示した工程図である。尚、9は転写版、10は樹脂材である。
本発明の成形装置では、図1に示すように、成形枠5とパンチ6の上方にエアシリンダ1及びエアシリンダ2を備え、成形枠5とパンチ6が各々上下動できるようになっている。また、その下方には、エアシリンダ3によって加熱体であるヒーター7が上下動できるよう設置されている。
図2は図1の成形装置を用いて針状構造物を樹脂から成形するプロセスの工程を示し、図3(c)〜(k)により、樹脂の成形工程にかかる流れを図で示している。
ステップS1では、図3(c)に示すように、転写版9上に固形状、または粒状の樹脂材10を積載した後、ステップS2の加熱工程に入る。加熱工程では、エアシリンダ3によってヒーター7が転写版9の下面に接触し、1回目の加熱を開始する。その後、樹脂材の融解温度に達すると樹脂材10の融解が始まり、図3(d)に示すように樹脂材10が膨張し始める。
樹脂材10全体が融解したところで、図3(d)に示すように、まず針状構造物の外形を形作る成形枠5を転写版9上に降下させる。その後、ステップS3として、時間をおかずに図3(e)に示すようにパンチ6で融解した樹脂材10をプレスする。この1回目のプレスは、転写版9の針状構造物用凹部が形成された最外の周辺部まで樹脂材10を行き渡らせるための予備的なプレスである。このときパンチ6が樹脂材10に接触する時間は1秒以上である。ただし、樹脂材10として使用される樹脂の種類によっては、所定時間以上の高温状態が続くと分解や硬化が起きてしまうものもあるので、パンチ6が樹脂材10に接触している時間は樹脂材10の材質を考慮した上でなるべく短時間とすることが望ましい。
1回目のプレスが終わった後、図3(f)に示すように成形枠5及びパンチ6は上方へと移動し、ステップS4の2回目の加熱を行い、ステップS3で一度硬化した樹脂材10
を再度融解する。
樹脂材10が再融解したところで、図3(g)に示すように成形枠5が転写版9上に降下させる。その後、ステップS5として、時間をおかずに図3(h)に示すようにパンチ6で融解した樹脂材10を再プレスする。この2回目のプレスは、樹脂を針状凹部の最先端部まで押し込んで針状構造物の最終形状を形成させるためのものである。
ステップS6では、ヒーター7による加熱が終了し、エアシリンダ4によってヒーター7と冷却ノズル8が入れ替わる工程となる。
ステップS7の冷却工程では、図3(i)に示すとおり、冷却ノズル8よりエアが吐出され、転写版9の下面より樹脂材10を冷却、硬化させる。このとき、樹脂材10の凝固点を下回る温度まで冷却を行う。
最後にステップS8として、硬化した樹脂と転写版の離型の工程となる。まず、図3(j)に示すように、十分に冷却され凝固した樹脂材10の外形を形作った成形枠5を、針状構造物の厚さ以上の高へと上げて外形部を分離する。その後、パンチ6も樹脂材10から上昇させ、成形済みの樹脂材10のみが転写版9上へ残ることになる。そして最終的に、ピンセットや把持機能を備えたジグ等で、転写版9から成形済みの樹脂材10を離型することで、微小針を備えた針状構造物を得ることが可能である。
また、本明細書では、ヒーターと冷却ノズルの駆動をエアシリンダとしているが、それにとらわれることなく、モーター等の駆動であっても構わない。
本実施の形態における実施例を下記に示す。
針状構造物の微小針の形状を反転した形状の針状凹部が形成されている転写版9上に、固形状の樹脂材10を積載する。次に、転写版9の下方に設置されているヒーター7を、転写版9の下面に接触させ、転写版9の温度を上げて樹脂材10の融解を行う。
樹脂材10が全体的に融解したところで、転写版9の外周部まで樹脂材10を行き渡らせるためにパンチ6により1回目のプレスを行う。このときのプレス時間は1秒程度で構わない。
1回目のプレス工程で融解した樹脂材10がパンチ6に熱を奪われ、表面が凝固するため、再加熱を行い樹脂材10を再融解させる。再度、樹脂材10が融解したところで、成形枠5とパンチ6にて2回目のプレスを行う。2回目のプレスは、樹脂を針状凹部の先端部まで完全に到達させ、針状構造物の微小針の外形形状を整えるためのプレスである。
形状形成のための所定時間が経過した後、ヒーター7を転写版9から離し、代わりに冷却ノズル8からエアを吐出し、転写版9の下面から樹脂材10を冷却し、樹脂材を凝固させる。このときの時間は、樹脂材が凝固温度以下に下がるまで行うものとする。
樹脂材10が凝固した後、成形枠5とパンチ6を樹脂材10から離し、針状構造物の成形工程が終了する。例えば、ピンセット等のジグを用いて転写版9と樹脂材10を離型させる。
以上のような製造工程により、図4に示したような、平板状の基材11の片面に複数の微小針12が形成されている針状構造物を得ることが出来る。図4では平板状の基材11
は矩形状の場合を示しているが、他の形状(例えば円板状や楕円板状など)であってもかまわない。また、微小針12の配列も矩形格子配列、三角格子配列、六角格子配列、同心円状の配列、その他の適宜の配列を使用することが可能である。
上記に記載の医療用に使用する針状構造物に限らず、基材上に微細な突起物を形成するもの、例えば光反射防止膜、ドット型の光導波路の形成などに適用することが出来る。
1・・・エアシリンダ1
2・・・エアシリンダ2
3・・・エアシリンダ3
4・・・エアシリンダ4
5・・・成形枠
6・・・パンチ
7・・・ヒーター
8・・・冷却ノズル
9・・・転写版
10・・・樹脂材
11・・・基材
12・・・微小針

Claims (5)

  1. 針状構造物の針形状を転写した転写版に樹脂材を積載する樹脂材積載工程と、
    前記転写版上の樹脂材を加熱融解する樹脂材加熱工程と、
    前記融解した樹脂材をプレスして前記転写版の針形状部位に埋設して成形するプレス工程と、
    前記成形された樹脂材を冷却硬化させる冷却工程と、を有し、
    前記樹脂材加熱工程および前記プレス工程をこの順序で2回以上繰り返すことを特徴とする針状構造物の製造方法。
  2. 前記針状構造物の針形状部が、格子状または同心円状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の針状構造物の製造方法
  3. 前記転写版に積載される樹脂材が、生分解性樹脂から成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の針状構造物の製造方法
  4. 前記転写版に積載される樹脂材が、固形状または粒状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の針状構造物の製造方法。
  5. 前記針状構造物が、平板状の基材の片面に複数の微小針が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の針状構造物の製造方法。
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