(第1実施形態)
以下、本発明を流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という)に具体化した第1実施形態を図1〜図13を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
図1に示すように、プリンター11は、媒体としての用紙Pを搬送する搬送ユニット12と、用紙Pに印刷処理を施すラインヘッド13と、ラインヘッド13に流体としてのインクを供給するインク供給ユニット14と、メンテナンスユニット15と、制御装置100(図11参照)とを備えている。
搬送ユニット12は、一対の給紙ローラー16と、無端状の搬送ベルト17と、駆動ローラー18と、従動ローラー19と、駆動ローラー18に接続された駆動モーター20と、一対の排紙ローラー21とを備えている。搬送ベルト17は、駆動ローラー18及び従動ローラー19に巻き掛けられ、駆動モーター20の駆動によって駆動ローラー18が図1における時計回り方向に回転すると周回移動する。そして、給紙ローラー16、搬送ベルト17及び排紙ローラー21によって用紙Pを搬送方向Xに沿って搬送するようになっている。なお、搬送ベルト17は、少なくとも用紙Pの幅方向Y(前後方向)の両端を支持するように複数本(例えば2本)設けられているとともに、前後方向に並ぶ搬送ベルト17の間にメンテナンスユニット15が配置されている。
ラインヘッド13は、基体部23と、基体部23に支持された流体噴射ヘッド24とを備えている。図2に示すように、流体噴射ヘッド24は、用紙Pの幅方向Yに沿って延びる2列のラインを形成するように、千鳥状に配列されている。そして、搬送方向Xにおける上流側(左側)に位置する1列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される一方、搬送方向Xにおける下流側(右側)に位置する2列目は、幅方向Yに沿って並ぶ4つの流体噴射ヘッド24から構成される。
各流体噴射ヘッド24には、インクを噴射するためのノズル25が複数設けられている。そして、流体噴射ヘッド24の下面(底面)からなるノズル形成面24aには、複数のノズル25のノズル開口25aによって幅方向Yに沿って延びる2列のノズル列Nが形成されている。図2の部分拡大図に示すように、2列のノズル列Nは、幅方向Yに沿う配置間隔が1/2画素ずつずれるように、ノズル開口25aが千鳥状に配列されている。そして、1列目と2列目の流体噴射ヘッド24は、搬送方向Xに投影したときに両端部の少なくとも1個のノズル25が重なるか、両端のノズル25がノズルピッチを開けて連続するようになっている。
このため、プリンター11では、ラインヘッド13を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能となっている。なお、本実施形態においては、1つの流体噴射ヘッド24が用紙1.1インチに対応し、8つの流体噴射ヘッド24でA4サイズ(縦297mm×横210mm)の横幅(約8.3インチ)をカバーするようになっている。また、1本のノズル列Nは330個のノズル25から構成される。したがって、1つのラインヘッド13は、幅方向Yに沿って並ぶ8(流体噴射ヘッド24の数)×2(ノズル列Nの数)×330(ノズル列Nを構成するノズル25の数)=5280個のノズル25を有している。
なお、ラインヘッド13及びインク供給ユニット14は、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のカラー印刷を行う場合には、色毎に4組設けられる(図1及び図2には簡略化のために1つずつ図示している)。そして、4つのラインヘッド13から、搬送される用紙Pに4色のインク滴を重ね打つことにより、解像度600dpiでの印刷処理が可能となっている。
図1に示すように、インク供給ユニット14は、インクを収容した流体供給源及び流体収容体としてのインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から流体噴射ヘッド24側に向けてインクを供給する流体供給路を構成するインク供給チューブ27と、インクを加圧供給するための加圧ポンプ28とを備えている。なお、インクカートリッジ26は図示しないカートリッジホルダーに着脱可能に装着されることで、インク供給チューブ27に接続される。また、インク供給チューブ27の途中位置には、圧力付与機構29と開閉弁95とが設けられている。なお、開閉弁95は任意に開閉操作を行うことができる電磁弁であり、圧力付与機構29のすぐ上流側に設けられる。
ラインヘッド13の基体部23内には、インク供給チューブ27を通じてインクカートリッジ26から供給されるインクを一時的に貯留する共通インク室30が設けられている。共通インク室30には、各流体噴射ヘッド24に対応する複数の分岐流路31が接続されている。そして、共通インク室30内に貯留されたインクは、分岐流路31を通じて複数の流体噴射ヘッド24に供給される。
図3に示すように、流体噴射ヘッド24は、上下方向に積層された流路形成部材32、振動板33、流路形成部材34及びノズルプレート35を備えている。流路形成部材32には共通インク室30に連通する分岐流路31と、リザーバー36と、収容室37とが形成されている。振動板33には、リザーバー36と対応する位置に連通孔38が設けられている。流路形成部材34には、連通孔38を通じてリザーバー36と連通するキャビティ39が形成されている。
また、振動板33の上面側には、キャビティ39の上方となる位置に圧電素子40が配設されている。そして、ノズルプレート35にはキャビティ39と連通するノズル25が形成されている。すなわち、共通インク室30から分岐流路31を通じて各流体噴射ヘッド24に分配されたインクはリザーバー36に貯留され、リザーバー36から連通孔38及びキャビティ39を通じて各ノズル25に供給される。
振動板33は上下方向に振動可能に貼り付けられているとともに、圧電素子40は駆動信号を受けて伸縮することで、振動板33を上下方向に振動させるようになっている。また、振動板33が上下方向に振動すると、キャビティ39の容積が拡縮するようになっている。そして、キャビティ39の容積が縮小されると、キャビティ39内のインクがノズル25からインク滴Fbとして噴射されるようになっている。なお、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aはノズルプレート35の下面(底面)によって構成される態様となっている。また、本実施形態において、ノズル開口25aは直径約20マイクロメートル、ノズルプレート35の上下方向の厚さは約100マイクロメートルとなっている。
ここで、インクカートリッジ26はラインヘッド13よりも低い位置に設けられている。そのため、流体噴射ヘッド24内の領域(インク流路)は、水頭差によって−1kPa程度の負圧となっている。この負圧は、ノズル25からインクが垂れ落ちることを防止するとともに、ノズル25内に凹状のメニスカスを形成して噴射動作を安定させるためのものである。
次に、メンテナンスユニット15について説明する。
メンテナンスユニット15は、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aをキャッピングするためのキャッピング装置41(図4参照)と、ノズル形成面24aをワイピングするためのワイピング装置42(図5参照)と、ノズル検査装置101(図11参照)とを備えている。なお、キャッピング装置41及びワイピング装置42は流体噴射ヘッド24毎に設けてもよいし、複数の流体噴射ヘッド24を同時にキャッピングしたりワイピングしたりするようにしてもよい。
キャッピング装置41は、ノズル25の乾燥を防止するためのキャッピングに用いられる他、インクカートリッジ26内のインクをノズル25から吸引することで、気泡や増粘したインクなどを排出させる吸引クリーニングを実行する際に用いられる。さらに、キャッピング装置41は、インクカートリッジ26内のインクを加圧ポンプ28でノズル25から排出させる加圧クリーニングの際にも、ノズル25から排出されるインクを受容するために用いられる。以下、このようにインクカートリッジ26内のインクをインク供給チューブ27を介して供給しつつノズル開口25aから排出させるクリーニングを「インク供給クリーニング」という。
ワイピング装置42は、ノズル形成面24aを払拭して紙粉やインク等の付着物を除去したり、ノズル25のメニスカスを整えたりするためのワイピングを実行する際に用いられる。なお、インク供給クリーニング後には、排出されたインクがノズル形成面24aに付着したり、ノズル開口25aに凸状のメニスカスが形成されたりするため、インク供給クリーニングの直後にもワイピングを行うことがある。
また、ノズル検査装置101は、必要量のインクが噴射されない不良ノズルの有無を検査する。
まず、キャッピング装置41について説明する。
図4に示すように、キャッピング装置41は、有底四角箱状のキャップ43と、キャップ43を昇降させる昇降機構44と、吸引機構45とを備えている。キャップ43の周壁の上面全体には可撓性材料からなる四角枠状のシール部材46が設けられているとともに、キャップ43の底壁には排出管47が下方に向かって突設されている。
排出管47には、吸引機構45を構成する可撓性材料よりなる排出チューブ48の一端側が接続されている。排出チューブ48の他端側は廃インクタンク49内に挿入されている。また、廃インクタンク49内には、多孔質部材からなる廃インク吸収材50が収容されている。
キャップ43と廃インクタンク49との間には、吸引機構45を構成するチューブポンプ51が配設されている。チューブポンプ51は、円筒状のケース52と、平面視円形状をなすポンプホイル53と、ホイル軸54と、一対の押圧ローラー55とを有している。ポンプホイル53は、ケース52の軸心に設けられたホイル軸54を中心にケース52内に回動可能に収容されている。また、排出チューブ48の中間部は、ケース52の内周壁に沿うようにケース52内に収容されている。
ポンプホイル53には、円弧状をなす一対のローラー案内溝56がホイル軸54を挟んで対向するように形成されている。各ローラー案内溝56は、一端がポンプホイル53の内周側に位置する一方、他端がポンプホイル53の外周側に位置している。すなわち、両ローラー案内溝56は、一端から他端に向かって徐々にホイル軸54から遠ざかるように延びている。また、一対の押圧ローラー55は両ローラー案内溝56内に回動軸57を介して挿通支持されている。なお、両回動軸57は、それぞれ両ローラー案内溝56内を摺動自在になっている。
そして、ポンプホイル53を、正方向(図4に矢印で示す時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の他端側(ポンプホイル53の外周側)に往路移動し、排出チューブ48の中間部を上流側から下流側へ順次押し潰しながら回動する。この回動により、チューブポンプ51より上流側の排出チューブ48の内部が減圧される。
また、ポンプホイル53を逆方向(図4における反時計回り方向)に回動させると、押圧ローラー55がローラー案内溝56の一端側(ポンプホイル53の内周側)に復路移動する。この移動により、両押圧ローラー55がそれぞれ排出チューブ48の中間部に軽く接した状態となり、排出チューブ48の内部の減圧状態が解消される。
昇降機構44は、キャップ43に下方から当接するカム部材58と、カム部材58を回動させるためのモーター59と、動力伝達機構60とを備えている。そして、モーター59が正方向に駆動されると、動力伝達機構60を介してカム部材58が回動されて、キャップ43がノズル形成面24aに当接するようになっている。
したがって、キャップ43がノズル形成面24aに当接した状態でポンプホイル53が正方向に駆動されると、キャップ43とノズル形成面24aとで囲み形成された空間域Rに負圧が発生する。これにより、ノズル25からインクが排出される吸引クリーニングが実行される。なお、ポンプホイル53が逆方向に駆動されると空間域Rの負圧が解消されるので、その後に昇降機構44のモーター59が逆方向に駆動されると、キャップ43が下降して、用紙Pの搬送経路から退避する。
キャッピング装置41を用いた吸引クリーニングや加圧クリーニングの際には、開閉弁95を閉弁状態とした後にチューブポンプ51や加圧ポンプ28を駆動する。そして、インク流路内の圧力を高めた状態で開閉弁95を開弁状態とすることで、インクの流速を増し、気泡の排出性を向上させる。
次に、ワイピング装置42について説明する。
図5に示すように、ワイピング装置42は、ワイピング機構61と、ワイピング機構61を昇降させる昇降機構62とを備えている。
ワイピング機構61は、ホルダー63と、前後方向に沿って延びるようにホルダー63に架設されたリードスクリュー64と、リードスクリュー64を回転させるためのモーター65と、支持部材66と、ゴムなどの弾性体からなる板状のワイパー67とを備えている。ワイパー67は支持部材66上に立設される態様で支持されるとともに、支持部材66はリードスクリュー64に支持されている。また、支持部材66の上面側には、貯留凹部66aが形成されている。
昇降機構62はワイピング機構61のホルダー63に下方から当接するカム部材68と、カム部材68を回動させるためのモーター69と、動力伝達機構70とを備えている。そして、モーター69が正方向に駆動されると、動力伝達機構70を介してカム部材68が回動されて、ワイパー67がノズル形成面24aに当接する位置までワイピング機構61が上昇するようになっている。
また、モーター65が正方向に駆動されるとリードスクリュー64が正方向に回転し、支持部材66とともにワイパー67が前後方向に沿って移動する過程で、ノズル形成面24aに摺接する。これにより、ノズル形成面24aを払拭により清掃するワイピングが実行される。このとき、ノズル形成面24aから払拭されたインクや紙粉はワイパー67を伝って流下し、貯留凹部66aに貯留される。
次に、圧力付与機構29について説明する。圧力付与機構29は、インク供給チューブ27を介してインクカートリッジ26側からインクを供給することなく流体噴射ヘッド24内のインクをノズル開口25aから膨出した状態にさせる「インク非供給クリーニング」を実行するために用いられる。
図6に示すように、圧力付与機構29は、定形性を有する流路形成部材71を有している。流路形成部材71の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部72が設けられる一方、流路形成部材71の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部73が設けられる。また、流路形成部材71の上面側には、平面視円形状の凹部71aが形成されている。そして、接続部72内には、上流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流入路72aが形成されている。一方、接続部73内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部71a内とを連通させる流出路73aが形成されている。
流路形成部材71の上面側には、可撓性を有するフィルム部材74が凹部71aの開口を封止するように撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材74の外面側の略中央部には、凹部71aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板74aが固着されている。そして、フィルム部材74と凹部71aとによって、圧力室75が囲み形成されている。圧力室75は、流入路72a及び流出路73aを通じてインク供給チューブ27と連通することで、流体供給路の一部を構成する。
圧力室75内には、圧力室75の内容積を拡大する方向にフィルム部材74を付勢する付勢部材76が配設されている。付勢部材76は、例えばコイルばねや板ばねなどから構成することができる。また、押圧板74aの上方には、押圧板74aに当接するカム部材77が配置されている。カム部材77は回転軸78を介して支持されているとともに、モーター79の駆動に伴って回転軸78とともに回動するようになっている。
したがって、図6(a)に示す状態でモーター79を正方向に駆動するとカム部材77が付勢部材76の付勢力に抗して同図における反時計回り方向に回動する。これにより、図6(b)に示すようにフィルム部材74が圧力室75の内容積を減少させる方向に変位し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、図6(b)に示す状態でモーター79を逆方向に駆動すると、カム部材77が同図における時計回り方向に回動する。これにより、付勢部材76の付勢力でフィルム部材74が圧力室75の内容積を増加させる方向に変位し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
ここで、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングについて詳述する。
インク非供給クリーニングは、圧力付与機構29が加圧を行ってノズル25からインクを膨出させる加圧工程と、この加圧工程の後に、加圧に伴いノズル25からインクが膨出した状態において圧力付与機構29が減圧を行う減圧工程とから構成される。すなわち、加圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75のインクを一気に押し出すことによってノズル25内に圧力を伝播させ、図7(a)に示すようにノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがす。そして、図7(b)に示すようにノズル25からインクを膨出させることで、気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出す。
また、減圧工程では、圧力付与機構29が圧力室75の容積を増加させることで、圧力室75に押し出した分のインクを引き戻す。これにより、ノズル25からインク滴Fbが噴射したり落下(滴下)したりする前に、ノズル25から凸状に膨出した状態のインクを図7(c)に示すようノズル25内に回収する。なお、気泡が排出されるとノズル25内に気泡の容積分の空隙が生じるが、短時間静置すると毛管力によって共通インク室30のインクが図7(d)に示すようにノズル25内に補給される。
こうしたインク非供給クリーニングの加圧と減圧は、複数回繰り返して実施することで、排出されにくい気泡についても、徐々に外側に移動させることができる。例えば、複数回加圧と減圧を繰り返す場合には、ノズル25内だけでなく、流体噴射ヘッド24内や共通インク室30内にある気泡も排出させることができる。また、気泡の排出に伴ってノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返し行うことで、ノズル25の液面位置が徐々に揃えられる。
なお、減圧工程においては、加圧工程で減少させた容積を元に戻してもよいし、減圧のために増加させる容積を加圧のために減少させた容積よりも小さくしてもよい。例えば、加圧と減圧を複数回繰り返して共通インク室30内にある比較的大きな気泡が排出された場合には、ノズル25全体が空隙となるノズル抜けを生じる虞もある。こうしたノズル抜けが生じると、毛管力によるインクの補給がされにくいこともあるので、特に複数回加圧と減圧を繰り返した最後の減圧時には、引き込むインクの量を少なくするのが好ましい。
ここで、図8に示すように、減圧工程で減圧を行う減圧時間Tdは、加圧工程で加圧を行う加圧時間Taよりも長く設定されるのが好ましい。また、加圧時間Taについては、短すぎると伝播する圧力でインク滴Fbが噴射されてインクが無駄に消費されてしまったり、減圧開始が早すぎて気泡が押し出される前にインクを引き戻してしまったりする虞がある。逆に、加圧時間Taが長すぎると、気泡をノズル25の内壁から引きはがすことができなかったり、減圧によってインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまったりする虞がある。
一方、減圧時間Tdが長すぎると、同じくインクを引き戻すのが間に合わなくなってインクが消費されてしまう虞がある。逆に、減圧時間Tdが短すぎると、ノズル25の外側から空気を引き込み、気泡を生じてしまう虞がある。
そして、インク滴Fbの噴射を抑制しつつ気泡の排出性を確保するために適正な加圧時間Taは、例えば0.025秒から0.2秒と非常に短時間である。一方、このような短時間で減圧を行うと空気を引き込んでしまうため、0.025秒から0.2秒の加圧時間Taに対しては、加圧時間Ta<減圧時間Tdとすることが好ましい。
本実施形態において、加圧及び減圧は、ノズル25からインク滴Fbが噴射されない程度に圧力室75の容積を変動させることで実行される。そのため、加圧のための容積変動に伴って押し出されるインクの量(以下、これを「加圧インク量Vd」という)、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値は、ノズル25や流体噴射ヘッド24の設置数などの流路条件によって変動する。そこで、加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適切な値の範囲と流路条件について説明する。
本実施形態のプリンター11の流路条件としては、図9に示すように、インクカートリッジ26の内容積(領域No1)が約50cc、インクカートリッジ26から圧力室75までのインク供給チューブ27の内容積(領域No2)が約3.5ccとなっている。また、圧力室75の変動可能な容積(領域No3)が約1.0cc、圧力室75より下流側のインク供給チューブ27の内容積(領域No4)が約1.9cc、共通インク室30の内容積(領域No5)が約3.1cc、8つの流体噴射ヘッド24を合計した内容積(領域No6)が約0.9ccとなっている。
ここで、インク非供給クリーニングにおいては、圧力室75から押し出されたインクが下流側の領域No3〜No6のみに移行するのが好ましい。そこで、インク非供給クリーニングの実行前に開閉弁95を閉弁状態とした上で、加圧及び減圧を行う。この流路条件では、押し出されたインクを圧力室75の下流側のみに流下させることができるため、図9に示す領域のうち、領域No1,2を除いた領域No3〜6が加圧及び減圧の影響範囲となる。
このように、開閉弁95を閉弁状態とした流路条件でインク非供給クリーニングを行う場合の加圧インク量Vdの適正範囲を図10(a)に、加圧時間Ta及び減圧時間Tdの適正範囲を図10(b)に示す。
加圧インク量Vdについては、圧力室75の容積約1.0ccのうち、0.18cc≦Vd≦0.48ccとなる範囲で容積を減少させて加圧を行うことが好ましい。なお、0.18cc>Vdの場合には気泡を排出するだけの加圧力が得られない虞があり、0.48cc<Vdの場合にはインクが消費されてしまう虞がある。この場合、1つのラインヘッド13には5280個のノズル25が設けられていることから、1ノズル当たりのインクの膨出良好域は、およそ3.5×10−5cc〜9.0×10−5ccとなる。
また、0.18cc≦Vd≦0.48ccとした場合の加圧時間Taは0.025秒≦Ta≦0.2秒、減圧時間Tdは0.1秒≦Td≦0.5秒(ただし、Ta<Td)であることが好ましい。なお、Vd=0.33cc、Ta=0.15秒で加圧を行い、Td=0.35秒で減圧を行うことで、特に良好な結果が得られることが確認されている。
圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングは、実行後にノズル形成面24aにインクが付着することがない上、ノズル25のメニスカスを整えることができるため、インク供給クリーニンクのように後処理としてワイピングを行う必要がない。また、インク消費を限りなくゼロにすることができるとともに非常に短時間で行うことができる。
次に、メンテナンスユニット15に備えられたノズル検査装置101について説明する。
図11に示すように、ノズル検査装置101は、キャッピング装置41のキャップ43内に配置された電極部材105と、電極部材105とノズル形成面24aとの間に電圧を印加するための電圧印加回路106と、電圧検出装置107とを備えている。
電極部材105は、ステンレス鋼等の金属など、導電性材料からなる格子状のメッシュとして形成される。電圧検出装置107は、電極部材105からの検出信号を積分して出力する積分回路108と、積分回路108から出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路109と、反転増幅回路109から出力された信号をA/D変換して制御装置100へ出力するA/D変換回路110とを備えている。
電圧印加回路106は、電極部材105が正極になるとともに流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aが負極になるように、直流電源(例えば400V)と抵抗素子(例えば1MΩ)とを備えている。そのため、電極部材105の上面には、正の電荷が帯電することになる一方で、流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aには、負の電荷が帯電することになる。
プリンター11においては、ノズル検査装置101を用いて必要量のインクが噴射されない不良ノズルの有無を検査するノズル検査が行われるようになっている。以下に、このノズル検査について説明する。
流体噴射ヘッド24に備えられた圧電素子40が駆動されると、ノズル25からインク滴Fbが噴射される。このとき、ノズル形成面24aには負の電荷が帯電しているので、ノズル25から噴射されたインク滴Fbには負の電荷が帯電する。
そして、負の電荷が帯電したインク滴Fbが電極部材105に接近するにつれて、電極部材105上では静電誘導によって正の電荷が次第に増加する。その結果、電極部材105と流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aとの間の電位差は、静電誘導に基づく誘導電圧により、ノズル25からインク滴Fbが噴射されない場合に比して大きくなる。
ノズル25から噴射されたインク滴が電極部材105上に着弾すると、電極部材105上の正の電荷の一部が、インク滴に帯電していた負の電荷によって中和される。すると、電極部材105とノズル形成面24aとの間の電位差がノズル25からインク滴が噴射されない場合に比して小さくなる。その後、電極部材105とノズル形成面24aとの間の電位差は、当初の大きさに戻る。
こうした電極部材105側の電位の変化は、電圧波形信号V1として電圧検出装置107の積分回路108に入力される。この電圧波形信号V1は反転増幅回路109で反転増幅されて電圧波形信号V2として出力され、さらに電圧波形信号V2がA/D変換回路110でA/D変換されて電圧波形信号V3として制御装置100に出力される。
制御装置100は選択手段として機能するCPU150、ROM151、RAM152及び不揮発性メモリー153を備えている。ROM151には、CPU150により実行される制御プログラム等が記憶されている。また、RAM152には、CPU150の演算結果や制御プログラムを実行して処理する各種データなどが一時的に記憶されるようになっている。また、書き換え可能な不揮発性メモリー153には、プリンター11の動作履歴などが記憶されるようになっている。
CPU150は、電圧検出装置107から出力された電圧波形信号V3の振幅Wd、すなわち電極部材105と流体噴射ヘッド24のノズル形成面24aとの間の電圧値の変化量を演算により検出する。また、CPU150は振幅Wdが予め設定されてROM151に記憶されている振幅閾値以上であるか否かを判定する。振幅閾値は、電圧検出装置107からの電圧波形信号V3に基づいてインクの噴射量を推定し、適切な量のインクが噴射されているか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め求められる。
すなわち、電圧波形信号V3の振幅Wdは、飛翔するインク滴Fbの有無やその大きさによって変化する。そのため、ノズル25が詰まってインク滴が噴射されなかったり、インクの噴射量が所定量より少なかったりしたときには、出力信号の振幅が通常時に比べて小さくなる。
したがって、CPU150は、電圧検出装置107から出力された電圧波形信号V3の振幅Wdが振幅閾値以上である場合には、必要量のインクが噴射されていると判断する。一方、CPU150は、電圧検出装置107から出力された電圧波形信号V3の振幅Wdが振幅閾値よりも小さい場合には、必要量のインクが噴射されない不良ノズルがあると判断する。
このように、ノズル検査装置101は、電圧波形信号V3の振幅Wdに基づいて不良ノズルの有無を判定することで、ノズル検査を実施する。なお、1ショット分のインク滴による電圧波形信号V3の振幅Wdは極めて小さいことから、複数ショット分(例えば3ショット分)のインク滴を噴射することにより、電圧波形信号V3を複数ショット分のインク滴による積分値として取り出す。
また、制御装置100はモーター駆動回路154〜159をさらに備え、これらはバス160を介してCPU150、ROM151、RAM152及び不揮発性メモリー153と互いに接続されている。そして、CPU150は、加圧ポンプ28、メンテナンスユニット15及び開閉弁95などの駆動制御を行う。
具体的には、CPU150は、モーター駆動回路154を介して加圧ポンプ28のポンプモーター96を駆動制御するとともに、モーター駆動回路155を介して圧力付与機構29のモーター79を駆動制御する。また、CPU150は、モーター駆動回路156を介してキャッピング装置41のキャップ43を昇降させるためのモーター59を駆動制御するとともに、モーター駆動回路157を介してキャッピング装置41のポンプホイル53を回動させるためのポンプモーター97を駆動制御する。また、CPU150は、モーター駆動回路158を介してワイピング装置42のワイパー67を前後方向に移動させるためのモーター65を駆動制御するとともに、モーター駆動回路159を介してワイパー67を昇降させるためのモーター69を駆動制御する。また、CPU150は、開閉弁95の開閉制御を行う。
そして、ノズル検査によって不良ノズルが検出された場合などには、CPU150がメンテナンスユニット15等を駆動制御して、各種クリーニングを実行するようになっている。
次に、プリンター11におけるクリーニング動作について説明する。
本実施形態のプリンター11は、ドット抜けの要因となる各現象に対応すべく、クリーニング方法としてインク供給クリーニング、インク非供給クリーニング及びワイピングのうち何れかを選択するとともに、選択したクリーニングを実行する。
ここで、図12に示すように、ドット抜けの要因となる気泡混入や目詰まり(ノズル25の閉塞)、メニスカス位置の後退といった現象のうち、どの現象が発生しているかは、ノズル検査を実行して不良ノズルの分布を確認することで判別できる場合がある。例えば、Case1として、複数の不良ノズルが隣接し合って存在する場合(以下、このような状態を「群抜け」ということがある)には、インクカートリッジ26の交換等に起因して、インク供給チューブ27の上流側から比較的大きな気泡が混入したと推定される。
気泡が混入してノズル25内が空洞になると、圧電素子40が駆動されてもインクが噴射されずにドット抜けが生じる。また、気泡がバッファーとなって圧電素子40の駆動に伴う圧力変動が適切に伝達されない振動圧力伝播阻害によってもドット抜けが生じることがある。Case1のように大きな気泡が上流側から混入した場合、不良ノズルは分岐流路31やリザーバー36、連通孔38などの近くに出現することが多い。
また、Case2として、給紙口付近や用紙Pの端部が通過する位置付近に不良ノズルが局所的に分布している場合、搬送される用紙Pの端部に付いていた紙粉等の異物がノズル開口25a付近に付着して目詰まりが生じていると推定される。所定サイズにカットされた用紙Pは、切断時に生じた紙粉が切断部となる端部に付着していることが多いため、給紙や搬送に伴う振動で用紙Pに付着していた紙粉がその周囲に飛び散るためである。
また、Case3として、ワイピングを行うと、ワイパー67がノズル25内に空気を押し込んでしまい、ノズル25内に微少な気泡を生じてしまうことがある(図11参照)。Case3の気泡はインクカートリッジ26の交換等で混入する気泡と比較するとかなり小さく、ノズル25付近に留まっていることが多い。こうした気泡の混入に伴うドット抜けはランダムに発生するため、偶然隣接し合って存在する場合もあるが、単数の不良ノズルが分散して存在することが多い。
また、Case4として、吸引クリーニング後に空間域Rを大気開放した衝撃でメニスカスが後退したり、ワイピング時にワイパー67がメニスカスに接触してノズル25内からインクが引き出されたりすると、ノズル25内へのインク供給が間に合わずにドット抜けが生じることがある。Case4の場合、排出されたインク量によってメニスカスがノズル25付近の段差部分に引っかかったりするので(図11参照)、不良ノズルはランダムに発生する。
また、Case5として、プリンター11を長期間使用しないまま放置していた場合にも、インクが変質したり、乾燥により増粘したりして、目詰まりが発生する。Case5の目詰まりは、ノズル開口25a側から乾燥が進行するため(図11参照)、全体的に複数の不良ノズルが出現することが多いが、ノズル25毎に差があるためにランダムに発生する。また、インクの溶媒や溶質の種類によって乾燥や増粘の進行度合いに差があるため、目詰まりが発生しやすい色がある。例えば、顔料インクであれば、ブラック(K)で増粘による目詰まりが発生しやすい傾向がある。そして、インクの変質による目詰まりが発生した場合には、変質によって色差が発生することがあるので、インク供給クリーニングを実行して変質したインクを排出してしまうことが好ましい。
これに対して、Case1〜4の不良ノズルについては、インク自体に問題はないため、できるだけ排出(消費)しないことが望ましい。ただし、Case1のインクカートリッジ26の交換に伴って混入する気泡はサイズが大きかったり、圧力付与機構29よりも上流側にあったりしてインク非供給クリーニングでは排出しきれない場合があるため、インク供給クリーニングを実行することが好ましい。また、Case2〜5(特に、Case3〜5)の発生要因は、不良ノズルの分布だけで判別するのは難しい。
そして、Case1のインクカートリッジ26の交換による気泡混入やCase5の放置に伴う目詰まりは、Case2〜4の現象に比べて発生頻度が低い。そのため、プリンター11においては、インクを消費しなければ解消し難い現象についてのみ選択的にインク供給クリーニングを実行する一方、比較的頻度の高いその他の現象についてはインク消費を伴わないクリーニングを実行することで、クリーニングに伴うインク消費を抑制している。特に、本実施形態のようなラインヘッド式のプリンター11はノズル25数が多く、インク供給クリーニングに伴うインク消費量が嵩む。そのため、インク非供給クリーニングを選択的に実行することで、インク消費量を抑制しつつ、印刷品質を保持することができる。
次に、CPU150によるクリーニング方法の選択処理について図13を参照しつつ説明する。
図13に示すように、制御装置100がノズル検査実行命令を受け取ると、ノズル検査装置101がノズル検査を実行し、CPU150がその検査結果に基づいてクリーニング方法(ワイピング、インク供給クリーニング及びインク非供給クリーニングのうち何れか)を選択する。すなわち、本実施形態のクリーニング方法においては、ワイピング、インク供給クリーニング及びインク非供給クリーニングのうち何れか選択する選択段階を備える。なお、ノズル検査は、プリンター11の電源ON(電源投入)時、あるいは前回のクリーニング実施時から所定時間経過後の待機時、あるいはユーザーがノズル検査実行指示の操作を行った時など、所定のタイミングで実行される。
始めに、ステップS11としてノズル検査が実行されると、ステップS12として、CPU150が必要量のインクが噴射されない不良ノズルがあるか否かを判断する。その結果、不良ノズルがなかった場合には、CPU150がNOの判定を行って処理を終了する。一方、不良ノズルがあった場合には、CPU150がYESの判定を行ってステップS13に進む。
ステップS13において、CPU150は、複数の不良ノズルが隣接し合って存在するか否かを判断する。そして、複数の不良ノズルが隣接し合って存在する場合には、CPU150がYESの判定を行ってインク供給クリーニングを選択し、ステップS14に進む。不良ノズルが隣接する「群抜け」が発生した場合、Case1の現象が発生していると推定されるためである。
ステップS14において、CPU150はインク供給クリーニングとして吸引クリーニング又は加圧クリーニングを実行する。吸引クリーニングを実行する場合にはCPU150がキャッピング装置41のモーター59、ポンプモーター97及び開閉弁95を駆動制御して、流体噴射ヘッド24内のインクをノズル開口25aから排出させる。あるいは、加圧クリーニングを実行する場合には、CPU150が加圧ポンプ28のポンプモーター96及び開閉弁95を駆動制御して、流体噴射ヘッド24内のインクをノズル開口25aから排出させる。
また、インク供給クリーニングの実行後には、メニスカスが乱れていることが多いため、CPU150がインク非供給クリーニングを選択してステップS15に進む。そして、ステップS15としてCPU150が圧力付与機構29のモーター79を駆動制御し、インク非供給クリーニングを実行してメニスカスを整えた後に、処理を終了する。
ステップS13において、不良ノズルが1つしかない場合や、複数の不良ノズルがあってもそれらが隣接し合っていない場合には、CPU150はNOの判定を行ってステップS16に進み、ノズル検査を実行する直前(クリーニング実施前)のプリンター11の動作に基づいてクリーニング方法を選択する。Case2〜5の発生要因は、不良ノズルの分布だけで判別するのは難しいためである。
具体的には、ステップS16において、プリンター11の直前の動作が電源ON(起動)又はインクカートリッジ26の交換(着脱)であった場合には、CPU150がインク供給クリーニングを選択してステップS14に進む。ステップS14において、CPU150はインク供給クリーニング(吸引クリーニング又は加圧クリーニング)を実行する。その後、CPU150はインク非供給クリーニングを選択してステップS15に進む。ステップS15において、CPU150がインク非供給クリーニングを実行してメニスカスを整えた後、処理を終了する。
また、ステップS16において、プリンター11の直前の動作がインク供給クリーニングであった場合には、CPU150はインク非供給クリーニングを選択してステップS15に進む。そして、ステップS15においてCPU150がインク非供給クリーニングを実行してメニスカスを整えた後、処理を終了する。
また、ステップS16において、プリンター11の直前の動作が印字(印刷処理)であった場合には、CPU150がクリーニング方法としてワイピングを選択してステップS17に進む。ステップS17において、CPU150がワイピング装置42のモーター65,69を駆動制御して、ワイパー67でノズル形成面24aに付着した紙粉等を払拭するワイピングを実行する。
なお、ワイピング実行後にはノズル25内に微少な気泡が押し込まれていることがある。そのため、プリンター11の直前の動作がワイピング機構61によるワイピングであった場合には、CPU150がインク非供給クリーニングを選択してステップS15に進む。ステップS15において、CPU150がインク非供給クリーニングを実行して、処理を終了する。
このように、本実施形態のプリンター11は、CPU150がノズル検査の検査結果やクリーニング実施前のプリンターの動作に基づいてクリーニング方法を選択的に実行することで、インク供給クリーニングの実施回数を必要最低限に抑制している。そのため、クリーニングに伴うインク消費が抑制される。
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)CPU150がインク非供給クリーニングを選択した場合には、インクの消費を抑制しつつ流体噴射ヘッド24のクリーニングを実行することができる。すなわち、インクを消費するインク供給クリーニングの代わりにインク非供給クリーニングを選択的に実行することで、インクの消費を抑制しつつ、流体噴射ヘッド24のクリーニングを行うことができる。
(2)電源投入時に不良ノズルがある場合、ノズル25内に滞留していたインクが変質したことが不良の要因である可能性が高い。そのため、電源投入時の検査で不良ノズルが検出された場合にインク供給クリーニングを実行することで、ノズル25内の変質したインクを排出することができる。
(3)CPU150は、クリーニング実施前のプリンター11の動作に基づいてクリーニングの方法を選択するので、状況に応じてインク非供給クリーニング及びインク供給クリーニングのうち何れかを選択的に実行することができる。
(4)プリンター11の直前の動作がインクカートリッジ26の着脱であった場合にはインク供給クリーニングを実行するので、インクカートリッジ26の着脱に伴ってインク供給チューブ27内に混入した大きな気泡をインクとともに排出することができる。
(5)インク供給クリーニングの実行後にインク非供給クリーニングを実行するので、インクの排出によって乱されたノズル25内のメニスカスを整えることができる。
(6)ワイピングの実行後にインク非供給クリーニングを実行するので、ワイピングによって乱されたノズル内のメニスカスを整えたり、ノズル25内に押し込まれた気泡を排出したりすることができる。
(7)圧力付与機構29がインク供給チューブ27内のインクに対して加圧を行うことで、ノズル25からインクの一部を膨出させ、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出すことができる。また、圧力付与機構29が加圧と連続的に減圧を行うと、加圧に伴ってノズル25から膨出した状態にあるインクをノズル開口25aからの落下等によって無駄に消費されないように流体噴射ヘッド24内に引き戻すことができる。したがって、圧力付与機構29によるインク非供給クリーニングによれば、インクの消費を抑制しつつ、気泡を排出することができる。
(8)加圧を短時間で行って気泡の排出性を確保するとともに、減圧時間Tdを加圧時間Taより長くすることで、ノズル開口25aからの気泡の引き込みを抑制することができる。
(9)圧力付与機構29が圧力室75の容積を減少させることで、減少した容積分のインクを押し出し、ノズル25側に圧力を波及させることができる。また、減圧は圧力室75の容積を増加させることで行うので、加圧のために減少させた容積を元に戻すことで、加圧と連続的に減圧を行うことができる。
(10)加圧に伴ってノズル25から気泡が排出されると、その分ノズル25内に空隙が生じるが、減圧のために増加させる圧力室75の容積を、加圧のために減少させる圧力室75の容積よりも小さくすることで、空隙に起因するノズル抜けの発生を抑制することができる。
(11)各ノズル25の背圧を共通インク室30で調整することで、ノズル25のメニスカスを均一に整えることができる。例えば、インク非供給クリーニングの加圧や減圧に伴うインクの流動は、共通インク室30を経由してノズル25内に波及する。そのため、気泡が排出された一つのノズル25内に空隙が生じた場合にも、加圧と減圧を繰り返すことで、その他のノズル25との間で液面位置が揃えられる。そして、圧力付与機構29はインク流路において共通インク室30よりも上流側に設けられるので、流体噴射ヘッド24数が増加した場合にも、構成が複雑にならない。
(12)圧力付与機構29が加圧を行う加圧時間Taは0.025秒から0.2秒と非常に短時間であるので、ノズル25の内壁に付着した気泡を引きはがして排出することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図14〜図18に基づいて説明する。
図14に示すように、本実施形態のプリンター11Aのインク供給ユニット14Aにおいては、インク供給チューブ27のインクカートリッジ26と開閉弁95との間に差圧弁80が配置されている。また、開閉弁95の下流側には圧力付与機構29Aが設けられている。
まず、圧力付与機構29Aについて説明する。
本実施形態の圧力付与機構29Aは、図15に示すように、定形性を有する流路形成部材91を有している。流路形成部材91の左端にはインク供給チューブ27と接続される接続部92が設けられる一方、流路形成部材91の右端にはインク供給チューブ27と接続される接続部93が設けられる。また、流路形成部材91の上面側には平面視円形状の凹部91aが形成されている。そして、接続部92内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流入路92aが形成される。一方、接続部93内には、インク供給チューブ27と凹部91a内とを連通させる流出路93aが形成される。
流路形成部材91の凹部91a内には、ピストン94が摺動自在な状態で収容されている。ピストン94の一端側(下端側)は圧力室75の一壁面を構成する円盤形状の可動部94aを構成するとともに、ピストン94の他端側(上端側)は円盤形状の受圧部94bを構成する。そして、ピストン94の可動部94aと流路形成部材91の凹部91aとによって、圧力室75が囲み形成されている。
流路形成部材91の上面側と受圧部94bの下面側との間には、ばねからなる付勢部材76が配設されている。したがって、モーター79が正方向に駆動してカム部材77が同図における反時計回り方向に回動すると、ピストン94の可動部94aが回転軸78から離間する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が減少し、圧力室75から押し出されたインクによってインク供給チューブ27内のインクが加圧される。また、モーター79が逆方向に駆動してカム部材77が同図における時計回り方向に回動すると、付勢部材76の付勢力でピストン94の可動部94aが回転軸78に近接する方向に移動する。すると、圧力室75の容積が増加し、圧力室75内に引き込まれるインクによってインク供給チューブ27内が減圧される。
次に、差圧弁80について説明する。
差圧弁80は大気圧とインク圧との差圧を利用して開閉するダイアフラム式の自己封止弁で、インクカートリッジ26と開閉弁95との間に配置されている。また、プリンター11Aにおいては、インクカートリッジ26(図示しないカートリッジホルダ)がラインヘッド13よりも高い位置に設けられている。そのため、差圧弁80によって流体噴射ヘッド24内を−1kPa程度の負圧にしている。
図16(a)に示すように、差圧弁80は、定形性を有する流路形成部材82を有している。流路形成部材82の左端には上流側のインク供給チューブ27と接続される接続部83が設けられる一方、流路形成部材82の右端には下流側のインク供給チューブ27と接続される接続部84が設けられる。また、流路形成部材82の上面側には平面視円形状の凹部82aが形成されるとともに、凹部82aの内底面において中心から左方に偏心した位置には、円錐台形状をなす凸部82bが一つ形成されている。そして、この凸部82bの上端面に凹部82a内への開口が形成されるように、接続部83内には上流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流入路83aが形成されている。一方、接続部84内には、下流側のインク供給チューブ27と凹部82a内とを連通させる流出路84aが形成されている。
流路形成部材82の上面側には、凹部82aの開口を封止するように可撓性を有するフィルム部材85が撓みを有した状態で固着されている。また、フィルム部材85の凹部82a内に臨む内面側の略中央部には、凹部82aの開口面積よりも面積の小さい円板状の押圧板86が固着されている。そして、フィルム部材85と凹部82aとによって、圧力室87が囲み形成されている。
圧力室87内には、基台部88と、この基台部88に傾動自在に支持されたアーム部材89と、アーム部材89の一端側(左端側)を、凸部82b側に向けて付勢する付勢ばね90とが収容されている。アーム部材89は、常時は付勢ばね90の付勢力を受けて、一端側が凸部82bの上端面に設けられた流入路83aの開口を封止するとともに、他端側(右端側)が押圧板86を上方に向けて押し上げた状態となっている。これにより、フィルム部材85が圧力室87の内容積を拡大する方向に撓み変位され、圧力室87及びその下流域に位置する流体噴射ヘッド24内は−1kPa程度の負圧となる。
また、流入路83aには、加圧ポンプ28によってインクが加圧状態で供給されるとともに、常には付勢ばね90の付勢力を受けたアーム部材89の一端側によって、圧力室87内への流入が抑制された状態となっている。そして、ノズル25からの噴射又は流出によりインクが消費されると、圧力室87内の負圧が増し、図16(b)に示すように、フィルム部材85が付勢ばね90の付勢力に抗して圧力室87の内容積を減少させる方向に撓み変位する。すると、アーム部材89の他端側が押圧板86を介してフィルム部材85に押圧されて傾動し、一端側が流入路83aの開口を開放するので、流入路83aを通じて圧力室87内に加圧されたインクが流入する。
そして、インクの流入に伴って圧力室87内の負圧が減少すると、アーム部材89及びフィルム部材85は再び付勢ばね90の付勢力によって元の位置に復帰する。したがって、流体噴射ヘッド24には消費量に応じたインクが供給されるようになっている。
次に、CPU150によるクリーニング方法の選択処理について図17及び図18を参照しつつ説明する。
図17に示すように、制御装置100がノズル検査実行命令を受け取ると、ステップS21としてノズル検査装置101がノズル検査を実行する。続いて、ステップS22として、CPU150が必要量のインクが噴射されない不良ノズルがあるか否かを判断する。その結果、不良ノズルがなかった場合には、CPU150がNOの判定を行って処理を終了する。一方、不良ノズルがあった場合には、CPU150がYESの判定を行ってステップS23に進む。
ステップS23において、CPU150は、複数の不良ノズルが隣接し合って存在するか否かを判断する。そして、複数の不良ノズルが隣接し合って存在する場合には、CPU150がYESの判定を行ってインク供給クリーニングを選択し、ステップS24に進む。不良ノズルが隣接する「群抜け」が発生した場合、Case1の現象が発生していると推定されるためである。ステップS24において、CPU150はインク供給クリーニングとして吸引クリーニング又は加圧クリーニングを実行する。
また、インク供給クリーニングの実行後には、メニスカスが乱れていることが多いため、インク供給クリーニングの実行後にはCPU150がインク非供給クリーニングを選択してステップS25に進む。ステップS25において、CPU150はインク非供給クリーニングを実行してメニスカスを整えた後に、処理を終了する。
一方、ステップS23において、不良ノズルが1つしかない場合や、複数の不良ノズルが隣接し合っていない場合には、CPU150がNOの判定を行ってインク非供給クリーニングを選択し、ステップS25に進む。不良ノズルがランダムに存在する場合、Case2〜5のうち何れかの現象が発生していると推定されるためである。そして、ステップS25において、CPU150はインク非供給クリーニングを実行した後、処理を終了する。
なお、ノズル検査で「群抜け」が検出された場合のみインク供給クリーニングを行うことで、インクカートリッジ26の着脱を要因とする場合に限らず、複数のノズル25に亘る大きい気泡や比較的重度の目詰まりが発生している場合にインク供給クリーニングを選択的に実行することができる。一方、不良ノズルが隣接し合っていない場合には、比較的小さい気泡や軽微な目詰まりが要因であるので、インク非供給クリーニングでドット抜けを解消することができる。
また、CPU150によるクリーニング方法の選択は、ノズル検査を契機とする場合と限らず、図18に示すように、制御装置100がクリーニング実行命令を受け取った場合に行うようにしてもよい。この場合には、制御装置100がノズル検査実行命令を受け取ると、ステップS31として、CPU150が直前(クリーニング実施前)のプリンター11の動作に基づいてクリーニング方法を選択する。
具体的には、ステップS31において、直前のプリンター11の動作が電源ON(起動)であった場合には、ステップS32に進んで、ノズル検査装置101がノズル検査装置を実行する。続いて、ステップS33において、CPU150が必要量のインクが噴射されない不良ノズルがあるか否かを判断する。その結果、不良ノズルがなかった場合には、CPU150がNOの判定を行って処理を終了する。一方、不良ノズルがあった場合には、CPU150がYESの判定を行ってステップS34に進む。
ステップS34において、CPU150はクリーニング方法としてインク供給クリーニングを選択する。すなわち、電源ON後に不良ノズルが検出された場合、Case5のインクの変質による目詰まりが生じていると推定されるため、インク供給クリーニングを実行して変質したインクを排出する。また、インク供給クリーニングの実行後には、インクの排出で乱れたメニスカスを整えるため、CPU150がインク非供給クリーニングを選択してステップS35に進む。そして、ステップS35において、CPU150がインク非供給クリーニングを実行し、その後、処理を終了する。
また、ステップS31において、プリンター11の直前の動作がインクカートリッジ26の交換であった場合には、CPU150がクリーニング方法としてインク供給クリーニングを選択してステップS34に進む。ステップS34において、CPU150はインク供給クリーニングを実行する。また、その後、インクの排出で乱れたメニスカスを整えるため、ステップS35に進む。ステップS35において、CPU150はインク非供給クリーニングを実行し、その後、処理を終了する。
また、ステップS31において、プリンター11の直前の動作が印字(印刷処理)であった場合には、CPU150がクリーニング方法としてインク非供給クリーニングを選択してステップS35に進む。インク非供給クリーニングを実行することで、紙粉等の異物がノズル25内に侵入して堆積することを抑制するためである。ステップS35において、CPU150はインク非供給クリーニングを実行し、その後、処理を終了する。これにより、堆積した異物がインクの増粘に伴ってノズル24内で固着し、目詰まりとなるのを予防することができる。
以上説明した実施形態によれば、上記(1)〜(5)及び(7)〜(12)と同様の作用効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(13)必要量のインクが噴射されない複数の不良ノズルが隣接し合って存在する場合にはインク供給クリーニングを実行するので、インクを供給しつつ、比較的重度の目詰まりを解消したり、複数のノズルに亘る大きな気泡を排出したりすることができる。一方、複数の不良ノズルが存在しても、それらが隣接し合っていない場合にはインク非供給クリーニングを実行するので、ノズル開口25aからインクを膨出した状態にさせることで、そのインクの膨出部分に混入している気泡をノズル開口25aの外側となる大気側に押し出すことができる。すなわち、インク非供給クリーニングを選択的に実行することで、ノズル内の小さな気泡をインクの消費を抑制しつつ排出することができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・クリーニング方法としてワイピングを選択肢としなくてもよい。例えば、流体を受容する媒体として、紙粉のような異物が発生しにくいフィルムなどが用いられる場合や、増粘しにくい流体を噴射する場合には、ノズル25の目詰まりが生じにくいので、ワイピングを行わなくてもよい。
・図18に示すクリーニング方法の選択処理では、ステップS31において、プリンター11の直前の動作が印字(印刷処理)であった場合に、CPU150がクリーニング方法としてワイピングを選択するようにしてもよい。
・不良ノズルの有無は、任意の方法で検査することができる。例えば、噴射されたインク滴が照射されたレーザー光を遮断するか否かで検査するようにしてもよいし、テスト印字を行ってユーザーの目視によってドット抜けの有無を検査するようにしてもよい。
・「群抜け」であるか否かの判断基準は、流体の種類やプリンター11の構成等によって変化させてもよい。例えば、3つ以上の不良ノズルが隣接し合っている場合に「群抜け」であると判断するようにしてもよいし、所定範囲内に複数の不良ノズルが存在する場合に「群抜け」であると判断するようにしてもよい。あるいは、2つの不良ノズルが隣接し合っていても、その他に不良ノズルがなければインク非供給クリーニングを選択するようにしてもよい。
・インク供給クリーニングの実行後にワイピングを実行し、さらに、そのワイピング実行後にインク非供給クリーニングを実行するようにしてもよい。これにより、ワイピングによってノズル25内に押し込まれた微少な気泡を排出することができる。
・クリーニング実行命令やノズル検査実行命令に基づく場合に限らず、電源投入時にノズル検査装置101がノズル検査を実行し、不良ノズルが検出された場合にはCPU150がインク供給クリーニングを選択及び実行するようにしてもよい。電源投入時に不良ノズルがある場合、ノズル25内に滞留していたインクが変質したことが不良の要因である可能性が高い。そのため、電源投入時の検査で不良ノズルが検出された場合にインク供給クリーニングを実行することで、ノズル25内の変質したインクを排出することができる。
・プリンター11,11Aにおいて、開閉弁95を開弁状態としてインク非供給クリーニングを実行してもよい。
・プリンター11において図17、図18に示すクリーニング方法の選択を実行するようにしてもよいし、プリンター11Aにおいて図13に示すクリーニング方法の選択を実行するようにしてもよい。
・圧力付与機構29,29Aを備えない構成としてもよい。この場合には、キャッピング装置41で短時間の吸引を実行することで、ノズル25からインクの一部を膨出させることができる。また、ノズル25からインクを膨出させた状態で空間域Rの負圧を解消すれば、膨出させたインクを消費することなく、ノズル25内に戻すことができる。
・圧力付与機構は、圧力付与機構29Aのピストン94を可動鉄心で構成するとともに、その周囲にソレノイドを設けるようにしてもよい。この場合には、ソレノイドに電流を流して磁界を発生させることにより、可動鉄心からなるピストン94を移動させることができる。
・圧力付与機構が圧電素子を備え、圧電素子によって流体供給路の容積を変動させることで加圧や減圧を行うようにしてもよい。
・弾性変形可能なインク供給チューブ27をカム部材77で押し潰すことで加圧を行うようにしてもよい。この場合には、圧力付与機構が流路形成部材等を備えなくてもよいので、構成を簡素化することができる。
・共通インク室30を備えず、例えばインク供給チューブ27の一端側(基端側)がインクカートリッジ26に接続される一方、他端側(先端側)が複数に分岐して流体噴射ヘッド24に接続されるようにしてもよい。この場合には、基端側に圧力付与機構29,29Aを設けてもよいし、分岐した先端側に圧力付与機構29,29Aを設けてもよい。
・圧力付与機構は、共通インク室30とリザーバー36との間に設けてもよいし、リザーバー36とキャビティ39との間に設けてもよい。
・液体供給路を弾性変形しにくい剛体の管路から構成してもよい。この場合には、加圧工程における加圧や減圧工程における減圧に伴う圧力変動を、管路の弾性変形で吸収することなくノズル25内に伝播させることができる。
・流路条件や噴射する流体を変更した場合には、摩擦抵抗や流路抵抗、粘性等が変化するので、インク非供給クリーニングにおける加圧インク量Vd、加圧時間Ta及び減圧時間Tdもそれぞれ適切な値に変更するのが好ましい。
・流体噴射ヘッド24やノズル25の数、ノズル列Nの列数などは任意に設定することができる。
・流体収容体は着脱式でないインクタンクを採用してもよい。
・長尺の流体噴射ヘッドを備えるフルラインタイプのラインヘッド式プリンターや、ラテラル式プリンター、あるいはシリアル式プリンターとして実現してもよい。
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。