以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態は、HUDなどの表示装置に用いられる光学素子である。この表示装置は、車両や船舶や航空機などの移動体に搭載されるHUDとして用いることができる。ただし、本発明の実施形態はこれに限らず、表示装置は、ドライビングシミュレータやフライトシミュレータなどのシミュレータ、さらには、ゲームなどのアミューズメント用途にも適用できる。以下では、例として本実施形態に係る光学素子が、車両用のHUDの表示装置に応用される場合として説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、図1(a)は平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA1−A2線断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子が用いられる表示装置の使用状態を例示する模式図である。
まず、図2により、本実施形態に係る表示装置310の構成の概要について説明する。
図2に表したように、本実施形態に係る表示装置310は、車両730(移動体)に搭載される。表示装置310は、映像投影部115を備える。表示装置310は、さらに映像データ生成部130を備えても良い。
映像データ生成部130は、映像データを生成する。
映像投影部115は、映像データ生成部130によって生成された映像データに基づいた映像を含む光束112を車両730のフロントガラス部710に反射させて車両730に搭乗する観視者100に向けて投影する。
フロントガラス部710は、車両730のフロントガラス710aを含む。フロントガラス部710は、例えば、車両730のフロントガラス710aに設けられる反射部711を含む。
反射部711として、本実施形態に係る光学素子510が用いられる。光学素子510は、例えばフロントガラス710aの室内の側に貼り付けられる。また、後述するように、光学素子510は、フロントガラス710aに内蔵されることもできる。さらに、光学素子510は、フロントガラス710aの室内の側において、フロントガラス710aと離間して、フロントガラス710aに近接して設置される。光学素子510が、フロントガラス710aと離間して設置される場合において、光学素子510を支持する部材もフロントガラス部710に含められるものとする。
このように、車両730(移動体)は、本発明の実施形態に係る光学素子510と、光学素子510を支持する透明板(フロントガラス710a、フロントガラス部710)と、を備える。
光束112に含まれる映像は、例えば、表示装置310が搭載される車両730の運行情報に関する、進行方向を示す「矢印」や速度など、種々の内容を含む。
図2に例示したように、表示装置310の映像投影部115は、例えば車両730の中、すなわち、例えば、操縦者である観視者100から見て車両730のダッシュボード720の奥に設けられることができる。
映像投影部115から出射された光束112は、フロントガラス部710で反射され、観視者100の頭部105に入射する。具体的には、光束112は、観視者100の目101に到る。観視者100は、フロントガラス部710を介して、像形成位置181pの位置に形成された映像に含まれる表示内容180の像181(虚像)を知覚する。このように、表示装置310は、HUDとして使用できる。
このように、表示装置310は、映像を含む光束を、本発明の実施形態に係る光学素子510に反射させて観視者100に向けて投影する映像投影部115を備える。また、表示装置は、光学素子510をさらに含んでも良い。
図1(a)及び図1(b)に表したように、本実施形態に係る光学素子510は、第1フレネルレンズ10fが設けられた第1主面10aを有する第1光学シート10を備える。第1主面10aにおけるフレネルレンズ10fの光軸13oaは、第1主面10aの外形の中心(外形中心13s)とは異なる位置に配置されている。
本具体例では、第1フレネルレンズ10fは、フレネル凸レンズである。ただし、第1フレネルレンズ10fはフレネル凹レンズであっても良い。以下では、第1フレネルレンズ10fが、フレネル凸レンズである場合として説明する。
第1光学シート10は、例えばPMMAなどのアクリル系などの樹脂や、ガラス等の、可視光に対して透過性の材料を用いることができる。ただし、第1光学シート10に用いられる材料は、可視光に対して透過性を有する任意の材料を用いることができる。
第1主面10aには、凸曲面を有する凸部11と、凸部11の周囲に同心円状に設けられた曲面を有する複数の凸条部12(例えば、同心円の中心13oから外側に向かって、凸条部12a、凸条部12b、凸条部12c及び凸条部12dなど)が設けられている。これにより、第1フレネルレンズ10fが形成される。
凸条部12のそれぞれにおいては、中心13oに近い側の部分における厚みは、中心13oから遠い側の部分における厚みよりも大きい。
なお、本具体例では、第1主面10aとは反対の側の第2主面10bは、実質的に平面である。
ここで、第1主面10aに対して垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
第1主面10aの外形(すなわち、第1主面10aに対して垂直な方向からみたときの光学素子510の外形)は、例えば矩形である。なお、本実施形態はこれに限らず、第1主面10aの外形は、角が丸い矩形や、扁平円形や円形でも良い。
ここで、第1主面10aの外形中心13sは、例えば、外形のX軸方向に沿った中点でありつつ、外形のY軸方向に沿った中点である。本具体例では、第1主面10aの外形のX軸方向に沿った一方の端から外形中心13sまでのX軸方向に沿った距離xs1は、第1主面10aの外形のX軸方向に沿った他方の端から外形中心13sまでのX軸方向に沿った距離xs2と、等しい。また、第1主面10aの外形のY軸方向に沿った一方の端から外形中心13sまでのY軸方向に沿った距離ys1は、第1主面10aの外形のY軸方向に沿った他方の端から外形中心13sまでのY軸方向に沿った距離ys2と、等しい。
一方、第1主面10aにおける第1フレネルレンズ10fの光軸13oaは、凸部11の中心であり、また、複数の凸条部12の同心円の中心13oでもある。第1フレネルレンズ10fの光軸13oaは、外形中心13sとは異なる位置に配置されている。すなわち、本具体例では、第1主面10aの外形のX軸方向に沿った一方の端から光軸13oaまでのX軸方向に沿った距離xo1は、第1主面10aの外形のX軸方向に沿った他方の端から光軸13oaまでのX軸方向に沿った距離xo2と、は異なる。すなわち、光軸13oaは、X軸方向に沿って外形中心13sと異なる位置に配置されている。
なお、本具体例では、第1主面10aの外形のY軸方向に沿った一方の端から光軸13oaまでのY軸方向に沿った距離yo1は、第1主面10aの外形のY軸方向に沿った他方の端からY軸方向に沿った光軸13oaまでの距離yo2と、が、互いに等しいが、距離yo1と距離yo2とがさらに互いに異なっていても良い。すなわち、光軸13oaは、X軸方向だけでなく、さらにY軸方向に沿って外形中心13sと異なる位置に配置されても良い。
光学素子510の第1主面10aは、可視光に対して反射性と透過性とを有する。光学素子510は、例えば車両730のフロントガラス710aの内側に、第1主面10aの側をフロントガラス710aに対向させて、貼り付けられることで、HUDに応用できる。すなわち、光学素子510は、表示装置310の映像投影部115から出射される光束112を観視者100に向けて反射させると共に、車両730の外界の背景の光を透過させて、観視者100に与えることができる。
このとき、本実施形態に係る光学素子510は、光軸13oaを外形中心13sからシフトさせることで、HUDの見やすさが向上できる。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の動作を例示する模式図である。
すなわち、これらの図は、光学素子510の2種類の使用状態を例示する模式図である。すなわち、図3(a)は、光学素子510の光軸13oaを外形中心13sよりも上側に配置させて、光学素子510をフロントガラス710aに貼り付けた場合の状態を例示している。図3(b)は、光学素子510の光軸13oaを外形中心13sよりも下側に配置させて、光学素子510をフロントガラス710aに貼り付けた場合の状態を例示している。
図3(a)に表したように、映像投影部115(図示しない)から光Li1が光学素子510に入射する。光Li1のうちの一部の光は、光学素子510内に入射し、第1主面10aで反射し、その反射光Lra1が、観視者100(図示しない)に向けて進行する。一方、光Li1のうちの別の一部の光は、光学素子510の第2主面10bで反射し、反射光Lrb1として、反射光Lra1とは異なる角度で進行する。すなわち、第1主面10aで反射した反射光Lra1の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb1の出射角と、が互いに異なる。同様に、光学素子510に入射する光Li2のうちの第1主面10aで反射した反射光Lra2の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb2の出射角と、が互いに異なる。
これにより、観視者100には、第1主面10aで反射した反射光Lra1及び反射光Lra2が投影される。そして、観視者100には、第2主面10bで反射した反射光Lrb1及び反射光Lrb2が投影されない。これにより、映像投影部115から出射する光束112に含まれる映像が2重像にならない。
また、図3(b)に表したように、光軸13oaを外形中心13sよりも下側に配置させた場合も、光学素子510に入射する光Li1のうちの第1主面10aで反射した反射光Lra1の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb1の出射角と、が互いに異なる。同様に、光学素子510に入射する光Li2のうちの第1主面10aで反射した反射光Lra2の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb2の出射角と、が互いに異なる。
この場合も、観視者100には、第1主面10aで反射した反射光Lra1及び反射光Lra2が投影され、観視者100には、第2主面10bで反射した反射光Lrb1及び反射光Lrb2が投影されず、光束112に含まれる映像が2重像にならない。
そして、図3(a)及び図3(b)に表したように、透過光Lt1及び透過光Lt2は、第1主面10aを透過し、観視者100に届く。これにより、観視者は、映像投影部115による映像と共に、光学素子510を透過した透過光に含まれる例えば外界背景と、を同時に観視することができる。
(比較例)
図4は、比較例の光学素子の動作を例示する模式図である。
図4に表したように、比較例の光学素子519においては、第1主面10aにおける第1フレネルレンズ10fの光軸13oaの位置が、第1主面10aの外形中心13sの位置と一致している。
この場合には、光学素子519に入射した光Li1のうちの、第1主面10aで反射した反射光Lra1の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb1の出射角と、の差が小さくなり、例えばほぼ同じ角度となる。同様に、光学素子510に入射する光Li2のうちの第1主面10aで反射した反射光Lra2の出射角と、第2主面10bで反射した反射光Lrb2の出射角と、も互いに同じになる。
これにより、観視者100には、第1主面10aで反射した反射光Lra1及び反射光Lra2に加え、第2主面10bで反射した反射光Lrb1及び反射光Lrb2が投影さる。これにより、映像投影部115から出射する光束112に含まれる映像が2重像になる。
図5は、光学素子の特性を例示する模式図である。
すなわち、図5(a)は、本実施形態に係る光学素子510の特性を例示しており、図5(b)は、比較例の光学素子519の特性を例示している。図5(a)は、図4(a)または図4(b)に例示した使用状態のときの特性に対応する。そして、図5(a)及び図5(b)は、観視者100が、映像投影部115に含まれる映像の表示内容180を、光学素子510または光学素子519を介して関したときに知覚される像を例示している。
図5(a)に表したように、本実施形態に係る光学素子510を用いた場合には、表示内容180は2重像にはならず、表示内容180は明瞭に知覚される。
一方、図5(b)に表したように、比較例の光学素子519を用いた場合には、表示内容180は2重像となり、不明瞭に知覚される。
このように、本実施形態に係る光学素子510は、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaを、第1主面10aの外形中心13sとは異なる位置に配置することで、第1主面10aで反射する光の反射角と、第2主面10bで反射する光の反射角と、を互いに異ならすことで、観視者100に呈示する映像が2重像となることを抑制できる。このように、本実施形態により、HUDの見易さが向上できる。
そして、第1フレネルレンズ10fを有する第1主面10aは透過性と共に反射性を有することから、第1主面10aは、反射する像を拡大する凹面鏡として機能する。これにより、映像投影部115に含まれる像を拡大する機能を有する光学部品を省略でき、または、その光学部品の仕様を軽減できる。これにより、映像投影部115を小型化できる。そして、光学素子510として通常のレンズではなく、フレネルレンズを使用することで、光学素子510の厚さが薄くできる。
このように、光学素子510により、HUDの見易さを向上し、表示装置310を小型化する光学素子が提供できる。また、表示装置310においては、見やすさが向上される共に小型化が可能となる。
ここで、本実施形態に係る光学素子510における第1フレネルレンズ10fの光軸13oaと、外形中心13sと、の距離の例について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の動作を例示する模式図である。
なお、同図においては、第1光学シート10を単純な平凸レンズとして描いている。
図6に表したように、第1光学シート10の第2主面10bに入射した第1入射光Lin1は、第1光学シート10を通過して、第1主面10aで反射し、第1反射角θout1を有する第1反射光Lout1として出射する。一方、第1光学シート10の第2主面10bに入射した第2入射光Lin2は、第2主面10bで反射し、第2反射角θout2を有する第2反射光Lout2となる。
ここで、第1光学シート10の屈折率を1.492(例えばPMMAの屈折率の値)とし、第1光学シート10の外界の屈折率を1.0(空気の屈折率の値)とする。そして、第1光学シート10の光軸13oaと水平軸とのなす角度を45度とする。また、第1光学シート10の第1フレネルレンズ10fの曲率半径を750mm(ミリメートル)とする。そして、観視者100の目101の位置101pと、第1光学シート10の中心と、の距離Zoを800mmとする。そして、観視者100の位置における観視領域114cの幅を60mmとする。
この条件において、2重像が実質的に発生しない条件は、第1光学シート10の第1主面10aで反射した第1反射光Lout1と、第2主面10bで反射した第2反射光Lout2と、が観視領域114cに同時に入射しない条件である。すなわち、本具体例では、第1反射光Lout1の第1反射角θout1と、第2反射光Lout2の第2反射角θout2と、が5度以上異なる場合に2重像像が実質的に発生しない。
このように、本実施形態に係る光学素子510においては、第2主面10bに入射し、第1主面10aで反射した反射光の第1反射角θout1と、第2主面10bで反射した反射光の第2反射角θout2と、が5度以上異なることが望ましい。
そして、第1反射角θout1と第2反射角θout2とが5度以上異なるための条件は、光軸13oaと外形中心13sとの距離は15mm以上である条件となる。
このように、本実施形態に係る光学素子510においては、第1主面10aにおける第1フレネルレンズ10fの光軸13oaの位置と、第1主面10aの外形中心13sの位置と、の距離は、15mm以上であるが望ましい。
また、光学素子510の第1光学シート10に設けられる第1フレネルレンズ10fの凸条部12のそれぞれが、観視者100によって実質的に知覚されないことが望ましい。例えば、観視者100の視力が1.0である場合には、観視者100から1m離れた場所に配置され、互いに0.3mmの距離で離れた2つの点を識別できる。この場合には、第1フレネルレンズ10fの凸条部12の幅は、0.3mm以下であることを望ましい。また、例えば、観視者100の視力が0.7である場合には、観視者100から1m離れた場所に配置され、互いに0.43mmの距離で離れた2つの点を識別できる。この場合には、第1フレネルレンズ10fの凸条部12の幅は、0.43mm以下であることを望ましい。
光学素子510が車両730用のHUDとして使用される状況において、観視者100の視力は0.7以上であると想定すると、凸条部12の幅は0.43mm以下であることが望ましい。
すなわち、第1フレネルレンズ10fは、光軸13oaを中心とする同心円状の複数の凸条部12を有し、光軸13oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿った、複数の凸条部12のそれぞれの幅は、0.43mm以下とすることができる。これにより、凸条部12が実質的に知覚されなくなり、HUDの見易さがさらに向上する。
なお、凸条部12によって回折が生じると、回折に基づく縞模様が見え、像が見難くなることがある。このため、凸条部12の幅は、回折が生じない範囲に設定される。すなわち、第1フレネルレンズ10fは、光軸13oaを中心とする同心円状の複数の凸条部12を有し、光軸13oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿った、複数の凸条部12のそれぞれの幅は、0.01mm以上とすることが望ましい。
既に説明したように、光学素子510の第1主面10aは、可視光に対して反射性と透過性とを有する。このとき、吸収率を0と仮定すると第1主面10aの可視光に対する透過率は70%以上とすることができる。この場合には、第1主面10aの可視光に対する反射率は30%未満である。
第1主面10aの可視光に対する透過率が低過ぎると、光学素子510を透過する外界の背景像が見難くなり、透過率が高過ぎると、光学素子510で反射する映像投影部115による映像が見にくくなる。
このように、光学素子510の第1主面10aは、反射性と透過性とを有する。
例えば、フレネルレンズは、透過光を屈折させて像を拡大または縮小させるために使用されることがあるが、この場合には、そのフレネルレンズは透過性を有するが実質的に反射性は有さない。また、フレネルレンズは、反射する像を拡大または縮小させる鏡として使用されることがあるが、この場合には、そのフレネルレンズは反射性を有するが実質的に透過性を有さない。
これに対し、本実施形態係る光学素子510は、例えばHUDにおける光束112を反射させる反射部711として使用されるため、光束112を効率良く反射させることと同時に、外界の背景像の光を透過させることが要求される。従って、光学素子510は、可視光に対して反射性と透過性とを有する。このような反射性と透過性とを有する第1フレネルレンズの光軸13oaの位置を外形中心13sの位置と異ならせることで、光束112に含まれる映像が2重像になることを抑制し、HUDの見易さが向上できる。
以下、第1主面10aに反射性と透過性とを付与する構成の例について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、これらの図は、図1(a)のA1−A2線断面に相当する模式的断面図である。
図7(a)に表したように、本実施形態に係る光学素子511は、第1光学シート10に加え、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、可視光に対して反射性と透過性とを有する透過反射光学層15をさらに備えている。これ以外は、光学素子510と同様であるので説明を省略する。
透過反射光学層15には、例えばアルミニウムなどの金属などの薄膜や、金属酸化物などの薄膜や、有機物の薄膜などを用いることができる。透過反射光学層15に金属が用いられる場合には、透過反射光学層15の厚さは、透過反射光学層15が反射性と透過性とを有することができる厚さに制御される。透過反射光学層15は、単層膜でも良く、積層多層膜でも良い。透過反射光学層15には、反射防止層に用いられるARコート層を用いることもできる。ARコート膜としては、誘電体多層膜を用いることができる。誘電体多層膜を用いた場合には、入射角によって反射率を制御することができ、所望の入射角における反射率を上昇させることができ、効率を向上できる。
透過反射光学層15の形成方法は、蒸着やスパッタ法やCVD法などのドライ成膜法や塗布法などのウエット成膜法など任意の方法を採用することができる。
透過反射光学層15の可視光に対する透過率は70%以上とすることができる。
図7(b)に表したように、本実施形態に係る光学素子512は、第1光学シート10と、透過反射光学層15と、に加え、第1透光層18aをさらに備えている。第1透光層18aは、第1光学シート10の第1主面10aの側に設けられ、可視光に対して透光性を有する。本具体例では、第1透光層18aは、透過反射光学層15の第1光学シート10とは反対の側に設けられている。これ以外は、光学素子511と同様であるので説明を省略する。
第1透光層18aには例えばアクリル系などの透明な樹脂を用いることができる。第1透光層18aは、例えば粘着層として機能する。第1透光層18aにより、光学素子512は、例えばフロントガラス710aに貼り付けられる。このとき、第1透光層18aの屈折率は、フロントガラス710aの屈折率と実質的に同じとすることができ、これにより、第1透光層18aと、フロントガラス710aとの反射が抑制でき、明るい表示が得られる。
図7(c)に表したように、本実施形態に係る光学素子513は、第1光学シート10と、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、第1光学シート10よりも高い屈折率を有する第1高屈折率層16aをさらに備える。これ以外は、光学素子510と同様であるので説明を省略する。
第1高屈折率層16aが第1光学シート10よりも高い屈折率を有しているので、第1主面10aは、反射性と透過性とを有することができる。第1高屈折率層16aには、例えば、第1光学シート10よりも高い屈折率を有する樹脂層や、金属酸化膜などの化合物層を用いることができる。第1高屈折率層16aを設けることで、光学素子513の第1主面10aの可視光に対する透過率は70%以上とすることができる。
図7(d)に表したように、本実施形態に係る光学素子514は、第1光学シート10と、第1高屈折率層16aと、に加え、第2透光層18bをさらに備えている。第2透光層18bは、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、可視光に対して透光性を有する。本具体例では、第2透光層18bは、第1高屈折率層16aの第1光学シート10とは反対の側に設けられている。これ以外は、光学素子513と同様であるので説明を省略する。
第2透光層18bには例えばPETなどの透明な樹脂シートを用いることができる。これにより、例えば、第1高屈折率層16aを保護することができ、光学素子514の信頼性を向上できる。
なお、第2透光層18bの第1光学シート10とは反対の側に、上記の第1透光層18aをさらに設けることもできる。この場合も、第1透光層18aは、例えば粘着層として機能する。
なお、第1透光層18a及び第2透光層18bの屈折率は、フロントガラス710aの屈折率と実質的に同じとすることができ、これにより、第1透光層18aと、第2透光層18bと、フロントガラス710aと、の反射が抑制でき、明るい表示が得られる。また、第1透光層18aの屈折率は、第2透光層18bの屈折率と、フロントガラス710aの屈折率と、の間の値に設定でき、これにより、第1透光層18aと、第2透光層18bと、フロントガラス710aと、の反射が抑制でき、明るい表示が得られる。
図7(e)に表したように、本実施形態に係る光学素子515は、第1光学シート10に加え、第2光学シート20と、第2高屈折率層16bと、をさらに備える。これ以外は、光学素子510と同様であるので説明を省略する。
第2光学シート20は、第2フレネルレンズ20fが設けられ、第1主面10aに対向する第3主面20aを有する。第1フレネルレンズ10fがフレネル凸レンズである場合には、第2フレネルレンズ20fはフレネル凹レンズであり、第1フレネルレンズ10fがフレネル凹レンズである場合には、第2フレネルレンズ20fはフレネル凸レンズである。以下では、第1フレネルレンズ10fがフレネル凸レンズであり、第2フレネルレンズ20fはフレネル凹レンズである場合として説明する。
第2高屈折率層16bは、第1光学シート10と第2光学シート20との間に設けられる。第2高屈折率層16bは、第1光学シート10の屈折率よりも高い屈折率を有する。なお、第2高屈折率層16bの屈折率は、第2光学シート20の屈折率よりも高く設定することができる。
この場合も、第1光学シート10においては、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaは、第1主面10aの外形の中心(外形中心13s)とは異なる位置に配置されている。
そして、第2フレネルレンズ20fの光軸23oaの位置は、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaの位置に実質的に一致する。
すなわち、例えば、第2フレネルレンズ20fの第3主面20aの外形は、第1フレネルレンズ10fの外形と同じである。そして、第2フレネルレンズ20fにおいても、第3主面20aにおける第2フレネルレンズ20fの光軸23oaは、第3主面20aの外形の中心とは異なる位置に配置されている。
第2フレネルレンズ20fの第3主面20aには、凹曲面を有する凹部21と、凹部21の周囲に同心円状に設けられた曲面を有する複数の凹条部22(例えば、同心円の中心23oから外側に向かって、凹条部22a、凹条部22b、凹条部22c及び凹条部22dなど)が設けられている。これにより、第2フレネルレンズ20fが形成される。凹条部22のそれぞれにおいては、中心23oに近い側の部分における厚みは、中心13oから遠い側の部分における厚みよりも小さい。なお、本具体例では、第2主面20aとは反対の側の第4主面20bは、実質的に平面である。
第1フレネルレンズ10fの複数の凸条部12のそれぞれに、第2フレネルレンズ20fの複数の凹条部22のそれぞれが対向する。
例えば、既に説明したように、第1フレネルレンズ10fは、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaを中心とする同心円状の複数の凸条部12を有し、第2フレネルレンズ20fは、第2フレネルレンズ20fの光軸23oaを中心とする同心円条の複数の凹条部22を有している。そして、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿ったある距離(第1距離)に位置する凸条部12の幅は、第2フレネルレンズ20fの光軸23oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿った距離が上記の第1距離に位置する凹条部22の幅と、実質的に同じである。
また、凹条部22の曲率は、凸条部12の曲率と実質的に等しく設定されることができる。
このような構成を有する光学素子515においては、第1光学シート10の第1主面10aに第2高屈折率層16bが設けられることで、第1主面10aは、反射性と透過性とを有することができる。そして、第1光学シート10に加え、第2光学シート20を設けることで、凸条部12を光が透過する際の光路のずれが、第2光学シート20によって補正されることができる。これにより、外界の背景の像の歪みが抑制される。そして、この場合も、第1光学シート10の光軸13oa及び第2光学シート20の光軸23oaが、第1主面10a(すなわち、第3主面20a)の外形中心13sとは異なる位置に配置されることで、HUDの見易さが向上できる。
このように、本実施形態に係る光学素子においては、光学素子の第1主面10aと第2主面10bとで生成される複数の像の位置を互いに変え、これらの像の重なりを抑制する。例えば、図7に例示した光学素子514においては、前後が平面で挟まれた凹面鏡の役割を果たすフレネルミラー面が用いられる。そして、このフレネルミラー面の光軸を、フレネルミラー面の外形の中心からシフトさせることで、複数の像を知覚されることを抑制する。このような光学素子をHUDの反射部711として用いることで、HUDの見易さを向上しつつ、表示装置の小型化が可能となる。
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る光学素子の構成を例示する模式的断面図である。
図8に表したように、本実施形態に係る光学素子520は、同心円状の複数の凸条部12を有する第1フレネルレンズ10fが設けられた第1主面10aを有する第1光学シート10を備える。光学素子520も、例えば、車両730のフロントガラス710aに貼り付けられ、HUDにおける反射部711として使用される。なお、この場合も、第1主面10aは、可視光に対して反射性と透過性とを有する。
図8に表したように、光学素子520においては、複数の凸条部12のうちで互いに隣接する凸条部12における同心円の中心13oから外側に向かう放射方向に沿ったそれぞれの幅は、互いに異なる。そして、複数の凸条部12のそれぞれにおける放射方向に沿ったそれぞれの幅は、予め定められた長さ以下である。
本具体例では、複数の凸条部12のうちで互いに隣接する2つの凸条部12の組み合わせのそれぞれにおいて、2つの凸条部12における同心円の中心から外側に向かう放射方向に沿ったそれぞれの幅は互いに異なり、複数の凸条部12のそれぞれにおける放射方向に沿ったそれぞれの幅は、予め定められた所定長さ以下である。すなわち、隣接する凸条部の全ての組み合わせにおいて、凸条部12の幅が互いに異なる。
例えば、図8に表したように、同心円の内側から凸条部12a、凸条部12b、凸条部12c、凸条部12d、凸条部12e、凸条部12f及び凸条部12gなどが設けられている場合、凸条部12aの幅は第1幅w1であり、凸条部12bの幅は第2幅w2であり、凸条部12cの幅は第3幅w3であり、凸条部12dの幅は第1幅w1であり、凸条部12eの幅は第2幅w2であり、凸条部12fの幅は第3幅w3であり、凸条部12gの幅は第1幅w1である。そして、第2幅w2は第1幅w1とは異なり、第3幅w3は、第1幅w1とは異なり第2幅w2とも異なる。
このように、互いに隣接する凸条部12において、幅が互いに異なる。これにより、凸条部12の回折効果による縞模様が抑制できる。
そして、凸条部12の幅が、予め定められた長さ以下に設定される。予め定められた幅として、観視者100の視力と、観視者100と光学素子520との距離と、に基づいて、2つの凸条部12が実質的に識別できない長さを採用することができる、これにより、複数の凸条部12のそれぞれが認識されず、複数の凸条部12による縞模様が知覚されなくなる。
具体的には、光学素子520を車両用のHUDに応用される場合には、観視者100の視力が0.7で、観視者100と光学素子520との距離が1mである場合として、上記の予め定められた幅として、0.43mmを採用することができる。すなわち、凸条部12の幅は、0.43mm以下とすることが望ましい。
また、観視者100の視力が1.0で、観視者100と光学素子520との距離が1mである場合として、上記の予め定められた幅として、0.3mmを採用することができる。すなわち、凸条部12の幅は0.3mm以下とすることができる。
一般に、凸条部12の幅を一定にした状態で凸条部12の幅を小さくすると、回折効果により、縞模様が知覚され易くなる。一方、凸条部12の幅を大きくすると、凸条部12自体が知覚される。本実施形態に係る光学素子520においては、凸条部12の幅を凸条部12自体が知覚されない小さい値に設定しつつ、複数の凸条部12において、互いに隣接する凸条部12の幅を互いに異ならせることで回折効果を抑制する。これにより、回折効果による縞模様を抑制しつつ、凸条部12自体が実質的に知覚されなくなる。これにより、HUDの見易さが向上できる。
以下、凸条部12の幅を変えた時の光学素子の特性の変化に関するシミュレーション結果に関して説明する。
図9及び図10は、光学素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、図9(a)は、凸条部12の幅が0.28mm±0.10mmで変化する場合(例えば、第1幅w1が0.28mmであり、第2幅w2が0.28mm+0.10mmであり、第3幅w3が、0.28mm−0.10mmである場合)の光学素子520aの特性を例示している。
図9(b)は、凸条部12の幅が0.28mm±0.05mmで変化する場合(例えば、第1幅w1が0.28mmであり、第2幅w2が0.28mm+0.05mmであり、第3幅w3が、0.28mm−0.05mmである場合)の光学素子520bの特性を例示している。
図10(a)は、凸条部12の幅が0.28mm±0.02mmで変化する場合(例えば、第1幅w1が0.28mmであり、第2幅w2が0.28mm+0.02mmであり、第3幅w3が、0.28mm−0.02mmである場合)の光学素子520cの特性を例示している。
図10(b)は、凸条部12の幅が0.28mmで一定である場合の比較例の光学素子529の特性を例示している。
これらの図において、横軸は、位置Xv(例えばX軸方向に沿った相対的な位置)であり、縦軸は、相対的な光強度Irである。
図10(b)に表したように、凸条部12の幅が0.28mmで一定である場合の比較例の光学素子529においては、光強度Irが局所的に高い光のピークが見られ、光のピークどうしの間隔(位置Xvに沿った間隔)が広い。すなわち、比較例の光学素子529においては、光のピークに対応する縞模様が見え易い。
図10(a)に表したように、凸条部12の幅を0.28mm±0.02mmで変化させた本実施形態に係る光学素子520cにおいては、光のピークどうしの間隔が狭く、細かいピークが数多く見られる。すなわち、光学素子520cにおいては、光のピークに対応する縞模様が見え難い。
さらに、図9(b)に表したように、凸条部12の幅を0.28mm±0.05mmで変化させた本実施形態に係る光学素子520bにおいても、光のピークどうしの間隔が狭く、細かいピークが数多く見られる。また、図9(a)に表したように、凸条部12の幅を0.28mm±0.10mmで変化させた本実施形態に係る光学素子520aにおいても、光のピークどうしの間隔が狭く、細かいピークが数多く見られる。そして、光学素子520bにおいては、光学素子520cよりも縞模様が見え難く、また、光学素子520aにおいては、光学素子520bよりもさらに縞模様が見え難い。
このように、凸条部12の幅の変化量を大きくすることで、回折効果をより低減することができ、より縞模様を知覚され難くすることができる。
本実施形態に係る光学素子において、複数の凸条部のうちで互いに隣接する凸条部12の幅の差は、例えば0.05mm以上とすることができる。これにより、回折効果をより低減することができ、より縞模様を知覚され難くすることができる。ただし、本発明の実施形態はこれに限らず、互いに隣接する凸条部12において、幅が互いに異なることで回折による縞模様が抑制できれば良く、複数の凸条部12における幅の差は任意である。
なお、上記においては、隣接する凸条部の全てにおいて、凸条部12の幅が互いに異なる場合であるが、本実施形態はこれに限らず、複数の凸条部12のうちで互いに隣接する任意の2つの凸条部12における幅が互いに異なっても良い。例えば、光学素子520の周辺部に設けられる凸条部12においては、縞模様が発生した場合においても余り目立たないので実用的には問題にならなり場合がある。このような場合は、実用上目立ち易い光学素子520の中央部分において、互いに隣接する任意の2つの凸条部12における幅を互いに異なるように設定しても良い。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る別の光学素子の構成を例示する模式的断面図である。
図11に表したように、本実施形態に係る光学素子530も、同心円状の複数の凸条部12を有する第1フレネルレンズ10fが設けられた第1主面10aを有する第1光学シート10を備える。そして、複数の凸条部12のうちで隣接する2つの凸条部12における同心円の中心から外側に向かう放射方向に沿った幅は互いに同じであり、隣接する2つの凸条部12における放射方向に沿った幅の合計は、予め定められた長さ以下である。
例えば、図11に表したように、凸条部12aの幅は第1幅w1であり、凸条部12bの幅は第2幅w2であり、凸条部12cの幅は第1幅w1であり、凸条部12dの幅は第1幅w1であり、凸条部12eの幅は第2幅w2であり、凸条部12fの幅は第3幅w3であり、凸条部12gの幅は第1幅w1である。そして、第2幅w2は第1幅w1とは異なり、第3幅w3は、第1幅w1とは異なり第2幅w2とも異なる。
本具体例では、互いに隣接する凸条部12c及び凸条部12dは、同じ第1幅w1を有する。そして、このとき、隣接する2つの凸条部12における放射方向に沿った幅の合計である第1幅w1の2倍の値は、予め定められた長さ以下に設定される。
この場合も、予め定められた幅として、観視者100の視力と、観視者100と光学素子520との距離と、に基づいて、2つの凸条部12が実質的に識別できない長さを採用することができる、これにより、複数の凸条部12のそれぞれが認識されず、複数の凸条部12による縞模様が知覚されなくなる。具体的には、上記の予め定められた幅として、0.43mmを採用することができる。
このように、複数の凸条部12において、互いに隣接する凸条部12の幅が互いに同じ場合においても、その隣接する2つの凸条部12の幅の合計を予め定められた長さ(例えば0.43mm)以下にすることで、回折効果を抑制する。これにより、回折効果による縞模様を抑制しつつ、凸条部12自体が実質的に知覚されなくなる。これにより、HUDの見易さが向上できる。
なお、本具体例では、複数の凸条部12のうちの1つの凸条部12の両側において隣接する2つの凸条部12の一方における同心円の中心から外側に向かう放射方向に沿った幅は、上記の1つの凸条部における幅とは異なり、上記の2つの凸条部の他方における放射方向に沿った幅は、上記の1つの凸条部における幅と実質的に同じである。
すなわち、3つの連続して並ぶ凸条部12の幅が互い同じではない。ただし、もし、3つの連続して並ぶ凸条部12の幅が互い同じ場合は、連続して並ぶその3つの凸条部12の幅の合計を、予め定められた長さ(例えば0.43mm)以下にすることで回折効果を抑制し、HUDの見易さが向上できる。
このように、本実施形態に係る光学素子においては、フレネルレンズの溝間隔(すなわち、凸条部12の幅)に関して、等間隔溝または等高さ溝ではなく、多周期間隔またはランダム周期間隔にて溝を設定する。これにより周期性が崩れることからフレネルレンズによる回折を抑制することができる。
多周期間隔の例として、例えば上記のように3周期間隔のフレネルレンズを適用することができる。3周期間隔のフレネルレンズにおいては、凸条部12の幅を、第1幅w1→第2幅w2→第3幅w3と変化させ、さらにこの順で繰り返して変化させる。また、凸条部12の幅の順番は、第3幅w3→第2幅w2→第1幅w1でも良く、任意である。また、凸条部12の幅を、第1幅w1、第2幅w2及び第3幅w3の中から任意の幅を適用しても良い。また、例えば、凸条部12の幅がランダムに変化するようにしても良い。
以下、本実施形態に係る光学素子に関して、光学素子520に関してさらに説明する。ただし、以下の説明は、上記の光学素子520a〜520c及び光学素子530にも適用できる。
光学素子520は、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、可視光に対して反射性と透過性とを有する透過反射光学層15をさらに備えることができる。そして、透過反射光学層15の可視光に対する透過率は70%以上とすることができる。これにより、光学素子520はHUDに使用したときに、映像投影部115はら呈示される映像と、外界の背景映像と、の両方を良好な状態で観視できる。
また、光学素子520は、第1光学シート10の第1主面10aの側に設けられ、可視光に対して透光性を有する第1透光層18aをさらに備えることもできる。例えば、粘着層とし機能する第1透光層18aは、透過反射光学層15の第1光学シート10とは反対の側に設けられる。
また、光学素子520は、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、第1光学シート10よりも高い屈折率を有する第1高屈折率層16aをさらに備えることができる。これにより、第1主面10aが反射性と透過性とを有することができる。
また、光学素子520は、第1光学シート10と、第1高屈折率層16aと、に加え、第1光学シート10の第1主面10aに設けられ、可視光に対して透光性を有する第2透光層18b(例えば光学フィルム)をさらに備えることもできる。第2透光層18bにより、例えば、第1高屈折率層16aを保護することができ、光学素子514の信頼性を向上できる。
また、光学素子520は、第2フレネルレンズ20fが設けられ、第1主面10aに対向する第3主面20aを有する第2光学シート20と、第1光学シート10と第2光学シート20との間に設けられ、第1光学シート10の屈折率よりも高い屈折率を有する第2高屈折率層16bと、をさらに備えることもできる。
第1フレネルレンズ10fの複数の凸条部12のそれぞれに、第2フレネルレンズ20fの複数の凹条部22のそれぞれが対向する。
例えば、既に説明したように、第1フレネルレンズ10fは、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaを中心とする同心円状の複数の凸条部12を有し、第2フレネルレンズ20fは、第2フレネルレンズ20fの光軸23oaを中心とする同心円条の複数の凹条部22を有している。そして、第1フレネルレンズ10fの光軸13oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿ったある距離(第1距離)に位置する凸条部12の幅は、第2フレネルレンズ20fの光軸23oaから同心円の外側に向かう放射方向に沿った距離が上記の第1距離に位置する凹条部22の幅と、実質的に同じである。
また、凹条部22の曲率は、凸条部12の曲率と実質的に等しく設定されることができる。
これにより、凸条部12を光が透過する際の光路のずれが、第2光学シート20によって補正でき、外界の背景の像の歪みが抑制され、HUDの見易さがさらに向上できる。
また、光学素子520において、第1主面10aにおける第1フレネルレンズ10fの光軸13oaを、第1主面10aの外形の中心(外形中心13s)とは異なる位置に配置されても良い。これにより、第1実施形態に係る効果をさらに享受することができる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態に係る表示装置の例について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る表示装置の構成を例示する模式図である。
図12に表したように、表示装置330は、映像を含む光束を、本発明の実施形態に係る光学素子510に反射させて観視者100に向けて投影する映像投影部115を備える。なお、表示装置330は、光学素子510をさらに含んでも良い。
図12に表したように、表示装置330は、映像データ生成部130をさらに備えているが、映像データ生成部130は場合によっては省略しても良い。また、映像データ生成部130は、必ずしも映像投影部115と一体的に設けられなくても良く、例えば、ダッシュボード720の内部ではなく、車両730の任意の場所に設置しても良い。映像データ生成部130からの映像データは、電気信号や光信号などの有線または無線の方式により、映像投影部115に供給される。
本具体例においては、映像投影部115は、映像光形成部110と、光束投影部120と、を有する。
映像光形成部110は、例えば、光源111と、映像形成部117と、を有する。
光源111は、光束112の基となる光を出射する。光源111には、LED(Light Emitting Diode)や高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザなど各種のものを用いることができる。
映像形成部117には、例えば、液晶表示装置(LCD)などの光スイッチを用いることができる。そして、映像形成部117には、映像データ生成部130から映像データが供給され、映像形成部117は、その映像データに基づいて、映像を含む光束112を生成する。
本具体例では、映像光形成部110は、光源111と映像形成部117との間に設けられたテーパライトガイド116をさらに有している。光源111から出射された光は、テーパライトガイド116において発散角がある程度の範囲に制御される。そして、その光は、映像形成部117を経ることで、映像を含む光束112となり、この光束112の発散角はある程度の範囲に制御される。
光束投影部120は、映像光形成部110から出射した光束112を車両730のフロントガラス部710に含まれる本実施形態に係る光学素子に反射させて、観視者100に向けて投影する。本具体例では、光学素子510が用いられているが、光学素子として本発明の実施形態に係る任意の光学素子及びそれらの変形の光学素子を用いることができる。光束投影部120には、例えば、各種のレンズ、ミラー、及び、発散角(拡散角)を制御する各種の光学素子が用いられる。
本具体例では、光束投影部120は、光源側レンズ123と、アパーチャ124と、出射側レンズ125と、出射側ミラー126と、を含む。
光束112の進行方向に沿って、映像光形成部110と出射側ミラー126との間に光源側レンズ123が配置され、光源側レンズ123と出射側ミラー126との間にアパーチャ124が配置され、アパーチャ124と出射側ミラー126との間に出射側レンズ125が配置される。
本具体例では、出射側ミラー126には、平面鏡を用いることができる。すなわち、本実施形態に係る光学素子510が像を拡大させる効果を有することで、出射側ミラー126に平面鏡を用いることができ、光束投影部120(すなわち、映像投影部115)を小型化できる。
そして、光束112の発散角が制御されており、光束112が、観視者100の目101に入射するように設計できる。これにより、例えば、観視者100は、光束112に含まれる映像を片方の目101で観視することができる。これにより、フロントガラス部710で反射する表示内容180の像181を両眼で観察したときに生じる両眼視差による見難さが解消される。
なお、フロントガラス部710は、観視者100からの距離が21.7cm以上の位置に配置される。これにより、観視者100が知覚する奥行き感が増強され、また、表示内容180を所望の奥行き位置に知覚させ易くできる。
ただし、本発明の実施形態は、これに限らず、場合によっては、映像投影部115から出射された光束112が、観視者100の両目に入射されても良い。
なお、出射側ミラー126は可動式とすることができ、例えば、観視者100の頭部105の位置や動きに合わせて、手動で、または、自動で、出射側ミラー126の位置や角度を調節し、光束112を観視者100の目101に適切に投影させることができる。
この構成により、光束112の発散角が制御され、観視者100の位置において、光束112の投影領域114は一定の範囲に制御される。
観視者100の両目(瞳)の間隔は、例えば、60ミリメートル(mm)〜75mmであるので、片方の目101で観視させる場合には、観視者100の位置における光束112の投影領域114の大きさ(左右方向の幅)は、例えば、60mm〜75mm程度以下に設定される。この投影領域114の大きさは、主に光束投影部120に含まれる光学素子によって制御される。
なお、観視者100の位置における光束112の投影位置114aは、例えば、映像投影部115の設置位置や角度を変えることで制御することができる。例えば、映像光形成部110の設置位置、映像光形成部110の角度、光束投影部120の設置位置、及び光束投影部120の角度の少なくともいずれかを変えることで、投影位置114aが制御できる。
例えば、表示装置330は、映像投影部115を制御して、観視者100の位置における光束112の投影位置114aを制御する制御部250をさらに備えることができる。制御部250により、例えば、出射側ミラー126の角度を制御して、投影位置114aを制御する。
例えば、制御部250は、制御信号部251と駆動部126aとを有する。制御信号部251は、制御信号を駆動部126aに出力し、駆動部126aを動作させる。駆動部126aは、例えば、出射側ミラー126の角度や位置などを変化させるモータなどを有する。制御信号部251から出力された制御信号によって駆動部126aが動作し、出射側ミラー126の角度や位置などを変化させ、観視者100の位置における光束112の投影位置114aを変化させる。駆動部126aは、映像投影部115に含まれると見なしても良い。
映像光形成部110及び光束投影部120のそれぞれの構成は、種々の変形が可能である。映像光形成部110に含まれる要素と、光束投影部120に含まれる要素と、の配置は任意であり、例えば、光束投影部120に含まれる要素どうしの間に、映像光形成部110(及びそれに含まれる要素)が挿入されていても良い。
映像投影部115は、上記の具体例の他に、各種の変形が可能である。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態に係る表示方法は、第1の実施形態に関して説明した光学素子を用いる表示方法である。
この表示方法は、第1フレネルレンズ10fが設けられた第1主面10aと、第1主面10aとは反対側の第2主面10bと、を有する第1光学シート10に、第2主面10bの側から映像を含む光束112を入射させ、光束112の第2主面10bで反射した第2主面反射光束(第2反射光Lout2)の方向を、光束112の第1主面10aで反射した第1主面反射光束(第1反射光Lout1)の方向に対して5度以上変えて、第1主面反射光束を観視者100に向けて投影する。
すなわち、第2反射光Lout2の第2反射角θout2と、第1反射光Lout1の第1反射角θout1と、を5度以上変えて、第1反射光Lout1を観視者100に投影させる。これにより、2重像が抑制でき、見易い表示が実現できる。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施形態に係る移動体(例えば、車両730)は、図1に例示したようい、発明の実施形態に係る光学素子のいずれかと、その光学素子を支持する透明板(フロントガラス710a、フロントガラス部710)と、を備える。また、移動体は、映像を含む光束112を本実施形態に係る光学素子に反射させて観視者100に向けて投影する映像投影部115を含む表示装置をさらに含むこともできる。なお、映像投影部115は、映像を含む光束の発散角を制御して光学素子に投影することができる。
本実施形態に係る移動体は、車両や船舶や航空機などの任意の乗り物とすることができる。
移動体のフロントガラス部710に本実施形態に係る任意の光学素子を貼り付けることもできるが、フロントガラス部710が、光学素子を内蔵しても良い。以下、その例について説明する。
図13は、本発明の第5の実施形態に係る移動体の一部の構成を例示する模式的断面図である。
図13(a)に表したように、本実施形態に係る移動体のフロントガラス710a1は、第1透明板715aと、第2透明板715bと、第1透明板715aと第1透明板715bとの間に設けられた光学素子を有している。この例では、光学素子として、既に説明した光学素子512が用いられている。また、第1透明板715aと第1透明板715bとの間において、光学素子512が設けられていない部分には、透明樹脂層715cが設けられている。透明樹脂層715cには、例えば第1透光層18aに用いられる材料と同じ材料を用いても良い。
図13(b)に表したように、本実施形態に係る移動体のフロントガラス710a1においては、第1透明板715aと第1透明板715bとの間に、既に説明した光学素子515が設けられている。また、第1透明板715aと第1透明板715bとの間において、光学素子512が設けられていない部分には、透明樹脂層715cが設けられている。
なお、第1透明板715a及び第2透明板715bには、例えばガラス基板や樹脂製の透明な基板を用いることができる。
このような構成を有するフロントガラス710a1及び710a2によれば、フロントガラスに光学素子を内蔵することで、使用者はより便利になり、また、光学素子の周囲が、第1透明板715a、第2透明板715b及び透明樹脂層715cによって封止されるため、光学素子の信頼性が向上する。
なお、第1透明板715aと第2透明板715bとの間には、本発明の実施形態に係る任意の光学素子を設けることができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光学素子に含まれるフレネルレンズ、光学シート、透過反射光学層、高屈折率層及び透光層、表示装置に含まれる映像投影部及び映像投影部に含まれる光学部品等の各要素の具体的な構成の、形状、サイズ、材質、配置関係などに関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した光学素子、表示装置、表示方法、及び、移動体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光学素子、表示装置、表示方法、及び、移動体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。