ところで、上述したような燃料電池セルスタック装置51において、使用時における熱により各燃料電池セル53が変形することがある。このような燃料電池セル53の変形としては、燃料電池セル53の配列方向に沿って反る変形(以下、反りという場合がある。)のほか、上下方向に伸びる変形(以下、伸びという場合がある。)が例示される。このように、燃料電池セル53が変形すると、それに伴って集電部材54に、燃料電池セル53の配列方向において引っ張ろうとする力や圧縮するような力が生じる。
ここで、図7で示した集電部材54は、板状の部材の一端部より(右側より)、燃料電池セル53の幅方向に沿って複数のスリットが設けられた構成のため、集電片66は一端部のみが接続部65と一体的につながった形状である。そのため、集電部材54の作製時や燃料電池セルスタック装置51を作製する際に、集電片66が折れ曲がる等の変形が生じやすく、燃料電池セルスタック装置51の作製にあたり、ハンドリング性が悪いという問題があった。また、折れ曲がった状態の集電片66を用いて燃料電池セルスタック装置51を作製した場合には、燃料電池セル53と集電片66との接触面積が減少し、集電効率が悪いという問題もあった。
また、集電部材54に燃料電池セル53の変形により圧縮するような力が生じた場合に、集電片66の接続部65に接続されていない端部側において、それぞれの集電片66の燃料電池セル53の配列方向における距離を保持することができず、燃料電池セル53と集電片66とが剥離を生じるおそれがあった。
一方、図8の集電部材67においては、集電片69が変形することを抑制でき、ハンドリング性は向上するものの両端が接続部70とつながっているため、集電部材67の剛性が高くなり、燃料電池セル53の変形(反り)が生じた場合に柔軟に追従することができず、燃料電池セル53と集電片69(集電部材67)とが剥離するおそれがあった。
また、燃料電池セル53の変形(伸び)が生じた場合においても、集電部材67の剛性が高いため、燃料電池セル53と集電部材67とが剥離するおそれがあった。
それゆえ、本発明は、ハンドリング性を向上するとともに、燃料電池セル53に反りや伸びの変形が生じた場合においても、燃料電池セル53との剥離が抑制された集電部材を備える燃料電池セルスタック装置およびそれを具備する燃料電池モジュール、ならびに燃料電池装置を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池セルスタック装置は、複数個の柱状の燃料電池セルを集電部材を介して立設させた状態で配列して、前記燃料電池セル同士を電気的に接続してなる燃料電池セルスタックと、前記燃料電池セルの下端部を固定するとともに、前記燃料電池セルに反応ガスを供給するためのマニホールドとを具備する燃料電池セルスタック装置において、前記集電部材は、隣接する一方の前記燃料電池セル側および他方の前記燃料電池セル側にそれぞれ配置された前記燃料電池セルに接触する複数の集電片の一方の端部同士および他方の端部同士をそれぞれ接続部で接続してなる一対の導電体と、一方の前記導電体の一方側の接続部を他方の前記導電体の一方側の接続部に離間させた状態で連結している連結部と、一方の前記導電体の他方側の接続部から他方の前記導電体に向かって延びるとともに、他方の前記導電体に接続固定されていない延伸部とを有し、かつ一方の前記導電体の他方側の接続部と他方の前記導電体の他方側の接続部とが接続固定されていないことを特徴とする。
このような燃料電池セルスタック装置においては、集電部材は、隣接する一方の燃料電池セル側および他方の燃料電池セル側に配置される一対の導電体が、隣接する燃料電池セルと接触するための複数の集電片と、複数の集電片の一方の端部同士および他方の端部同士をそれぞれ接続部で接続してなることから、集電片の変形を抑制することができ、集電部材のハンドリング性を向上することができる。また、一対の導電体が、隣接する一方の燃料電池セル側と他方の燃料電池セル側とに配置されることから、従来の集電部材に比べて、燃料電池セルと接触する集電片の面積を増やすことができ、それにより、燃料電池セルスタックの発電出力を向上させることができる。
また、集電部材は、一方の導電体の一方側の接続部を向かいあう他方の導電体の一方側の接続部に連結している連結部と、一方の導電体の他方側の接続部から他方の導電体に向かって延びるとともに、他方の前記導電体に接続固定されていない延伸部とを有し、かつ一方の前記導電体の他方側の接続部と他方の前記導電体の他方側の接続部とが接続固定されていない。それにより、燃料電池セルの反りに伴って、集電部材を引っ張ろうとする力が生じる場合には、連結部を基点として、それぞれの導電体が燃料電池セルの変形に容易に追従することができる。
また、燃料電池セルの反りに伴って、集電部材のそれぞれの導電体を圧縮するような力が生じる場合には、延伸部が向かい合う導電体と接触するまでは、燃料電池セルの変形に導電体が柔軟に追従することができ、延伸部が向かい合う導電体と接触すると、導電体の他方側(延伸部が設けられた側)の集電片が変形することを抑制することができ、導電体の他方側における導電体間距離を保持することができ、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができる。また、集電体の他方側の接続部同士は接続固定されていないことから、燃料電池セルの変形(伸び)に対しても容易に追従することができる。
それにより、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができることから、燃料電池セルスタックの発電出力の低下を抑制でき、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置とすることができる。
また、本発明の燃料電池セルスタック装置において、前記延伸部が、他方の前記導電体と接触していることが好ましい。
このような燃料電池セルスタック装置においては、延伸部が、他方の導電体と接触していることにより、集電部材の保形性を高めることができ、よりハンドリング性を向上することができる。
さらに、延伸部が、他方の導電体と接触していることから、一方の導電体から他方の導電体へ電流が流れやすくなる。それにより、集電効率の向上した燃料電池セルスタック装置とすることができる。
また、延伸部が他方側の導電体に接続固定されておらず、導電体と接触していることから、集電部材を引っ張ろうとする力が生じた場合に、導電体が燃料電池セルの変形に柔軟に追従することができる。また、集電部材に圧縮するような力が生じた場合には、延伸部が導電体と接触していることから、導電体の他方側(延伸部が設けられた側)の集電片が変形することを抑制できることができ、導電体の他方側における導電体間距離を保持することができ、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができる。
また、本発明の燃料電池セルスタック装置において、前記延伸部が、他方の前記導電体の他方側の接続部に接触していることが好ましい。
このような燃料電池セルスタック装置においては、延伸部が、他方の導電体の他方側の接続部と接触していることにより、集電部材の保形性を高めることができ、さらにハンドリング性を向上することができる。
また、延伸部が接続固定されておらず、他方の導電体の他方側の接続部に接触していることから、集電部材に引っ張ろうとする力が生じた場合には、導電体が燃料電池セルの変形に柔軟に追従することができる。また、集電部材に圧縮するような力が生じた場合には、延伸部が他方の導電体の他方側の接続部に接触していることから、導電体の他方側(延伸部が設けられた側)の集電片が変形することを抑制できることでき、導電体の他方側における導電体間距離を保持することができ、燃料電池セルと集電部材との剥離をより抑制することができる。
さらに、延伸部が、他方の導電体の他方側の接続部に接触していることから、他方の導電体における集電片が、延伸部が接触することによって変形することを抑制することができる。
それにより、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができ、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置とすることができる。
また、本発明の燃料電池セルスタック装置において、他方の前記導電体の他方側の接続部に一方の前記導電体に向かって延びている延伸部を有するとともに、一方の前記導電体の延伸部に他方の前記導電体の前記延伸部が接続固定されておらず、接触していることが好ましい。
このような燃料電池セルスタック装置においては、他方の導電体の他方側の接続部に一方の導電体に向かって延びている延伸部を有するとともに、一方の延伸部に他方の延伸部が接触していることから、集電部材の保形性を高めることができ、ハンドリング性をさらに向上させることができる。
また、他方の導電体の他方側の接続部に、一方の導電体に向かって延びている延伸部を有するとともに、一方の延伸部と、他方の延伸部とが接続固定されておらず、接触していることから、集電部材に引っ張ろうとする力が生じた場合には、導電体が燃料電池セルの変形に柔軟に追従することができる。また、集電部材に圧縮するような力が生じた場合には、導電体が離間された状態を保ち、導電体の他方側(延伸部が設けられた側)の集電片が変形することを抑制でき、導電体の他方側における導電体間距離を保持することができ、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができる。そのため、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置とすることができる。
さらに、一方の導電体の延伸部と他方の導電体の延伸部が接続固定されず、接触していることから、一方の導電体と他方の導電体に生じる応力を均一に近づけることができ、燃料電池セルの変形により追従することができ、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができる。
それにより、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができ、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置とすることができる。
本発明の燃料電池モジュールは、上記の燃料電池セルスタック装置を収納容器内に収納してなることを特徴とすることから、信頼性の向上した燃料電池モジュールとすることができる。
本発明の燃料電池装置は、上記の燃料電池モジュールと燃料電池モジュールを動作させるための補機とを外装ケースに収納してなることを特徴とすることから、信頼性の向上した燃料電池装置とすることができる。
本発明の燃料電池セルスタック装置は、複数個の柱状の燃料電池セルを集電部材を介して立設させた状態で配列し、電気的に接続してなる燃料電池セルスタックと、燃料電池セルの下端部を固定するとともに、燃料電池セルに反応ガスを供給するためのマニホールドとを具備する燃料電池セルスタック装置において、集電部材は、隣接する一方の燃料電池セル側および他方の燃料電池セル側にそれぞれ配置された燃料電池セルに接触する複数の集電片の一方の端部同士および他方の端部同士をそれぞれで接続してなる一対の導電体と、一方の導電体の一方側の接続部を一方側の接続部と向かいあう他方の導電体の一方側の接続部に連結している連結部と、一方の導電体の他方側の接続部から他方の導電体に向かって延びるとともに、他方の前記導電体に接続固定されていない延伸部とを有し、かつ一方の前記導電体の他方側の接続部と他方の前記導電体の他方側の接続部とが接続固定されていないことから、ハンドリング性を向上させるとともに、集電面積を広くすることができる。さらに、それぞれの導電体の他方側の接続部同士は接続固定されていないことから、燃料電池セルの変形(反りや伸び)に容易に追従することができる。それにより、集電部材と燃料電池セルとの剥離を抑制することができ、信頼性の向上した燃料電池セルスタ
ック装置とすることができる。さらに、一方の導電体の他方側の接続部から他方の導電体に向かって延びている延伸部を有することから、集電部材に圧縮するような力が生じる場合に導電体の他方側(延伸部が設けられた側)の集電片が変形することを抑制でき、導電体の他方側における導電体間距離を保持することでき、燃料電池セルと集電部材との剥離を抑制することができる。あわせて、この燃料電池セルスタック装置を収納容器内に収納することで、信頼性の向上した燃料電池モジュールとすることができ、さらにこの燃料電池モジュールと燃料電池モジュールを動作させるための補機とを外装ケース内に収納することで、信頼性が向上した燃料電池装置とすることができる。
図1は、本発明の燃料電池セルスタック装置1の一例を示したものであり、(a)は燃料電池セルスタック装置1を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置1の一部を拡大した平面図であり、(a)で示した点線枠で囲った部分を抜粋して示している。また、同一の部材については同一の番号を付するものとし、以下同様とする。
ここで、燃料電池セルスタック装置1は、一対の対向する平坦面をもつ柱状の導電性支持体12(以下、支持体12と略す場合がある。)の一方側の平坦面上に内側電極層としての燃料側電極層8と、固体電解質層9と、外側電極層としての空気側電極層10とを順に積層してなる柱状(中空平板状)の燃料電池セル3の複数個を立設するとともに、隣接する燃料電池セル3間に集電部材4を介して電気的に直列に接続して燃料電池セルスタック2を形成し、燃料電池セル3の下端部を、燃料電池セル3に燃料ガスを供給するマニホールド7に固定している。また、燃料電池セルスタック装置1は、燃料電池セル3の配列方向(以下、セル配列方向と略す場合がある。)の両端から燃料電池セルスタック2を挟持するように、マニホールド7に下端部が固定された板状の導電部材5を具備している。なお、以降の説明において、特に断りのない限り、内側電極層を燃料側電極層8とし、外側電極層を空気側電極層10として説明する。
さらに、図1に示す導電部材5においては、セル配列方向に沿って外側に向かって延びた形状で、燃料電池セルスタック2(燃料電池セル3)の発電により生じる電流を引き出すための電流引出し部6が設けられている。
さらに、燃料電池セル3の他方側の平坦面上にはインターコネクタ11が設けられており、支持体12の内部には、燃料電池セル3に燃料ガス(反応ガス)を流すためのガス流路13が複数設けられている。
また、インターコネクタ11の外面(上面)にはP型半導体層14を設けることもでき、図1においてはP型半導体層14を設けた例を示している。集電部材4を、P型半導体層14を介してインターコネクタ11に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。
また、支持体12を燃料側電極層8を兼ねるものとし、その一方側の平坦面上に固体電解質層9および空気側電極層10を順次積層して燃料電池セル3を構成することもできる。
なお、本発明において燃料電池セル3としては、各種燃料電池セルが知られているが、発電効率のよい燃料電池セル3とする上で、固体酸化物形燃料電池セル3とすることができる。それにより、単位電力に対して燃料電池装置を小型化することができるとともに、家庭用燃料電池で求められる変動する負荷に追従する負荷追従運転を行なうことができる。
以下に、図1において示す燃料電池セルスタック装置1を構成する各部材について説明する。
燃料側電極層8は、一般的に公知のものを使用することができ、多孔質の導電性セラミックス、例えば希土類元素が固溶しているZrO2(安定化ジルコニアと称し、部分安定化ジルコニアも含む)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
固体電解質層9は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされ、3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO2から形成される。なお、上記特性を有する限りにおいては、他の材料等を用いて形成してもよい。
空気側電極層10は、一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成することができる。空気側電極層10はガス透過性を有していることが必要であり、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。
インターコネクタ11は、導電性セラミックスから形成することができるが、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガス(空気等)と接触するため、耐還元性および耐酸化性を有することが必要であり、それゆえランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)が好適に使用される。インターコネクタ11は支持体12に形成されたガス流路13を流通する燃料ガス、および燃料電池セル3の外側を流通する酸素含有ガスのリークを防止するために緻密質でなければならず、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好ましい。
支持体12としては、燃料ガスを燃料側電極層8まで透過するためにガス透過性であること、さらには、インターコネクタ11を介して集電するために導電性であることが要求される。したがって、支持体12としては、かかる要求を満足するものを材質として採用する必要があり、例えば導電性セラミックスやサーメット等を用いることができる。
また図1に示した燃料電池セル3において、柱状の支持体12は、燃料電池セル3の立設方向に細長く延びている板状片であり、一対の対向する平坦面と半円形状の両側面を有する中空平板状である。そして燃料電池セル3の下端部と導電部材5の下端部とが、燃料電池セル3に燃料ガスを供給するマニホールド7に、例えば耐熱性に優れた接合材(ガラスシール材等)によって固定され、支持体12に設けられたガス流路13が、マニホールド7内の燃料ガス室(図示せず)に通じている。なお、以降の説明において、中空平板状の燃料電池セル3を用いて説明する。
ちなみに、燃料電池セル3を作製するにあたり、燃料側電極層8または固体電解質層9との同時焼成により支持体12を作製する場合においては、Ni等の鉄属金属成分とY2O3等の特定希土類酸化物とから支持体12を形成することが好ましい。また、支持体12は、燃料ガス透過性を備えるために開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあるのが好適であり、またその導電率は300S/cm以上、特に440S/cm以上であるのが好ましい。
さらに、P型半導体層14としては、遷移金属のペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、インターコネクタ11を構成するランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3)よりも電子伝導性の高いもの、例えばAサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存するLaSrCoFeO3系酸化物(例えばLaSrCoFeO3)、LaMnO3系酸化物(例えばLaSrMnO3)、LaFeO3系酸化物(例えばLaSrFeO3)、LaCoO3系酸化物(例えばLaSrCoO3)の少なくとも1種から構成することが好ましく、特に600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaSrCoFeO3系酸化物から構成することが好ましい。なお、BサイトにCoとともにFe、Mnが存在してもよい。このようなP型半導体層14の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
そして、燃料電池セル3は集電部材4を介して電気的に直列に接続される。なお、集電部材4については後述する。
板状の導電部材5は、燃料電池セル3の発電により生じる電流を集電するために導電性であることが必要であり、例えば、ステンレス等にて形成することができる。なお、必要に応じて耐熱性の皮膜を形成したものを利用することもできる。
また、電流引出し部6は燃料電池セル3の形状等により適宜設定することができるが、効率よく電流を引き出す上で、導電部材5の下端部側に設けることが好ましく、導電部材5は、電流引出し部6がマニホールド7に接触しないよう、電流引出し部6との接続部よりも下方側の部位をマニホールド7に固定することが好ましい。なお電流引出し部6を、導電部材5の一部を折り曲げて作製する場合においては、接続部とは折り曲げ部を意味する。また、導電部材5をマニホールド7に固定するにあたり、電流引出し部6との接続部よりも下方側の部位において、板状の両側部から屈曲した一対の側板部を設けることもできる。
図2は、図1で示す集電部材4を抜粋して示し、(a)は展開図、(b)は平面図である。図2に示した集電部材4は、複数のスリットが設けられた2組の板状の導電体15a,15bと、それぞれの導電体15a,15b同士を所定の間隔を空けて連結している連結部18と、一方の導電体15aから他方の導電体15bに延びている延伸部19とを有する。なお、連結部18は、一方の導電体15aの一方側の接続部17と、他方の導電体15bの一方側の接続部17とを連結するため湾曲した形状である。
図2に示す導電体15a,15bは、隣接する燃料電池セル3に当接する複数の集電片16と、複数の集電片16の一方側の端部同士および他方側の端部同士をそれぞれ接続する接続部17とを基本構成とする導電体片を燃料電池セル3の上下方向に導電性連結片20を介して複数連結して構成されている。
このように、集電片16の一方側の端部同士および他方側の端部同士が接続部17により接続されているため、集電部材4のハンドリング性が向上する。また、集電部材4が、2組の板状の導電体15a,15bを有することから、図7,8に示した従来の集電部材54,67に比べ燃料電池セル3と接触する集電片16の数を増やすことができ、それにより集電面積を増やすことができることから、燃料電池セルスタック装置1の発電出力を向上させることができる。
ところで、上述したような燃料電池セル3を用いて構成される燃料電池セルスタック装置1においては、燃料電池セルスタック装置1の発電に伴い、燃料電池セル3がその配列方向に沿って(例えば、空気側電極層10側に向けて)反る変形(反り)を生じる場合がある。さらに、燃料電池セル3の作製時に、支持体12や燃料側電極層8を構成するNiOを、導電性のあるNiに還元する還元処理を行なう必要があるが、この際に、空気側電極層10とインターコネクタ11との熱膨張係数の違いにより、これらの変形量に差が生じ、燃料電池セル3が反りを生じる場合がある。
また、燃料電池セルスタック装置1の発電や、燃料電池セル3の還元処理において、燃料電池セル3が上下方向(下端部がマニホールド7に固定されているため特には上方向)に伸びる変形(伸び)を生じる場合がある。
ここで、燃料電池セル53に、反りや伸びといった変形が生じた場合に、図8に示した従来の集電部材67が柔軟に追従することができずに、燃料電池セル53と集電部材67とが剥離するおそれがある。特に、燃料電池セルスタック52の端部側における集電部材67においては、導電部材55の剛性によっては、燃料電池セル53の配列方向に強い圧縮するような力(以下、圧縮応力と略す場合がある。)や引っ張ろうとする力(以下、引張応力と略す場合がある。)が生じ、燃料電池セル53と集電部材67とが剥離するおそれがある。
図2に示す集電部材4においては、一方の導電体15aの他方側の接続部17と、この他方側の接続部17と向かい合う他方の導電体15bの接続部17とが接続固定されていないことから、集電部材4の剛性を下げることができ、集電部材4に生じるセル配列方向における引張応力を緩和することができ、燃料電池セル3と集電部材4との剥離を抑制することができる。
また、図7に示す集電部材54にセル配列方向における圧縮応力が生じると、集電片66の接続部65に接続されていない端部側が変形しやすくなり、それぞれの集電片66のセル配列方向における距離を保持することができず、集電片66(集電部材54)が燃料電池セル3との剥離を生じるおそれがある。それに伴って、燃料電池セルスタック2の発電出力が低下するおそれがある。
図2に示す集電部材4は一方の導電体15aの他方側(連結部18が接続されていない側)に他方の導電体15bに接触しない延伸部19を有することから、延伸部19が他方の導電体15bと接触するまでは、燃料電池セルの変形に導電体15a,15bが柔軟に追従することができ、延伸部19が他方の導電体15bと接触すると、導電体15a,15bの他方側(延伸部19が設けられた側)の集電片16の変形を抑制することができ、導電体15a,15bの他方側における導電体間距離dを保持することができる。それゆえ、燃料電池セル3と集電部材4との剥離を抑制することができる。それにより、燃料電池セル3と集電片16(集電部材4)との剥離を抑制することができ、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
また、それぞれの導電体15a,15bの他方側の接続部17同士が接続固定されていないことに加えて、導電体15a,15bが、隣接する燃料電池セル3に当接する複数の集電片16と、複数の集電片16の一方側の端部同士および他方側の端部同士をそれぞれ接続する接続部17とを基本構成とする導電体片を燃料電池セル3の上下方向に導電性連結片20を介して複数連結して構成されていることから、燃料電池セル3の変形(伸び)に対しても、集電部材4が柔軟に追従して変形することができる。それにより、燃料電池セル3と集電部材4との剥離を抑制することができ、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
なお、導電体片同士を連結する導電性連結片20の幅は、導電体片(導電体15a,15b)の幅よりも短いことが好ましい。それにより、燃料電池セル3の変形(伸び)に対して柔軟に追従することができ、燃料電池セル3と集電部材4との剥離を抑制することができる。
ここで、集電部材4(導電体15a,15b)における上下方向の長さとしては、燃料電池セル3に生じる応力を効果的に緩和するとともに、燃料電池セル3の発電により生じた電流を効率よく集電することと、このような集電部材4を備える燃料電池セルスタック装置1を収納容器内に収納して燃料電池モジュールを構成した場合に(後述する図4参照)、集電部材4が燃料電池モジュールを構成する他の部材と接触することにより生じる電流のロスとを考慮して、空気側電極層10の長さと同等またはそれ以上であり、燃料電池セル3の長さと同等またはそれ以下であることが好ましい。
同様に、導電体15a,15bの幅としては、空気極側電極層10の幅以上が好ましく、燃料電池セル3の幅以下であることが好ましい。具体的には延伸部19が設けられた一方の導電体15aの幅が空気極側電極層10の幅以上であり、他方の導電体15bの幅が燃料電池セル3の幅以下であることが好ましい。
なお、集電部材4は一枚の板状の部材にスリット等を設けて、その板を折り曲げて作製することができる。それにより、容易に集電部材4を作製することができる。また、一対の導電体15a,15bと、連結部23とを別部材として作製し、溶接することで集電部材4を作製することもでき、複数の集電片16と、接触部17と、連結部18と、延伸部19と、導電性連結片20とをそれぞれ別部材として作製し、それぞれを溶接することで集電部材4を作製することもできる。
ここで、導電体間距離dとは図2,3に示すdであり、導電体15a,15b,27a,27b,34a,34b同士の対向する表面間の長さを示す。例えば、一方の導電体34aと他方の導電体34bの接続部33同士が対向して配置されている場合に、導電体間距離は、それぞれの接続部33同士の距離とすることができる(図3(b)参照)。
図3(a)は本発明の燃料電池セルスタック装置を構成する集電部材の他の一例を示す平面図、図3(b)は本発明の燃料電池セルスタック装置を構成する集電部材のさらに他の一例を示す平面図である。
図3(a)に示す集電部材22は、図2(a)とほぼ同様の構成を有するものであるが一方の導電体27aの他方側の接続部24から他方の導電体27bの他方側の接続部24に向かって延びている延伸部26が、他方の導電体27bの他方側の接続部24に接続固定されず、予め接触している。それにより、集電部材22に圧縮応力が生じた場合に、導電体27a,27bの他方側(延伸部26が設けられた側)における導電体間距離dを保持することができ、燃料電池セル3と集電部材22との剥離を抑制することができる。
また、延伸部26が他方の導電体27bの他方側の接続部24に接触していることから、他方の導電体27bにおける集電片23が、延伸部26と接触せず、延伸部26に押されて変形することを抑制することができる。
さらに、延伸部26が他方の導電体27bと接触していることから一方の導電体27aから他方の導電体27bへ電気が流れやすくなる。それにより連結部25における電流集中を緩和することができ、連結部25の劣化の抑制および、集電部材22の電気抵抗を低下させることができる。そのため、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
図3(b)に示す集電部材29は、図2(a)とほぼ同様の構成を有するものであるが、他方の導電体34bの他方側の接続部31に、一方の導電体34aに向かって延びている延伸部32を備えるとともに、一方の導電体34aの延伸部33と、他方の導電体34bの延伸部33とが接続固定されず、接触していることから、集電部材29の保形性を高めることができ、さらにハンドリング性を向上させることができる。また、集電部材29に引張応力が生じた場合に、導電体34a,34bが燃料電池セル3の変形に柔軟に追従することができる。
また、集電部材29に圧縮応力が生じた場合に、導電体34a,34bの他方側(延伸部26が設けられた側)における導電体間距離dを保持することができ、燃料電池セル3と集電部材29との剥離を抑制することができる。
さらに、一方の導電体34aの延伸部33と他方の導電体34bの延伸部33が接続固定されず、接触していることから、一方の導電体34aと他方の導電体34bに生じる応力を均一に近づけることができ、導電体34a,34bに生じる応力を緩和することができ、燃料電池セル3の変形により追従することができ、燃料電池セル3と集電部材29の剥離を抑制することができる。
なお、図2および図3では延伸部19,26,35が屈曲や湾曲していない例を示したが、延伸部19,26,35は屈曲や湾曲していてもよい。また、集電片16,23,30の上下方向の幅や接続部17,24,31の上下方向の長さ等は、集電効率を考慮し適宜設定すればよい。また、延伸部19,26,35を接続部17,24,31に対して垂直に設けた例を示したが、垂直に設けることに限られるものではない
また、図2および図3においては、延伸部19,26,35の先端が、他方の導電体15b,27b,34bや他方の導電体15b,27b,34bの他方側の接続部17,24,31に接触する例や、延伸部19,26,35の先端同士が接触する例を示したが、延伸部19,26,35の一部がそれぞれに接触していればよく、先端での接触に限られるものではない。例えば、延伸部19,26,35の側面に他方の導電体15b,27b,34bの他方側の接続部17,24,31が接触してもよい。
図4は、本発明の燃料電池モジュールの一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器37の内部に、本発明の燃料電池セルスタック装置1を収納して構成されている。
なお、燃料電池セル3にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器33を燃料電池セルスタック2の上方に配置している。そして、改質器38で生成された燃料ガスは、ガス流通管39を介してマニホールド7に供給され、マニホールド7を介して燃料電池セル3の内部に設けられたガス流路(図示せず)に供給される。
なお、図4においては、収納容器37の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されている燃料電池セルスタック装置1および改質器38を後方に取り出した状態を示している。ここで、図4に示した燃料電池モジュール36においては、燃料電池セルスタック装置1を、収納容器37内にスライドして収納することが可能である。
また、収納容器37の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材40は、図4においてはマニホールド7に並置された燃料電池セルスタック2の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが、燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル3の下端部側から上端部側に沿って流れるように、燃料電池セル3の下端部側に酸素含有ガスを供給するように構成されている。なお、燃料電池セル3の下端部側に供給された酸素含有ガスの一部は、集電部材(図示せず)の内部に流れ、集電部材の内部を下端部側から上端部側へと流れる。
ここで、本発明の集電部材4においては、一方の導電体15aの他方側の接続部17から他方の導電体15bに向かって延びている延伸部19を備えることから、集電部材4に圧縮応力が生じた場合であっても、一方の導電体15aと他方の導電体15bにおいて間隔を確保することができる。それにより、十分な量の酸素含有ガス(空気)を集電部材4の内部に流通させることができることから、燃料電池セル3に十分に酸素含有ガス(空気)を供給することができ、燃料電池セル3の発電出力を低下を抑制することができ、燃料電池セルスタック2の発電出力の低下を抑制することができる。それにより信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
なお、一方の導電体15aと他方の導電体15bとの間隔は、十分な量の酸素含有ガス(空気)を集電部材4の内部に流通させる点と、燃料電池セルスタック2の小型化の点から1〜2.5mmであることが好ましい。
また、本発明の集電部材22においても、一方の導電体27aの他方側の接続部24から他方の導電体27bに向かって延びている延伸部26を備えることから、集電部材22に圧縮応力が生じた場合であっても、一方の導電体27aと他方の導電体27bにおいて間隔を確保することができる。それにより、十分な量の酸素含有ガス(空気)を集電部材22の内部に流通させることができることから、燃料電池セル3に十分に酸素含有ガス(空気)を供給することができ、燃料電池セル3の発電出力を低下を抑制することができ、燃料電池セルスタック2の発電出力の低下を抑制することができる。それにより信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
また、本発明の集電部材29においても、一方の導電体34aの他方側の接続部31から他方の導電体34bに向かって延びている延伸部33を備えることから、集電部材29に圧縮応力が生じた場合であっても、一方の導電体34aと他方の導電体34bにおいて間隔を確保することができる。それにより、十分な量の酸素含有ガス(空気)を集電部材29の内部に流通させることができることから、燃料電池セル3に十分に酸素含有ガス(空気)を供給することができ、燃料電池セル3の発電出力を低下を抑制することができ、燃料電池セルスタック2の発電出力の低下を抑制することができる。それにより信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1とすることができる。
また、燃料電池セル3のガス流路13より排出される余剰の燃料ガスを燃料電池セル3の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル3の温度を上昇させることができ、燃料電池セルスタック装置1の起動を早めることができる。また、燃料電池セル3の上端部側にて、燃料電池セル3のガス流路13から排出される燃料ガスを燃焼させることにより、燃料電池セルスタック2の上方に配置された改質器38を温めることができる。それにより、改質器38で効率よく改質反応を行うことができる。
このような燃料電池モジュール36においては、上述したように、信頼性の向上した燃料電池セルスタック装置1を収納容器32に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池モジュール31とすることができる。
図5は、外装ケース内に図4で示した燃料電池モジュール36と、燃料電池モジュール36を動作させるための補機(図示せず)とを収納してなる本発明の燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図5においては一部構成を省略して示している。
図5に示す燃料電池装置41は、支柱46と外装板47から構成される外装ケース内を仕切板48により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール36を収納するモジュール収納室45とし、下方側を燃料電池モジュール36を動作させるための補機を収納する補機収納室44として構成されている。なお、補機収納室44に収納する補機を省略して示している。
また、仕切板48には、補機収納室44の空気をモジュール収納室45側に流すための空気流通口42が設けられており、モジュール収納室45を構成する外装板47の一部に、モジュール収納室45内の空気を排気するための排気口43が設けられている。
このような燃料電池装置41においては、上述したように、信頼性の向上した燃料電池モジュール36をモジュール収納室45に収納し、燃料電池モジュール36を動作させるための補機を補機収納室44に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置41とすることができる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上述した燃料電池モジュール36においては、燃料電池セル3内のガス流路に燃料ガスを供給し、燃料電池セル3の外側に酸素含有ガスを供給する例を示しているが、ガス流路に酸素含有ガスを供給し、燃料電池セル3の外側に燃料ガスを供給する構成としてもかまわない。その場合においては、内側電極層を空気側電極層10とし、外側電極層を燃料側電極層8とする構成の燃料電池セル3とすればよい。