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JP5451207B2 - 水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法 - Google Patents

水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法 Download PDF

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JP5451207B2 JP2009149567A JP2009149567A JP5451207B2 JP 5451207 B2 JP5451207 B2 JP 5451207B2 JP 2009149567 A JP2009149567 A JP 2009149567A JP 2009149567 A JP2009149567 A JP 2009149567A JP 5451207 B2 JP5451207 B2 JP 5451207B2
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Description

本発明は、仕上り外観に優れた水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
近年、地球規模で環境問題に大きな関心が寄せられているが、自動車産業においても生産過程における環境改善の取り組みが積極的に進められている。自動車の製造工程からは、地球温暖化、産業廃棄物、揮発性有機溶剤(VOC)の排出などの問題が発生し、特にVOCについては、そのほとんどが塗装工程から発生するものであり、この対策が急務となっている。
自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されているが、
VOC削減の観点から、中塗り塗料及び上塗り塗料においても水性化が進められている。
しかしながら、従来の水性塗料は、主たる溶媒が水であるため、一般的に溶剤型塗料に比べ、塗膜の仕上り外観も不十分であるという問題があった。
塗装作業性(ワキ抵抗性、タレ抵抗性)が良好で、かつ平滑性に優れた高外観塗膜を提供する水性塗料組成物として、特許文献1には、特定のアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂、特定のポリカーボネート樹脂、硬化剤を主成分とする水性塗料が開示されている。しかしながら、該水性塗料は、タレ抵抗性及び仕上り外観が不十分である場合があった。また、特許文献2には、特定のアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂、特定のポリカーボネート樹脂、硬化剤、特定の樹脂粒子を主成分とする水性塗料が開示されている。しかしながら、該水性塗料によって得られる塗膜は、平滑性等の仕上り外観に劣る場合があった。
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗装を施した後、「中塗塗料の塗装→焼付け硬化→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年では、省エネルギー及び低VOC化の観点から、中塗塗料として、水性中塗り塗料を使用し、水性中塗塗料の塗装後の焼付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗装を施した後、「水性中塗塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」とする3コート1ベーク(3C1B)方式が試みられている(例えば特許文献3)。
上記水性中塗り塗料及び水性ベース塗料を用いた3コート1ベーク方式において、塗装ガン等の洗浄性に優れていて、複層塗膜を形成した際に優れた耐チッピング性を示し、また優秀な塗膜外観を呈することができる水性中塗り塗料として、特定の水分散型ポリウレタン組成物を含有することを特徴とする水性中塗り塗料組成物、及びこの水性中塗り塗料組成物を使用した複層塗膜の形成方法が提案されている(例えば特許文献4)。
しかしながら、上記水性中塗り塗料組成物を使用した複層塗膜の形成方法によっても、クリヤ塗料に含まれる溶剤が浸透して中塗り塗膜及びベース塗膜を膨潤させ、微小肌が生成し、得られる複層塗膜の平滑性や鮮映性が低下し、仕上り外観が不十分となる場合があった。
特開平8−12925号公報 特開平8−209059号公報 特開2004−358462号公報 WO2005/075587号公報
本発明の目的は、仕上り外観に優れた水性塗料組成物を提供すること、及び、被塗物上に、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成できる方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂エマルション(C)を含有する水性塗料組成物により、仕上がり外観に優れた塗膜を得られること、特に、被塗物上に、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、水性第1着色塗料として、該塗料組成物を用いることにより、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂エマルション(C)を含有する水性塗料組成物を提供するものである。
また、本発明は、被塗物上に、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に焼き付け乾燥する工程、
を順次行う複層塗膜形成方法であって、該水性第1着色塗料(X)が、上記水性塗料組成物であることを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
本発明の水性塗料組成物は、脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂エマルションを含むことを主な特徴とするものである。
上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜形成方法において、第1着色塗膜を形成する水性第1着色塗料として、上記ウレタン樹脂エマルションを含有する本発明の水性塗料組成物を使用すると、第1着色塗膜の水及び有機溶剤による膨潤が抑制されることにより、第1着色塗膜と第2着色塗膜との混層を防止することができる。また、有機溶剤を含有するクリヤ塗料塗装による第1着色塗膜及び第2着色塗膜への有機溶剤の浸透、膨潤による、仕上り外観不良の原因となる第1着色塗膜及び第2着色塗膜の微少な凹凸肌の形成を防止することができる。
以上、本発明の水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法によれば、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を得ることができるという効果を奏することができる。
以下、本発明の水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法を、さらに詳細に説明する。
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び脂環式ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂エマルション(C)を含有する水性塗料組成物である。
アクリル樹脂(A)
アクリル樹脂(A)としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性のアクリル樹脂を使用することができる。アクリル樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの硬化剤(B)と反応し得る架橋性官能基を有している。
なかでも、水酸基含有アクリル樹脂を使用することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
また、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を(i)〜(xix)に列挙するが、ここに挙げられなかったモノマーであっても、共重合可能な重合性不飽和モノマーであれば、適宜使用してもよいことはいうまでもない。これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)リン酸基含有重合性不飽和モノマー:2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xi)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xii)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii)光安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂としては、その一部として、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂(後記ウレタン樹脂エマルション(C)を除く)を併用してもよい。
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の水酸基価は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/g、好ましくは2〜100mgKOH/g、さらに好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、0〜200mgKOH/g、好ましくは0〜100mgKOH/g、さらに好ましくは0〜50mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量は、得られる塗膜の外観、耐水性等の観点から、2,000〜5,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000の範囲内であることが好適である。
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、テトラヒドロフランを溶媒として測定した、分子量既知のポリスチレンを標準物質とする換算値である。
アクリル樹脂として特に、水中での乳化重合により合成される水分散性アクリル樹脂粒子を好適に使用することができる。
水分散性アクリル樹脂粒子は、例えば、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得ることができる。
乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(M−3)、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物(M−4)等を例示することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、1分子中に1個以上のカルボキシル基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物で、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。さらに、これらの化合物の酸無水物や該酸無水物を半エステル化したモノカルボン酸なども本明細書において、該モノマー(M−1)に包含されるものとする。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、水分散性アクリル樹脂粒子に水分散性を付与するため、カルボキシル基を導入するためのモノマーである。
これらのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物であり、この水酸基は架橋剤と反応する官能基として作用することができる。該モノマーとしては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10個の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基含有メタクリレートモノマー、また、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。
これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
その他の重合性不飽和モノマー(M−3)は、上記モノマー(M−1)及び(M−2)以外の、1分子中に1個の重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(8)に列挙する。
(1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー(具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物):例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等。
上記アルキル(メタ)アクリレートモノマーのうち、得られる複層塗膜の平滑性の観点から、アルキル基の炭素数が4〜14、好ましくは4〜8のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを共重合成分とする場合、その共重合量は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、30〜80質量%であるのが好ましい。
(2)芳香族系ビニルモノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー:1分子中に1個以上のグリシジル基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。
(5)重合性不飽和基含有アミド系化合物:1分子中に1個以上のアミド基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等。
(6)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(7)ジエン系化合物:例えばブタジエン、イソプレン等。
(8)ビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
これらのその他のビニルモノマー(M−3)は、1種又は2種以上使用することができる。
多ビニル化合物(M−4)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物であり、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。なお、多ビニル化合物(M−4)には前記ジエン系化合物は含まれない。
これらの多ビニル化合物(M−4)は、1種で又は2種以上を使用することができる。
水分散性アクリル樹脂粒子における重合性不飽和モノマーの配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)が、該重合体粒子の水分散性及び耐水性等の観点から、好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、さらに特に好ましくは0.5〜5質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、使用する硬化剤の種類及び量により異なるが、硬化性及び塗膜の耐水性等の観点から、好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは0.1〜25質量%、さらに特に好ましくは1〜10質量%、その他の重合性不飽和モノマー(M−3)が、好ましくは20〜99.8質量%、さらに好ましくは30〜80質量%である。
多ビニル化合物(M−4)は、必要に応じて使用されるが、配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。
上記分散安定剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、両性イオン乳化剤、などをあげることができる。具体的にはアニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどをあげることができる。両性イオン乳化剤としては、アルキルベダインなどをあげることができる。
なお、分散安定剤としては、水分散性アクリル樹脂粒子を形成するビニルモノマーの乳化重合反応における共重合性、第1着色塗料中における水分散性アクリル樹脂粒子の分散安定性、本発明により得られる複層塗膜の耐水性等の塗膜性能及び環境対策のための残存モノマー削減等の観点から、特に反応性乳化剤を好適に使用することができる。反応性乳化剤とは、ビニルモノマーとラジカル反応性を有する乳化剤であり、換言すれば、1分子中に重合性不飽和基を有する界面活性剤である。
反応性乳化剤の具体例としては、エレミノールJS−1、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、S−120、S−180A、S−180、ラテムルPD−104、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430S、ラテムルPD−450(花王社製)、アクアロンHS−10、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープSR−1025、アデカリアソープER−10、アデカリアソープER−20、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40(旭電化社製)、ANTOX MS−60(日本乳化剤社製)などを挙げることができる。
上記乳化剤等の分散安定剤は、乳化重合反応において、1種又は2種以上を用いることができる。
分散安定剤の使用量は、生成する水分散性アクリル樹脂粒子に対して、0.1〜10質量%、特に1〜7.5質量%、さらに特に、1.5〜6質量%の範囲であるのが好ましい。
また、分散安定剤として、反応性乳化剤を使用する場合、反応性乳化剤の使用量は、生成する水分散性アクリル重合体粒子に対して、0.1〜10質量%、特に1.5〜7.5質量%、さらに特に、2〜6質量%の範囲であるのが好ましい。
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム等に代表される過酸化物、これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕などのアゾ化合物等を挙げることができる。これらのうち、アゾ化合物が好ましい。
ラジカル重合開始剤の量は水分散性アクリル樹脂粒子を形成する重合性不飽和モノマーの固形分総重量に対して、通常、0.1〜5.0質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%、さらに好ましくは1〜3.0質量%の範囲内であるのが適している。
乳化重合反応中における全ラジカル重合性不飽和単量体の濃度は、通常、0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜50質量%、さらに好ましくは1.0〜50質量%の範囲内であるのが適している。
乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは、60〜80℃とすることができる。
反応時間は通常3〜24時間、好ましくは5〜20時間、さらに好ましくは7〜16時間とすることができる。
水分散性アクリル樹脂粒子は、通常の均一構造又はコア/シェル構造などの多層構造のいずれであってもよい。
コア/シェル構造の水分散性アクリル樹脂粒子は、具体的には、例えば、最初にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しない重合性不飽和モノマー成分を乳化重合してコア部を形成し、その後、シェル部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を多量に含んだ重合性不飽和モノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。
コア部とシェル部との結合は、例えば、コア部の表面に残存するアリルアクリレート、アリルメタクリレート等による重合性不飽和結合に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合して行なうことができる。
水分散性アクリル樹脂粒子は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、0〜150mgKOH/g、好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。
また、水分散性アクリル樹脂粒子は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、0〜100mgKOH/g、好ましくは0〜50mgKOH/g、さらに好ましくは0〜35mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
さらに、水分散性アクリル樹脂粒子は、粒子の分散安定性及び塗膜とした時の平滑性の観点から、10〜500nm、好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、水分散性アクリル樹脂粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
水分散性アクリル樹脂粒子は塩基性化合物で中和することが好ましい。
水分散性アクリル樹脂粒子の中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
硬化剤(B)
本発明の水性塗料組成物の硬化剤(B)としては、例えば、メラミン樹脂(b−1)、ポリイソシアネート化合物(b−2)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b−3)、カルボジイミド基含有化合物(b−4)を用いることができる。
上記のうち、メラミン樹脂(b−1)を好適に用いることができる。
上記硬化剤(B)は、水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%の割合で使用することが好適である。
上記硬化剤(B)が、メラミン樹脂である場合、一般に、前記アクリル樹脂(A)は水酸基を含有し、なかでも、該アクリル樹脂(A)の水酸基価が1〜200mgKOH/g、好ましくは3〜100mgKOH/g、さらに好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
メラミン樹脂(b−1)としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;メチロールメラミンとアルコールとのアルキルエーテル化物;メチロールメラミンの縮合物とのアルコールのエーテル化物等を挙げることができる。ここで、アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。
メラミン樹脂としては、市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル212」、「サイメル253」、「サイメル254」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」、「(以上、モンサント社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学社製);「ユーバン20SE」、「ユーバン28SE」(三井化学社製)などを挙げることができる。
メラミン樹脂としては、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及び/又はブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を使用することができる。
これらのうち、耐溶剤膨潤性の観点から、メチルエーテル化メラミン樹脂を、耐チッピング性の観点から、イミノ基及びメチロール基含有メラミン樹脂を好適に使用することができる。
また、硬化剤としてメラミン樹脂を使用する場合、硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
上記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(b−2)である場合、一般に、前記アクリル樹脂(A)は水酸基を含有し、なかでも、該アクリル樹脂(A)の水酸基価が100〜200mgKOH/g、好ましくは130〜180mgKOH/g、さらに好ましくは140〜170mgKOH/gの範囲内であることが好適である。また、上記イソシアネート基含有化合物(b−2)のイソシアネート基と上記アクリル樹脂(A)の水酸基の当量比(NCO/OH)は、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5の範囲内であることが好適である。
上記ポリイソシアネート化合物(b−2)は、イソシアネート基を1分子中に少なくとも2個有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独で、又は2種以上併用して好適に使用することができる。
本発明にかかるポリイソシアネート化合物(b−2)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、上記ポリイソシアネート化合物を親水性に変性した、親水化ポリイソシアネート化合物(b−2’)が特に好適である。
上記親水化ポリイソシアネート化合物(b−2’)としては、例えば、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基を、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させて得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(b−2’−1)、ポリオキシエチレンのモノアルコールなどの親水性ポリエーテルアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物(b−2’−2)等を挙げることができる。
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホベタインなどのべタイン構造含有基などのアニオン性基を有し、かつ、イソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物であって、該化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物に親水性を付与することができる。
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等などを挙げることができる。
また、スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸などが挙げられる。
また、リン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェートなどを挙げることができる。
また、ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミンなどの3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物などを挙げることができる。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
また、ポリイソシアネート化合物に水分散性を付与するのに用いられる前記乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤を用いることができる。ノニオン基としてはポリエチレンオキサイドが好適に使用でき、アニオン基としては、スルホン酸およびリン酸などの塩が好適に用いられ、これらを併用しても良い。
ポリイソシアネート化合物としては、前記したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができるが、この中でも好ましい例として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びイソホロンジイソシアネートの誘導体を挙げることができる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(b−3)としては、上記、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよびこれらの誘導体をブロック剤でブロックしたものが用いられる。
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
また、ブロック剤の一部として1分子中に1個以上のヒドロキシル基および1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸を有するヒドロキシカルボン酸を使用することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸などを挙げることができる。ヒドロキシカルボン酸でブロックされたモノブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシカルボン酸由来のカルボキシル基を有しており、該カルボキシル基の親水性に基づいて、水分散性が良好である点から好ましい。
また、ブロック剤の一部として末端の一方が水酸基、他方がメトキシ基であるポリエチレングリコールを使用することで、ノニオン性の親水基を導入し、水分散性を付与したものも有効に使用できる。市販品としては、例えば、「デスモデュールPL3470」、「デスモデュールPL3475」、「デスモデュールVPLS2253」(いずれも住化バイエルウレタン社製、商品名)などを用いることができる。
硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物(b−3)を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物を用いることができる。
前記カルボジイミド基含有化合物(b−4)は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得ることができ、該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)などを用いることができる。
前記硬化剤(B)として、カルボジイミド基含有化合物(b−4)を用いる場合、一般に、前記アクリル樹脂(A)はカルボキシル基を含有し、なかでも、アクリル樹脂(A)のカルボキシル基由来の酸価が5〜80mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは30〜70mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
ウレタン樹脂エマルション(C)
本発明の水性塗料組成物のウレタン樹脂エマルション(C)は、脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるものである。
ポリイソシアネート成分としては、必須成分の脂環族ジイソシアネート及びその他のポリイソシアネートをあげることができる。
脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等をあげることができる。
上記のうち、脂環族ジイソシアネートとしては、得られる塗膜の耐有機溶剤膨潤性向上の観点から、特にイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネート成分における、脂環族ジイソシアネートの含有量(質量%)は、耐チッピング性の観点から、50〜100%が好ましく、70〜100%であるのがより好ましい。
その他のポリイソシアネートとしては、脂環族ジイソシアネート以外のジイソシアネート、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートをあげることができる。
脂環族ジイソシアネート以外のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
上記のジイソシアネートは、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネートとしては、例えば、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、ビューレット三量化物、トリメチロールプロパンアダクト化物等;トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等の三官能以上のイソシアネート等が挙げられ、これらのイソシアネート化合物はカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
ポリカーボネートジオール成分は、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるものである。
ポリカーボネートジオールは、通常、公知のジオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物である。
炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等をあげることができる。
上記のうち、耐チッピング性の観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールは、ジオール成分の総量に対し、25質量%以上、特に、50質量%以上であるのが好ましい。
ジオール成分としては、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオール以外のジオールも使用することができる。
炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオール以外のジオールとしては、
炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオール及びその他のジオールをあげることができる。
炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等の直鎖状ジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3− プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の分岐状ジオール;をあげることができる。
上記のうち、耐チッピング性の観点から、直鎖状ジオールが好ましく、特に、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
その他のジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の直鎖状ジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の分岐状ジオール;p−キシレンジオール、p−テトラクロロキシレンジオール等の芳香族系ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系ジオール等をあげることができる。
これらのジオールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
得られる複層塗膜の塗面平滑性及び耐チッピング性の観点から、ポリカーボネートジオール成分のジオール成分としては、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオール及び炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールを併用するのが好ましい。
両者を併用する場合、塗面平滑性の観点から、ジオール成分の総量に対し、両者を合計して50質量%以上、特に、65〜100質量%、さらに特に、75〜100質量%の範囲で含有するのが好ましい。
また、両者を併用する場合、両者の比率は、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールの質量/炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールの質量が、20/80〜80/20、特に、35/65〜65/35の範囲であるのが塗面平滑性及び耐チッピング性の観点から好ましい。
カルボニル化剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、ホスゲン等を挙げることができ、これらの1種を又は2種以上を組合せて使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等をあげることができる。
ウレタン樹脂エマルション(C)のポリオール成分として、ポリカーボネートジオール成分以外の周知一般のポリオールを一種類又は二種類以上混合で用いることができる。該ポリオールとしては、エステル結合を有するポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができる。
エステル結合を有するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
上記のポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと該多価アルコールの化学量論的量より少ない量の多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のアルコール類が挙げられる。
多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ジカルボキシルメチレンシクロヘキサン、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂環式ジカルボン酸類、トリメリット酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類などの多価カルボン酸、これらの多価カルボン酸の酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイド等のハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級エステルや、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
上記のポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオール等のカプロラクトンの開環重合物を挙げることができる。
上記の低分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオールで例示した多価アルコールを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記の低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
シリコーンポリオールとしては、分子中に、シロキサン結合を有する末端がヒドロキシル基のシリコーンオイル類等が挙げられる。
また、ポリオール成分として、カルボキシル基含有ジオールを使用することができる。カルボキシル基含有ジオールは、ポリウレタン分子に親水性基を導入するために用いられる。親水性基はカルボキシル基である。具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸が挙げられる。
ウレタン樹脂エマルション(C)のポリカーボネートジオール成分は、塗面平滑性の観点から、ポリオール成分の総量に対し、50〜100質量%、特に75〜100質量%、さらに特に、90〜100質量%の範囲内であるのが好ましい。
ポリイソシアネート成分、ポリカーボネートジオール成分及びポリカーボネートジオール以外のポリオール成分の他、必要に応じてアミン成分を使用することができる。アミン成分としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物をあげることができる。
モノアミン化合物としては、特に制限を受けず、周知一般のモノアミン化合物を一種類又は二種類以上混合で用いることができる。該モノアミン化合物としては、エチルアミン、プロピルアミン、2−プロピルアミン、ブチルアミン、2−ブチルアミン、第三ブチルアミン、イソブチルアミン等のアルキルアミン;アニリン、メチルアニリン、フェニルナフチルアミン、ナフチルアミン等の芳香族アミン;シクロヘキサンアミン、メチルシクロヘキサンアミン等の脂環式アミン;2−メトキシエチルアミン、3メトキシプロピルアミン、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミン等のエーテルアミン;エタノールアミン、プロパノールアミン、ブチルエタノールアミン、1−アミノ−2−メチル−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルアミノプロピルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。中でもアルカノールアミンがポリウレタン分子に対して良好な水分散安定性を与えるので好ましく、2−アミノエタノール、ジエタノールアミンが供給安定性の観点から好ましい。
ジアミン化合物としては、特に制限を受けず、周知一般のジアミン化合物を一種類又は二種類以上混合で用いることができる。該ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の前記例示の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものである低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類;ヒドラジン;上記のポリエステルポリオールに用いられる多価カルボン酸で例示したジカルボン酸とヒドラジンの化合物であるジカルボン酸ジヒドラジド化合物が挙げられる。これらジアミン化合物の中では、低分子ジアミン類が取り扱い作業性の観点から好ましく、なかでもエチレンジアミンが特に好ましい。
さらに、必要に応じてカルボキシル基中和剤成分を使用することができる。
カルボキシル基中和剤成分は、上記カルボキシル基含有ジオールのカルボキシル基と反
応し、親水性の塩を形成する塩基性化合物である。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類等の3級アミン化合物、アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。中でも、得られるウレタン樹脂エマルション(C)の分散安定性が良好であるので、3級アミン化合物が好ましい。
ウレタン樹脂エマルション(C)には、上記各成分の他に、ポリウレタン分子に分岐や架橋構造を与える内部分岐剤及び内部架橋剤を用いてもよい。これらの内部分岐剤及び内部架橋剤としては、3価以上のポリオールを好適に使用することができ、例えばトリメチロールプロパンが挙げられる。
ウレタン樹脂エマルション(C)の製造方法については、特に制限を受けず、周知一般の方法を適用することができる。製造方法としては、反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒中でプレポリマー又はポリマーを合成してから、これを水にフィードして分散させる方法が好ましい。例えば、上記溶媒中でポリイソシアネート成分、ポリカーボネートジオール成分、必要に応じて使用されるポリカーボネートジオール以外のポリオール成分からプレポリマーを合成して、これを水中で必要に応じて使用されるアミン成分と反応させる方法(イ)、ポリイソシアネート成分、ポリカーボネートジオール成分、必要に応じて使用されるポリカーボネートジオール以外のポリオール成分及び必要に応じて使用されるアミン成分からポリマーを合成して、これを水中にフィードして分散させる方法(ロ)が挙げられる。また、必要に応じて使用される中和剤成分は、予めフィードする水中に加えておいてもよく、フィードの後で加えてもよい。
上記の好適な製造方法に使用される、反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、3〜100質量%が用いることができる。
上記の製造方法において、その配合比は、特に制限を受けるものではない。該配合比は、反応させる段階でのポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、ポリカーボネートジオール成分、必要に応じて使用されるポリカーボネートジオール以外のポリオール成分及びアミン成分中のイソシアネート反応基とのモル比に置き換えることができる。該モル比については、分散しているポリウレタン分子中に未反応のイソシアネート基が不足すると塗料として用いたときに塗膜密着性や塗膜強度が低下する場合があり、過剰に存在すると未反応イソシアネート基が、塗料の分散安定性や物性に影響を及ぼす場合があるので、イソシアネート基1に対して、イソシアネート反応性基は0.5〜2.0が好ましい。 また、ポリカーボネートジオール成分及び必要に応じて使用されるポリカーボネートジオール以外のポリオール成分中のイソシアネート反応性基のモル比は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基1に対して0.3〜1.0が好ましく、0.5〜0.9がより好ましい。また、必要に応じて使用されるアミン成分中のイソシアネート反応性基のモル比は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基1に対して、0.1〜1.0が好ましく、0.2〜0.5がより好ましい。
また、必要に応じて使用されるカルボキシル基中和剤成分による、中和率は、得られるウレタン樹脂エマルション(C)に対し、充分な分散安定性を与える範囲に設定する。カルボキシル基含有ジオール中のカルボキシル基のモル数1に対して、0.5〜2.0倍当量が好ましく、0.7〜1.5倍当量がより好ましい。
ウレタン樹脂エマルション(C)の分散性を安定させるために、界面活性剤等の乳化剤を1種類又は2種類以上用いてもよい。粒子径については、特に制限を受けないが、良好な分散状態を保つことができるので1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。
上記の乳化剤としては、ウレタン樹脂エマルションに使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。これらを使用する場合は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
上記のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが挙げられる。
上記のノニオン性界面活性剤としては、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
上記のノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第三ブチルフェノール、2,5−ジ第三ブチルフェノール、3,5−ジ第三ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第三オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものが挙げられる。また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物とは、ランダム付加物でもブロック付加物でもよい。
上記のカチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン塩、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
これらの乳化剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、ウレタン樹脂1に対する質量比で0.05より小さいと充分な分散性が得られない場合があり、0.3を超えると水性塗料組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、延び等の物性が低下するおそれがあるので0.01〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
また、ウレタン樹脂エマルション(C)において、その固形分は、特に制限を受けず、任意の値を選択できる。該固形分は10〜50質量%が分散性と塗装性が良好なので好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
ウレタン樹脂エマルション(C)に分散しているウレタン樹脂の平均分子量については、特に制限を受けず、水性塗料としての分散性及び良好な塗膜を与える範囲を選択することができる。平均分子量については1,000〜500,000が好ましく、5,000〜300,000がより好ましい。また、水酸基価についても、特に制限を受けず、任意の値を選択することができる。酸価は、樹脂1g当たりのKOHの消費量(mg)で表され、通常0〜100mgKOH/gである。
オリゴマー(D)
本発明の水性塗料組成物には、複層塗膜の塗面平滑性を向上させる観点から、水トレランス10以上、好ましくは20以上、さらに好ましくは50以上であり、かつ、数平均分子量200〜1500、好ましくは300〜1000、さらに好ましくは400〜1000のオリゴマー化合物(前記アクリル樹脂(A)を除く)をさらに含有することができる。
具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、これらのエーテル化物等をあげることができる。
なかでも、水酸基含有オリゴマー、特にポリオキシプロピレングリセリルエーテルを用いることが好ましい。
市販品としては、GP400、GP600、GP1000(以上、三洋化成社製)等をあげることができる。
本発明において、オリゴマーについての水トレランスは以下の測定により得られる値である。
オリゴマーの水トレランスの測定は、以下の方法により行なった。直径5cmの200mlビーカーに試料(オリゴマー)を5.0g取り、50mlのアセトンで希釈する。試料溶液を20℃とし、ビーカーの底面の下に4号活字が印刷された新聞を置き、マグネチックスターラーで撹拌しながら、脱イオン水を滴下していく。この時、ビーカー底面の下に置いた新聞の4号活字が該ビーカー上部から透視し判読できる限界の脱イオン水の最大滴下量(ml)を水トレランスとする。
上記水トレランスの値が大きいほどオリゴマーは親水性であることを意味する。
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、前記アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)を含有する水性塗料である。
ここで、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。上記水性塗料組成物中の水の含有量は、10〜90質量%程度が好ましく、20〜80質量%程度がより好ましく、30〜60質量%程度がさらに好ましい。
水性塗料組成物のアクリル樹脂(A)、硬化剤(B)及びウレタン樹脂エマルション(C)の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量を基準として、固形分として、アクリル樹脂(A)が30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%、さらに好ましくは40〜60質量%、硬化剤(B)が5〜20質量%、好ましくは7.5〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%、ウレタン樹脂エマルション(C)が10〜50質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内であるのが適している。さらに、オリゴマー(D)を含有する場合、オリゴマー(D)の量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の総量を基準として、固形分として、1〜20質量%。好ましくは3〜17.5質量%、さらに好ましくは5〜15質量%の範囲内であるのが適している。
本発明の水性塗料組成物は、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂を含むことができる。
水性塗料組成物は、さらに、顔料(E)を含有することが好ましい。該顔料(E)としては、例えば、着色顔料(E1)、体質顔料(E2)、光輝性顔料(E3)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水性塗料組成物が、顔料(E)を含有する場合、該顔料(E)の配合量は、水性塗料組成物中の、アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、一般に1〜300質量部、好ましくは20〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部の範囲内であることが好適である。
なかでも、水性塗料組成物が着色顔料(E1)及び/又は体質顔料(E2)を含有し、該着色顔料(E1)及び体質顔料(E2)の合計含有量が、水性塗料組成物中のアクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、40〜300質量部、好ましくは50〜200質量部、さらに好ましくは60〜150質量部の範囲内であることが好適である。
上記着色顔料(E1)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
水性塗料組成物が上記着色顔料(E1)を含有する場合、該着色顔料(E1)の配合量は、水性塗料組成物中のアクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは3〜200質量部、さらに好ましくは5〜150質量部の範囲内であることができる。
また、前記体質顔料(E2)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム、タルクを好適に使用することができる。
なかでも、上記体質顔料(E2)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れ、後記の水性第2着色塗料(Y)が光輝性顔料(E3)を含有する塗料である場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を得られるため好適である。
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム20個の最大径を平均した値である。
水性塗料組成物が上記体質顔料(E2)を含有する場合、該体質顔料(E2)の配合量は、水性塗料組成物中のアクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは10〜150質量部の範囲内であることができる。
また、前記光輝性顔料(E3)としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ、これらの光輝性顔料(E3)は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
水性塗料組成物が上記光輝性顔料(E3)を含有する場合、該光輝性顔料(E3)の配合量は、水性塗料組成物中のアクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
水性塗料組成物は、耐タレ性及び耐ワキ性向上の観点から、さらに、疎水性溶媒(F)を含有することが好ましい。
該疎水性溶媒(F)としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒であるのが望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
疎水性溶媒(F)としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
水性塗料組成物が上記疎水性溶媒(F)を含有する場合、該疎水性溶媒(F)の配合量は、アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部を基準として、2〜40質量部であるのが好ましく、5〜35質量部であるのがより好ましく、10〜30質量部であるのが更に好ましい。
また、水性塗料組成物は、必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒(F)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤などが挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
上記増粘剤としては、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤を用いるのが好ましく、会合型増粘剤を用いるのがより好ましく、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤を用いるのが更に好ましい。該ウレタン会合型増粘剤としては、市販品を使用できる。市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」等が挙げられる。
また、水性塗料組成物が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の配合量は、アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)の合計固形分100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.02〜3質量部であるのがより好ましく、0.03〜2質量部であるのが更に好ましい。
水性塗料組成物は、アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)ならびにウレタン樹脂エマルション(C)並びに、必要に応じて、オリゴマー(D)、顔料(E)、疎水性溶媒(F)及びその他の塗料用添加剤を、公知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって、調製することができる。また、水性媒体としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
水性第1着色塗料(X)の固形分濃度は、通常、30〜70質量%であるのが好ましく、35〜60質量%であるのがより好ましく、40〜55質量%であるのが更に好ましい。
水性塗料組成物は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであっても良いが、貯蔵安定性の観点から必要に応じて、アクリル樹脂(A)及びウレタン樹脂エマルション(C)を含有する主剤と、架橋剤(B)を含有する硬化剤とからなる二液型塗料とすることができる。また、一般に、上記主剤が、さらに、顔料及び溶媒を含有し、上記硬化剤が、さらに、硬化触媒及び溶媒を含有することが好ましい。また、上記硬化剤は、さらに界面活性剤を含有してもよい。
塗装に際しては、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜60秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度である。
水性塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。
水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、5〜40μm、好ましくは7〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmとなる量であるのが好ましい。
水性塗料組成物自体の塗膜は、例えば、120〜170℃、特に130〜160℃で、10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。
水性塗料組成物から形成される塗膜は、予備乾燥後において100%以下の水膨潤率及び300%以下の有機溶剤膨潤率であるのが好ましい。
水性塗料組成物から形成される塗膜において、該水膨潤率は、さらに好ましくは60%以下、さらに特に好ましくは20%以下である。また、該有機溶剤膨潤率は、さらに好ましくは250%以下、さらに特に好ましくは200%以下である。
水膨潤率の低い上記塗膜上では、平滑性の良好な第2着色塗膜が得られ、さらに、有機溶剤膨潤率の低い上記塗膜上では、クリヤ塗料に含まれる有機溶剤による塗膜の膨潤による塗面平滑性の低下も防止することができる。
本明細書において、水膨潤率及び水抽出率とは、以下のようにして測定される値のことをいう。
まず、イソプロパノールを用いて脱脂した50mm×90mmのブリキ板を秤量し、その重量をaとする。該ブリキ板の表面に、脱イオン水にて20℃におけるフォードカップNo.4による測定で30秒の塗装粘度に調整した水性塗料組成物を硬化膜厚で20μmとなるように自動塗装機で回転霧化方式により塗装する。空調(24℃、68%RH)されたブース内で3分間セッティングした後、80℃で3分間プレヒートを行い、プレヒート後の塗板重量を秤量し、その重量をbとする。その後、塗板を、20℃の脱イオン水に3分間浸漬する。脱イオン水から取り出した後、塗板の脱イオン水をウエスでふき取り、塗板重量を秤量し、その重量をcとする。その後、塗板を110℃で1時間乾燥させ、冷却後の塗板重量を秤量し、その重量をdとする。
以下の式(1)、(2)で算出される値を本明細書における水膨潤率、水抽出率と定義する。
水膨潤率(%)= 〔{(c−a)/(d−a)}−1〕×100 (1)
水抽出率(%)= 〔1−{(d−a)/(b−a)}〕×100 (2)
また、本明細書において、有機溶剤膨潤率及び有機溶剤抽出率とは、以下のようにして測定される値のことをいう。
まず、イソプロパノールを用いて脱脂した50mm×90mmのブリキ板を秤量し、その重量をaとする。該ブリキ板の表面に、脱イオン水にて20℃におけるフォードカップNo.4による測定で30秒の塗装粘度に調整した水性塗料組成物を硬化膜厚で20μmとなるように自動塗装機で回転霧化方式により塗装する。空調(24℃、68%RH)されたブース内で3分間セッティングした後、80℃で3分間プレヒートを行い、プレヒート後の塗板重量を秤量し、その重量をbとする。その後、塗板を、20℃の有機溶剤に1分間浸漬する。有機溶剤から取り出した後、水性塗料組成物の塗装面は拭き取らず、ウエス上に垂直に立てて表面に残った溶剤を30秒間ウエスに吸い込ませる。塗板重量を秤量し、その重量をcとする。その後、塗板を110℃で1時間乾燥させ、冷却後の塗板重量を秤量し、その重量をdとする。
なお、有機溶剤としては、3−エトキシエチルプロピオネート/ブタノールの70/30(質量部)混合溶剤を用いた。
以下の式(3)、(4)で算出される値を本明細書における有機溶剤膨潤率、有機溶剤抽出率と定義する。
有機溶剤膨潤率(%)= 〔{(c−a)/(d−a)}−1〕×100 (3)
有機溶剤抽出率(%)= 〔1−{(d−a)/(b−a)}〕×100 (4)
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、被塗物上に、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に焼き付け乾燥する工程、
を順次行う複層塗膜形成方法であって、該水性第1着色塗料(X)が、本発明の水性塗料組成物であることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法によれば、まず、被塗物上に、水性第1着色塗料(X)として、本発明の水性塗料組成物が塗装される。
被塗物
水性第1着色塗料(X)を適用する被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、これらの樹脂の混合物、各種の繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらの内、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成したものなどを挙げることができる。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好ましい。
また、上記被塗物は、前記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理、プライマー塗装等を行ったものであってもよい。また、該プラスチック材料と上記金属材料とが組合わさったものであってもよい。
工程(2)
以上に述べた工程(1)で形成される水性第1着色塗料(X)の塗膜(第1着色塗膜)上には、次いで、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
上記第1着色塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
上記プレヒートの温度は、40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜12分間がより好ましく、2〜10分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
第1着色塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、例えば、上記プレヒート、エアブロー等の手段により、塗膜の固形分含有率が通常60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
ここで、塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性第1着色塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、プレヒートなどがされた該アルミホイルを水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
第1着色塗膜上に塗装される水性第2着色塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものであって、例えば、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、前記架橋剤(B)などの硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、得られる複層塗膜の外観、耐水性等の観点から、基体樹脂として水酸基含有樹脂を使用し、架橋剤として上記メラミン樹脂(b−1)を使用する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
また、上記顔料としては、前記着色顔料(E1)、体質顔料(E2)、光輝性顔料(E3)等を使用することができる。なかでも、水性第2着色塗料(Y)が、上記顔料の少なくとも1種として着色顔料(E1)及び/又は光輝性顔料(E3)を含有することが好ましい。
上記着色顔料(E1)としては、例えば、水性塗料組成物の説明において例示した、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。
水性第2着色塗料(Y)が上記着色顔料(E1)を含有する場合、該着色顔料(E1)の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常、1〜150質量部、好ましくは3〜130質量部、さらに好ましくは5〜110質量部の範囲内であることが好適である。
上記光輝性顔料(E3)としては、例えば、水性塗料組成物の説明において例示した、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料(E3)は単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
また、上記光輝性顔料(E3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(E3)としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
水性第2着色塗料(Y)が上記光輝性顔料(E3)を含有する場合、該光輝性顔料(E3)の配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることが好適である。
また、水性第2着色塗料(Y)は、前記疎水性溶媒(F)を含有することが好ましい。疎水性溶媒(F)としては、得られる塗膜の光輝感に優れる観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、例えば、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
水性第2着色塗料(Y)が、疎水性溶媒(F)を含有する場合、その配合量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2〜70質量部、好ましくは11〜60質量部、さらに好ましくは16〜50質量部の範囲内であることが好適である。
また、水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有することができる。これらの塗料用添加剤は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
水性第2着色塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で5〜30μm、好ましくは8〜25μm、さらに好ましくは10〜20μmの範囲内とすることができる。
工程(3)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(2)で形成される水性第2着色塗料(Y)の塗膜(第2着色塗膜)上に、クリヤ塗料(Z)が塗装される。
上記第2着色塗膜は、クリヤ塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
第2着色塗膜は、クリヤ塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
クリヤ塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤ塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤ塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
クリヤ塗料(Z)の基体樹脂/架橋剤の組合せとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
また、上記クリヤ塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
また、上記クリヤ塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料(E1)、光輝性顔料(E3)、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料(E2)、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤ塗料(Z)は、水性第2着色塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。クリヤ塗料(Z)は、通常、硬化膜厚で20〜80μm、好ましくは25〜60μm、より好ましくは30〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
また、クリヤ塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、50〜110℃程度で1〜30分間程度プレヒートすることができる。
工程(4)
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤ塗膜が、同時に加熱硬化せしめられる。
上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより行うことができる。加熱温度は、80〜180℃が好ましく、110〜170℃がより好ましく、130〜160℃がさらに好ましい。また加熱時間は、10〜90分間が好ましく、15〜60分間がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン10部、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、n−ブチルアクリレート11.5部、ヒドロキシエチルアクリレート30部、アクリル酸3.5部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール3.03部を加え、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は27mgKOH/g、水酸基価は145mgKOH/gであった。
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。次いで、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成した。
次いで、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下した。1時間熟成した後、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、濾液として、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈して20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(A−2)の分散液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は33mgKOH/g、水酸基価は25mgKOH/gであった。
モノマー乳化物(1):脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2):脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
ウレタン樹脂エマルションの製造
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器にUMC(1/1)(ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製)53.8部、ジメチロールプロピオン酸6.9部を仕込み、内容物を撹拌しながら80℃まで加熱した。80℃に達した後、39.3部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを1時間かけて滴下した。その後、N−メチルピロリドン29.9部を添加した後、更に80℃で熟成し、ウレタン化反応を行なった。イソシアネート価が3.0以下になったら加熱をやめ、70℃でトリエチルアミン3.27部を加えた。
次いで50℃を維持した状態で脱イオン水200部を1時間かけて滴下し、水分散を行うことによりウレタン樹脂エマルション(C−1)を得た。
得られたウレタン樹脂エマルション(C−1)は、固形分30%、酸価25.9mgKOH/gで、動的光散乱法により測定した粒子径は77nmであった。
製造例4〜17
表1に示す配合で製造例3と同様に合成することにより、各ウレタン樹脂エマルション(C−2)〜(C−15)を得た。
なお、表中の(*1)〜(*13)は以下の意味を有する。
(*1)UMC(1/1):ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製。
(*2)UMCD(1/1):ジオール成分が1,10−デカンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,10−デカンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール。
(*3)UMCE(1/1):ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジオールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジオールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール。
(*4)UMC(3/1):ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=3/1であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製。
(*5)UMC(1/3):ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=1/3であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製。
(*6)UH100:ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールであるポリカーボネートジオール、宇部興産社製。
(*7)UC100:ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノールであるポリカーボネートジオール、宇部興産社製。
(*8)PEG1000:ポリエチレングリコール、分子量1000、三洋化成社製。
(*9)DMPA:ジメチロールプロピオン酸
(*10)1,4BD:1,4−ブタンジオール
(*11)MHDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
(*12)IPDI:イソホロンジイソシアネート
(*13)水添MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
Figure 0005451207
水性塗料組成物(X)の製造
実施例1
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(A−1)の溶液25.5部(樹脂固形分10.2部)、ルチル型二酸化チタン(E1−1)(商品名「JR−806」テイカ株式会社製)87部、カーボンブラック(E1−2)(商品名「カーボンMA−100」三菱化学株式会社製)0.8部及び脱イオン水43部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散させて顔料分散ペーストを得た。
次に、得られた顔料分散ペースト156部、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A−2)の分散液150部(樹脂固形分45部)、製造例3で得たウレタン樹脂エマルション(C−1)100部(樹脂固形分30部)、メラミン樹脂(B−1)(メチルエーテル化メラミン樹脂、重量平均分子量800、固形分70%)21.4部(樹脂固形分15部)を均一に混合した。
次いで、得られた混合物にASE−60(アルカリ膨潤型増粘剤、商品名、ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.2、塗料固形分44%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性塗料組成物(X−1)を得た。また、得られた水性塗料組成物(X−1)の、硬化膜厚が20μmとなるように塗装し、80℃で3分間加熱した後の塗膜の水膨潤率は20%、有機溶剤(3−エトキシエチルプロピオネート/ブタノールの70/30(質量部)混合溶剤)膨潤率は180%であった。
実施例2〜15及び比較例1〜2
アクリル樹脂、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及びウレタン樹脂エマルションとして、以下の表2に示す原材料を用い、表2に示す配合で実施例1と同様に調整することにより、pH8.2、塗料固形分44%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の各水性塗料組成物(X−2)〜(X−17)を得た。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B−3)は、デスモジュールBL3475(マロン酸ジエチルブロックヘキサメチレンジイソシアネート、バイエル社製)である。オリゴマー(D−1)はポリオキシプロピレングリセリンエーテル(GP600(商品名)、分子量600、三洋化成社製)であり、水トレランスは100以上である。
なお、表2に示す配合は固形分配合である。
Figure 0005451207
水性第2着色塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例18
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、重量平均分子量が6400であった。
光輝性顔料分散液の製造例
製造例19
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト(商品名「GX−180A」旭化成メタルズ株式会社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した。次いで、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」大阪有機化学工業株式会社製)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間かけて滴下した。その後、1時間攪拌しながら熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。リン酸基含有樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温した後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した。その後、さらに1時間攪拌しながら熟成した後、イソプロパノール59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
水性第2着色塗料(Y)の製造
製造例20
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A−2)の分散液100部(固形分30部)、製造例18で得たポリエステル樹脂溶液57部(固形分40部)、製造例19で得た光輝性顔料分散液62部(樹脂固形分4部)及びメラミン樹脂(商品名「サイメル325」日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分80%)37.5部(固形分30部)を均一に混合し、更に、ポリアクリル酸系増粘剤(商品名「プライマルASE−60」ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−1)を得た。
試験板の作製
実施例1〜15及び比較例1〜2で得た水性塗料組成物(X−1)〜(X−17)、及び製造例20で得た水性第2着色塗料(Y−1)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT−10」関西ペイント社製)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
実施例16
上記試験用被塗物に、水性第1着色塗料(X−1)として、前記実施例1で得た水性塗料組成物(X−1)を回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の第1着色塗膜上に製造例20で得た水性第2着色塗料(Y−1)を回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の第2着色塗膜上にアクリル樹脂系溶剤型上塗クリヤ塗料(商品名「マジクロンKINO−1210」関西ペイント株式会社製、以下「クリヤ塗料(Z−1)」ということがある、なお、クリヤ塗料(Z−1)の含有溶剤組成(質量比)は、ソルベッソ100(石油系芳香族混合溶剤)/ソルベッソ150(石油系芳香族混合溶剤)/3−エトキシエチルプロピオネート/ブタノール/DBE(グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルの混合溶剤、DuPont社製)=42/23/20/7.5/7.5である。)を硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜からなる該複層塗膜を硬化させることにより試験板を作製した。
実施例17〜30及び比較例3〜4
実施例16において、実施例1で得た水性塗料組成物(X−1)を上記表2に示す水性塗料組成物(X−2)〜(X−17)のいずれかに変更する以外は、実施例16と同様にして各試験板を作製した。
評価試験
上記実施例16〜30及び比較例3〜4で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表3に示す。
(試験方法)
平滑性:商品名「Wave Scan DOI」(BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値が小さいほど塗面の平滑性が良好であることを示す。Wcが10以下であれば、平滑性は良好である。
各実施例及び比較例の第1着色塗膜の水膨潤率及び有機溶剤膨潤率とともに上記試験結果を下記表3に示す。
Figure 0005451207

Claims (12)

  1. アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)、及び脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるウレタン樹脂エマルション(C)を含有する水性塗料組成物。
  2. アクリル樹脂(A)として、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、アルキル基の炭素数が4〜14であるアルキル(メタ)アクリレートモノマー30〜80質量%を含有する重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂粒子を含有する請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 硬化剤(B)が、メラミン樹脂(b−1)、ポリイソシアネート化合物(b−2)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b−3)及びカルボジイミド基含有化合物(b−4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
  4. ウレタン樹脂エマルション(C)が、脂環族ジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、ジオール成分として、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオール及び炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールを含有し、ジオール成分の総量に対し、両者を合計して50質量%以上含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオール成分とを含む構成成分から得られるものである請求項1〜3のいずれかに記載の水性塗料組成物。
  5. ポリカーボネートジオール成分を構成するジオール成分において、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールが、1,6−ヘキサンジオールである請求項4に記載の水性塗料組成物。
  6. 炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族ジオールの質量/炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族ジオールの質量の比率が、20/80〜80/20の範囲である請求項4又は5に記載の水性塗料組成物。
  7. アクリル樹脂(A)、硬化剤(B)及びウレタン樹脂エマルション(C)の固形分総量を基準にして、アクリル樹脂(A)30〜70質量%、硬化剤(B)5〜20質量%、ウレタン樹脂エマルション(C)10〜50質量%の割合である請求項1〜6のいずれかに記載の水性塗料組成物。
  8. 水性塗料組成物から形成される塗膜が、100%以下の水膨潤率及び300%以下の有機溶剤膨潤率を有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の水性塗料組成物。
  9. さらに、水トレランス10以上であり、かつ、数平均分子量200〜1500のオリゴマー(D)を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料組成物が塗装された物品。
  11. 被塗物上に、下記の工程(1)〜(4)、
    工程(1):水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
    工程(2):前記工程(1)で形成された第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
    工程(3):前記工程(2)で形成された第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び
    工程(4):前記工程(1)〜(3)で形成された第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に焼き付け乾燥する工程、
    を順次行う複層塗膜形成方法であって、該水性第1着色塗料(X)が、請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料組成物であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
  12. 請求項11に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。
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