JP5462643B2 - 積層鉄心及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、Vかしめの突起部を窪み部に隙間なく嵌入させるために刃物を強い力で打ち込むと、鉄心片に大きな応力が発生する。その結果、さらに鉄心片が厚み方向に変形し、同様の問題が発生する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、スリットが形成されたかしめを用いてかしめ結合する際のかしめ力が従来よりも強い積層鉄心及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記複数のかしめ部は、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きかしめ部と、前記スリットのないスリット無しかしめ部とからなる。
前記複数のかしめ部は、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きかしめ部と、前記スリットのないスリット無しかしめ部とで構成され、
前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部とが、互いに隣り合って配置される。
前記スリット付きかしめ部及び前記スリット無しかしめ部の製造にあって、前記スリット付きかしめ部が形成される前記環状鉄心片の所定位置に前記スリットを形成する工程と、
前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部を成形する工程とを含む。
前記スリット付きVかしめ及び前記スリット無しVかしめの製造にあって、前記スリット付きVかしめが形成される前記分割鉄心片の所定位置に前記スリットを形成する工程と、
前記スリット付きVかしめと前記スリット無しVかしめを成形する工程とを含み、
前記スリット付きVかしめと前記スリット無しVかしめとが、互いに隣り合って配置される。
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心10は、図示しないアウターロータ型の小型のモータの固定子を構成する部品である。この積層鉄心10は、環状のヨーク部12を有している。更に、積層鉄心10は、このヨーク部12の円周方向に等間隔に配置され、かつ平面視して外形面から半径方向に突出する磁極部13を有している。固定子は、この磁極部13に複数の巻線が施されて形成される。そしてモータは、この固定子の外側に図示しない永久磁石を有する回転子が配置されて構成される。
ここで、このかしめ部25〜30は、Vかしめによって形成されている。そして、複数設けられたVかしめのうち、その一部にのみ、スリットが形成されている。以下、スリットが形成されたVかしめをスリット付きVかしめ(スリット付きかしめ部の一例)、スリットが形成されていないVかしめをスリット無しVかしめ(スリット無しかしめ部の一例)と称する。
図2は、図1(B)に示したかしめ部26を拡大して表したものである。かしめ部26は、スリット付きVかしめである。このスリット付きVかしめの突起部31の裏側(凹部側)には、窪み部33が形成されている。この窪み部33は、突起部31をプレス加工して形成するに伴い、同時に形成されるものである。そして、対向するかしめ辺32の間にはスリット35が形成されている。
各鉄心片21は、図3に示すように、突起部31が窪み部33に圧入され、嵌合することによって結合される。
図4(A)、(B)に示すように、かしめ部26は、底部56とこれに連接する左右の傾斜部57からなる突起部31を有しており、突起部31の側断面はV字状である。突起部31は、鉄心片(突起部31形成前の鉄心片)の一部の領域(形成予定部)がプレス加工されて形成される。具体的には、突起部31は、突起部31の長手方向一方側の基端部50に形成される折り曲げ線52とこの基端部50に対向する長手方向他方側の基端部51に形成される折り曲げ線53が折り曲げられて傾斜部57が形成されると共に、突起部31の中央部に折り曲げ線52、53と平行に形成される折り曲げ線54、55が折り曲げられて突起部31の底部56が形成される。
そして、スリット35は折り曲げ線52から折り曲げ線53に至るまで、突起部31全域に亘って形成されている。つまり、スリット35は、その両端がそれぞれ突起部31の基端部50、51まで延びて形成されている。
なお、スリットは、平面視して突起部の幅方向の中央部からオフセットして形成されてもよい。つまり、窪み部33の側部であるかしめ辺32の間に形成されていればよい。また、中心線59は、折り曲げ線52〜55に直交して配置されていなくても良い。即ち、スリット35の幅方向の中心線59が、折り曲げ線52〜55に交差するように配置されていれば良い。
鉄心片21をかしめ結合するために、上下方向に隣り合う鉄心片21の上側の鉄心片21のスリット付きVかしめの突起部31を下側の鉄心片21の窪み部33に挿入すると、かしめ辺32から突起部31に長手方向に直交する方向の圧力が加わる。そして、この圧力によってスリット35の長手方向に直交する方向の幅が僅かに狭まりながら、鉄心片21同士が結合される。即ち、スリット35が折り曲げ線52〜55の方向(幅方向)に撓み、かしめ辺32から受ける圧力を緩和するように作用して鉄心片21同士が結合される。その結果、スリット付きVかしめのかしめ力が弱められ、その周囲の鉄心片21には従来のような大きな応力が発生することはない。
図4に示すスリット35は、突起部31全体に亘って設けられていた。しかし、図5(A)、(B)に示すように、スリット65の長手方向の一端(一方の短辺)が折り曲げ線52と54の間に位置するように設け、その他端(他方の短辺)が折り曲げ線53と55の間に位置するように設けても良い。即ち、スリット65を底部56を中央にして突起部31の一部に形成し、図4に示すスリット35よりも長手方向長さを短くすることもできる。スリットの長手方向長さを調整することによって、かしめ結合する際のスリット幅方向の撓み量が変化することから、スリット付きVかしめによるかしめ力が調整される。
更に、図6(A)、(B)に示すように減厚加工(押し潰し加工)した後にスリットを形成した突起部31を形成しても良い。なお、同図(B)において、減厚加工しない場合の突起部31を2点鎖線で示している。減厚加工した後に突起部31を形成すると、ハッチングで示す底部56及び傾斜部57の板厚が薄くなる。その結果、減厚加工しない場合と比べて積層される鉄心片21間の隙間が小さくなる。なお、スリット付きVかしめは、図7のように半抜きにより段差部66を形成してもよい。これによりかしめ積層の際、かしめ部の長辺側のみならず、短辺側もかしめ力を発生するため、スリット付きVかしめの締結力の向上を図ることができる。
図1(B)に示すように、平面視して同サイズのかしめ部25〜30は環状のヨーク片部22に沿って等間隔で配置されている。ここで、これらかしめ部25〜30のうち、かしめ部25、27、29は、スリット無しVかしめで形成され、かしめ部26、28、30は、スリット付きVかしめ(図4参照)で形成されている。即ち、スリット無しVかしめとスリット付きVかしめはそれぞれ交互に並んで環状のヨーク片部22に沿って等間隔で配置されている。スリット無しVかしめとスリット付きVかしめの間隔(円周方向ピッチ)は、同サイズのVかしめを更に2個形成可能な程度離れている。なお、ヨーク片部のサイズやVかしめのサイズによっては、この間隔は同サイズのVかしめを更に1個又は3個形成可能な程度離れている場合もある。
前述のように、スリットが形成されていないかしめ部同士が隣り合って配置されると、かしめ部周囲に発生した応力が互いに干渉し合い、このかしめ部周辺の鉄心片を厚み方向に変形させ、問題となる。一方で、スリットを設けたかしめ部による結合は、スリット無しのかしめ部による結合よりも応力の発生が極めて小さい反面、かしめ力が弱いという問題がある。
そこで、本実施の形態においては、スリット無しVかしめとスリット付きVかしめとを交互に並べて配置することで、これら問題を共に解消している。即ち、スリット無しVかしめの周囲には応力が発生するが、このスリット無しVかしめはスリット付きVかしめの隣に配置されるので、かしめによる応力が干渉し合うことはない。その結果、鉄心片21の厚み方向の変形は抑制される。一方で、全てのVかしめがスリット付きVかしめではないので、積層された鉄心片21のかしめ力の低下は最小限に抑えられる。また、かしめ部が偶数個形成されている場合には、かしめ力の強いVかしめと弱いVかしめとが同じ数だけ交互に配置されることになる。その結果、鉄心片21は、ヨーク片部22の面全体に亘って均一に結合される。
また、Vかしめに限らず、丸平かしめや角平かしめ、又は半抜きかしめ等任意のかしめについてもかしめ力を弱めるスリットを設けても良い。
また、積層鉄心はアウターロータ型のモータの固定子に限らず、インナーロータ型のモータの固定子に用いるものであっても良い。また、固定子に限らず、回転子、更にはトランス等の電機機器に用いるものであってもよい。
この積層鉄心の製造方法は、プレス加工により鉄心片21にスリット付きVかしめ(図2参照)を形成するためのものである。
次に、図8(A)に示すスリット形成工程にて、かしめ部が形成されるヨーク片部22(図1(B)参照)上の複数の領域(形成予定部)71のうち、一部の形成予定部71に矩形状のスリット72を形成する。スリット72が形成された形成予定部71とスリット72が形成されない形成予定部71は、交互に並んで環状のヨーク片部22に沿って等間隔で配置される。
スリット72は、スリット付きVかしめの各折り曲げ線52〜55(図8(C)参照)に対して実質直交する方向に形成される。更に、スリット72の幅W1は、例えば突起部31の幅の1/10〜1/3とすることができる。なお、このスリット72は、突起部31の長手方向に直交する方向の中央部位置に形成するのが好ましいが、幅方向の中央からオフセットして形成することもできる。また、スリットは、図5に示すように突起部31の一部に形成することもできる。
ここで、鉄心片21の板厚(原板厚)をt、突起部31の板厚をa、突起部31の傾斜角度をα(図8(C)参照)とすると、t≧a/cosαを満足するように押し潰し厚を決めるのが好ましい。この理由は、理論的に隣り合う鉄心片21の間の隙間がなくなることになるからである。即ち、(a/cosα)は、突起部31の傾斜部57の垂直方向の厚みbを示し、かしめ結合を行うと、この厚みbが積層されることになる。しかし、(a/cosα)が板厚tと同一か又は小さい場合には、隣り合う鉄心片21の間の隙間がなくなるのである。
なお、積層鉄心10の積層方向上向きに突起部31を設けてもよい。つまり、積層鉄心10の最下層の鉄心片21に突起部31が形成され、最上層の鉄心片21に、突起部31が挿入される孔のみを形成することもできる。
図9(A)に示す積層鉄心101は、図示しないインナーロータ型のモータの固定子を構成する部品である。この積層鉄心101は、環状のヨーク部102を有しており、更に、このヨーク部102の円周方向に等間隔に配置され、かつヨーク部102から半径方向内側に延びる磁極部103を有している。積層鉄心101は、磁極部103ごとに分割された分割積層鉄心107が環状に接続されて構成される。
固定子は、この磁極部103に複数の巻線が施されて形成される。そしてモータは、この固定子の内側に、図示しない永久磁石を有する回転子が配置されて構成される。
ここで、このかしめ部115〜119は、Vかしめによって形成されている。そして、複数設けられたVかしめのうち、その一部のみがスリット付きVかしめである。
図9(B)に示すように、円弧状の分割ヨーク片部112の外周側にはかしめ部115が配置され、中央部にはかしめ部116〜118が周方向に等間隔に配置され、内周側にかしめ部119が配置されている。かしめ部115〜119は平面視してすべて同サイズである。かしめ部115は、かしめ部117から見て分割鉄心片111の半径方向外側に配置され、かしめ部119は、かしめ部117から見て分割鉄心片111の半径方向内側に配置されている。かしめ部115、117、119は、半径方向に等間隔に配置されている。
かしめ部116〜118が配置される間隔(円周方向ピッチ)は、同サイズのかしめ部を更に1個形成可能な程度離れている。但し、分割ヨーク片部のサイズやかしめ部のサイズによっては、この間隔は同サイズのかしめ部を更に2個又は3個形成可能な程度離れている場合もある。また、かしめ部115、117、119が配置される間隔(半径方向ピッチ)も、同サイズのかしめ部を更に1個形成可能な程度離れている。但し、分割ヨーク片部のサイズやかしめ部のサイズによっては、この間隔は同サイズのかしめ部を更に2個又は3個形成可能な程度離れている場合もある。
これらかしめ部115〜119のうち、かしめ部117はスリット付きVかしめで形成され、かしめ部115、116、118、119はスリット無しVかしめで形成されている。即ち、スリット付きVかしめはスリット無しVかしめと隣り合って配置され、スリット付きVかしめの数はスリット無しVかしめの数よりも少ない。
ここで、かしめ部が全てスリット無しVかしめであると仮定すると、分割鉄心片を積層する際に、かしめ部の周囲に発生した応力が干渉し合い、分割鉄心片が厚み方向に大きく変形してしまう。一方で、かしめ部がすべてスリット付きVかしめであると仮定すると、応力の発生が極めて小さい反面、かしめ力が弱くなってしまう。しかし、本実施の形態のように、かしめ部117をスリット付きVかしめとして、スリット無しVかしめとスリット付きVかしめを組み合わせているので、応力が干渉し合うことはない。その結果、十分なかしめ力を維持しつつ、分割鉄心片111の厚み方向の変形は抑制される。
また、分割鉄心片111を積層する際は、スリット無しVかしめ同士、スリット付きVかしめ同士を結合しても良いが、スリット無しVかしめとスリット付きVかしめとを交互に結合しても良い。
また、Vかしめに限らず、丸平かしめや角平かしめ、又は半抜きかしめ等任意のかしめについてかしめ力を弱めるスリットを設けても良い。
まず、図示しない切曲げ工程にて、帯状鋼板から図示しない回転子鉄心片を打抜き形成したのち、分割ヨーク片部112が形成される領域において、円環状に配置されて隣接する分割鉄心片111の境界部を剪断分離するとともに曲げ加工する。
次に、スロット抜き工程にて、帯状鋼板に複数のスロットを打抜き形成することにより予め定められた数の磁極片部を形成する。
次に、内径抜き工程にて、磁極片部の歯先を打抜き形成する
なお、積層鉄心101の積層方向上向きに突起部31を設けてもよい。つまり、積層鉄心101の最下層の分割鉄心片111に突起部31が形成され、最上層の分割鉄心片111に、突起部31が挿入される孔のみを形成することもできる。
Claims (10)
- ヨーク片部に複数のかしめ部がそれぞれ形成された複数の環状鉄心片を、前記かしめ部を用いて積層した積層鉄心であって、
前記複数のかしめ部は、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きかしめ部と、前記スリットのないスリット無しかしめ部とからなることを特徴とする積層鉄心。 - 請求項1記載の積層鉄心において、前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部とが、互いに隣り合って配置されることを特徴とする積層鉄心。
- 請求項1又は2記載の積層鉄心において、前記かしめ部は、底部及びこれに連接する左右の傾斜部を有するVかしめによって形成されることを特徴とする積層鉄心。
- 請求項3記載の積層鉄心において、前記Vかしめの底部及び傾斜部の板厚は、前記Vかしめ以外の前記環状鉄心片の板厚よりも薄いことを特徴とする積層鉄心。
- 請求項3又は4記載の積層鉄心において、前記スリットは、前記Vかしめの全域、又は前記底部を中央にして前記Vかしめの一部に形成されていることを特徴とする積層鉄心。
- 分割ヨーク片部に複数のかしめ部がそれぞれ形成された複数の分割鉄心片を、前記かしめ部を用いて積層して分割積層鉄心を形成し、該分割積層鉄心を環状に接続した積層鉄心であって、
前記複数のかしめ部は、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きかしめ部と、前記スリットのないスリット無しかしめ部とで構成され、
前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部とが、互いに隣り合って配置されることを特徴とする積層鉄心。 - 請求項6記載の積層鉄心において、前記かしめ部は、底部及びこれに連接する左右の傾斜部を有するVかしめによって形成されることを特徴とする積層鉄心。
- ヨーク片部に複数のかしめ部がそれぞれ形成された複数の環状鉄心片を、前記かしめ部を用いて積層した積層鉄心であって、前記複数のかしめ部は、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きかしめ部と、前記スリットのないスリット無しかしめ部とからなる積層鉄心の製造方法であって、
前記スリット付きかしめ部及び前記スリット無しかしめ部の製造にあって、前記スリット付きかしめ部が形成される前記環状鉄心片の所定位置に前記スリットを形成する工程と、
前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部を成形する工程とを含むことを特徴とする積層鉄心の製造方法。 - 請求項8記載の積層鉄心の製造方法において、前記スリット付きかしめ部と前記スリット無しかしめ部とが、互いに隣り合って配置されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
- 分割ヨーク片部に複数のVかしめがそれぞれ形成された複数の分割鉄心片を、前記Vかしめを用いて積層して分割積層鉄心を形成し、該分割積層鉄心を環状に接続した積層鉄心であって、前記複数のVかしめは、対向するかしめ辺の間にかしめ力を弱めるスリットが形成されたスリット付きVかしめと、前記スリットのないスリット無しVかしめとからなる積層鉄心の製造方法であって、
前記スリット付きVかしめ及び前記スリット無しVかしめの製造にあって、前記スリット付きVかしめが形成される前記分割鉄心片の所定位置に前記スリットを形成する工程と、
前記スリット付きVかしめと前記スリット無しVかしめを成形する工程とを含み、
前記スリット付きVかしめと前記スリット無しVかしめとが、互いに隣り合って配置されることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
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