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JP5445758B2 - 車両用変速機制御装置 - Google Patents

車両用変速機制御装置 Download PDF

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JP5445758B2 JP2009268798A JP2009268798A JP5445758B2 JP 5445758 B2 JP5445758 B2 JP 5445758B2 JP 2009268798 A JP2009268798 A JP 2009268798A JP 2009268798 A JP2009268798 A JP 2009268798A JP 5445758 B2 JP5445758 B2 JP 5445758B2
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Description

本発明は車両用変速機制御装置に関し、特に変速機が有する複数の変速段を、それぞれ別個のクラッチを介して駆動力の伝達が行われる2つのグループに分け、一方のグループのいずれか変速段を駆動力の伝達に使用しているときに、他方のグループのいずれかの変速段を予め選択しておくことが可能な、いわゆるデュアルクラッチ式変速機を備えた車両用の変速機制御装置に関する。
車両に搭載される変速機として、平行に設けられた入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成したいわゆる平行軸式の変速機が従来より知られている。平行軸式の変速機において変速段の切り換えを行う場合、同一の入力軸上で2つの変速段が同時に選択された状態とすることはできないため、その時点で選択されている変速段における変速ギヤの噛み合いを解除した後に、新たな変速段の選択を行う。しかしながら、このような変速段の切り換えを行う際にはエンジンなどの動力源から変速装置への駆動力伝達が一時的に遮断されるため、運転者がアクセルペダルを踏んでいても駆動輪への連続的な駆動力伝達が行われず、運転フィーリングが悪化するという問題点があった。
そこでこのような問題点を解決するため、第1の変速段のグループとして第1入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第1変速機構を設けると共に、第2の変速段のグループとして第2入力軸と出力軸との間に複数の変速段を構成する第2変速機構を設け、第1クラッチを介して動力源からの駆動力を第1入力軸に伝達可能とする一方、第2クラッチを介して上記駆動力を第2入力軸に伝達可能とした、いわゆるデュアルクラッチ式変速機が開発されている。
このデュアルクラッチ式変速機では、例えば第1変速機構の変速段が選択されて動力源からの駆動力が第1クラッチを介して第1入力軸に伝達されているときには、第2クラッチが切断されることによって、第2入力軸には動力源からの駆動力が伝達されないようになっている。このとき第2変速機構において、変速段の切り換え後に使用が予測される変速段を事前に選択して噛み合わせる操作として、いわゆるプリセレクト制御を行い、その後に変速段の切換指示があると、第1クラッチを切断していきながら第2クラッチを接続していくことにより、駆動輪への動力伝達を連続的に行うようにして運転フィーリングを改善している。このプリセレクト制御は、第2変速機構の変速段が選択されて動力源からの駆動力が第2クラッチを介して第2入力軸に伝達されているときにも、第1変速機構に対して同様に行われるようになっている。
このようなプリセレクト制御を実行するように構成された変速機を用いる場合、次に使用される変速段を的確に予測して選択しなければ、プリセレクト制御によってかえって次の変速段への切り換えが遅れてしまうことになる。このため、プリセレクト制御で事前選択しておく変速段を、的確に予測する方法については様々な提案がなされている。また、次に使用される変速段を的確に予測できたとしても、予測された変速段をそのまま無条件で事前選択してしまった場合に生じる問題を解消するための提案も、例えば特許文献1によってなされている。
特許文献1には、プリセレクト制御を行うようにしたデュアルクラッチ式変速機において、ダウンシフト方向に次の変速段を事前選択したときの歯車の歯打ち音の発生を防止する変速機制御装置が示されている。特許文献1の変速機制御装置では、プリセレクト制御で次に使用が予測される変速段の事前選択が行われる領域を極力小さくすることにより、このような歯打ち音の発生を抑制するようにしている。即ち、エンジン回転数が低く、比較的素早い変速段の切り換えが要求されない領域では、プリセレクト制御で次の変速段の事前選択を行わず、スロットル開度が比較的小さいにも関わらずエンジン回転数が比較的高い領域では、プリセレクト制御で次の変速段の事前選択を行うようにしている。
特開平9−196164号公報
デュアルクラッチ式変速機でプリセレクト制御を行うようにした場合、そのときに使用している変速段に加え、プリセレクト制御によって事前選択されている変速段もエンジンなどの動力源によって駆動されることになる。プリセレクト制御で事前選択された変速段については、動力源の駆動力を車両の駆動輪に伝達するのに使用されるわけではないが、事前選択されている変速段における慣性モーメントやオイルの攪拌抵抗及び粘性抵抗などによって、動力源の発生エネルギが消費される。このため、動力源がエンジンである場合には、このようなエネルギの消費によって燃費が悪化することになり、エンジン以外の動力源の場合にもエネルギの利用効率が低下することになる。そして、プリセレクト制御で次に使用が予測される変速段を常に事前選択するようにした場合、このような燃費の悪化やエネルギの利用効率低下の問題は顕著なものとなる。
特許文献1の変速機制御装置では、一部の特定運転領域においてプリセレクト制御による変速段の事前選択が行われないようになっているので、常時変速段を事前選択しておく場合に比べれば上記のような問題が軽減される可能性もある。しかしながら、特許文献1の変速機制御装置で行われるプリセレクト制御でも、上記特定運転領域以外の運転領域では、常に変速段の事前選択が行われるようになっており、このときには上述したようなエネルギの損失が発生するため、エネルギの利用効率については更に改善の余地がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プリセレクト制御を適切に行うことにより、デュアルクラッチ式変速機におけるエネルギの利用効率を更に改善することが可能な車両用変速機制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の車両用変速機制御装置は、第1クラッチに対応して設けられた複数の変速段の1つを使用し、上記第1クラッチを介して伝達される走行用の動力源の駆動力を駆動輪に伝達する第1変速段群と、第2クラッチに対応して設けられた複数の変速段の1つを使用し、上記第2クラッチを介して伝達される上記動力源の駆動力を上記駆動輪に伝達する第2変速段群と、上記第1及び第2クラッチの一方を接続状態としているときに、上記第1及び第2クラッチの他方を切断状態とすると共に、上記第1及び第2変速段群のうち、上記第1及び第2クラッチの上記他方に対応した変速段群の変速段から次に使用が予測される変速段を事前に選択するためのプリセレクト制御を行う制御手段とを備えた車両用変速機制御装置において、上記制御手段は、上記駆動輪への駆動力の伝達に使用する変速段の切り換えが車両の走行速度とアクセルペダルの踏込量とに応じて規定された変速マップを、上記第1及び第2変速段群の変速段毎に有し、予め定められた所定変速段を上記駆動輪への駆動力の伝達に使用している場合に、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、上記使用中の変速段に対応した変速マップに予め定められている所定領域内にあるときに限り、上記使用中の変速段と異なる変速段を事前選択する第1制御モードと、上記所定変速段を上記駆動輪への駆動力の伝達に使用している場合に、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、上記所定領域内にあるか否かに関わらず、上記変速段の事前選択を中止する第2制御モードとの選択的に切り換え可能な2つの制御モードで上記プリセレクト制御を実行することを特徴とする(請求項1)。
このように構成された車両用変速機制御装置によれば、制御手段は、第1クラッチに対応して設けられた複数の変速段からなる第1変速段群と、第2クラッチに対応して設けられた複数の変速段からなる第2変速段群とを備えた、いわゆるデュアルクラッチ式変速機を制御し、第1及び第2クラッチのいずれか一方を接続状態とすると共に、第1及び第2変速段群のうち、第1及び第2クラッチの上記一方に対応する変速段群の変速段から選択されている変速段を使用して、走行用の動力源からの駆動力を駆動輪に伝達する。
このようにして動力源の駆動力を駆動輪に伝達しているとき、制御手段は第1及び第2クラッチの他方を切断状態としており、第1及び第2変速段群のうち、第1及び第2クラッチの上記他方に対応した変速段群の変速段から次に使用が予測される変速段を事前選択するためのプリセレクト制御を行うことで、変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保している。
また制御手段は、上述のようにして動力源の駆動力を駆動輪に伝達する際に使用する変速段については、車両の走行速度とアクセルペダルの踏込量とに応じて変速段の切り換えを規定する変速マップを、上記駆動力の伝達に使用する変速段毎に有し、駆動力の伝達に使用中の変速段に対応した変速マップに基づき、必要に応じてシフトアップまたはシフトダウンを行う。
更に、制御手段は、予め定められた所定変速段を駆動輪への駆動力の伝達に使用している場合に、第1制御モード及び第2制御モードの選択的に切り換え可能な2つの制御モードでプリセレクト制御を行う。
第1制御モードのプリセレクト制御では、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、使用中の変速段に対応した変速マップに予め定められている所定領域内にあるときに限り、制御手段は使用中の変速段と異なる変速段を事前選択する。
従って、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記所定領域内にないときには変速段の事前選択を行わない。このため、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とに応じて、変速段の事前選択が行われる場合と行われない場合とがあり、プリセレクト制御で常に変速段を事前選択する場合に比べて、変速段の事前選択が行われなくなる分だけ、デュアルクラッチ式変速機におけるエネルギ損失を抑制することができる。
一方、第2制御モードのプリセレクト制御では、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、使用中の変速段に対応した変速マップに予め定められている所定領域内にあるか否かに関わらず、変速段の事前選択を行わない。従って、第2制御モードでプリセレクト制御が行われると、上記所定変速段に対応した変速段の事前選択によるエネルギ損失が生じなくなる。
また、上記車両用変速機制御装置において、上記動力源には上限回転数が予め定められており、上記所定変速段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうち、最低速変速段及び最高速変速段以外の変速段の中から予め選定され、上記所定領域は、上記駆動輪への駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を上記プリセレクト制御で選択する領域として、上記使用中の変速段に対応する変速マップに定められ、シフトダウンが行われる走行速度より高速側であると共に上記シフトダウン後の上記動力源の回転数が上記上限回転数となる走行速度より低速側の第1領域と、上記駆動輪への駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で選択する領域として、上記使用中の変速段に対応する変速マップに定められ、シフトアップが行われる走行速度より低速側であると共に上記シフトアップが行われる走行速度から所定速度だけ低速となる走行速度より高速側の第2領域とからなることを特徴とする(請求項2)。
このように構成された車両用変速機制御装置によれば、第1及び第2制御モードのプリセレクト制御は、第1及び第2変速段群の変速段のうち、最低速変速段及び最高速変速段以外の変速段の中から予め選定された変速段が駆動輪への駆動力の伝達に使用されている場合に行われる。
また、所定領域は第1領域と第2領域とからなり、第1領域は、変速マップにおいてシフトダウンが行われる走行速度より高速側であると共に、上記シフトダウン後の動力源の回転数が動力源に予め設定されている上限回転数となる走行速度より低速側に設定されている。一方、第2領域は、シフトアップが行われる走行速度より低速側であると共に、上記シフトアップが行われる走行速度から所定速度だけ低速となる走行速度より高速側に設定されている。
そして、第1制御モードのプリセレクト制御において、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1領域内にある場合、制御手段は、駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を事前選択する一方、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第2領域内にある場合には、駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段をプリセレクト制御で事前選択する。また、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1及び第2領域のいずれにもない場合には、変速段の事前選択は行わない。
従って、第1制御モードのプリセレクト制御では、所定変速段を駆動力の伝達に使用している場合に、使用中の変速段に対応した変速マップにおいて、例えば車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1及び第2領域のいずれにもない状態から徐々に移動して、第1領域内に入ると、駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段が事前選択される。
シフトダウン後の動力源の回転数が動力源の上限回転数を上回るような状態では、実際にシフトダウンが行われる可能性がないため、このようにして車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1領域内に入るまで、変速段の事前選択を行わないようにすることで、第1制御モードのプリセレクト制御による変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保しながら、第1制御モードのプリセレクト制御において変速段の事前選択が行われない領域を、シフトダウンが行われる方向にできる限り拡大することが可能となる。
一方、第1制御モードのプリセレクト制御で、所定変速段を駆動力の伝達に使用している場合に、使用中の変速段に対応した変速マップにおいて車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、第1及び第2領域のいずれにもない状態から徐々に移動して、第2領域内に入ると、駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段が事前選択される。
この場合、プリセレクト制御による変速段の事前選択は、実際にシフトアップが行われる前に完了しておくのが好ましいが、このようにして車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第2領域内に入るとプリセレクト制御で高速側の変速段の事前選択を開始することで、シフトアップが実際に開始される前にプリセレクト制御での変速段の選択を開始することができる。従ってシフトアップについても、第1制御モードのプリセレクト制御による変速段の事前選択に必要な時間を確保して、第1制御モードのプリセレクト制御による変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保した上で、第1制御モードのプリセレクト制御において変速段の事前選択が行われない領域を、シフトアップが行われる方向にできる限り拡大することが可能となる。
また、上記車両用変速機制御装置において、上記制御手段は、上記車両の発進時には、予め設定された発進用変速段を上記駆動力の伝達に用いるように上記第1及び第2変速段群を制御し、上記発進用変速段を上記駆動力の伝達に用いている場合には、上記第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記発進用変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする(請求項3)。
このように構成された車両用変速機制御装置によれば、制御手段は、車両の発進時に、予め設定された発進用変速段を動力源からの駆動力の伝達に用いるように第1及び第2変速段群を制御する。このときには、車両の発進加速に伴ってシフトアップが行われる可能性が極めて高いことから、第1及び第2制御モードのいずれのプリセレクト制御においても、使用中の変速段より高速側の変速段を常に事前選択する。これにより、発進加速時のシフトアップを迅速に行って、車両の加速性能を向上させる。
また、上記車両用変速機制御装置において、上記制御手段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうちの最高速変速段を上記駆動力の伝達に使用しているときは、第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記最高速変速段より低速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする(請求項4)。
最高速変速段を動力源からの駆動力の伝達に用いる場合、更に高速側の変速段へのシフトアップが行われることはないので、第1及び第2制御モードのいずれのプリセレクト制御においても、使用中の変速段より低速側の変速段を常に事前選択することにより、シフトダウンを迅速に行えるようにする。
また、上記車両用変速機制御装置において、上記制御手段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうちの最低速変速段を上記駆動力の伝達に使用しているときは、第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記最低速変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする(請求項5)。
最低速変速段を動力源からの駆動力の伝達に用いる場合、更に低速側の変速段へのシフトダウンが行われることはないので、第1及び第2制御モードのいずれのプリセレクト制御においても、使用中の変速段より高速側の変速段を常に事前選択することにより、シフトアップを迅速に行えるようにする。
また、上述のように所定領域として第1及び第2領域を設けるようにした車両用変速機制御装置において、上記制御手段は、上記変速マップに基づき上記駆動力の伝達に使用する変速段を決定する自動変速モードと、上記車両の運転者の操作に応じて上記駆動力の伝達に使用する変速段を決定する手動変速モードとの一方に選択的に切り換えて上記第1及び第2変速段群の変速段を制御可能であり、上記第1制御モードのプリセレクト制御において、上記自動変速モードが選択されて上記所定変速段を上記駆動力の伝達に使用している場合、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にあると、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を選択する一方、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第2領域にあると、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を選択し、上記第1制御モードのプリセレクト制御において、上記手動変速モードが選択されて上記所定変速段を上記駆動力の伝達に使用している場合、上記車両の運転者に加速の意志があると判定すると共に上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にないと、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を選択する一方、上記車両の運転者に加速の意志がないと判定すると共にシフトダウン後の上記動力源の回転数が上記上限回転数となる走行速度より低い速度で上記車両が走行しているとき、或いは上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にあるときには、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を選択することを特徴とする(請求項6)。
このように構成された車両用変速機制御装置によれば、制御手段は、第1及び第2変速段群の変速段の制御を行う際、変速マップに基づき使用する変速段を自動的に決定する自動変速モードと、運転者の操作に応じて使用する変速段を手動により決定する手動変速モードとの2つのモードのいずれかを選択可能となっている。そして、自動変速モードが選択されて上記所定変速段を駆動力の伝達に使用している場合は、第1制御モードのプリセレクト制御において、上述したように第1及び第2領域に基づき、制御手段が変速段の事前選択を行う。
一方、手動変速モードが選択されて上記所定変速段を駆動力の伝達に使用している場合は、自動変速モードが選択されているときとは異なる内容で、制御手段が第1制御モードのプリセレクト制御を行う。即ち、車両の運転者に加速の意志があると判定すると共に、駆動力の伝達に使用している変速段に対応する変速マップにおいて車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1領域にないときには、駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を事前選択する。
また、車両の運転者に加速の意志がないと判定すると共にシフトダウン後の上記動力源の回転数が上記上限回転数となる走行速度より低い速度で上記車両が走行しているとき、或いは車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1領域にあるときには、駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を事前選択する。
手動変速モードが選択されている場合、車両の運転者は自らの運転操作に対して車両が的確に応答することを要求していると考えることができる。そこで、その様な要求に対応するべく、運転者の要求として加速の意志の有無を判定し、運転者に加速の意志があると判定した場合には、加速に伴うシフトアップを予測して、上述のように駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を第1制御モードのプリセレクト制御で事前選択するようにしている。これにより、加速時のシフトアップを迅速に行って、運転者の要求に応えることができる。
但し、運転者に加速の意志があると判定した場合であっても、駆動力の伝達に使用している変速段に対応する変速マップにおいて車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1領域にあるときには、運転者の加速操作に伴うシフトダウンが行われる可能性があるので、駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を第1制御モードのプリセレクト制御で事前選択するようにしている。従って、第1制御モードのプリセレクト制御では、手動変速モードが選択されている場合に、運転者に加速の意志があると判定したときでも、加速操作に伴ってシフトダウンが行われる可能性が高いか否かに応じて、適切な変速段の事前選択が行われる。
また、手動変速モードが選択されている場合に、運転者に加速の意志がないと判定すると共にシフトダウン後の動力源の回転数が上限回転数となる走行速度より低い速度で車両が走行しているときには、車両の走行速度の低下に伴って運転者がシフトダウンの操作を行う可能性が高い。そこで、第1制御モードのプリセレクト制御では、この場合にも駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を事前選択して、運転者の運転操作に迅速に応答できるようにしている。
このように、手動変速モードが選択されて上記所定変速段が駆動力の伝達に使用されている場合、第1制御モードのプリセレクト制御では、運転者の運転操作に対する迅速な応答を可能な限り優先し、運転者に加速の意志がないと判定すると共にシフトダウン後の動力源の回転数が上限回転数となる走行速度より低い速度で車両が走行しているときには、駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を常に事前選択するようにして、運転者の運転操作に可能な限り迅速に応答できるようにしている。
本発明の車両用変速機制御装置によれば、第1制御モードのプリセレクト制御では、所定変速段を使用している場合に、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、変速マップにおける所定領域内にないときには変速段の事前選択を行わないので、常に変速段を事前選択する場合に比べて、変速段の事前選択が行われなくなる分だけエネルギ損失を抑制することができる。一方、第2制御モードのプリセレクト制御では、所定変速段を使用している場合、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記所定領域内にあるか否かに関わらず、変速段の事前選択を行わないので、所定変速段を駆動力の伝達に使用しているときには、変速段の事前選択によるエネルギ損失が生じなくなる。
このようにして第1及び第2制御モードのいずれによっても、変速段の事前選択に起因したエネルギ損失を抑制することができるので、それぞれのエネルギ損失の抑制により、デュアルクラッチ式変速機におけるエネルギの利用効率を大幅に改善することが可能となる。このため、走行用の動力源として例えばエンジンを用いるようにした場合には、このようなエネルギー利用効率の改善によって燃費を改善することが可能となる。
また、請求項2の車両用変速機制御装置によれば、第1制御モードのプリセレクト制御を行う場合、駆動輪への駆動力の伝達に使用中の変速段に対応した変速マップにおいて、車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が第1及び第2領域のいずれにもなければ、変速段の事前選択を行わないようにしている。そして、シフトダウン後の動力源の回転数が上限回転数を上回るような場合は、変速段の事前選択を行わないようにすることで、第1制御モードのプリセレクト制御で変速段の事前選択が行われない領域を、シフトダウンが行われる方向にできる限り拡大している。更に、シフトアップが実際に開始される前にプリセレクト制御での変速段の事前選択を開始できるようにしながら、第1制御モードのプリセレクト制御で変速段の事前選択が行われない領域を、シフトアップが行われる方向にできる限り拡大している。この結果、プリセレクト制御による変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保した上で、上述したエネルギ損失をできるだけ抑制することが可能となる。
また、請求項3の車両用変速機制御装置によれば、発進用変速段を使用している場合、第1及び第2制御モードのいずれのプリセレクト制御においても、次に使用される変速段を的確に事前選択し、発進加速時のシフトアップを迅速に行って、車両の加速性能を向上させることができる。
或いは、請求項4の車両用変速機制御装置では最高速変速段を使用している場合、そして請求項5の車両用変速機制御装置では最低速変速段を使用している場合に、第1及び第2制御モードのいずれのプリセレクト制御においても、次に使用される変速段を的確に事前選択し、請求項4の車両用変速機制御装置の場合はシフトダウンを、また請求項5の車両用変速機制御装置の場合はシフトアップを、それぞれ迅速に行うことにより変速機の応答性を向上させることができる。
また、請求項6の車両用変速機制御装置によれば、第1制御モードのプリセレクト制御で、自動変速モードが選択されている場合には、上述したようなエネルギ損失を良好に抑制できるという効果が得られる一方、手動変速モードが選択されている場合には、運転者に加速の意志があるか否かに対応して次に使用される変速段を的確に事前選択し、運転者の運転操作に対する迅速な変速機の応答性を確保することができる。
本発明の一実施形態に係る車両用変速機制御装置を、駆動力の伝達経路を表すブロック図の形で示す全体構成図である。 図1の車両用変速機制御装置において、トランスミッションECUが実行するプリセレクト制御の一部を示すフローチャートである。 図1の車両用変速機制御装置において、トランスミッションECUが実行するプリセレクト制御の残部を示すフローチャートである。 トランスミッションECUがプリセレクト制御で用いる変速マップの一例を示す図である。
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用変速機制御装置1を、駆動力の伝達経路を表すブロック図の形で示す全体構成図である。図1中の符号2は、走行用の動力源であるエンジンを示しており、エンジン2が出力する回転駆動力(以下、単に駆動力という)はクラッチユニット4に入力され、クラッチユニット4内で2系統に分岐される。クラッチユニット4は第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bの2つのクラッチを有しており、クラッチユニット4内で2系統に分岐されたエンジン2の駆動力の一方は第1クラッチ4aの入力側に伝達され、他方は第2クラッチ4bの入力側に伝達されるようになっている。
変速機ユニット6は、第1クラッチ4aに対応して設けられ、前進用の変速段として第1速、第3速、及び第5速の各変速段を有した第1変速機構(第1変速段群)6aと、第2クラッチ4bに対応して設けられ、前進用の変速段として第2速、第4速、及び第6速の各変速段を有した第2変速機構(第2変速段群)6bとを備える。即ち、第1クラッチ4aの出力側は第1変速機構6aの入力軸に連結され、第2クラッチ4bの出力側は第2変速機構6bの入力軸に連結されている。
なお、本実施形態の場合、変速機ユニット6が搭載されている車両は小型トラックであって、平地における発進用の変速段は、第2変速機構6bが有する第2速の変速段が使用されるようになっている。また、本実施形態では第1速の変速段が最低速変速段となり、第6速の変速段が最高速変速段となっている。更に、図1の全体構成図では、車両後退用の変速機構の図示を省略している。
第1変速機構6aの出力軸及び第2変速機構6bの回転出力は、それぞれの変速機構に設けられた図示しないカウンタ軸に伝達されるように構成され、それぞれのカウンタ軸の回転が共通の出力軸に伝達されるように構成されている。従って、第1変速機構6aから出力される駆動力、及び第2変速機構6aから出力される駆動力は、いずれもこの共通の出力軸を介してデファレンシャル装置8に伝達され、左右の駆動輪10に割り振られるようになっている。従って、クラッチユニット4及び変速機ユニット6により、いわゆるデュアルクラッチ式変速機を構成している。
エンジンECU12は、エンジン2を制御するために設けられており、エンジン2との間で通信を行う。そして、図示しないアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ14の検出信号などに基づき、エンジン2に供給される燃料量などを調整することによって、車両の駆動に必要な駆動力が得られるようにエンジン2を制御する。
また、エンジンECU12には、エンジン2を燃費優先で運転するエコモードと、動力性能優先で運転するノーマルモードとの2つのモードが選択できるように、運転モード切換スイッチ16が接続されている。
エンジンECU12は、エコモードの方がノーマルモードに比べてエンジン2の燃費がよくなるように、ノーマルモードより動力性能を幾分低下させながら効率的にエンジン2を制御する。そして車両の運転者は、運転モード切換スイッチ16を操作して、燃費を重視したい場合にエコモードを選択し、燃費よりも動力性能を重視したい場合にノーマルモードを選択できるようになっている。
トランスミッションECU(制御手段)18はデュアルクラッチ式変速機を制御するために設けられている。本実施形態では、一般的な自動変速機の場合と同じく変速レンジとして、車両駐車時に選択するPレンジ、いずれの変速段も駆動力の伝達に使用しないNレンジ、車両後退時に選択するRレンジ、及び車両前進時に自動的に変速段の切り換えを行う自動変速モードを選択するDレンジに加え、車両前進時に運転者の手動による変速段の切換指示を可能とするための手動変速モードを選択するA/Mレンジが設けられている。
これらの変速レンジの選択は、図示しないシフトレバーに対する運転者の操作によって行われる。そして、A/Mレンジが選択されている場合、更なるシフトレバーの操作により、シフトアップとシフトダウンのいずれかを選択的に指示することができるようになっている。
トランスミッションECU18は、このようにして運転者によって選択された変速レンジに応じ、クラッチユニット4が有する第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bの断接を制御すると共に、変速機ユニット6が有する第1変速機構6a及び第2変速機構6bの変速段を制御する。
なお、本実施形態において、デュアルクラッチ式変速機自体の具体的構成、及び変速レンジがPレンジ、Nレンジ、及びRレンジのいずれかにある場合のデュアルクラッチ式変速機自体の制御は、従来から知られているものと同様であるので、ここでは更なる説明を省略する。
また、変速レンジとしてDレンジが選択されている場合、自動変速モードでデュアルクラッチ式変速機の制御が行われ、予め変速段毎に設定されている変速マップに従って、トランスミッションECU18が変速段の切り換えを自動的に行う。一方、A/Mレンジが選択されて手動変速モードとなっている場合、手動変速モードによるデュアルクラッチ式変速機の制御が行われ、シフトレバーに対する運転者の操作に応じて、トランスミッションECU18が変速段の切り換えを行う。
即ち、変速レンジがDレンジにあって自動変速モードが選択されている場合、トランスミッションECU18は変速マップに従い、第1変速機構6a及び第2変速機構6bの変速段の中から、駆動輪10への駆動力の伝達のために使用する変速段を決定し、決定した変速段を用いて駆動輪10への駆動力の伝達が行われるように変速機ユニット6を制御する。なお、以下では、駆動輪10への駆動力の伝達のために使用している変速段のことを使用中の変速段という。
このような変速段の制御に合わせてトランスミッションECU18は、第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bのうち、使用中の変速段にエンジン2からの駆動力を伝達する方のクラッチを接続状態に制御すると共に、当該駆動力の伝達に必要ではない方のクラッチを切断状態に制御する。
例えば、第1変速機構6aの変速段のいずれか1つを駆動輪10への駆動力の伝達に使用している場合、トランスミッションECU18は第1変速機構6aに対応する第1クラッチ4aを接続状態に制御すると共に、第2変速機構6bに対応する第2クラッチ4bを切断状態に制御する。一方、第2変速機構6bの変速段のいずれか1つを駆動輪10への駆動力の伝達に使用している場合、トランスミッションECU18は第2変速機構6bに対応する第2クラッチ4bを接続状態に制御すると共に、第1変速機構6aに対応する第1クラッチ4aを切断状態に制御する。
一方、A/Mレンジが選択されて手動変速モードとなっている場合、トランスミッションECU18はシフトレバーに対する運転者の操作に従って駆動輪10への駆動力の伝達に使用する変速段の切り換えを行い、第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bのうち、使用中の変速段にエンジン2からの駆動力を伝達する方のクラッチを接続状態に制御すると共に、当該駆動力の伝達に必要ではない方のクラッチを切断状態に制御する。
例えば、運転者がシフトレバーの操作により第1変速機構6aの変速段を指示している場合、トランスミッションECU18は指示された変速段を駆動輪10への駆動力の伝達に使用し、第1変速機構6aに対応する第1クラッチ4aを接続状態に制御すると共に、第2変速機構6bに対応する第2クラッチ4bを切断状態に制御する。一方、運転者がシフトレバーの操作により第2変速機構6bの変速段を指示している場合、トランスミッションECU18は指示された変速段を駆動輪10への駆動力の伝達に使用し、第2変速機構6bに対応する第2クラッチ4bを接続状態に制御すると共に、第1変速機構6aに対応する第1クラッチ4aを切断状態に制御する。
なお、このような一連の制御を実行する上で必要な情報を得るため、トランスミッションECU18はクラッチユニット4及び変速機ユニット6との間で信号をやりとりすると共に、車両の走行速度を検出するための車速センサ22、及びアクセル開度センサ14がトランスミッションECU18に接続されている。
そして、自動変速モードでトランスミッションECU18が用いる変速マップは、車速センサ22が検出した走行速度、及びアクセル開度センサ14が検出したアクセルペダルの踏込量に応じて、使用中の変速段からのシフトダウン或いはシフトアップが行われるように設定されている。
また、エンジン2の運転をエコモードとノーマルモードのいずれかに選択的に切り換えるための運転モード切換スイッチ16は、トランスミッションECU18にも接続されている。そして、運転モード切換スイッチ16でノーマルモード(第1制御モード)が選択されている場合には、燃費よりも動力性能を優先して設定された変速マップに基づき、トランスミッションECU18がクラッチユニット4及び変速機ユニット6を制御する。また、運転モード切換スイッチ16によってエコモード(第2制御モード)が選択されている場合には、動力性能よりも燃費を優先して設定された変速マップに基づき、トランスミッションECU18がクラッチユニット4及び変速機ユニット6を制御する。従って、トランスミッションECU18は、各変速段に対してノーマルモード用とエコモード用の2種類の変速マップを有している。
以上のような、Dレンジが選択されている場合のクラッチユニット4及び変速機ユニット6の一連の制御についても、既に知られているものであるので、ここでは更なる説明を省略する。
上述のように、変速レンジがDレンジまたはA/Mレンジとなって、第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bの一方を接続状態に制御すると共に、第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bの他方を切断状態に制御しているとき、トランスミッションECU18は、第1変速機構6a及び第2変速機構6bのうち、第1クラッチ4a及び第2クラッチ4bの他方、即ち切断状態にある方のクラッチに対応する変速機構において、次に使用が予測される変速段を事前選択して駆動力の伝達が可能な状態とするためのプリセレクト制御を実行する。なお、以下では、このようにプリセレクト制御によって、次に使用が予測される変速段を事前選択して駆動力の伝達が可能な状態とすることを、変速段をプリセレクトするという。
本実施形態では、このプリセレクト制御が従来のものと相違しており、以下では本実施形態におけるプリセレクト制御について、図2乃至図4に基づき詳細に説明する。なお、図2はトランスミッションECU18が実行するプリセレクト制御の一部を示すフローチャート、図3は当該プリセレクト制御の残部を示すフローチャートである。また、図4はプリセレクト制御で使用する変速マップの一例を示す図である。
トランスミッションECU18は、車両に設けられたキースイッチ(図示せず)がオン操作されると、図2及び図3のフローチャートに従い所定の制御周期でプリセレクト制御を実行し、キースイッチがオフ操作されることによって、このプリセレクト制御を終了する。
プリセレクト制御を開始すると、トランスミッションECU18はステップS1において、クラッチユニット4或いは変速機ユニット6にエラーが発生しているか否かを、クラッチユニット4及び変速機ユニット6から得た情報に基づき判定する。クラッチユニット4や変速機ユニット6に発生するエラーとして、例えば、制御用アクチュエータの作動不良、通信用配線の断線或いは接続不良などがある。
ステップS1において、クラッチユニット4或いは変速機ユニット6にエラーが発生していると判定した場合、プリセレクト制御を正常に実行することができない可能性があるので、トランスミッションECU18は処理をステップS2に進め、変速段をプリセレクトせずに、その制御周期を終了する。従って、クラッチユニット4或いは変速機ユニット6にエラーが発生していると判定した場合には、変速段をプリセレクトしない状態が継続する。
以下では、クラッチユニット4及び変速機ユニット6のいずれにもエラーが発生していないものとして説明を続ける。
ステップS1においてクラッチユニット4及び変速機ユニット6にエラーが発生していないと判定すると、トランスミッションECU18は処理をステップS3に進め、選択されている変速レンジがPレンジ、Nレンジ及びRレンジのいずれかであるか否かを判定する。Pレンジ、Nレンジ及びRレンジのいずれかが選択されている場合には、変速段のプリセレクトが不要であるので、トランスミッションECU18は処理をステップS2に進め、上述のように変速段をプリセレクトせずに、その制御周期を終了する。従って、Pレンジ、Nレンジ及びRレンジのいずれかが選択されている限り、変速段をプリセレクトしない状態が継続する。
一方、Pレンジ、Nレンジ及びRレンジのいずれも選択されていない場合、即ち前進走行の変速レンジであるDレンジまたはA/Mレンジが選択された場合には、トランスミッションECU18は処理をステップS4に進め、その時点で使用中の変速段が第1速及び第2速の変速段のいずれかであるか否かを判定する。
そして、使用中の変速段が第1速または第2速の変速段である場合、トランスミッションECU18は処理をステップS5に進め、使用中の変速段より1速だけ高速側の変速段をプリセレクトした後、その制御周期を終了する。
即ち、第1速の変速段を使用中の場合、第1速の変速段は最低速変速段であるから、更にシフトダウンが行われる可能性はない。そこで、このような場合には1速だけ高速側である第2速の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。また、第2速の変速段は、前述したように平地における発進用変速段として用いられる。このため、第2速の変速段を使用中である場合は、発進加速に伴ってシフトアップされる可能性が高いので、1速だけ高速側である第3速の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。
従って、変速レンジがDレンジまたはA/Mレンジとなった場合に、使用中の変速段が第1速または第2速の変速段であるときには、1速だけ高速側の変速段が常にプリセレクトされる。
このように、最低速変速段である第1速の変速段や、発進用変速段である第2速の変速段を使用中である場合には、それぞれ次に使用される変速段を的確にプリセレクトし、発進時や加速時のシフトアップを迅速に行えるようにして変速機の応答性を向上させ、車両の加速性能を向上させている。
一方、使用中の変速段が第1速及び第2速の変速段のいずれでもない場合、トランスミッションECU18は処理をステップS4からステップS6に進め、その時点で使用中の変速段が第3速乃至第5速の変速段(所定変速段)のいずれかであるか否かを判定する。使用中の変速段が第3速乃至第5速の変速段のいずれかである場合、トランスミッションECU18は処理をステップS10に進め、後に詳述する制御を行うが、ここではまず、使用中の変速段が第3速乃至第5速の変速段のいずれでもないとステップS6で判定した場合の制御について説明する。
ステップS6において、使用中の変速段が第3速乃至第5速の変速段のいずれでもないと判定した場合、トランスミッションECU18は処理をステップS7に進める。この場合、ステップS4において使用中の変速段が第1速及び第2速の変速段のいずれでもないと既に判定しているので、使用中の変速段は第6速の変速段となるはずである。しかしながら、本実施形態では使用中の変速段に関して誤った判断がなされてステップS7に処理が進められた場合を想定し、トランスミッションECU18はステップS7で、使用中の変速段が第6速の変速段であるか否かを判定する。
そして、使用中の変速段が第6速の変速段ではないと判定した場合、上述のように使用中の変速段を誤って判定している可能性があるので、トランスミッションECU18は処理をステップS9に進め、変速段をプリセレクトすることなくその制御周期を終了する。このような制御により、使用中の変速段を誤って判定することによって不適切な変速段がプリセレクトされるのを防止することができる。
一方、使用中の変速段が第6速の変速段であると判定した場合、トランスミッションECU18は処理をステップS8に進め、使用中の変速段より1速だけ低速側の変速段である第5速の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。即ち、本実施形態において第6速の変速段は最高速変速段であり、更にシフトアップが行われる可能性はない。そこで、このような場合には、次に使用される変速段として第5速の変速段をプリセレクトすることで、変速段のプリセレクトを的確に行い、シフトダウンを迅速に行って変速機の応答性を向上させるようにしている。
次に、上述のようにステップS6において、使用中の変速段が第3速乃至第5速の変速段のいずれかであると判定した場合の制御について説明する。
ステップS6の判定により処理をステップS10に進めると、トランスミッションECU18は現在選択されているモードが手動変速モードであるか否かを判定する。
ここでは、まずDレンジが選択されることによって自動変速モードが選択されている場合について説明する。自動変速モードが選択されている場合、トランスミッションECU18はステップS10の判定により処理をステップS11に進める。
ステップS11においてトランスミッションECU18は、運転モード切換スイッチ16によってエコモードが選択されているか否かを判定する。そして、エコモードが選択されている場合、トランスミッションECU18はステップS11の判定により処理をステップS2に進め、前述したように変速段のプリセレクトを行うことなく、その制御周期を終了する。従って、自動変速モードにおいて、運転モード切換スイッチ16によりエコモードが選択されている場合は、第3速乃至第5速の変速段については変速段のプリセレクトが行われない。
変速段がプリセレクトされている場合には、プリセレクトされている変速段もエンジン2によって駆動され、プリセレクトされている変速段における慣性モーメントやオイルの攪拌抵抗及び粘性抵抗などによって、エンジン2の発生エネルギが消費される。エコモードが選択されている場合には、運転者が動力性能より燃費を優先していることになるが、このような場合には、上述のように第3速乃至第5速の変速段について変速段を常にプリセレクトしないようにすることにより、上記のような発生エネルギの消費を防止することができる。従って、運転者の要求に合致して燃費を改善することができる。
一方、運転モード切換スイッチ16によってエコモードではなくノーマルモードが選択されている場合、トランスミッションECU18はステップS11の判定によって処理をステップS12に進める。そして、ステップS12乃至S16でトランスミッションECU18は、その時点で使用中の変速段に対応する変速マップに基づいて変速段のプリセレクトを行う。
ここで、第3速乃至第5速の変速段毎に設定されているノーマルモード用の変速マップには、変速段のプリセレクトを行う領域と、変速段のプリセレクトを行わない領域とが設定されており、ステップS12乃至S16の制御を説明する前に、このような変速マップについて以下に説明する。
図4は、本実施形態で第3速乃至第5速のいずれかの変速段に対して使用するノーマルモード用の変速マップの一例を示すものである。前述したように、変速マップは車速センサ22が検出した車両の走行速度と、アクセル開度センサ14が検出したアクセルペダルの踏込量とに応じて変速段の切り換え、即ちシフトアップまたはシフトダウンを規定している。なお、図4に示す変速マップでは、百分率によってアクセルペダルの踏込量を表しており、アクセルペダルが踏まれていないときの踏込量を0%とし、最大踏込量を100%としている。また、以下では車速センサ22が検出した車両の走行速度を実走行速度、アクセル開度センサ14が検出したアクセルペダルの踏込量を実踏込量という。
図4中に一点鎖線で示す境界線がシフトダウン線Lsdであり、実走行速度と実踏込量とによって図4の変速マップ中に定まる点が、実走行速度または実踏込量の変化により、シフトダウン線Lsdを図4の右側から左側(または下から上)に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段から1速だけ低速側の変速段にシフトダウンする。
一方、図4中に二点鎖線で示す境界線がシフトアップ線Lsuであり、実走行速度と実踏込量とによって図4の変速マップ中に定まる点が、実走行速度または実踏込量の変化により、シフトアップ線Lsuを図4の左側から右側(または上から下)に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段から1速だけ高速側の変速段にシフトアップする。
第3速乃至第5速に適用されるノーマルモード用の変速マップには、このようなシフトダウン線Lsd及びシフトアップ線Lsuに加え、上述のように使用中の変速段に対応して変速段をプリセレクトするためのプリセレクト領域が定められている。このプリセレクト領域は、使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトする低速側プリセレクト領域(第1領域)Rdと、使用中の変速段に対して1速だけ高速側の変速段をプリセレクトする高速側プリセレクト領域(第2領域)Ruとがある。
低速側プリセレクト領域Rdは、図4に示すように、シフトダウン線Lsdと実線で示される低速側プリセレクト線Lpdとに挟まれた領域となっている。そして、実走行速度と実踏込量とで図4の変速マップ中に定まる点が、低速側プリセレクト線Lpdを図4の右側から左側に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトする。更に、このようにして変速段がプリセレクトされた後、実走行速度と実踏込量とによって図4の変速マップ中に定まる点が移動して、シフトダウン線Lsdを図4の右側から左側(または下から上)に横切ると、トランスミッションECU18はプリセレクトされている変速段にシフトダウンし、シフトダウン後の変速段が駆動輪10への駆動力の伝達に使用されることになる。
ここで、低速側プリセレクト線Lpdは、使用中の変速段から1速シフトダウンした場合に、エンジン2の回転数がエンジン2に予め定められている上限回転数となる走行速度を超えないように設定されると共に、予め設定された標準的な運転状態で実走行速度と実踏込量とが変化したときに、シフトダウンの開始前にプリセレクトが完了する程度に、シフトダウン線Lsdより高速側となるように設定されている。
シフトダウン後のエンジン2の回転数が上限回転数を上回るような状態では、実際にシフトダウンが行われる可能性がないため、このようにして低速側プリセレクト線Lpdによって低速側プリセレクト領域Rdを設定することで、変速段のプリセレクトに必要な時間を確保して変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保しながら、変速段のプリセレクトが行われない領域を、走行速度の低速側、即ち実際にシフトダウンが行われる方向にできる限り拡大することが可能となる。
一方、高速側プリセレクト領域Ruは、図4に示すように、シフトアップ線Lsuと実線で示される高速側プリセレクト線Lpuとに挟まれた領域となっている。そして、実走行速度と実踏込量とで図4の変速マップ中に定まる点が、高速側プリセレクト線Lpuを図4の左側から右側(または上から下)に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段に対して1速だけ高速側の変速段をプリセレクトする。
更に、このようにして変速段がプリセレクトされた後、実走行速度と実踏込量とによって図4の変速マップ中に定まる点が移動して、シフトアップ線Lsuを図4の左側から右側(または上から下)に横切ると、トランスミッションECU18はプリセレクトされている変速段にシフトアップし、シフトアップ後の変速段が駆動輪10への駆動力の伝達に使用されることになる。
高速側プリセレクト線Lpuは、シフトアップによってエンジン2の回転数が上限回転数を超えることはないので、予め設定された標準的な運転状態で実走行速度と実踏込量とが変化したときに、シフトアップの開始前にプリセレクトが完了する程度に、シフトアップ線Lsuより低速側となるように設定されている。
従って、変速段のプリセレクトに必要な時間を確保して変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保した上で、変速段のプリセレクトが行われない領域を、走行速度の高速側、即ち実際にシフトアップが行われる方向にできる限り拡大することが可能となる。
ここで、図2及び図3に示すプリセレクト制御のフローチャートの説明に戻ると、トランスミッションECU18はステップS11からステップS12に処理を進めたときに、その時点で使用中の変速段に対応した変速マップに基づき、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が低速側プリセレクト領域Rd内にあるか否かを判定する。そして、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が低速側プリセレクト領域Rd内にあると判定すると、トランスミッションECU18はステップS13に処理を進め、上述したように使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。
また、ステップ12において、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、低速側プリセレクト領域Rd内にないと判定すると、トランスミッションECU18は処理をステップS14に進め、その時点で使用中の変速段に対応した変速マップに基づき、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、高速側プリセレクト領域Ru内にあるか否かを判定する。そして、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が高速側プリセレクト領域Ru内にあると判定すると、トランスミッションECU18はステップS15に処理を進め、上述したように使用中の変速段に対して1速だけ高速側の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。
一方、ステップ14において、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、高速側プリセレクト領域Ru内にないと判定すると、トランスミッションECU18はステップS16に処理を進め、変速段をプリセレクトすることなく、その制御周期を終了する。
従って、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、低速側プリセレクト領域Rdと高速側プリセレクト領域Ruとの間の領域にある限りは、変速段のプリセレクトが行われない。
また、上述したように、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、図4の低速側プリセレクト線Lpdを図4の右側から左側に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトする。
更に、このようにして変速段がプリセレクトされた後、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が移動して、シフトダウン線Lsdを図4の右側から左側(または下から上)に横切ると、トランスミッションECU18はプリセレクトされている変速段にシフトダウンし、シフトダウン後の変速段が駆動輪10への駆動力の伝達に使用されることになる。
従って、運転者がアクセルペダルを踏み込んだときに、走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、シフトダウン線Lsdを図4の右側から左側(または下から上)に横切った場合にも、変速段のシフトダウンまたはキックダウンが行われるが、この場合も上述したように1速だけ低速側の変速段がプリセレクトされているので、運転者の加速操作に対応して応答性よくシフトダウンまたはキックダウンが行われることにより、車両を迅速に加速させることができる。
一方、上述したように、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が図4の高速側プリセレクト線Lpuを図4の左側から右側(または上から下)に横切ると、トランスミッションECU18は使用中の変速段に対して1速だけ高速側の変速段をプリセレクトする。
更に、このようにして変速段がプリセレクトされた後、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が移動して、シフトアップ線Lsuを図4の左側から右側(または上から下)に横切ると、トランスミッションECU18はプリセレクトされている変速段にシフトアップし、シフトアップ後の変速段が駆動輪10への駆動力の伝達に使用されることになる。
前述したように、変速段がプリセレクトされている場合には、プリセレクトされている変速段もエンジン2によって駆動され、プリセレクトされている変速段における慣性モーメントやオイルの攪拌抵抗及び粘性抵抗などによって、エンジン2の発生エネルギが消費される。
しかしながら本実施形態において、第3速乃至第5速に対してノーマルモード用に使用される変速マップでは、上述したように、図4に示すような低速側プリセレクト領域内Rdと高速側プリセレクト領域内Ruとの間の領域で、変速段のプリセレクトが行われないようになっている。
このように変速段がプリセレクトされない領域を設けることにより、ノーマルモードが選択されているときにも、上記のようなエネルギの損失を抑制し、エンジン2の燃費を改善することが可能となる。しかも、上述したように変速段がプリセレクトされない領域をできるだけ拡大するようにしているので、変速段のプリセレクトに必要な時間を確保してデュアルクラッチ式変速機の良好な応答性と変速フィーリングを確保した上で、上記のようなエネルギ損失を最大限抑制することが可能となる。
以上のように自動変速モードでは、ノーマルモードが選択されているときにも、第3速乃至第5速の変速段を使用している場合に、変速段のプリセレクトを行わない領域を設けているので、常に変速段をプリセレクトする場合に比べて、変速段のプリセレクトが行われなくなる分だけエネルギ損失を抑制して、エンジン2の燃費を改善することができる。
従って、自動変速モードが選択されている場合に、前述したエコモード選択時の燃費改善と併せ、デュアルクラッチ式変速機におけるエネルギの利用効率改善によるエンジン2の燃費改善を実現することができる。
自動変速モードが選択されていると判定した場合の、ステップS11以降のプリセレクト制御の内容は以上の通りであり、次にステップS10において手動変速モードが選択されていると判定した場合のプリセレクト制御の内容について説明する。
A/Mレンジが選択され、ステップS10において手動変速モードが選択されていると判定すると、トランスミッションECU18は処理をステップS17に進める。
ステップS17においてトランスミッションECU18は、ステップS11の処理と同様に、運転モード切換スイッチ16によってエコモードが選択されているか否かを判定する。そして、エコモードが選択されている場合、トランスミッションECU18はステップS17の判定により処理をステップS2に進め、前述したように変速段のプリセレクトを行うことなく、その制御周期を終了する。従って、前述の自動変速モードと同様に手動変速モードにおいても、運転モード切換スイッチ16によりエコモードが選択されている場合は、第3速乃至第5速の変速段については変速段のプリセレクトが行われない。
前述したように、エコモードが選択されている場合には、運転者が動力性能より燃費を優先していることになるが、このような場合には手動変速モードにおいても、第3速乃至第5速の変速段について変速段を常にプリセレクトしないようにすることにより、前述したような発生エネルギの消費を防止することができる。従って、エコモードが選択されている場合には、自動変速モード及び手動変速モードのいずれにおいても、第3速乃至第5速の変速段について変速段を常にプリセレクトしないことになり、自動変速モードの場合と同様に手動変速モードにおいても、運転者の要求に合致して燃費を改善することができる。
この結果、前述したような自動変速モードにおける燃費の改善と併せ、デュアルクラッチ式変速機におけるエネルギの利用効率改善によるエンジン2の効果的な燃費改善を実現することができる。
一方、運転モード切換スイッチ16によってノーマルモードが選択されている場合、トランスミッションECU18はステップS17の判定によって処理をステップS18に進め、アクセル開度センサ14が検出したアクセルペダルの踏込量に基づき、アクセルペダルが踏み込まれていない状態、即ちアクセルオフの状態であるか否かを判定する。
更にステップS18でトランスミッションECU18は、車速センサ22が検出した走行速度に基づき、シフトダウン後のエンジン2の回転数が前述の上限回転数となる走行速度より低い速度で車両が走行しているか否かを併せて判定する。
このようなステップS18の処理は、車両の運転者に加速の意志があるか否かを判定すると共に、シフトダウン後のエンジン2の回転数が上限回転数を上回ることがないことを確認するものである。そして、アクセルペダルがアクセルオフの状態にあって運転者に加速の意志がないものと判定すると共に、シフトダウン後のエンジン2の回転数が上限回転数となる走行速度より低い速度で車両が走行していると判定した場合、トランスミッションECU18は処理をステップS19に進める。
ステップS19に処理を進めた場合、上述のように運転者に加速の意志がないと判断され、シフトダウン後のエンジン2の回転数が上限回転数を上回ることがないと判断されていることから、車両の減速に伴って運転者がシフトダウンの操作を行う可能性が高いと考えられる。そこで、運転者の運転操作に対する迅速な応答を可能な限り優先して、このようなシフトダウンに備え、トランスミッションECU18は使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトした後、その制御周期を終了する。
一方、ステップS18においてアクセルペダルがアクセルオフの状態にない、即ちアクセルペダルが踏み込まれていると判定した場合、或いは、シフトダウン後のエンジン2の回転数が上限回転数を上回ると判定した場合、トランスミッションECU18は処理をステップS20に進める。
ステップS20においてトランスミッションECU18は、その時点で使用中の変速段に対応した変速マップに基づき、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が、低速側プリセレクト領域Rd内にあるか否かを判定する。そして、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が低速側プリセレクト領域Rd内にあると判定すると、トランスミッションECU18はステップS19に処理を進め、上述したように使用中の変速段に対して1速だけ低速側の変速段をプリセレクトして、その制御周期を終了する。
アクセルペダルが踏み込まれた状態にあるときに、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が低速側プリセレクト領域Rd内にある場合、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点はシフトダウン線Lsdに比較的近い状態にある。このような状態では、運転者が加速不足を認識してシフトダウンを行う可能性がある。そこで、このような場合には、使用中の変速段より1速だけ低速側の変速段をプリセレクトするようにしている。これにより、運転者が加速のためのシフトダウン操作を行ったときに、これに対応して迅速にシフトダウンを行うことができる。
一方、ステップS20において、実走行速度と実踏込量とによって変速マップ中に定まる点が低速側プリセレクト領域Rd内にないと判定すると、トランスミッションECU18はステップS21に処理を進め、使用中の変速段に対して1速だけ高速側の変速段をプリセレクトした後、その制御周期を終了する。
この場合、上述したようなシフトダウン操作を伴う加速が行われる可能性は低く、車両の加速に伴って運転者がシフトアップの操作を行う可能性が高い。そこで、このような場合には使用中の変速段より1速だけ高速側の変速段をプリセレクトするようにしている。これにより、運転者のシフトアップの操作に対応して加速時のシフトアップを迅速に行うことができる。
手動変速モードが選択されている場合、車両の運転者は自ら積極的に運転操作を行い、その運転操作に対して車両が的確に応答することを要求していると考えることができる。そこで、手動変速モードが選択されている場合には、燃費の改善よりも動力性能の確保を優先し、上述したようなプリセレクト制御を行うことにより、運転者に加速の意志があるか否かの判定に基づき、次に使用される変速段を的確にプリセレクトし、運転者の運転操作に対する迅速なデュアルクラッチ式変速機の応答を確保することができるようにしている。
以上で本発明の一実施形態に係る車両用変速機制御装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、エンジン2の運転やデュアルクラッチ式変速機の制御をエコモードとノーマルモードとに切り換えるための運転モード切換スイッチ16の操作に応じ、第3速乃至第5速の変速段について、プリセレクトを可能とする場合とプリセレクトを中止する場合とを切り分けるようにしたが、このような切り分けを行うための専用のスイッチを別個に設けてもよい。
また、上記実施形態において、デュアルクラッチ式変速機は前進6段の変速段を有するように構成したが、前進用変速段の数はこれに限定されるものではない。即ち、第1変速機構6a及び第2変速機構6bの一方の変速段を駆動輪10への駆動力の伝達に使用しているときに、第1変速機構6a及び第2変速機構6bの他方の変速段をプリセレクトできるような構成になっていれば、変速段の数は適宜変更することが可能である。
また、上記実施形態では、使用中の変速段に対して1速だけ低速側または高速側の変速段をプリセレクトするようにしたが、必ずしも1速だけ低速側或いは高速側でなくてもよい。即ち、変速マップでシフトダウンまたはシフトアップされる変速段の段数差と同じ段数差で変速段をプリセレクトすればよい。
また、上記実施形態に対する説明で用いた図4の変速マップは、一例を示すものであって、シフトダウン線Lsd及びシフトアップ線Lsuの形状は、図4に示すものに限定されるものではなく、必要に応じて様々に変更可能である。
また、上記実施形態では、最高速変速段を使用中である場合、常時低速側の変速段をプリセレクトするようにしたが、例えば高速走行時には変速段の切り換え要求が生じる可能性が低いことから、必要に応じてプリセレクトを行わないようにすれば、更に燃費を向上させることができる。
また、上記実施形態では、車両の走行用の動力源としてエンジン2を用いたが、動力源はこれに限定されるものではなく、様々なものを用いることができる。即ち、例えばエンジン2に代えて電動機を用いてもよいし、エンジン2に加えて電動機を用いるようにしてもよい。
1 車両用変速機制御装置
2 エンジン(動力源)
4 クラッチユニット
4a 第1クラッチ
4b 第2クラッチ
6 変速機ユニット
6a 第1変速機構(第1変速段群)
6b 第2変速機構(第2変速段群)
10 駆動輪
12 トランスミッションECU(制御手段)

Claims (6)

  1. 第1クラッチに対応して設けられた複数の変速段の1つを使用し、上記第1クラッチを介して伝達される走行用の動力源の駆動力を駆動輪に伝達する第1変速段群と、
    第2クラッチに対応して設けられた複数の変速段の1つを使用し、上記第2クラッチを介して伝達される上記動力源の駆動力を上記駆動輪に伝達する第2変速段群と、
    上記第1及び第2クラッチの一方を接続状態としているときに、上記第1及び第2クラッチの他方を切断状態とすると共に、上記第1及び第2変速段群のうち、上記第1及び第2クラッチの上記他方に対応した変速段群の変速段から次に使用が予測される変速段を事前に選択するためのプリセレクト制御を行う制御手段とを備えた車両用変速機制御装置において、
    上記制御手段は、
    上記駆動輪への駆動力の伝達に使用する変速段の切り換えが車両の走行速度とアクセルペダルの踏込量とに応じて規定された変速マップを、上記第1及び第2変速段群の変速段毎に有し、
    予め定められた所定変速段を上記駆動輪への駆動力の伝達に使用している場合に、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、上記使用中の変速段に対応した変速マップに予め定められている所定領域内にあるときに限り、上記使用中の変速段と異なる変速段を事前選択する第1制御モードと、上記所定変速段を上記駆動輪への駆動力の伝達に使用している場合に、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が、上記所定領域内にあるか否かに関わらず、上記変速段の事前選択を中止する第2制御モードとの選択的に切り換え可能な2つの制御モードで上記プリセレクト制御を実行することを特徴とする車両用変速機制御装置。
  2. 上記動力源には上限回転数が予め定められており、
    上記所定変速段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうち、最低速変速段及び最高速変速段以外の変速段の中から予め選定され、
    上記所定領域は、
    上記駆動輪への駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を上記プリセレクト制御で選択する領域として、上記使用中の変速段に対応する変速マップに定められ、シフトダウンが行われる走行速度より高速側であると共に上記シフトダウン後の上記動力源の回転数が上記上限回転数となる走行速度より低速側の第1領域と、
    上記駆動輪への駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で選択する領域として、上記使用中の変速段に対応する変速マップに定められ、シフトアップが行われる走行速度より低速側であると共に上記シフトアップが行われる走行速度から所定速度だけ低速となる走行速度より高速側の第2領域と
    からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機制御装置。
  3. 上記制御手段は、上記車両の発進時には、予め設定された発進用変速段を上記駆動力の伝達に用いるように上記第1及び第2変速段群を制御し、上記発進用変速段を上記駆動力の伝達に用いている場合には、上記第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記発進用変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機制御装置。
  4. 上記制御手段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうちの最高速変速段を上記駆動力の伝達に使用しているときは、上記第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記最高速変速段より低速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機制御装置。
  5. 上記制御手段は、上記第1及び第2変速段群の変速段のうちの最低速変速段を上記駆動力の伝達に使用しているときは、上記第1及び第2制御モードのいずれにおいても、上記最低速変速段より高速側の変速段を上記プリセレクト制御で常に選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機制御装置。
  6. 上記制御手段は、
    上記変速マップに基づき上記駆動力の伝達に使用する変速段を決定する自動変速モードと、上記車両の運転者の操作に応じて上記駆動力の伝達に使用する変速段を決定する手動変速モードとの一方に選択的に切り換えて上記第1及び第2変速段群の変速段を制御可能であり、
    上記第1制御モードのプリセレクト制御において、上記自動変速モードが選択されて上記所定変速段を上記駆動力の伝達に使用している場合、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にあると、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を選択する一方、上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第2領域にあると、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を選択し、
    上記第1制御モードのプリセレクト制御において、上記手動変速モードが選択されて上記所定変速段を上記駆動力の伝達に使用している場合、上記車両の運転者に加速の意志があると判定すると共に上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にないと、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より高速側の変速段を選択する一方、上記車両の運転者に加速の意志がないと判定すると共にシフトダウン後の上記動力源の回転数が上記上限回転数となる走行速度より低い速度で上記車両が走行しているとき、或いは上記車両の実際の走行速度とアクセルペダルの踏込量とで定まる点が上記第1領域にあるときには、上記駆動力の伝達に使用中の変速段より低速側の変速段を選択する
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両用変速機制御装置。
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