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JP5440388B2 - 酸化物スパッタリングターゲットおよび光記録媒体用酸化物膜 - Google Patents

酸化物スパッタリングターゲットおよび光記録媒体用酸化物膜 Download PDF

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JP5440388B2 JP2010120539A JP2010120539A JP5440388B2 JP 5440388 B2 JP5440388 B2 JP 5440388B2 JP 2010120539 A JP2010120539 A JP 2010120539A JP 2010120539 A JP2010120539 A JP 2010120539A JP 5440388 B2 JP5440388 B2 JP 5440388B2
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Description

本発明は、Blu−ray Disc(登録商標、以下BDと記載)等の光記録媒体における記録層に積層される酸化物膜等を形成するための酸化物スパッタリングターゲットおよびこれを用いて成膜された光記録媒体用酸化物膜に関するものである。
近年、写真や動画の高画質化によるデータ量の増加に伴い、記録媒体の高容量化が求められている。既に、高容量の光メディアとして二層50GBの容量を有したBDが販売されている。このBDは、今後もさらなる高容量化が望まれており、記録層の積層による高容量化の研究が盛んに行われている。
このような記録層を積層した光メディアでは、記録層に酸化物膜で形成された保護層が積層される。例えば、特許文献1または2には、Cr−OまたはCrを含有した酸化物スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより光学的情報記録媒体または多層光記録媒体を形成する方法が記載されている。
特開2008−112556号公報 特開2007−179706号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、Crを含有した酸化物スパッタリングターゲットを連続スパッタすると、酸化物スパッタリングターゲットから打ち出された材料が防着板に大量に堆積し、いわゆるdepo膜を形成する。このdepo膜が一定の厚み以上になると、膜応力によって、depo膜が防着板から剥がれ落ちる問題がある。この剥がれたdepo膜が酸化物スパッタリングターゲットに落下すると、異常放電が発生し、また製品に付着すると不良が発生するという不都合があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、Crを含有しつつ、防着板からのdepo膜の剥がれ落ちを抑制可能な酸化物スパッタリングターゲットおよびこれを用いて成膜された光記録媒体用酸化物膜を提供することを目的とする。
防着板からの膜剥がれを防止する手法としては、2つの方法が考えられる。すなわち、一つは、密着性の良い防着板の材質を選ぶと共に表面を粗くすることによって、depo膜−防着板間の密着性を向上させる方法である。もう一つは、depo膜となる酸化物スパッタリングターゲットの材質を調整し、depo膜の膜応力を低減することで、応力による剥がれを抑制し、さらに防着板との密着性の良い酸化物スパッタリングターゲット材料を選ぶことによってdepo膜−防着板間の密着性を向上させる方法である。そこで、本発明者らは、Crを含有した酸化物スパッタリングターゲットについて研究を進めたところ、SiOを含有させることでdepo膜−防着板間の密着性を改善させることができることを突き止めた。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の酸化物スパッタリングターゲットは、ZnOおよびCrを含有する酸化物スパッタリングターゲットであって、さらにSiOを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、85≦(p+q)≦99の関係を満たすことを特徴とする。
また、本発明の他の酸化物スパッタリングターゲットは、ZnO、CrおよびInを含有する酸化物スパッタリングターゲットであって、さらにSiOを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%およびSi:100−p−q−r%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、0<r≦30、85≦(p+q+r)≦99の関係を満たすことを特徴とする。
これらの酸化物スパッタリングターゲットでは、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q−r%、必要に応じてIn:r%を含有し、これらの成分組成が、上記関係の条件を満たすので、SiOがスパッタリングによるdepo膜−防着板間の密着性を向上させ、depo膜の応力を抑制することで、depo膜の剥がれを抑制することができる。特に、Siを含有するZnO系酸化物膜は、Al防着版への密着性が優れており、より高いパーティクル低減効果を得ることができる。
なお、Siの含有量を上記範囲(Si:100−p−q−r%、すなわち1%≦Si≦15%)に設定した理由は、Siが1%未満になると、防着板への密着性が不十分であり、Siが15%を超えると、Crの光学特性(屈折率)が大幅に低下してしまうためである。すなわち、ZnOの屈折率nが1.9、Crの屈折率nが2.5、SiOの屈折率nが1.4であるため、SiOの含有量が一定以上になると、屈折率が保護層として要望される範囲よりも大きく低下するためである。
また、Znを採用した理由は、熱伝導率が高く、さらに透明性が優れていることである。一方、添加量が33%未満であると、保護層としての熱伝導率が十分に確保できず、記録エラーの発生率が増加する。添加量が90%を超えると、膜の耐湿性が著しく低下し、光記録媒体の耐候性が劣化する。
さらに、Crの含有量を上記範囲に設定した理由は、Crが8%未満になると記録層との密着性が悪くなり、Crが65%を超えると、保護膜の透明性が著しく低下することである。
また、Inを採用した理由は、優れた記録膜との密着性と適度な柔軟性である。一方、In添加量が30%を超えると、保護層としての熱安定性が不足するようになり、また湿度に対する安定性も低下する。
本発明の光記録媒体用酸化物膜は、ZnOおよびCrを含有する光記録媒体用酸化物膜であって、さらにSiOを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、85≦(p+q)≦99の関係を満たすことを特徴とする。
また、本発明の他の光記録媒体用酸化物膜は、ZnO、CrおよびInを含有する光記録媒体用酸化物膜であって、さらにSiOを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%およびSi:100−p−q−r%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、0<r≦30、85≦(p+q+r)≦99の関係を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る酸化物スパッタリングターゲットによれば、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q−r%、必要に応じてIn:r%、を含有し、これらの成分組成が、上記条件を満たすので、Siがdepo膜−防着板間の密着性を向上させ、depo膜の応力を抑制することで、depo膜の剥がれを抑制することができる。
したがって、本発明の酸化物スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより光記録媒体用酸化物膜を成膜することで、パーティクルの発生が抑制されて異常放電の発生等が抑えられ、BDの記録層に積層される保護層に適した良好な膜を得ることができる。
以下、本発明に係る酸化物スパッタリングターゲットおよびこれを用いて成膜された光記録媒体用酸化物膜の一実施形態を説明する。
本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットは、例えば光記録媒体の記録層に積層される保護層をスパッタリングにより成膜するための酸化物スパッタリングターゲットであって、ZnO、CrおよびSiO、必要に応じてInを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%、Si:100−p−q−r%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、0≦r≦30、85≦(p+q+r)≦99の関係を満たすものである。
この酸化物スパッタリングターゲットの製造方法としては、例えば、上記含有量となる指定割合で秤量した原料粉末のZnO、In、Cr、SiOを粉砕混合して混合粉末を作製する工程と、該混合粉末をカーボンモールドに充填し、真空または不活性ガス雰囲気中で圧力を加えながら加熱して焼結させるホットプレスを行う工程と、の実施が挙げられる。また、粉砕混合した上記混合粉末を加圧成型し、大気または大気より酸素濃度の高い雰囲気中で1000−1500℃で焼結し焼結体を作成する方法もある。さらに、必要に応じて、焼結体を加工してバッキングプレートにボンディングすることで、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットが作製される。
例えば、上記製法の一例としては、まず初期平均粒子径3μm以下のZnO、In、Cr、SiOを、指定割合で秤量すると共に、アルコールを溶媒とした湿式微粉砕装置を用いて、平均粒子径1μm以下に粉砕、混合し、得られた粉砕粉を乾燥する。
次に、粉砕粉をカーボンモールドに充填し、真空中にて20〜50MPa、1000℃〜1400℃にて真空ホットプレスを行って焼成する。さらに、この焼成されたものを、湿式研削にて直径152.4×厚さ5mmに加工し、銅製バッキングプレートにInを用いてボンディングすることで、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットが作製される。
このように作製した酸化物スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより成膜された本実施形態の光記録媒体用酸化物膜は、ZnO、CrおよびSiO、必要に応じてInを含有し、不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%、Si:100−p−q−r%とされており、これらの成分組成が、33≦p≦90、8≦q≦65、0≦r≦30、85≦(p+q+r)≦99の関係を満たした酸化物膜となる。
なお、本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットを用いて光記録媒体用酸化物膜を成膜するには、防着板としてAlを溶射したステンレス鋼製の防着板(以下、Al防着板という)を使用することが好ましい。
この本実施形態の酸化物スパッタリングターゲットでは、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q−r%、必要に応じてIn:r%を含有し、これらの成分組成が、上記条件を満たすので、Siがdepo膜−防着板間の密着性を向上させ、depo膜の応力を抑制することで、depo膜の剥がれを抑制することができる。特に、Siを含有するZnO系膜は、Al防着版への密着性が優れており、より高い膜剥がれの防止効果を得ることができる。
上記本実施形態に基づいて実際に作製した酸化物スパッタリングターゲットの実施例について、屈折率および剥離試験の評価を行った結果を以下に示す。
本発明の実施例は、上記製法の例により作製したものであり、各原料の投入量は、以下の表1に示す。また、投入原料の合計重量は1000gとした。また、ICP法(高周波誘導結合プラズマ法)を用いて酸化物スパッタリングターゲットのZn、In、Si、Cr各元素の含有量を測定した結果を、以下の表2に示す。
なお、比較例として、ZnO、In、Crのみを同様のプロセスで作製した酸化物スパッタリングターゲットにおいても、同様に評価した。また、Siを本発明の含有量よりも多く含有させた比較例を比較例4とし、Siを本発明の含有量よりも少なく含有させた比較例を比較例5として同様のプロセスで作製し、この酸化物スパッタリングターゲットにおいても、同様に評価した。なお、これらの比較例の原料投入量および含有量も、表1および表2に示す。
Figure 0005440388
Figure 0005440388
これら実施例および比較例を用いて行ったスパッタテストの条件は、RF電源の投入電力を1000W、Ar圧を0.67Paとし、基板加熱なしで、膜厚1000nmまで成膜した。なお、基板は、コーニング社製1737#ガラスを使用した。
このスパッタテストにより作製した膜について、分光エリプソメータを用いて、波長550nmに対する屈折率を測定した結果を、以下の表3に示す。なお、膜中の各元素含有量は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて測定し、その結果を表2に記載している。
Figure 0005440388
次に、剥離試験の評価は、表面粗さRaが2μmのAl防着板を使用し、Al防着板に対して上記実施例および比較例の酸化物スパッタリングターゲットにより連続2時間の成膜を行った。この成膜後、スパッタチャンバを開け、Al防着板から1mm以上の膜剥れがないかを確認した。さらに、膜剥れが発生していない部位において、□1mmの切り込み100個をカッターで刻み、セロハンテープ(3M社製SCOTCH375)を用いてピーリング試験を行い、剥れた膜の升目を計測した。
なお、使用した3M社製SCOTCH375は、鋼への密着力が60N/100mm幅、引っ張り強度が613N/100mm幅である。これと同等の粘着テープであれば、3M社製SCOTCH375の代わりとして用いることができる。
これらの評価結果からわかるように、本実施例では、屈折率nが2.00〜2.08となり、記録層の保護層として要望されている屈折率の範囲内であった。なお、比較例4を除く比較例も、いずれも要望されている屈折率の範囲内であるが、Siを本発明の含有量範囲よりも多く含んだ比較例4については、屈折率nが1.96と下がってしまい、要望される屈折率2.00よりも低く、保護層としては不十分であった。
また、比較例4を除いた他の比較例では、いずれも1mm以上の膜剥がれが発生してしまっていると共に、ピーリング試験(碁盤の目剥離実験)により剥がれた膜の升目が78以上となっているのに対し、Siが含有された本実施例では、いずれも1mm以上の膜剥がれは発生しておらず、ピーリング試験により剥がれた膜の升目も6以下であり、非常に少なくなっていることがわかる。
なお、これら実施例は、いずれも保護層として要望される十分な透明性も有していた。
このようにSiを所定含有量で含んだ本実施例の酸化物スパッタリングターゲットでは、保護層として十分な屈折率を有した光記録媒体用酸化物膜が得られると共に、スパッタリング時における防着板への密着性が大幅に向上していることがわかる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

Claims (4)

  1. ZnOおよびCrを含有する酸化物スパッタリングターゲットであって、
    さらにSiOを含有し、
    不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q%とされており、
    これらの成分組成が、
    33≦p≦90、
    8≦q≦65、
    85≦(p+q)≦99
    の関係を満たすことを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。
  2. ZnO、CrおよびInを含有する酸化物スパッタリングターゲットであって、
    さらにSiOを含有し、
    不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%およびSi:100−p−q−r%とされており、
    これらの成分組成が、
    33≦p≦90、
    8≦q≦65、
    0<r≦30、
    85≦(p+q+r)≦99
    の関係を満たすことを特徴とする酸化物スパッタリングターゲット。
  3. ZnOおよびCrを含有する光記録媒体用酸化物膜であって、
    さらにSiOとされており、
    不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%およびSi:100−p−q%を含有し、
    これらの成分組成が、
    33≦p≦90、
    8≦q≦65、
    85≦(p+q)≦99
    の関係を満たすことを特徴とする光記録媒体用酸化物膜。
  4. ZnO、CrおよびInを含有する光記録媒体用酸化物膜であって、
    さらにSiOを含有し、
    不可避不純物を除いた全金属成分量に対する原子比で、Zn:p%、Cr:q%、In:r%およびSi:100−p−q−r%とされており、
    これらの成分組成が、
    33≦p≦90、
    8≦q≦65、
    0<r≦30、
    85≦(p+q+r)≦99
    の関係を満たすことを特徴とする光記録媒体用酸化物膜。
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