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JP5499918B2 - 触媒の再生方法 - Google Patents

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Description

本発明は気相でのエチレンからプロピレンを製造する反応により劣化した触媒の再生方法に関する。
炭化水素転化反応では、一般的に炭素質(コーク)付着による触媒の失活が起きる。このためコークを除去して触媒の再生を行う必要がある。通常は付着した炭素質を、酸素を含むガスを用いて燃焼除去し、触媒の再生を行うのが一般的である。特許文献1では、芳香族アルキル化反応において、失活したゼオライトβ触媒を、酸素を含むガスで付着コークスを酸化させ、触媒を再生している。又、特許文献2では、固定床気相反応で使用された触媒を再生するために、酸素含有気体を流通させて、炭素状物質を除去している。
特表2007−537028号公報 特開2001−96173号公報
本発明者らの検討によれば、ゼオライトを活性成分に有する触媒に、エチレンを接触させてプロピレンを製造する方法においては、従来のように酸素を含むガスを用いた再生方法を用いて、触媒に付着したコークを完全に除去すると、活性は回復するものの、再生後の触媒を用いて反応を行うと反応後のプロピレンの選択率が低く、パラフィンの生成量が多くなることが判明した。パラフィンの生成は経時的なコーク付着による活性の低下が起こるにつれて抑制されることから、希釈酸素を用いて完全にコークを取り除かない部分再生を行った。その結果、コークの除去によって転化率は向上するものの未使用の触媒が経時的に劣化した際に得られるプロピレンの選択率と同転化率において比較すると、やはり低い値となった。エチレンを接触させてプロピレンを製造する方法において酸素を含むガスを用いた再生ではコーク除去は効果的に起こるものの、プロピレンの選択率が低くなるという欠点があった。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、エチレンを原料として気相でプロピレンを合成する反応に供した触媒を失活後に水蒸気を含みかつ酸素を含まないガスに接触させコークを一部残して除去することによって、従来の酸素を含むガスにより炭化水素を除去する再生方法と比べ、再生後のプロピレンの選択率が高い状態に再生できることを発見し、本発明を完成するに至った。再生後のプロピレンの選択率は未使用の触媒が経時的に劣化して得られるプロピレン選択率と同等かそれよりも高くなる。
すなわち、本発明の要旨は、ゼオライトを活性成分に有する触媒にエチレンを気相で接触させてプロピレンを製造する方法において、コーク付着により劣化した触媒を、1体積%ないし100体積%の濃度の水蒸気を含み、かつ酸素を含まない再生ガスに接触させてコークを一部残して除去することによって賦活させることを特徴とする触媒の再生方法、
に存する。
本発明によれば、再生後の触媒において未使用の触媒が経時的劣化して得られるプロピレン選択率と同等かそれよりも高いプロピレン選択率を達成することができる。
従って、本発明によれば、反応-再生の繰り返しにおいて一定のプロピレン選択率を維持することができ、安定したプロピレン収量を得ることができる。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の形態に限定されるものではない。 まず、本発明に使用するゼオライト触媒について説明する。本発明においてゼオライト触媒とは、ゼオライトを活性成分に有し、適当な温度条件において、エチレンからプロピレンを生成させる能力を有するものを意味する。
活性成分であるゼオライトは、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
<ゼオライト>
ゼオライトとは四面体構造をもつTO単位(Tは中心原子)がO原子を共有して三次元的に連結し、開かれた規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を指す。具体的には国際ゼオライト学会(International Zeolite Association, IZA)の構造委員会データ集に記載のあるケイ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム塩、およびヒ酸塩が含まれる。ケイ酸塩には、例えばアルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が含まれ、リン酸塩には例えば、アルミノリン酸塩(ALPO)、ベリロリン酸塩、ガロリン酸塩等が含まれる。さらにアルミノリン酸塩には例えば、T原子をSiで一部置換したシリコアルミノリン酸塩(SAPO)や、Ga、Mg、Fe、Co、Znなど2価や3価のカチオンを含むものが含まれる。
これらの中で、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩がより好ましい。
<酸量>
本発明におけるゼオライトの外表面の酸量(以下、単に外表面酸量ということがある。)とは、ゼオライトの外表面に存在する酸点の総量を表す。
外表面酸量とは、具体的には、前処理として真空下500℃で1hr乾燥させた後、150℃でピリジン蒸気と接触吸着させ、150℃で減圧排気及びHeフローで余剰ピリジンを除いて得られたゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法による150〜800℃におけるゼオライト単位重量当たりのピリジンの脱離量を言う。
外表面酸量は、特に限定されないが通常0.6mmol/g以下であり、好ましくは0.3mmol/g以下である。前記上限超過では、外表面で形状選択的でない反応が起こり、プロピレンの選択率が低下する場合がある。下限は特に制限を受けるものではなく、少ないほうが好ましいが通常0.01mmol/g以上である。
本発明におけるゼオライトの全体の酸量(以下、単に全体酸量ということがある。)とは、前処理としてHeフロー下500℃で1hr乾燥させた後、100℃で5体積%アンモニア/ヘリウムと接触吸着させ、100℃で水蒸気に接触させ、余剰アンモニアを除いて得られたゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法による100〜800℃におけるゼオライト単位重量当たりのアンモニアの脱離量をいう。
全体酸量は、特に限定されないが通常4.8mmol/g以下であり、好ましくは2.8mmol/g以下である。また、通常0.15mmol/g以上であり、好ましくは0.30mmol/g以上である。前記上限超過ではコーク付着による失活が速くなる、耐久性が低下しやすくなる、酸点当たりの酸強度が弱くなるといったことが起こる場合があり、前記下限未満では酸量が少ないため、エチレンの転化率が低下する場合がある。
本発明におけるゼオライトの外表面酸量と全体酸量の比は特に限定されないが、ゼオライトの外表面の酸量が、ゼオライト全体の酸量に対して通常5%以下であり好ましくは4.5%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。
全体酸量に対して、外表面酸量の比が前記上限を超過すると、ゼオライトの外表面で起こる副反応により、プロピレンの選択性が下がることがある。これは、外表面での反応は形状選択的な制約を受けず、C以上の生成物が生成するためと考えられる。また、触媒の細孔で生成したプロピレンが、外表面酸点と再び作用し副反応を起こすため、プロピレン選択率を低下させてしまうと考えられる。
<構造>
本発明で用いるゼオライトは通常細孔を有する。
本発明で用いるゼオライトの平均細孔径は、特に限定はないが、通常細孔径が0.5nm未満である。
ここで言う平均細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of thechannels)を示す。
平均細孔径が0.5nm未満とは、細孔の形状が真円径の場合には、その直径が0.5nm未満であることをさすが、細孔の形状が楕円の場合には、短径が0.5nm未満であることを意味する。
ゼオライトの細孔径が前記上限超過では、プロピレン以外の副生成物(ブテン、ペンテン等)が多くなる場合があり、エチレンから高収率でプロピレンを製造することができない場合がある。
平均細孔径が小さいゼオライトを用いることにより、エチレンから高収率でプロピレンを製造することができることの作用機構の詳細は明らかではないが、強い酸点の存在によりエチレンを活性化することができ、また、小さい細孔径によりプロピレンを選択的に生成させることができることによると考えられる。即ち、細孔径が小さい細孔であると、目的物であるプロピレンはこの細孔から出てくることができるが、副生成物であるブテンやペンテン等は、分子が大きすぎるために細孔内にとどまったままになっていることが推定される。このようなメカニズムでプロピレンの選択率が改善されると考えられる。
なお、ゼオライトの平均細孔径の下限については特に制限を受けるものではないが、通常以上0.2nm以上であり、好ましくは0.3nm以上である。
平均細孔径が前記下限未満ではエチレンもプロピレンも通り抜けられなくなり、エチレンと活性点との作用が起こりにくくなり反応速度が低下する傾向があると考えられる。
本発明で用いるゼオライトの細孔を構成する酸素数としては、特に限定はないが、通常、酸素8員環または9員環を含む構造を有するものが好ましい。
酸素8員環または9員環を含む構造とは、ゼオライトのもつ細孔がTO単位(TはSi、P、Ge、Al、Ga等)8個または9個からなる環構造を意味する。
酸素8員環のみで構成されているゼオライトとしては、具体的にはInternational Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AFX、CAS,CHA、DDR、ERI、ESV、GIS、GOO、ITE、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、等が挙げられる。
酸素9員環を含みかつ酸素9員環以下の細孔だけを有するゼオライトとしては、具体的にInternational Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、NAT、RSN、STT等が挙げられる。
本発明で用いるゼオライトのフレームワーク密度は特に限定されるものではないが、フレームワーク密度が18.0T/nm以下であるゼオライトが好ましく、さらに好ましくは、17.0T/nm以下であり、通常13.0T/nm以上であり、好ましくは14.0T/nm以上である。
ここでフレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
上記の構造に関する観点から、本発明で用いるゼオライトの好ましい骨格構造はAFX、CHA、ERI、LEV、RHO、RTHであり、より好ましい骨格構造はCHAである。
CHA構造のゼオライトとしては、具体的にはケイ酸塩とリン酸塩のCHA型ゼオライトが挙げられる。上記のとおり、ケイ酸塩としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が、リン酸塩としては、アルミニウムと燐からなるアルミノリン酸塩(ALPO−34)、ケイ素とアルミニウムと燐からなるシリコアルミノリン酸塩(SAPO−34)等が挙げられる。これらの中で、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩(以下アルミノシリケートともいう)がより好ましい。
<組成>
ゼオライトがケイ酸塩の場合、SiO/M(Mはアルミニウム、ガリウム、鉄、ホウ素など3価の金属)モル比は特に限定されないが、通常5以上であり、好ましくは10以上である。SiO/金属モル比が低すぎると触媒の耐久性が低下する場合がある。SiO/金属のモル比の上限は特に限定されないが、通常1000以下である。SiO/金属のモル比がこれより高すぎると触媒活性が低下してしまう場合がある。
ゼオライトがアルミノケイ酸塩の場合、アルミノシリケート中のSiO/Alモル比は特に限定されないが、通常5以上であり、好ましくは10以上であり、通常200以下であり、好ましくは100以下である。前記下限未満では、コーク付着による失活が速くなる、アルミニウムが骨格から抜けやすくなる、酸点当たりの酸強度が弱くなる場合がある。前記上限超過では酸量が少ないため、エチレンの転化率が低下する場合がある。
ゼオライトがリン酸塩の場合、シリコアルミノリン酸塩の(Al+P)/Siモル比あるいは2価の金属をもつメタロアルミノリン酸塩の(Al+P)/M(但し、Mは2価の金属を示す。)モル比は、特に限定されないが通常5以上、好ましくは10以上であり、上限は、通常500以下である。この値が低すぎると触媒の耐久性が低下する傾向があり、また高すぎても触媒活性が低下する傾向がある。
ゼオライトは、通常プロトン交換型が用いられるが、その一部がNa、K等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に交換されていてもよい。
これらイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に金属担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
<製造方法>
本発明で用いるゼオライトの製造方法は、特に限定はなく、公知の方法で製造することができる。一般的に水熱合成法により調製することが可能である。また水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸等で組成を変えたものも使用できる。
<全酸量に対する外表面酸量の割合の低下方法>
全酸量に対する外表面酸量の割合を低下させる方法としては、特に限定はないが、1)ゼオライトの外表面をシリル化する方法、2)ゼオライトに水蒸気処理(スチーミング)を行う方法、3)ジカルボン酸で処理する方法が挙げられる。
<シリル化>
ゼオライトの外表面をシリル化する方法とは、触媒の活性成分のゼオライトに対して外表面のシリル化を行うことにより、外表面酸量を低下するものである。シリル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコキシシランを用いた液相シリル化、またはクロロシランを用いた気相シリル化で行われる。
シリル化剤はテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4級のアルコキシシラン;トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン等の3級のアルコキシシラン;ジメトキジメチルシシラン、ジエトキシジメチルシラン等の2級アルコキシシラン;メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等の1級のアルコキシシラン等が挙げられる。またテトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のクロロシランなどが使用できる。これらのうち好ましいのは、アルコキシシランではテトラエトキシシランであり、クロロシランではテトラクロロシランである。
液相シリル化法で使用する溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、ヘキサメチルジシロキサンのような有機溶媒や水を使用することができる。液相シリル化法において処理溶液中のシリル化剤/ゼオライトの量比(mol/mol)は通常5以下で好ましくは3以下である。また通常0.005以上であり、好ましくは0.1以上である。この値が高すぎると、過剰なシリル化によって、細孔が閉塞するといった問題点があり、低すぎるとシリル化が不十分で外表面の酸点を被毒することができない。シリル化の温度は、シリル化剤、溶媒の種類によるが、通常140℃以下、好ましくは120℃以下である。また通常20℃以上であり、好ましくは40℃以上である。処理温度が高すぎると、液の蒸発によって、シリル化が効率的に起こらないといった問題があり、温度が低すぎると、シリル化の反応速度が遅くなるといった問題点がある。処理時間は通常0.5時間以上、好ましくは2時間以上であり、処理時間の上限は特にない。処理時間が短すぎるとシリル化が十分に起こらず、酸点の被毒が不十分となる場合がある。
気相シリル化処理は、ゼオライトに対して蒸着したシリカの重量が通常20重量%以下、好ましくは18重量%以下となるように行う。下限は特にないが通常0.1重量%以上好ましくは1重量%以上である。この値が高すぎると、過剰なシリル化によって、細孔が閉塞するといった問題点があり、低すぎるとシリル化が不十分で外表面の酸点を被毒することができない。
気相シリル化の温度はシリル化剤にもよるが、通常20℃以上、好ましくは100℃以上である。また通常500℃以下で好ましくは400℃以下である。
処理温度が高すぎると、シリル化剤の分解、ゼオライトの骨格の崩壊といったことが起こる場合があり、処理温度が低すぎるとシリル化反応が進行しない場合がある。
<水蒸気処理>
ゼオライトにスチーミングを行う方法とは、特に限定はないが、スチーミング温度は400℃以上が好ましく、さらに好ましくは500℃以上である。又、700℃以下が好ましく、さらに好ましくは650℃以下である。温度が低すぎるとスチーミングの効果が小さく、高すぎるとゼオライトの構造崩壊が起こる場合がある。
スチームはヘリウム、窒素等の不活性ガスで希釈して使用することもできる。スチーム濃度としては特に限定されず、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、上限はなく100%水蒸気で処理が可能である。
ゼオライトをスチーミングする前に、アルカリ土類金属を含む化合物と物理混合することも可能である。アルカリ土類金属を含む化合物としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、中でも炭酸カルシウムが好ましい。
アルカリ土類金属を含む化合物の量は特に限定されないが、ゼオライトに対して通常0.5重量%以上、45重量%以下が好ましい。好ましくは3重量%から40重量%である。
又、スチーミングは、外表面の酸量を選択的に脱アルミニウムする目的で細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物とは、特に限定はないが、ゼオライト合成時に使用する構造規定剤、反応によって生成するコークが挙げられる。これらの有機物は、構造規定剤は合成された状態でゼオライトの細孔内に存在しており、コークは炭化水素200℃以上の温度で触媒に流通させるといった方法で、細孔内部に存在させることができる。
<ジカルボン酸による処理>
ジカルボン酸で処理する方法としては、特に限定はない。ジカルボン酸は、ゼオライトのアルミニウムなど骨格中の金属の骨格からの脱離を促進することで、酸量を低減させると考えられるが、分子の大きさがゼオライト細孔に比較して大きいため、細孔に入り込むことが出来ず、外表面の酸量を選択的に低減することができる。
ジカルボン酸としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、フマル酸、酒石酸などが挙げられ、これらを混合して使用してもよい。この中ではシュウ酸が好ましい。
ジカルボン酸は、溶液にしてゼオライトと混合する。ジカルボン酸の溶液中濃度は、一般に0.01Mから4Mで、好ましくは1Mから3Mである。混合時の温度は15℃から95℃で行われ、好ましくは50℃から85℃である。ゼオライトとの混合は、ゼオライト表面の脱アルミニウムを促進するために2回以上行ってもよい。
また外表面の酸量を選択的に脱Alする目的で細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物とは、特に限定はないが、ゼオライト合成時に使用する構造規定剤、反応によって生成するコークが挙げられる。これらの有機物は、構造規定剤は合成された状態でゼオライトの細孔内に存在しており、コークは炭化水素200℃以上の温度で触媒に流通させるといった方法で、細孔内部に存在させることができる。
上記触媒活性成分は、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
本発明は、エチレンを触媒と接触させプロピレンを製造する方法である。次に反応方法について説明する。
(1)反応方法
<反応原料>
原料となるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られたもの、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られたものプロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応から得られるもの、メタンの酸化カップリングで得られたもの等、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。
尚、ゼオライト内に存在する酸点により、エタノールは容易に脱水されてエチレンに変換される。そのため、反応器に原料としてエタノールを直接導入しても本発明に記載の反応を行うことができる。
また、本発明の方法によりプロピレンを製造する際、反応器出口ガスに含まれるエチレンをリサイクルしてもよい。
リサイクルするオレフィンとしては、通常エチレンだが、その他のオレフィンをリサイクルしても良い。原料となるオレフィンは低級オレフィンが好ましく、分岐鎖オレフィンはその分子の大きさからゼオライト細孔内への進入が困難である場合がある。好ましくはエチレン、直鎖ブテンであり、最も好ましくはエチレンである。
<反応器>
本発明のエチレンは、反応器中で触媒と接触させプロピレンを製造することが好ましい。用いる反応器の形態に特に制限はないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。好ましくは流動床反応器である。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
<希釈剤>
反応器内には、エチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でも水(水蒸気)が共存しているのが好ましい。
(2)反応条件
<基質濃度>
反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常エチレンは全供給成分中、90モル%以下が好ましい。さらに好ましくは5モル%以上70モル%以下である。この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になり、プロピレンの収率が低下する傾向がある。基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。
従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤でエチレンを希釈することが好ましい。
<空間速度>
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(重量/時間)であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
空間速度は、特に制限されるものではないが、0.01Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、0.1Hr−1から100Hr−1の間がさらに好ましい。空間速度が高すぎると反応器出口ガス中のエチレンが多くなり、プロピレン収率が低くなるため好ましくない。また、空間速度が低すぎると、パラフィン類等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン収率が低下する場合がある。
<反応温度>
反応温度は、エチレンが触媒と接触してプロピレンが製造されれば特に制限されるものではないが、通常約200℃以上、好ましくは300℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、さらにプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
<反応圧力>
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
<転化率>
本発明においては、転化率は特に制限されるものではないが、通常エチレンの転化率が20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、また通常95%以下、好ましくは90%以下となるような条件で反応を行うことが好ましい。
この転化率が前記下限未満では、未反応のエチレンが多く、プロピレン収率が低くなる傾向がある。一方、前記上限超過では、パラフィン類等の望ましくない副生成物が増え、プロピレン収率が低下する傾向がある。
流動床反応器で反応を行う場合には、触媒の反応器内の滞留時間と再生器内での滞留時間を調整することにより、好ましい転化率で運転することができる。
(3)反応生成物
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、エチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
この混合ガス中には通常エチレンが含まれるが、この混合ガス中のエチレンはその少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用することが好ましい。
なお、副生成物としては炭素数が4以上のオレフィン類およびパラフィン類が挙げられる。
次に再生方法について述べる。
(1)再生方法
(再生器)
本発明において、用いる再生器の形態に特に制限はないが、通常連続式の固定床再生器や流動床再生器が選ばれる。好ましくは流動床再生器である。固定床で再生する場合は触媒を抜き出さずに反応器にいれたまま再生ガスを流すことによって、再生することが好ましい。また、触媒を一度抜きだして、反応器とは別の再生器に充填してから再生ガスに接触させて再生してもよい。流動床の場合は反応器に対して触媒の再生器を付設し、反応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら反応を行うことが好ましい。
(再生ガス組成)
再生器に供給する全供給成分中の水蒸気の濃度は、1体積%以上100体積%以下である。好ましくは5体積%以上95体積%以下であり、さらに好ましく10体積%以上90体積%以下である。この水蒸気濃度は低いとコーク除去速度が遅くなる傾向がある。
又、再生ガス中には酸素を含まないことが好ましい。再生ガス中の酸素濃度は、0.1体積%以下が好ましく、さらに好ましくは0.05体積%以下である。酸素含有量が多いと、再生後にプロピレンの選択率が低くなる傾向がある。
(希釈剤)
水蒸気を希釈するものとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、などを使用することができる。これらのうち、触媒との反応性が低い点でヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素、パラフィン類、メタンが好ましい。
(2)再生条件
(空間速度)
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの水蒸気の流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
空間速度は特に制限はないが、0.01Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、0.1Hr−1から100Hr−1の間がさらに好ましい。空間速度が大きすぎると、再生ガスの循環量が多くなり、コストの面から不利になることがある。
(再生温度)
再生温度の下限としては200℃以上、反応温度の上限としては、通常700℃以下であり好ましくは400℃以上650℃以下である。反応温度が低すぎると、再生速度が低く、再生に長時間要する。一方で再生温度が高すぎるとゼオライトの骨格が崩壊を起こし永久劣化してしまうことがある。
(再生圧力)
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、再生圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力を高くすると再生の速度が速くなるが、高すぎるとゼオライトの骨格が崩壊を起こし永久劣化してしまうことがある。
(再生後の残存コーク量)
本発明において、再生によってゼオライトに付着した炭化水素を完全に除去せずに、炭化水素を一部残して再生することが好ましい。再生後のゼオライトへの炭化水素の好ましい付着量はゼオライト重量に対し8重量%以上ないし25重量%以下である。さらに好ましくは10重量%以上ないし20重量%以下である。再生後のコーク付着量が小さすぎると、再生後にプロピレン選択率が低くなり、またカーボンバランスの値も低くなり好ましくない。またコークの付着量が多すぎると、活性が戻らず、反応基質が転化しないため好ましくない。
(再生程度)
再生の程度は、再生後の触媒を、プロピレンの生成反応(製造)を行うときと同じ温度、圧力および空間速度において、エチレンと接触した際に、エチレン転化率が、通常50〜90%、好ましくは60〜90%になるように行うことが好ましい。再生後のエチレン転化率が高すぎるとプロピレンの選択率が低くなることがある。また、エチレン転化率が低すぎると未反応のエチレンが多くなりプロピレン収率が低下することがある。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
CHA構造を有するプロトン型のアルミノシリケートであり、SiO/Al=16(モル比)のものを触媒として用い、エチレンを原料として、プロピレンの製造を行った。このアルミノシリケートは細孔径が0.38nmのものである。
反応を継続して行って、エチレンの転化率が十分に落ちた後で本発明にしたがって再生を行い、再生後に反応を行った。
(反応)
反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英製反応管に、上記触媒400mgを充填した。エチレンおよび窒素を、エチレンの空間速度が13mmol/g−cat・hで、エチレン30体積%、窒素70体積%となるように反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。反応開始後5時間40分後に反応を終了した。
表1には上記反応条件で反応を行い反応開始から、0.67時間後、1.92時間後、3.17時間後の際の反応成績を示した。エチレン転化率は((供給したエチレンのモル数−反応器出口のエチレンのモル数)/供給したエチレンのモル数)として計算した。また、各生成物の選択率は反応器出口ガス中のエチレンを除いた成分の炭素モル%として計算した。
(再生)
反応が終了した触媒に水蒸気および窒素を、水蒸気の空間速度が60mmol/g-cat・hで、水蒸気が30体積%、窒素が70体積%となるように反応間に供給し、600℃、0.1MPaで20分間再生を行った。再生ガス中の酸素含有量は、0体積%であった。再生後の触媒のコークのゼオライトに対する重量は19.0重量%であった。再生した触媒を用いて、触媒量を100mgにした以外は上記と同様の反応条件で反応を行い、反応開始から0.17時間の時点での反応成績を確認した。表2に反応結果を示した。
水蒸気で再生した触媒を用いて反応では、反応開始から0.17時間の時点でのエチレンの転化率は81.3%、プロピレンの選択率は47.8%であった。未使用の触媒が経時的に劣化してエチレンの転化率が77.8%となった時点でのプロピレンの選択率は47.2%であった(表1)のと比較して、再生後の反応成績はほぼ同エチレン転化率において高いプロピレン選択率を得ることができた。
<比較例1>
(反応)
実施例1と同様の反応条件で反応を行い、反応開始後5時間40分で反応を終了した。
(再生)
反応が終了した触媒に空気を空間速度が199mmol/g-cat・hとなるように反応管に供給し、500℃、0.1MPaで6分20秒間再生を行った。再生ガス中の水分含有量は、0.03体積%、酸素含有量は21%であった。再生が終了した後に、触媒量を100mgにした以外は上記の条件で反応を行い、反応開始から0.17時間の時点での反応成績を確認した。表3に反応結果を示した。
空気再生を行った反応では、反応開始から0.17時間の時点でのエチレンの転化率は82.9%、プロピレンの選択率は29.4%であった。未使用の触媒が経時的に劣化してエチレンの転化率が77.8%となった時点でのプロピレンの選択率は47.2%であった(表1)のと比較して、再生後の反応成績はほぼ同エチレン転化率においてプロピレンの選択率は低い値となった。
Figure 0005499918
※1 炭素数4の炭化水素化合物
※2 炭素数5以上の脂肪族炭化水素化合物
※3 上記以外の炭化水素化合物
Figure 0005499918
※1 炭素数4の炭化水素化合物
※2 炭素数5以上の脂肪族炭化水素化合物
※3 上記以外の炭化水素化合物
Figure 0005499918
※1 炭素数4の炭化水素化合物
※2 炭素数5以上の脂肪族炭化水素化合物
※3 上記以外の炭化水素化合物
本発明の触媒再生方法を用いると、エチレンからプロピレンを製造する方法において、触媒再生後のプロピレン選択率が向上し、反応−再生の繰り返しにおいて、一定のプロピレン選択率を維持することができ、安定したプロピレン収量を得ることができる。

Claims (5)

  1. ゼオライトを活性成分に有する触媒にエチレンを気相で接触させてプロピレンを製造する方法において、コーク付着により劣化した触媒を、1体積%ないし100体積%の濃度の水蒸気を含み、かつ酸素を含まない再生ガスに接触させてコークを一部残して除去することによって賦活させることを特徴とする触媒の再生方法。
  2. コークをゼオライト重量に対し8重量%ないし25重量%残して除去することを特徴とする請求項1に記載の触媒の再生方法。
  3. 再生ガス中の酸素濃度が0.1体積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒の再生方法。
  4. 前記ゼオライトがCHA構造のゼオライトであることを特徴とする請求項1ないし3に記載の触媒の再生方法。
  5. 請求項1ないし4に記載の方法で再生されたゼオライトを用いて、エチレンからプロピレンを製造するプロピレンの製造方法。
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