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JP5464119B2 - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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JP5464119B2 JP2010228879A JP2010228879A JP5464119B2 JP 5464119 B2 JP5464119 B2 JP 5464119B2 JP 2010228879 A JP2010228879 A JP 2010228879A JP 2010228879 A JP2010228879 A JP 2010228879A JP 5464119 B2 JP5464119 B2 JP 5464119B2
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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
近年、ハイブリッド自動車やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源として、リチウムイオン二次電池が利用されている。
特許文献1には、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いることで、低温放電特性(低温出力特性)などが良好になることが記載されている。
特開2006−143572号公報
ところで、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、例えば、以下のようにして製造する。まず、組み付け工程において、正極活物質及び負極活物質を有する電極体と、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液とを、電池ケース内に収容した電池を作製する。次いで、初期充電工程において、組み付け工程で作製した電池を初期充電する。その後、エージング工程において、初期充電工程を終えた電池を、所定の温度で一定時間安置してエージングする。
次に、第1自己放電工程において、エージング工程を終えた電池を、所定期間放置することにより自己放電させる。その後、放電量測定工程において、自己放電工程を終えた電池を強制的に放電させて、電池電圧値が所定の測定開始電圧値から放電終止電圧値に至るまでの間の放電電気量を測定する。次いで、内部抵抗測定工程において、放電量測定工程を終えた電池の内部抵抗を測定する。
次に、電池列拘束工程において、放電量測定工程を終えた電池を複数用意し、これらの電池を一列または複数列に列置して1または複数列の電池列にすると共に、この電池列を、その両端側から押圧治具で挟んで拘束状態にする。その後、第2自己放電工程において、拘束状態の電池列を放置することにより、電池列をなす各々の電池を自己放電させる。
第2自己放電工程では、電池列をなす各々の電池について、放置前後の電池電圧値を測定し、放置前後の電池電圧差に基づいて、各々の電池に内部短絡が生じているか否かを判断する。内部短絡が生じている電池では、内部短絡が生じていない電池(正常な電池)に比べて、放置による自己放電量が大きくなるので、電池電圧値が小さくなり、放置前後の電池電圧差も大きくなると考えられる。従って、放置前後の電池電圧差に基づいて、電池に内部短絡が生じているか否かを判断することが可能となる。
ところが、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、第2自己放電工程において放置を開始すると、その後、しばらくの間、電池電圧が上昇してゆく傾向にあった。例えば、放置開始後、約1週間も電池電圧が上昇し、その後、電池電圧値が低下してゆくことがあった。電池電圧値が上昇している間は、電池の自己放電特性が把握できない(内部短絡している電池としていない電池との判別ができない)ため、電池電圧値の上昇が終了するのを待って、その後、規定期間、拘束状態の電池列を放置して、電池に内部短絡が生じているか否かを判断する必要があった。
このように、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池を製造する場合、第2自己放電工程において、放置開始後しばらくの間、電池電圧が上昇することが原因で、工程期間が長くなることが課題となっていた。このため、第2自己放電工程において、放置開始後の電池電圧上昇期間をできる限り短縮することが求められていた。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法において、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、正極活物質及び負極活物質を有する電極体と、LiPF 2 2 を含有する電解液とを、電池ケース内に収容した電池を作製する組み付け工程と、上記組み付け工程を終えた上記電池を初期充電する初期充電工程と、上記初期充電工程を終えた上記電池を、所定の温度で一定時間安置してエージングするエージング工程と、上記エージング工程を終えた上記電池を、所定期間放置することにより自己放電させる第1自己放電工程と、上記第1自己放電工程を終えた上記電池を、その電池電圧値が所定の放電終止電圧値に至るまで強制的に放電させつつ、上記電池電圧値が所定の測定開始電圧値から上記放電終止電圧値に至るまでの間の上記電池の放電電気量を測定する放電量測定工程と、上記放電量測定工程を終えた上記電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定工程と、上記内部抵抗測定工程を終えた上記電池を複数用意し、これらの電池を一列または複数列に列置して1または複数列の電池列にすると共に、上記電池列を、その両端側から押圧治具で挟んで拘束状態にする電池列拘束工程と、上記拘束状態の上記電池列を放置することにより、上記電池列をなす各々の上記電池を自己放電させる第2自己放電工程と、を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記正極活物質は、Li X MO 2 (Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むものである、1.04≦X≦1.15)であり、上記負極活物質は、黒鉛と非晶質炭素とからなり、上記負極活物質の粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m 2 /gの範囲内であり、上記電解液中の上記LiPF 2 2 の濃度が、0.01〜0.076mol/Lの範囲内であり、上記第1自己放電工程では、上記電池の放置を開始するときの電池電圧値である放置開始電圧値Vbから、上記所定期間の放置を終えたときの電池電圧値である放置終了電圧値Vcを差し引いた電池電圧差ΔVbcが、所定の閾値以上である場合、当該電池に内部短絡が生じていると判定し、上記第2自己放電工程は、上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇する場合は、上記電池電圧値の上昇期間が経過した後から規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置する一方、上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇することなく低下する場合は、上記電池列の放置を開始してから上記規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置して、上記電池列をなす上記電池を自己放電させる工程であり、当該製造方法は、下記の(1)及び(2)の少なくともいずれかの条件を満たすリチウムイオン二次電池の製造方法である。
(1)上記第1自己放電工程では、上記所定期間を1〜7日間の範囲内の期間とする。
(2)上記第1自己放電工程における上記放置開始電圧値Vbから、上記放電量測定工程における上記放電終止電圧値Veを差し引いた電圧差分値ΔVbeが、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たす。
ところで、組み付け工程において、電極体内に金属粉(Cu粉など)などが誤って混入してしまうことがある。このような電池では、エージング工程において、金属粉由来のデンドライトが発生し、内部短絡が生じる(セパレータによって電気的に絶縁されている正極板と負極板とが、デンドライトを通じて電気的に接続する)ことがある。このため、後の第1自己放電工程において、内部短絡が生じた電池を検出し、出荷しないようにする(不良品として取り除く)。
第1自己放電工程では、エージングを終えたリチウムイオン二次電池を、所定期間(例えば、5日間)放置することにより自己放電させる。さらに、第1自己放電工程では、電池の放置を開始するときの電池電圧値である放置開始電圧値Vbから、所定期間の放置を終えたときの電池電圧値である放置終了電圧値Vcを差し引いた電池電圧差ΔVbc(=Vb−Vc)が、所定の閾値以上である場合、当該電池に内部短絡が生じていると判定する。
内部短絡が生じている電池では、内部短絡が生じていない電池(正常な電池)に比べて、放置による自己放電量が大きくなるので、電池電圧値が小さくなり、放置前後の電池電圧差ΔVbcも大きくなる。従って、放置前後の電池電圧差ΔVbcに基づいて、電池に内部短絡が生じているか否かを判断することできる。そこで、第1自己放電工程では、電池電圧差ΔVbcが所定の閾値Tbc以上であるか否かによって、電池に内部短絡が生じているか否かを判定する。内部短絡が生じていると判定された電池は、例えば、不良品として取り除かれる(例えば、廃棄される)。なお、閾値Tbcは、例えば、予め、内部短絡が生じている電池と生じていない電池とについて、それぞれの電池電圧差ΔVbcを調査しておき、両電池の電池電圧差ΔVbcの間の値とすれば良い。
上述のリチウムイオン二次電池の製造方法では、上記の(1)及び(2)の少なくともいずれかの条件を満たす。
具体的には、(1)第1自己放電工程では、電池を放置する所定期間を、1〜7日間の範囲内の期間とする。すなわち、第1自己放電工程において、エージング工程を終えた上記電池を、1日以上7日以内の期間放置して、自己放電させる。
本発明者が調査したところ、第1自己放電工程における電池の放置期間を短くするほど、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮できることが判明した。しかしながら、第1自己放電工程における電池の放置期間を短くし過ぎると、第1自己放電工程において、内部短絡が生じている電池の検出精度(内部短絡が生じているか否かの判定精度)が低くなることが判明した。放置期間が短すぎると、内部短絡が生じている電池と生じていない電池とにおいて、電池電圧差ΔVbcの違いがはっきりしない(近似した値となる)からである。
調査の結果、第1自己放電工程において、電池を放置する期間(所定期間)を、1〜7日間の範囲内の期間(1日以上7日以内)とすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、且つ、内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができる。
また、(2)第1自己放電工程における放置開始電圧値Vbから、放電量測定工程における放電終止電圧値Veを差し引いた電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)が、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにすると良い。すなわち、電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)を、0.25V以上0.55V以下の範囲内の値とすると良い。
本発明者が調査したところ、電圧差分値ΔVbeを小さくするほど、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮できることが判明した。しかしながら、電圧差分値ΔVbeを小さくし過ぎると、電池の内部抵抗が大きくなることが判明した。調査の結果、電圧差分値ΔVbeを、0.25V以上0.55V以下の範囲内の値とすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することがき、且つ、電池の内部抵抗も小さくすることができる。
なお、放電量測定工程における測定開始電圧値は、第1自己放電工程における放置終了電圧値Vc以下の値に設定する。さらに、放電終止電圧値Veは、測定開始電圧値よりも小さい値に設定する。
さらに、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記(1)の条件について、前記所定期間を1〜4日間の範囲内の期間とするリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
第1自己放電工程において、電池を放置する所定期間を、1〜4日間の範囲内の期間(1日以上4日以内)とすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を「0」にすることができる。換言すれば、第1自己放電工程における放置期間(所定期間)を、1〜4日間の範囲内の期間(1日以上4日以内)とすることで、第2自己放電工程において放置を開始してから電池電圧値が上昇することなく低下する。これにより、第2自己放電工程にかかる期間を極めて短くすることができる。
さらに、上記いずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記(2)の条件について、0.25V≦ΔVbe≦0.45Vの関係を満たすリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
前述の(2)の条件について、0.25V≦ΔVbe≦0.45Vの関係を満たすようにすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を「0」にすることができる。換言すれば、電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)を0.25V以上0.45V以下の範囲内の値とすることで、第2自己放電工程において放置を開始してから電池電圧値が上昇することなく低下する。これにより、第2自己放電工程にかかる期間を極めて短くすることができる。
さらに、上記いずれかのリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記組み付け工程の後、前記初期充電工程の前に、上記組み付け工程を終えた前記電池を、押圧治具で挟んで拘束状態にする電池拘束工程を備え、前記内部抵抗測定工程の後、前記電池列拘束工程の前に、上記電池拘束工程において行った上記電池の拘束を解除する拘束解除工程を備え、前記初期充電工程、前記エージング工程、前記第1自己放電工程、前記放電量測定工程、及び上記内部抵抗測定工程では、いずれも、前記電池は上記拘束状態であるリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
上述の製造方法では、電池を押圧治具で挟んで拘束状態として、初期充電工程、エージング工程、第1自己放電工程、放電量測定工程、及び内部抵抗測定工程を行う。電池を押圧治具で挟んで拘束状態とすることで、電極体を圧縮して、正極板と負極板との間の距離のムラを小さくする(均一にする)ことができる。このため、上記の各工程において、電池反応(充電反応、放電反応)のムラを小さくすることができるので好ましい。
実施形態の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池の斜視図である。 同リチウムイオン二次電池の正極板の斜視図である。 同リチウムイオン二次電池の負極板の斜視図である。 同負極板の拡大断面図であり、図3のA−A断面図に相当する。 実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。 電池拘束工程において、組み付け工程を終えた電池を押圧治具で挟んで拘束状態にした状態を示す斜視図である。 電池列拘束工程において、電池列をその両端側から押圧治具で挟んで拘束状態にした状態を示す図である。 内部短絡していない正常な電池と内部短絡している電池とについて、第1自己放電工程と同一条件で放置したときの放置期間と電池電圧差ΔVbcとの関係を示すグラフである。 内部短絡していない正常な電池と内部短絡している電池とについて、第2自己放電工程と同一条件で電池列を放置したときの放置期間と電池電圧の変化量との関係を示すグラフである。 電圧差分値ΔVbeと第2自己放電工程における電池電圧上昇期間との関係を示すグラフである。 第1自己放電工程における放置期間と第2自己放電工程における電池電圧上昇期間との関係を示すグラフである。
まず、本実施形態の製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池100について説明する。
リチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、電極体110と、これを収容する電池ケース180とを備える。電極体110は、正極板130、負極板120、及びセパレータ150を備えている。セパレータ150は、ポリエチレンからなり、正極板130と負極板120との間に介在して、これらを離間させている。このセパレータ150には、リチウムイオンを有する電解液160を含浸させている。
電池ケース180は、アルミニウムからなり、直方体形状をなしている。この電池ケース180は、電池ケース本体181と封口蓋182を有する。このうち、電池ケース本体181は、有底矩形箱形状をなしている。なお、電池ケース本体181と電極体110との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。この電池ケース180は、互いに背向する一対の幅広側面180b,180cを有している。幅広側面180bは、図1において正面側を向く面であり、幅広側面180cは、図1において裏側を向く面(幅広側面180bの裏側に位置する面)である。
また、封口蓋182は、矩形板状であり、電池ケース本体181の開口を閉塞して、この電池ケース本体181に溶接されている。この封口蓋182には、矩形板状の安全弁197が封着されている。
また、電極体110の正極板130には、クランク状に屈曲した板状の正極集電部材191が溶接されている(図1参照)。さらに、負極板120には、クランク状に屈曲した板状の負極集電部材192が溶接されている。正極集電部材191及び負極集電部材192のうち、それぞれの先端に位置する正極端子部191A及び負極端子部192Aは、封口蓋182を貫通して蓋表面182Aから突出している。なお、正極端子部191Aと封口蓋182との間、及び、負極端子部192Aと封口蓋182との間には、それぞれ、電気絶縁性の樹脂からなる絶縁部材195を介在させている。
また、電解液160は、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)とを、体積比で3:4:3に調整した混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加し、さらに、ジフルオロリン酸塩を添加した非水電解液である。なお、電解液160中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとしている。
電極体110は、帯状の正極板130及び負極板120が、帯状のセパレータ150を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型電極体である(図1参照)。詳細には、長手方向DAに延びる帯状の正極板130、負極板120、及びセパレータ150を、長手方向DAに捲回して、捲回型の電極体110を形成している(図1〜図4参照)。なお、この電極体110では、セパレータ150を介して、正極板130の正極活物質層131と負極板120の負極活物質層121とが対向している(図4参照)。
正極板130は、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、アルミニウム箔からなる正極集電板138と、この正極集電板138の両主面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの正極活物質層131,131とを有している。正極活物質層131は、正極活物質137と、アセチレンブラックからなる導電材と、PEO(ポリエチレンオキサイド)と、CMC(カルボキシメチルセルロース)とを、重量比88:10:1:1の割合で含んでいる。
なお、正極活物質137として、LiXMO2(Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むものである、1.04≦X≦1.15)を用いている。
また、正極集電板138をなすアルミニウム箔の両面には、炭素層139が設けられている。炭素層139は、アセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとを重量比3:7の割合で含んでいる。
また、負極板120は、図3に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅箔からなる負極集電板128と、この負極集電板128の両主面128F,128F上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に配置された2つの負極活物質層121,121とを有している。負極活物質層121は、負極活物質127とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMCと(カルボキシメチルセルロース)を、重量比98:1:1の割合で含んでいる。
なお、負極活物質127として、負極活物質の粒子が黒鉛と非晶質炭素とからなるもの(例えば、黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆したもの)を用いている。また、負極活物質層121の表面には、金属酸化物絶縁層129が設けられている。金属酸化物絶縁層129は、酸化アルミニウム(アルミナ)とポリフッ化ビニリデンとを重量比95:5の割合で含んでいる。
負極活物質層121は、図3及び図4(図3のA−A断面図)に示すように、セパレータ150を介して正極活物質層131と対向する対向部122と、セパレータ150を介して対向する正極活物質層131が存在しない非対向部123とからなる。具体的には、負極活物質層121は、正極活物質層131に比べて大きな面積を有しており、非対向部123が対向部122の周囲に位置する形態となっている。なお、負極活物質層121における非対向部123と対向部122との境界の位置は、負極板120、セパレータ150及び正極板130を捲回して電極体110を形成したときに決まる。また、図4では、参考として、電極体110を形成したときの正極板130及びセパレータ150の位置を、二点鎖線で示している。
次に、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。図5は、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS1(組み付け工程)において、電池ケース180内に電極体110と電解液160と収容した電池を作製する。具体的には、まず、正極活物質137とアセチレンブラックとPEO(ポリエチレンオキサイド)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを、重量比88:10:1:1の割合で混合し、これに水(溶媒)を混合して、正極スラリを作製した。次いで、この正極スラリを、アルミニウム箔からなる正極集電板138(表面に炭素層139を備えている)の表面に塗布し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、正極板130を得た。
なお、正極集電板138をなすアルミニウム箔の表面には、予め、炭素層139を形成している。この炭素層139は、アセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとを重量比3:7の割合で含んでいる。アルミニウム箔の表面に炭素層139を設けておくことで、正極スラリを塗布したとき、正極スラリ(アルカリ性となる)と正極集電板138を構成するアルミニウム箔との接触を防止することができる。これにより、正極集電板138を構成するアルミニウム箔の腐食を防止することができる。
なお、炭素層139の厚みは、1〜5μmとするのが好ましい。
また、負極活物質127とSBR(スチレンブタジエンゴム)とCMCと(カルボキシメチルセルロース)とを、98:1:1(重量比)の割合で水中で混合して、負極スラリを作製した。次いで、この負極スラリを、銅箔からなる負極集電板128の両主面128F上に塗布し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、負極板120を得た。
なお、負極活物質127は、例えば、次のようにして作製することができる。球状に成形した黒鉛とピッチ(石油ピッチ)とを混合し、これを焼成する。この焼成により、ピッチ(石油ピッチ)が非晶質炭素となる。その後、この焼成体を粉砕することで、負極活物質127(黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆したもの)を得ることができる。
なお、負極活物質127として、非晶質炭素の割合(非晶質炭素含有率)が、2.5〜7.1wt%の範囲内である負極活物質を用いるのが好ましい。また、負極活物質127として、負極活物質粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m2/gの範囲内である負極活物質を用いるのが好ましい。本実施形態では、BET比表面積の値として、公知のBET法(詳細には、N2ガス吸着法)により求められた比表面積の値を採用している。
また、負極活物質層121の表面には、金属酸化物絶縁層129を形成している。具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ)とポリフッ化ビニリデンとを重量比95:5の割合で混合し、これに溶媒を混合してペーストにする。このペーストを負極活物質層121の表面に塗布し、乾燥させることで、金属酸化物絶縁層129を形成することができる。
なお、金属酸化物絶縁層129の厚みは、2〜8μmとするのが好ましい。
また、正極容量と負極容量との容量比(負極容量/正極容量)は、1.4〜1.9の範囲内とするのが好ましい。なお、正極容量と負極容量との容量比(正極容量に対する負極容量の割合)は、正極活物質層131と負極活物質層121の対向部122との容量比である。この容量比は、負極活物質層121(対向部122)の厚み(すなわち、負極スラリの塗布量)を調整することで、1.4〜1.9の範囲内で調整することができる。
その後、負極板120と正極板130との間に、セパレータ150を介在させて捲回し、電極体110を形成する。なお、負極板120の負極活物質層121における対向部122に、セパレータ150を介して正極板130の正極活物質層131が対向するように、セパレータ150、負極板120、セパレータ150、正極板130の順に重ねて捲回する(図4参照)。
その後、負極板120(負極集電板128)に負極集電部材192を溶接し、正極板130(正極集電板138)に正極集電部材191を溶接する。次いで、負極集電部材192及び正極集電部材191を溶接した電極体110を、電池ケース本体181内に挿入した後、電解液160を注入する。その後、封口蓋182で電池ケース本体181の開口を閉塞した状態で、封口蓋182と電池ケース本体181とを溶接し、リチウムイオン二次電池の組み付けを完了する。
なお、電解液160は、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)とを、体積比で3:4:3に調整した混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加し、さらに、ジフルオロリン酸塩を添加した非水電解液である。なお、電解液160中のLiPF6の濃度は、1mol/Lとしている。
また、電解液160中のジフルオロリン酸塩の濃度は、0.01〜0.076mol/Lの範囲内とするのが好ましい。なお、本実施形態では、ジフルオロリン酸塩として、LiPF22を用いている。
次いで、ステップS2(電池拘束工程)に進み(図5参照)、上述の組み付け工程(ステップS1)において作製されたリチウムイオン二次電池100を、押圧治具30,40で挟んで拘束状態にする(図6参照)。具体的には、図6に示すように、電池ケース180の幅広側面180b,180cを押圧治具30,40で押圧するように、押圧治具30,40でリチウムイオン二次電池100を挟んで、リチウムイオン二次電池100を拘束状態にする。詳細には、電池ケース180の幅広側面180b側に配置した押圧治具30と、幅広側面180c側に配置した押圧治具40とを、円柱状のロッド51とナット53とを用いて締結することで、押圧治具30,40でリチウムイオン二次電池100を挟み、電池ケース180の幅広側面180b,180cを押圧治具30,40で押圧する。これにより、電池ケース180に対し、所定の荷重(例えば、400〜800kgf)をかけた状態にする。
なお、押圧治具30は、図7に示すように、金属製の押圧本体部35と、樹脂製の密着押圧プレート36とを有している。押圧治具40は、金属製の押圧本体部45と樹脂製の密着押圧プレート46とを有している。密着押圧プレート36,46は、断面が櫛歯形状をなしている(図7参照)。
次に、ステップS3(初期充電工程)に進み(図5参照)、押圧治具30,40で拘束した状態(図6に示す状態)のリチウムイオン二次電池100を初期充電する。詳細には、1C(5A)の定電流で、電池電圧値が所定の充電終止電圧値Vaに至るまで充電し、その後、電池電圧値をVaに保持しつつ充電を行い、充電電流値が0.1Aに低下した時点で初期充電を終了する。この初期充電により、リチウムイオン二次電池100を活性化させることができる。また、負極活物質127の表面にSEI(被膜)を形成することができる。
なお、充電終止電圧値Vaは、例えば、4.1V(SOC100%のときの電池電圧値に相当する)に設定する。ここで、SOCは、State Of Charge(充電状態、充電率)の略である。
また、1Cは、定格容量値(公称容量値)の容量を有する電池を定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値である。リチウムイオン二次電池100の定格容量(公称容量)は5.0Ahであるので、1C=5.0Aとなる。
次いで、ステップS4(エージング工程)に進み、初期充電(ステップS3の処理)を終えた拘束状態(図6に示す状態)のリチウムイオン二次電池100(電池電圧値はVaになっている)を、所定の温度(例えば、50℃)で、一定時間(例えば、15時間)安置してエージングする。
ところで、組み付け工程(ステップS1)において、電極体110内に金属粉(Cu粉など)などが誤って混入してしまうことがある。このような電池では、エージング工程において、金属粉由来のデンドライトが発生し、内部短絡が生じる(セパレータ150によって電気的に絶縁されている正極板130と負極板120とが、デンドライトを通じて電気的に接続する)ことがある。このため、後述するステップS5(第1自己放電工程)において、内部短絡が生じた電池を検出し、出荷しないようにしている(不良品として取り除く)。
ステップS5(第1自己放電工程)では、エージング(ステップS4の処理)を終えた拘束状態(図6に示す状態)のリチウムイオン二次電池100を、25℃の温度環境下で、所定期間(例えば、5日間)放置することにより自己放電させる。
なお、ステップS5(第1自己放電工程)では、リチウムイオン二次電池100の放置を開始するときの電池電圧値(放置開始電圧値Vb)と、所定期間の放置を終えたときの電池電圧値(放置終了電圧値Vc)とを測定する。
さらに、ステップS5(第1自己放電工程)では、放置開始電圧値Vbから放置終了電圧値Vcを差し引いた電池電圧差ΔVbc(=Vb−Vc)を算出し、電池電圧差ΔVbcが、所定の閾値Tbc以上であるか否かを判定する。電池電圧差ΔVbcが閾値Tbc以上である場合、当該電池100には内部短絡が生じていると判定する。
内部短絡が生じている電池では、内部短絡が生じていない電池(正常な電池)に比べて、放置による自己放電量が大きくなるので、電池電圧値が小さくなり、放置前後の電池電圧差ΔVbcも大きくなる。従って、放置前後の電池電圧差ΔVbcに基づいて、電池に内部短絡が生じているか否かを判断することできる。そこで、ステップS5(第1自己放電工程)では、電池電圧差ΔVbcが所定の閾値Tbc以上であるか否かによって、リチウムイオン二次電池100に内部短絡が生じているか否かを判定する。内部短絡が生じていると判定された電池は、不良品として取り除かれる(例えば、廃棄される)。
なお、閾値Tbcは、例えば、予め、内部短絡が生じている電池と生じていない電池とについて、それぞれの電池電圧差ΔVbcを調査しておき、両電池の電池電圧差ΔVbcの間の値とすれば良い。
また、ステップS5(第1自己放電工程)において電池100を放置する期間(所定期間)は、1〜7日間の範囲内の期間(1日以上7日以内)とするのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。
次に、ステップS6(放電量測定工程)に進み、ステップS5において内部短絡が生じていない(正常である)と判定されたリチウムイオン二次電池100について、その電池電圧値が所定の放電終止電圧値Veに至るまで強制的に放電させる。例えば、公知の充放電装置を用いて、1C(5A)の定電流で、電池100の電池電圧値が放電終止電圧値Veに至るまで、電池100を放電させる。さらに、その放電期間中に、電池電圧値が所定の測定開始電圧値Vdから放電終止電圧値Veに至るまでの間の電池100の放電電気量Qdeを測定する。その後、放電電気量Qdeが所定の閾値Tdeより小さいか否かを判定し、放電電気量Qdeが閾値Tdeより小さい電池は、不良品として取り除かれる(例えば、廃棄される)。
なお、ステップS6(放電量測定工程)では、測定開始電圧値Vdを、第1自己放電工程における放置終了電圧値Vc以下の値に設定している。さらに、放電終止電圧値Veを、測定開始電圧値Vdよりも小さい値に設定している。また、本実施形態では、放電終止電圧値Veを3.55V(SOC30%のときの電池電圧値に相当する)に設定している。但し、放電終止電圧値Veの値は、3.55Vに限定されるものではない。
また、ステップS6(放電量測定工程)でも、リチウムイオン二次電池100は、押圧治具30,40で拘束した状態(図6に示す状態)のままである。
さらに、本実施形態では、第1自己放電工程(ステップS5)における放置開始電圧値Vbから、放電量測定工程(ステップS6)における放電終止電圧値Veを差し引いた電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)が、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにする。すなわち、電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)を、0.25V以上0.55V以下の範囲内の値とする。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。
0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにするには、例えば、ステップS5(第1自己放電工程)において、電池100の放置を開始する前に、電池100について充電または放電を行うことで、電池100の電池電圧値を調整すれば良い。具体的には、電池100の電池電圧を、予め設定している放電終止電圧値Ve(3.55V)よりも0.25〜0.55Vだけ高い電池電圧値(これが放置開始電圧値Vbとなる)に調整することで、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすことができる。但し、この場合、ステップS5(第1自己放電工程)の処理を終えた電池100について、充放電することなくそのままの状態で、ステップS6(放電量測定工程)における放電を開始するようにする。
また、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすように、ステップS3(初期充電工程)での充電終止電圧値Vaの値を設定するようにしても良い。具体的には、例えば、ステップS4(エージング工程)において、50℃の温度で15時間安置してエージング処理する場合、そのエージング処理の間に電池電圧値は約0.04V低下することがわかっている。従って、ステップS3(初期充電工程)での充電終止電圧値Vaの値を、予め設定している放電終止電圧値Veの値(3.55V)よりも0.29〜0.59Vだけ高い電池電圧値に設定することで、放置開始電圧値Vbが放電終止電圧値Ve(3.55V)よりも0.25〜0.55Vだけ高い値になる。これにより、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすことができる。但し、この場合、エージング(ステップS4の処理)を終えた電池100について、充放電することなくそのままの状態で、ステップS5(第1自己放電工程)における所定期間の放置を開始するようにする。さらに、ステップS5(第1自己放電工程)の処理を終えた電池100について、充放電することなくそのままの状態で、ステップS6(放電量測定工程)における放電を開始するようにする。
次いで、ステップS7(内部抵抗測定工程)に進み、放電量測定工程(ステップS6)を終えた拘束状態(図6に示す状態)のリチウムイオン二次電池100について、その内部抵抗(IV抵抗)を測定する。具体的には、リチウムイオン二次電池100を充電して、その電池電圧値を3.6V(SOC40%)にする。その後、このリチウムイオン二次電池100を、20Aの定電流で4秒間だけ放電させ、放電終了時(終了した瞬間)の電池電圧値Vgを測定する。次いで、放電により変化した電池電圧変化量ΔV(=3.6−Vg)を電流値20Aで除した値(=ΔV/20)を、IV抵抗値(内部抵抗値)として取得する。IV抵抗値が許容範囲から外れている電池は、不良品として取り除かれる(例えば、廃棄される)。
その後、ステップS8(拘束解除工程)に進み、内部抵抗測定工程(ステップS7)を終えたリチウムイオン二次電池100の拘束状態を解除する。具体的には、リチウムイオン二次電池100を挟んで押圧していた押圧治具30,40を取り外す。
次に、ステップS9(電池列拘束工程)において、拘束解除工程(ステップS8)を終えたリチウムイオン二次電池100を複数用意し、これらの電池をまとめて拘束状態にする。具体的には、まず、拘束解除工程(ステップS8)を終えたリチウムイオン二次電池100を複数(例えば、20個)用意する。その後、例えば、図7に示すように、これらのリチウムイオン二次電池100を一列に列置して、電池列200にする。さらに、電池列200を、その両端側(図7において左右端側)から押圧治具30,40で挟んで拘束状態にする。なお、図7に示す例では、列置方向に隣り合う電池100について、電池ケース180の幅広側面180b,180cを反対方向に向けて一列に列置して、電池列200にしている。
詳細には、列置方向(図7において左右方向)に隣り合うリチウムイオン二次電池100の間に密着押圧プレート36を配置し、電池列200の一端(図7において右端)に位置する電池ケース180の幅広側面180c側(図7において右端)に押圧治具30を配置し、電池列200の他端(図7において左端)に位置する電池ケース180の幅広側面180c側(図7において左端)に押圧治具40を配置する。この状態で、押圧治具30と押圧治具40とを、円柱状のロッド52及びナット53とを用いて締結することで、押圧治具30,40で電池列200を挟み、電池列を構成する各電池100の電池ケース180の幅広側面180b,180cを押圧治具30,40で押圧する。これにより、電池列200に対し、所定の荷重(電池拘束工程より大きな荷重、例えば2000〜3000kgf)をかけた状態にする。
なお、上記の例では、電池列を1列にした場合について説明したが、電池列は複数列(例えば、10個の電池を1列に並べた電池列を2列とする)であっても良い。従って、複数列の電池列をまとめて拘束状態にするようにしても良い。
ところで、ステップS9(電池列拘束工程)において電池列200を拘束状態にすると、電池列200を構成する各々のリチウムイオン二次電池100の電極体110に大きな圧縮力がかかり、各々の電極体110が圧縮される。もし、電極体110内に金属異物が混入している場合(例えば、組み付け工程において誤って電極体110内に金属異物が混入し、その金属異物が未だ残っている場合)には、上述のように電極体110が圧縮されることで、金属異物がセパレータ150を貫通して、内部短絡が生じる(セパレータ150によって電気的に絶縁されている正極板130と負極板120とが、金属異物を通じて電気的に接続する)ことがある。このため、後述するステップS10(第2自己放電工程)において、内部短絡が生じた電池を検出し、出荷しないようにしている(不良品として取り除く)。
ステップS10(第2自己放電工程)では、拘束状態(図7に示す状態)の電池列200を、25℃の温度環境下で放置することにより、電池列200をなす各々のリチウムイオン二次電池100を自己放電させる。さらに、ステップS10(第2自己放電工程)では、自己放電させたときの各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧の変化に基づいて、各々のリチウムイオン二次電池100について、内部短絡しているか否かを判定する。
但し、ステップS10(第2自己放電工程)では、電池列200の放置を開始してから各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が上昇する場合は、電池電圧値の上昇期間が経過した後から規定期間(例えば3日間)、拘束状態の電池列200を放置する。一方、電池列200の放置を開始してから各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が上昇することなく低下する場合は、電池列200の放置を開始してから上記規定期間(例えば3日間)、拘束状態の電池列200を放置する。
さらに、ステップS10(第2自己放電工程)では、電池列200を上記規定期間(例えば3日間)放置する直前の各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値Vhと、電池列200を上記規定期間(例えば3日間)放置した直後の電池電圧値Viとを測定し、その電池電圧差ΔVhi(=Vh−Vi)を算出する。
内部短絡が生じている電池では、内部短絡が生じていない電池(正常な電池)に比べて、放置による自己放電量が大きくなるので、電池電圧値が小さくなり、上記規定期間の放置前後の電池電圧差ΔVhiも大きくなる。従って、電池電圧差ΔVhiに基づいて、電池に内部短絡が生じているか否かを判断することできる。
そこで、ステップS10(第2自己放電工程)では、電池列200を構成する各々のリチウムイオン二次電池100について、電池電圧差ΔVhiが所定の閾値Thi以上であるか否かによって、内部短絡が生じているか否かを判定する。電池電圧差ΔVhiが所定の閾値Thi以上である電池100は、内部短絡が生じていると判定され、不良品として取り除かれる(例えば、廃棄される)。
なお、閾値Thiは、例えば、予め、内部短絡が生じている電池と生じていない電池とについて、それぞれの電池電圧差ΔVhiを調査しておき、両電池の電池電圧差ΔVhiの間の値とすれば良い。
このように、自己放電により確実に電池電圧値が低下する規定期間(例えば3日間)、電池列200をなす各々のリチウムイオン二次電池100を放置して、この規定期間前後の各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧差ΔVhiに基づいて、各々のリチウムイオン二次電池100について内部短絡しているか否かを判定することで、適切な内部短絡判定を行うことができる。
なお、ステップS10(第2自己放電工程)においてリチウムイオン二次電池100の電池電圧値が上昇するか否か、電池電圧値が上昇する場合の電池電圧上昇期間の長さ、及び、内部短絡の有無を適切に判定できる規定期間の長さは、予め、放置試験により把握しておく。具体的には、ステップS10(第2自己放電工程)と同一条件で、内部短絡が生じている電池100と生じていない電池100とを含む電池列200を放置し、放置期間中、各々の電池100の電池電圧値を測定する。この測定結果(後述する図9参照)に基づいて、ステップS10(第2自己放電工程)における上記規定期間の放置を開始する時(電池電圧値Vhを測定する時)、内部短絡の有無を適切に判別できる所定期間の長さ、上記規定期間の放置を終了する時(電池電圧値Viを測定する時)、閾値Thiの値を、予め決定しておく。なお、これらの値を決定する方法については、後に、図9を用いて具体的に説明する。
ステップS10(第2自己放電工程)において、電池列200を構成する電池100のいずれについても内部短絡が発生していないと判定された場合、上記拘束状態のまま、組電池300(図7参照)として出荷される。組電池300は、図7に示すように、電池列200を、その両端側(図7において左右端側)から押圧治具30,40で挟んで拘束状態にしたものである。
一方、ステップS10(第2自己放電工程)において、電池列200を構成する電池100のいずれかに内部短絡が発生していると判定された場合は、一旦拘束状態を解除して、内部短絡している電池100を取り除く。そして、ステップS10(第2自己放電工程)を終えた他の電池列200から、内部短絡していないと判定された電池100を取り出し、この電池100を、上記内部短絡している電池100に代えて配置する。このようにして、内部短絡が発生していないと判定された電池100のみで電池列200を構成し、その後、ステップS9(電池列拘束工程)と同様にしてこの電池列200を拘束状態にして、組電池300(図7参照)として出荷する。
本実施形態の電池100は、組電池300として(組電池300の状態で)使用される。この組電池300は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源として使用される。
(実施例1)
本実施例1では、次のようにして、リチウムイオン二次電池100を製造する。
まず、ステップS1(組み付け工程)において、前述のようにして、電池ケース180内に電極体110と電解液160と収容した電池を作製する。
なお、本実施例1では、正極板130の炭素層139の厚みを2μmとする。
また、正極活物質137として、Xの値が1.08であるLiXMO2 を用いる。すなわち、正極活物質137として、Li1.08MO2 を用いる。詳細には、正極活物質137として、Li1.08Ni0.8Co0.15Al0.052 を用いる。このように、本実施例1では、Li1.08MO2 の「M」が、主成分であるNiの他にCoとAlを含むものを、正極活物質137として用いる。
また、負極活物質127として、非晶質炭素の割合(非晶質炭素含有率)が6wt%であり、且つ、負極活物質粒子のBET比表面積が3.3m2/gである負極活物質を用いる。また、負極板120の金属酸化物絶縁層129の厚みを4μmとする。また、正極容量と負極容量との容量比(負極容量/正極容量)を、1.5とする。また、電解液160中のジフルオロリン酸塩の濃度を、0.038mol/Lとする。
次いで、前述のように、ステップS2〜S9の処理を行う。
なお、本実施例1では、ステップS3(初期充電工程)における充電終止電圧値Vaの値を、4.1Vに設定する。また、ステップS4(エージング工程)において、リチウムイオン二次電池100を、50℃の環境温度下で15時間安置して、エージングを行う。さらに、ステップS5(第1自己放電工程)では、エージング(ステップS4の処理)を終えた電池100について、充放電することなくそのままの状態で、放置を開始するようにする。さらに、ステップS6(放電量測定工程)では、ステップS5(第1自己放電工程)の処理を終えた電池100について、充放電することなくそのままの状態で、放電を開始するようにする。
このようにすることで、第1自己放電工程(ステップS5)における放置開始電圧値Vbから、放電量測定工程(ステップS6)における放電終止電圧値Veを差し引いた電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)について、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにすることができる。具体的には、ステップS3(初期充電工程)における充電終止電圧値Vaを4.1Vにして、ステップS4(エージング工程)において、電池100を50℃の環境温度下で15時間安置すると、電池電圧値は約4.06Vになる。従って、放置開始電圧値Vbの値が4.06Vとなる。放電終止電圧値Veの値は3.55Vに設定しているので、電圧差分値ΔVbe(=Vb−Ve)の値は、0.51V(=4.06V−3.55V)となる。
また、本実施例1では、ステップS5(第1自己放電工程)において電池100を放置する期間(所定期間)を、5日間とする。後述するように、放置期間を5日間とすることで、内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができる。
ところで、ステップS5(第1自己放電工程)では、放置開始電圧値Vbから放置終了電圧値Vcを差し引いた電池電圧差ΔVbc(=Vb−Vc)を算出し、電池電圧差ΔVbcが、所定の閾値Tbc以上であるか否かを判定する。電池電圧差ΔVbcが閾値Tbc以上である場合、当該電池100には内部短絡が生じていると判定する。後述するように、閾値Tbcの値を、例えば、13mVに設定することで、内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができる。
その後、前述のように、ステップS10(第2自己放電工程)の処理を行う。
但し、本実施例1の電池(上述のようにして組み付け工程において作製した電池)は、後述するように、その電池電圧値が、電池列200の放置を開始してから2日間近く(最大で2日間)上昇することがわかっている。このため、本実施例1のステップS10(第2自己放電工程)では、電池列200の放置を開始してから2日後に、各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値Vhを測定し、その後、規定期間、電池列200を放置して、規定期間経過した時に、各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値Viを測定する。
その後、各々のリチウムイオン二次電池100について、電池電圧値Vhと電池電圧値Viとの差分値である電池電圧差ΔVhi(=Vh−Vi)を算出し、電池電圧差ΔVhiが閾値Thi以上であるか否かを判定する。電池電圧差ΔVhiが閾値Thi以上であるリチウムイオン二次電池100は、内部短絡が生じていると判定する。一方、電池電圧差ΔVhiが閾値Thi未満であるリチウムイオン二次電池100については、内部短絡が生じていないと判定する。
なお、本実施例1では、上記「規定期間」を3日間としている。後述するように、放置試験の結果から、電池列200の放置を開始してから2日間経過した後、さらに3日間放置することで、電池電圧差ΔVhiに基づいて、適切に、内部短絡の有無を判別できることを把握しているからである。また、閾値Thiは、例えば、0.5mVとすれば良い。後述するように、放置試験の結果から、内部短絡が生じていない電池100では、ΔVhiの値が約0.3mVとなり、内部短絡が生じている電池100では、ΔVhiの値が約0.8mVとなることがわかっている。従って、閾値Thiをこれらの値の間の値とすることで、適切に、内部短絡の有無を判別できる。
(第1放置試験)
ここで、ステップS5(第1自己放電工程)において、内部短絡が生じている電池を精度良く検出するための条件(放置日数、閾値Tbcの値)を調査するために行った放置試験について説明する。
具体的には、まず、実施例1と同等の条件で製造した電池100(内部短絡の生じていない正常な電池)を、60個用意した。このうち、30個の電池100について、正極端子部191Aと負極端子部192Aとの間に300kΩの抵抗素子を接続することで、内部短絡を模擬した電池(以下、内部短絡電池という)を製作した。その後、ステップS5(第1自己放電工程)と同一条件で、内部短絡の生じていない30個の電池100(以下、正常電池という)及び30個の内部短絡電池を放置し、放置期間1日毎に、電池電圧差ΔVbcを算出した。この結果を図8に示す。
図8では、30個の正常電池のうち、電池電圧差ΔVbcが最小となった電池の測定結果を実線の曲線C1で示し、電池電圧差ΔVbcが最大となった電池の測定結果を実線の曲線C2で示している。残りの28個の電池100の測定結果を示す曲線は、図示を省略しているが、曲線C1とC2との間の領域(図8においてハッチングで示す領域)に存在する。
一方、30個の内部短絡電池のうち、電池電圧差ΔVbcが最小となった電池の測定結果を一点鎖線の曲線C3で示し、電池電圧差ΔVbcが最大となった電池の測定結果を一点鎖線の曲線C4で示している。残りの28個の内部短絡電池の測定結果を示す曲線は、図示を省略しているが、曲線C3とC4との間の領域(図8においてハッチングで示す領域)に存在する。
図8からわかるように、放置期間を1日未満とした場合、正常電池と内部短絡電池との間において、電池電圧差ΔVbcの値の違いがはっきりしない。詳細には、1日未満の放置期間では、正常電池の電池電圧差ΔVbcの範囲の一部が、内部短絡電池の電池電圧差ΔVbcの範囲の一部と重なり合う。電池電圧差ΔVbcの値が、この重なり合う部分の値である場合は、正常電池であるか内部短絡電池であるかの判断ができない。従って、放置期間を1日未満とした場合、電池電圧差ΔVbcに基づいて、正常電池と内部短絡電池とを、適切に識別することができない。
これに対し、放置期間を1日以上とした場合、正常電池と内部短絡電池との間において、電池電圧差ΔVbcの値の違いがはっきりする。詳細には、1日以上の放置期間では、正常電池の電池電圧差ΔVbcの範囲と、内部短絡電池の電池電圧差ΔVbcの範囲とが重なり合うことなく、明確に区別できる。
従って、ステップS5(第1自己放電工程)において、放置期間を1日以上とすることで、内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができるといえる。
また、実施例1では、ステップS5(第1自己放電工程)における放置期間を、5日間とする。この場合に、内部短絡が生じている電池を精度良く検出するための閾値Tbcの値について検討する。図8からわかるように、放置期間を5日間とした場合、正常電池の電池電圧差ΔVbcの最大値(曲線C2の値)は、約12mVになる。一方、内部短絡電池の電池電圧差ΔVbcの最小値は、約15mVになる。
従って、閾値Tbcを12〜15mVの範囲内の値(例えば、13mV)に設定することで、内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができるといえる。具体的には、ステップS5(第1自己放電工程)において、電池電圧差ΔVbcの値が閾値Tbc(13mV)以上である場合は、内部短絡が生じていると判断することができる。一方、電池電圧差ΔVbcの値が閾値Tbc(13mV)未満である場合は、内部短絡が生じていないと判断することができる。
(第2放置試験)
次に、実施例1のステップS10(第2自己放電工程)における各条件を決定するために行った放置試験の結果を、図9に示す。具体的には、実施例1の条件で、ステップS1〜S9までの処理を行い、内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100とを複数用意した。その後、ステップS10(第2自己放電工程)と同一条件で、内部短絡が生じている電池100と生じていない電池100とを含む電池列200を、11日間放置し、放置期間中、各々の電池100の電池電圧値を測定した。図9には、これらの測定結果のうち、2つの電池100(内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100)の測定結果を、放置開始時点の電池電圧値を基準にして、その変化量を示している。
なお、図9では、内部短絡が生じていない電池100の電池電圧変化量を○印で示し、内部短絡が生じている電池100の電池電圧変化量を△印で示している。なお、内部短絡が生じているか否かは、11日間の放置試験が終了した後、各々の電池100を分解して確認している。
図9に示すように、2つの電池100の電池電圧値は、電池列200の放置を開始してから2日間近く上昇している。他の電池100についても、ほぼ同様であり、放置開始からの電圧上昇期間は、最長でも2日間であることがわかった。
さらに、電圧上昇期間(2日間)が経過した後、内部短絡が生じている電池100は、内部短絡が生じていない電池100に比べて、電池電圧値が大きく低下してゆくことがわかる。そして、電圧上昇期間(2日間)の経過後、さらに3日間放置することで、内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100とでは、電圧上昇期間(2日間)経過時からの電池電圧変化量に、大きな差が生じることがわかる。
具体的には、内部短絡が生じていない電池100では、電圧上昇期間(2日間)が経過したときの電池電圧値と、その後さらに3日間放置したときの電池電圧値との差分値である電池電圧差ΔVhiが、約0.3mVとなった。一方、内部短絡が生じている電池100では、電池電圧差ΔVhiが約0.8mVとなり、内部短絡が生じていない電池100に比べて、かなり大きな値となった。電池電圧差ΔVhiにこれだけ大きな差が生じれば、電池電圧差ΔVhiに基づいて、適切に、内部短絡の有無を判別できる。従って、実施例1の第2自己放電工程)における「規定期間」を、3日間に設定することにした。
従って、実施例1のステップS10(第2自己放電工程)では、電池列200の放置を開始してから2日後に、各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値Vhを測定し、その後、3日間(規定期間)、電池列200を放置するようにして、その3日間(規定期間)が経過した時に、各々のリチウムイオン二次電池100の電池電圧値Viを測定することにした。
以上より、実施例1の製造方法によれば、ステップS10(第2自己放電工程)において、放置開始後の電池電圧上昇期間を2日以内(最大で2日間)と短くすることができるので、第2自己放電工程全体の期間を5日間と短くすることができる。
(電圧差分値ΔVbeの好ましい値)
次に、電圧差分値ΔVbeの好ましい値を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、電圧差分値ΔVbeの値のみを0.15V〜0.85Vの範囲内で異ならせて、10種類の電池100を作製した(図10参照)。詳細には、ステップS3(初期充電工程)における充電終止電圧値Vaの値を、3.74V〜4.44Vの範囲内の異なる値に設定することで、電圧差分値ΔVbeの値を0.15V〜0.85Vの範囲内で異ならせた。
例えば、ステップS3(初期充電工程)における充電終止電圧値Vaの値を3.74Vに設定した場合、ステップS4(エージング工程)において電池電圧値が3.7Vにまで低下する。従って、ステップS5(第1自己放電工程)における放置開始電圧値Vbが、3.7Vとなる。ステップS6(放電量測定工程)における放電終止電圧値Veは、3.55Vであるので、電圧差分値ΔVbeの値は0.15V(=3.7V−3.55V)となる。
その後、前述の第2放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、電圧差分値ΔVbeの値と電池電圧上昇期間との関係として、図10に○印で示す。
また、上述の10種類の電池100について、それぞれ、内部抵抗(IV抵抗)を測定した。具体的には、各々の電池100を充電(または放電)して、各々の電池電圧値を3.6V(SOC40%)にする。その後、各々の電池100について、25℃の温度環境下で、100Aの定電流で10秒間だけ放電させ、放電終了時(終了した瞬間)の電池電圧値Vkを測定する。次いで、放電により変化した電池電圧変化量ΔV(=3.6−Vk)を電流値100Aで除した値(=ΔV/100)を、IV抵抗値(内部抵抗値)として取得した。これらの結果を、電圧差分値ΔVbeの値と電池内部抵抗(IV抵抗)との関係として、図10に△印で示す。
図10からわかるように、電圧差分値ΔVbeの値を小さくしたほうが、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができる。しかしながら、電圧差分値ΔVbeの値を小さくし過ぎると、電池の内部抵抗が大きくなる。内部抵抗が大きい電池は好ましくない。以上の結果より、電圧差分値ΔVbeの値を、0.25V以上0.55V以下の範囲内の値とする(0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにする)ことで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮する(2日以内にする)ことができ、且つ、電池内部抵抗も小さくすることができるといえる。
特に、電圧差分値ΔVbeの値を、0.25V以上0.45V以下の範囲内の値とする(0.25V≦ΔVbe≦0.45Vの関係を満たすようにする)ことで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を、極めて短くする(電圧上昇期間を0にする)ことができる。換言すれば、0.25V≦ΔVbe≦0.45Vの関係を満たすようにすることで、第2自己放電工程において、電池列の放置を開始してから電池電圧値が上昇することなく低下するようになる。これにより、第2自己放電工程にかかる期間を極めて短くすることができる。
一方、0.45V<ΔVbe≦0.55Vの関係を満たすようにすることで、特に、電池の内部抵抗を小さくすることができる(図10の△印を参照)。これにより、出力特性に優れた電池100を得ることができる。
(第1自己放電工程における放置期間の好ましい値)
次に、第1自己放電工程(ステップS5)における放置期間の好ましい値(日数)を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、第1自己放電工程(ステップS5)における電池100の放置期間のみを異ならせて、10種類の電池100を作製した(図11参照)。その後、前述の第2放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、放置期間と電池電圧上昇期間との関係として、図11に○印で示す。
また、図8に基づいて、図11に示すそれぞれの放置期間について、第1自己放電工程(ステップS5)における内部短絡検出率(%)を求めた。この内部短絡検出率(%)は、第1自己放電工程(ステップS5)において、放置前後の電池電圧差ΔVbc(=放置開始電圧値Vb−放置終了電圧値Vc)に基づいて、内部短絡が生じている電池を検出できる確率に相当する。具体的には、内部短絡電池の電池電圧差ΔVbcの範囲(図8において曲線C3とC4とで挟まれたハッチング領域の範囲)のうち、正常電池の電池電圧差ΔVbcの範囲(図8において曲線C1とC2とで挟まれたハッチング領域の範囲)に含まれない範囲が占める割合を、内部短絡検出率(%)としている。
その結果を、第1自己放電工程における放置期間と内部短絡検出率との関係として、図11に△印で示す。
図11からわかるように、第1自己放電工程における放置期間を短くしたほうが、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができる。しかしながら、第1自己放電工程における放置期間を短くし過ぎると、内部短絡検出率が低下する。詳細には、第1自己放電工程における放置期間を1日未満とすると、内部短絡検出率が100%未満となり、内部短絡している電池を適切に検出することができない虞がある。換言すれば、第1自己放電工程における放置期間を1日以上とすることで、内部短絡検出率が100%となり、内部短絡している電池を適切に検出することができる。
以上の結果より、第1自己放電工程において、電池を放置する期間(所定期間)を、1〜7日間の範囲内の期間(1日以上7日以内)とすることで、第1自己放電工程において内部短絡が生じている電池を精度良く検出することができ、且つ、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮する(2.5日以内にする)ことができるといえる。
特に、第1自己放電工程における放置期間を、1〜4日間の範囲内の期間(1日以上4日以内)とすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を、極めて短くする(電圧上昇期間を0にする)ことができる(図11参照)。換言すれば、第1自己放電工程における放置期間を1日以上4日以内の期間とすることで、第2自己放電工程において、電池列の放置を開始してから電池電圧値が上昇することなく低下するようになる。これにより、第2自己放電工程にかかる期間を極めて短くすることができる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、ステップS2(電池拘束工程)及びステップS8(拘束解除工程)を設けたが、これらの工程を設けることなく、リチウムイオン二次電池を製造するようにしても良い。すなわち、組み付け工程(ステップS1)において作製されたリチウムイオン二次電池100を押圧治具30,40で挟んで拘束状態にすることなく、ステップS3〜S7の処理を行うようにしても良い。
30,40 押圧治具
100 リチウムイオン二次電池(電池)
110 電極体
120 負極板
121 負極活物質層
127 負極活物質
128 負極集電板
130 正極板
131 正極活物質層
137 正極活物質
138 正極集電板
150 セパレータ
160 電解液
180 電池ケース
200 電池列

Claims (4)

  1. 正極活物質及び負極活物質を有する電極体と、LiPF 2 2 を含有する電解液とを、電池ケース内に収容した電池を作製する組み付け工程と、
    上記組み付け工程を終えた上記電池を初期充電する初期充電工程と、
    上記初期充電工程を終えた上記電池を、所定の温度で一定時間安置してエージングするエージング工程と、
    上記エージング工程を終えた上記電池を、所定期間放置することにより自己放電させる第1自己放電工程と、
    上記第1自己放電工程を終えた上記電池を、その電池電圧値が所定の放電終止電圧値に至るまで強制的に放電させつつ、上記電池電圧値が所定の測定開始電圧値から上記放電終止電圧値に至るまでの間の上記電池の放電電気量を測定する放電量測定工程と、
    上記放電量測定工程を終えた上記電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定工程と、
    上記内部抵抗測定工程を終えた上記電池を複数用意し、これらの電池を一列または複数列に列置して1または複数列の電池列にすると共に、上記電池列を、その両端側から押圧治具で挟んで拘束状態にする電池列拘束工程と、
    上記拘束状態の上記電池列を放置することにより、上記電池列をなす各々の上記電池を自己放電させる第2自己放電工程と、を備える
    リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    上記正極活物質は、Li X MO 2 (Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むものである、1.04≦X≦1.15)であり、
    上記負極活物質は、黒鉛と非晶質炭素とからなり、
    上記負極活物質の粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m 2 /gの範囲内であり、
    上記電解液中の上記LiPF 2 2 の濃度が、0.01〜0.076mol/Lの範囲内であり、
    上記第1自己放電工程では、上記電池の放置を開始するときの電池電圧値である放置開始電圧値Vbから、上記所定期間の放置を終えたときの電池電圧値である放置終了電圧値Vcを差し引いた電池電圧差ΔVbcが、所定の閾値以上である場合、当該電池に内部短絡が生じていると判定し、
    上記第2自己放電工程は、
    上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇する場合は、上記電池電圧値の上昇期間が経過した後から規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置する一方、
    上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇することなく低下する場合は、上記電池列の放置を開始してから上記規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置して、
    上記電池列をなす上記電池を自己放電させる工程であり、
    当該製造方法は、下記の(1)及び(2)の少なくともいずれかの条件を満たす
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
    (1)上記第1自己放電工程では、上記所定期間を1〜7日間の範囲内の期間とする。
    (2)上記第1自己放電工程における上記放置開始電圧値Vbから、上記放電量測定工程における上記放電終止電圧値Veを差し引いた電圧差分値ΔVbeが、0.25V≦ΔVbe≦0.55Vの関係を満たす。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記(1)の条件について、前記所定期間を1〜4日間の範囲内の期間とする
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記(2)の条件について、0.25V≦ΔVbe≦0.45Vの関係を満たす
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記組み付け工程の後、前記初期充電工程の前に、上記組み付け工程を終えた前記電池を、押圧治具で挟んで拘束状態にする電池拘束工程を備え、
    前記内部抵抗測定工程の後、前記電池列拘束工程の前に、上記電池拘束工程において行った上記電池の拘束を解除する拘束解除工程を備え、
    前記初期充電工程、前記エージング工程、前記第1自己放電工程、前記放電量測定工程、及び上記内部抵抗測定工程では、いずれも、前記電池は上記拘束状態である
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
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