JP5443277B2 - 被削性に優れた高強度鋼、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
(a)Cr:1.5%以下(0%を含まない)、
(b)Mo:1%以下(0%を含まない)、
(c)Ti:0.005%以下(0%を含まない)、Zr:0.02%以下(0%を含まない)、Hf:0.02%以下(0%を含まない)、Ta:0.02%以下(0%を含まない)、およびNb:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
(d)V:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:3%以下(0%を含まない)、およびNi:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
等を含有してもよい。
0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
Vc=10k ・・・(5)
k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
Alは、鋼中に固溶状態で存在させることによって断続切削したときの被削性を向上させる(工具表面の酸化摩耗を抑制する)ために必要な元素である。また、AlはNと結合してAlNを析出し、加工時に結晶粒が異常成長して強度が低下するのを防止する元素である。また、Alは、脱酸剤としても作用する。こうした効果を発揮させるためには、Alは、0.12%以上、好ましくは0.16%以上、より好ましくは0.20%以上とする。しかしAlが過剰になると、AlNが多量に析出して加工性を低下させる。従ってAlは0.5%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下とする。
Bは、Alの固溶量を確保して断続切削したときの被削性を向上させるのに寄与する元素である。即ち、Bは、鋼中のNと結合してBNを析出させることによって、NがAlと結合してAlNを析出するのを抑制するため、固溶Al量を確保するのに作用する。また、析出したBNは、被削性の向上に寄与する。また、Bは、焼入れ性や粒界強度を向上させて鋼の強度を高めるのにも作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Bは、0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0025%以上とする。しかしBが過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて被削性が却って劣化する。従ってBは0.008%以下、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.0040%以下とする。
Nは、AlNを析出して加工時に結晶粒が異常成長して強度が低下するのを防止する他、BNを析出して被削性を向上させるのに寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、Nは0.002%以上、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.005%以上とする。しかしNが過剰になると、AlNが多量に析出して加工性を低下させる。従ってNは、0.030%以下、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下、特に好ましくは0.010%以下とする。
Cは、強度を確保するために必要な元素であり、0.20%以上含有する。Cは、好ましくは0.30%以上であり、より好ましくは0.40%以上である。しかしC量が過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて被削性や靱性が劣化する。従ってC量は0.70%以下とする。C量は、好ましくは0.60%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
Siは、脱酸元素として作用し、鋼の内部品質を向上させるのに必要な元素である。Siは、0.03%以上、好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.20%以上とする。しかしSi量が過剰になると、温度850℃以上の加工時に異常組織が生成したり、このときの加工性が劣化する。従ってSiは、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.7%以下とする。
Mnは、焼入れ性を向上させて鋼の強度を向上させるのに必要な元素であり、0.2%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.90%以上とする。しかしMnが過剰になると、焼入れ性が向上し過ぎて過剰にベイナイトが生成したり、マルテンサイトが生成し易くなり、被削性が低下する。従ってMnは、1.8%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.10%以下とする。
Pは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であり、P量が過剰になると加工時に割れが発生するのを助長するので、できるだけ低減する必要がある。従ってPは、0.03%以下、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下とする。なお、P量を0%とすることは工業的に困難である。
Sは、鋼中のMnと結合してMnS介在物を形成し、鋼の被削性を向上させるのに有効に作用する元素である。しかしS量が過剰になると、MnS系介在物量が増大し、この介在物が加工時(例えば、熱間圧延や熱間鍛造など)に加工方向に伸展するため、加工方向に直角な方向の靱性(横目靱性)が劣化する原因となる。従ってS量は0.10%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下とする。なお、Sは、鋼に不可避的に含まれる不純物であるため、その量を0%とすることは工業的に困難である。
Oは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であり、O量が過剰になると、粗大な酸化物系介在物が生成し、熱間加工性、延性、靱性、および被削性が劣化する。従ってO量は0.002%以下、好ましくは0.0018%以下、より好ましくは0.0015%以下とする。
Crは、鋼の焼入れ性を高め、強度を向上させるために有効に作用する元素である。また、Alとの複合添加によって、鋼の被削性(特に、断続切削性)を高めるのにも有効に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Crは0.08%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.2%以上、特に好ましくは0.7%以上である。しかし、Cr量が過剰になると、粗大な炭化物が生成するか、或いは過冷組織が生成して被削性を却って劣化させるので、Cr量は1.5%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.3%以下である。
Moは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れされていない組織が生成するのを抑制するのに作用する元素である。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.15%以上である。しかしMoを過剰に含有すると、焼きならし後でも過冷組織が生成して被削性が低下するため、1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。
Ti、Zr、Hf、Ta、およびNbは、熱間加工時に結晶粒が異常成長するのを防止し、鋼の靱性や疲労強度を低下するのを防止する作用を有する元素であり、1種または任意に選択される2種以上を含有することによってこうした作用が発揮される。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Tiは0.0003%以上(特に0.0005%以上)、Zrは0.002%以上(特に0.005%以上)、Hfは0.002%以上(特に0.005%以上)、Taは0.002%以上(特に0.005%以上)、Nbは0.015%以上(特に0.05%以上)含有することが好ましい。しかし、これらの元素を過剰に含有すると、硬質の炭化物が生成して鋼の被削性が却って低下するので、Tiは0.005%以下(特に0.003%以下)、Zrは0.02%以下(特に0.015%以下)、Hfは0.02%以下(特に0.015%以下)、Taは0.02%以下(特に0.015%以下)、Nbは0.15%以下(特に0.14%以下)とすることが好ましい。
V、Cu、およびNiは、焼入れ性を向上させて強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした作用は、これらの元素の含有量が増加するにつれて増大するが、有効に発揮させるには、Vは0.05%以上、Cuは0.1%以上、Niは0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、Vは0.1%以上、Cuは0.2%以上、Niは0.5%以上である。しかし過剰に含有させると過冷組織が生成し、延性や靭性が低下するので、Vは0.5%以下、Cuは3%以下、Niは3%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Vは0.3%以下、Cuは2%以下、Niは2%以下である。なお、V、Cu、およびNiは、夫々、単独で含有させてもよいし、任意に選ばれる2種以上を含有させてもよい。
0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
Vc=10k ・・・(5)
k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
板材の金属組織は、板厚中央部をナイタール腐食し、光学顕微鏡で観察倍率200倍で撮影した写真を画像解析して各組織の面積率を測定した。各組織のうち、ベイナイト面積率f(B)を下記表2に示す。なお、ベイナイト以外の組織は、フェライトとパーライトであることを確認した。
板材の強度を評価するために、板材のビッカース硬さHvを測定した。ビッカース硬さは、厚さ:30mm×幅:155mm断面の中心位置において、荷重:200gとして測定した。測定結果を下記表2に示す。本発明では、ビッカース硬さがHv230以上の場合を合格(高強度)、Hv230未満の場合を不合格(低強度)とした。
板材の被削性を評価するために、エンドミル切削試験を行い、板材を断続切削したときの工具摩耗量を測定した。エンドミル切削試験では、上記板材をスケール除去した後、表面を約2mm研削したものをエンドミル切削試験片(被削材)として用いた。具体的には、マニシングセンタ主軸にエンドミル工具を取り付け、上記のようにして製造した厚さ:25mm×幅:150mm×長さ:100mmの試験片をバイスにより固定し、乾式の切削雰囲気下でダウンカット加工を行った。詳細な加工条件を下記表3に示す。断続切削を200カット行った後、工具表面を光学顕微鏡で観察倍率100倍で観察し、逃げ面摩耗量(工具摩耗量)Vbを測定し平均値を求めた。結果を下記表2に示す。本発明では、断続切削後の逃げ面摩耗量Vbが100μm以下のものを、「断続切削時の被削性に優れる」と評価した。
Claims (8)
- C :0.20〜0.70%(質量%の意味。以下同じ。)、
Si:0.03〜2%、
Mn:0.2〜1.8%、
P :0.03%以下(0%を含まない)、
S :0.10%以下(0%を含まない)、
Al:0.12〜0.5%、
B :0.0005〜0.008%、
N :0.002〜0.030%、および
O :0.002%以下(0%を含まない)を含有すると共に、
AlとNが下記式(1)の関係を満足し、
残部が鉄および不可避不純物からなる鋼であり、
前記鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合、金属組織がフェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(2)を満足しており、
C量が0.35%以上、0.70%以下の場合、金属組織がフェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(3)を満足すること特徴とする被削性に優れた高強度鋼。
0.10<[Al]−1.9×[N] ・・・(1)
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
[上記式(1)〜式(3)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。] - 更に他の元素として、
Cr:1.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の高強度鋼。 - 更に他の元素として、
Mo:1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高強度鋼。 - 更に他の元素として、
Ti:0.005%以下(0%を含まない)、
Zr:0.02%以下(0%を含まない)、
Hf:0.02%以下(0%を含まない)、
Ta:0.02%以下(0%を含まない)、および
Nb:0.15%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼。 - 更に他の元素として、
V :0.5%以下(0%を含まない)、
Cu:3%以下(0%を含まない)、および
Ni:3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度鋼で形成された鋼部品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の成分組成を満足する鋼を、
温度850℃以上で加工した後、800℃から500℃までの温度域を、下記式(4)を満たす平均冷却速度Vaで冷却することによって、
前記鋼に含まれるC量が0.20%以上、0.35%未満の場合、金属組織がフェライト、パーライト、およびベイナイトの混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(2)を満足しており、
C量が0.35%以上、0.70%以下の場合、金属組織がフェライトとパーライトの混合組織であるか、更にベイナイトを含む混合組織であり、且つベイナイトの面積率f(B)が下記式(3)を満足する被削性に優れた高強度鋼の製造方法。
0.1×Vc<Va<0.9×Vc ・・・(4)
上記式(4)において、Vcは下記式(5)で示され、kは下記式(6)で示される。なお、下記式(6)において[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
Vc=10k ・・・(5)
k=4.05−{4.5×[C]+[Mn]+0.5×[Ni]+0.8×[Cr]+1.6×[Mo]+9.0×[Nb]} ・・・(6)
−60×[C]+21<f(B)<−60×[C]+50 ・・・(2)
0≦f(B)<−60×[C]+50 ・・・(3)
[上記式(2)、式(3)において、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。] - 請求項7で得られた高強度鋼を、温度850℃以上に加熱することなく切削加工することを特徴とする鋼部品の製造方法。
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